スリル14・回る切腹
2013/06/13 Thu 00:02
大磯は悪魔のように目を輝かせながら、広げた手の平を恵美の太ももに叩き付けた。パン! と乾いた音が鳴ると同時に六センチほどの布団針が根元まで叩き込まれ、まるで電流を流されたかのように右足がビンっと跳ね上がった。
こむら返りのような激痛が脳を貫いた。
大磯は正常位で激しく腰を振りながら、「ひぃーっ!」と全身を引き攣らせる恵美の中に三度目の射精をした。
さすがに六十五歳の老人には連続三回の射精は堪えたらしく、大磯はベッドにゴロリと倒れると胸をゼェゼェと鳴らしながら「少し休憩しましょう……」と呟いた。
大磯はゆっくりと起き上がると、ドロドロの肉棒をブラブラさせながらドアへと向かった。そして、「三十分ほど待ってて下さい。パワーを注入してきますから」と笑い、そのまま部屋を出て行ってしまった。
恵美は起き上がろうとするが、しかし、少しでも体を動かそうとすると全身の筋肉が引き攣り、太ももから脳にかけて激痛が走った。
その針を抜かなければ動けないと思い、恐る恐る太ももに指を伸ばした。
針の刺さった場所を指探りしていると、乾いた血がパサパサと剥がれた。親指大にポコンっと腫れた部分に針の頭を見つけ、そこに爪先を引っ掻けた。針が動く度に激痛が走ったが、それをゆっくりと引き抜くと、それまでの激痛が嘘のように消えた。
しかし、右足は痺れていた。ベッドから立とうとすると、太股が雑巾のように搾られるような鈍い痛みが走り、足の力が抜けた。
恵美は昭和の回転ベッドに腰掛けたまま、(逃げるなら今だ)と、下唇を噛んでいた。
しかし、もう一度あのスリルを感じたかった。ここで逃げなければ殺されてしまうとわかっていながらも、それでもあの巨大な肉棒で激しく膣をほじくられ、全身に針を叩き込まれたいと思っていた。
焦燥感に駆られながらゆっくりと立ち上がると、右足を引きずりながらドアに向かった。
逃げるなら今だ……と、何度も呟きながらドアを開け、静まり返った廊下を恐る恐る覗いた。
廊下に顔を出した瞬間、いきなり目が合った。
すぐ目の前に立っていた。
ハァハァと肩で息をしながら、血走った目で恵美を睨み、「この部屋だったのか」と低い声で呟いた。
そこに立っていたのは大磯ではなかった。狐のように引き攣った顔で恵美を睨んでいたのは、殺された沙織の父であり、サラマンドラの店長でもある原山だった。
原山は恵美を突き飛ばすと、「沙織はどこだ!」と怒鳴りながら部屋に入って来た。原山の左手にはポリタンクが握られ、右手には鋭く光る出刃包丁が握られていた。
誰もいない部屋を必死に見回しながら、「先生はどこだ!」と恵美に出刃包丁を突き付けた。顎をガクガクと震わせながら「さっき出て行きました」と答えると、原山は、今にも泣き出しそうな感情のこもった声で「沙織は!」と叫んだ。
恵美は血まみれの回転ベッドに振り返った。
すかさず原山は回転ベッドに駆け寄った。そしてベッドと壁の隙間に蹴り落されていた沙織の死体を発見すると、両手で顔を塞ぎながら「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」と断末魔のような悲鳴を上げたのだった。
原山は、目玉が飛び出そうなほどに目を開きながら沙織を見ていた。両手に持っていたポリタンクと包丁をボトっと床に落すと、震える両手を広げ、「あぁぁ! あぁぁ!」と甲高い声を漏らしながら崩れ落ちた。
愛する我が子の無惨な拷問死体を目の当たりにした原山は、もはや尋常ではなかった。この世のものとは思えぬ形相で下唇を噛み千切り、大量の血を顎から喉へとダラダラ垂らしながら狂犬のように唸っていた。
異常な原山を見て咄嗟に危険を察した恵美は、全裸のままそこから逃げ出そうとしドアノブを握った。すると、突然背後で原山が歌い出した。
「そーだ、恐れないでみーんなの為に、愛と勇気だけがとーもだちさー」
そんな歌声と共に、ビシャ、ビシャ、という音が聞こえてきた。恵美はドアノブを握ったまま振り返った、
原山は両手に持ったポリタンクを上下に振り、沙織の死体にガソリンらしき液体をかけていた。同じ歌詞ばかりを繰り返しながら、回転ベッドやカーテンにもそれを撒き散らし、挙げ句の果てには、まるでシャワーのようにして、自分の頭にそれをぶっかけていた。
部屋中に危ない匂いがメラメラと漂い始めた。
原山は、空になったポリタンクを放り投げると、出刃包丁を片手にガソリンで湿ったベッドの上に飛び乗った。そして枕元にあるスイッチ盤を出刃包丁の柄でガンガンと叩き始めた。
ガタンっという振動と共に回転ベッドが回り始め、天井の豆電球がチカチカと点滅し始めた。それと同時に有線のスイッチが入ったのか、天井に吊り下げられていた古びたスピーカーから大音量の曲が鳴り響いた。
その曲は、ちあきなおみの『喝采』という、かなり古い歌謡曲だった。曲に合わせてベッドで正座する原山が回っていた。
原山はワイシャツのボタンを引き千切ると、タプタプに弛んだ腹を曝け出し、そこに出刃包丁の先を突き付けた。
とたんに原山の喉から「ひぃーひぃー」と猛禽類のような情けない声が漏れた。が、しかし、原山はいきなりギョッと目を見開くと、刃先を左の脇腹に突き刺した。
音も無いまま包丁は腹の中に滑り込んだ。原山は唇を真一文字に結びながら「うぐぅぅぅ」と唸り、そのまま一気に右の脇腹までかっ捌いた。
まるで水風船を踏み潰したかのように大量の血がブッと噴き出した。それが無数の点となって、辺り一面に赤い水玉模様を作った。
腹は見事にパックリと開いていた。赤黒い腹の中からゴボゴボと内臓が零れ、それが正座する原山の太ももに溢れた。
一瞬、正気に戻ったのか、原山は「あぁぁ……」と唸りながら恵美の顔を見上げた。その情けない表情には、やらなきゃ良かった、という後悔がはっきりと浮かんでいた。
恵美の顔を見つめたまま、無言で涙をポロポロと流している原山に、恵美は「火!」と叫び、正座する原山の足下に転がっている百円ライターを指差した。
それはいわゆる『介錯』の意味が込められていた。恵美は、一刻も早く原山を楽にしてやりたいと思ったのだ。
原山は二度頷くと、震える手で百円ライターを握った。しかし、それを何度か擦るが、血で滑っているのかなかなか火はつかなかった。
そうしながらも原山は、いきなりゴボッとゲロを吐いた。血が混じったそのゲロの中には、お昼に待機所で食べた『サッポロ一番塩ラーメン』の麺が、消化されずに混じっていた。
それを見ながら恵美は、あのとき原山は、まさかそれが最後の食事になるとは思ってもいなかっただろうと思った。
そう思うと、恵美は急に悲しくなった。わんわんと泣きながら、ソファーテーブルの灰皿の中にポツンと置いてあったラブホテルのマッチを手に取り、その一本をシュッと擦った。
回転ベッドはクルクルと回っていた。
内臓を飛び出した原山もクルクルと回っていた。
火のついたマッチを回転ベッドに向かって投げると、同時に、ドン! という音が響き、重たい熱風が恵美を包み込んだ。
真っ黒な煙が竜巻のような渦を作り、みるみる天井を真っ暗にしていった。
真っ赤に燃え盛る炎の中、クルクルと回る回転ベッドの上で原山が悲しそうに踊っていた。
そんな壮絶なシーンとは不釣り合いに、ちあきなおみが熱唱していた。
あれは三年前、止める、あなた、駅に残し。
その悲しい歌声は、黒煙に包まれながら天井の隅で響いていたのだった。
(つづく)
《←目次》《15話へ→》
こむら返りのような激痛が脳を貫いた。
大磯は正常位で激しく腰を振りながら、「ひぃーっ!」と全身を引き攣らせる恵美の中に三度目の射精をした。
さすがに六十五歳の老人には連続三回の射精は堪えたらしく、大磯はベッドにゴロリと倒れると胸をゼェゼェと鳴らしながら「少し休憩しましょう……」と呟いた。
大磯はゆっくりと起き上がると、ドロドロの肉棒をブラブラさせながらドアへと向かった。そして、「三十分ほど待ってて下さい。パワーを注入してきますから」と笑い、そのまま部屋を出て行ってしまった。
恵美は起き上がろうとするが、しかし、少しでも体を動かそうとすると全身の筋肉が引き攣り、太ももから脳にかけて激痛が走った。
その針を抜かなければ動けないと思い、恐る恐る太ももに指を伸ばした。
針の刺さった場所を指探りしていると、乾いた血がパサパサと剥がれた。親指大にポコンっと腫れた部分に針の頭を見つけ、そこに爪先を引っ掻けた。針が動く度に激痛が走ったが、それをゆっくりと引き抜くと、それまでの激痛が嘘のように消えた。
しかし、右足は痺れていた。ベッドから立とうとすると、太股が雑巾のように搾られるような鈍い痛みが走り、足の力が抜けた。
恵美は昭和の回転ベッドに腰掛けたまま、(逃げるなら今だ)と、下唇を噛んでいた。
しかし、もう一度あのスリルを感じたかった。ここで逃げなければ殺されてしまうとわかっていながらも、それでもあの巨大な肉棒で激しく膣をほじくられ、全身に針を叩き込まれたいと思っていた。
焦燥感に駆られながらゆっくりと立ち上がると、右足を引きずりながらドアに向かった。
逃げるなら今だ……と、何度も呟きながらドアを開け、静まり返った廊下を恐る恐る覗いた。
廊下に顔を出した瞬間、いきなり目が合った。
すぐ目の前に立っていた。
ハァハァと肩で息をしながら、血走った目で恵美を睨み、「この部屋だったのか」と低い声で呟いた。
そこに立っていたのは大磯ではなかった。狐のように引き攣った顔で恵美を睨んでいたのは、殺された沙織の父であり、サラマンドラの店長でもある原山だった。
原山は恵美を突き飛ばすと、「沙織はどこだ!」と怒鳴りながら部屋に入って来た。原山の左手にはポリタンクが握られ、右手には鋭く光る出刃包丁が握られていた。
誰もいない部屋を必死に見回しながら、「先生はどこだ!」と恵美に出刃包丁を突き付けた。顎をガクガクと震わせながら「さっき出て行きました」と答えると、原山は、今にも泣き出しそうな感情のこもった声で「沙織は!」と叫んだ。
恵美は血まみれの回転ベッドに振り返った。
すかさず原山は回転ベッドに駆け寄った。そしてベッドと壁の隙間に蹴り落されていた沙織の死体を発見すると、両手で顔を塞ぎながら「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」と断末魔のような悲鳴を上げたのだった。
原山は、目玉が飛び出そうなほどに目を開きながら沙織を見ていた。両手に持っていたポリタンクと包丁をボトっと床に落すと、震える両手を広げ、「あぁぁ! あぁぁ!」と甲高い声を漏らしながら崩れ落ちた。
愛する我が子の無惨な拷問死体を目の当たりにした原山は、もはや尋常ではなかった。この世のものとは思えぬ形相で下唇を噛み千切り、大量の血を顎から喉へとダラダラ垂らしながら狂犬のように唸っていた。
異常な原山を見て咄嗟に危険を察した恵美は、全裸のままそこから逃げ出そうとしドアノブを握った。すると、突然背後で原山が歌い出した。
「そーだ、恐れないでみーんなの為に、愛と勇気だけがとーもだちさー」
そんな歌声と共に、ビシャ、ビシャ、という音が聞こえてきた。恵美はドアノブを握ったまま振り返った、
原山は両手に持ったポリタンクを上下に振り、沙織の死体にガソリンらしき液体をかけていた。同じ歌詞ばかりを繰り返しながら、回転ベッドやカーテンにもそれを撒き散らし、挙げ句の果てには、まるでシャワーのようにして、自分の頭にそれをぶっかけていた。
部屋中に危ない匂いがメラメラと漂い始めた。
原山は、空になったポリタンクを放り投げると、出刃包丁を片手にガソリンで湿ったベッドの上に飛び乗った。そして枕元にあるスイッチ盤を出刃包丁の柄でガンガンと叩き始めた。
ガタンっという振動と共に回転ベッドが回り始め、天井の豆電球がチカチカと点滅し始めた。それと同時に有線のスイッチが入ったのか、天井に吊り下げられていた古びたスピーカーから大音量の曲が鳴り響いた。
その曲は、ちあきなおみの『喝采』という、かなり古い歌謡曲だった。曲に合わせてベッドで正座する原山が回っていた。
原山はワイシャツのボタンを引き千切ると、タプタプに弛んだ腹を曝け出し、そこに出刃包丁の先を突き付けた。
とたんに原山の喉から「ひぃーひぃー」と猛禽類のような情けない声が漏れた。が、しかし、原山はいきなりギョッと目を見開くと、刃先を左の脇腹に突き刺した。
音も無いまま包丁は腹の中に滑り込んだ。原山は唇を真一文字に結びながら「うぐぅぅぅ」と唸り、そのまま一気に右の脇腹までかっ捌いた。
まるで水風船を踏み潰したかのように大量の血がブッと噴き出した。それが無数の点となって、辺り一面に赤い水玉模様を作った。
腹は見事にパックリと開いていた。赤黒い腹の中からゴボゴボと内臓が零れ、それが正座する原山の太ももに溢れた。
一瞬、正気に戻ったのか、原山は「あぁぁ……」と唸りながら恵美の顔を見上げた。その情けない表情には、やらなきゃ良かった、という後悔がはっきりと浮かんでいた。
恵美の顔を見つめたまま、無言で涙をポロポロと流している原山に、恵美は「火!」と叫び、正座する原山の足下に転がっている百円ライターを指差した。
それはいわゆる『介錯』の意味が込められていた。恵美は、一刻も早く原山を楽にしてやりたいと思ったのだ。
原山は二度頷くと、震える手で百円ライターを握った。しかし、それを何度か擦るが、血で滑っているのかなかなか火はつかなかった。
そうしながらも原山は、いきなりゴボッとゲロを吐いた。血が混じったそのゲロの中には、お昼に待機所で食べた『サッポロ一番塩ラーメン』の麺が、消化されずに混じっていた。
それを見ながら恵美は、あのとき原山は、まさかそれが最後の食事になるとは思ってもいなかっただろうと思った。
そう思うと、恵美は急に悲しくなった。わんわんと泣きながら、ソファーテーブルの灰皿の中にポツンと置いてあったラブホテルのマッチを手に取り、その一本をシュッと擦った。
回転ベッドはクルクルと回っていた。
内臓を飛び出した原山もクルクルと回っていた。
火のついたマッチを回転ベッドに向かって投げると、同時に、ドン! という音が響き、重たい熱風が恵美を包み込んだ。
真っ黒な煙が竜巻のような渦を作り、みるみる天井を真っ暗にしていった。
真っ赤に燃え盛る炎の中、クルクルと回る回転ベッドの上で原山が悲しそうに踊っていた。
そんな壮絶なシーンとは不釣り合いに、ちあきなおみが熱唱していた。
あれは三年前、止める、あなた、駅に残し。
その悲しい歌声は、黒煙に包まれながら天井の隅で響いていたのだった。
(つづく)
《←目次》《15話へ→》
スリル15・取調室
2013/06/13 Thu 00:02
「どうせ死刑なんだからさ、もうどうなってもいいじゃないか……ほら、もっと足開いて……」
煙草臭い息が恵美の頬を掠めた。それは貪よりと生温かく、まるで蛇が這っているかのように薄気味悪かった。
「あららら、もうこんなに濡れてるじゃん。ほら、ちょっと触っただけでも指がヌルヌルと吸い込まれていくよ……」
ヌメった壷の中に潜り込んだ男の指は、まるで捕獲されたウナギのようにうねうねと動き始めた。
恵美は小さく唇を開いた。そこからほんの少しだけ息を漏らしながら、目の前に広げられた三日前の朝刊を何度も何度も読み返していたのだった。
—————————————————————————————————
8日午後4時30分頃、浦川町にあるラブホテル『エリザベス浦川』が全焼し、焼け跡から二人の男女の惨殺死体が発見された事件で、三ツ和警察署は、現場にいた女を現住建造物放火と殺人の疑いで逮捕した。
逮捕されたのは、八隅町に住む無店舗型風俗店『サラマンドラ』従業員、加藤恵美容疑者(25)で、三ツ和警察署によると、加藤容疑者は現場近くの路上で全裸で踞っており、保護しようとした消防署員に対し、「私が火をつけました、私が二人を殺しました」と容疑を認めたため、駆けつけた警察官に逮捕された。
焼死体で発見された二人の男女には、それぞれ拷問をされたような痕が残っており、損傷が激しい事からまだ身元はわかっていないが、調べに対し加藤容疑者は、殺害した二人は全く知らない人などと答えており、動機についても「今は何も話したくない」と黙秘していると言う。
このラブホテルは、昭和62年にも風俗嬢が変質者に殺害されるという猟奇事件が起きており、犯人が特定されないまま平成24年に捜査が打ち切られていた。
—————————————————————————————————
恵美は、今までとは全く違う新たなスリルに脳を痺れさせていた。
放火殺人。しかも二名を拷問の上、殺害。
昨夜遅くに面会にやって来た当番弁護士は、眠そうな目を擦りながら「罪を認めたら確実に死刑ですね」と呟き、大型犬のような大きなあくびをした。
死刑。
そのシーンを想像しただけで恵美のクリトリスがジンジンと疼いた。
法廷で死刑を宣告される自分。拘置所で刑務官の足音に脅えながら執行を待つ自分。そして、目隠しされ首に真っ白なロープを巻いたまま、いつ足下の床がバッタンと開くかと震えている自分。その、どの自分を想像してみても凄まじいスリルに襲われ、恵美は今までにない異常な興奮に包まれた。
そんな恵美の異常興奮をいち早く見破ったのは、五十半ばのベテラン刑事だった。
逮捕直後から完全黙秘している恵美は、薄暗い取調室で、一日中ジッと項垂れたままだった。そんな恵美を取り調べていた刑事は、最初のうちは自供させようと必死になっていたが、しかし、二日目の検事調べが終わり、十日間の勾留が決まると急に態度をがらりと変えた。
「あんたが働いてたデリヘル、変態専門らしいね」
そう苦笑いを浮かべる刑事の表情には、それまでの必死さは消え去り、どこか余裕の太々しさが浮かんでいた。
「あんたほどの美人だったら、普通のデリでも雇ってくれるでしょ」
刑事はそう笑いながら事務椅子をゆっくりと立ち上がると、その事務椅子を、恵美が座るパイプ椅子の真横に並べた。
恵美が座るパイプ椅子は床にビス止めされていた。椅子のパイプ部分には、恵美の腰にぶら下がっている手錠の青い紐がぐるぐると巻き付けられ、恵美は立ち上がる事すらできなくなっていた。
そんな拘束状態の中、刑事は、「やっぱ、あんたも変態かね……」と囁き、恵美の太ももを摩り始めた。
恵美が黙ったままでいると、刑事の手はジャージのゴムの中に潜り込み、下着の上から股間をスリスリと撫で始めた。
そのジャージは留置場から借りた『官物』だった。逮捕当時、恵美は全裸だったため、下着もジャージもタオルも歯ブラシも、全て官物を借りていた。
刑事は、横目で恵美の表情をジッと確認しながら、もう片方の手でペニスを摘まみ出し、その真っ赤に腫れ上がった亀頭を恵美の右腕にスリスリと擦り付けて来た。
「あんた、二人も殺しちゃってるんだから、もう二度とコレに触れなくなるかも知れないよ……」
そう話す刑事の股間を、恵美は乾いた喉にゴクリと唾を押し込みながらソッと横目で見た。
その真っ赤な亀頭から見て、明らかに仮性包茎だった。パンパンにエラを張ったカリ首の裏には、できそこないの素麺のような白い恥垢がグルリと巻き付き、ベロリと剥かれた皮の裏側は、汗と小便の残り汁が混ざった汁でギトギトに濡れ輝いていた。
恵美は無意識のうちに上半身を右側に傾けた。すると刑事は、嬉しそうにニヤリと笑いながら、そんな恵美の後頭部にそっと手をあて、そのまま恵美の顔を自分の股間に押し付けたのだった。
そのヌルヌルとする臭汁が唇に触れた瞬間、おもわず恵美は「うっ」と眉間を顰めてしまった。
しかし、それでも恵美はそこに舌を絡ませ、恥垢が溜まったカリ首に舌を回転させながらそれを優しく銜え込んだ。
そのまま、二、三度、顔を上下させると、早くも刑事は「ダメダメ」と呟いた。そして、股間から恵美の顔をゆっくりと離しながら、「さすが変態専門のプロだけあるね、もう出ちゃいそうだよ」と笑うと、恵美の肩を優しく抱きながら、「どうせ死刑なんだからさ……」と囁いたのだった。
刑事の煙草臭い息が頬を掠めた。
言われるがままに股を開くと、刑事の指はすぐさまクロッチを掻き分け、既にヌルヌルになっている恵美の陰部を捕らえた。
刑事は、目をギラギラさせながら「もうこんなに濡れてるじゃん……」と喜んだ。刑事の手が潜り込んだジャージの股間は歪に膨らみ、まるで小動物が潜んでいるかのようにモゾモゾと蠢いていた。
刑事は、穴の中を指で滅茶苦茶に掻き回しながら、「こんな綺麗な女を、死刑にしてしまうのは勿体ないねぇ」と呟き、静まり返った取調室に、くっちゃ、くっちゃ、と卑猥な音を立てた。
恵美は、そんな野蛮な愛撫に膣筋をキュンキュンとさせながらも、机の上に広げられていた三日前の朝刊を見つめていた。その記事に書かれている、『昭和62年にも風俗嬢が変質者に殺害されるという猟奇事件が起きており、犯人が特定されないまま——』という部分を、何度も読み返しながら、ふと、あの悪魔のような大磯の笑顔を思い出していた。
恵美は横目でソッと刑事を見た。
「昭和62年にあのホテルで起きた事件の犯人は……わかっていないんですか……」
そう聞くと、刑事は初めて喋った恵美に驚きながらも、「ふっ」っと鼻で笑った。
「犯人は、最初からわかってたさ……わざと二十五年間寝かせて時効にしたんだよ……」
「どうして?」
恵美が振り返ると、刑事は恵美の顔を真正面から見つめながら、「綺麗な目だな」と優しく笑った。
刑事は穴からヌルっと指を抜くと、そのドロドロに濡れた指でパイプ椅子に巻き付けられた手錠の紐を緩め始めた。そして、そこに恵美を立たせ、「取りあえず、中出しさせてよ」と、ジャージを足首まで下ろすと、既にダラリと口を開いている穴に亀頭を突き付けた。
コリコリと硬い肉棒が、ヌルヌルの筒の中にツルンっと滑り込んで来た。
机に両手を付いたまま「あんっ」と腰を撓らせると、刑事はハァハァと呻きながら耳元に囁いた。
「あの化け物をパクれない事くらい、あんたが一番よく知ってるだろ」
その瞬間、恵美の頭に、大磯のあの狂気に満ちた目が、鮮明に浮かんだのだった。
(つづく)
《←目次》《16話へ→》
煙草臭い息が恵美の頬を掠めた。それは貪よりと生温かく、まるで蛇が這っているかのように薄気味悪かった。
「あららら、もうこんなに濡れてるじゃん。ほら、ちょっと触っただけでも指がヌルヌルと吸い込まれていくよ……」
ヌメった壷の中に潜り込んだ男の指は、まるで捕獲されたウナギのようにうねうねと動き始めた。
恵美は小さく唇を開いた。そこからほんの少しだけ息を漏らしながら、目の前に広げられた三日前の朝刊を何度も何度も読み返していたのだった。
—————————————————————————————————
8日午後4時30分頃、浦川町にあるラブホテル『エリザベス浦川』が全焼し、焼け跡から二人の男女の惨殺死体が発見された事件で、三ツ和警察署は、現場にいた女を現住建造物放火と殺人の疑いで逮捕した。
逮捕されたのは、八隅町に住む無店舗型風俗店『サラマンドラ』従業員、加藤恵美容疑者(25)で、三ツ和警察署によると、加藤容疑者は現場近くの路上で全裸で踞っており、保護しようとした消防署員に対し、「私が火をつけました、私が二人を殺しました」と容疑を認めたため、駆けつけた警察官に逮捕された。
焼死体で発見された二人の男女には、それぞれ拷問をされたような痕が残っており、損傷が激しい事からまだ身元はわかっていないが、調べに対し加藤容疑者は、殺害した二人は全く知らない人などと答えており、動機についても「今は何も話したくない」と黙秘していると言う。
このラブホテルは、昭和62年にも風俗嬢が変質者に殺害されるという猟奇事件が起きており、犯人が特定されないまま平成24年に捜査が打ち切られていた。
—————————————————————————————————
恵美は、今までとは全く違う新たなスリルに脳を痺れさせていた。
放火殺人。しかも二名を拷問の上、殺害。
昨夜遅くに面会にやって来た当番弁護士は、眠そうな目を擦りながら「罪を認めたら確実に死刑ですね」と呟き、大型犬のような大きなあくびをした。
死刑。
そのシーンを想像しただけで恵美のクリトリスがジンジンと疼いた。
法廷で死刑を宣告される自分。拘置所で刑務官の足音に脅えながら執行を待つ自分。そして、目隠しされ首に真っ白なロープを巻いたまま、いつ足下の床がバッタンと開くかと震えている自分。その、どの自分を想像してみても凄まじいスリルに襲われ、恵美は今までにない異常な興奮に包まれた。
そんな恵美の異常興奮をいち早く見破ったのは、五十半ばのベテラン刑事だった。
逮捕直後から完全黙秘している恵美は、薄暗い取調室で、一日中ジッと項垂れたままだった。そんな恵美を取り調べていた刑事は、最初のうちは自供させようと必死になっていたが、しかし、二日目の検事調べが終わり、十日間の勾留が決まると急に態度をがらりと変えた。
「あんたが働いてたデリヘル、変態専門らしいね」
そう苦笑いを浮かべる刑事の表情には、それまでの必死さは消え去り、どこか余裕の太々しさが浮かんでいた。
「あんたほどの美人だったら、普通のデリでも雇ってくれるでしょ」
刑事はそう笑いながら事務椅子をゆっくりと立ち上がると、その事務椅子を、恵美が座るパイプ椅子の真横に並べた。
恵美が座るパイプ椅子は床にビス止めされていた。椅子のパイプ部分には、恵美の腰にぶら下がっている手錠の青い紐がぐるぐると巻き付けられ、恵美は立ち上がる事すらできなくなっていた。
そんな拘束状態の中、刑事は、「やっぱ、あんたも変態かね……」と囁き、恵美の太ももを摩り始めた。
恵美が黙ったままでいると、刑事の手はジャージのゴムの中に潜り込み、下着の上から股間をスリスリと撫で始めた。
そのジャージは留置場から借りた『官物』だった。逮捕当時、恵美は全裸だったため、下着もジャージもタオルも歯ブラシも、全て官物を借りていた。
刑事は、横目で恵美の表情をジッと確認しながら、もう片方の手でペニスを摘まみ出し、その真っ赤に腫れ上がった亀頭を恵美の右腕にスリスリと擦り付けて来た。
「あんた、二人も殺しちゃってるんだから、もう二度とコレに触れなくなるかも知れないよ……」
そう話す刑事の股間を、恵美は乾いた喉にゴクリと唾を押し込みながらソッと横目で見た。
その真っ赤な亀頭から見て、明らかに仮性包茎だった。パンパンにエラを張ったカリ首の裏には、できそこないの素麺のような白い恥垢がグルリと巻き付き、ベロリと剥かれた皮の裏側は、汗と小便の残り汁が混ざった汁でギトギトに濡れ輝いていた。
恵美は無意識のうちに上半身を右側に傾けた。すると刑事は、嬉しそうにニヤリと笑いながら、そんな恵美の後頭部にそっと手をあて、そのまま恵美の顔を自分の股間に押し付けたのだった。
そのヌルヌルとする臭汁が唇に触れた瞬間、おもわず恵美は「うっ」と眉間を顰めてしまった。
しかし、それでも恵美はそこに舌を絡ませ、恥垢が溜まったカリ首に舌を回転させながらそれを優しく銜え込んだ。
そのまま、二、三度、顔を上下させると、早くも刑事は「ダメダメ」と呟いた。そして、股間から恵美の顔をゆっくりと離しながら、「さすが変態専門のプロだけあるね、もう出ちゃいそうだよ」と笑うと、恵美の肩を優しく抱きながら、「どうせ死刑なんだからさ……」と囁いたのだった。
刑事の煙草臭い息が頬を掠めた。
言われるがままに股を開くと、刑事の指はすぐさまクロッチを掻き分け、既にヌルヌルになっている恵美の陰部を捕らえた。
刑事は、目をギラギラさせながら「もうこんなに濡れてるじゃん……」と喜んだ。刑事の手が潜り込んだジャージの股間は歪に膨らみ、まるで小動物が潜んでいるかのようにモゾモゾと蠢いていた。
刑事は、穴の中を指で滅茶苦茶に掻き回しながら、「こんな綺麗な女を、死刑にしてしまうのは勿体ないねぇ」と呟き、静まり返った取調室に、くっちゃ、くっちゃ、と卑猥な音を立てた。
恵美は、そんな野蛮な愛撫に膣筋をキュンキュンとさせながらも、机の上に広げられていた三日前の朝刊を見つめていた。その記事に書かれている、『昭和62年にも風俗嬢が変質者に殺害されるという猟奇事件が起きており、犯人が特定されないまま——』という部分を、何度も読み返しながら、ふと、あの悪魔のような大磯の笑顔を思い出していた。
恵美は横目でソッと刑事を見た。
「昭和62年にあのホテルで起きた事件の犯人は……わかっていないんですか……」
そう聞くと、刑事は初めて喋った恵美に驚きながらも、「ふっ」っと鼻で笑った。
「犯人は、最初からわかってたさ……わざと二十五年間寝かせて時効にしたんだよ……」
「どうして?」
恵美が振り返ると、刑事は恵美の顔を真正面から見つめながら、「綺麗な目だな」と優しく笑った。
刑事は穴からヌルっと指を抜くと、そのドロドロに濡れた指でパイプ椅子に巻き付けられた手錠の紐を緩め始めた。そして、そこに恵美を立たせ、「取りあえず、中出しさせてよ」と、ジャージを足首まで下ろすと、既にダラリと口を開いている穴に亀頭を突き付けた。
コリコリと硬い肉棒が、ヌルヌルの筒の中にツルンっと滑り込んで来た。
机に両手を付いたまま「あんっ」と腰を撓らせると、刑事はハァハァと呻きながら耳元に囁いた。
「あの化け物をパクれない事くらい、あんたが一番よく知ってるだろ」
その瞬間、恵美の頭に、大磯のあの狂気に満ちた目が、鮮明に浮かんだのだった。
(つづく)
《←目次》《16話へ→》
スリル16・猥褻監獄
2013/06/13 Thu 00:02
留置場の真っ黒な鉄格子のドアには、頑丈な菱形の鉄網が張られ、ドアの下部には被疑者のプライバシーを守るための乳白半透明のアクリル板が張られていた。
しかし、恵美が入れられている部屋には、その乳白半透明のアクリル板が付いていなかった。しかもトイレには囲いが無く、床に和式便器が埋め込まれ、剥き出しにされていた。
そこは保護房と呼ばれる特別室だった。俗に『トラ箱』と呼ばれており、主に泥酔者や暴れる者たちを隔離する為の部屋だった。
なぜ恵美がそんな部屋に入れられたのかというと、この老朽化した小さな警察署には、女区と呼ばれる女性専用の留置場が設備されていなかったからだった。
この警察署では、女性や少年が逮捕された場合、成人男性被疑者と隔離する為にひとまずこのトラ箱に入れられると決まっていた。そして、送検後すぐに拘置所の女区に移監されるのだが、しかし恵美の場合は違っていた。
それは、恵美の事件が、二名を殺害した放火殺人という重罪であり、まして、完全黙秘をして取り調べには一切応じようとしていないからであり、だから送検後も、恵美はこの劣悪なトラ箱に入れられたまま、取り調べを続けられていたのだ。
しかし、そんな酷い扱いを受けても、恵美は全く堪えていなかった。むしろ、この家畜のような生活に異様なスリルを覚え、愉しんでいるようでもあった。
そんな恵美を監視するのは婦人警官だった。しかし五時を過ぎると婦人警官はさっさと帰ってしまい、それ以降の恵美の監視は当直の男性看守に引き継がれた。
この警察署は、留置場の規模が小さいという事から、当直勤務の看守は二人だった。一人は常に監視台にいたが、一人は当直室で仮眠を取っており、九時の消灯時間から六時間後に交代していた。
そんな当直勤務の看守の中に、常に顔色の悪い二十代の弱々しい青年がいた。彼はいつも先輩看守のパシリに使われ、時には、先輩達から叩かれたり蹴飛ばされたりするといったイジメを受けていた。
いかにもメンタル面の弱そうな彼は、先輩看守達に何をされても我慢していたが、しかしその裏では、その捌け口を留置場の中の被疑者に向けていた。
と言っても、気の弱い彼は、強面な粗暴犯や暴力団員は避け、ホームレスや老人や知的障害者といった被疑者ばかりを狙った。そんな弱者にだけ陰湿な意地悪を繰り返していたのだった。
そんな彼にとって、隔離部屋に閉じ込められている恵美は最高の捌け口だった。恵美は、重罪事件を起こしていながらも完全黙秘しているという、いわゆる警察の敵なのである。
だから彼は、そんな恵美を虐める事は『正義』であると信じ込んでいた。害鳥駆除という大義名分のもとに鳩を虐待する異常者のように、彼は恵美を虐待する事を勝手に正当化していたのだった。
恵美は、これまでに何度も彼にお茶をかけられていた。お茶や弁当は、鉄格子の隅の食器孔と呼ばれる小さな扉から出し入れされるのだが、彼は、いつもそこからお茶を手渡す際、わざと紙コップを傾けては、恵美の手に熱いお茶をかけていた。
しかもそのお茶は、異様なアンモニア臭が漂っていた。紙コップの縁にはいつもビールの泡のようなものが溜まっており、明らかに小便が混入されているとわかった。
しかし、それでも恵美は、毎回お茶をかけられる事に文句一つ言わず、その小便入りのお茶も黙って全部飲み干した。
そんな恵美をロッカーの影からソッと覗き見するのが、唯一彼の、先輩看守達から受けるストレスの捌け口となっていたのだった。
しかしそれは、ある事が切っ掛けで角度を変えた。ある時を境に彼は、恵美をストレスの捌け口とするのではなく、性欲の捌け口へと変えるようになったのだ。
それは、恵美がこのトラ箱で生活するようになって四日目の夜だった。
その晩、恵美は、いつも二十分おきに巡視する彼の足音に耳を傾けていた。その足音が聞こえたらすぐに実行できるよう、既に布団の中でジャージのズボンと下着を脱いでいた。
饐えた臭いのする布団に包まりながら恵美は震えていた。その瞬間を想像すると激しい恐怖に襲われたが、その一方で膣の奥からいやらしい汁がジワジワと溢れて来た。
暫くすると、スニーカーのゴムがキュッキュッと擦れる足音が聞こえて来た。それはみるみる恵美の部屋へと近付き、そのまま何事も無く普通に通り過ぎて行ってしまった。
恵美はまだ実行に移さなかった。実行するのは、彼が正面通路ではなく裏通路を通過する時だと決めていた。
その裏通路というのは、部屋の奥の格子窓の向こう側にある通路だった。
つまり、部屋が縦長である事から、正面と裏から監視できるようになっていたのだ。
彼のスニーカーが、正面通路の突き当たりをキュッと回る音が聞こえた。それと同時に恵美は布団から抜け出し、下半身を剥き出したまま、奥の鉄格子の窓へと向かった。
その窓にはガラスは無く、鉄格子が嵌め込まれているだけだった。部屋の通気を考えてか、その鉄格子は縦スリット窓のように床まで伸びていた。
そんな鉄格子のすぐ前には和式便器があった。一般の房では便器は壁で囲まれ、何の変哲も無い普通のトイレだったが、しかしこのトラ箱だけは、和式便器が剥き出しにされていた。恵美の場合、女性という事で、便器の横に一メートルほどの仕切り板が置かれていたが、しかし、それはあくまでも正面通路から目隠しされているだけであり、裏通路からは、便器の底の汚物までもが丸見えになってしまうのだった。
そんな人権を無視した和式便器に、下半身裸の恵美は素早くしゃがんだ。おもいきり足を開き、黒々とした股間を突き出し、息を潜めた。
薄暗い裏通路の奥からキュッキュッと響くゴム音が近付いて来た。そしてそれは、恵美の目論み通り、便器にしゃがむ恵美の真横でピタっと止まった。
鉄格子の向こう側に安物のスニーカーが見えた。それを確認するなり恵美は一気に放尿した。
黄ばんだ便器にビシャビシャと尿が飛び散った。それと同時に、項垂れていた恵美の視界からスニーカーがソッと消えた。
格子の向こうを横目で見ると、通路の床に伏せながら恵美の股間を覗いている彼の姿が見え、背筋にゾゾっと寒気が走った。
放尿が終わると、尿がポタポタと垂れる陰部に指を這わせた。指で割れ目を開き、膣筋に力を入れてその内部を剥き出しにすると、中に溜まっていた透明の液体が、ニトッ……と糸を引いて便器の底に垂れた。
鉄格子の向こう側からギラギラする視線を感じながら、恵美はその赤く輝く毒々しい穴の中に指を滑り込ませた。そしてそこにグチャグチャと卑猥な音を響かせた。
脳を突き抜けるような快感が走った。思わず「はんっ」と天井に顔を向けると、廊下に這った彼の体がユッサユッサと蠢いているのがわかった。
恵美は視線を彼に向けた。堂々と彼を見つめながらオナニーをした。
彼も、どうせこの女は死刑になるキチガイだ、とでも思ったのか、上下に動くペニスを堂々と見せつけてきた。
恵美は、しゃがんだまま鉄格子に右足を掛けた。まるで雄犬が小便をするようなポーズになると、クパッと開いた膣を三本の指でドロドロと掻き回し、強烈なスリルに心臓を鷲掴みにされながら絶頂に達したのだった。
それとほぼ同時に、廊下の冷たい床に彼の精液がパタパタと飛び散った。
その晩からだった。
彼は恵美をストレスの捌け口としてではなく、性欲の捌け口として見るようになったのだった。
(つづく)
《←目次》《17話へ→》
しかし、恵美が入れられている部屋には、その乳白半透明のアクリル板が付いていなかった。しかもトイレには囲いが無く、床に和式便器が埋め込まれ、剥き出しにされていた。
そこは保護房と呼ばれる特別室だった。俗に『トラ箱』と呼ばれており、主に泥酔者や暴れる者たちを隔離する為の部屋だった。
なぜ恵美がそんな部屋に入れられたのかというと、この老朽化した小さな警察署には、女区と呼ばれる女性専用の留置場が設備されていなかったからだった。
この警察署では、女性や少年が逮捕された場合、成人男性被疑者と隔離する為にひとまずこのトラ箱に入れられると決まっていた。そして、送検後すぐに拘置所の女区に移監されるのだが、しかし恵美の場合は違っていた。
それは、恵美の事件が、二名を殺害した放火殺人という重罪であり、まして、完全黙秘をして取り調べには一切応じようとしていないからであり、だから送検後も、恵美はこの劣悪なトラ箱に入れられたまま、取り調べを続けられていたのだ。
しかし、そんな酷い扱いを受けても、恵美は全く堪えていなかった。むしろ、この家畜のような生活に異様なスリルを覚え、愉しんでいるようでもあった。
そんな恵美を監視するのは婦人警官だった。しかし五時を過ぎると婦人警官はさっさと帰ってしまい、それ以降の恵美の監視は当直の男性看守に引き継がれた。
この警察署は、留置場の規模が小さいという事から、当直勤務の看守は二人だった。一人は常に監視台にいたが、一人は当直室で仮眠を取っており、九時の消灯時間から六時間後に交代していた。
そんな当直勤務の看守の中に、常に顔色の悪い二十代の弱々しい青年がいた。彼はいつも先輩看守のパシリに使われ、時には、先輩達から叩かれたり蹴飛ばされたりするといったイジメを受けていた。
いかにもメンタル面の弱そうな彼は、先輩看守達に何をされても我慢していたが、しかしその裏では、その捌け口を留置場の中の被疑者に向けていた。
と言っても、気の弱い彼は、強面な粗暴犯や暴力団員は避け、ホームレスや老人や知的障害者といった被疑者ばかりを狙った。そんな弱者にだけ陰湿な意地悪を繰り返していたのだった。
そんな彼にとって、隔離部屋に閉じ込められている恵美は最高の捌け口だった。恵美は、重罪事件を起こしていながらも完全黙秘しているという、いわゆる警察の敵なのである。
だから彼は、そんな恵美を虐める事は『正義』であると信じ込んでいた。害鳥駆除という大義名分のもとに鳩を虐待する異常者のように、彼は恵美を虐待する事を勝手に正当化していたのだった。
恵美は、これまでに何度も彼にお茶をかけられていた。お茶や弁当は、鉄格子の隅の食器孔と呼ばれる小さな扉から出し入れされるのだが、彼は、いつもそこからお茶を手渡す際、わざと紙コップを傾けては、恵美の手に熱いお茶をかけていた。
しかもそのお茶は、異様なアンモニア臭が漂っていた。紙コップの縁にはいつもビールの泡のようなものが溜まっており、明らかに小便が混入されているとわかった。
しかし、それでも恵美は、毎回お茶をかけられる事に文句一つ言わず、その小便入りのお茶も黙って全部飲み干した。
そんな恵美をロッカーの影からソッと覗き見するのが、唯一彼の、先輩看守達から受けるストレスの捌け口となっていたのだった。
しかしそれは、ある事が切っ掛けで角度を変えた。ある時を境に彼は、恵美をストレスの捌け口とするのではなく、性欲の捌け口へと変えるようになったのだ。
それは、恵美がこのトラ箱で生活するようになって四日目の夜だった。
その晩、恵美は、いつも二十分おきに巡視する彼の足音に耳を傾けていた。その足音が聞こえたらすぐに実行できるよう、既に布団の中でジャージのズボンと下着を脱いでいた。
饐えた臭いのする布団に包まりながら恵美は震えていた。その瞬間を想像すると激しい恐怖に襲われたが、その一方で膣の奥からいやらしい汁がジワジワと溢れて来た。
暫くすると、スニーカーのゴムがキュッキュッと擦れる足音が聞こえて来た。それはみるみる恵美の部屋へと近付き、そのまま何事も無く普通に通り過ぎて行ってしまった。
恵美はまだ実行に移さなかった。実行するのは、彼が正面通路ではなく裏通路を通過する時だと決めていた。
その裏通路というのは、部屋の奥の格子窓の向こう側にある通路だった。
つまり、部屋が縦長である事から、正面と裏から監視できるようになっていたのだ。
彼のスニーカーが、正面通路の突き当たりをキュッと回る音が聞こえた。それと同時に恵美は布団から抜け出し、下半身を剥き出したまま、奥の鉄格子の窓へと向かった。
その窓にはガラスは無く、鉄格子が嵌め込まれているだけだった。部屋の通気を考えてか、その鉄格子は縦スリット窓のように床まで伸びていた。
そんな鉄格子のすぐ前には和式便器があった。一般の房では便器は壁で囲まれ、何の変哲も無い普通のトイレだったが、しかしこのトラ箱だけは、和式便器が剥き出しにされていた。恵美の場合、女性という事で、便器の横に一メートルほどの仕切り板が置かれていたが、しかし、それはあくまでも正面通路から目隠しされているだけであり、裏通路からは、便器の底の汚物までもが丸見えになってしまうのだった。
そんな人権を無視した和式便器に、下半身裸の恵美は素早くしゃがんだ。おもいきり足を開き、黒々とした股間を突き出し、息を潜めた。
薄暗い裏通路の奥からキュッキュッと響くゴム音が近付いて来た。そしてそれは、恵美の目論み通り、便器にしゃがむ恵美の真横でピタっと止まった。
鉄格子の向こう側に安物のスニーカーが見えた。それを確認するなり恵美は一気に放尿した。
黄ばんだ便器にビシャビシャと尿が飛び散った。それと同時に、項垂れていた恵美の視界からスニーカーがソッと消えた。
格子の向こうを横目で見ると、通路の床に伏せながら恵美の股間を覗いている彼の姿が見え、背筋にゾゾっと寒気が走った。
放尿が終わると、尿がポタポタと垂れる陰部に指を這わせた。指で割れ目を開き、膣筋に力を入れてその内部を剥き出しにすると、中に溜まっていた透明の液体が、ニトッ……と糸を引いて便器の底に垂れた。
鉄格子の向こう側からギラギラする視線を感じながら、恵美はその赤く輝く毒々しい穴の中に指を滑り込ませた。そしてそこにグチャグチャと卑猥な音を響かせた。
脳を突き抜けるような快感が走った。思わず「はんっ」と天井に顔を向けると、廊下に這った彼の体がユッサユッサと蠢いているのがわかった。
恵美は視線を彼に向けた。堂々と彼を見つめながらオナニーをした。
彼も、どうせこの女は死刑になるキチガイだ、とでも思ったのか、上下に動くペニスを堂々と見せつけてきた。
恵美は、しゃがんだまま鉄格子に右足を掛けた。まるで雄犬が小便をするようなポーズになると、クパッと開いた膣を三本の指でドロドロと掻き回し、強烈なスリルに心臓を鷲掴みにされながら絶頂に達したのだった。
それとほぼ同時に、廊下の冷たい床に彼の精液がパタパタと飛び散った。
その晩からだった。
彼は恵美をストレスの捌け口としてではなく、性欲の捌け口として見るようになったのだった。
(つづく)
《←目次》《17話へ→》
スリル17・新たなるスリル
2013/06/13 Thu 00:02
その日も彼は、先輩看守に虐められていた。
被疑者たちに貸し出される官本の整理がされていないと何癖をつけられ、留置場の隅でスクワットを一〇〇回やらされていた。
その晩、当直の彼はいつものように恵美の房にやって来た。
最初のうちは、鉄格子越しにオナニーを見せ合う程度だったが、しかしそのうちエスカレートし、彼は鉄格子の隙間からペニスを突き出すようになっていた。
恵美は、冷たい鉄格子に額と顎を押し付けながら、彼のペニスをしゃぶった。口内で弾ける生温かい精液を一滴残らず飲み干したりしていた。
しかし、セックスは無理だった。何度か、鉄格子にお尻を押し付けては彼のペニスを受け入れようとしたが、しかし、彼のペニスがあまりにも小さ過ぎる事から、かろうじて先っぽだけがヌルヌルとピストンするだけだった。
それでも彼はちゃっかりと射精した。亀頭しか挿入されていなかったが、彼は大量の精液を恵美の穴の中に注入していたのだった。
そんな彼との不完全なセックスを繰り返していた中、恵美は現住建造物放火と殺人で起訴された。
被疑者から被告となった恵美は、着々と死刑台に近付いていた。
恵美は、沙織を惨殺した大磯の罪を被り、放火して自殺した原山の罪まで被って死刑になる事に後悔していなかった。恐怖も怒りも感じていなかったし、むしろ、死刑という究極のSM行為にスリルを感じ、その瞬間を今か今かと待ちわびているほどだった。
しかし、そんな恵美の感情は、その日の取調室で刑事から聞かされた話しによって大きく急変した。
「恐らく判決は死刑だろう。でも心配するな。お前は死刑台には行かないよ。お前を犯人だとする物的証拠は何も無いんだ。お前があの親子を殺す理由も動機も不明だし、それに何といっても、お前のような華奢な女が、一人であれだけの殺人ができるかという点が非常に疑わしい。だから心配するな。お前は、死刑判決が出たとしても死刑台には行かないよ。法務大臣は、こういった怪しい事件にはなかなか印を押さないんだ……」
そう言いながら刑事は、机にうつ伏せになっている恵美の尻肉を両手で押さえ、『の』の字を描くように腰を回した。
「……って事はどうなるんですか」
恵美は机に右頬をグイグイと押し付けられながら聞いた。
「放置だよ。獄死するまで拘置所の中で放ったらかしだよ」
恵美はゾッとした。
何十年も狭い箱の中で放置され、そのまま老いて獄死する。
そんな地味で退屈な人生の結末には、どこにもスリルが見当たらないのだ。
房に戻った恵美は、床に埋め込まれただけの和式便器にしゃがみ、下腹部に力を入れた。ベロリと開いた割れ目から刑事の精液がドロドロと溢れ出し、それが便器にボタボタと音を立てて落ちた。
「おい」と呼ばれ、項垂れていた顔を慌てて上げると、格子の向こうに彼が立っていた。恐らく、また先輩看守に蹴飛ばされたのだろう、濃紺の制服ズボンの太ももにはスニーカーの跡がくっきりと浮かんでいた。
「明日、拘置所に移監される事が決定した」
彼はそう淋しそうに呟くと、「今夜でキミとはお別れだ」と、今にも泣き出しそうな表情でゆっくりと俯いた。
そんな彼の目に、便器の底に溜まった刑事の精液が飛び込んで来た。
「なんだそれは?」
彼は慌てて恵美の顔を見た。
恵美は、いきなり肛門に指を突き刺されたような焦燥感に襲われ、咄嗟に「子供です」と答えてしまった。
「子供?」と、そう首を傾げる彼を見て、恵美はふと思った。
(こいつは馬鹿だ)
恵美は、そう何度も自分に言い聞かせながら、「そう。あなたの子供ができたの」と、深刻そうに出鱈目を言った。
彼とセックスをするようになってからまだ十日しか経っておらず、そんなに早く子供などできるわけがなかった。
しかし彼は気付かなかった。普通の人ならすぐに気付く事なのに、しかしやっぱり彼は馬鹿だった。
愕然とした彼は、「僕の子供……」と呟いた。体を震わせながら、何度も何度もそう呟いていたのだった。
深夜二時。
最後の巡視に来た彼は、「爆睡してたよ」と小さく笑うと、ポケットの中から大きな鍵を取り出した。
爆睡していたのは先輩看守だった。夕食後、彼に睡眠薬入りの缶コーヒーを飲まされた先輩看守は、仮眠室の布団に包まりながら、まるで四トンダンプが走り去るような大鼾をかいていたのだった。
ガタン、ガタガタン。
鈍い鉄の音が、静まり返った廊下に響いた。重い鉄格子の扉が開くなり、彼は二つ折りにした一万円札を恵美に渡した。
「三万円ある。タクシーをいくつも乗り継いで、できるだけ遠くに逃げてくれ」
「あなたは大丈夫なの?」
急いでゴム草履を履きながら恵美がそう聞くと、彼は「僕の事は心配するな」と頷いた。
「当直の時はね、この鍵は巡査部長しか持てない決まりになってるんだ。だからこの責任は全てあいつが取らされるよ」
そう笑いながら彼は、いきなり恵美の体を抱きしめた。骨が折れそうなくらい強く強く恵美を抱きしめた。
「キミとは何度もセックスしてきたけど、こうやってキミを抱くのは初めてだね」
彼は恥ずかしそうにそう囁くと、更に恵美を強く抱きしめながら「絶対に捕まるなよ。元気な子供を産んでくれよ」と泣いた。
泣きながら彼は、ゆっくりと恵美の体を解放した。そして恵美の顔を真正面から見つめながら、「最後に……キスしてもいい?」と呟いた。
恵美は笑った。この留置場に来て初めて笑った。いや、サラマンドラという黒い渦に巻かれてから初めて笑ったかも知れない。
「またすぐに会えるんだから最後じゃないよ。これは最初よ」
恵美はそう笑いながら彼の背中に手を回した。彼は大粒の涙をボロボロと流しながら「ありがとう」と呟いたのだった。
警察署からは、いとも簡単に出る事ができた。
一階の交通課には眠そうな顔をした警察官が二、三人いたが、まさかこうして堂々と脱走されるとは夢にも思っていないらしく、平然とそこを横切って行く恵美には見向きもしなかった。
外に出ると、ほんのりと冷たい夜風が髪を靡かせた。
ゴム草履をスタスタと鳴らしながら大通りに出ると、走り去る車のライトが妙に眩しく、そこで初めて自由になった実感を感じた。
夜の闇は二十二日ぶりだった。
夜の匂いを嗅ぐのも二十二日ぶりだった。
一つ目の交差点で立ち止まり、信号機に寄り掛かりながら、ゴム草履の中に紛れ込んだ小石をパラパラと払った。
すると、信号で止まっていた白い車の助手席の窓がジーッと開いた。
薄汚い中年男が、運転席からジッと恵美を見ていた。
助手席には、食べ残したコンビニ弁当や雑誌が散乱し、いかにも不審者の匂いがムンムンと漂っていた。
そんな中年男の右肩が不自然に動いていた。はぁ、はぁ、と小刻みに息を吐く度に、青い無精髭がブツブツと広がる二重顎がタプタプと揺れていた。
恵美は黙って車に近付くと、助手席の窓からその上下に動いている肉棒を見下ろし、そしてジャージのズボンの前をゆっくりと下ろした。
真っ白な肌にとぐろを巻いた陰毛が夜風に晒された。
男は、恍惚とした表情で「ああ……」と呻きながら、上下にシゴく手をいきなり速めた。
「乗ってもいい?」
恵美がそう聞くと、男は一瞬戸惑いながらも慌ててドアのロックを開けた。
ドアを開くなり、ペットショップのような饐えたニオイが溢れ出した。
恵美の新たなるスリルが、今、始まろうとしていた。
(スリル・完)
《←目次》
被疑者たちに貸し出される官本の整理がされていないと何癖をつけられ、留置場の隅でスクワットを一〇〇回やらされていた。
その晩、当直の彼はいつものように恵美の房にやって来た。
最初のうちは、鉄格子越しにオナニーを見せ合う程度だったが、しかしそのうちエスカレートし、彼は鉄格子の隙間からペニスを突き出すようになっていた。
恵美は、冷たい鉄格子に額と顎を押し付けながら、彼のペニスをしゃぶった。口内で弾ける生温かい精液を一滴残らず飲み干したりしていた。
しかし、セックスは無理だった。何度か、鉄格子にお尻を押し付けては彼のペニスを受け入れようとしたが、しかし、彼のペニスがあまりにも小さ過ぎる事から、かろうじて先っぽだけがヌルヌルとピストンするだけだった。
それでも彼はちゃっかりと射精した。亀頭しか挿入されていなかったが、彼は大量の精液を恵美の穴の中に注入していたのだった。
そんな彼との不完全なセックスを繰り返していた中、恵美は現住建造物放火と殺人で起訴された。
被疑者から被告となった恵美は、着々と死刑台に近付いていた。
恵美は、沙織を惨殺した大磯の罪を被り、放火して自殺した原山の罪まで被って死刑になる事に後悔していなかった。恐怖も怒りも感じていなかったし、むしろ、死刑という究極のSM行為にスリルを感じ、その瞬間を今か今かと待ちわびているほどだった。
しかし、そんな恵美の感情は、その日の取調室で刑事から聞かされた話しによって大きく急変した。
「恐らく判決は死刑だろう。でも心配するな。お前は死刑台には行かないよ。お前を犯人だとする物的証拠は何も無いんだ。お前があの親子を殺す理由も動機も不明だし、それに何といっても、お前のような華奢な女が、一人であれだけの殺人ができるかという点が非常に疑わしい。だから心配するな。お前は、死刑判決が出たとしても死刑台には行かないよ。法務大臣は、こういった怪しい事件にはなかなか印を押さないんだ……」
そう言いながら刑事は、机にうつ伏せになっている恵美の尻肉を両手で押さえ、『の』の字を描くように腰を回した。
「……って事はどうなるんですか」
恵美は机に右頬をグイグイと押し付けられながら聞いた。
「放置だよ。獄死するまで拘置所の中で放ったらかしだよ」
恵美はゾッとした。
何十年も狭い箱の中で放置され、そのまま老いて獄死する。
そんな地味で退屈な人生の結末には、どこにもスリルが見当たらないのだ。
房に戻った恵美は、床に埋め込まれただけの和式便器にしゃがみ、下腹部に力を入れた。ベロリと開いた割れ目から刑事の精液がドロドロと溢れ出し、それが便器にボタボタと音を立てて落ちた。
「おい」と呼ばれ、項垂れていた顔を慌てて上げると、格子の向こうに彼が立っていた。恐らく、また先輩看守に蹴飛ばされたのだろう、濃紺の制服ズボンの太ももにはスニーカーの跡がくっきりと浮かんでいた。
「明日、拘置所に移監される事が決定した」
彼はそう淋しそうに呟くと、「今夜でキミとはお別れだ」と、今にも泣き出しそうな表情でゆっくりと俯いた。
そんな彼の目に、便器の底に溜まった刑事の精液が飛び込んで来た。
「なんだそれは?」
彼は慌てて恵美の顔を見た。
恵美は、いきなり肛門に指を突き刺されたような焦燥感に襲われ、咄嗟に「子供です」と答えてしまった。
「子供?」と、そう首を傾げる彼を見て、恵美はふと思った。
(こいつは馬鹿だ)
恵美は、そう何度も自分に言い聞かせながら、「そう。あなたの子供ができたの」と、深刻そうに出鱈目を言った。
彼とセックスをするようになってからまだ十日しか経っておらず、そんなに早く子供などできるわけがなかった。
しかし彼は気付かなかった。普通の人ならすぐに気付く事なのに、しかしやっぱり彼は馬鹿だった。
愕然とした彼は、「僕の子供……」と呟いた。体を震わせながら、何度も何度もそう呟いていたのだった。
深夜二時。
最後の巡視に来た彼は、「爆睡してたよ」と小さく笑うと、ポケットの中から大きな鍵を取り出した。
爆睡していたのは先輩看守だった。夕食後、彼に睡眠薬入りの缶コーヒーを飲まされた先輩看守は、仮眠室の布団に包まりながら、まるで四トンダンプが走り去るような大鼾をかいていたのだった。
ガタン、ガタガタン。
鈍い鉄の音が、静まり返った廊下に響いた。重い鉄格子の扉が開くなり、彼は二つ折りにした一万円札を恵美に渡した。
「三万円ある。タクシーをいくつも乗り継いで、できるだけ遠くに逃げてくれ」
「あなたは大丈夫なの?」
急いでゴム草履を履きながら恵美がそう聞くと、彼は「僕の事は心配するな」と頷いた。
「当直の時はね、この鍵は巡査部長しか持てない決まりになってるんだ。だからこの責任は全てあいつが取らされるよ」
そう笑いながら彼は、いきなり恵美の体を抱きしめた。骨が折れそうなくらい強く強く恵美を抱きしめた。
「キミとは何度もセックスしてきたけど、こうやってキミを抱くのは初めてだね」
彼は恥ずかしそうにそう囁くと、更に恵美を強く抱きしめながら「絶対に捕まるなよ。元気な子供を産んでくれよ」と泣いた。
泣きながら彼は、ゆっくりと恵美の体を解放した。そして恵美の顔を真正面から見つめながら、「最後に……キスしてもいい?」と呟いた。
恵美は笑った。この留置場に来て初めて笑った。いや、サラマンドラという黒い渦に巻かれてから初めて笑ったかも知れない。
「またすぐに会えるんだから最後じゃないよ。これは最初よ」
恵美はそう笑いながら彼の背中に手を回した。彼は大粒の涙をボロボロと流しながら「ありがとう」と呟いたのだった。
警察署からは、いとも簡単に出る事ができた。
一階の交通課には眠そうな顔をした警察官が二、三人いたが、まさかこうして堂々と脱走されるとは夢にも思っていないらしく、平然とそこを横切って行く恵美には見向きもしなかった。
外に出ると、ほんのりと冷たい夜風が髪を靡かせた。
ゴム草履をスタスタと鳴らしながら大通りに出ると、走り去る車のライトが妙に眩しく、そこで初めて自由になった実感を感じた。
夜の闇は二十二日ぶりだった。
夜の匂いを嗅ぐのも二十二日ぶりだった。
一つ目の交差点で立ち止まり、信号機に寄り掛かりながら、ゴム草履の中に紛れ込んだ小石をパラパラと払った。
すると、信号で止まっていた白い車の助手席の窓がジーッと開いた。
薄汚い中年男が、運転席からジッと恵美を見ていた。
助手席には、食べ残したコンビニ弁当や雑誌が散乱し、いかにも不審者の匂いがムンムンと漂っていた。
そんな中年男の右肩が不自然に動いていた。はぁ、はぁ、と小刻みに息を吐く度に、青い無精髭がブツブツと広がる二重顎がタプタプと揺れていた。
恵美は黙って車に近付くと、助手席の窓からその上下に動いている肉棒を見下ろし、そしてジャージのズボンの前をゆっくりと下ろした。
真っ白な肌にとぐろを巻いた陰毛が夜風に晒された。
男は、恍惚とした表情で「ああ……」と呻きながら、上下にシゴく手をいきなり速めた。
「乗ってもいい?」
恵美がそう聞くと、男は一瞬戸惑いながらも慌ててドアのロックを開けた。
ドアを開くなり、ペットショップのような饐えたニオイが溢れ出した。
恵美の新たなるスリルが、今、始まろうとしていた。
(スリル・完)
《←目次》
オタクの穴1
2013/06/13 Thu 00:02
湿気を含んだ生温い六月の風が頬を撫でた。
柳森神社の角から歩道橋を上って行くと、頭上を通る高架橋がドゴンドゴンっと唸った。その音は階段を登るにつれ激しくなり、神田川の真上に差し掛かる頃には凄まじい轟音となって襲い掛かってきた。
歩道橋を歩く人々が一斉に肩を竦めた。新幹線の威力は、乗客には全く感じられないだろうが、しかしその真下を歩く者たちにとっては震度六強に値した。
下に神田川、上に新幹線。そんな特殊な歩道橋を出ると、そこには更に特殊な光景が広がっていた。メイド服を着た女の子たちが、くたびれたサラリーマン達に怪しげなチラシを配っている。
雑踏を潜り抜けながらルノアール前の横断歩道を渡った。自販機の角を曲がると、そこは、人、人、人、で溢れかえっていた。そんな通りの突き当たりには、『秋葉原駅』という文字がぼんやりと浮かんでいたのだった。
三杉彩乃は、いつもこの通りを抜けてお店に出勤していた。
くだらない店だった。客もスタッフもバカばっかりのコスチュームカフェだった。
それでも彩乃はお金のために頑張った。気違いじみた挨拶や幼稚なポーズなど死ぬほど恥ずかしかったが、それでも彩乃は必死にバカのフリをして働いていた。
そんな店の常連に、益岡と名乗るアニメオタクがいた。
彩乃が、大好きなアニメのヒロインに似ているからと言い、時給二万円でコスチューム撮影をさせて欲しいと必死に口説いてきた。
金が必要だった彩乃は、二つ返事でその話に乗った。
そして、さっそくその日のうちに、指定された益岡のマンションへと向かったのだった。
そこは、マンションというよりもアパートと呼ぶに相応しい、古くて汚い二階建ての建物だった。
益岡は、本当に彩乃が来るとは思っていなかったらしく、ドアを開けるなり、「ウッソォー、マジですかー」とオカマのように叫びながら嬉しそうに何度も飛び跳ねていた。
その部屋は、四畳半ほどの玄関兼用台所と、奥に八畳程度の古びた和室があるだけだった。
畳の上にベッドとPCデスクが置かれ、その壁一面にはアニメキャラクターのポスターがびっしりと張り巡らされていた。
彩乃は、とりあえずそのカビ臭い畳の上に座った。すると、陽の当たらない台所で、ペットボトルの『午後の紅茶』をグラスに注いでいた益岡が、「あっ、座布団ありませんから、ベッドに座ってください」と言った。その『午後の紅茶』は明らかに飲みかけだった。
それは、いかにも通販で売っていそうな安物のベッドだった。カバーが付いていない枕は、涎や顔の油で所々が黄ばんでおり、そこからは中年男特有の頭皮の匂いがムンムンと漂っていた。
その男は三四歳だった。この間まで引越し会社で働いていたらしいが、つい先日、突然理由もなく解雇され、現在は無職らしい。
ひょろひょろに痩せた貧乏くさい男だったが、目だけはギラギラと輝き、まるで獲物を狙うカマキリのように鋭かった。笑っているのか怒っているのかわからない表情をしており、話をしている最中も常に彩乃から目を逸らしていた。
当然、独身だった。今まで女性とは一人も付き合ったことがないらしく、「三次元の女は面倒臭いですから……」などと深刻そうに言いながら、残った午後の紅茶をゴクリとラッパ飲みした。
そして、そのボサボサの髪をガリガリと搔き毟りながら、「だから僕の恋人はミルクンピューラなんです」と、そのアニメキャラが映るPCの画面を恥ずかしそうに見つめると、強烈な出っ歯をロバのように剥き出し、ウヒウヒと笑い出したのだった。
そのミクルンピューラというアニメのキャラクターは、ピンクの髪にピンクのドレスを着たお姫様のような女の子だった。やたらと胸が大きく、ミニスカートからはみ出した白いパンツの股間には一本の縦線が食い込んでいるという、明らかに危ない人のためのアニメだった。
彩乃は、そんなミクルンピューラをソッと横目で見ながら、これのどこが自分に似ているのかさっぱりわからなかった。強いて言うならその大きなオッパイだけであり、顔も髪型も全然似ていないと思った。
ウヒウヒという不気味な笑いを部屋に響かせながら、益岡は飲み干した午後の紅茶のペットボトルを屑篭の中に投げ捨てた。そして押入れの襖をザザッと開けると、そこからダンボールを一つ取り出し、「さてさて、それではまずはこれに着替えてもらいましょうかね」とそれを彩乃の足元に置いた。
その中には、テラテラとしたサテン生地のドレスやピンクのハイヒール、そして大きなメイクセットが綺麗に並べられていた。益岡は表情を高揚させながら、それら一つ一つを取り出すと、その中から白いパンティーを摘みあげ、突然「今日の下着は何色ですか?」と聞いてきた。
彩乃は首を小さく傾けながら、「確か……ピンクだったと思いますけど……」と答えた。すると益岡は「チッ」と舌打ちした。「それNGです。ミクルンは白い下着しか穿きませんから。これジョーシキですから」と、何やら彩乃を責めるかのように強い口調で言うと、「下着もこれに履き替えてください」と、その摘み上げた白い下着を彩乃に渡したのだった。
唖然としながらそれを見つめていると、益岡は素早くベッドを降り、ミクルンのフィギアが大量に並べてあるカラーボックスの前にしゃがんだ。そして何やらそこをゴソゴソと漁りながら、カラーボックスの裏から等身大の鏡を引きずり出すと、「鏡はここにありますから」と背後の彩乃に振り返った。
そのまま益岡は台所へと向かった。「着替えてる間、僕は外の廊下で待ってますので、もしメイクの事とかでわからないことがありましたら遠慮なく呼んでください」と言いながら、玄関の靴を履き始めた。
玄関ドアが開かれると、午後の日差しがパッと注ぎ込み、薄暗い部屋に浮遊している埃をキラキラと輝かせた。スマホを弄りながら外に出ようとした益岡だったが、急に何かを思い出したかのように「あっ、それから……」と足を止めた。
「ミクルンは基本的にブラジャーは付けませんから、ブラジャーはNGでお願いしますね」
益岡はスマホの画面を見つめたままそうボソリと呟いた。そしてそのままスマホに指を走らせながら、ヨロヨロと外に出て行ったのだった。
玄関のドアが閉まるなり、一瞬にして光と音が遮断された。
シーンと静まり返った部屋にポツンと一人取り残された彩乃は、改めてこの三十男の部屋とは思えない幼稚な部屋を見回しながら静かに息を吐いた。
壁だけでなく天井一面にまで張り巡らされたアニメのポスターは、この日当たりの悪い老朽化した和室を、より一層不気味にさせていた。
そんなミクルンピューラは、ポスターやフィギアだけでなく、部屋の至る所に潜んでいた。スリッパ、マウスパッド、マグカップ、時計。そして何よりも薄気味悪かったのがベッドと壁の隙間に押し込められていた抱き枕で、そこにプリントされたミクルンの口と股間には、明らかにそれとわかる黄色いシミが点々と付着していた。
しかし、それよりも更に驚かされたのは、その抱き枕の裏面を見た時だった。裏面にプリントされているミクルンピューラは全裸だった。幼い顔には似つかなぬ豊満なおっぱいをタプンっと突き出し、ノーパンで体育座りをしながら顔を横に向けて喘いでいた。
そのプリントも薄気味悪かったが、しかしそれよりも彩乃を驚愕させたのは、そんなミクルンピューラの股間に突き刺さっていたオナホールだった。
それは、アダルトグッズのサイトでよく目にする肌色のシリコン筒で、断面は女性器がリアルに型取られ、奥深い穴の表面は歪にデコボコしていた。
それを目にした彩乃は、夜な夜なこの穴の中にペニスをピストンさせている男の姿を想像した。そしてその筒に生臭い精液をドクドクと中出ししながら薄気味悪く身悶えているシーンを思い浮かべ、深い息を胸底から吐き出した。
これが普通の女なら、この時点で逃げ出している事だろう。しかし彩乃は違った。彩乃はもはや普通の女ではなかった。
好奇心に駆られた彩乃は、そのリアルな断面に恐る恐る指を伸ばし、型取られたクリトリスをソッと指先で撫でた。そして穴の中に指を入れると、そのデコボコの表面に指をムニムニと押し付けながら、そこにペニスが擦り付けられるシーンを頭に描いた。

いきなり激しい興奮がムラッと湧き上がった。気がつくと彩乃はその穴の中を犬のようにクンクンと嗅いでいた。
そこにはゴム臭とローションの匂いと、そして仄かなイカ臭が漂っていた。そんな卑猥な匂いにクラクラと目眩を感じた彩乃は、迷うことなくその穴の中に舌を挿入していた。
あの男は今までに体験した事のない部類の変態だった。あんな変態男に、もうすぐ自分のアソコもこうやって舐められるのだろうかと、そんな事を考えながら穴の中をピチャピチャと舐めていると、堪らなく陰部がジクジクと疼いてきた。
ムラムラ感を募らせたまま再びベッドに座り直した。案の定、デニムのミニスカートから覗くピンクのパンティーには、じっとりと濡れた卑猥なシミが浮き出ていたのだった。

早く着替えて、あの変態男にズボズボされたい。
敢えてそんな下品な表現をしながらその変態性欲を昂ぶらせた。
急いでデニムのミニスカートのボタンを外した。そしてスカートを下ろそうとふと顔を上げると、真正面に置いてあるカラーボックスの中で一瞬何かが動いた気がした。
デニムのミニスカートに指をかけたまま動きを止めた彩乃は、そのままそこにジッと目を凝らした。
すると、無数に並んだフィギアの端に、なぜか一台のスマホが不自然に立てかけてある事に気付いた。
しかもそのスマホは電源が入ったままだった。そしてその画面には、今、ベッドに腰掛けているリアルタイムの自分の姿が映し出されていたのだった。
それは意図的に仕掛けられたものだった。あの男がもう一台のスマホを使い、テレビ電話によってこの部屋を盗撮しているのだ。
確かにあの男は、部屋を出て行く前、カラーボックスの前でゴソゴソしていた。きっとあれは、あそこにスマホをセットしていたのだ。
そう気づくなり、彩乃の背中に冷たいものがゾクっと走った。あの抱き枕のオナホールを舐めているシーンを見られていたのかと思うと、凄まじい羞恥に襲われ、ベッドに腰掛けていた膝がガクガクと震えてきた。
しかし、そんな羞恥心は一瞬にして快楽へと変わった。あの変態行為が覗かれていたというのは、マゾヒストな彩乃にとって性的興奮の何物でもなかったのだ。
ムラムラと湧き上がる興奮にクラクラと目眩を感じながら、彩乃はそのスマホからソッと目を逸らした。覗かれているという行為に欲情を覚えた彩乃は、それに気づかないふりをしたまま着替えをしようと思ったのだ。
スマホのカメラに向かってパーカーのジッパーを下ろした。今にも溢れ出しそうなその豊満な乳肉は、薄ピンクのブラジャーに吊り下げられていた。ドキドキしながらブラジャーに手をかけると、その二つの巨大な乳肉がフルルンっと揺れた。
この揺れる乳肉をあの男も見ているのだろうかと思うと、異様な興奮が次から次へと湧き上がってきた。恥ずかしいと思えば思うほどに、見られたいという気持ちが高ぶり、半開きの唇から自然に熱い息が漏れた。
(見てください……私を見て勃起してください……)
そう頭の中で呟きながら震える指でブラジャーをずらした。そこから溢れた柔らかい乳肉が、まるで巨大な水風船がバウンドするかのようにタプンっと跳ね、その全てをそこに晒した。

踊る乳肉に合わせ彩乃の呼吸も荒くなった。今頃あの男は、うまくいったぞと細く微笑みながらスマホを見ているのかと思うと、彩乃の被虐心はジクジクと刺激され、すぐにでも肉棒を挿入されたい気分に陥らされた。
今まで彩乃は、自分は人よりもスケベだということを自覚していた。しかし、今こうしてこの状況で欲情している自分を客観的に見て、やっと気づいた。自分はスケベなどという幼稚なレベルではなく、もはや異常者並みの変態レベルに達しているという事を。
そのボテッと垂れた巨大な乳肉を両手に乗せ、まるでパン生地のようにポテンポテンっと捏ねた。右手で右乳の乳首を転がし、左手で左乳を持ち上げながらその乳首をチロチロと舐めた。この変態行為が男に見られていると思うと、乳首を転がしていた指は自然に股間へと滑り降りて行った。
もはやクロッチはハチミツに浸したかのようにヌルヌルに湿っていた。そこに指を滑らせながら腰の位置を微妙に移動させ、股間をスマホに向けた。
真っ白な太ももに挟まれた薄ピンクのパンティーが画面に映っていた。今これを見ている男は、きっと競走馬のように鼻息を荒くしながら歓喜しているはずだと思うと、もっと男を興奮させてやりたいという欲望に駆られた。
小指と薬指でクロッチをずらすと、テラテラと濡れ輝くワレメが姿を現した。そこに指を這わすと、まるで牛の涎のような濃厚な汁が無数の糸を引き、ピチャっといやらしい音を立てたのだった。

このいやらしい音さえも男は聞いているのだと思うと、そこに這わせた指を動かさずにはいられなかった。
(見ないで……恥ずかしいから見ないで……)と、矛盾した被虐願望を抱きながら、グロテスクなワレメにヌルヌルと指を滑らせ、もう片方の手でミカンの粒のようなクリトリスをキュンキュンと摘んだ。
熱い息がハァハァと漏れた。腰が自然にカクカクと動き、太ももがヒクヒクと痙攣し始めた。
(このままイッてしまいたい……)
そう気が遠くなった瞬間、いきなり玄関ドアがコンコンっとノックされ、一瞬にして彩乃は現実へと引き戻された。
「あのぅ……まだでしょうか……」
男のその声に、彩乃はサッと股を閉じた。そして慌ててパーカーのジッパーを締めながら「まだです」と答えると、男は、「その衣装、結構複雑でしょ……僕、手伝いますよ……」と呟き、彩乃の返事を聞かないまま、いきなりそのドアを開けた。
午後の日差しが薄暗い部屋にパッと注ぎ込んだ。逆光に照らされた男のシルエットが玄関に浮かび、バタンッとドアが閉まる音が響いた。
彩乃は呆然としていた。半分しか閉まっていないジッパーから真っ白な乳肉をはみ出したまま、身動きひとつせず固まっていた。
「ミンクルはね、衣装もメイクも複雑なんですよ……だからミンクルのコスプレする人って少ないんです……」
そう言いながら男は部屋に入ってきた。カマキリのような鋭い目を光らせ、薄い唇を不敵に半分歪ませながら、固まる彩乃に向かってやって来た。
そんな男の手にはスマホが握られていた。そして男のその股間には、ヘソに向かって伸びる細長い膨らみがくっきりと浮かび上がっていたのだった。
(つづく)
《←目次》《2話へ→》
柳森神社の角から歩道橋を上って行くと、頭上を通る高架橋がドゴンドゴンっと唸った。その音は階段を登るにつれ激しくなり、神田川の真上に差し掛かる頃には凄まじい轟音となって襲い掛かってきた。
歩道橋を歩く人々が一斉に肩を竦めた。新幹線の威力は、乗客には全く感じられないだろうが、しかしその真下を歩く者たちにとっては震度六強に値した。
下に神田川、上に新幹線。そんな特殊な歩道橋を出ると、そこには更に特殊な光景が広がっていた。メイド服を着た女の子たちが、くたびれたサラリーマン達に怪しげなチラシを配っている。
雑踏を潜り抜けながらルノアール前の横断歩道を渡った。自販機の角を曲がると、そこは、人、人、人、で溢れかえっていた。そんな通りの突き当たりには、『秋葉原駅』という文字がぼんやりと浮かんでいたのだった。
三杉彩乃は、いつもこの通りを抜けてお店に出勤していた。
くだらない店だった。客もスタッフもバカばっかりのコスチュームカフェだった。
それでも彩乃はお金のために頑張った。気違いじみた挨拶や幼稚なポーズなど死ぬほど恥ずかしかったが、それでも彩乃は必死にバカのフリをして働いていた。
そんな店の常連に、益岡と名乗るアニメオタクがいた。
彩乃が、大好きなアニメのヒロインに似ているからと言い、時給二万円でコスチューム撮影をさせて欲しいと必死に口説いてきた。
金が必要だった彩乃は、二つ返事でその話に乗った。
そして、さっそくその日のうちに、指定された益岡のマンションへと向かったのだった。
そこは、マンションというよりもアパートと呼ぶに相応しい、古くて汚い二階建ての建物だった。
益岡は、本当に彩乃が来るとは思っていなかったらしく、ドアを開けるなり、「ウッソォー、マジですかー」とオカマのように叫びながら嬉しそうに何度も飛び跳ねていた。
その部屋は、四畳半ほどの玄関兼用台所と、奥に八畳程度の古びた和室があるだけだった。
畳の上にベッドとPCデスクが置かれ、その壁一面にはアニメキャラクターのポスターがびっしりと張り巡らされていた。
彩乃は、とりあえずそのカビ臭い畳の上に座った。すると、陽の当たらない台所で、ペットボトルの『午後の紅茶』をグラスに注いでいた益岡が、「あっ、座布団ありませんから、ベッドに座ってください」と言った。その『午後の紅茶』は明らかに飲みかけだった。
それは、いかにも通販で売っていそうな安物のベッドだった。カバーが付いていない枕は、涎や顔の油で所々が黄ばんでおり、そこからは中年男特有の頭皮の匂いがムンムンと漂っていた。
その男は三四歳だった。この間まで引越し会社で働いていたらしいが、つい先日、突然理由もなく解雇され、現在は無職らしい。
ひょろひょろに痩せた貧乏くさい男だったが、目だけはギラギラと輝き、まるで獲物を狙うカマキリのように鋭かった。笑っているのか怒っているのかわからない表情をしており、話をしている最中も常に彩乃から目を逸らしていた。
当然、独身だった。今まで女性とは一人も付き合ったことがないらしく、「三次元の女は面倒臭いですから……」などと深刻そうに言いながら、残った午後の紅茶をゴクリとラッパ飲みした。
そして、そのボサボサの髪をガリガリと搔き毟りながら、「だから僕の恋人はミルクンピューラなんです」と、そのアニメキャラが映るPCの画面を恥ずかしそうに見つめると、強烈な出っ歯をロバのように剥き出し、ウヒウヒと笑い出したのだった。
そのミクルンピューラというアニメのキャラクターは、ピンクの髪にピンクのドレスを着たお姫様のような女の子だった。やたらと胸が大きく、ミニスカートからはみ出した白いパンツの股間には一本の縦線が食い込んでいるという、明らかに危ない人のためのアニメだった。
彩乃は、そんなミクルンピューラをソッと横目で見ながら、これのどこが自分に似ているのかさっぱりわからなかった。強いて言うならその大きなオッパイだけであり、顔も髪型も全然似ていないと思った。
ウヒウヒという不気味な笑いを部屋に響かせながら、益岡は飲み干した午後の紅茶のペットボトルを屑篭の中に投げ捨てた。そして押入れの襖をザザッと開けると、そこからダンボールを一つ取り出し、「さてさて、それではまずはこれに着替えてもらいましょうかね」とそれを彩乃の足元に置いた。
その中には、テラテラとしたサテン生地のドレスやピンクのハイヒール、そして大きなメイクセットが綺麗に並べられていた。益岡は表情を高揚させながら、それら一つ一つを取り出すと、その中から白いパンティーを摘みあげ、突然「今日の下着は何色ですか?」と聞いてきた。
彩乃は首を小さく傾けながら、「確か……ピンクだったと思いますけど……」と答えた。すると益岡は「チッ」と舌打ちした。「それNGです。ミクルンは白い下着しか穿きませんから。これジョーシキですから」と、何やら彩乃を責めるかのように強い口調で言うと、「下着もこれに履き替えてください」と、その摘み上げた白い下着を彩乃に渡したのだった。
唖然としながらそれを見つめていると、益岡は素早くベッドを降り、ミクルンのフィギアが大量に並べてあるカラーボックスの前にしゃがんだ。そして何やらそこをゴソゴソと漁りながら、カラーボックスの裏から等身大の鏡を引きずり出すと、「鏡はここにありますから」と背後の彩乃に振り返った。
そのまま益岡は台所へと向かった。「着替えてる間、僕は外の廊下で待ってますので、もしメイクの事とかでわからないことがありましたら遠慮なく呼んでください」と言いながら、玄関の靴を履き始めた。
玄関ドアが開かれると、午後の日差しがパッと注ぎ込み、薄暗い部屋に浮遊している埃をキラキラと輝かせた。スマホを弄りながら外に出ようとした益岡だったが、急に何かを思い出したかのように「あっ、それから……」と足を止めた。
「ミクルンは基本的にブラジャーは付けませんから、ブラジャーはNGでお願いしますね」
益岡はスマホの画面を見つめたままそうボソリと呟いた。そしてそのままスマホに指を走らせながら、ヨロヨロと外に出て行ったのだった。
玄関のドアが閉まるなり、一瞬にして光と音が遮断された。
シーンと静まり返った部屋にポツンと一人取り残された彩乃は、改めてこの三十男の部屋とは思えない幼稚な部屋を見回しながら静かに息を吐いた。
壁だけでなく天井一面にまで張り巡らされたアニメのポスターは、この日当たりの悪い老朽化した和室を、より一層不気味にさせていた。
そんなミクルンピューラは、ポスターやフィギアだけでなく、部屋の至る所に潜んでいた。スリッパ、マウスパッド、マグカップ、時計。そして何よりも薄気味悪かったのがベッドと壁の隙間に押し込められていた抱き枕で、そこにプリントされたミクルンの口と股間には、明らかにそれとわかる黄色いシミが点々と付着していた。
しかし、それよりも更に驚かされたのは、その抱き枕の裏面を見た時だった。裏面にプリントされているミクルンピューラは全裸だった。幼い顔には似つかなぬ豊満なおっぱいをタプンっと突き出し、ノーパンで体育座りをしながら顔を横に向けて喘いでいた。
そのプリントも薄気味悪かったが、しかしそれよりも彩乃を驚愕させたのは、そんなミクルンピューラの股間に突き刺さっていたオナホールだった。
それは、アダルトグッズのサイトでよく目にする肌色のシリコン筒で、断面は女性器がリアルに型取られ、奥深い穴の表面は歪にデコボコしていた。
それを目にした彩乃は、夜な夜なこの穴の中にペニスをピストンさせている男の姿を想像した。そしてその筒に生臭い精液をドクドクと中出ししながら薄気味悪く身悶えているシーンを思い浮かべ、深い息を胸底から吐き出した。
これが普通の女なら、この時点で逃げ出している事だろう。しかし彩乃は違った。彩乃はもはや普通の女ではなかった。
好奇心に駆られた彩乃は、そのリアルな断面に恐る恐る指を伸ばし、型取られたクリトリスをソッと指先で撫でた。そして穴の中に指を入れると、そのデコボコの表面に指をムニムニと押し付けながら、そこにペニスが擦り付けられるシーンを頭に描いた。

いきなり激しい興奮がムラッと湧き上がった。気がつくと彩乃はその穴の中を犬のようにクンクンと嗅いでいた。
そこにはゴム臭とローションの匂いと、そして仄かなイカ臭が漂っていた。そんな卑猥な匂いにクラクラと目眩を感じた彩乃は、迷うことなくその穴の中に舌を挿入していた。
あの男は今までに体験した事のない部類の変態だった。あんな変態男に、もうすぐ自分のアソコもこうやって舐められるのだろうかと、そんな事を考えながら穴の中をピチャピチャと舐めていると、堪らなく陰部がジクジクと疼いてきた。
ムラムラ感を募らせたまま再びベッドに座り直した。案の定、デニムのミニスカートから覗くピンクのパンティーには、じっとりと濡れた卑猥なシミが浮き出ていたのだった。

早く着替えて、あの変態男にズボズボされたい。
敢えてそんな下品な表現をしながらその変態性欲を昂ぶらせた。
急いでデニムのミニスカートのボタンを外した。そしてスカートを下ろそうとふと顔を上げると、真正面に置いてあるカラーボックスの中で一瞬何かが動いた気がした。
デニムのミニスカートに指をかけたまま動きを止めた彩乃は、そのままそこにジッと目を凝らした。
すると、無数に並んだフィギアの端に、なぜか一台のスマホが不自然に立てかけてある事に気付いた。
しかもそのスマホは電源が入ったままだった。そしてその画面には、今、ベッドに腰掛けているリアルタイムの自分の姿が映し出されていたのだった。
それは意図的に仕掛けられたものだった。あの男がもう一台のスマホを使い、テレビ電話によってこの部屋を盗撮しているのだ。
確かにあの男は、部屋を出て行く前、カラーボックスの前でゴソゴソしていた。きっとあれは、あそこにスマホをセットしていたのだ。
そう気づくなり、彩乃の背中に冷たいものがゾクっと走った。あの抱き枕のオナホールを舐めているシーンを見られていたのかと思うと、凄まじい羞恥に襲われ、ベッドに腰掛けていた膝がガクガクと震えてきた。
しかし、そんな羞恥心は一瞬にして快楽へと変わった。あの変態行為が覗かれていたというのは、マゾヒストな彩乃にとって性的興奮の何物でもなかったのだ。
ムラムラと湧き上がる興奮にクラクラと目眩を感じながら、彩乃はそのスマホからソッと目を逸らした。覗かれているという行為に欲情を覚えた彩乃は、それに気づかないふりをしたまま着替えをしようと思ったのだ。
スマホのカメラに向かってパーカーのジッパーを下ろした。今にも溢れ出しそうなその豊満な乳肉は、薄ピンクのブラジャーに吊り下げられていた。ドキドキしながらブラジャーに手をかけると、その二つの巨大な乳肉がフルルンっと揺れた。
この揺れる乳肉をあの男も見ているのだろうかと思うと、異様な興奮が次から次へと湧き上がってきた。恥ずかしいと思えば思うほどに、見られたいという気持ちが高ぶり、半開きの唇から自然に熱い息が漏れた。
(見てください……私を見て勃起してください……)
そう頭の中で呟きながら震える指でブラジャーをずらした。そこから溢れた柔らかい乳肉が、まるで巨大な水風船がバウンドするかのようにタプンっと跳ね、その全てをそこに晒した。

踊る乳肉に合わせ彩乃の呼吸も荒くなった。今頃あの男は、うまくいったぞと細く微笑みながらスマホを見ているのかと思うと、彩乃の被虐心はジクジクと刺激され、すぐにでも肉棒を挿入されたい気分に陥らされた。
今まで彩乃は、自分は人よりもスケベだということを自覚していた。しかし、今こうしてこの状況で欲情している自分を客観的に見て、やっと気づいた。自分はスケベなどという幼稚なレベルではなく、もはや異常者並みの変態レベルに達しているという事を。
そのボテッと垂れた巨大な乳肉を両手に乗せ、まるでパン生地のようにポテンポテンっと捏ねた。右手で右乳の乳首を転がし、左手で左乳を持ち上げながらその乳首をチロチロと舐めた。この変態行為が男に見られていると思うと、乳首を転がしていた指は自然に股間へと滑り降りて行った。
もはやクロッチはハチミツに浸したかのようにヌルヌルに湿っていた。そこに指を滑らせながら腰の位置を微妙に移動させ、股間をスマホに向けた。
真っ白な太ももに挟まれた薄ピンクのパンティーが画面に映っていた。今これを見ている男は、きっと競走馬のように鼻息を荒くしながら歓喜しているはずだと思うと、もっと男を興奮させてやりたいという欲望に駆られた。
小指と薬指でクロッチをずらすと、テラテラと濡れ輝くワレメが姿を現した。そこに指を這わすと、まるで牛の涎のような濃厚な汁が無数の糸を引き、ピチャっといやらしい音を立てたのだった。

このいやらしい音さえも男は聞いているのだと思うと、そこに這わせた指を動かさずにはいられなかった。
(見ないで……恥ずかしいから見ないで……)と、矛盾した被虐願望を抱きながら、グロテスクなワレメにヌルヌルと指を滑らせ、もう片方の手でミカンの粒のようなクリトリスをキュンキュンと摘んだ。
熱い息がハァハァと漏れた。腰が自然にカクカクと動き、太ももがヒクヒクと痙攣し始めた。
(このままイッてしまいたい……)
そう気が遠くなった瞬間、いきなり玄関ドアがコンコンっとノックされ、一瞬にして彩乃は現実へと引き戻された。
「あのぅ……まだでしょうか……」
男のその声に、彩乃はサッと股を閉じた。そして慌ててパーカーのジッパーを締めながら「まだです」と答えると、男は、「その衣装、結構複雑でしょ……僕、手伝いますよ……」と呟き、彩乃の返事を聞かないまま、いきなりそのドアを開けた。
午後の日差しが薄暗い部屋にパッと注ぎ込んだ。逆光に照らされた男のシルエットが玄関に浮かび、バタンッとドアが閉まる音が響いた。
彩乃は呆然としていた。半分しか閉まっていないジッパーから真っ白な乳肉をはみ出したまま、身動きひとつせず固まっていた。
「ミンクルはね、衣装もメイクも複雑なんですよ……だからミンクルのコスプレする人って少ないんです……」
そう言いながら男は部屋に入ってきた。カマキリのような鋭い目を光らせ、薄い唇を不敵に半分歪ませながら、固まる彩乃に向かってやって来た。
そんな男の手にはスマホが握られていた。そして男のその股間には、ヘソに向かって伸びる細長い膨らみがくっきりと浮かび上がっていたのだった。
(つづく)
《←目次》《2話へ→》
オタクの穴2
2013/06/13 Thu 00:02
益岡はドスンッとベッドに腰掛けると、床に置いてあるダンボールの中を覗き込みながら「チッ」と舌打ちした。益岡は不機嫌そうに「まだ何にも着替えてないじゃないですか……」とため息をつくと、そのダンボールの中から、衣装やハイヒールなどを乱暴に取り出し始めた。
彩乃はソッとベッドから降りた。そしてそのダンボールの前で静かに正座しながら、「すみません……」と小さく呟いた。
「……あのねぇ、キミは知らないかもしれないけど、撮影会ってのは基本的に時給なんですよ。それは女の子の着替えの時間もトイレの時間も含まれてるんですよ」
「…………」
「だから早く着替えてよ。時間がもったいないだろ。ほら、早くこのパンツに履き替えて」
そう言いながらダンボールの中から白いパンティーを摘まみ出し、それを正座する彩乃の太ももに投げつけた。
戸惑う彩乃を、益岡はベッドの上からカマキリのような目で睨んでいた。そして右足をカクカクと貧乏揺すりさせると、「もしかして恥ずかしいの?」と笑った。
それは、全てを知り尽くした不敵な笑みだった。オナホールをこっそり舐めていた事や、濡れた陰部を弄っていた事など、それらをスマホで覗き見していたからこそできる自信に満ちた笑みだった。
そんな益岡の冷たい笑みに背筋をゾクッとさせた彩乃は、恐る恐るその命令に従った。見ず知らずの男の目前で着替えさせられるというのは、屈辱以外の何物でもなかったが、しかしそんな無慈悲な命令はたちまち彩乃の陰部をジクジクと疼かせ、異様な興奮に襲われた彩乃は、デニムのミニスカートの中からパンティーを摘み下ろしたのだった。

いつの間にか立場は逆転していた。この場合、本来ならスマホで盗撮されていた彩乃の方が怒っていいはずなのに、なぜか彩乃が怒られていた。
そもそも、床に正座したのが悪かった。床に正座しているのとベッドに座っているのとでは、明らかにベッドから見下ろしている者の方が立場は優勢になり、その時点で既に彩乃は益岡に逆らえなくなってしまっていたのだった。
しかし彩乃はこの状況に満足していた。彩乃という女は、虐げられる事で快楽を得るという真のマゾヒストなため、理不尽な上下関係による強要等は即ちエロスなのだ。だからそんな命令に対しても、正常者が感じるような屈辱や怒りといった感情は生まれず、異常者的な快楽がムラムラと湧き上がってくるのだった。
ジッと項垂れたまま、くるくるに丸まったパンティーを足首から抜き取った。それを背後にソッと隠そうとすると、いきなり益岡は「あっ」と言いながらベッドの下から円形状のカゴを取り出し、「脱いだ服はここに入れて」とそれを彩乃に突きつけたのだった。
彩乃の胸底から新たな興奮が湧き上がってきた。そのパンティーのクロッチは激しく濡れており、それをそのままそのカゴの中に入れてしまえば、恥ずかしい部分が益岡に見られてしまうのだ。
その新たな興奮は羞恥心だった。汚れた下着を見られるというのは、直接陰部を見られることよりも恥ずかしい事であり、まして、隠れてこっそり見られるならまだしも、目の前でそれを見られるというのは強烈な羞恥なのだ。
そんな羞恥心に彩乃の胸はギュンギュンと締め付けられた。今にも声が漏れてきそうな唇をワナワナと震わせながら、その汚れたパンティーをカゴの中にパサっと落とした。
チラっとそのパンティーを横目で見ながらも、益岡はそのカゴを床に投げた。そして両膝に両肘をつきながら前屈みになると、「ほら、早く全部脱いで」と彩乃の顔を覗き込んだ。
彩乃はパーカーのジッパーを恐る恐る下ろした。すぐ目の前には益岡の顔が迫っており、次から次へと溢れてくる興奮の鼻息がバレてしまわないかとヒヤヒヤしていた。
パーカーの前がパラリとはだけた。ブラジャーは、さっきずり下げた状態のままであり、ロケット型の巨乳がフルフルと揺れていた。
項垂れたままデニムのミニスカートのボタンを外した。そして、ゆっくりと膝立ちになりながらスカートを下ろそうとすると、不意にベッドの益岡が「うわぁ……」と唸った。
項垂れたままソッと益岡を見ると、いつの間にそれをカゴから取り出したのか、益岡は両手で彩乃のパンティーを広げながらそこを凝視していた。
カッと顔が熱くなり、慌てて「やめてください」とそれを奪い取ろうとすると、益岡は、パンティーを握る手をサッと高く掲げた。そしてそれを頭上でヒラヒラさせると、「どうしてこんなに濡れてるんですか」と、まるで男子が女子に意地悪しているような幼稚な口調でニヤニヤと笑った。
「返してください」と顔を真っ赤にさせながら、彩乃はそれを奪い取ろうと益岡の頭上に手を伸ばした。その勢いで大きな柔肉がタプンッと揺れ、それが益岡の顔にペタンっと当たった。彩乃は慌てて手を引っ込めた。その柔肉を両手で抱きしめながらそれを隠すと、今にも泣き出しそうな表情で「もうやめて下さい……」と、その場にへたり込んだ。
益岡は、そんな彩乃を幼稚な表情で見下ろした。そして汚れたクロッチを大きく広げ、それを彩乃に見せつけながら、「見てよ。こんなに濡れてますよ」とニヤニヤと笑った。

「凄いねこれ……」と呟きながら、益岡は恐る恐るクロッチに鼻を近づけた。「やめてください……」と声を震わせる彩乃を上目遣いでジッと見つめながら、まるでソムリエのように鼻をスッスッと小刻みに鳴らすと、「ヤリマンの匂いがしますよ」とニヤリと笑った。
羞恥で唇が震えた。陰部を直接嗅がれるのは何でもないのに、不思議とそれが汚れたクロッチだと、目眩を感じるほどの羞恥に襲われた。
そんなクロッチに益岡は人差し指を突き立てた。そしてそのテラテラと輝く汁に指腹をヌルヌルと滑らせながら、「キミのアソコもこんな風にヌルヌルしてるのかな?」と呟くと、あたかも彩乃の陰部を弄っているかのように、指をいやらしく動かした。
ヌルヌルと滑る指を彩乃は見ていた。そんなに恥ずかしいのなら見なければいいのに、それでも彩乃は、胸溜まった興奮のマグマを必死に堪えながら、敢えてそこから目を逸らさなかった。
すると益岡は、そんな彩乃を更に挑発するかのように、ゆっくりとそこに舌を伸ばした。まるでヨーグルトの蓋を舐めるかのように、そのドロドロとした汁をベロベロと舐めまくり、声をネバネバさせながら、「スカートも脱いで……」と呟いた。
舌が動く度に、納豆のような糸が何本も引いていた。それをジッと見つめていると、本当に自分のアソコが舐められているような感覚にとらわれ、そこに感情移入してしまった彩乃は、胸底から溢れる息を、「んふっ……」と鼻から漏らした。
滅茶苦茶にしてほしい。お尻の穴まで犯してほしい。
そんな自虐的な興奮に襲われながら彩乃はスカートを脱いだ。
そして、全裸でそこに正座したまま、ぺちゃぺちゃとクロッチを舐めまくる益岡を黙って見ていた。

益岡は、全裸の彩乃を横目で見ていた。汚れたクロッチを舐め、自分で自分の股間をスリスリと擦りながら、全裸で正座している彩乃を視姦していた。
(二万円で撮影させてください)
そんなオファーは、思わぬ方向へと向かおうとしていた。もちろん彩乃は撮影だけで終わるわけがないと思っていた。逆にそっちのハプニングを期待していたほどだった。
しかし、現実は予想を遥かに超えていた。まさかここまでフェティシズムな変態男だとは思ってもいなかった。
今まで、暴力的なフェチ男には何度か凌辱されたことはあったが、こんなオタク系のフェチ男は初めてだった。
益岡は繊細な男だった。マニアックでフェティシズムなサディストだった。だから今までの男たちのようにガツガツと彩乃の体を貪っては来なかった。彩乃のマゾ心を見透かしているかのようにジワリジワリと屈辱を与え、下品な言葉と残酷な行動で逃げ場のない羞恥を与え、そしてそれに翻弄された彩乃を性人形のように自由自在に操った。
それは、今までに感じたことのない不思議な興奮だった。羞恥心と屈辱感が、これほどストレートに快楽へと変えられたのは初めてだった。
ベッドの前に立たされた彩乃は、まるで着せ替え人形のように、益岡に衣装を着せられていた。ピンクのドレスを着せられると、再び床に座らされ、慣れた手つきでメイクを施された。
彩乃は黙ったまま正座していた。時折、鏡を見せられ、「ミクルンの場合はね、ツケマツゲを二枚重ねにするんですよ。こうしてほんの少しだけ微妙にずらしてやるとね、ほら、よりミクルンっぽくなるでしょ」などと、そんなどうでもいい説明を聞かされながら、口紅さえも益岡に塗られていた。
ピンクのウィッグを頭に被せられ、それ専用の櫛で髪をガサガサととかれた。そこに銀のティアラを乗せると、益岡は「よく似合いますよ」と彩乃に鏡を見せ、満足そうにニヤニヤと笑った。
そして再びそこに立たされた。益岡はベッドに座ったまま、「あとはこれを穿いたら完成ですよ」と嬉しそうに言うと、床のダンボールに手を伸ばし、そこから白い木綿のパンティーを摘み上げた。
言われるがままに右足を持ち上げた。ミニのドレスが捲れ、真っ白な股間に渦巻く陰毛がジリッと擦れた。ベッドに座る益岡は、真正面でそれをチラチラと見ながら右足にパンティーを通した。それはまるで子供にパンツを履かせているようだった。
パンティーはスルスルと滑りながらヘソに向かって上ってきた。益岡はパンティーの両端を摘みながら、それを尻の半分まで持ち上げた。そしてわざとフロント部分をキュッキュッと食い込ませると、ポスターのミクルンピューラと同じ一本の縦線をそこにくっきりと作った。
それは完璧なコスプレだった。過去相当数の女の子にこうしてコスプレさせてきたのであろう、益岡の着せ替えは随分と手慣れていたのだった。
「やっぱり僕の睨んだとおりだ。キミはミクルンに瓜二つだ……」
そう身震いしながらカメラを手に取ると、益岡は彩乃に様々なポーズを取らせた。
興奮した益岡は、まるでプロのカメラマンのように、「いいよ〜最高だよ〜」などと呟きながらシャッターの音を連続して響かせていた。
しかし、床に寝転がりながらローアングルでスカートの中を撮ろうとした時、突然益岡が「ダメだなぁ……」と首を傾げながら立ち上がった。
「食い込みが弱いんですよ。すぐに元に戻ってしまうんですよね……」
そう舌打ちしながら、益岡は彩乃をベッドに座らせた。そして自分もその隣りに腰掛けると、いきなりスカートをペロリと捲った。
一瞬、股を強く閉じた彩乃だったが、しかし、益岡の手が太ももを優しく摩り始めると、まるで催眠術のように股が弛んだ。
益岡の手が太ももの隙間に潜り込んできた。タランチュラのように指を蠢かせながら太ももの内側をくすぐった。
じわりじわりと陰部に迫ってくる指を、彩乃は目で追っていた。するとその五本の指は、突然クロッチのすぐ前でピタリと動きを止め、人差し指だけがそこにヌッと伸びた。
人差し指の先は、湿ったクロッチに突き刺さった。そのまま縦のワレメに沿ってゆっくりと動き出し、何度も何度も上下に往復した。彩乃は下唇をギュッと噛みしめながら、そのいやらしい指の動きを黙って見ていた。
「ミクルンはね、ここが武器なんですよ。トリプルアクセルで食い込んだパンツを敵に見せ、敵がそこに見とれている隙を狙って必殺のミクルンキックを喰らわすんですよ。だからミクルンのコスプレする時は、この食い込みが一番重要なんですよね……」
益岡が彩乃の耳元にそう囁いた。それと同時に、上下に動いていた指先が硬くなったクリトリスでピタリと止まり、いきなりそれをグリグリと転がしてきた。
「あっ」と声を漏らした彩乃は、思わず益岡の腕に顔を押し付けていた。
すると益岡は、そんな彩乃の肩にそっと腕を伸ばし、悶える彩乃を腕に抱いた。そしてそのまま彩乃の体を後ろに倒すと、クリトリスを弄る指を更に早めながら、「大きなクリちゃんですね」と不気味に笑った。

「恐らくこれは、濡れすぎなんですよ。これだけ濡れてると生地が肌にピタリと張り付いてしまって、裂け目に食い込むだけの弛みがなくなってしまうんですよ……きっと……」
益岡はそう言いながらも、その言葉に反して更にそこが濡れるような行為を執拗に繰り返した。
クロッチの隙間に指を入れ、濡れた陰唇を掻き分けながらクリトリスを捕らえた。それを二本の指でヌルヌルと滑らせながら、もう片方の手で上着を捲り、ポテッと零れ出た柔肉をムニュムニュと揉み始めた。
彩乃の頭の中では、あのオナホールを舐めた時から溜まりに溜まっていた欲望が、わんわんと渦を巻いていた。益岡の指の動きが速くなるにつれ、その渦の回転も速くなり、いつの間にか彩乃は益岡の痩せこけた体にしがみつきながら、その腕の中で激しく悶えていた。
益岡は、そんな彩乃を満足そうに見つめながら、ソッとベッドに寝かせた。そして、「このヌルヌルしたものを全て取り除いてしまわなければ、いつまで経っても綺麗な食い込みはできませんからね……」と囁きながら彩乃のパンティーを下ろした。
濡れたクロッチが恥骨から剥がれ、そこに無数の糸を引いた。グショグショのパンティーが骨盤をすり抜けていく感覚に、彩乃は身を捩って悶えた。
そんな彩乃の股を益岡は強引に広げた。そして「僕がこのヌルヌルを綺麗に舐め取ってあげますよ……」と、いやらしく微笑みながら、そこに顔を埋めたのだった。

益岡の舌が陰毛をジャリジャリと這い回った。飛び出したクリトリスをベロリと一舐めすると、そのままワレメに沿って舌を下らせ、汁が溜まった肛門をチロチロと舐めた。
びらびらの陰唇を唇で挟み、ピチャピチャと下品な音を鳴らしてしゃぶった。飛び出したクリトリスを指で転がしながらワレメに吸い付き、舌先で膣穴をこじ開けると、固めた舌を膣の中に入れてきた。
その長い舌は、まるでウナギのようにヌルヌルと泳ぎながら穴の中を往復した。それをされながらクリトリスを指で転がされ、そしてもう片方の手の指で乳首をキュッと摘まれると、堪らなくなった彩乃は、顔をイヤイヤと振りながら大きな声で喘いでしまった。
「ヤリたかったんでしょ……最初からここにはヤリに来たんでしょ……わかってますよ……」
そう意味ありげに笑いながら体を起こした益岡は、ハァハァと肩で息をしている彩乃を見下ろしながらズボンを脱ぎ始めた。
ブルーのトランクスをずらすと、カチカチに硬くなったペニスがヌッと現れ、彩乃の腹の上でビンっと跳ねた。仮性包茎なのか、その亀頭はあんず色とサーモンピンクのツートンに分かれていたが、しかしその根元は木の根のようにがっしりとし、天狗の鼻のように逞しかった。
そんな真っ黒な肉棒をヒコヒコと揺らしながら、益岡は素早くシャツを脱いだ。そして全裸になるなり彩乃の体にしがみつき、ハフハフと臭い息を吐きながら、ポテポテと揺れる乳房に顔を埋めた。
「セックスのためだけに作られたような体してるよね……」
そうニヤニヤと笑いながら肉棒の根元を握り、それをぐるぐると回転させながらワレメに亀頭を滑らせた。

クリトリスも小陰唇も同時に掻き回され、ピチャ、ピチャ、といやらしい音が響いた。その音にクラクラと目眩を感じた彩乃が、思わず「早く入れてください……」と益岡の耳元に囁くと、その声に興奮した益岡は、「変態……」と呟きながら彩乃の顔を覗き込み、悶える彩乃の唇に乱暴に舌を入れてきた。
益岡の獰猛な舌が彩乃の口内を激しく掻き回した。彩乃はウグウグと唸りながら益岡の首にしがみつくと、腰を突き出しうねうねとくねらせた。
すると、そこに押し付けられていた亀頭がツルンっと穴の中に滑り込み、二人が同時に「うっ」と唸った。
益岡は鼻息を荒くさせながら猛然と腰を振ってきた。
彩乃はそんな益岡の舌に自分の舌をヌルヌルと絡めながら股を大きく開いた。
肉棒は根元まで突きささりながら穴の中をズプズプとピストンした。互いの敏感な部分を擦り合わせながら悶える二人は、そのまま明け方までベッドをギシギシと鳴らしていたのだった。

(つづく)
《←目次》《3話へ→》
彩乃はソッとベッドから降りた。そしてそのダンボールの前で静かに正座しながら、「すみません……」と小さく呟いた。
「……あのねぇ、キミは知らないかもしれないけど、撮影会ってのは基本的に時給なんですよ。それは女の子の着替えの時間もトイレの時間も含まれてるんですよ」
「…………」
「だから早く着替えてよ。時間がもったいないだろ。ほら、早くこのパンツに履き替えて」
そう言いながらダンボールの中から白いパンティーを摘まみ出し、それを正座する彩乃の太ももに投げつけた。
戸惑う彩乃を、益岡はベッドの上からカマキリのような目で睨んでいた。そして右足をカクカクと貧乏揺すりさせると、「もしかして恥ずかしいの?」と笑った。
それは、全てを知り尽くした不敵な笑みだった。オナホールをこっそり舐めていた事や、濡れた陰部を弄っていた事など、それらをスマホで覗き見していたからこそできる自信に満ちた笑みだった。
そんな益岡の冷たい笑みに背筋をゾクッとさせた彩乃は、恐る恐るその命令に従った。見ず知らずの男の目前で着替えさせられるというのは、屈辱以外の何物でもなかったが、しかしそんな無慈悲な命令はたちまち彩乃の陰部をジクジクと疼かせ、異様な興奮に襲われた彩乃は、デニムのミニスカートの中からパンティーを摘み下ろしたのだった。

いつの間にか立場は逆転していた。この場合、本来ならスマホで盗撮されていた彩乃の方が怒っていいはずなのに、なぜか彩乃が怒られていた。
そもそも、床に正座したのが悪かった。床に正座しているのとベッドに座っているのとでは、明らかにベッドから見下ろしている者の方が立場は優勢になり、その時点で既に彩乃は益岡に逆らえなくなってしまっていたのだった。
しかし彩乃はこの状況に満足していた。彩乃という女は、虐げられる事で快楽を得るという真のマゾヒストなため、理不尽な上下関係による強要等は即ちエロスなのだ。だからそんな命令に対しても、正常者が感じるような屈辱や怒りといった感情は生まれず、異常者的な快楽がムラムラと湧き上がってくるのだった。
ジッと項垂れたまま、くるくるに丸まったパンティーを足首から抜き取った。それを背後にソッと隠そうとすると、いきなり益岡は「あっ」と言いながらベッドの下から円形状のカゴを取り出し、「脱いだ服はここに入れて」とそれを彩乃に突きつけたのだった。
彩乃の胸底から新たな興奮が湧き上がってきた。そのパンティーのクロッチは激しく濡れており、それをそのままそのカゴの中に入れてしまえば、恥ずかしい部分が益岡に見られてしまうのだ。
その新たな興奮は羞恥心だった。汚れた下着を見られるというのは、直接陰部を見られることよりも恥ずかしい事であり、まして、隠れてこっそり見られるならまだしも、目の前でそれを見られるというのは強烈な羞恥なのだ。
そんな羞恥心に彩乃の胸はギュンギュンと締め付けられた。今にも声が漏れてきそうな唇をワナワナと震わせながら、その汚れたパンティーをカゴの中にパサっと落とした。
チラっとそのパンティーを横目で見ながらも、益岡はそのカゴを床に投げた。そして両膝に両肘をつきながら前屈みになると、「ほら、早く全部脱いで」と彩乃の顔を覗き込んだ。
彩乃はパーカーのジッパーを恐る恐る下ろした。すぐ目の前には益岡の顔が迫っており、次から次へと溢れてくる興奮の鼻息がバレてしまわないかとヒヤヒヤしていた。
パーカーの前がパラリとはだけた。ブラジャーは、さっきずり下げた状態のままであり、ロケット型の巨乳がフルフルと揺れていた。
項垂れたままデニムのミニスカートのボタンを外した。そして、ゆっくりと膝立ちになりながらスカートを下ろそうとすると、不意にベッドの益岡が「うわぁ……」と唸った。
項垂れたままソッと益岡を見ると、いつの間にそれをカゴから取り出したのか、益岡は両手で彩乃のパンティーを広げながらそこを凝視していた。
カッと顔が熱くなり、慌てて「やめてください」とそれを奪い取ろうとすると、益岡は、パンティーを握る手をサッと高く掲げた。そしてそれを頭上でヒラヒラさせると、「どうしてこんなに濡れてるんですか」と、まるで男子が女子に意地悪しているような幼稚な口調でニヤニヤと笑った。
「返してください」と顔を真っ赤にさせながら、彩乃はそれを奪い取ろうと益岡の頭上に手を伸ばした。その勢いで大きな柔肉がタプンッと揺れ、それが益岡の顔にペタンっと当たった。彩乃は慌てて手を引っ込めた。その柔肉を両手で抱きしめながらそれを隠すと、今にも泣き出しそうな表情で「もうやめて下さい……」と、その場にへたり込んだ。
益岡は、そんな彩乃を幼稚な表情で見下ろした。そして汚れたクロッチを大きく広げ、それを彩乃に見せつけながら、「見てよ。こんなに濡れてますよ」とニヤニヤと笑った。

「凄いねこれ……」と呟きながら、益岡は恐る恐るクロッチに鼻を近づけた。「やめてください……」と声を震わせる彩乃を上目遣いでジッと見つめながら、まるでソムリエのように鼻をスッスッと小刻みに鳴らすと、「ヤリマンの匂いがしますよ」とニヤリと笑った。
羞恥で唇が震えた。陰部を直接嗅がれるのは何でもないのに、不思議とそれが汚れたクロッチだと、目眩を感じるほどの羞恥に襲われた。
そんなクロッチに益岡は人差し指を突き立てた。そしてそのテラテラと輝く汁に指腹をヌルヌルと滑らせながら、「キミのアソコもこんな風にヌルヌルしてるのかな?」と呟くと、あたかも彩乃の陰部を弄っているかのように、指をいやらしく動かした。
ヌルヌルと滑る指を彩乃は見ていた。そんなに恥ずかしいのなら見なければいいのに、それでも彩乃は、胸溜まった興奮のマグマを必死に堪えながら、敢えてそこから目を逸らさなかった。
すると益岡は、そんな彩乃を更に挑発するかのように、ゆっくりとそこに舌を伸ばした。まるでヨーグルトの蓋を舐めるかのように、そのドロドロとした汁をベロベロと舐めまくり、声をネバネバさせながら、「スカートも脱いで……」と呟いた。
舌が動く度に、納豆のような糸が何本も引いていた。それをジッと見つめていると、本当に自分のアソコが舐められているような感覚にとらわれ、そこに感情移入してしまった彩乃は、胸底から溢れる息を、「んふっ……」と鼻から漏らした。
滅茶苦茶にしてほしい。お尻の穴まで犯してほしい。
そんな自虐的な興奮に襲われながら彩乃はスカートを脱いだ。
そして、全裸でそこに正座したまま、ぺちゃぺちゃとクロッチを舐めまくる益岡を黙って見ていた。

益岡は、全裸の彩乃を横目で見ていた。汚れたクロッチを舐め、自分で自分の股間をスリスリと擦りながら、全裸で正座している彩乃を視姦していた。
(二万円で撮影させてください)
そんなオファーは、思わぬ方向へと向かおうとしていた。もちろん彩乃は撮影だけで終わるわけがないと思っていた。逆にそっちのハプニングを期待していたほどだった。
しかし、現実は予想を遥かに超えていた。まさかここまでフェティシズムな変態男だとは思ってもいなかった。
今まで、暴力的なフェチ男には何度か凌辱されたことはあったが、こんなオタク系のフェチ男は初めてだった。
益岡は繊細な男だった。マニアックでフェティシズムなサディストだった。だから今までの男たちのようにガツガツと彩乃の体を貪っては来なかった。彩乃のマゾ心を見透かしているかのようにジワリジワリと屈辱を与え、下品な言葉と残酷な行動で逃げ場のない羞恥を与え、そしてそれに翻弄された彩乃を性人形のように自由自在に操った。
それは、今までに感じたことのない不思議な興奮だった。羞恥心と屈辱感が、これほどストレートに快楽へと変えられたのは初めてだった。
ベッドの前に立たされた彩乃は、まるで着せ替え人形のように、益岡に衣装を着せられていた。ピンクのドレスを着せられると、再び床に座らされ、慣れた手つきでメイクを施された。
彩乃は黙ったまま正座していた。時折、鏡を見せられ、「ミクルンの場合はね、ツケマツゲを二枚重ねにするんですよ。こうしてほんの少しだけ微妙にずらしてやるとね、ほら、よりミクルンっぽくなるでしょ」などと、そんなどうでもいい説明を聞かされながら、口紅さえも益岡に塗られていた。
ピンクのウィッグを頭に被せられ、それ専用の櫛で髪をガサガサととかれた。そこに銀のティアラを乗せると、益岡は「よく似合いますよ」と彩乃に鏡を見せ、満足そうにニヤニヤと笑った。
そして再びそこに立たされた。益岡はベッドに座ったまま、「あとはこれを穿いたら完成ですよ」と嬉しそうに言うと、床のダンボールに手を伸ばし、そこから白い木綿のパンティーを摘み上げた。
言われるがままに右足を持ち上げた。ミニのドレスが捲れ、真っ白な股間に渦巻く陰毛がジリッと擦れた。ベッドに座る益岡は、真正面でそれをチラチラと見ながら右足にパンティーを通した。それはまるで子供にパンツを履かせているようだった。
パンティーはスルスルと滑りながらヘソに向かって上ってきた。益岡はパンティーの両端を摘みながら、それを尻の半分まで持ち上げた。そしてわざとフロント部分をキュッキュッと食い込ませると、ポスターのミクルンピューラと同じ一本の縦線をそこにくっきりと作った。
それは完璧なコスプレだった。過去相当数の女の子にこうしてコスプレさせてきたのであろう、益岡の着せ替えは随分と手慣れていたのだった。
「やっぱり僕の睨んだとおりだ。キミはミクルンに瓜二つだ……」
そう身震いしながらカメラを手に取ると、益岡は彩乃に様々なポーズを取らせた。
興奮した益岡は、まるでプロのカメラマンのように、「いいよ〜最高だよ〜」などと呟きながらシャッターの音を連続して響かせていた。
しかし、床に寝転がりながらローアングルでスカートの中を撮ろうとした時、突然益岡が「ダメだなぁ……」と首を傾げながら立ち上がった。
「食い込みが弱いんですよ。すぐに元に戻ってしまうんですよね……」
そう舌打ちしながら、益岡は彩乃をベッドに座らせた。そして自分もその隣りに腰掛けると、いきなりスカートをペロリと捲った。
一瞬、股を強く閉じた彩乃だったが、しかし、益岡の手が太ももを優しく摩り始めると、まるで催眠術のように股が弛んだ。
益岡の手が太ももの隙間に潜り込んできた。タランチュラのように指を蠢かせながら太ももの内側をくすぐった。
じわりじわりと陰部に迫ってくる指を、彩乃は目で追っていた。するとその五本の指は、突然クロッチのすぐ前でピタリと動きを止め、人差し指だけがそこにヌッと伸びた。
人差し指の先は、湿ったクロッチに突き刺さった。そのまま縦のワレメに沿ってゆっくりと動き出し、何度も何度も上下に往復した。彩乃は下唇をギュッと噛みしめながら、そのいやらしい指の動きを黙って見ていた。
「ミクルンはね、ここが武器なんですよ。トリプルアクセルで食い込んだパンツを敵に見せ、敵がそこに見とれている隙を狙って必殺のミクルンキックを喰らわすんですよ。だからミクルンのコスプレする時は、この食い込みが一番重要なんですよね……」
益岡が彩乃の耳元にそう囁いた。それと同時に、上下に動いていた指先が硬くなったクリトリスでピタリと止まり、いきなりそれをグリグリと転がしてきた。
「あっ」と声を漏らした彩乃は、思わず益岡の腕に顔を押し付けていた。
すると益岡は、そんな彩乃の肩にそっと腕を伸ばし、悶える彩乃を腕に抱いた。そしてそのまま彩乃の体を後ろに倒すと、クリトリスを弄る指を更に早めながら、「大きなクリちゃんですね」と不気味に笑った。

「恐らくこれは、濡れすぎなんですよ。これだけ濡れてると生地が肌にピタリと張り付いてしまって、裂け目に食い込むだけの弛みがなくなってしまうんですよ……きっと……」
益岡はそう言いながらも、その言葉に反して更にそこが濡れるような行為を執拗に繰り返した。
クロッチの隙間に指を入れ、濡れた陰唇を掻き分けながらクリトリスを捕らえた。それを二本の指でヌルヌルと滑らせながら、もう片方の手で上着を捲り、ポテッと零れ出た柔肉をムニュムニュと揉み始めた。
彩乃の頭の中では、あのオナホールを舐めた時から溜まりに溜まっていた欲望が、わんわんと渦を巻いていた。益岡の指の動きが速くなるにつれ、その渦の回転も速くなり、いつの間にか彩乃は益岡の痩せこけた体にしがみつきながら、その腕の中で激しく悶えていた。
益岡は、そんな彩乃を満足そうに見つめながら、ソッとベッドに寝かせた。そして、「このヌルヌルしたものを全て取り除いてしまわなければ、いつまで経っても綺麗な食い込みはできませんからね……」と囁きながら彩乃のパンティーを下ろした。
濡れたクロッチが恥骨から剥がれ、そこに無数の糸を引いた。グショグショのパンティーが骨盤をすり抜けていく感覚に、彩乃は身を捩って悶えた。
そんな彩乃の股を益岡は強引に広げた。そして「僕がこのヌルヌルを綺麗に舐め取ってあげますよ……」と、いやらしく微笑みながら、そこに顔を埋めたのだった。

益岡の舌が陰毛をジャリジャリと這い回った。飛び出したクリトリスをベロリと一舐めすると、そのままワレメに沿って舌を下らせ、汁が溜まった肛門をチロチロと舐めた。
びらびらの陰唇を唇で挟み、ピチャピチャと下品な音を鳴らしてしゃぶった。飛び出したクリトリスを指で転がしながらワレメに吸い付き、舌先で膣穴をこじ開けると、固めた舌を膣の中に入れてきた。
その長い舌は、まるでウナギのようにヌルヌルと泳ぎながら穴の中を往復した。それをされながらクリトリスを指で転がされ、そしてもう片方の手の指で乳首をキュッと摘まれると、堪らなくなった彩乃は、顔をイヤイヤと振りながら大きな声で喘いでしまった。
「ヤリたかったんでしょ……最初からここにはヤリに来たんでしょ……わかってますよ……」
そう意味ありげに笑いながら体を起こした益岡は、ハァハァと肩で息をしている彩乃を見下ろしながらズボンを脱ぎ始めた。
ブルーのトランクスをずらすと、カチカチに硬くなったペニスがヌッと現れ、彩乃の腹の上でビンっと跳ねた。仮性包茎なのか、その亀頭はあんず色とサーモンピンクのツートンに分かれていたが、しかしその根元は木の根のようにがっしりとし、天狗の鼻のように逞しかった。
そんな真っ黒な肉棒をヒコヒコと揺らしながら、益岡は素早くシャツを脱いだ。そして全裸になるなり彩乃の体にしがみつき、ハフハフと臭い息を吐きながら、ポテポテと揺れる乳房に顔を埋めた。
「セックスのためだけに作られたような体してるよね……」
そうニヤニヤと笑いながら肉棒の根元を握り、それをぐるぐると回転させながらワレメに亀頭を滑らせた。

クリトリスも小陰唇も同時に掻き回され、ピチャ、ピチャ、といやらしい音が響いた。その音にクラクラと目眩を感じた彩乃が、思わず「早く入れてください……」と益岡の耳元に囁くと、その声に興奮した益岡は、「変態……」と呟きながら彩乃の顔を覗き込み、悶える彩乃の唇に乱暴に舌を入れてきた。
益岡の獰猛な舌が彩乃の口内を激しく掻き回した。彩乃はウグウグと唸りながら益岡の首にしがみつくと、腰を突き出しうねうねとくねらせた。
すると、そこに押し付けられていた亀頭がツルンっと穴の中に滑り込み、二人が同時に「うっ」と唸った。
益岡は鼻息を荒くさせながら猛然と腰を振ってきた。
彩乃はそんな益岡の舌に自分の舌をヌルヌルと絡めながら股を大きく開いた。
肉棒は根元まで突きささりながら穴の中をズプズプとピストンした。互いの敏感な部分を擦り合わせながら悶える二人は、そのまま明け方までベッドをギシギシと鳴らしていたのだった。

(つづく)
《←目次》《3話へ→》
オタクの穴3
2013/06/13 Thu 00:02
朝から鳴りっぱなしのゲーム音がピタリと止まると、不意に窓の外から、「バックします、バックします」という宅配便らしきトラックのアナウンスが聞こえてきた。
ベッドでゲームのコントローラーを握っていた益岡が、「早くしてよ、十五分の遅刻だよ」と言いながら、床でキャリーバッグに衣装を詰め込んでいる彩乃の背中を足の爪先でツンッと突いた。
よろめく彩乃は、「ちょっと待ってよ」と言いながら、パンパンのバッグの中に白いブーツを押し込むと、「だって、急にマラッシュの衣装に変更だなんって言うんだもん……」と、その蓋を無理やり閉めた。
ふふふ、っと笑う益岡は、「青木君は異端児だからね、ヒロインよりもヒールが好きなんですよ」と薄気味悪く呟いた。
再び益岡がゲームのスイッチを入れると、部屋中に電子音が響き、いつもと同じ空気が部屋に流れた。
台所の安っぽいフローリングにキャリーバッグをゴロゴロと鳴らしながら玄関のドアを開けようとすると、背後で益岡が、コントローラーをピコピコさせながら「ねぇ」と呼び止めた。
「青木君ってのはね、彼女いない歴三十五年の素人童貞なんですよ。常にすっごく溜まってる人だから、きっとキミの胸とかお尻とか色々触ってくると思うけど、絶対にエッチだけはさせないでよね……」
益岡は、テレビ画面をジッと見つめたまま言った。「わかってる」と呟きながらドアを開けた。午前十時の強烈な直射日光が、埃にまみれた廊下を爛々と照らしていた。「信じてるから」と呟く益岡の言葉を背後にドアを閉めた。
クラックが無数に走るコンクリートの廊下にキャリーバッグを滑らせ、赤サビだらけの縞鋼板の階段を、バッグを担ぎながら一歩一歩慎重に下りた。アパートの前の細い路地の角で、さっきの宅配トラックが立ち往生していた。「右に曲がります、右に曲がります」と執拗に警告を促しながらも、完全にその細い角で身動きできなくなっていた。
子安駅から電車に乗った。鶴見駅で降りて東口に出た。待ち合わせの横浜銀行へとキャリーバッグをガラガラ引っ張っていくと、銀行横の高架橋の下で、ハザードを点滅させている白いワンボックスカーが見えた。
きっとこの車だと思いながら、恐る恐る助手席の窓を覗いた。いかにもオタクっぽい薄汚い男が、運転席でスマホを弄りながらマックシェイクを啜っていた。
コンコンと窓をノックすると、一瞬ビクンっと跳ね起きた男は、慌てて助手席の窓を開けた。
「青木さんですか?」と聞くと、男は「うん」と小さく頷きながら助手席のドアを開けた。そしてその助手席に置いてあったマックの袋を乱暴に後部座席へと放り投げながら、「荷物は後ろに積んで」と、唇の端を歪めて笑ったのだった。
一ヶ月前のあの日、彩乃は初めて会った益岡と翌朝の九時までセックスをした。
ミンクルの衣装は、初期、中期、後期の三パターンに分かれており、おまけに必殺技によって変身する衣装が異なっていたため、ネタは尽きることがなく、各衣装に着替える度に彩乃はセックスを求められていたのだった。
その翌日も益岡に呼び出された。そして同じように何度も衣装を着替えさせられながら明け方までセックスした。そしてその日の帰り際、突然益岡からバイトの話を持ちかけられた。
「簡単なバイトです。コスチュームを着て撮影されるだけでいいんです。それだけで一時間三千円です。しかも、お客はみんな僕の知り合いばかりですから安心です。どうです、いい話でしょ、やってみませんか?」
そう言いながら益岡は、「ミンクルにそっくりなキミなら、軽く二百万くらいは稼げますよ」と自信ありげに笑った。
二百万円。その数字が彩乃の頭に刷り込まれた。
その時の彩乃は、今すぐにでも家を出たかった。二百万あればこの町を出れると思った。自分の過去を誰も知らない町で、小さなマンションを借りてひっそりと暮らすことができると思った。
だから彩乃は益岡のその話に飛びついた。すると益岡は、『ミンクル彩(18)・個人撮影会・一時間五千円・お申し込みは益岡まで』と書いたメールを作成し、コスプレした彩乃の画像と共に次々と知り合いに送り始めた。
いつの間にか彩乃の芸名は、『ミンクル彩』と決められていた。そしてその差額の二千円についても、「マネージメントとして僕が貰うから」と勝手に決められていたのだった。
そんなメールを送って一時間も経たないうちに、益岡の携帯に六件のメールが届いた。それら全て『ミンクル彩』の撮影会の申し込みであり、さっそく益岡はそのスケジュールを立て始めた。
最初の客は三十代の男だった。呼び出された長者町のマンションに一人で行くと、青い王子服に白いタイツを履いた肥満男が待っていた。
それは、ミンクルに出てくるスパルト王子のコスプレだった。まるでグリム童話に出てくる悪いガマガエル王子のように醜かったが、しかし本人は至って真面目にそれを着ていた。
部屋には、ミンクルのフィギアがショップのように並べられていた。そこには全裸のミンクルが亀甲縛りをされている物や、しゃがんで小便をしている物まであり、見るからに危険な匂いが漂っていた。
そんなオタク親父だったが、しかし撮影中は意外にも紳士だった。その視線は常に彩乃の胸や太ももをいやらしく凝視していたが、それでもそこに触れたりすることは一度もなかった。
しかし彩乃は知っていた。紳士面したこの男が、着替え室にカメラを仕掛けている事を。
着替え室と言っても、それはリビングの隅の一角をピンクのカーテンで仕切っただけのお粗末な空間だった。そこでミンクルの衣装に着替えている時、ふと足元に置いてあったクズカゴの裏に、赤いランプが光っているのを発見した。最初は、携帯電話か何かを充電しているのだろうと思っていたが、しかし、ソックスを脱ごうと前屈みになった時、それがハンディカメラの録画ランプだということに気づいた。
しかし彩乃は知らんぷりした。それに気づかないふりをして着替えを続けた。今更着替えを盗撮されたくらいで、ここまで汚れてしまった自分の過去が変わるわけでもないのだ。

そんなオタクばかりを毎日三人、コンスタントにこなしていた。このオタクたちは、常に一触即発の危険を漂わせていたが、しかし、絶対に乱暴はしてこなかった。
内気なオタクたちは、トイレや着替え室にカメラを仕掛けたり、撮影中にこっそりパンチラを撮るのが関の山だった。堂々とセクハラしてくる者は一人もいなかったため、仕事としては随分と楽だった。
一回の撮影会で最低二時間くらいかかっていた。一日二万円ほどの収入となり、一ヶ月もすると貯金通帳には五十万円ほどのお金が貯まっていた。
当初の二百万円には程遠い数字だったが、しかし、今までそんな大金を目にしたこともなかった彩乃は、それで十分に満足していた。
この調子で行けば、来月にはこの町から出られると思った彩乃は、その計画を益岡に話した。そして、残りの一ヶ月はできるだけ多くの客を紹介して欲しいと頼むと、益岡は、ミンクルの天敵であるパラノア大魔王の真似をしながら「了解した」と戯けて笑ったのだった。
青木のマンションは、日陰の住宅街の中に埋もれるように建っていた。
いかにもバブル期に建てられた豪華なマンションだったが、しかしその白い外壁タイルは水垢で黒ずみ、そこに掲げてある『入居者募集』の看板の文字も無残に禿げていた。
ワンボックスカーは一階の駐車場に滑り込んだ。キュキュとタイヤを鳴らしながら何度かハンドルを切り、やっと301と書かれた狭いスペースに車を駐めた。
助手席のドアを開けると、静まり返った駐車場にコポコポと奇妙な音が響いていた。見ると駐車場のすぐ脇には用水路が流れており、その奇妙な音はそこから聞こえてくる水音だった。
「その用水路にはね、春になるとボラが大量発生するんだ」
そう呟きながら、青木は後部座席から彩乃のキャリーバッグを下ろした。そしてそれをそのままゴロゴロと引きずりながら歩き出したため、慌てて彩乃が「自分で持ちます」とキャリーバッグに手を伸ばそうとすると、青木は「それなら、先に行ってエレベーターのボタンを押しててよ」と笑いながら駐車場の奥を指差した。
「はい」と小さく返事をしながら彩乃は先に進んだ。静まり返った駐車場にヒールの踵がカツコツと響いた。ふと、あの細い用水路に大量発生したボラの大群が頭を過ぎり、歩きながら背筋がブルっと震えた。
しかしそれは、決してボラの大群を想像したからではなかった。それは、背後からゴロゴロと迫ってくる青木が、ミニスカートから伸びる太ももの裏や尻や腰を視姦している気配を感じたため震えたものだった。

青木の部屋は普通の部屋だった。フィギアもポスターも何もなく、比較的すっきりしていた。
着替えはここでして下さいと言われ脱衣場に案内された。甘いボディーソープの香りが漂い、棚のタオルは一枚一枚几帳面に畳まれていた。
そこにカメラは見当たらなかった。今までのオタクたちは、最低でも着替え室とトイレにはカメラを仕掛けていた。この業界はそれが当たり前だった。暗黙の了解で、盗撮も料金に含まれているのだ。
が、しかし、ここにはカメラが仕掛けられていなかった。
彩乃は、今までのオタクとは何かが違うと違和感を感じながらも、マラッシュの衣装に着替えた。いつもと違うメイクをし、ゴールドのウィッグを付け、緑のリボンでサイドテールに縛った。
最後はパンティーだった。ミクルンのライバルであるマラッシュは、性器も肛門もないミューテーションだったため、マラッシュのコスプレをする時はノーパンと決まっているのだ。
ミニスカートの中に手を入れ、そのままパンティーを太ももまでスルッと下ろした。うぐいす色のパンティーの裏は、一部だけがテラテラと輝き、そこに透明の糸を引いていた。
それは、青木の執拗なる視姦によって滲み出た恥汁だった。その粘りっけのある汁を目にした瞬間、今まで草食系のオタク達に生殺しにされていた陰部がズキンっと疼いたのだった。

部屋へ行くと、青木はソファーにポツンと座りながらスマホを弄っていた。そこにはカメラも照明も何も準備されておらず、今から撮影する気配は全く感じられなかった。
彩乃に気づいた青木は、「あっ、どうぞ」と言いながら尻をずらしてソファーを空けた。恐る恐るそこに腰掛けると、「何か飲む?」と言いながらスマホをシャキンっと閉じた。
「いえ……」と首を振る彩乃の顔を青木は真正面から覗き込んだ。「かわいいね……だけど、やっぱりキミはマラッシュよりもミンクルに似てるね」などと呟きながら、右頭に縛ったサイドテールの髪を指で解き始めた。
今までの空気ではなかった。状況が全く違っていた。今までのオタクはお世辞など口にする間もなくカメラのシャッターを切りまくっていたのだ。
項垂れたまま黙っていた彩乃が、「あのぅ……」と言いながらソッと顔を上げた。真正面に迫る青木のギラギラした目に一瞬怯えながらも、「撮影は……」と聞いた。
「撮影?」と小首を傾げながら、青木は「僕にそんな趣味はないよ」と笑った。そして更に彩乃の顔に顔を近づけながら、「キミは撮影して欲しいの?」と囁き、彩乃の細い肩に腕を回してきたのだった。
やっぱりいつもと違う。
そう確信するなり、青木のカサカサの唇が彩乃の唇を塞いだ。そしてそのまま顔を斜めに向け、閉じていた彩乃の唇を舌でこじ開けてきた。
生温い青木の舌が、口内でゆっくりと回転した。頭の中で(どういうこと?)と問いながらも、その滑らかに動き回る青木の舌に彩乃は舌を絡めてしまっていた。
久しぶりの優しいキスは、瞬時に彩乃の脳を蕩けさせた。この一ヶ月、撮影が忙しくてセックスする暇がなかった。オタク達に着替えやトイレを盗撮され、性欲ばかりがムンムンと溜まっていたが、しかし、忙しさに駆られてそれを発散できずにいた。
そんな溜まりに溜まっていた性欲は、艶かしい舌で唇をこじ開けられた事によって一気に溢れ出した。
脳が乱れた彩乃は、舌で口内を掻き回されながら、「んんん……んんん……」と唸っていた。そしてここを触ってと言わんばかりに、自らノーパンの股を大きく開くと、衣装の上から胸を摩っていた青木の指が、まるでそこに吸い寄せられるようにスルスルと音を立てて下って行った。
すると、静かに舌を抜いた青木が、割れ目に四本の指を滑らせながら「もうヌルヌルだね……」っと囁いた。

気がつくと彩乃は悲鳴をあげていた。四本の指が、プチャプチャと卑猥な音を立てて這い回る度に彩乃が悲鳴をあげるため、それはまるでギターを弾いているようだった。
その指が、ヌルヌルと滑りながら穴をこじ開けてきた。縦に並んだ四本の指は、明らかに割れ目よりも大きかったが、それでもその指は縦に整列したまま前に進み、強引に穴の中に潜り込んできた。
四本に並んだ指は、歪に窄められながらも、狭い穴の中をグニョグニョと蠢いた。それらが根元まで沈んでしまうと、二軍の親指が陰毛を掻き分け、そこに飛び出しているクリトリスに攻撃を仕掛けてきた。
穴の中を搔き回す四本の指と、クリトリスを乱暴に転がし回る親指に、彩乃は、「はぁぁぁぁん」と大きな悲鳴をあげ、思わず腰を引いてしまった。
すると指は、いとも簡単にヌルっと抜けた。青木は無数の糸を引く指を彩乃に見せつけた。そして「噂通りの変態だね」と微笑むと、そのままソファーを滑り降り、彩乃の真正面にしゃがみながらその両足をソファーの上にゆっくりと持ち上げた。
M字に広げられた股の中を、青木はニヤニヤしながら見ていた。「尻の穴にまで垂れてるよ」などと羞恥を与えながら、そのヌルヌルに濡れた指先を割れ目に沿って上下させ、そこに卑猥な音をピチャピチャと立てた。

そうしながらも青木は、悶える彩乃に「おっぱい出してごらん」と囁いた。
その青木の声が脳をぐるぐると回転させた。彩乃は目眩を感じながらもその命令に従い、そこに巨大な柔肉を波打たせた。
「おっきなおっぱい……乳首もビンビンに勃ってんじゃん」
青木はニヤニヤ笑いながら、痛々しいまでに勃起した乳首を指でポロポロと転がした。すかさず彩乃が「あああん」と身を捩らせると、そんな彩乃を満足そうに見つめながら、「さすが超人気のミクルン彩だけあって感度いいね」と意味ありげに笑った。
再び青木は両足を持ち上げた。ソファーの上でまんぐり返しのような体勢にしながら、改めて彩乃の目を見つめた。
「どうして欲しい? もうチンチン入れちゃう? それとも先に舐めて欲しい?」
まるで子供に話しかけるような幼稚な口調でそう言いながら、青木は首を小さく傾げた。
彩乃は、ハァハァと荒い息を吐きながらそんな青木を見下ろしていた。そして、「……舐めて……ください……」と途切れ途切れに答えると、剥き出しにした膣をヒクヒクさせながら腰を持ち上げた。
ニヤリと笑った青木は、真っ赤な舌をゆっくりと突き出した。わざとそのシーンを彩乃に見せつけようと両手で尻を持ち上げると、そのドロドロにふやけた割れ目に舌をペタッと這わせた。
ぺちゃ、ぺちゃ、ぺちゃ、と、まるで猫がミルクを飲んでいるような音が部屋に響いた。その舌は、膣、クリトリス、小陰唇の隙間など、あらゆる部分を滑りまくり、キュッと窄んだ肛門までも丁寧に舐めていた。
そうしながらも青木は上目遣いで彩乃を見つめ、時折、「これで四万なら安いもんだね」などと呟いた。
そんな青木の呟く言葉を朦朧とする意識の中で聞きながら、彩乃はやっとこの状況を理解した。
(これは最初から……撮影会ではなく売春だったんだ……)
益岡に売られたんだと思った。マンションを出る前、「絶対にエッチだけはさせないでよね」などと念を押していた益岡のわざとらしさに怒りを覚えた。
しかし、だからと言って、今のこの状況から逃れたいというわけではなかった。
陰部を舐められながら悶えている彩乃は、益岡に対する不信感を激しく募らせながらも、早く肉棒を入れて欲しいと思っていたのだった。

(つづく)
《←目次》《4話へ→》
ベッドでゲームのコントローラーを握っていた益岡が、「早くしてよ、十五分の遅刻だよ」と言いながら、床でキャリーバッグに衣装を詰め込んでいる彩乃の背中を足の爪先でツンッと突いた。
よろめく彩乃は、「ちょっと待ってよ」と言いながら、パンパンのバッグの中に白いブーツを押し込むと、「だって、急にマラッシュの衣装に変更だなんって言うんだもん……」と、その蓋を無理やり閉めた。
ふふふ、っと笑う益岡は、「青木君は異端児だからね、ヒロインよりもヒールが好きなんですよ」と薄気味悪く呟いた。
再び益岡がゲームのスイッチを入れると、部屋中に電子音が響き、いつもと同じ空気が部屋に流れた。
台所の安っぽいフローリングにキャリーバッグをゴロゴロと鳴らしながら玄関のドアを開けようとすると、背後で益岡が、コントローラーをピコピコさせながら「ねぇ」と呼び止めた。
「青木君ってのはね、彼女いない歴三十五年の素人童貞なんですよ。常にすっごく溜まってる人だから、きっとキミの胸とかお尻とか色々触ってくると思うけど、絶対にエッチだけはさせないでよね……」
益岡は、テレビ画面をジッと見つめたまま言った。「わかってる」と呟きながらドアを開けた。午前十時の強烈な直射日光が、埃にまみれた廊下を爛々と照らしていた。「信じてるから」と呟く益岡の言葉を背後にドアを閉めた。
クラックが無数に走るコンクリートの廊下にキャリーバッグを滑らせ、赤サビだらけの縞鋼板の階段を、バッグを担ぎながら一歩一歩慎重に下りた。アパートの前の細い路地の角で、さっきの宅配トラックが立ち往生していた。「右に曲がります、右に曲がります」と執拗に警告を促しながらも、完全にその細い角で身動きできなくなっていた。
子安駅から電車に乗った。鶴見駅で降りて東口に出た。待ち合わせの横浜銀行へとキャリーバッグをガラガラ引っ張っていくと、銀行横の高架橋の下で、ハザードを点滅させている白いワンボックスカーが見えた。
きっとこの車だと思いながら、恐る恐る助手席の窓を覗いた。いかにもオタクっぽい薄汚い男が、運転席でスマホを弄りながらマックシェイクを啜っていた。
コンコンと窓をノックすると、一瞬ビクンっと跳ね起きた男は、慌てて助手席の窓を開けた。
「青木さんですか?」と聞くと、男は「うん」と小さく頷きながら助手席のドアを開けた。そしてその助手席に置いてあったマックの袋を乱暴に後部座席へと放り投げながら、「荷物は後ろに積んで」と、唇の端を歪めて笑ったのだった。
一ヶ月前のあの日、彩乃は初めて会った益岡と翌朝の九時までセックスをした。
ミンクルの衣装は、初期、中期、後期の三パターンに分かれており、おまけに必殺技によって変身する衣装が異なっていたため、ネタは尽きることがなく、各衣装に着替える度に彩乃はセックスを求められていたのだった。
その翌日も益岡に呼び出された。そして同じように何度も衣装を着替えさせられながら明け方までセックスした。そしてその日の帰り際、突然益岡からバイトの話を持ちかけられた。
「簡単なバイトです。コスチュームを着て撮影されるだけでいいんです。それだけで一時間三千円です。しかも、お客はみんな僕の知り合いばかりですから安心です。どうです、いい話でしょ、やってみませんか?」
そう言いながら益岡は、「ミンクルにそっくりなキミなら、軽く二百万くらいは稼げますよ」と自信ありげに笑った。
二百万円。その数字が彩乃の頭に刷り込まれた。
その時の彩乃は、今すぐにでも家を出たかった。二百万あればこの町を出れると思った。自分の過去を誰も知らない町で、小さなマンションを借りてひっそりと暮らすことができると思った。
だから彩乃は益岡のその話に飛びついた。すると益岡は、『ミンクル彩(18)・個人撮影会・一時間五千円・お申し込みは益岡まで』と書いたメールを作成し、コスプレした彩乃の画像と共に次々と知り合いに送り始めた。
いつの間にか彩乃の芸名は、『ミンクル彩』と決められていた。そしてその差額の二千円についても、「マネージメントとして僕が貰うから」と勝手に決められていたのだった。
そんなメールを送って一時間も経たないうちに、益岡の携帯に六件のメールが届いた。それら全て『ミンクル彩』の撮影会の申し込みであり、さっそく益岡はそのスケジュールを立て始めた。
最初の客は三十代の男だった。呼び出された長者町のマンションに一人で行くと、青い王子服に白いタイツを履いた肥満男が待っていた。
それは、ミンクルに出てくるスパルト王子のコスプレだった。まるでグリム童話に出てくる悪いガマガエル王子のように醜かったが、しかし本人は至って真面目にそれを着ていた。
部屋には、ミンクルのフィギアがショップのように並べられていた。そこには全裸のミンクルが亀甲縛りをされている物や、しゃがんで小便をしている物まであり、見るからに危険な匂いが漂っていた。
そんなオタク親父だったが、しかし撮影中は意外にも紳士だった。その視線は常に彩乃の胸や太ももをいやらしく凝視していたが、それでもそこに触れたりすることは一度もなかった。
しかし彩乃は知っていた。紳士面したこの男が、着替え室にカメラを仕掛けている事を。
着替え室と言っても、それはリビングの隅の一角をピンクのカーテンで仕切っただけのお粗末な空間だった。そこでミンクルの衣装に着替えている時、ふと足元に置いてあったクズカゴの裏に、赤いランプが光っているのを発見した。最初は、携帯電話か何かを充電しているのだろうと思っていたが、しかし、ソックスを脱ごうと前屈みになった時、それがハンディカメラの録画ランプだということに気づいた。
しかし彩乃は知らんぷりした。それに気づかないふりをして着替えを続けた。今更着替えを盗撮されたくらいで、ここまで汚れてしまった自分の過去が変わるわけでもないのだ。

そんなオタクばかりを毎日三人、コンスタントにこなしていた。このオタクたちは、常に一触即発の危険を漂わせていたが、しかし、絶対に乱暴はしてこなかった。
内気なオタクたちは、トイレや着替え室にカメラを仕掛けたり、撮影中にこっそりパンチラを撮るのが関の山だった。堂々とセクハラしてくる者は一人もいなかったため、仕事としては随分と楽だった。
一回の撮影会で最低二時間くらいかかっていた。一日二万円ほどの収入となり、一ヶ月もすると貯金通帳には五十万円ほどのお金が貯まっていた。
当初の二百万円には程遠い数字だったが、しかし、今までそんな大金を目にしたこともなかった彩乃は、それで十分に満足していた。
この調子で行けば、来月にはこの町から出られると思った彩乃は、その計画を益岡に話した。そして、残りの一ヶ月はできるだけ多くの客を紹介して欲しいと頼むと、益岡は、ミンクルの天敵であるパラノア大魔王の真似をしながら「了解した」と戯けて笑ったのだった。
青木のマンションは、日陰の住宅街の中に埋もれるように建っていた。
いかにもバブル期に建てられた豪華なマンションだったが、しかしその白い外壁タイルは水垢で黒ずみ、そこに掲げてある『入居者募集』の看板の文字も無残に禿げていた。
ワンボックスカーは一階の駐車場に滑り込んだ。キュキュとタイヤを鳴らしながら何度かハンドルを切り、やっと301と書かれた狭いスペースに車を駐めた。
助手席のドアを開けると、静まり返った駐車場にコポコポと奇妙な音が響いていた。見ると駐車場のすぐ脇には用水路が流れており、その奇妙な音はそこから聞こえてくる水音だった。
「その用水路にはね、春になるとボラが大量発生するんだ」
そう呟きながら、青木は後部座席から彩乃のキャリーバッグを下ろした。そしてそれをそのままゴロゴロと引きずりながら歩き出したため、慌てて彩乃が「自分で持ちます」とキャリーバッグに手を伸ばそうとすると、青木は「それなら、先に行ってエレベーターのボタンを押しててよ」と笑いながら駐車場の奥を指差した。
「はい」と小さく返事をしながら彩乃は先に進んだ。静まり返った駐車場にヒールの踵がカツコツと響いた。ふと、あの細い用水路に大量発生したボラの大群が頭を過ぎり、歩きながら背筋がブルっと震えた。
しかしそれは、決してボラの大群を想像したからではなかった。それは、背後からゴロゴロと迫ってくる青木が、ミニスカートから伸びる太ももの裏や尻や腰を視姦している気配を感じたため震えたものだった。

青木の部屋は普通の部屋だった。フィギアもポスターも何もなく、比較的すっきりしていた。
着替えはここでして下さいと言われ脱衣場に案内された。甘いボディーソープの香りが漂い、棚のタオルは一枚一枚几帳面に畳まれていた。
そこにカメラは見当たらなかった。今までのオタクたちは、最低でも着替え室とトイレにはカメラを仕掛けていた。この業界はそれが当たり前だった。暗黙の了解で、盗撮も料金に含まれているのだ。
が、しかし、ここにはカメラが仕掛けられていなかった。
彩乃は、今までのオタクとは何かが違うと違和感を感じながらも、マラッシュの衣装に着替えた。いつもと違うメイクをし、ゴールドのウィッグを付け、緑のリボンでサイドテールに縛った。
最後はパンティーだった。ミクルンのライバルであるマラッシュは、性器も肛門もないミューテーションだったため、マラッシュのコスプレをする時はノーパンと決まっているのだ。
ミニスカートの中に手を入れ、そのままパンティーを太ももまでスルッと下ろした。うぐいす色のパンティーの裏は、一部だけがテラテラと輝き、そこに透明の糸を引いていた。
それは、青木の執拗なる視姦によって滲み出た恥汁だった。その粘りっけのある汁を目にした瞬間、今まで草食系のオタク達に生殺しにされていた陰部がズキンっと疼いたのだった。

部屋へ行くと、青木はソファーにポツンと座りながらスマホを弄っていた。そこにはカメラも照明も何も準備されておらず、今から撮影する気配は全く感じられなかった。
彩乃に気づいた青木は、「あっ、どうぞ」と言いながら尻をずらしてソファーを空けた。恐る恐るそこに腰掛けると、「何か飲む?」と言いながらスマホをシャキンっと閉じた。
「いえ……」と首を振る彩乃の顔を青木は真正面から覗き込んだ。「かわいいね……だけど、やっぱりキミはマラッシュよりもミンクルに似てるね」などと呟きながら、右頭に縛ったサイドテールの髪を指で解き始めた。
今までの空気ではなかった。状況が全く違っていた。今までのオタクはお世辞など口にする間もなくカメラのシャッターを切りまくっていたのだ。
項垂れたまま黙っていた彩乃が、「あのぅ……」と言いながらソッと顔を上げた。真正面に迫る青木のギラギラした目に一瞬怯えながらも、「撮影は……」と聞いた。
「撮影?」と小首を傾げながら、青木は「僕にそんな趣味はないよ」と笑った。そして更に彩乃の顔に顔を近づけながら、「キミは撮影して欲しいの?」と囁き、彩乃の細い肩に腕を回してきたのだった。
やっぱりいつもと違う。
そう確信するなり、青木のカサカサの唇が彩乃の唇を塞いだ。そしてそのまま顔を斜めに向け、閉じていた彩乃の唇を舌でこじ開けてきた。
生温い青木の舌が、口内でゆっくりと回転した。頭の中で(どういうこと?)と問いながらも、その滑らかに動き回る青木の舌に彩乃は舌を絡めてしまっていた。
久しぶりの優しいキスは、瞬時に彩乃の脳を蕩けさせた。この一ヶ月、撮影が忙しくてセックスする暇がなかった。オタク達に着替えやトイレを盗撮され、性欲ばかりがムンムンと溜まっていたが、しかし、忙しさに駆られてそれを発散できずにいた。
そんな溜まりに溜まっていた性欲は、艶かしい舌で唇をこじ開けられた事によって一気に溢れ出した。
脳が乱れた彩乃は、舌で口内を掻き回されながら、「んんん……んんん……」と唸っていた。そしてここを触ってと言わんばかりに、自らノーパンの股を大きく開くと、衣装の上から胸を摩っていた青木の指が、まるでそこに吸い寄せられるようにスルスルと音を立てて下って行った。
すると、静かに舌を抜いた青木が、割れ目に四本の指を滑らせながら「もうヌルヌルだね……」っと囁いた。

気がつくと彩乃は悲鳴をあげていた。四本の指が、プチャプチャと卑猥な音を立てて這い回る度に彩乃が悲鳴をあげるため、それはまるでギターを弾いているようだった。
その指が、ヌルヌルと滑りながら穴をこじ開けてきた。縦に並んだ四本の指は、明らかに割れ目よりも大きかったが、それでもその指は縦に整列したまま前に進み、強引に穴の中に潜り込んできた。
四本に並んだ指は、歪に窄められながらも、狭い穴の中をグニョグニョと蠢いた。それらが根元まで沈んでしまうと、二軍の親指が陰毛を掻き分け、そこに飛び出しているクリトリスに攻撃を仕掛けてきた。
穴の中を搔き回す四本の指と、クリトリスを乱暴に転がし回る親指に、彩乃は、「はぁぁぁぁん」と大きな悲鳴をあげ、思わず腰を引いてしまった。
すると指は、いとも簡単にヌルっと抜けた。青木は無数の糸を引く指を彩乃に見せつけた。そして「噂通りの変態だね」と微笑むと、そのままソファーを滑り降り、彩乃の真正面にしゃがみながらその両足をソファーの上にゆっくりと持ち上げた。
M字に広げられた股の中を、青木はニヤニヤしながら見ていた。「尻の穴にまで垂れてるよ」などと羞恥を与えながら、そのヌルヌルに濡れた指先を割れ目に沿って上下させ、そこに卑猥な音をピチャピチャと立てた。

そうしながらも青木は、悶える彩乃に「おっぱい出してごらん」と囁いた。
その青木の声が脳をぐるぐると回転させた。彩乃は目眩を感じながらもその命令に従い、そこに巨大な柔肉を波打たせた。
「おっきなおっぱい……乳首もビンビンに勃ってんじゃん」
青木はニヤニヤ笑いながら、痛々しいまでに勃起した乳首を指でポロポロと転がした。すかさず彩乃が「あああん」と身を捩らせると、そんな彩乃を満足そうに見つめながら、「さすが超人気のミクルン彩だけあって感度いいね」と意味ありげに笑った。
再び青木は両足を持ち上げた。ソファーの上でまんぐり返しのような体勢にしながら、改めて彩乃の目を見つめた。
「どうして欲しい? もうチンチン入れちゃう? それとも先に舐めて欲しい?」
まるで子供に話しかけるような幼稚な口調でそう言いながら、青木は首を小さく傾げた。
彩乃は、ハァハァと荒い息を吐きながらそんな青木を見下ろしていた。そして、「……舐めて……ください……」と途切れ途切れに答えると、剥き出しにした膣をヒクヒクさせながら腰を持ち上げた。
ニヤリと笑った青木は、真っ赤な舌をゆっくりと突き出した。わざとそのシーンを彩乃に見せつけようと両手で尻を持ち上げると、そのドロドロにふやけた割れ目に舌をペタッと這わせた。
ぺちゃ、ぺちゃ、ぺちゃ、と、まるで猫がミルクを飲んでいるような音が部屋に響いた。その舌は、膣、クリトリス、小陰唇の隙間など、あらゆる部分を滑りまくり、キュッと窄んだ肛門までも丁寧に舐めていた。
そうしながらも青木は上目遣いで彩乃を見つめ、時折、「これで四万なら安いもんだね」などと呟いた。
そんな青木の呟く言葉を朦朧とする意識の中で聞きながら、彩乃はやっとこの状況を理解した。
(これは最初から……撮影会ではなく売春だったんだ……)
益岡に売られたんだと思った。マンションを出る前、「絶対にエッチだけはさせないでよね」などと念を押していた益岡のわざとらしさに怒りを覚えた。
しかし、だからと言って、今のこの状況から逃れたいというわけではなかった。
陰部を舐められながら悶えている彩乃は、益岡に対する不信感を激しく募らせながらも、早く肉棒を入れて欲しいと思っていたのだった。

(つづく)
《←目次》《4話へ→》
オタクの穴4
2013/06/13 Thu 00:02
翌日、益岡のマンションに行くと、そこにはいつものようにゲームの音だけが響いていた。
何日間も引き籠もったままの部屋には、据えた獣臭が漂っていた。それは、駅の地下道で寝ているホームレスの前を通り過ぎた際、一瞬プンっと漂うあの匂いによく似ていた。
益岡は、部屋に入ってきた彩乃に振り向きもしないまま、無言でコントローラをカチカチと鳴らしていた。
ベッドの下には、汁が半分残っているカップ麺の空箱が二つ並んでいた。枕元にはスナック菓子の袋が散乱し、胡座をかいて座っているその足元には、1000㎖のコーヒー牛乳の紙パックが口を開いたまま置いてあった。
その光景は、明らかに昨日と同じだった。そのグレーのTシャツも、掛け布団の乱れ具合も、眼鏡のレンズに付着したフケの位置さえも何も変わっておらず、全て昨日のままだった。
(この男は……一生ここでこうして生きていくんだろうな……)
そう思いながら、そこに突っ立ったまま黙って益岡を見下ろしていると、不意に益岡は「チッ」と舌打ちし、乱れた掛け布団の中にコントローラーを投げ捨てた。
不貞腐れたようにコーヒー牛乳の紙パックを乱暴に鷲掴みにすると、昨日の件を察しているのか、まるで威嚇するかのようにギロリと彩乃を睨みながらそれをゴクゴクと飲み始めた。
「なんか文句あります?」
空の紙パックをベッドの下に投げ捨てながら益岡が言った。
彩乃は、昨日の事をはっきりと言ってやるつもりでいた。最初から売春させる目的で青木の所に出向かせた事や、自分に内緒で四万円もの料金を青木に請求していた事など、厳しく問い質してやるつもりでいた。
が、しかし、益岡のその開き直った態度を見た瞬間、当初の強気は瞬く間に弱気に変わってしまった。その濁った目玉にギロリと睨まれていると、途端に何も言えなくなり、ただただモジモジしながら項垂れてしまったのだった。
そんな彩乃の弱気な姿勢が益岡を付け上がらせた。この女は何も言えない小心者だと悟った益岡は、その険しい表情を急に余裕の笑みに変えながら、「今日は六組も予約が入ってるから、早く準備して下さいよ」と言い、再びコントローラーに手を伸ばしたのだった。
(ここで何も言わなければ、このままズルズルと続いてしまう……)
そう焦りながら彩乃はキャリーバッグの蓋を開けた。売春させられるのなら、今までの取り分を変更して欲しいというその一言を、どのタイミングで言い出そうかと悩みながら、キャリーバッグの中から昨日のマラッシュの衣装を取り出した。
空になったキャリーバッグにミンクルの衣装を詰めようとすると、不意に益岡が、「まだ時間があるから、ちょっとミンクルの衣装を着てみてよ」と言った。
一瞬戸惑ったが、すぐに「はい……」と呟きながら、素直にその命令に従った。素早くメイクをし、衣装に着替え、ピンクのウィッグを装着した。
「これでいいですか……」と、ベッドでゲームをしている益岡の前に立った。すると益岡は「おっ」と言いながらゲームをセーブし、そのままベッドにゴロリと寝転がったのだった。
「こっちに来てください。面白いDVDがありますから一緒に見ましょう」
益岡は、コーヒー牛乳の紙パックが置いてあった場所をポンポンと叩きながらそう笑った。
ブルーレイのリモコンをカチカチし始めた益岡を横目で見ながら、彩乃は恐る恐るベッドに上がった。チャンスを見計らい、売上の取り分の話を切り出そうと思いながら、静かにそこに腰を下ろした。
今までゲームが映し出されていたテレビの画面がスッと暗くなった。妙に画像の悪い映像が現れ、それと同時に彩乃は絶句した。
なんとそこには、昨日の青木と自分の行為が映し出されていたのだった。

それは明らかに盗撮された動画だった。脱衣場やトイレにカメラは仕掛けられていなかったが、まさか部屋にカメラが仕掛けられていたとは思いもよらなかった。
しかし、どうしてこの動画を益岡が持っているのか。
彩乃は、そう嫌な胸騒ぎを覚えながら、獣のように醜い自分のその醜態を愕然と見ていた。
「なかなか凄い事してるじゃん……」
そう呟きながら、益岡は枕元に置いてあったポテトチップスの袋の中を指でカシャカシャと探った。
「昨日、あれだけエッチはしないで下さいよって注意してたのに、これ、ズッボズボにオマンコしちゃってますよね……」
そう言いながら、口一杯に含んだポテトチップスをザクザクと咀嚼する益岡は、「これは契約違反だよね」、「罰金じゃ済まないよね」、「一歩間違えば僕も売春管理で逮捕だよね」などと嫌味ったらしく呟き、グイグイと圧力をかけてきた。最初から売春目的で彩乃を青木に派遣したにもかかわらず、あくまでも彩乃が勝手に性行為をしたかのように愚痴り始めたのだ。
それは、売春で得た利益を、益岡が独り占めしようとしているからに違いなかった。
案の定、それによって彩乃は何も言えなくなってしまった。この状況で取り分の交渉などできるわけがなかった。それよりも今は、逆に罰金を請求されそうな雰囲気なのだ。
だから彩乃は黙っていた。実際、益岡に忠告されたのも事実だったし、青木にヤらせてしまったのも事実だったため、何も反論もできないまま黙っているしかなかった。
すると益岡は、そんな黙ったままの彩乃の太ももをスリスリと摩り始め、突然もう片方の手でパジャマのズボンを脱ぎ始めた。
ビーンッと勃起したペニスが天井に向かって反り立っていた。ドス黒い皮には無数の血管を浮き出し、まるで別の生き物のようにヒクヒクと脈を打っていた。
益岡はニヤニヤと笑いながら「青木みたいに僕のも抜いてよ」と言うと、強引に彩乃の顔をペニスに引き寄せた。そして亀頭を目の前にして戸惑っている彩乃の頭をグイグイと押しながら、「青木みたいに、ねっとりとしたフェラしてよ」と、その唇に亀頭を押し付けてきたのだった。
バナナを頬張るようにそれをゆっくりと口内に含んだ。亀頭に舌を這わすと、カリ首の裏にこびりついていた恥垢がポロポロと砕け、強烈なイカ臭が口内に広がった。
そんな亀頭に舌を絡めながら顔を上下させると、チュッパ、チュッパ、とリズミカルな音が部屋に響いた。それを益岡は、首を持ち上げながらジッと見ていた。そして、「ハァァァァ」と虫歯臭い息を大きく吐き出しながら、「金玉もモミモミして……」と、少年のように囁いた。

「おおおっ……ううっ……」と、唸る益岡を上目遣いに見ながら、肉棒を根元まで飲み込んだ。ジュプ、ジュプ、と下品な音をわざと立てながらしゃぶってやった。
益岡は悶えながらも、「罰金はちゃんと払ってもらうからね」と呟いた。
彩乃はゆっくりと肉棒を口から抜いた。そして、唾液にまみれたそれを手でシコシコしごきながら「いくらですか」と聞くと、益岡は腰をヒクヒクさせながら「百万」と言った。
絶句した彩乃の手が動きを止めた。すると益岡はすかさずその手を掴み、彩乃の体を強引に引き寄せながら「ただし……」と呟いた。
「今のキミに現金で払えと言っても無理だろうから、給料から少しずつ返済してくれればいいですよ。もちろん、それが返済できるだけの客を僕が責任を持って毎日紹介しますから、ふふふふ……心配しないでください……」
そう言いながら益岡は、彩乃を腹の上に跨がせ、その大きな胸に顔を押し付けた。そしてそのままスカートの中を弄ると、素早くパンティーを引き摺り下ろし、既に濡れている彩乃の陰部に亀頭をグイグイと押し付けてきた。
彩乃は、体をギュッと抱きしめられながら、「それは売春しろって事ですか」と聞いた。すると益岡はペニスの根元を握りしめ、その濡れた穴を亀頭でぐちゃぐちゃと掻き回しながら、「売春しろとは言ってません。それはキミの勝手です。ヤりたくなければヤらなければいいし、ヤりたかったら勝手にヤレバいい。それは自己判断で決めてください」と笑った。
それに対して彩乃が「でも」と言おうとすると、まるでその口を塞ぐかのように、益岡は一気に腰を突き上げた。
ツルンっと滑り込んだペニスは、勢い良く根元まで突き刺さった。「あああん!」と仰け反る彩乃の腰に素早く腕を回すと、益岡は彩乃の下半身をがっしりと固定し、何度も何度も腰を突き上げた。
「でも、とか言わないでください。僕に逆らっちゃダメです。このDVDが市場に出回ったらキミの人生は終わりです。だから僕に逆らわないで下さい。絶対に僕に逆らわないで下さい」
益岡は、彩乃の耳元にそう念仏のように唱えながら、石のように硬いペニスを激しくピストンさせた。

それを繰り返される彩乃の頭の中は、まるでリセットボタンを押されたかのように真っ白になった。卑劣な脅迫と強烈な快感に思考回路は破壊され、もはや何も考えられなくなってしまったのだった。
その日の午後、さっそく客を取らされた。いつものようにミンクルの衣装が詰まったキャリーバッグを引きずりながらマンションを出たが、しかしその行き先は薄汚いラブホテルだった。
相手は、やはりオタクだった。ただし、今までの気弱なオタクとは違い、明らかに性欲を剥き出しにした獣のようなオタクだった。
しかも獣は三匹いた。三匹の獣は、もはやミンクル彩をちやほやしてはくれなかった。そこには、あのアイドル扱いされていた華やかな撮影会の雰囲気はなく、淫欲に満ちた獣達の、どす黒い性欲だけがムラムラと漂っていたのだった。

そんな客を、毎日七人取らされていた。ミクルンピューラの熱狂的なファンは全国各地に大勢いたため、ミンクルによく似た彩乃とヤリたがるオタクは後を絶たなかった。
料金は二時間四万円だった。回転率を良くするため、撮影会を兼ねての仲間内での複数プレイを推進しており、その場合は一人につき三万円とされていた。
そのうち彩乃に入るのは一万円だった。しかし、そこから衣装代と罰金を引かれ、実際に彩乃の手元に残るのは、一人の客につき三千円程度だった。
それでも彩乃は、逆らうことなく益岡の命令通り働いた。
それは、例のDVDで脅迫されていたからではなかった。益岡が怖いわけでもなく、金が欲しいわけでもなかった。
マゾヒスト。
そんな哀れな性癖を持つ彩乃にとって、この生活は決して苦ではなかった。むしろ、毎日十人近くの獣達に肉便器のように扱われることにより、喜びを感じていたのだった。
(オタクの穴・完)
《←目次》
何日間も引き籠もったままの部屋には、据えた獣臭が漂っていた。それは、駅の地下道で寝ているホームレスの前を通り過ぎた際、一瞬プンっと漂うあの匂いによく似ていた。
益岡は、部屋に入ってきた彩乃に振り向きもしないまま、無言でコントローラをカチカチと鳴らしていた。
ベッドの下には、汁が半分残っているカップ麺の空箱が二つ並んでいた。枕元にはスナック菓子の袋が散乱し、胡座をかいて座っているその足元には、1000㎖のコーヒー牛乳の紙パックが口を開いたまま置いてあった。
その光景は、明らかに昨日と同じだった。そのグレーのTシャツも、掛け布団の乱れ具合も、眼鏡のレンズに付着したフケの位置さえも何も変わっておらず、全て昨日のままだった。
(この男は……一生ここでこうして生きていくんだろうな……)
そう思いながら、そこに突っ立ったまま黙って益岡を見下ろしていると、不意に益岡は「チッ」と舌打ちし、乱れた掛け布団の中にコントローラーを投げ捨てた。
不貞腐れたようにコーヒー牛乳の紙パックを乱暴に鷲掴みにすると、昨日の件を察しているのか、まるで威嚇するかのようにギロリと彩乃を睨みながらそれをゴクゴクと飲み始めた。
「なんか文句あります?」
空の紙パックをベッドの下に投げ捨てながら益岡が言った。
彩乃は、昨日の事をはっきりと言ってやるつもりでいた。最初から売春させる目的で青木の所に出向かせた事や、自分に内緒で四万円もの料金を青木に請求していた事など、厳しく問い質してやるつもりでいた。
が、しかし、益岡のその開き直った態度を見た瞬間、当初の強気は瞬く間に弱気に変わってしまった。その濁った目玉にギロリと睨まれていると、途端に何も言えなくなり、ただただモジモジしながら項垂れてしまったのだった。
そんな彩乃の弱気な姿勢が益岡を付け上がらせた。この女は何も言えない小心者だと悟った益岡は、その険しい表情を急に余裕の笑みに変えながら、「今日は六組も予約が入ってるから、早く準備して下さいよ」と言い、再びコントローラーに手を伸ばしたのだった。
(ここで何も言わなければ、このままズルズルと続いてしまう……)
そう焦りながら彩乃はキャリーバッグの蓋を開けた。売春させられるのなら、今までの取り分を変更して欲しいというその一言を、どのタイミングで言い出そうかと悩みながら、キャリーバッグの中から昨日のマラッシュの衣装を取り出した。
空になったキャリーバッグにミンクルの衣装を詰めようとすると、不意に益岡が、「まだ時間があるから、ちょっとミンクルの衣装を着てみてよ」と言った。
一瞬戸惑ったが、すぐに「はい……」と呟きながら、素直にその命令に従った。素早くメイクをし、衣装に着替え、ピンクのウィッグを装着した。
「これでいいですか……」と、ベッドでゲームをしている益岡の前に立った。すると益岡は「おっ」と言いながらゲームをセーブし、そのままベッドにゴロリと寝転がったのだった。
「こっちに来てください。面白いDVDがありますから一緒に見ましょう」
益岡は、コーヒー牛乳の紙パックが置いてあった場所をポンポンと叩きながらそう笑った。
ブルーレイのリモコンをカチカチし始めた益岡を横目で見ながら、彩乃は恐る恐るベッドに上がった。チャンスを見計らい、売上の取り分の話を切り出そうと思いながら、静かにそこに腰を下ろした。
今までゲームが映し出されていたテレビの画面がスッと暗くなった。妙に画像の悪い映像が現れ、それと同時に彩乃は絶句した。
なんとそこには、昨日の青木と自分の行為が映し出されていたのだった。

それは明らかに盗撮された動画だった。脱衣場やトイレにカメラは仕掛けられていなかったが、まさか部屋にカメラが仕掛けられていたとは思いもよらなかった。
しかし、どうしてこの動画を益岡が持っているのか。
彩乃は、そう嫌な胸騒ぎを覚えながら、獣のように醜い自分のその醜態を愕然と見ていた。
「なかなか凄い事してるじゃん……」
そう呟きながら、益岡は枕元に置いてあったポテトチップスの袋の中を指でカシャカシャと探った。
「昨日、あれだけエッチはしないで下さいよって注意してたのに、これ、ズッボズボにオマンコしちゃってますよね……」
そう言いながら、口一杯に含んだポテトチップスをザクザクと咀嚼する益岡は、「これは契約違反だよね」、「罰金じゃ済まないよね」、「一歩間違えば僕も売春管理で逮捕だよね」などと嫌味ったらしく呟き、グイグイと圧力をかけてきた。最初から売春目的で彩乃を青木に派遣したにもかかわらず、あくまでも彩乃が勝手に性行為をしたかのように愚痴り始めたのだ。
それは、売春で得た利益を、益岡が独り占めしようとしているからに違いなかった。
案の定、それによって彩乃は何も言えなくなってしまった。この状況で取り分の交渉などできるわけがなかった。それよりも今は、逆に罰金を請求されそうな雰囲気なのだ。
だから彩乃は黙っていた。実際、益岡に忠告されたのも事実だったし、青木にヤらせてしまったのも事実だったため、何も反論もできないまま黙っているしかなかった。
すると益岡は、そんな黙ったままの彩乃の太ももをスリスリと摩り始め、突然もう片方の手でパジャマのズボンを脱ぎ始めた。
ビーンッと勃起したペニスが天井に向かって反り立っていた。ドス黒い皮には無数の血管を浮き出し、まるで別の生き物のようにヒクヒクと脈を打っていた。
益岡はニヤニヤと笑いながら「青木みたいに僕のも抜いてよ」と言うと、強引に彩乃の顔をペニスに引き寄せた。そして亀頭を目の前にして戸惑っている彩乃の頭をグイグイと押しながら、「青木みたいに、ねっとりとしたフェラしてよ」と、その唇に亀頭を押し付けてきたのだった。
バナナを頬張るようにそれをゆっくりと口内に含んだ。亀頭に舌を這わすと、カリ首の裏にこびりついていた恥垢がポロポロと砕け、強烈なイカ臭が口内に広がった。
そんな亀頭に舌を絡めながら顔を上下させると、チュッパ、チュッパ、とリズミカルな音が部屋に響いた。それを益岡は、首を持ち上げながらジッと見ていた。そして、「ハァァァァ」と虫歯臭い息を大きく吐き出しながら、「金玉もモミモミして……」と、少年のように囁いた。

「おおおっ……ううっ……」と、唸る益岡を上目遣いに見ながら、肉棒を根元まで飲み込んだ。ジュプ、ジュプ、と下品な音をわざと立てながらしゃぶってやった。
益岡は悶えながらも、「罰金はちゃんと払ってもらうからね」と呟いた。
彩乃はゆっくりと肉棒を口から抜いた。そして、唾液にまみれたそれを手でシコシコしごきながら「いくらですか」と聞くと、益岡は腰をヒクヒクさせながら「百万」と言った。
絶句した彩乃の手が動きを止めた。すると益岡はすかさずその手を掴み、彩乃の体を強引に引き寄せながら「ただし……」と呟いた。
「今のキミに現金で払えと言っても無理だろうから、給料から少しずつ返済してくれればいいですよ。もちろん、それが返済できるだけの客を僕が責任を持って毎日紹介しますから、ふふふふ……心配しないでください……」
そう言いながら益岡は、彩乃を腹の上に跨がせ、その大きな胸に顔を押し付けた。そしてそのままスカートの中を弄ると、素早くパンティーを引き摺り下ろし、既に濡れている彩乃の陰部に亀頭をグイグイと押し付けてきた。
彩乃は、体をギュッと抱きしめられながら、「それは売春しろって事ですか」と聞いた。すると益岡はペニスの根元を握りしめ、その濡れた穴を亀頭でぐちゃぐちゃと掻き回しながら、「売春しろとは言ってません。それはキミの勝手です。ヤりたくなければヤらなければいいし、ヤりたかったら勝手にヤレバいい。それは自己判断で決めてください」と笑った。
それに対して彩乃が「でも」と言おうとすると、まるでその口を塞ぐかのように、益岡は一気に腰を突き上げた。
ツルンっと滑り込んだペニスは、勢い良く根元まで突き刺さった。「あああん!」と仰け反る彩乃の腰に素早く腕を回すと、益岡は彩乃の下半身をがっしりと固定し、何度も何度も腰を突き上げた。
「でも、とか言わないでください。僕に逆らっちゃダメです。このDVDが市場に出回ったらキミの人生は終わりです。だから僕に逆らわないで下さい。絶対に僕に逆らわないで下さい」
益岡は、彩乃の耳元にそう念仏のように唱えながら、石のように硬いペニスを激しくピストンさせた。

それを繰り返される彩乃の頭の中は、まるでリセットボタンを押されたかのように真っ白になった。卑劣な脅迫と強烈な快感に思考回路は破壊され、もはや何も考えられなくなってしまったのだった。
その日の午後、さっそく客を取らされた。いつものようにミンクルの衣装が詰まったキャリーバッグを引きずりながらマンションを出たが、しかしその行き先は薄汚いラブホテルだった。
相手は、やはりオタクだった。ただし、今までの気弱なオタクとは違い、明らかに性欲を剥き出しにした獣のようなオタクだった。
しかも獣は三匹いた。三匹の獣は、もはやミンクル彩をちやほやしてはくれなかった。そこには、あのアイドル扱いされていた華やかな撮影会の雰囲気はなく、淫欲に満ちた獣達の、どす黒い性欲だけがムラムラと漂っていたのだった。

そんな客を、毎日七人取らされていた。ミクルンピューラの熱狂的なファンは全国各地に大勢いたため、ミンクルによく似た彩乃とヤリたがるオタクは後を絶たなかった。
料金は二時間四万円だった。回転率を良くするため、撮影会を兼ねての仲間内での複数プレイを推進しており、その場合は一人につき三万円とされていた。
そのうち彩乃に入るのは一万円だった。しかし、そこから衣装代と罰金を引かれ、実際に彩乃の手元に残るのは、一人の客につき三千円程度だった。
それでも彩乃は、逆らうことなく益岡の命令通り働いた。
それは、例のDVDで脅迫されていたからではなかった。益岡が怖いわけでもなく、金が欲しいわけでもなかった。
マゾヒスト。
そんな哀れな性癖を持つ彩乃にとって、この生活は決して苦ではなかった。むしろ、毎日十人近くの獣達に肉便器のように扱われることにより、喜びを感じていたのだった。
(オタクの穴・完)
《←目次》
吐泥(へろど)目次
2013/06/13 Thu 00:01
吐泥(へろど)1
2013/06/13 Thu 00:01
灰色の海が広がっていた。空には分厚い雲がだんだんに重なり、今にも大粒の雨を降らそうとしていた。
電車を降りるなり、生ぬるい潮風が頬と首をねちゃねちゃにした。どんよりとした重たい空気は異様なほどの湿気を含んでおり、その小さな駅には水族館のような湿った匂いが充満していた。
そこは新潟県にある人口四万人足らずの小さな港町だった。フードリサーチ会社で働く私は、日本海沿岸で水揚げされる『幻魚』を調査するためにこの町にやってきた。それは、幻魚を新商品として売り出そうとしている大手居酒屋チェーンからの依頼だった。

幻魚は、正式名称をノロゲンゲと言うが、地元の者は、『げんぎょ』や『げんげ』と呼んでいた。水深二百メートルから千五百メートルほどの所に棲息する深海魚で、干した物を軽く炙って食べるとかなりの美味らしいのだが、しかし見た目があまりにもグロテスクなため、地元でも敬遠する人は多いらしい。
とまぁ、そんな情報をネットで入手した私は、既に電車の中でそれをレポートにまとめていた。そもそも、そんな珍魚の調査などまともにする気は無かった。ネットで収集した情報と、漁業組合で調べた仕入れ価格表をレポートにまとめ、それと一緒に現地で手に入れた現物を提出すればいいだけの話なのである。

薄ら寂しい駅前でタクシーを拾った。本当はこのまま漁業組合へ行き、幻魚の値段交渉にあたる予定だったが、しかしこの異様なまでの湿気で頭がどんよりと重く、全くその気にならなかった。明日にしよう。と、そう気怠く思った私は、ニワトリのような顔をした老運転手にビジネスホテルの名を告げたのだった。
そのビジネスホテルは、日本海に面した国道沿いに建てられていた。外壁の白タイルは水垢で黒ずみ、汚れた窓の逆三角形の赤いシールだけがやたらと目立っていた。地上八階、地下一階。屋上に設置された『素泊まり1泊3800円』の看板に止まる数羽のカラスと、目の前の道路をひっきりなしに走り去る大型トラックの轟音が、その退廃的な雰囲気をより醸し出していた。
狭い部屋はシングルベッドとテレビ台に占領され、監獄のような圧迫感が感じられた。シーツも浴衣も必要以上の洗濯糊でバリバリし、窓の暗幕カーテンには苦い煙草のヤニ臭が漂っていた。
清掃は明らかにいい加減だった。恐る恐るテレビの裏を覗いてみると、埃まみれの配線の中に四方がギザギザになった四角い袋が紛れ込んでおり、それを指で摘み上げてみると、案の定それは、封が切られたコンドームの袋だった。
嫌な予感がした私は、一応ベッドの下も覗いてみた。すると壁際に何やら白いモノがぶら下がっているのが見えた。慌ててベッドに上がってベッドと壁の隙間からそれを摘み上げた。
なんとそれは使用済みのナプキンだった。背筋がゾッとした。それは、ヘルパーのおばさんに濡れタオルで体を拭いてもらいながら勃起していた痴呆症の父を、襖の隙間から目撃してしまった時に感じたおぞましさによく似ていた。
真っ白な綿の中にドス黒い血がじっとりとしみ込んでいた。それを愕然としながら見つめていると、ふと、男に悟られぬようこっそりそれをベッドと壁の隙間に押し込んでいる女の痛々しい秘事が目に浮かんだ。
例えどんな理由があろうとも、こんな物をこんな所に押し込むのは許される事ではなかった。かの世界的に常識知らずな支那人とて、ベッドの隙間に汚物を入れるのはさすがに躊躇するはずである。
そんな非常識が平気でできる人間は明らかにまともな人間ではない。恐らくこれは、名も知らない男の性器を平気でしゃぶるデリヘル嬢や、援交女○高生や売春人妻といった、そんなクソもミソも区別のできない破綻者の仕業に間違いないのだ。
私はそのドス黒いシミを見つめながら、小さなため息と共に静かにベッドに胡座をかいた。行為中、どのタイミングでこれをそこに押し込んだのかと、あらゆるパターンを想像しながらそれを見つめていると、再び私は、痴呆症の父の勃起した一物を不意に見せつけられたようなおぞましさに包まれた。
そのおぞましさは脳髄を激しく掻き乱し、まるで五十女の陰毛のような黒々とした淫らな渦に巻き込まれた。胸を押し潰される私は、強烈な息苦しさに身悶えながらも、ふと気がつくと、そのドス黒いシミに恐る恐る鼻を近づけていた。そう、私こそが正真正銘の破綻者なのだ。
魚の干物のような嫌悪臭が鼻腔を行ったり来たりしていた。今自分は、見ず知らずの他人の陰部から滲み出た不浄な血を嗅いでいるのだと思うと、異常な興奮が胸にムラムラと湧き上がり、短い目眩に断続的に襲われた。
それをベッドの上に広げた。クンニするように四つん這いになりながら匂いを嗅ぎ、そのままズボンとパンツを同時に下ろすと、既にはち切れんばかりに勃起した肉棒を狂ったようにシゴキまくった。
ものの数秒で絶頂がこみ上げてきた。一瞬、そこに肉棒を擦り付け、それに包まれたままそこに射精したいという衝動に駆られたが、しかし、それはさすがに危険すぎると思い、慌てて思い止まった。
一触即発の肉棒をヒクヒクさせながらクローゼットへと走り、スーツの内ポケットから携帯を取り出した。妻に電話をかけ、再びベッドに戻って他人の使用済みナプキンを犬のように嗅ぎまくった。
何度目かのコールの後、汗ばんだ受話口から、「はい」という妻の短い声が聞こえてきた。
「今、ホテルに着いたよ……」
「そう」
妻のその短い声と同時にスッと匂いを嗅ぐと、不意にネチョっと白い糸を引く妻の陰部が頭に浮かんだ。

「一応、ホテルの電話番号と部屋番号を伝えておくよ」
「うん。ちょっと待って、今メモするから……」
メモ帳を捲るカサカサっという音が聞こえてきた。
「いいよ」
「部屋は305号室……ホテルの電話番号は、025……」
私がそう伝えると、すぐに妻がそれを復唱した。
そんないつもの出張時のマニュアルを終えると、早速私は声を潤ませた。
「あのさぁ……」
「うん」
「今、シゴいてるんだ……」
「…………」
「なんかエッチな事、言ってくれよ……」
「できないよ……」
「じゃあオッパイの映像を送ってくれ」
私がそう言うと、妻は戸惑いながらもスマホをテレビ電話に切り替えた。そして、「早くして、四時に美容院に行くんだから……」と面倒臭そうに言いながら、その巨大な柔肉の塊を画面に映し出した。

真っ白な柔肉がフルフルと小刻みに震えていた。毎晩その絶品な柔肉に溺れていた私だったが、しかし、こうして違う場所で画像として見てみると、改めてそのいやらしさが脳にズキズキと伝わり、私は狂ったように肉棒をシゴき始めた。
「もういい?」
妻が言った。それは、たっぷりと時間をかけてしゃぶらせている時に、時折つぶやくあの言葉と同じだった。
「ダメだ……指で乳首を転がして硬くさせてくれ……」
ハァハァと荒い息を吐きながらそう言うと、小さな溜息と共に画面に妻の指が現れ、真っ白な柔肉の先の色素をコロコロと転がし始めた。
みるみる硬くなっていく乳首を見つめながら、私は、この女とヤリたい、と素直にそう思った。この女とは昨夜二回もしたはずなのに、その気持ちは異常なほどに昂ぶっているのだ。
しばらくすると、妻は「もう無理」と言いながら、その指の動きを止めた。それは、三回目をしようと再び股に潜り込んだ時に妻がつぶやく、あの言葉と同じだった。
私は、「わかったよ。じゃあ速攻でイクからオマンコを見せてくれよ」と急かせるように言った。すると妻は、半ば泣きそうな声で「本当にもう時間がないんだからね……」と呟き、素早くスカートを捲り上げるシーンを画面に映したのだった。
薄ピンクのパンティーがムチムチの太ももをスルスルと降りていくのを見つめながら、私はナプキンに鼻を近づけた。真っ白な肌にとぐろを巻く陰毛が画面に現れると、ナプキンのドス黒い血をクンクンと嗅ぎながら「早く股を開いて」と唸り、肉棒を激しくシゴいた。
太ももが弛むと、そこからグロテスクな肉色が飛び出した。くにゃっと歪んだ割れ目の左右には使い古した小陰唇がだらしなく垂れ、それがとぐろを巻く獰猛な陰毛とコラボしては、より一層卑猥感を醸し出していた。
「指で開いてくれ……ベロンっと開いてその中を見せてくれ……」
そう言うか言わないかの間に、妻は自らの意思でそれを開いた。案の定、その中はテラテラと濡れ輝いていた。同時に飛び出したクリトリスも、まるでパチンコ玉のように膨張していた。

「濡れてるじゃないか……」と声を震わせながら、私は必死にナプキンの匂いを嗅いだ。そして、きっと妻の陰部もこんな匂いがしているんだろうと思いながら映像を見ていると、思わずそこに舌が伸び、その誰の物かわからないドス黒いシミを舐めてしまった。
それは恐ろしく臭みのある味だった。まるで腐った秋刀魚を食べたような独特な臭みが口内に広がっていた。それでも私は、汚れたナプキンに舌をザラザラと這わせ続けた。このナプキンは妻の物だ、妻はこの薄ら寂しい町で行きずりの男とこのホテルにしけ込み、そしてこのベッドの上で狂ったように交わっていたに違いないと滅茶苦茶に想像しながら、口内に溜まった臭汁をゴクリと飲み干した。
「もういい?」
そんな妻の声を無視しながら、唾液でぐっしょりと湿ったナプキンで肉棒を包み込んだ。これをどんな女が陰部に貼り付けていたかはわからない。豚のような醜い肥満女かも知れないし、はたまた性病持ちの商売女かも知れない。しかし、今の私にはそんなことは関係なかった。もはや興奮のマックスに達してしまった私にはそれが誰のものでも構わなかった。いや、むしろ精神科医から異常性欲者であると診断された私には、それが狂ったシャブ中女の物であったり、化け物のような中年女の物であったほうが、より興奮度を増してくれるのだ。
仰向けに寝転がった私は、左手にスマホを持ち、右手で肉棒を包んだナプキンをガシガシとシゴいた。「まだ?」と聞いてくる妻に、「顔を見せてくれ」と言うとすぐに画面が乱れ、妻の顔がアップで映し出された。
画面の妻に向かって「どうして濡れてるんだ?」と聞いた。妻の愛らしい目に羞恥がほんのりと浮かんだ。「……わかんない」と呟いたまま下唇を噛んで黙る妻のその表情は、あのラブホテルであの薄汚い単独男性に背後から攻められていた時と同じ表情だった。
そのラブホテルというのは……
それは、今から一年ほど前の、古いラブホテルの一室での出来事だった……。
(つづく)
《←目次》《2話へ→》
吐泥(へろど)2
2013/06/13 Thu 00:01
その古いラブホテルは球場の裏手にあった。そこで私は、見ず知らずの男と絡み合う妻を愕然と見ていた。
私は乱される妻の顔ばかり見ていた。他にも見るべき所は沢山あった。結合部分やフェラシーンやクンニシーンなど、興味深い箇所は沢山あったが、しかしそのような経験が初めてだった私にはそれらを見る余裕はなく、まるで出産に立ち会った夫のように、ただただひたすら妻の顔を心配そうに見つめていたのだった。
もちろん妻も初めてだった。だから妻も、その見ず知らずの中年男にちょっと体を触れただけで絶望的な表情を浮かべ、巨大なペニスを口に含まされたり、ぶよぶよの睾丸を舐めさせられている時など、ずっと嫌悪の表情を浮かべていた。
しかし、それが奉仕する側から奉仕される側に変わると、妻のその表情に変化が現れ始めた。それは、単独男が妻の股に顔を埋め、ペチャペチャと下品な音を立てて性器を舐め始めた時だった。

その時も、やはり妻の顔には嫌悪の表情は浮かんでいたが、しかし、その表情には何やら困惑している様子が見受けられた。
それはきっと、妻は密かに男の舌に快楽を得ていたからに違いなかった。私が見ている手前、表向きには嫌悪を示していた妻だったが、しかしその内面では、クリトリスを舐められて感じてしまっていたのだ。
嫌悪と快楽。そんな理性と本能が妻の中で葛藤していたのであろう、その今にも泣き出しそうな顔は、嫌がっているようにも見えれば、喜んでいるようにも見えた。
もしここに私がいなければ、おそらく妻は淫らな声を張り上げて悶えている事だろう。自らの意思で自分の両足を両腕に抱え込み、これでもかというくらいに股を開きながら、もっと舐めてと腰を突き上げているに違いなかった。

私は密かに悶えていた。妻に対する疑念が奇妙な感情を呼び起こし、複雑な性的興奮に襲われながらも、必死に妻の顔を覗き込んでいた。
妻は、私がそれを見て興奮している事に気づいているようだった。そんな妻が単独男に四つん這いにされ、いよいよその巨大なペニスを背後から挿入されそうになると、突然私に振り向きながら、「見ないで……」と弱々しく呟いた。
すると男がそんな妻の尻をいやらしく撫でながら、「ダメだよ奥さん、ちゃんと旦那さんに見てもらわなくちゃ」と野太い声で笑い、その大粒イチゴのような亀頭を妻の割れ目に這わせた。
それでも妻は必死に私に振り返りながら、「お願い、見ないで」と悲痛に言った。
しかし私はその時見てしまった。私は見逃さなかった。そう言いながらも妻が、その巨大な肉棒をより深く挿入させるために、自らの意思で尻を更に突き出していたのを……。
男は、そんな妻の剥き出された裂け目の表面に、パンパンに腫れ上がった亀頭を擦り付けた。両手を腰に当て、腰だけを巧みにコキコキと動かしながら、妻の粘膜に亀頭を滑らせていた。
「旦那さん、奥さんのオマンコ、もうヒクヒクしてますよ。我慢できないみたいですから入れてあげてもいいですか?」
男がそう言いながら私に振り返った。男は典型的なサル顔で、『猿の惑星』に出てくる茶色い毛をしたザイアス博士によく似ていた。
この男は、この手のプレイに随分と手馴れているようだった。男は、私たち夫婦が寝取られプレイは初めてだということを知っているため、わざとそのような残酷な言葉を放っては、私や妻に羞恥と屈辱を与えているのだ。その言葉によって私たちの興奮をより高め、同時に自らもそんな私たち夫婦を見ては背徳の興奮を得ようとしているのだった。
そんな男の意図的な言葉に、私はまんまと翻弄された。こんなサル男に感じさせられている妻に激しい嫉妬の念を抱き、そして今まさに見ず知らずの他人のペニスで妻が汚されようとしているこの瞬間に私は身震いし、凄まじい絶望感と性的興奮に脳を掻き乱されていた。
「それじゃあ……入れますからね……」
男はそう短く呟くと、猫が背伸びをしているようなポーズで尻を突き出している妻の両太ももを両腕で押さえ込み、そのままパックリと開いた妻の尻肉の谷間に向かってゆっくりと腰を突き上げた。
テラテラと赤く濡れ輝く妻の割れ目に、見知らぬ男の巨大な肉棒が滑り込んだ。それはまるでコンニャクゼリーをカップから押し出した瞬間のように滑らかであり、その巨大な肉棒はいとも簡単に根元までツルンっと飲み込まれてしまったのだった。

「あああ……凄く締ってますよ奥さん……」
男はそう唸りながらみるみる腰の動きを早めていった。その腰の動きが乱暴になるにつれ私の心も乱れた。まるで突然地震に襲われた老婆のようにおろおろする私は、意味もなく人差し指の爪をカリカリと噛みながら、蹂躙される妻の顔を恐る恐る見た。
そこに目を向けた瞬間、いきなり妻と目が合った。
妻はじっと私を見ていた。その表情は、脱糞している姿を人間に見られている犬のようであり、今までに見たことのない羞恥にかられた表情だった。
尻から突き上げられる振動に肩をユッサユッサと揺らしながら、妻が再び「見ないで……」と言った。しかしその声は先ほどのような悲痛な叫びではなく、もはや猛威を振るう肉棒の威力に観念してしまったかのような、どこか諦めが感じられる呟きにすぎなかった。
そのまま妻は、この見ず知らずの男に様々な体位で犯された。横向きにされ、がっしりと体を抱き締められながら強引にキスをされている妻を見ていると、そのあまりの刺激に、思わず私はその場にヘナヘナとへたり込んでしまっていた。
頭上から、「キスはイヤ」という妻の抵抗の声が聞こえてきた。床にへたり込んだ私のすぐ目の前では二人の結合部分が、くちゃくちゃといやらしい音を立てていた。そんな結合部分には白濁の汁が溢れていた。それは明らかに妻のモノと思われる汁であり、それを見た瞬間、「キスはイヤ」と抵抗している妻の声に、私は更なる興奮を覚えたのだった。

あの時の、あの妻の背徳的な表情と声と白濁の汁が、今テレビ電話の画面に映っている妻の顔と大きく重なった。
私はあの時の興奮を思い出しながら、右手に握りしめたナプキンをガシガシと激しくシゴき、その中に大量の精液を放出した。
クフッ、クフッ、と鼻を鳴らしながら射精していると、妻が「もういいの?」と恐る恐る首を傾げた。
そんな妻の愛らしい目を見つめながら射精する私は、他人男の肉棒に乱れる妻の、あの残酷なシーンをもう一度見たいと必死に思いながら、その誰の物かわからぬ使用済みナプキンの中に、異常な欲望を出し尽くしたのだった。

(つづく)
《←目次》《3話へ→》
私は乱される妻の顔ばかり見ていた。他にも見るべき所は沢山あった。結合部分やフェラシーンやクンニシーンなど、興味深い箇所は沢山あったが、しかしそのような経験が初めてだった私にはそれらを見る余裕はなく、まるで出産に立ち会った夫のように、ただただひたすら妻の顔を心配そうに見つめていたのだった。
もちろん妻も初めてだった。だから妻も、その見ず知らずの中年男にちょっと体を触れただけで絶望的な表情を浮かべ、巨大なペニスを口に含まされたり、ぶよぶよの睾丸を舐めさせられている時など、ずっと嫌悪の表情を浮かべていた。
しかし、それが奉仕する側から奉仕される側に変わると、妻のその表情に変化が現れ始めた。それは、単独男が妻の股に顔を埋め、ペチャペチャと下品な音を立てて性器を舐め始めた時だった。

その時も、やはり妻の顔には嫌悪の表情は浮かんでいたが、しかし、その表情には何やら困惑している様子が見受けられた。
それはきっと、妻は密かに男の舌に快楽を得ていたからに違いなかった。私が見ている手前、表向きには嫌悪を示していた妻だったが、しかしその内面では、クリトリスを舐められて感じてしまっていたのだ。
嫌悪と快楽。そんな理性と本能が妻の中で葛藤していたのであろう、その今にも泣き出しそうな顔は、嫌がっているようにも見えれば、喜んでいるようにも見えた。
もしここに私がいなければ、おそらく妻は淫らな声を張り上げて悶えている事だろう。自らの意思で自分の両足を両腕に抱え込み、これでもかというくらいに股を開きながら、もっと舐めてと腰を突き上げているに違いなかった。

私は密かに悶えていた。妻に対する疑念が奇妙な感情を呼び起こし、複雑な性的興奮に襲われながらも、必死に妻の顔を覗き込んでいた。
妻は、私がそれを見て興奮している事に気づいているようだった。そんな妻が単独男に四つん這いにされ、いよいよその巨大なペニスを背後から挿入されそうになると、突然私に振り向きながら、「見ないで……」と弱々しく呟いた。
すると男がそんな妻の尻をいやらしく撫でながら、「ダメだよ奥さん、ちゃんと旦那さんに見てもらわなくちゃ」と野太い声で笑い、その大粒イチゴのような亀頭を妻の割れ目に這わせた。
それでも妻は必死に私に振り返りながら、「お願い、見ないで」と悲痛に言った。
しかし私はその時見てしまった。私は見逃さなかった。そう言いながらも妻が、その巨大な肉棒をより深く挿入させるために、自らの意思で尻を更に突き出していたのを……。
男は、そんな妻の剥き出された裂け目の表面に、パンパンに腫れ上がった亀頭を擦り付けた。両手を腰に当て、腰だけを巧みにコキコキと動かしながら、妻の粘膜に亀頭を滑らせていた。
「旦那さん、奥さんのオマンコ、もうヒクヒクしてますよ。我慢できないみたいですから入れてあげてもいいですか?」
男がそう言いながら私に振り返った。男は典型的なサル顔で、『猿の惑星』に出てくる茶色い毛をしたザイアス博士によく似ていた。
この男は、この手のプレイに随分と手馴れているようだった。男は、私たち夫婦が寝取られプレイは初めてだということを知っているため、わざとそのような残酷な言葉を放っては、私や妻に羞恥と屈辱を与えているのだ。その言葉によって私たちの興奮をより高め、同時に自らもそんな私たち夫婦を見ては背徳の興奮を得ようとしているのだった。
そんな男の意図的な言葉に、私はまんまと翻弄された。こんなサル男に感じさせられている妻に激しい嫉妬の念を抱き、そして今まさに見ず知らずの他人のペニスで妻が汚されようとしているこの瞬間に私は身震いし、凄まじい絶望感と性的興奮に脳を掻き乱されていた。
「それじゃあ……入れますからね……」
男はそう短く呟くと、猫が背伸びをしているようなポーズで尻を突き出している妻の両太ももを両腕で押さえ込み、そのままパックリと開いた妻の尻肉の谷間に向かってゆっくりと腰を突き上げた。
テラテラと赤く濡れ輝く妻の割れ目に、見知らぬ男の巨大な肉棒が滑り込んだ。それはまるでコンニャクゼリーをカップから押し出した瞬間のように滑らかであり、その巨大な肉棒はいとも簡単に根元までツルンっと飲み込まれてしまったのだった。

「あああ……凄く締ってますよ奥さん……」
男はそう唸りながらみるみる腰の動きを早めていった。その腰の動きが乱暴になるにつれ私の心も乱れた。まるで突然地震に襲われた老婆のようにおろおろする私は、意味もなく人差し指の爪をカリカリと噛みながら、蹂躙される妻の顔を恐る恐る見た。
そこに目を向けた瞬間、いきなり妻と目が合った。
妻はじっと私を見ていた。その表情は、脱糞している姿を人間に見られている犬のようであり、今までに見たことのない羞恥にかられた表情だった。
尻から突き上げられる振動に肩をユッサユッサと揺らしながら、妻が再び「見ないで……」と言った。しかしその声は先ほどのような悲痛な叫びではなく、もはや猛威を振るう肉棒の威力に観念してしまったかのような、どこか諦めが感じられる呟きにすぎなかった。
そのまま妻は、この見ず知らずの男に様々な体位で犯された。横向きにされ、がっしりと体を抱き締められながら強引にキスをされている妻を見ていると、そのあまりの刺激に、思わず私はその場にヘナヘナとへたり込んでしまっていた。
頭上から、「キスはイヤ」という妻の抵抗の声が聞こえてきた。床にへたり込んだ私のすぐ目の前では二人の結合部分が、くちゃくちゃといやらしい音を立てていた。そんな結合部分には白濁の汁が溢れていた。それは明らかに妻のモノと思われる汁であり、それを見た瞬間、「キスはイヤ」と抵抗している妻の声に、私は更なる興奮を覚えたのだった。

あの時の、あの妻の背徳的な表情と声と白濁の汁が、今テレビ電話の画面に映っている妻の顔と大きく重なった。
私はあの時の興奮を思い出しながら、右手に握りしめたナプキンをガシガシと激しくシゴき、その中に大量の精液を放出した。
クフッ、クフッ、と鼻を鳴らしながら射精していると、妻が「もういいの?」と恐る恐る首を傾げた。
そんな妻の愛らしい目を見つめながら射精する私は、他人男の肉棒に乱れる妻の、あの残酷なシーンをもう一度見たいと必死に思いながら、その誰の物かわからぬ使用済みナプキンの中に、異常な欲望を出し尽くしたのだった。

(つづく)
《←目次》《3話へ→》
吐泥(へろど)3
2013/06/13 Thu 00:01
妻との電話を切ると、私は小さな溜息をつきながら汚れたナプキンを二つ折りにした。ゆっくりとベッドを降り、そのままトイレへと向かった。大量の精液を吸い込んだそれは大福餅のように重く、便器の裏にあった汚物入れにそれを捨てると、まるで肉片を投げ捨てたかのようなドサッと重い音がした。
まるでどこかの収容所のような簡易的すぎる便器だった。だから便座を上げないままそこに小便をしてやった。未だ勃起していたペニスは尿道口が圧迫されており、小便はまるで高圧洗浄機のように凄まじい勢いで噴き出した。なぜか無性に愉快になった私は「それっ!」と子供のような掛け声をかけながらそこらじゅうに小便を飛ばした。
シャワーカーテンやトイレットペーパーホルダーが精液混じりの小便で濡れた。更に私は爪先立ちになり、噴射したままのペニスを洗面所に向けると、鏡の前に置いてあった『消毒済み』のビニール袋に包まれたプラスチック製のコップが見事に吹き飛ばされ、カラカラと派手な音を立ててバスタブの底に落ちていった。
そのままシャワーを浴びた。必要以上のボディーソープを股間に塗りたくり、そこにシャワーを向けた瞬間、そこで初めて靴下を履いたままだということに気づいた。
恨み言を呟きながら既にベタベタになった靴下を脱いだ。そして「ボケが!」と吐き捨てながらクリーム色した浴室の壁にそれを投げつけると、黒い靴下は、バタッ! という音を立てながら、『へ』という字のまま壁に張り付いた。
浴室を出ると、濡れた体のままベッドに倒れた。スポンジのように硬いマットは中途半端に体を跳ね返し、一瞬脳がクラッと揺れた。
タバコのヤニで黄ばんだ天井を見つめながら、未だ勃起が収まらないペニスを握った。妻は陰部を濡らしたまま美容院に行ったのだろうかと思うと、不意に男性美容師に股間を舐められている妻の姿が目に浮かんだ。

私は異常に性欲が強かった。それは、精神科の医師に異常性欲者だと診断された事があるほど異常だった。だから私は日に何度も射精しなければならなかった。だからほぼ毎日のように妻の体を貪っていたのだった。
妻は私よりも五つ年下の三十歳だった。四年前に友人の紹介で知り合い、その一年後に結婚した。結婚してかれこれ三年になるが、私は出張で家をあけたとき以外は毎晩妻の体を貪り続けていた。
しかし、私は異常でも、妻はいたって正常だった。正常者が、その意に反して毎晩二回も三回も攻められるというのは、恐らく、拷問に匹敵するほどの苦しみに違いなく、実際、陰部が濡れなかったり、時折「もう疲れた……」などと弱音を吐くことが多々あった。
それでも私は、大量のローションを妻の陰部に塗り込み、もはや死体のようにぐったりしている妻の体を執拗に攻め続けた。お前のそのいやらしい体が悪いんだ、そのタプタプと波打つ巨乳が興奮を誘発しているからだ、などと、あたかもそれを妻のせいにしながら、その異常性欲を妻の体に放出していたのだった。
そんな私の異常な性欲に妻が気づかないわけがなかった。二回、三回と私が求める度に、妻は「何かの病気じゃないの?」と心配するようになってきた。しかし、さすがに精神科の医師から異常性欲者と診断されたなどと話せるわけがなかった。だから私はそれを妻には黙っていた。
最初のうちは、それが妻に発覚する事を私は恐れていた。異常性欲者などという事がバレれば離婚されるのではないかと怯えていたのだ。
されど私の異常性欲は一向に収まらなかった。それどころか、動物のようにただただ延々と腰を振っているだけの単純な性交では次第に物足りなくなってきた。その性欲は日に日に変態性が強くなり、ドロドロとした欲望が脳を支配するようになってきたのだった。

しかし、今の妻にそれを求めるのはあまりにも残酷すぎた。今の妻は、絶倫なる私の異常性欲によって身も心も疲れ果て、股を開くことですらやっとなのだ。
だから私は、それを補うためにそれなりの風俗に通った。夜な夜な怪しげな小部屋で、子豚のような娘を縄で縛って犯したり、ガリガリに痩せた中年女の見窄らしい尻に蝋燭を垂らしながら肛門を犯したりと変態行為を繰り返していた。
しかし私のこの異常性欲は尋常ではなかったため、とてもではないが風俗では金が続かなかった。しかたなく私は、自慰によってその性欲を放出しようとした。そして公園の女子便所に忍び込むようになったのだが、しかしそう簡単に女は現れるはずがなく、結局誰一人として覗けないまま、尻を蚊に刺されるだけで退散する日々が続いていたのだった。
思うように射精できない私は、もはや一触即発の危機にあった。会社にいても電車に乗っていても射精することばかり考え、頭の中では常に真っ白な精液がシュパシュパと気持ち良く迸っていた。
そんな妄想の心地良い射精が、現実の私を更に追い込んだ。一刻も早く射精しなければ本当に気が狂ってしまうという強迫観念に駆られた私は、遂にその一線を超えてしまったのだった。
それは今から三ヶ月ほど前、仕事帰りにまた例の公衆便所に立ち寄った時のことだった。
今度こそは今度こそはと思いながら女子便所に忍び込むと、いつもは静まり返っているはずのその場所にガタガタという激しい振動音が響いていた。
その音は一番奥の個室から聞こえてきた。一瞬、清掃中だと思い、焦ってその場を逃げ出しそうになったが、しかしこんな時間に清掃などしているわけがない事にすぐに気付き、私はその怪しげな振動音に大きな期待を膨らませながら、奥の個室へと足を忍ばせたのだった。
素早く隣の個室に忍び込み、息を殺してドアを閉めた。案の定、隣の個室からはその規則的に続く振動音と共にリズミカルな呼吸が聞こえてきた。しかもその呼吸は複数であり、時折その呼吸に混じって野太い男の声がボソボソと聞こえてきた。
遂に現場を取り押さえたと心が躍った。しかもそれは、女子が排泄しているといった安っぽい現場ではなく、明らかに男女が淫らに交わっているといったレアな現場なのだ。
まさかこんな場面に出くわすとは思ってもいなかった私は、何度も何度も無言でガッツポーズを取りながら、急いで内ポケットからスマホを取り出した。
荒い鼻息を必死に堪えながらスマホのカメラを起動させた。録画ボタンを押すと音が鳴ってしまうため、取り敢えずカメラのままでスマホを個室の壁の上へと持ち上げた。
いきなり天井の蛍光灯がアップで映し出され、一瞬画面が真っ白になった。慎重に手首を曲げながら角度を変え、隣の個室の底にカメラを向けると、画面に黒い二つの頭がぼんやりと浮かび上がった。そしてその奥に更にもう一つの頭が見え、それが規則的に続く振動音と共にユッサユッサと揺れていた。

初めてだった。他人のセックスをリアルで見るのも初めてだし、当然、三人プレイを見るのも初めてだった。
攻める男達は、私と同じ年くらいの中年男で、攻められている女も三十前後の中年女だった。三人は無言で黙々と作業を続けていた。その結合部分までは見ることができなかったが、そのネチャネチャと粘り気のある音からして、その女が相当濡れていることが窺い知れた。
これは凄いお宝に出くわしたものだと、喜び勇んでズボンの中からペニスを引きずり出した私だったが、しかし、しばらくすると何やらその様子がおかしいことに気づいた。
そう思ったのは、床に散らばっている品々が目に飛び込んできたからだった。それはパック詰めされた豚肉や日清のサラダ油だった。大根や長ネギや半分にカットされた白菜が床に転がり、個室の隅に投げ捨てられたスーパー大黒屋のビニール袋の中では、パック入りの豆腐が無残に潰れているのが見えた。
もしやと思いながら素早くカメラを女の顔に向けてみた。そしてそこにズームしてみると、グスグスと泣きながら肉棒を咥えている女の顔がアップで映し出された。
その右頬は赤く腫れていた。首には引っかき傷のような跡が無数に走り、肉棒を咥えているその唇にも紫色の血玉がいくつも浮かんでいた。私は指を震わせながらレンズをズームアウトし、女の太ももにビリビリに破れたパンティーがぶら下がっているのを見た。
これは紛れもなくレ○プだった。買い物帰りの主婦が二人の男にレ○プされているに違いないのである。
そう確信した瞬間、背筋にゾゾゾッと寒気が走り、それまでペニスを上下させていた手が途端に凍りついた。
見つかったら殺される。そう思った私は恐る恐るスマホを下げ、息を殺しながら既に萎んでいるペニスをズボンの中に押し込んだ。しかし、それ以上は身動きできなかった。足がすくみ、膝がガクガクと震え、もはや眼球だけしか動かせなくなってしまっていたのだった。
石のように凍りついてしまった私の耳に、女が乗せられている便器の蓋がギシギシと軋む音が延々と響いていた。すると、その音の中に、「んんんんんん」っと唸る男の声が混じった。どうやら男は射精したらしく、へらへらと笑いながらもう一人の男に「たっぷり出してやったよ」と囁いていた。
しばらくすると、ガサガサと衣類を整える音と共に、携帯の疑似シャッター音がシャカシャカと鳴り出した。男たちは、「警察に言ったら奥さんのこの写真をネットにばらまくからな」などと口々に脅し、そのまま堂々と個室のドアを開けた。
男たちの足音が遠ざかって行った。男たちの足音が完全に消えると、冷たい便所には女の震えたすすり泣きだけが悲しく響いた。
私は、そんな悲惨な鳴き声を聞きながら未だ震えていた。しかし、そんな凄まじい恐怖に襲われながらも、不意に私の脳がぐるぐると回り始めた。それは、12才の頃、初めて姉の使用済み下着を手にした時の興奮によく似ていた。ダメだダメだと自分に言い聞かせながら洗濯機の中からそれを摘み出し、その強烈にイカ臭い黄ばんだシミに舌をザラザラと這わせながら射精した、あの時の背徳的な興奮と全く同じだった。
ぐるぐると回る脳の動きに合わせ、胸に熱いものが込み上げてきた。それを吐き出そうとそれまで真一文字に閉じていた唇を緩めると、途端に生温い息が堰を切ったように溢れ出し、卑猥な呼吸と共に肩が上下に動き出した。
はぁ、はぁ、はぁ、と続く自分の呼吸に耳を澄ましていた。ふと気がつくと、いつの間にそうしたのか、私は熱り立つ肉棒をがっしりと握りしめ、それを上下にシゴいていたのだった。
ダメだダメだ。あの時のように必死に自分にそう言い聞かせるが、しかし私の足は勝手に動き出した。突き出した肉棒をシコシコさせながら個室から出ると、ドアが開きっぱなしの隣の個室へと進み、迷うことなくその個室に侵入しては素早く後ろ手でドアの鍵を閉めた。
未だそのままの状態ですすり泣きしていた女が、私を見てギョッと目を見開いた。「あわわわわ」と何か言おうとしている女に、「大丈夫です、大丈夫ですから」とそう言いながら服を脱ぎ始めると、驚愕する女の顎と膝がガクガクと震え始め、同時に便座がカタカタと音を立てた。
全裸となった私は、便座に座る女の真正面にゆっくりと腰を下ろした。「大丈夫ですから」と呟きながら震える女の太ももをゆっくりと押し開いた。
ウヨウヨと伸びる陰毛の奥に、散々弄ばれて赤く爛れた裂け目がべろりと半開きになっていた。無残な股間と女の顔を交互に見ると、女は顎をガクガクさせながら「許してください……」と声を震わせ、怯えた目に涙をウルウルさせた。そんな女の裂け目の中には、白いモノが溜まっていた。人差し指で肛門の上を押してみると、歪んだ裂け目の中から、まるでヘドロのようなケモノ共の精がドロリと垂れたのだった。

(つづく)
《←目次》《4話へ→》
まるでどこかの収容所のような簡易的すぎる便器だった。だから便座を上げないままそこに小便をしてやった。未だ勃起していたペニスは尿道口が圧迫されており、小便はまるで高圧洗浄機のように凄まじい勢いで噴き出した。なぜか無性に愉快になった私は「それっ!」と子供のような掛け声をかけながらそこらじゅうに小便を飛ばした。
シャワーカーテンやトイレットペーパーホルダーが精液混じりの小便で濡れた。更に私は爪先立ちになり、噴射したままのペニスを洗面所に向けると、鏡の前に置いてあった『消毒済み』のビニール袋に包まれたプラスチック製のコップが見事に吹き飛ばされ、カラカラと派手な音を立ててバスタブの底に落ちていった。
そのままシャワーを浴びた。必要以上のボディーソープを股間に塗りたくり、そこにシャワーを向けた瞬間、そこで初めて靴下を履いたままだということに気づいた。
恨み言を呟きながら既にベタベタになった靴下を脱いだ。そして「ボケが!」と吐き捨てながらクリーム色した浴室の壁にそれを投げつけると、黒い靴下は、バタッ! という音を立てながら、『へ』という字のまま壁に張り付いた。
浴室を出ると、濡れた体のままベッドに倒れた。スポンジのように硬いマットは中途半端に体を跳ね返し、一瞬脳がクラッと揺れた。
タバコのヤニで黄ばんだ天井を見つめながら、未だ勃起が収まらないペニスを握った。妻は陰部を濡らしたまま美容院に行ったのだろうかと思うと、不意に男性美容師に股間を舐められている妻の姿が目に浮かんだ。

私は異常に性欲が強かった。それは、精神科の医師に異常性欲者だと診断された事があるほど異常だった。だから私は日に何度も射精しなければならなかった。だからほぼ毎日のように妻の体を貪っていたのだった。
妻は私よりも五つ年下の三十歳だった。四年前に友人の紹介で知り合い、その一年後に結婚した。結婚してかれこれ三年になるが、私は出張で家をあけたとき以外は毎晩妻の体を貪り続けていた。
しかし、私は異常でも、妻はいたって正常だった。正常者が、その意に反して毎晩二回も三回も攻められるというのは、恐らく、拷問に匹敵するほどの苦しみに違いなく、実際、陰部が濡れなかったり、時折「もう疲れた……」などと弱音を吐くことが多々あった。
それでも私は、大量のローションを妻の陰部に塗り込み、もはや死体のようにぐったりしている妻の体を執拗に攻め続けた。お前のそのいやらしい体が悪いんだ、そのタプタプと波打つ巨乳が興奮を誘発しているからだ、などと、あたかもそれを妻のせいにしながら、その異常性欲を妻の体に放出していたのだった。
そんな私の異常な性欲に妻が気づかないわけがなかった。二回、三回と私が求める度に、妻は「何かの病気じゃないの?」と心配するようになってきた。しかし、さすがに精神科の医師から異常性欲者と診断されたなどと話せるわけがなかった。だから私はそれを妻には黙っていた。
最初のうちは、それが妻に発覚する事を私は恐れていた。異常性欲者などという事がバレれば離婚されるのではないかと怯えていたのだ。
されど私の異常性欲は一向に収まらなかった。それどころか、動物のようにただただ延々と腰を振っているだけの単純な性交では次第に物足りなくなってきた。その性欲は日に日に変態性が強くなり、ドロドロとした欲望が脳を支配するようになってきたのだった。

しかし、今の妻にそれを求めるのはあまりにも残酷すぎた。今の妻は、絶倫なる私の異常性欲によって身も心も疲れ果て、股を開くことですらやっとなのだ。
だから私は、それを補うためにそれなりの風俗に通った。夜な夜な怪しげな小部屋で、子豚のような娘を縄で縛って犯したり、ガリガリに痩せた中年女の見窄らしい尻に蝋燭を垂らしながら肛門を犯したりと変態行為を繰り返していた。
しかし私のこの異常性欲は尋常ではなかったため、とてもではないが風俗では金が続かなかった。しかたなく私は、自慰によってその性欲を放出しようとした。そして公園の女子便所に忍び込むようになったのだが、しかしそう簡単に女は現れるはずがなく、結局誰一人として覗けないまま、尻を蚊に刺されるだけで退散する日々が続いていたのだった。
思うように射精できない私は、もはや一触即発の危機にあった。会社にいても電車に乗っていても射精することばかり考え、頭の中では常に真っ白な精液がシュパシュパと気持ち良く迸っていた。
そんな妄想の心地良い射精が、現実の私を更に追い込んだ。一刻も早く射精しなければ本当に気が狂ってしまうという強迫観念に駆られた私は、遂にその一線を超えてしまったのだった。
それは今から三ヶ月ほど前、仕事帰りにまた例の公衆便所に立ち寄った時のことだった。
今度こそは今度こそはと思いながら女子便所に忍び込むと、いつもは静まり返っているはずのその場所にガタガタという激しい振動音が響いていた。
その音は一番奥の個室から聞こえてきた。一瞬、清掃中だと思い、焦ってその場を逃げ出しそうになったが、しかしこんな時間に清掃などしているわけがない事にすぐに気付き、私はその怪しげな振動音に大きな期待を膨らませながら、奥の個室へと足を忍ばせたのだった。
素早く隣の個室に忍び込み、息を殺してドアを閉めた。案の定、隣の個室からはその規則的に続く振動音と共にリズミカルな呼吸が聞こえてきた。しかもその呼吸は複数であり、時折その呼吸に混じって野太い男の声がボソボソと聞こえてきた。
遂に現場を取り押さえたと心が躍った。しかもそれは、女子が排泄しているといった安っぽい現場ではなく、明らかに男女が淫らに交わっているといったレアな現場なのだ。
まさかこんな場面に出くわすとは思ってもいなかった私は、何度も何度も無言でガッツポーズを取りながら、急いで内ポケットからスマホを取り出した。
荒い鼻息を必死に堪えながらスマホのカメラを起動させた。録画ボタンを押すと音が鳴ってしまうため、取り敢えずカメラのままでスマホを個室の壁の上へと持ち上げた。
いきなり天井の蛍光灯がアップで映し出され、一瞬画面が真っ白になった。慎重に手首を曲げながら角度を変え、隣の個室の底にカメラを向けると、画面に黒い二つの頭がぼんやりと浮かび上がった。そしてその奥に更にもう一つの頭が見え、それが規則的に続く振動音と共にユッサユッサと揺れていた。

初めてだった。他人のセックスをリアルで見るのも初めてだし、当然、三人プレイを見るのも初めてだった。
攻める男達は、私と同じ年くらいの中年男で、攻められている女も三十前後の中年女だった。三人は無言で黙々と作業を続けていた。その結合部分までは見ることができなかったが、そのネチャネチャと粘り気のある音からして、その女が相当濡れていることが窺い知れた。
これは凄いお宝に出くわしたものだと、喜び勇んでズボンの中からペニスを引きずり出した私だったが、しかし、しばらくすると何やらその様子がおかしいことに気づいた。
そう思ったのは、床に散らばっている品々が目に飛び込んできたからだった。それはパック詰めされた豚肉や日清のサラダ油だった。大根や長ネギや半分にカットされた白菜が床に転がり、個室の隅に投げ捨てられたスーパー大黒屋のビニール袋の中では、パック入りの豆腐が無残に潰れているのが見えた。
もしやと思いながら素早くカメラを女の顔に向けてみた。そしてそこにズームしてみると、グスグスと泣きながら肉棒を咥えている女の顔がアップで映し出された。
その右頬は赤く腫れていた。首には引っかき傷のような跡が無数に走り、肉棒を咥えているその唇にも紫色の血玉がいくつも浮かんでいた。私は指を震わせながらレンズをズームアウトし、女の太ももにビリビリに破れたパンティーがぶら下がっているのを見た。
これは紛れもなくレ○プだった。買い物帰りの主婦が二人の男にレ○プされているに違いないのである。
そう確信した瞬間、背筋にゾゾゾッと寒気が走り、それまでペニスを上下させていた手が途端に凍りついた。
見つかったら殺される。そう思った私は恐る恐るスマホを下げ、息を殺しながら既に萎んでいるペニスをズボンの中に押し込んだ。しかし、それ以上は身動きできなかった。足がすくみ、膝がガクガクと震え、もはや眼球だけしか動かせなくなってしまっていたのだった。
石のように凍りついてしまった私の耳に、女が乗せられている便器の蓋がギシギシと軋む音が延々と響いていた。すると、その音の中に、「んんんんんん」っと唸る男の声が混じった。どうやら男は射精したらしく、へらへらと笑いながらもう一人の男に「たっぷり出してやったよ」と囁いていた。
しばらくすると、ガサガサと衣類を整える音と共に、携帯の疑似シャッター音がシャカシャカと鳴り出した。男たちは、「警察に言ったら奥さんのこの写真をネットにばらまくからな」などと口々に脅し、そのまま堂々と個室のドアを開けた。
男たちの足音が遠ざかって行った。男たちの足音が完全に消えると、冷たい便所には女の震えたすすり泣きだけが悲しく響いた。
私は、そんな悲惨な鳴き声を聞きながら未だ震えていた。しかし、そんな凄まじい恐怖に襲われながらも、不意に私の脳がぐるぐると回り始めた。それは、12才の頃、初めて姉の使用済み下着を手にした時の興奮によく似ていた。ダメだダメだと自分に言い聞かせながら洗濯機の中からそれを摘み出し、その強烈にイカ臭い黄ばんだシミに舌をザラザラと這わせながら射精した、あの時の背徳的な興奮と全く同じだった。
ぐるぐると回る脳の動きに合わせ、胸に熱いものが込み上げてきた。それを吐き出そうとそれまで真一文字に閉じていた唇を緩めると、途端に生温い息が堰を切ったように溢れ出し、卑猥な呼吸と共に肩が上下に動き出した。
はぁ、はぁ、はぁ、と続く自分の呼吸に耳を澄ましていた。ふと気がつくと、いつの間にそうしたのか、私は熱り立つ肉棒をがっしりと握りしめ、それを上下にシゴいていたのだった。
ダメだダメだ。あの時のように必死に自分にそう言い聞かせるが、しかし私の足は勝手に動き出した。突き出した肉棒をシコシコさせながら個室から出ると、ドアが開きっぱなしの隣の個室へと進み、迷うことなくその個室に侵入しては素早く後ろ手でドアの鍵を閉めた。
未だそのままの状態ですすり泣きしていた女が、私を見てギョッと目を見開いた。「あわわわわ」と何か言おうとしている女に、「大丈夫です、大丈夫ですから」とそう言いながら服を脱ぎ始めると、驚愕する女の顎と膝がガクガクと震え始め、同時に便座がカタカタと音を立てた。
全裸となった私は、便座に座る女の真正面にゆっくりと腰を下ろした。「大丈夫ですから」と呟きながら震える女の太ももをゆっくりと押し開いた。
ウヨウヨと伸びる陰毛の奥に、散々弄ばれて赤く爛れた裂け目がべろりと半開きになっていた。無残な股間と女の顔を交互に見ると、女は顎をガクガクさせながら「許してください……」と声を震わせ、怯えた目に涙をウルウルさせた。そんな女の裂け目の中には、白いモノが溜まっていた。人差し指で肛門の上を押してみると、歪んだ裂け目の中から、まるでヘドロのようなケモノ共の精がドロリと垂れたのだった。

(つづく)
《←目次》《4話へ→》
吐泥(へろど)4
2013/06/13 Thu 00:01
ダメだダメだ。ダメだダメだ。とそう何度も自分に言い聞かせながらも、肛門へと垂れ落ちる精液を唇の先で捕らえ、まるで痰を啜るかのようにズズズッと吸い取った。青汁のような苦味と臭味を口内に感じながら、見ず知らずの男の精液を飲み込む自分に興奮を覚えた。
舌を勃起した男根のように固め、精液だらけの女の裂け目をそれで掻き回した。女は震えているだけで抵抗しなかった。完全に無抵抗だった。ここまで打ちのめされてしまった女というのは、夕刻の海岸沿いに浮かんでいるクラゲのように弛く、もはやなんでも受け入れてしまうのだ。
まるで納豆を食べているように口内をネトネトさせながら、「大丈夫ですよ、大丈夫ですよ」と呟く私は、その場にゆっくりと立ち上がると、便座の上でぐったりしている女の両足をM字に開いた。両腕で女の足を固定しながら女の顔を真正面から覗き込み、「大丈夫ですから」ともう一度そう呟くと、ダラダラになった裂け目に硬くなった肉棒の先をヌルヌルと擦り付けた。

女の喉元がゴクリと上下に動いた。女は悲観した目で私を見つめているだけで、その目に抵抗する意思は見られなかった。
ここまで本能の赴くままに動いていた私だったが、しかし、女のその目をまともに見た瞬間、突然理性が目覚めた。
この人は奥さんなんだ。きっと今頃、旦那や子供達は、「お母さん遅いね……」と言いながら時計ばかりを見つめ、それぞれに最悪な状況を思い浮かべては密かに神に祈っている事であろう。
そう思うと凄まじい恐怖が襲いかかり、この場に及んで私はビビってしまった。そんな旦那や子供たちが想像している最悪な状況を、今私は現実にしようとしているのだ。私ごときの愚かな人間が、一つの家族の運命を左右してしまうなど許される事ではなく、もし私がこの一線を越えてしまえば、今後とんでもない罰が下るのではないかとビビってしまったのだった。
しかし、そんな理性は一瞬にして消えた。裂け目の表面をヌルヌルと上下していた亀頭が、ぽっかりと口を開いていた小さな穴の中にヌルッと滑り込んでしまうと、そんな安っぽい理性は瞬く間に消え去った。
見ず知らずの女の膣に亀頭が突き刺さっていた。見ず知らずの男たちの精液が亀頭に絡みついてきた。頭の中で何かがパンっと破裂した。私は猛然と女の肩に抱きつき、その震える唇に吸い付いた。そして硬い肉棒を根元まで押し込み、そのヌルヌルとした生温かい穴の感触に身震いすると、嫌がる女の口内を舌で滅茶苦茶に掻き回しながら、私は狂ったように腰を振り始めたのだった。

出来心だった。レ○プされた直後の女ならレ○プしてしまってもいいだろうと思った。どうせこの女は既に二匹の猛獣に食い荒らされているのだから、今更私がその残骸を貪ったところで何も変わりはしないだろうと思った。そんな自己中心的な考えから、私は無抵抗な奥さんの膣内に三回射精し、口内に一回ぶちまけ、肛門にまでそれを注入した。
その翌日、私は酷い鬱に落ち込んだ。自分が犯したその非道な行いに、改めて凄まじい嫌悪感と罪悪感に襲われた私は、あの時便所の床で無残に潰れていた『おかめ納豆』のパックが頭から離れず、徹底的に苦しめられた。
しかし私は、あの残酷な光景を思い出しながら何度も自涜した。奥さんのあの脅えた目や、唇を噛み締めながら震えていたすすり泣き、そして、私の腰の動きが早くなる度に時折漏らした、「あぁぁ」という淫らな喘ぎを鮮明に思い出しながら、あの時と同じ不浄な液体を手の中に放出していた。
そのうち、妻を攻めている最中も、あの時の奥さんを思い出すようになった。悶える妻をそっと見つめながら、もしあの時、便所でレ○プされていたのが妻だったらと想像しては、その恐怖に背筋を凍らせた。
しかしそんな恐怖は次第に欲望へと変わり、せっせと腰を振っている私の脳裏に背徳的な妄想を巡らせた。
それは、買い物帰りの妻が、あの獰猛な男たちにラブホテルに連れ込まれるというものだった。妻は全裸にされ、手首を縛られ、他の男たちに見下ろされながらズボズボと犯されていた。あの時の奥さんのようにすすり泣きしながらも、密かにバスローブの紐で猿轡された口から卑猥な呼吸を漏らしていた。

揺れ動く巨乳を見つめながら、私はそんな淫らな妻の姿を想像していた。
異常な興奮に駆られた私は、他人に陵辱される妻が果たしてどう乱れるのかを確かめたいと思った。そして、夫の私にも見せた事のない淫らな姿を他人に曝け出している妻を、本気で見てみたいとそう思った。
私は凄まじい背徳感に襲われながらも、妻のヌルヌルの穴の中に肉棒を激しくピストンさせていた。そして他人男に妻をヤらせてみたいという欲望を常に漲らせながら、その穴の中に幾度も幾度も不浄な精を放出していたのだった。
私はあの公衆便所で人間としての第一線を超えてしまった。
それ以来私は、妻に対する愛情が特殊なものへと変化した。
確かに私は妻を愛していた。自分の命よりも大切な人だと本心からそう思っていたが、しかしその反面で、私は妻に対して破滅的な妄想を抱き始めた。
そんな私は、いつしかあの公衆便所の男たちと同じヘドロと化していたのだった。
(つづく)
《←目次》《5話へ→》
舌を勃起した男根のように固め、精液だらけの女の裂け目をそれで掻き回した。女は震えているだけで抵抗しなかった。完全に無抵抗だった。ここまで打ちのめされてしまった女というのは、夕刻の海岸沿いに浮かんでいるクラゲのように弛く、もはやなんでも受け入れてしまうのだ。
まるで納豆を食べているように口内をネトネトさせながら、「大丈夫ですよ、大丈夫ですよ」と呟く私は、その場にゆっくりと立ち上がると、便座の上でぐったりしている女の両足をM字に開いた。両腕で女の足を固定しながら女の顔を真正面から覗き込み、「大丈夫ですから」ともう一度そう呟くと、ダラダラになった裂け目に硬くなった肉棒の先をヌルヌルと擦り付けた。

女の喉元がゴクリと上下に動いた。女は悲観した目で私を見つめているだけで、その目に抵抗する意思は見られなかった。
ここまで本能の赴くままに動いていた私だったが、しかし、女のその目をまともに見た瞬間、突然理性が目覚めた。
この人は奥さんなんだ。きっと今頃、旦那や子供達は、「お母さん遅いね……」と言いながら時計ばかりを見つめ、それぞれに最悪な状況を思い浮かべては密かに神に祈っている事であろう。
そう思うと凄まじい恐怖が襲いかかり、この場に及んで私はビビってしまった。そんな旦那や子供たちが想像している最悪な状況を、今私は現実にしようとしているのだ。私ごときの愚かな人間が、一つの家族の運命を左右してしまうなど許される事ではなく、もし私がこの一線を越えてしまえば、今後とんでもない罰が下るのではないかとビビってしまったのだった。
しかし、そんな理性は一瞬にして消えた。裂け目の表面をヌルヌルと上下していた亀頭が、ぽっかりと口を開いていた小さな穴の中にヌルッと滑り込んでしまうと、そんな安っぽい理性は瞬く間に消え去った。
見ず知らずの女の膣に亀頭が突き刺さっていた。見ず知らずの男たちの精液が亀頭に絡みついてきた。頭の中で何かがパンっと破裂した。私は猛然と女の肩に抱きつき、その震える唇に吸い付いた。そして硬い肉棒を根元まで押し込み、そのヌルヌルとした生温かい穴の感触に身震いすると、嫌がる女の口内を舌で滅茶苦茶に掻き回しながら、私は狂ったように腰を振り始めたのだった。

出来心だった。レ○プされた直後の女ならレ○プしてしまってもいいだろうと思った。どうせこの女は既に二匹の猛獣に食い荒らされているのだから、今更私がその残骸を貪ったところで何も変わりはしないだろうと思った。そんな自己中心的な考えから、私は無抵抗な奥さんの膣内に三回射精し、口内に一回ぶちまけ、肛門にまでそれを注入した。
その翌日、私は酷い鬱に落ち込んだ。自分が犯したその非道な行いに、改めて凄まじい嫌悪感と罪悪感に襲われた私は、あの時便所の床で無残に潰れていた『おかめ納豆』のパックが頭から離れず、徹底的に苦しめられた。
しかし私は、あの残酷な光景を思い出しながら何度も自涜した。奥さんのあの脅えた目や、唇を噛み締めながら震えていたすすり泣き、そして、私の腰の動きが早くなる度に時折漏らした、「あぁぁ」という淫らな喘ぎを鮮明に思い出しながら、あの時と同じ不浄な液体を手の中に放出していた。
そのうち、妻を攻めている最中も、あの時の奥さんを思い出すようになった。悶える妻をそっと見つめながら、もしあの時、便所でレ○プされていたのが妻だったらと想像しては、その恐怖に背筋を凍らせた。
しかしそんな恐怖は次第に欲望へと変わり、せっせと腰を振っている私の脳裏に背徳的な妄想を巡らせた。
それは、買い物帰りの妻が、あの獰猛な男たちにラブホテルに連れ込まれるというものだった。妻は全裸にされ、手首を縛られ、他の男たちに見下ろされながらズボズボと犯されていた。あの時の奥さんのようにすすり泣きしながらも、密かにバスローブの紐で猿轡された口から卑猥な呼吸を漏らしていた。

揺れ動く巨乳を見つめながら、私はそんな淫らな妻の姿を想像していた。
異常な興奮に駆られた私は、他人に陵辱される妻が果たしてどう乱れるのかを確かめたいと思った。そして、夫の私にも見せた事のない淫らな姿を他人に曝け出している妻を、本気で見てみたいとそう思った。
私は凄まじい背徳感に襲われながらも、妻のヌルヌルの穴の中に肉棒を激しくピストンさせていた。そして他人男に妻をヤらせてみたいという欲望を常に漲らせながら、その穴の中に幾度も幾度も不浄な精を放出していたのだった。
私はあの公衆便所で人間としての第一線を超えてしまった。
それ以来私は、妻に対する愛情が特殊なものへと変化した。
確かに私は妻を愛していた。自分の命よりも大切な人だと本心からそう思っていたが、しかしその反面で、私は妻に対して破滅的な妄想を抱き始めた。
そんな私は、いつしかあの公衆便所の男たちと同じヘドロと化していたのだった。
(つづく)
《←目次》《5話へ→》
吐泥(へろど)5
2013/06/13 Thu 00:01
ふと気がつくと私は闇の中にいた。
静まり返った暗黒を見つめながら、(ここはどこだ?)と一瞬考えたが、すぐにここが新潟のホテルだという事に気づいた。
いつの間にか眠ってしまっていた。シャワーを浴びた後、全裸のまま眠ってしまったのだ。
スポンジのような硬いベッドに寝転んだまま頭上に手を伸ばした。ビニールシートのように硬い暗幕カーテンを開けると、シャッという音と共に、国道に並んでいる外灯が部屋をオレンジ色に染めた。
むくりと起き上がり窓の外を見てみると、すぐ目の前で漆黒の海がうねうねと風に揺れていた。それはまるでどこかの地獄のように不気味であり、慌てて私はまたカーテンを閉めたのだった。
サイドボードに手を伸ばし、テレビのリモコンを鷲掴みにした。一番大きなボタンを押すと、カチッという音と共に銀色の光が溢れ、安っぽいバラエティー番組の嘘くさい観客の笑い声が部屋に響いた。
このまま寝てしまおうかどうしようか考えながらスマホを見た。なんとまだ七時だった。あまりの静けさにてっきり深夜だと思っていた私は、改めて田舎の閉塞感に恐怖を感じ、慌てて部屋中の電気を全て灯したのだった。
煙草を立て続けに二本吸いながら、くだらないバラエティー番組をぼんやり眺めていた。確かその番組は、東京では誰も見ていないような深夜に放映されていたが、しかしここではゴールデンタイムだった。途切れ途切れに流れるCMも、解像度の低い静止画を背景に不気味なアナウンスが流れるだけといった昭和の時代を感じさせるものが多く、たかだかテレビで都心と地方の格差を思い知らされた。
微かな空腹を覚えながらも三本目の煙草に指を伸ばした。狭い部屋の中は、既に真っ白な煙が充満しており、ふと年末のNHK特番で観た『検証・ホテルニュージャパン火災』のワンシーンが頭を過ぎった。
天井の火災報知器が反応するのではないかと慌てて三本目の煙草を諦め、代わりに電話の受話器を握った。ルームサービスなどあるわけがないと思いながらも、電話に出たフロントの男に、何か食べるものはないかと聞いてみると、地下のサウナにカップラーメンの自販機があると教えてくれた。
浴衣に着替えて部屋を出た。
そのサウナは別会社が経営しているため、本来なら九百円の入場料がいるらしい。しかしこのホテルとは契約しているため、宿泊客はルームキーをサウナのフロントに預ければ何度でも無料で入場できるのだと、フロントの男は少し威張ってそう言った。だから私は財布もスマホも持たないまま、煙草と三百円とルームキーだけを持って部屋を出た。
地下一階でエレベーターを降りた。狭いエレベーターホールにはボイラーの音がゴォォォォォォォと響き、人工的な生暖かい湿気が漂っていた。
ビールケースが積み重ねられた通路の奥に、『サウナキング』と書かれた自動ドアが見えた。その自動ドアをくぐると、すぐ左手に七十年代のボウリング場を思い出させる古びたフロントがあり、その中で中日阪神戦を見ていたネズミ顔の親父がジロッと私を見た。
「お願いします」とルームキーを出した。ネズミ顔の親父は無言でそれを受け取ると、それと交換に『6番』とマジックで書かれたロッカーキーをくれた。
通路には趣味の悪い赤い絨毯が敷き詰められていた。その通路の奥に、『ロッカールーム』と書かれたプレートがぶら下がっていた。
分厚いカーテンを開けると、細い通路の両サイドに縦長のロッカーがずらりと並んでいた。そのロッカールームはなぜか妙に薄暗く、まるで映画館のようだった。6番のロッカーを開けると、地下鉄の階段で寝ているホームレスの匂いがした。
全裸になった私は、まずは腹ごしらえだと、ロッカールームの隅に積んであった貸し出し用のトランクスを摘み上げた。オレンジのボーダー柄のトランクスはなぜかLLしかなく、サイズの合わないそれを履くと、まるでサーカスの団長のようだった。
休憩室にはソープランドの待合室によく似たシャボンの匂いが漂っていた。客は一人だけだった。ずらりと並んだリクライニングソファーの端に、半裸の中年男がトドのようにぐったりと横たわっていた。
そんな男を横目に、奥の自販機コーナーへ行くと、そこには日清のカップヌードルと天ぷらうどん、そしてハンバーガーの自販機があった。
どれも懐かしい自販機ばかりだった。カップヌードルと天ぷらうどんで随分と悩んだが、結局ハンバーガーにした。なぜならカップヌードルも天ぷらうどんも、どちらも売り切れだったからだ。
自販機の前のリクライニングソファーに腰掛けながらハンバーガーを囓った。懐かしい味がした。鍵っ子だった私は、土曜の昼は団地の裏の環八沿いにあるドライブインへ行き、よく一人でこれを食べていた。
ケチャップまみれの萎れたキャベツをぺちゃぺちゃ味わっていると、不意に、そのドライブインのトイレが脳裏に蘇った。
子供の頃、よくそのトイレでオナニーをした。卑猥な落書きやボットン便所の糞尿の匂い。そんな汚くて臭くて荒んだ雰囲気に猟奇的なエロスを感じていた私は、土曜の昼はいつもそのトイレに篭り、壁に描かれた女性器の落書きに向けて精液を飛ばした。

閑散とした休憩室には中日阪神戦のナイター中継が垂れ流されていた。ハンバーガーを食べ終えた私は、ケチャップだらけの紙を箱に押し込み、それを自販機の隙間に置いてある屑かごに捨てた。
リクライニングソファーに凭れて煙草に火をつけた。ふーっと煙を吐きながらナイター中継に目をやった。野球には興味がなく、これの何が楽しいのか全くわからない。そんな画面を見ながら立て続けに煙を吹かしていると、ふと、視野に異様な光景が映った。えっ? と思いながら眼球だけをそこに向けた。休憩室の隅のシートで横たわっていた男が、いつの間にか全裸になっていた。

私と目が合うなり、男はこれ見よがしに股を開いた。ウヨウヨと生える陰毛の中に、外来種のキノコのような真っ赤な亀頭がポコンっと顔を出しているのが見えた。
男の顔は、微笑むでもなく恥ずかしがるでもなく無表情だった。まるで蝋人形のようにジッと身動きせぬままそれを曝け出していた。
(ホモだぞ)と自分に警鐘を鳴らし、慌てて目を逸らした。異常性欲者の私ではあったが、さすがに男には欲情しなかった。欲情どころか吐き気さえ感じた。
急に怒りを覚えた私は、吸ったばかりの煙草を乱暴に灰皿に押し潰した。嫌悪をあらわにしながら立ち上がると、そのままスタスタと男に向かって歩き出した。
男は何を勘違いしたのか、フェラ後の淫乱女のような恍惚とした表情を浮かべ、不気味に潤んだ目で私を見ていた。半開きの唇からはハァハァと荒い息を吐き出し、その見苦しい太鼓腹を大きく揺らしていた。
男の前を通り過ぎる瞬間、おもむろにキッと睨みつけてやった。いつの間にかキノコは膨張し、陰毛の底からカリントウのような黒棒がヌッと伸びていた。真っ赤な亀頭はヒクヒクと痙攣し、『人』という字の尿道口には淫らな汁がテラテラと輝いていた。そんなキノコは同情に値するほどに小さかった。
これだから地方のサウナは嫌いなんだよ。
そう呟きながら脱衣場へと向かい、ストライプのトランクスを脱衣籠の中に投げつけた。籠の横に積まれていたオレンジのタオルで股間を隠し、『ジャングル大浴場・サウナ』と書かれた分厚いガラスのドアを開けた。
ジャングルと書かれている割には、鉢植えに入った安っぽい観葉植物がそこらじゅうに置かれているだけだった。大浴場と書かれている割には、町の銭湯ほどに小さな浴場だった。正方形の浴槽と小さな水風呂と丸いブクブクしている浴槽が三つ並び、それらが不潔っぽい観葉植物にぐるりと取り囲まれていた。
取り敢えずブクブクしている浴槽に足を入れた。タイルの浴槽縁に腰掛け、オレンジのタオルを太ももに広げた。お湯は大量のバスクリンで緑色に染められ、ブクブクしている足元からは安っぽい匂いがムンムンと立ち上ってきた。しばらく緑の湯をぼんやり眺めていたが、どれだけ考えてもその気色の悪い湯に浸かる気が起きなかった。
浴場の奥にログハウス調の扉があった。その扉の小窓の上に、『サウナ室』と書かれた表札が打ち付けてあった。そこに向かいながら、きっとこの重い扉を開ければ猛烈な熱気がムワッと溢れ出すだろうと予想した私は、途中の水風呂でタオルを浸し、ポタポタと水滴が垂れるそれを口にあてながら扉を開けた。しかし予想は外れた。溢れ出てきたのは強烈な熱風ではなく生暖かい温風だった。
中は思っていたよりも広かった。十五畳ほどの長方形の空間に、オレンジ色のバスタオルが敷き詰められたひな壇が二段並んでいた。
先客が四人いた。一人は沖縄系の青年だった。扉の前の下段に腰掛け、足元にポタポタと汗を垂らしながらジッと項垂れていた。一人はサラリーマン風の男だった。真ん中の上段で大きく股を開き、せっせと開脚前屈している。そしてあとの二人は、見るからにホモだった。神田の古本屋に山積みされているゲイ雑誌のグラビアに出てきそうな、『専務』と『熊』だった。二人はサウナの奥の突き当たりの上段で、寄り添うように並んで座っていた。
私は一段上がり、入口前で項垂れている沖縄青年の背後にソッと腰を下ろした。しかし、上段に座っても一向に熱さを感じなかった。
まるでコタツの中に潜っているような、そんなじんわりとした生暖かさが漂っているだけなのだ。
もしかしたらここは低温サウナなのだろうかと不審に思いながら辺りを見回すと、ふと、扉の前に置いてあった屑篭の中が目に飛び込んできた。
そこには、オレンジ色のキャップを被った『ぺぺローション』の空容器が転がり、そしてその容器に、コンドームらしきグリーンの物体がベタリと張り付いていた。
嫌な予感がした。あの休憩室の露出男といい、この異様に生温いサウナといい、何か無性に嫌な胸騒ぎがした。
よく見れば、目の前に座っている沖縄青年の背中や腰のラインは妙に女っぽかった。そして、私の隣りでせっせと開脚前屈しているサラリーマン風の男も、いかにもそのナマコのような巨大ペニスをアピールしているかのように、それを卑猥に剥き出していた。
(間違いない……ここはハッテン場だ……)
そう気付くなり、私は凄まじい恐怖に襲われたのだった。
(つづく)
《←目次》《6話へ→》
静まり返った暗黒を見つめながら、(ここはどこだ?)と一瞬考えたが、すぐにここが新潟のホテルだという事に気づいた。
いつの間にか眠ってしまっていた。シャワーを浴びた後、全裸のまま眠ってしまったのだ。
スポンジのような硬いベッドに寝転んだまま頭上に手を伸ばした。ビニールシートのように硬い暗幕カーテンを開けると、シャッという音と共に、国道に並んでいる外灯が部屋をオレンジ色に染めた。
むくりと起き上がり窓の外を見てみると、すぐ目の前で漆黒の海がうねうねと風に揺れていた。それはまるでどこかの地獄のように不気味であり、慌てて私はまたカーテンを閉めたのだった。
サイドボードに手を伸ばし、テレビのリモコンを鷲掴みにした。一番大きなボタンを押すと、カチッという音と共に銀色の光が溢れ、安っぽいバラエティー番組の嘘くさい観客の笑い声が部屋に響いた。
このまま寝てしまおうかどうしようか考えながらスマホを見た。なんとまだ七時だった。あまりの静けさにてっきり深夜だと思っていた私は、改めて田舎の閉塞感に恐怖を感じ、慌てて部屋中の電気を全て灯したのだった。
煙草を立て続けに二本吸いながら、くだらないバラエティー番組をぼんやり眺めていた。確かその番組は、東京では誰も見ていないような深夜に放映されていたが、しかしここではゴールデンタイムだった。途切れ途切れに流れるCMも、解像度の低い静止画を背景に不気味なアナウンスが流れるだけといった昭和の時代を感じさせるものが多く、たかだかテレビで都心と地方の格差を思い知らされた。
微かな空腹を覚えながらも三本目の煙草に指を伸ばした。狭い部屋の中は、既に真っ白な煙が充満しており、ふと年末のNHK特番で観た『検証・ホテルニュージャパン火災』のワンシーンが頭を過ぎった。
天井の火災報知器が反応するのではないかと慌てて三本目の煙草を諦め、代わりに電話の受話器を握った。ルームサービスなどあるわけがないと思いながらも、電話に出たフロントの男に、何か食べるものはないかと聞いてみると、地下のサウナにカップラーメンの自販機があると教えてくれた。
浴衣に着替えて部屋を出た。
そのサウナは別会社が経営しているため、本来なら九百円の入場料がいるらしい。しかしこのホテルとは契約しているため、宿泊客はルームキーをサウナのフロントに預ければ何度でも無料で入場できるのだと、フロントの男は少し威張ってそう言った。だから私は財布もスマホも持たないまま、煙草と三百円とルームキーだけを持って部屋を出た。
地下一階でエレベーターを降りた。狭いエレベーターホールにはボイラーの音がゴォォォォォォォと響き、人工的な生暖かい湿気が漂っていた。
ビールケースが積み重ねられた通路の奥に、『サウナキング』と書かれた自動ドアが見えた。その自動ドアをくぐると、すぐ左手に七十年代のボウリング場を思い出させる古びたフロントがあり、その中で中日阪神戦を見ていたネズミ顔の親父がジロッと私を見た。
「お願いします」とルームキーを出した。ネズミ顔の親父は無言でそれを受け取ると、それと交換に『6番』とマジックで書かれたロッカーキーをくれた。
通路には趣味の悪い赤い絨毯が敷き詰められていた。その通路の奥に、『ロッカールーム』と書かれたプレートがぶら下がっていた。
分厚いカーテンを開けると、細い通路の両サイドに縦長のロッカーがずらりと並んでいた。そのロッカールームはなぜか妙に薄暗く、まるで映画館のようだった。6番のロッカーを開けると、地下鉄の階段で寝ているホームレスの匂いがした。
全裸になった私は、まずは腹ごしらえだと、ロッカールームの隅に積んであった貸し出し用のトランクスを摘み上げた。オレンジのボーダー柄のトランクスはなぜかLLしかなく、サイズの合わないそれを履くと、まるでサーカスの団長のようだった。
休憩室にはソープランドの待合室によく似たシャボンの匂いが漂っていた。客は一人だけだった。ずらりと並んだリクライニングソファーの端に、半裸の中年男がトドのようにぐったりと横たわっていた。
そんな男を横目に、奥の自販機コーナーへ行くと、そこには日清のカップヌードルと天ぷらうどん、そしてハンバーガーの自販機があった。
どれも懐かしい自販機ばかりだった。カップヌードルと天ぷらうどんで随分と悩んだが、結局ハンバーガーにした。なぜならカップヌードルも天ぷらうどんも、どちらも売り切れだったからだ。
自販機の前のリクライニングソファーに腰掛けながらハンバーガーを囓った。懐かしい味がした。鍵っ子だった私は、土曜の昼は団地の裏の環八沿いにあるドライブインへ行き、よく一人でこれを食べていた。
ケチャップまみれの萎れたキャベツをぺちゃぺちゃ味わっていると、不意に、そのドライブインのトイレが脳裏に蘇った。
子供の頃、よくそのトイレでオナニーをした。卑猥な落書きやボットン便所の糞尿の匂い。そんな汚くて臭くて荒んだ雰囲気に猟奇的なエロスを感じていた私は、土曜の昼はいつもそのトイレに篭り、壁に描かれた女性器の落書きに向けて精液を飛ばした。

閑散とした休憩室には中日阪神戦のナイター中継が垂れ流されていた。ハンバーガーを食べ終えた私は、ケチャップだらけの紙を箱に押し込み、それを自販機の隙間に置いてある屑かごに捨てた。
リクライニングソファーに凭れて煙草に火をつけた。ふーっと煙を吐きながらナイター中継に目をやった。野球には興味がなく、これの何が楽しいのか全くわからない。そんな画面を見ながら立て続けに煙を吹かしていると、ふと、視野に異様な光景が映った。えっ? と思いながら眼球だけをそこに向けた。休憩室の隅のシートで横たわっていた男が、いつの間にか全裸になっていた。

私と目が合うなり、男はこれ見よがしに股を開いた。ウヨウヨと生える陰毛の中に、外来種のキノコのような真っ赤な亀頭がポコンっと顔を出しているのが見えた。
男の顔は、微笑むでもなく恥ずかしがるでもなく無表情だった。まるで蝋人形のようにジッと身動きせぬままそれを曝け出していた。
(ホモだぞ)と自分に警鐘を鳴らし、慌てて目を逸らした。異常性欲者の私ではあったが、さすがに男には欲情しなかった。欲情どころか吐き気さえ感じた。
急に怒りを覚えた私は、吸ったばかりの煙草を乱暴に灰皿に押し潰した。嫌悪をあらわにしながら立ち上がると、そのままスタスタと男に向かって歩き出した。
男は何を勘違いしたのか、フェラ後の淫乱女のような恍惚とした表情を浮かべ、不気味に潤んだ目で私を見ていた。半開きの唇からはハァハァと荒い息を吐き出し、その見苦しい太鼓腹を大きく揺らしていた。
男の前を通り過ぎる瞬間、おもむろにキッと睨みつけてやった。いつの間にかキノコは膨張し、陰毛の底からカリントウのような黒棒がヌッと伸びていた。真っ赤な亀頭はヒクヒクと痙攣し、『人』という字の尿道口には淫らな汁がテラテラと輝いていた。そんなキノコは同情に値するほどに小さかった。
これだから地方のサウナは嫌いなんだよ。
そう呟きながら脱衣場へと向かい、ストライプのトランクスを脱衣籠の中に投げつけた。籠の横に積まれていたオレンジのタオルで股間を隠し、『ジャングル大浴場・サウナ』と書かれた分厚いガラスのドアを開けた。
ジャングルと書かれている割には、鉢植えに入った安っぽい観葉植物がそこらじゅうに置かれているだけだった。大浴場と書かれている割には、町の銭湯ほどに小さな浴場だった。正方形の浴槽と小さな水風呂と丸いブクブクしている浴槽が三つ並び、それらが不潔っぽい観葉植物にぐるりと取り囲まれていた。
取り敢えずブクブクしている浴槽に足を入れた。タイルの浴槽縁に腰掛け、オレンジのタオルを太ももに広げた。お湯は大量のバスクリンで緑色に染められ、ブクブクしている足元からは安っぽい匂いがムンムンと立ち上ってきた。しばらく緑の湯をぼんやり眺めていたが、どれだけ考えてもその気色の悪い湯に浸かる気が起きなかった。
浴場の奥にログハウス調の扉があった。その扉の小窓の上に、『サウナ室』と書かれた表札が打ち付けてあった。そこに向かいながら、きっとこの重い扉を開ければ猛烈な熱気がムワッと溢れ出すだろうと予想した私は、途中の水風呂でタオルを浸し、ポタポタと水滴が垂れるそれを口にあてながら扉を開けた。しかし予想は外れた。溢れ出てきたのは強烈な熱風ではなく生暖かい温風だった。
中は思っていたよりも広かった。十五畳ほどの長方形の空間に、オレンジ色のバスタオルが敷き詰められたひな壇が二段並んでいた。
先客が四人いた。一人は沖縄系の青年だった。扉の前の下段に腰掛け、足元にポタポタと汗を垂らしながらジッと項垂れていた。一人はサラリーマン風の男だった。真ん中の上段で大きく股を開き、せっせと開脚前屈している。そしてあとの二人は、見るからにホモだった。神田の古本屋に山積みされているゲイ雑誌のグラビアに出てきそうな、『専務』と『熊』だった。二人はサウナの奥の突き当たりの上段で、寄り添うように並んで座っていた。
私は一段上がり、入口前で項垂れている沖縄青年の背後にソッと腰を下ろした。しかし、上段に座っても一向に熱さを感じなかった。
まるでコタツの中に潜っているような、そんなじんわりとした生暖かさが漂っているだけなのだ。
もしかしたらここは低温サウナなのだろうかと不審に思いながら辺りを見回すと、ふと、扉の前に置いてあった屑篭の中が目に飛び込んできた。
そこには、オレンジ色のキャップを被った『ぺぺローション』の空容器が転がり、そしてその容器に、コンドームらしきグリーンの物体がベタリと張り付いていた。
嫌な予感がした。あの休憩室の露出男といい、この異様に生温いサウナといい、何か無性に嫌な胸騒ぎがした。
よく見れば、目の前に座っている沖縄青年の背中や腰のラインは妙に女っぽかった。そして、私の隣りでせっせと開脚前屈しているサラリーマン風の男も、いかにもそのナマコのような巨大ペニスをアピールしているかのように、それを卑猥に剥き出していた。
(間違いない……ここはハッテン場だ……)
そう気付くなり、私は凄まじい恐怖に襲われたのだった。
(つづく)
《←目次》《6話へ→》
吐泥(へろど)6
2013/06/13 Thu 00:01
休憩室での遭遇には怒りをあらわにした私だったが、しかしこの密室での遭遇は、間違えてライオンの檻に迷い込んでしまったような、そんな逃げ場のない恐怖を感じた。
一刻も早くここから出たいと思った。しかし、入ってすぐに出るというのもそれなりの度胸が必要であり、気の小さな私には容易ではなかった。
仕方なく顔を隠すように項垂れた。弛んだ腹を見つめながら、こんなサウナなんかに来なければ良かったと何度も何度も呟き、熱さから出た汗とは違う嫌な汗を脇の下からタラタラと垂れ流していたのだった。
テレビは壁に埋め込まれていた。やはりここでもナイター中継が放映されていたが、しかしそれは分厚いアクリル板に仕切られていたため、ボソボソと篭る解説者の声は雑音でしかなかった。
そんなテレビから、突然、「ボーボバン! ボーボバン!」と叫ぶ解説者の篭った声が騒がしく響いた。上目遣いでそっとテレビを見てみると、画面には『ホームラン』という白い文字が浮かび、その背後では、黒いストライプのユニームを着た若い選手が、まるでグリコの看板のようなポーズを取りながら走っていた。
隣の男が開脚前屈を止めた。じっと画面を見つめながら「六対三か……」と吐き出すように呟いた。その声を聞き、ふと私は、この喧騒に乗じようと思った。あたかも中日ファンであるかのように、「チッ」と舌打ちしながら出て行こうと思ったのだ。
が、しかし、そう思って腰を上げようとした瞬間、突然奥からチューチューという奇妙な音が聞こえ、私は出鼻をくじかれた。
それはネズミの鳴き声のようだった。
その異音につられて振り向くと、そこには、今までに見たこともないようなおぞましい世界が広がっていたのだった。

巨大な熊が、ピンっと勃起した専務のペニスの先にチューチューと吸い付きながら、自分のペニスをシコシコとシゴいていた。
一瞬にして体が固まり、全身から汗が噴き出した。もちろんサウナによる発汗ではなく恐怖による冷や汗だった。
しかし私は、その醜い光景に釘付けになっていた。それは、あの公衆便所で主婦が二人の男に陵辱されているのを目撃した時と同じだった。スリルとエロスが脳内で複雑に混じり合い、まるで、初めて『家畜人ヤプー』を読んだ時のような猟奇的な異常興奮に駆られてしまっていたのだった。
嫌な沈黙の中、チューチューという音だけが響いていた。ドキドキしながらその音に耳を傾けていると、突然その音はチューチューからチュプチュプへと変化し、そしてそれは次第に速度を速めてはジュプジュプと変わった。
そんな下品な音が響く中、不意に「んっ」という男の声が聞こえ、思わず私は横目で奥を見てしまった。
ペニスをベロっと吐き出した熊が、慌てて専務の足元に跪いた。専務はハァハァと荒い息を吐きながら熊の唾液でネトネトになった自身のペニスをしごき、その先を熊の唇に向けた。
熊の恍惚とした顔に、濃厚な精液が、びゅっ、びゅっ、と飛び散った。専務は、みるみる汚れていく熊の顔を冷淡な目で見下ろしながら、震える声で「ほれ、ほれ」と呟いていたのだった。

そんな凄まじい光景がすぐ真横で繰り広げられているにもかかわらず、サラリーマン風の男は平然とテレビを見ながら開脚前屈を続けていた。下段で項垂れている沖縄青年も全く微動だにしなかった。
しかし私は気づいていた。開脚前屈している男の股間が徐々に変化していることを。そして、すぐ目の前に座っている沖縄青年の右肩が、先ほどから微妙に揺れている事を。
このままではマズい。そう思うと同時に、不意に開脚前屈している男が「おたくは中日ファンですか?」と私に話しかけてきた。
私は無言で男を見た。男の大きく開脚された股間の真ん中からは、既に弓のようにしなった肉棒がニョキッと突き出ていた。それはまるで別の生き物のようにヒコヒコと動き、獰猛に腫れ上がった亀頭が張り子の虎のように揺れていた。
それを目にした瞬間、私はそれを妻にしゃぶらせたいと思った。そして、それを妻の穴の中に挿入させ、内部でヒコヒコと動く肉棒に密かに感じている妻の背信的な姿を見てみたいと思った。
その光景を想像するなり、激しい嫉妬と興奮が凄まじい勢いで湧き上がってきた。カッと頭に血が上った私はズカズカと扉へと進み、飛び出すようにしてそこから脱出したのだった。
すぐ目の前の洗い場に腰を下ろした。頭上のシャワーをひねり、熱い湯を頭から浴びた。
危ないところだった。あのまま行けば私は妻と化し、妻を演じながらあの男の肉棒を咥えてしまうところだった。
頭を冷やそう。そう思いながらシャワーの温度を下げ、項垂れた後頭部にキンキンの冷水を浴びせた。しかし、項垂れると同時に熱り立った自身のペニスが目に飛び込み、その異常興奮は冷めるどころか更に奮い立った。
頭上から顔に垂れてくる冷水を、ブシュルルルルル、ブシュルルルルル、と唇で鳴らしながら肉棒を握りしめた。それをゆっくりと前後させながら、この洗い場でさっきの男の肉棒を咥えさせられている妻の姿を思い浮かべた。

妻はタイル床に正座させられていた。男は妻に「手を使うな」と言い、口だけをぽっかりと開けている妻の口内に、反り立つペニスをヌポヌポと出し入れしていた。
男は、「おお……凄いよ奥さん……」と唸りながら、妻の顔に向けて更に激しく腰を振っていた。男の腰が動く度に妻の大きな乳肉がタプンタプンっと揺れていた。
そんな妄想をしながらペニスをしごいていると、そこで初めて隣の洗い場に人がいることに気づいた。
慌てて手を止めたが、しかし、その人はもはや七十近いお爺ちゃんであり、私のその行為に気づかないまま髭を剃っていた。
私は横目でそのお爺ちゃんを見ながら再びペニスをしごいた。こんな老人ともヤらせて見たい。あの萎れた尻肉の谷間に顔を入れさせ、年季の入った肛門や睾丸を妻に舐めさせてみたい。そんな事を想像しながら私はペニスをシゴいた。

ふと気がつくと、そんな私をジッと見つめている二人の男がいた。一人はさっきの開脚前屈の男で、すぐ横の水風呂に浸かりながら私の行為を観察していた。そしてもう一人は休憩室にいた露出男だった。彼はおもむろに私の真正面に立ちながら、上下に動く私のペニスをジッと見つめていた。
驚いた私は一瞬その手を止めたが、しかし、もはや異常性欲のスイッチが入ってしまっていた私の手はすぐに動き出した。その恥ずかしい行為を見てくれと言わんばかりに、大胆にそれを剥き出しながら大きくしごき始めた。
本来なら、このような姿を同性に見られるのは耐えられない屈辱のはずだ。
しかし私は屈辱を感じるどころか快楽を感じていた。
なぜなら、今の私は妻だからである。
私の脳内で今のこの状況は、卑猥極まりないハッテン場でオナニーしている妻が、変態男たちに見られているという状況なのである。
妻になりきった私は、椅子に腰掛けていた右足をわざと爪先立たせ、男たちに尻の裏までも見せつけた。(見ないで……見ないでください……)と羞恥に満ちた妻の声を蘇らせながら股の裏にボディーソープを塗りたくると、緩んだ肛門に人差し指を第一関節まで差し込み、ヌポヌポしてやったのだった。
二人の男は、そんな私の股の裏を無言で覗いていた。露出男は勃起し、開脚前屈の男は右手をリズミカルに動かしながら、水風呂の水をタプタプと揺らしていた。
ふと私は、今からこの二人をホテルの部屋に連れて行きたいと思った。そして二人して、妻を演じる私を嬲りものにして欲しいと本気で思った。

しかし、そんな狂気の願望が湧き上がると同時に、その無残な光景がリアルに浮かび上がり、それに刺激された私のペニスの先から大量の精液が飛び出した。
すると、すかさず露出男が「あっ」と叫び、慌てて私の足元に跪いた。そして上下する私の亀頭に向かって大きく口を開けると、吹き出す残液を一滴残らず口内で受け止めた。
露出男は、恍惚とした表情で口をぺちゃぺちゃさせた。そして自分のペニスを狂ったようにしごきながら私のそれを飲み干すと、奇妙な声で悶えながら私の太ももに向けて精液を飛ばした。
そんな露出男の顔はナマズのようだった。腰をヒクヒクさせながら射精するその姿は、まさに泥水の中でのたうち回っている大ナマズのようだった。
そう思った途端、急に私は吐き気を感じた。そこに射精後の嫌悪感も合併し、今までの興奮は突然怒りに変わった。
そんなナマズを冷たく見下ろしながら、淡々とシャワーで股間を洗い流した。そしてさっさと出口に向かって歩き出すと、心の中で(腐れ外道どもが)と捨て台詞を呟きながら、最後にもう一度振り返った。
ナマズ顔の男がこっちを見ていた。
よく見るとその顔は、ナマズというより石破茂だった。
(つづく)
《←目次》《7話へ→》
一刻も早くここから出たいと思った。しかし、入ってすぐに出るというのもそれなりの度胸が必要であり、気の小さな私には容易ではなかった。
仕方なく顔を隠すように項垂れた。弛んだ腹を見つめながら、こんなサウナなんかに来なければ良かったと何度も何度も呟き、熱さから出た汗とは違う嫌な汗を脇の下からタラタラと垂れ流していたのだった。
テレビは壁に埋め込まれていた。やはりここでもナイター中継が放映されていたが、しかしそれは分厚いアクリル板に仕切られていたため、ボソボソと篭る解説者の声は雑音でしかなかった。
そんなテレビから、突然、「ボーボバン! ボーボバン!」と叫ぶ解説者の篭った声が騒がしく響いた。上目遣いでそっとテレビを見てみると、画面には『ホームラン』という白い文字が浮かび、その背後では、黒いストライプのユニームを着た若い選手が、まるでグリコの看板のようなポーズを取りながら走っていた。
隣の男が開脚前屈を止めた。じっと画面を見つめながら「六対三か……」と吐き出すように呟いた。その声を聞き、ふと私は、この喧騒に乗じようと思った。あたかも中日ファンであるかのように、「チッ」と舌打ちしながら出て行こうと思ったのだ。
が、しかし、そう思って腰を上げようとした瞬間、突然奥からチューチューという奇妙な音が聞こえ、私は出鼻をくじかれた。
それはネズミの鳴き声のようだった。
その異音につられて振り向くと、そこには、今までに見たこともないようなおぞましい世界が広がっていたのだった。

巨大な熊が、ピンっと勃起した専務のペニスの先にチューチューと吸い付きながら、自分のペニスをシコシコとシゴいていた。
一瞬にして体が固まり、全身から汗が噴き出した。もちろんサウナによる発汗ではなく恐怖による冷や汗だった。
しかし私は、その醜い光景に釘付けになっていた。それは、あの公衆便所で主婦が二人の男に陵辱されているのを目撃した時と同じだった。スリルとエロスが脳内で複雑に混じり合い、まるで、初めて『家畜人ヤプー』を読んだ時のような猟奇的な異常興奮に駆られてしまっていたのだった。
嫌な沈黙の中、チューチューという音だけが響いていた。ドキドキしながらその音に耳を傾けていると、突然その音はチューチューからチュプチュプへと変化し、そしてそれは次第に速度を速めてはジュプジュプと変わった。
そんな下品な音が響く中、不意に「んっ」という男の声が聞こえ、思わず私は横目で奥を見てしまった。
ペニスをベロっと吐き出した熊が、慌てて専務の足元に跪いた。専務はハァハァと荒い息を吐きながら熊の唾液でネトネトになった自身のペニスをしごき、その先を熊の唇に向けた。
熊の恍惚とした顔に、濃厚な精液が、びゅっ、びゅっ、と飛び散った。専務は、みるみる汚れていく熊の顔を冷淡な目で見下ろしながら、震える声で「ほれ、ほれ」と呟いていたのだった。

そんな凄まじい光景がすぐ真横で繰り広げられているにもかかわらず、サラリーマン風の男は平然とテレビを見ながら開脚前屈を続けていた。下段で項垂れている沖縄青年も全く微動だにしなかった。
しかし私は気づいていた。開脚前屈している男の股間が徐々に変化していることを。そして、すぐ目の前に座っている沖縄青年の右肩が、先ほどから微妙に揺れている事を。
このままではマズい。そう思うと同時に、不意に開脚前屈している男が「おたくは中日ファンですか?」と私に話しかけてきた。
私は無言で男を見た。男の大きく開脚された股間の真ん中からは、既に弓のようにしなった肉棒がニョキッと突き出ていた。それはまるで別の生き物のようにヒコヒコと動き、獰猛に腫れ上がった亀頭が張り子の虎のように揺れていた。
それを目にした瞬間、私はそれを妻にしゃぶらせたいと思った。そして、それを妻の穴の中に挿入させ、内部でヒコヒコと動く肉棒に密かに感じている妻の背信的な姿を見てみたいと思った。
その光景を想像するなり、激しい嫉妬と興奮が凄まじい勢いで湧き上がってきた。カッと頭に血が上った私はズカズカと扉へと進み、飛び出すようにしてそこから脱出したのだった。
すぐ目の前の洗い場に腰を下ろした。頭上のシャワーをひねり、熱い湯を頭から浴びた。
危ないところだった。あのまま行けば私は妻と化し、妻を演じながらあの男の肉棒を咥えてしまうところだった。
頭を冷やそう。そう思いながらシャワーの温度を下げ、項垂れた後頭部にキンキンの冷水を浴びせた。しかし、項垂れると同時に熱り立った自身のペニスが目に飛び込み、その異常興奮は冷めるどころか更に奮い立った。
頭上から顔に垂れてくる冷水を、ブシュルルルルル、ブシュルルルルル、と唇で鳴らしながら肉棒を握りしめた。それをゆっくりと前後させながら、この洗い場でさっきの男の肉棒を咥えさせられている妻の姿を思い浮かべた。

妻はタイル床に正座させられていた。男は妻に「手を使うな」と言い、口だけをぽっかりと開けている妻の口内に、反り立つペニスをヌポヌポと出し入れしていた。
男は、「おお……凄いよ奥さん……」と唸りながら、妻の顔に向けて更に激しく腰を振っていた。男の腰が動く度に妻の大きな乳肉がタプンタプンっと揺れていた。
そんな妄想をしながらペニスをしごいていると、そこで初めて隣の洗い場に人がいることに気づいた。
慌てて手を止めたが、しかし、その人はもはや七十近いお爺ちゃんであり、私のその行為に気づかないまま髭を剃っていた。
私は横目でそのお爺ちゃんを見ながら再びペニスをしごいた。こんな老人ともヤらせて見たい。あの萎れた尻肉の谷間に顔を入れさせ、年季の入った肛門や睾丸を妻に舐めさせてみたい。そんな事を想像しながら私はペニスをシゴいた。

ふと気がつくと、そんな私をジッと見つめている二人の男がいた。一人はさっきの開脚前屈の男で、すぐ横の水風呂に浸かりながら私の行為を観察していた。そしてもう一人は休憩室にいた露出男だった。彼はおもむろに私の真正面に立ちながら、上下に動く私のペニスをジッと見つめていた。
驚いた私は一瞬その手を止めたが、しかし、もはや異常性欲のスイッチが入ってしまっていた私の手はすぐに動き出した。その恥ずかしい行為を見てくれと言わんばかりに、大胆にそれを剥き出しながら大きくしごき始めた。
本来なら、このような姿を同性に見られるのは耐えられない屈辱のはずだ。
しかし私は屈辱を感じるどころか快楽を感じていた。
なぜなら、今の私は妻だからである。
私の脳内で今のこの状況は、卑猥極まりないハッテン場でオナニーしている妻が、変態男たちに見られているという状況なのである。
妻になりきった私は、椅子に腰掛けていた右足をわざと爪先立たせ、男たちに尻の裏までも見せつけた。(見ないで……見ないでください……)と羞恥に満ちた妻の声を蘇らせながら股の裏にボディーソープを塗りたくると、緩んだ肛門に人差し指を第一関節まで差し込み、ヌポヌポしてやったのだった。
二人の男は、そんな私の股の裏を無言で覗いていた。露出男は勃起し、開脚前屈の男は右手をリズミカルに動かしながら、水風呂の水をタプタプと揺らしていた。
ふと私は、今からこの二人をホテルの部屋に連れて行きたいと思った。そして二人して、妻を演じる私を嬲りものにして欲しいと本気で思った。

しかし、そんな狂気の願望が湧き上がると同時に、その無残な光景がリアルに浮かび上がり、それに刺激された私のペニスの先から大量の精液が飛び出した。
すると、すかさず露出男が「あっ」と叫び、慌てて私の足元に跪いた。そして上下する私の亀頭に向かって大きく口を開けると、吹き出す残液を一滴残らず口内で受け止めた。
露出男は、恍惚とした表情で口をぺちゃぺちゃさせた。そして自分のペニスを狂ったようにしごきながら私のそれを飲み干すと、奇妙な声で悶えながら私の太ももに向けて精液を飛ばした。
そんな露出男の顔はナマズのようだった。腰をヒクヒクさせながら射精するその姿は、まさに泥水の中でのたうち回っている大ナマズのようだった。
そう思った途端、急に私は吐き気を感じた。そこに射精後の嫌悪感も合併し、今までの興奮は突然怒りに変わった。
そんなナマズを冷たく見下ろしながら、淡々とシャワーで股間を洗い流した。そしてさっさと出口に向かって歩き出すと、心の中で(腐れ外道どもが)と捨て台詞を呟きながら、最後にもう一度振り返った。
ナマズ顔の男がこっちを見ていた。
よく見るとその顔は、ナマズというより石破茂だった。
(つづく)
《←目次》《7話へ→》
吐泥(へろど)7
2013/06/13 Thu 00:01
スマホのアラーム音にびっくり仰天した。
緊急地震速報の受信音によく似たアラーム音には一向に慣れることができなかった。だから私の心臓は、毎朝目覚めと共に激しく鼓動していた。だったらアラーム音を変えればいいじゃない、と妻は言ったが、しかし、音を変えたら今度は起きられないのではないかという不安に駆られ、結局この二年間、毎朝私はそのアラーム音に仰天し続けている。
バサッと起き上がると、急いでサイドテーブルの上のスマホを鷲掴みし、その忌々しいアラームを止めた。テレビのスイッチを入れ、再びベッドにドスンッと崩れ落ちると、眠い、寝たい、眠い、寝たい、と頭の中で繰り返しながら、必要以上にフカフカなホテルの枕に頭部を埋めた。
テレビから『めざましジャンケン』が聞こえてきた。
私の朝の楽しみは、『めざまし』のカトパンを見ながら朝立ちした陰部を弄る事だった。全裸で四つん這いになったカトパンが、三宅アナにクタクタと指マンされながらシャーシャーと潮を吹き、そうされながらも、あのポッテリとした唇で軽部アナの巨大な包茎ペニスにしゃぶりついては悶えているといった、そんな妄想と共にカトパンを楽しんでいた。
しかし、そんなカトパンが突然『めざまし』から姿を消した。
だから私は、さっそくNHKの『おかさんといっしょ』に乗り換え、たくみお姉さんの見事な美脚にシコシコとよからぬ妄想を抱いていたのだが、しかし不運にも、そのたくみお姉さんも、この春『おかさんといっしょ』を卒業してしまい、朝の私の楽しみは尽く潰されてしまったのだった。
漁業組合には十時に伺う事になっていた。まだ三時間近くも時間があった。
煙草で黄ばんだ天井を見つめながら微睡んでいると、寝惚けた脳に昨夜の記憶がぼんやりと浮かんできた。
あれは夢だったのだろうか?
そう思いながら記憶を辿っていくと、次第にサウナ室の汗臭さやナイター中継の篭った音、専務のペニスをしゃぶる熊の姿や、私の精液を口で受け止めるナマズの顔などが鮮明に蘇ってきた。
快感と不快感が交互に襲ってきた。あの状況で、妻になりきって射精したのは今までにない快楽だったが、しかし元々男に興味がないせいか、あの男たちのスネ毛や吹き出物だらけの尻を思い出す度に怒りと吐き気を覚えた。
そんな複雑な心境で勃起したペニスを弄っていると、ふと、もしあのまま、妻になりきった私が本当に彼らをこの部屋に招いていたらどうなっていただろうかと、そのおぞましい光景をリアルに想像してしまった。
するとその想像は、いつしか妻があの醜い男たちに無残に嬲られているシーンへと変わった。四つん這いにされた妻が、開脚前屈の男に巨大な肉棒をズボズボとピストンされていた。そして同時にナマズ男の肉棒を咥えさせられながらウグウグと唸っていた。
そんな妻の陰部はドロドロに濡れていた。妻の汁によってその結合部分がブチャブチャといやらしい音を奏でいた。
妻は後ろめたそうな目で私をジッと見ていた。それはあの時と同じ目だった。そんな目で私を見つめながら、妻は密かに何度も絶頂に達していたのだった。

気がつくと、私は発情した男子学生のようにペニスをしごきまくっていた。そう気づいた時には既にイキそうになっており、このまま掛け布団の裏側に発射してしまおうかどうしようかと悩みながら、その手の動きと快感を微調整していたのだった。
しばらく考えた後、私はある決心をした。今からもう一度あのサウナへ行きそこで射精しよう、と。
一触即発の肉棒からパッと手を離し、その手でスマホを掴んだ。サウナの営業時間を調べようと思い、グーグルで『新潟 サウナキング』と検索すると、『温泉情報ガルバー』というサイトがトップに表示された。そこには施設情報とアクセスと口コミが書かれていた。
サウナキングは二十四時間営業だった。入浴料は千八百円で、零時を過ぎると深夜料金となり二千五百円に跳ね上がっていた。口コミは一件だけだった。タイトルには「キモい!」と書かれ、コメントには「最悪です」とだけ書かれていた。当然、星はひとつだった。
この口コミを書いた人は、きっと至って正常な人だったんだろうなと思いながらスマホを閉じようとすると、ズラリと並んだ検索結果の中に『ハッテン場』という文字を見つけ、不意に指が止まった。
それは、『ミーコとケンヤの全国露出旅』というブログだった。露出趣味のあるカップルが全国を露出しながら旅するという実に馬鹿げた内容で、その中の『まさかのハッテン場に潜入!』という記事にサウナキングのことが書かれていた。
記事には、『さすがは信越最大のハッテン場です、男性専用サウナなのに女性の私でも普通に入場させてくれました』と書いてあり、その女が見知らぬ一般の客と性器の洗い合いをしている画像がアップされていた。

その画像に強烈な衝撃を受けた私は、もしそれが本当に可能であるのなら、昨夜私が抱いていた変態願望も夢ではないと鼻息を荒くした。
それを確かめようと、私は早々とベッドから飛び起きた。プラスチック棒のルームキーを鷲掴みにし、乱れた浴衣を整えながら部屋のドアを開けると、静まり返った朝の廊下にスタスタとスリッパの音を鳴らしたのだった。
エレベーターを降りると、早朝だというのにボイラーの音が響いていた。こんな時間にも客がいるのだろうかと思いながら恐る恐る自動ドアを開けると、赤い絨毯の通路に掃除機を持ったおばさんが立っていた。
カウンターに昨夜の親父の姿はなかった。掃除のおばさんが、「ホテルのお客さんだね」と確認しながら面倒臭そうにカウンターにやってきた。
あの親父になら、本当にこのサウナであのブログのような出来事が可能なのかどうか確認できそうだったが、しかし、さすがにこのおばさんにはそれを確認することはできないと思った。
私は小さく舌打ちしながらルームキーをカウンターの上に置いた。五十を過ぎたおばさんはそれを素早くカウンター裏の木箱に落とすと、馬のような出っ歯を剥き出しにしながら、「浴場は八時から掃除に入るからサウナはストップだよ」と呟いた。
浴場には数人の先客がいた。昨夜は先客達のいやらしい視線を痛いほどに感じたが、しかし今朝は私をそんな目で見る者は一人もいなかった。
見るからにノーマルな人達ばかりだった。恐らく彼らは、ここがどんな所なのか何も知らないホテルの宿泊客だろう。
そんな先客を横目に、私は昨夜と同じ洗い場に腰を下ろした。白いボディーソープを手の平にピュッピュッとプッシュすると、不意に、あの男の精液を手の平に吐き出していた妻の姿を思い出した。
途端にムラムラと欲情した私は、手の平に溜まったボディーソープを身体中に塗りたくった。既にビンビンに反り立っていたペニスにも、それをゆっくりと塗り込んだ。
背後の洗い場では二人の男が体を洗っていた。その男たちを鏡で観察しながら腰を浮かし、股の裏に手の平を滑り込ませた。
男性サウナの洗い場で変態男たちに尻を嬲られている妻。
そんな設定で妻になりきった私は、背後の男たちに向けてソッと尻肉を開いた。剥き出された肛門に指腹をヌルヌルと滑らせながら、「やめて下さい」と妻の声真似をして呟いてみると、男たちのヌルヌルした指の動きにジッと耐えている妻の姿がリアルに浮かんできた。

そんな妄想にクラクラと目眩を感じながらペニスをシゴきまくった。ボディーソープがくちゃくちゃといやらしい音を立て、背後の男たちに気付かれるのではないかとヒヤヒヤしながらシゴきまくっていた。
妄想の中では、変態男たちが代わる代わる妻に精液をかけていた。顔、胸、背中、尻。その屈辱的な液体を全身に吹きかけられながらも、それでも妻はジッと耐えていた。
しかし私は知っていた。妻は密かにそんな陵辱に悦びを感じている事を。
あの時もそうだった。あのラブホテルの赤いソファーの上で、見ず知らずの単独男にユッサユッサと体を揺さぶられていた時もそうだった。
あの時妻は、それを黙って観察していた私に、「もうイヤ」と呟いた。しかし私がトイレに行くふりをして、こっそりクローゼットの隅から覗いていると、妻は自らの意思でキスを迫り、その見ず知らずの薄汚い中年男の舌に激しく舌を絡めながら、自ら腰を振りまくっていた。

妻はそんな女なのだ。元々は性には疎い純粋な女だったが、しかし夫の私が異常性欲者だったため、知らず識らずのうちにそこまで開発されてしまっていたのだ。
そんな妻の内面に隠された変態性欲を思い出しながら、更に激しくペニスをシゴいていると不意に真正面にある扉がギィッと開いた。
扉の向こうから出てきたのはさっきの掃除のおばさんだった。勃起したペニスをシゴいている私の姿をいきなり真正面から見せつけられたおばさんは、たちまちデッキブラシを片手に持ったままその場に固まってしまった。
それでも私は行為を続けた。わざとおばさんに見せつけるようにしながら、大きく股を開いてシゴいて見せた。
ソッとおばさんの顔を見てみると、おばさんはギュっと顔を顰めながら、まるで生ゴミに湧いたウジ虫を見るような目で私を見ていた。
そんなおばさんの冷たい視線が更に私の異常性欲を刺激した。堪らず私はおばさんに向かって「出ます……見ててください……」と呟くと、尿道から勢いよく噴き出した真っ白な精液を、目の前に置いてあったアロエのボディーソープのペットボトルにぶっかけたのだった。

浴場を出ると、腰にバスタオルを巻いたまま休憩室へと向かった。寝ているうちに溜まった精液を吐き出した私の足取りは妙に軽かった。
『とくダネ』が垂れ流しにされている無人の休憩室で無料のミネラルウォーターを一気に飲み干した。その紙コップを屑篭に捨てると同時に、腰に巻いたバスタオルを脱衣カゴに投げ捨て、そのままロッカー室へと向かった。
浴衣を羽織って暗幕カーテンを開けると、フロントには昨夜のネズミ男の姿があった。
ネズミ男は、カウンターに寄りかかりながら『スッキリ』を見ていた。私に気付くと、テレビをジッと見たまま「こいつは悪い奴だよ」と独り言のように呟きながら、私のルームキーを木箱から取り出した。
そんなテレビに映っていたのはトトロのような顔をした太った中年男だった。画面のテロップには『知的障害のある女性ばかりを狙った犯行』と表示されていた。
話のきっかけを作るチャンスだと思った私は、「何やったんですかコイツ」と言いながらテレビを覗くと、ネズミ男はなぜか自慢げに、「障害者をヤっちゃったらしいよ」と答えた。
「そんな女とヤって楽しいんですかね……」
私はそう呟きながらルームキーを摘んだ。
「楽しいんだろうね。世の中には変な趣味な奴がいっぱいいますからね」
そう苦笑いするネズミ男を、「ところで……」と横目で見つつ、私は玄関に並べてあったホテルのスリッパを履きながら、「このサウナって女性でも入れるんですか?」と単刀直入に聞いてみた。
ネズミ男は、「え?」と私の顔を見た。
私は手に持っていたスマホを見せつけながら、「いえね、さっきこのサウナの営業時間を調べたくてネットを見てたら、女性がこのサウナに入ってるブログを見つけましてね……」と、唇の端をいやらしく歪ませた。
一瞬、ネズミ男の目が鋭くなった。私はカウンターに身を乗り出した。そしてネズミ男の耳元に、「私もそっちの趣味があるんです。ですから——」と声を潜めると、ネズミ男は微かに右眉を吊り上げながら「知らないねぇ……」と小さく頷いた。
それでも私は、更に「いや、ですから、このブログに……」と言いながら、さっきのブログを開こうとすると、ネズミ男は私を無視するかのように再びテレビに目をやった。そしてその蛭子能収のような顔をした犯人を見つめながら、「こいつは本物の悪党だよ……」と呟いたのだった。
(つづく)
《←目次》《8話へ→》
緊急地震速報の受信音によく似たアラーム音には一向に慣れることができなかった。だから私の心臓は、毎朝目覚めと共に激しく鼓動していた。だったらアラーム音を変えればいいじゃない、と妻は言ったが、しかし、音を変えたら今度は起きられないのではないかという不安に駆られ、結局この二年間、毎朝私はそのアラーム音に仰天し続けている。
バサッと起き上がると、急いでサイドテーブルの上のスマホを鷲掴みし、その忌々しいアラームを止めた。テレビのスイッチを入れ、再びベッドにドスンッと崩れ落ちると、眠い、寝たい、眠い、寝たい、と頭の中で繰り返しながら、必要以上にフカフカなホテルの枕に頭部を埋めた。
テレビから『めざましジャンケン』が聞こえてきた。
私の朝の楽しみは、『めざまし』のカトパンを見ながら朝立ちした陰部を弄る事だった。全裸で四つん這いになったカトパンが、三宅アナにクタクタと指マンされながらシャーシャーと潮を吹き、そうされながらも、あのポッテリとした唇で軽部アナの巨大な包茎ペニスにしゃぶりついては悶えているといった、そんな妄想と共にカトパンを楽しんでいた。
しかし、そんなカトパンが突然『めざまし』から姿を消した。
だから私は、さっそくNHKの『おかさんといっしょ』に乗り換え、たくみお姉さんの見事な美脚にシコシコとよからぬ妄想を抱いていたのだが、しかし不運にも、そのたくみお姉さんも、この春『おかさんといっしょ』を卒業してしまい、朝の私の楽しみは尽く潰されてしまったのだった。
漁業組合には十時に伺う事になっていた。まだ三時間近くも時間があった。
煙草で黄ばんだ天井を見つめながら微睡んでいると、寝惚けた脳に昨夜の記憶がぼんやりと浮かんできた。
あれは夢だったのだろうか?
そう思いながら記憶を辿っていくと、次第にサウナ室の汗臭さやナイター中継の篭った音、専務のペニスをしゃぶる熊の姿や、私の精液を口で受け止めるナマズの顔などが鮮明に蘇ってきた。
快感と不快感が交互に襲ってきた。あの状況で、妻になりきって射精したのは今までにない快楽だったが、しかし元々男に興味がないせいか、あの男たちのスネ毛や吹き出物だらけの尻を思い出す度に怒りと吐き気を覚えた。
そんな複雑な心境で勃起したペニスを弄っていると、ふと、もしあのまま、妻になりきった私が本当に彼らをこの部屋に招いていたらどうなっていただろうかと、そのおぞましい光景をリアルに想像してしまった。
するとその想像は、いつしか妻があの醜い男たちに無残に嬲られているシーンへと変わった。四つん這いにされた妻が、開脚前屈の男に巨大な肉棒をズボズボとピストンされていた。そして同時にナマズ男の肉棒を咥えさせられながらウグウグと唸っていた。
そんな妻の陰部はドロドロに濡れていた。妻の汁によってその結合部分がブチャブチャといやらしい音を奏でいた。
妻は後ろめたそうな目で私をジッと見ていた。それはあの時と同じ目だった。そんな目で私を見つめながら、妻は密かに何度も絶頂に達していたのだった。

気がつくと、私は発情した男子学生のようにペニスをしごきまくっていた。そう気づいた時には既にイキそうになっており、このまま掛け布団の裏側に発射してしまおうかどうしようかと悩みながら、その手の動きと快感を微調整していたのだった。
しばらく考えた後、私はある決心をした。今からもう一度あのサウナへ行きそこで射精しよう、と。
一触即発の肉棒からパッと手を離し、その手でスマホを掴んだ。サウナの営業時間を調べようと思い、グーグルで『新潟 サウナキング』と検索すると、『温泉情報ガルバー』というサイトがトップに表示された。そこには施設情報とアクセスと口コミが書かれていた。
サウナキングは二十四時間営業だった。入浴料は千八百円で、零時を過ぎると深夜料金となり二千五百円に跳ね上がっていた。口コミは一件だけだった。タイトルには「キモい!」と書かれ、コメントには「最悪です」とだけ書かれていた。当然、星はひとつだった。
この口コミを書いた人は、きっと至って正常な人だったんだろうなと思いながらスマホを閉じようとすると、ズラリと並んだ検索結果の中に『ハッテン場』という文字を見つけ、不意に指が止まった。
それは、『ミーコとケンヤの全国露出旅』というブログだった。露出趣味のあるカップルが全国を露出しながら旅するという実に馬鹿げた内容で、その中の『まさかのハッテン場に潜入!』という記事にサウナキングのことが書かれていた。
記事には、『さすがは信越最大のハッテン場です、男性専用サウナなのに女性の私でも普通に入場させてくれました』と書いてあり、その女が見知らぬ一般の客と性器の洗い合いをしている画像がアップされていた。

その画像に強烈な衝撃を受けた私は、もしそれが本当に可能であるのなら、昨夜私が抱いていた変態願望も夢ではないと鼻息を荒くした。
それを確かめようと、私は早々とベッドから飛び起きた。プラスチック棒のルームキーを鷲掴みにし、乱れた浴衣を整えながら部屋のドアを開けると、静まり返った朝の廊下にスタスタとスリッパの音を鳴らしたのだった。
エレベーターを降りると、早朝だというのにボイラーの音が響いていた。こんな時間にも客がいるのだろうかと思いながら恐る恐る自動ドアを開けると、赤い絨毯の通路に掃除機を持ったおばさんが立っていた。
カウンターに昨夜の親父の姿はなかった。掃除のおばさんが、「ホテルのお客さんだね」と確認しながら面倒臭そうにカウンターにやってきた。
あの親父になら、本当にこのサウナであのブログのような出来事が可能なのかどうか確認できそうだったが、しかし、さすがにこのおばさんにはそれを確認することはできないと思った。
私は小さく舌打ちしながらルームキーをカウンターの上に置いた。五十を過ぎたおばさんはそれを素早くカウンター裏の木箱に落とすと、馬のような出っ歯を剥き出しにしながら、「浴場は八時から掃除に入るからサウナはストップだよ」と呟いた。
浴場には数人の先客がいた。昨夜は先客達のいやらしい視線を痛いほどに感じたが、しかし今朝は私をそんな目で見る者は一人もいなかった。
見るからにノーマルな人達ばかりだった。恐らく彼らは、ここがどんな所なのか何も知らないホテルの宿泊客だろう。
そんな先客を横目に、私は昨夜と同じ洗い場に腰を下ろした。白いボディーソープを手の平にピュッピュッとプッシュすると、不意に、あの男の精液を手の平に吐き出していた妻の姿を思い出した。
途端にムラムラと欲情した私は、手の平に溜まったボディーソープを身体中に塗りたくった。既にビンビンに反り立っていたペニスにも、それをゆっくりと塗り込んだ。
背後の洗い場では二人の男が体を洗っていた。その男たちを鏡で観察しながら腰を浮かし、股の裏に手の平を滑り込ませた。
男性サウナの洗い場で変態男たちに尻を嬲られている妻。
そんな設定で妻になりきった私は、背後の男たちに向けてソッと尻肉を開いた。剥き出された肛門に指腹をヌルヌルと滑らせながら、「やめて下さい」と妻の声真似をして呟いてみると、男たちのヌルヌルした指の動きにジッと耐えている妻の姿がリアルに浮かんできた。

そんな妄想にクラクラと目眩を感じながらペニスをシゴきまくった。ボディーソープがくちゃくちゃといやらしい音を立て、背後の男たちに気付かれるのではないかとヒヤヒヤしながらシゴきまくっていた。
妄想の中では、変態男たちが代わる代わる妻に精液をかけていた。顔、胸、背中、尻。その屈辱的な液体を全身に吹きかけられながらも、それでも妻はジッと耐えていた。
しかし私は知っていた。妻は密かにそんな陵辱に悦びを感じている事を。
あの時もそうだった。あのラブホテルの赤いソファーの上で、見ず知らずの単独男にユッサユッサと体を揺さぶられていた時もそうだった。
あの時妻は、それを黙って観察していた私に、「もうイヤ」と呟いた。しかし私がトイレに行くふりをして、こっそりクローゼットの隅から覗いていると、妻は自らの意思でキスを迫り、その見ず知らずの薄汚い中年男の舌に激しく舌を絡めながら、自ら腰を振りまくっていた。

妻はそんな女なのだ。元々は性には疎い純粋な女だったが、しかし夫の私が異常性欲者だったため、知らず識らずのうちにそこまで開発されてしまっていたのだ。
そんな妻の内面に隠された変態性欲を思い出しながら、更に激しくペニスをシゴいていると不意に真正面にある扉がギィッと開いた。
扉の向こうから出てきたのはさっきの掃除のおばさんだった。勃起したペニスをシゴいている私の姿をいきなり真正面から見せつけられたおばさんは、たちまちデッキブラシを片手に持ったままその場に固まってしまった。
それでも私は行為を続けた。わざとおばさんに見せつけるようにしながら、大きく股を開いてシゴいて見せた。
ソッとおばさんの顔を見てみると、おばさんはギュっと顔を顰めながら、まるで生ゴミに湧いたウジ虫を見るような目で私を見ていた。
そんなおばさんの冷たい視線が更に私の異常性欲を刺激した。堪らず私はおばさんに向かって「出ます……見ててください……」と呟くと、尿道から勢いよく噴き出した真っ白な精液を、目の前に置いてあったアロエのボディーソープのペットボトルにぶっかけたのだった。

浴場を出ると、腰にバスタオルを巻いたまま休憩室へと向かった。寝ているうちに溜まった精液を吐き出した私の足取りは妙に軽かった。
『とくダネ』が垂れ流しにされている無人の休憩室で無料のミネラルウォーターを一気に飲み干した。その紙コップを屑篭に捨てると同時に、腰に巻いたバスタオルを脱衣カゴに投げ捨て、そのままロッカー室へと向かった。
浴衣を羽織って暗幕カーテンを開けると、フロントには昨夜のネズミ男の姿があった。
ネズミ男は、カウンターに寄りかかりながら『スッキリ』を見ていた。私に気付くと、テレビをジッと見たまま「こいつは悪い奴だよ」と独り言のように呟きながら、私のルームキーを木箱から取り出した。
そんなテレビに映っていたのはトトロのような顔をした太った中年男だった。画面のテロップには『知的障害のある女性ばかりを狙った犯行』と表示されていた。
話のきっかけを作るチャンスだと思った私は、「何やったんですかコイツ」と言いながらテレビを覗くと、ネズミ男はなぜか自慢げに、「障害者をヤっちゃったらしいよ」と答えた。
「そんな女とヤって楽しいんですかね……」
私はそう呟きながらルームキーを摘んだ。
「楽しいんだろうね。世の中には変な趣味な奴がいっぱいいますからね」
そう苦笑いするネズミ男を、「ところで……」と横目で見つつ、私は玄関に並べてあったホテルのスリッパを履きながら、「このサウナって女性でも入れるんですか?」と単刀直入に聞いてみた。
ネズミ男は、「え?」と私の顔を見た。
私は手に持っていたスマホを見せつけながら、「いえね、さっきこのサウナの営業時間を調べたくてネットを見てたら、女性がこのサウナに入ってるブログを見つけましてね……」と、唇の端をいやらしく歪ませた。
一瞬、ネズミ男の目が鋭くなった。私はカウンターに身を乗り出した。そしてネズミ男の耳元に、「私もそっちの趣味があるんです。ですから——」と声を潜めると、ネズミ男は微かに右眉を吊り上げながら「知らないねぇ……」と小さく頷いた。
それでも私は、更に「いや、ですから、このブログに……」と言いながら、さっきのブログを開こうとすると、ネズミ男は私を無視するかのように再びテレビに目をやった。そしてその蛭子能収のような顔をした犯人を見つめながら、「こいつは本物の悪党だよ……」と呟いたのだった。
(つづく)
《←目次》《8話へ→》
吐泥(へろど)8
2013/06/13 Thu 00:01
常識的に考えて、あんな事を客が勝手にできるはずがなかった。もしこれが客が勝手にやった事なら、彼らはとっくに店側から訴えられ、ブログのあの記事も削除されているはずなのだ。
しかし彼らは、未だ堂々とあの記事をブログにアップしている。という事は、店側は彼らのあの行為を黙認していたに違いなく、店側はそれを知ってて彼らに場所を提供した可能性は非常に高いのだ。
しかし、それでもネズミ男は、「知らないねぇ……」とシラを切った。
きっとネズミ男は、あれが公然猥褻罪という違法行為になる事を知っているのだ。そしてそれを店側が黙認していたとなると、店側も何らかの罰則を受ける可能性がある事もネズミ男は知っているのだ。だからネズミ男は、一見の客である私を警察か何かと勘違いし、警戒しているのだった。
(やはり、頻繁に通って常連にならなければ情報は得られないか……)
そう諦めると、不意にカウンター裏のカーテンがサッと開いた。そこから顔を出したのは例の掃除のおばさんだった。
おばさんは、「店長、明日のシフトなんですけど……」と言いながらチラッと私を見た。そして私を見るなりギョッと目を見開き、慌ててネズミ男の耳元に顔を近づけたのだった。
おばさんは、私を横目で睨みながら何やらコソコソと話していた。ネズミ男は「ウンウン」と小さく頷きながら、意味ありげに私をジッと睨んでいた。
おばさんが私の事を話しているのは一目瞭然だった。恐らく、私がセンズリを見せつけた事を告げ口しているのだ。
(マズいぞ……)
そう思いながら早々と店を出ようとした。
するとネズミ男は、「わかった、わかった」と言いながらおばさんの顔を引き離した。そして「もう上がっていいから」と、さっさとおばさんをカーテンの裏へと追いやると、店を出ようとしていた私を、いきなり「あんた」と呼び止めたのだった。
「誤解です、あれはあのおばさんに見せつけるつもりじゃなかったんです」
振り向きざまにそう言い訳した。実際、あれは意図的に見せたのではなく、偶然に見られたのだ。まして相手は毒虫のような顔をしたおばさんであり、どちらかといえば、見られた私の方が被害者なのだ。
そう必死に言い訳しようとすると、ネズミ男はテレビをジッと見つめたまま、突然「どっちですか」と聞いてきた。
「どっち?……って何が?」
「参加する方か、参加させる方か、どっちです」
「…………」
一瞬その意味がわからなかったが、しかしすぐに理解できた。
恐らくネズミ男は、私があのおばさんに射精シーンを見せつけた事を知り、私が警察関係者ではないと思ったのだろう。それで私を信用し、自分がそのプレイに参加したいのか、それとも妻をプレイに参加させたいのかと、そう聞いているのだ。
すかさず私は「参加させる方です」と答えた。ネズミ男はジロッと私を見つめながら「奥さんかね」と聞いた。私がコクンっと頷くと、ネズミ男は再びテレビに視線を戻し、静かにチャンネルを変えた。
『羽鳥慎一モーニングショー』でも蛭子能収似の犯人が取り上げられていた。こちらは『スッキリ』とは違い、犯人が知的障害者の女性を施設から連れ出そうとしている監視カメラの映像が繰り返し流されていた。
ネズミ男は、そんな映像を見ながら自分の股間をスリスリと撫で始めた。そしてジャージに浮かんだ肉棒をグイグイと握りながら、「知的障害者の女ってのは凄く乱れるんだよ……あいつら本能で生きてるからね、ズボズボとチンポをピストンしてやると、獣みたいな声を出してヨガるんだな……」と呟き、いやらしい目をして微笑んだ。
「……障害者とヤッたことあるんですか?」
恐る恐るそう聞くと、ネズミ男は財布の中から一枚のカードを取り出した。そしてそれを自慢げに私に見せびらかしながら、「こう見えても私は、こんな資格を持ってるのだ」と笑った。そのカードには、『知的障害者福祉司』と書いてあった。それを見た瞬間、(こいつは本物だ)と息を飲んだ。そしてその公序良俗に反した凄まじい光景を想像しては背筋を震わせたのだった。

「で、あんたの奥さんの歳はいくつだい」
ネズミ男は、そのいやらしい目で私を見たまま言った。
不意にネズミ男に滅茶苦茶に犯される妻を想像してしまった私は、複雑な気持ちで「三十です……」と答えた。
「三十ですかぁ……おいしい年頃だな……」
「…………」
「寝取られの経験は?」
「……一度だけ……」
そう答えると、ネズミ男は嬉しそうに目を丸めながら「一回ってか!」と身を乗り出した。
「はい……一度だけネットで募集した単独さんと……」
「……そりゃあ、ほとんど素人ですなぁ……」
ネズミ男はそういやらしく笑うと、独り言のように「なかなか面白そうだ……」と呟いた。そしてカウンターの上に置いてあったセブンスターの箱にソッと指を伸ばすと、「深夜0時以降なら……ホテルの客も一般客もほとんどいませんから……大丈夫ですよ」と、意味ありげに笑った。
「12時を過ぎれば、妻もここに入れるということですね」
身を乗り出してそう念を押すと、ネズミ男は唇の端をいやらしく歪めながら「但し、火曜日はダメですよ。私は毎週火曜日が休みですから」と呟き、カサカサと音を立てながらセブンスターの箱の中を指で弄った。
煙草をつまみ出そうとするネズミ男の指の動きと、あの時の単独男の指の動きが、不意に私の頭の中で重なった。
ラブホテルのベッドの上で、妻は四つん這いにされていた。
黒いブラジャーがずらされると豊満な乳肉が溢れ出し、それがひょうたんのように垂れてタプンっと波打った。黒いパンティーがずらされると、真っ白な肌にウヨウヨと生える陰毛がモサッと顔を出し、その中心にある一本線の裂け目がクニャッと見えた。
妻の真後ろに腰を下ろす単独男は、そのムチムチとした尻肉をいやらしく撫でながら、ソッと尻の裏を覗き込んだ。そして卑猥に黒ずんだ部分を犬のようにクンクンと嗅ぎながら、「人妻の匂いがしますね……」と微笑んだ。
妻は、今にも泣き出しそうな目で、ベッド脇のソファーに腰掛ける私をじっと見ていた。そして震える声で「やっぱり無理……」と何度も呟くが、しかし私はそれを無視し、その悲惨な妻の姿を見ながら無言でペニスをシゴいていた。
しばらくすると、尻肉を撫でていた単独男の指が、大きく開いた尻の谷間に下りていった。二本の指はゆっくりと肛門を通過すると、ピタリと口を閉じていた二枚の陰唇の隙間にネチャッと滑り込んだ。

灰色の陰唇が捲られ、テラテラと濡れ輝くピンク色の内臓が剥き出された。そこに男の指がヌルヌルと滑り始めると、それと同時に妻はサッと私から顔を背け、枕に顔を押し付けた。
指の動きが早くなるにつれ、枕に顔を埋める妻の呼吸はゴール直後のマラソン選手のように早くなっていた。
しばらく表面をヌルヌルと滑っていた指だったが、しかし遂に小さな穴を指先に捕らえると、男は躊躇うことなく、指を根元までヌルリと滑り込ませた。
妻の呼吸はたちまち悲鳴へと変わった。指は穴の中を滅茶苦茶に掻き回し、そこにクタクタと卑猥な音を鳴らした。穴から溢れ出た透明の汁が男の手首を伝わり、ベッドのシーツにポタポタと垂れていた。
妻は枕に押し付けていた顔をイヤイヤと左右に振りながら、その垂れ下がった豊満な乳肉をタプタプと激しく揺らした。
すると男はそんな妻の体をいきなり反転させ、わざと私に見せつけるかのようにして、仰向けに寝転がした妻の穴に更に二本の指を挿入した。
ドロドロに濡れた穴の中に四本の指をピストンさせながら、男はソッと妻の耳元に唇を這わせた。「旦那さんが見てますよ」と野太い声で囁くと、我に返った妻は赤子のような泣き声で喘ぎ出し、「見ないで、見ないで」と必死にもがき始めた。
しかし男の指は今までになく激しくピストンされ、グチャグチャという卑猥な音でそんな妻の声を掻き消した。すると突然、そんな妻の声がピタリと止まり、それと同時に妻の下半身がビクンっと跳ね上がった。
一瞬の沈黙の中、穴に突き刺さった四本の指の隙間から、いきなり透明の液体がビュッと飛び出した。それは男の指の動きに合わせ、ビュッ、ビュッ、と断続的に噴射した。そんな妻は、まるでくしゃみを我慢しているような顔をしながら、ヒクヒクと全身を痙攣させていたのだった。

ネズミ男がセブンスターの箱を弄る指の動きを見ていると、そんな残酷な光景が鮮明に蘇ってきた。
胸に次々と熱いものが込み上げ、それをゆっくりと吐き出していると、いきなりカウンターから身を乗り出したネズミ男が私の股間を指差し、「大丈夫かね」と笑った。
見ると、肌けた浴衣のブリーフには激しく勃起した肉棒の形がくっきりと浮かび上がっていた。しかもブリーフの一部はじっとりと湿り、卑猥にテラテラと輝いていた。
慌てて浴衣を元に戻した。すると、それを覗き込んでいたネズミ男が突然私の手首を掴み、「ちょっと、休んでいきませんか」と意味ありげに笑ったのだった。
カウンターの裏にある煙草臭い小部屋に連れて行かれた私は、まるで操り人形のようにソファーに座らされ、ブリーフを足首まで下ろされた。
ネズミ男は、「カチカチですね」と笑いながら私の足元にソッとしゃがんだ。そしてそれを根元からギュッと握ると、「奥さんが、見ず知らずの男のペニスをこうする所を見たいんですか」と囁き、それをゆっくりとシゴき始めた。
「……はい……見たいです……私の妻を滅茶苦茶に犯して下さい……」
そう声を震わせると、ネズミ男は不敵にニヤリと笑いながら、「私に任せなさい」と頷き、そのまま私のペニスをペロリと口に含んだ。そして、まるで欲情した女のように目を半開きにさせながら、顔を前後に振り始めた。
男にしゃぶられたのは初めてだった。私は異常性欲者だったがその趣味だけはなかった。
しかし、ジュルジュルと音を立てながらそれをしゃぶるネズミ男を見ていると、不意にそれが妻に見えてきて、妻もこうして見ず知らずの男たちのペニスをしゃぶるのだろうかと想像していると、たちまち尿道の底からゾクゾクとしたものがこみ上げてきた。
私は両足をピーンっと伸ばした。そしてネズミ男の薄くなった頭部を優しく撫でながら、「ゆきこ……」と囁くと、彼の生暖かい口内に欲望の塊を吐き出した。
朦朧とした意識の中、醜い中年男がペニスを咥えたままゴクリと喉を鳴らすのを見た。
その瞬間、不意に、何故カトパンは『めざまし』を卒業したのだろうかという、どうでもいい事が頭に浮かんだ。

(つづく)
《←目次》《9話へ→》
しかし彼らは、未だ堂々とあの記事をブログにアップしている。という事は、店側は彼らのあの行為を黙認していたに違いなく、店側はそれを知ってて彼らに場所を提供した可能性は非常に高いのだ。
しかし、それでもネズミ男は、「知らないねぇ……」とシラを切った。
きっとネズミ男は、あれが公然猥褻罪という違法行為になる事を知っているのだ。そしてそれを店側が黙認していたとなると、店側も何らかの罰則を受ける可能性がある事もネズミ男は知っているのだ。だからネズミ男は、一見の客である私を警察か何かと勘違いし、警戒しているのだった。
(やはり、頻繁に通って常連にならなければ情報は得られないか……)
そう諦めると、不意にカウンター裏のカーテンがサッと開いた。そこから顔を出したのは例の掃除のおばさんだった。
おばさんは、「店長、明日のシフトなんですけど……」と言いながらチラッと私を見た。そして私を見るなりギョッと目を見開き、慌ててネズミ男の耳元に顔を近づけたのだった。
おばさんは、私を横目で睨みながら何やらコソコソと話していた。ネズミ男は「ウンウン」と小さく頷きながら、意味ありげに私をジッと睨んでいた。
おばさんが私の事を話しているのは一目瞭然だった。恐らく、私がセンズリを見せつけた事を告げ口しているのだ。
(マズいぞ……)
そう思いながら早々と店を出ようとした。
するとネズミ男は、「わかった、わかった」と言いながらおばさんの顔を引き離した。そして「もう上がっていいから」と、さっさとおばさんをカーテンの裏へと追いやると、店を出ようとしていた私を、いきなり「あんた」と呼び止めたのだった。
「誤解です、あれはあのおばさんに見せつけるつもりじゃなかったんです」
振り向きざまにそう言い訳した。実際、あれは意図的に見せたのではなく、偶然に見られたのだ。まして相手は毒虫のような顔をしたおばさんであり、どちらかといえば、見られた私の方が被害者なのだ。
そう必死に言い訳しようとすると、ネズミ男はテレビをジッと見つめたまま、突然「どっちですか」と聞いてきた。
「どっち?……って何が?」
「参加する方か、参加させる方か、どっちです」
「…………」
一瞬その意味がわからなかったが、しかしすぐに理解できた。
恐らくネズミ男は、私があのおばさんに射精シーンを見せつけた事を知り、私が警察関係者ではないと思ったのだろう。それで私を信用し、自分がそのプレイに参加したいのか、それとも妻をプレイに参加させたいのかと、そう聞いているのだ。
すかさず私は「参加させる方です」と答えた。ネズミ男はジロッと私を見つめながら「奥さんかね」と聞いた。私がコクンっと頷くと、ネズミ男は再びテレビに視線を戻し、静かにチャンネルを変えた。
『羽鳥慎一モーニングショー』でも蛭子能収似の犯人が取り上げられていた。こちらは『スッキリ』とは違い、犯人が知的障害者の女性を施設から連れ出そうとしている監視カメラの映像が繰り返し流されていた。
ネズミ男は、そんな映像を見ながら自分の股間をスリスリと撫で始めた。そしてジャージに浮かんだ肉棒をグイグイと握りながら、「知的障害者の女ってのは凄く乱れるんだよ……あいつら本能で生きてるからね、ズボズボとチンポをピストンしてやると、獣みたいな声を出してヨガるんだな……」と呟き、いやらしい目をして微笑んだ。
「……障害者とヤッたことあるんですか?」
恐る恐るそう聞くと、ネズミ男は財布の中から一枚のカードを取り出した。そしてそれを自慢げに私に見せびらかしながら、「こう見えても私は、こんな資格を持ってるのだ」と笑った。そのカードには、『知的障害者福祉司』と書いてあった。それを見た瞬間、(こいつは本物だ)と息を飲んだ。そしてその公序良俗に反した凄まじい光景を想像しては背筋を震わせたのだった。

「で、あんたの奥さんの歳はいくつだい」
ネズミ男は、そのいやらしい目で私を見たまま言った。
不意にネズミ男に滅茶苦茶に犯される妻を想像してしまった私は、複雑な気持ちで「三十です……」と答えた。
「三十ですかぁ……おいしい年頃だな……」
「…………」
「寝取られの経験は?」
「……一度だけ……」
そう答えると、ネズミ男は嬉しそうに目を丸めながら「一回ってか!」と身を乗り出した。
「はい……一度だけネットで募集した単独さんと……」
「……そりゃあ、ほとんど素人ですなぁ……」
ネズミ男はそういやらしく笑うと、独り言のように「なかなか面白そうだ……」と呟いた。そしてカウンターの上に置いてあったセブンスターの箱にソッと指を伸ばすと、「深夜0時以降なら……ホテルの客も一般客もほとんどいませんから……大丈夫ですよ」と、意味ありげに笑った。
「12時を過ぎれば、妻もここに入れるということですね」
身を乗り出してそう念を押すと、ネズミ男は唇の端をいやらしく歪めながら「但し、火曜日はダメですよ。私は毎週火曜日が休みですから」と呟き、カサカサと音を立てながらセブンスターの箱の中を指で弄った。
煙草をつまみ出そうとするネズミ男の指の動きと、あの時の単独男の指の動きが、不意に私の頭の中で重なった。
ラブホテルのベッドの上で、妻は四つん這いにされていた。
黒いブラジャーがずらされると豊満な乳肉が溢れ出し、それがひょうたんのように垂れてタプンっと波打った。黒いパンティーがずらされると、真っ白な肌にウヨウヨと生える陰毛がモサッと顔を出し、その中心にある一本線の裂け目がクニャッと見えた。
妻の真後ろに腰を下ろす単独男は、そのムチムチとした尻肉をいやらしく撫でながら、ソッと尻の裏を覗き込んだ。そして卑猥に黒ずんだ部分を犬のようにクンクンと嗅ぎながら、「人妻の匂いがしますね……」と微笑んだ。
妻は、今にも泣き出しそうな目で、ベッド脇のソファーに腰掛ける私をじっと見ていた。そして震える声で「やっぱり無理……」と何度も呟くが、しかし私はそれを無視し、その悲惨な妻の姿を見ながら無言でペニスをシゴいていた。
しばらくすると、尻肉を撫でていた単独男の指が、大きく開いた尻の谷間に下りていった。二本の指はゆっくりと肛門を通過すると、ピタリと口を閉じていた二枚の陰唇の隙間にネチャッと滑り込んだ。

灰色の陰唇が捲られ、テラテラと濡れ輝くピンク色の内臓が剥き出された。そこに男の指がヌルヌルと滑り始めると、それと同時に妻はサッと私から顔を背け、枕に顔を押し付けた。
指の動きが早くなるにつれ、枕に顔を埋める妻の呼吸はゴール直後のマラソン選手のように早くなっていた。
しばらく表面をヌルヌルと滑っていた指だったが、しかし遂に小さな穴を指先に捕らえると、男は躊躇うことなく、指を根元までヌルリと滑り込ませた。
妻の呼吸はたちまち悲鳴へと変わった。指は穴の中を滅茶苦茶に掻き回し、そこにクタクタと卑猥な音を鳴らした。穴から溢れ出た透明の汁が男の手首を伝わり、ベッドのシーツにポタポタと垂れていた。
妻は枕に押し付けていた顔をイヤイヤと左右に振りながら、その垂れ下がった豊満な乳肉をタプタプと激しく揺らした。
すると男はそんな妻の体をいきなり反転させ、わざと私に見せつけるかのようにして、仰向けに寝転がした妻の穴に更に二本の指を挿入した。
ドロドロに濡れた穴の中に四本の指をピストンさせながら、男はソッと妻の耳元に唇を這わせた。「旦那さんが見てますよ」と野太い声で囁くと、我に返った妻は赤子のような泣き声で喘ぎ出し、「見ないで、見ないで」と必死にもがき始めた。
しかし男の指は今までになく激しくピストンされ、グチャグチャという卑猥な音でそんな妻の声を掻き消した。すると突然、そんな妻の声がピタリと止まり、それと同時に妻の下半身がビクンっと跳ね上がった。
一瞬の沈黙の中、穴に突き刺さった四本の指の隙間から、いきなり透明の液体がビュッと飛び出した。それは男の指の動きに合わせ、ビュッ、ビュッ、と断続的に噴射した。そんな妻は、まるでくしゃみを我慢しているような顔をしながら、ヒクヒクと全身を痙攣させていたのだった。

ネズミ男がセブンスターの箱を弄る指の動きを見ていると、そんな残酷な光景が鮮明に蘇ってきた。
胸に次々と熱いものが込み上げ、それをゆっくりと吐き出していると、いきなりカウンターから身を乗り出したネズミ男が私の股間を指差し、「大丈夫かね」と笑った。
見ると、肌けた浴衣のブリーフには激しく勃起した肉棒の形がくっきりと浮かび上がっていた。しかもブリーフの一部はじっとりと湿り、卑猥にテラテラと輝いていた。
慌てて浴衣を元に戻した。すると、それを覗き込んでいたネズミ男が突然私の手首を掴み、「ちょっと、休んでいきませんか」と意味ありげに笑ったのだった。
カウンターの裏にある煙草臭い小部屋に連れて行かれた私は、まるで操り人形のようにソファーに座らされ、ブリーフを足首まで下ろされた。
ネズミ男は、「カチカチですね」と笑いながら私の足元にソッとしゃがんだ。そしてそれを根元からギュッと握ると、「奥さんが、見ず知らずの男のペニスをこうする所を見たいんですか」と囁き、それをゆっくりとシゴき始めた。
「……はい……見たいです……私の妻を滅茶苦茶に犯して下さい……」
そう声を震わせると、ネズミ男は不敵にニヤリと笑いながら、「私に任せなさい」と頷き、そのまま私のペニスをペロリと口に含んだ。そして、まるで欲情した女のように目を半開きにさせながら、顔を前後に振り始めた。
男にしゃぶられたのは初めてだった。私は異常性欲者だったがその趣味だけはなかった。
しかし、ジュルジュルと音を立てながらそれをしゃぶるネズミ男を見ていると、不意にそれが妻に見えてきて、妻もこうして見ず知らずの男たちのペニスをしゃぶるのだろうかと想像していると、たちまち尿道の底からゾクゾクとしたものがこみ上げてきた。
私は両足をピーンっと伸ばした。そしてネズミ男の薄くなった頭部を優しく撫でながら、「ゆきこ……」と囁くと、彼の生暖かい口内に欲望の塊を吐き出した。
朦朧とした意識の中、醜い中年男がペニスを咥えたままゴクリと喉を鳴らすのを見た。
その瞬間、不意に、何故カトパンは『めざまし』を卒業したのだろうかという、どうでもいい事が頭に浮かんだ。

(つづく)
《←目次》《9話へ→》
吐泥(へろど)9
2013/06/13 Thu 00:01
漁業組合でさっさと商談を終わらせた私は、急いで電車に飛び乗った。
私は異常なほどの性的興奮を催していた。朝っぱらから二回も射精している私だったが、しかし例の計画のせいで未だ悶々としていた。
それはまるで、公園で不意に目撃した新妻のパンチラのように、いつまでも脳裏にこびりついていた。ある意味一種の呪縛だった。その呪縛から抜け出すには射精するしかないのだが、しかし商談中にトイレでセンズリをこくわけにもいかず、漁業組合での私は、おぞましい計画の呪縛に囚われたまま常に欲情状態にあったのだった。
だからまともな商談など一つもしていなかった。漁業組合の貧乏臭いおばさん事務員の尻ばかりを見つめては、(今ならあの薄汚いおばさんの、恥垢だらけの蒸れ臭さマンコでも舐められる)などと卑猥な妄想を繰り返し、ゲンゲの説明を必死にしている組合長の話など何も聞いてはいなかったのだった。

長岡駅で新幹線に乗り換えた。
『Maxとき』は相変わらず空いていた。自由席でも余裕で座れたのだが、しかしお土産で貰ったゲンゲの干物が凄まじく臭うため、大事をとって乗客が少なそうなグリーン席にした。
案の定、グリーン車は貸切のようにガラガラだった。入口を入ってすぐの席に中年サラリーマンが一人座っているだけだった。
強烈な異臭物を持っていた私はひとまず安心した。あとは停車駅から誰も乗り込んで来ないことを祈るだけだと、切符の番号を見つつ座席を探した。しかし、26Aの席に辿り着いた私はたちまち絶句した。なんとその列の反対側の26Dには、女が一人、スースーと寝息を立てているではないか。
咄嗟に、あの前川清のようなアホ面をした切符売り場の駅員の顔が浮かんだ。あのバカは、グリーン車がガラガラだということを一番知っていながらも、何故にわざわざ私とこの女を同列席にしたのだと思い、激しい怒りが込み上げてきた。
なぜか関西弁で「アホちゃうか」と呟きながら、座席の上の荷物棚にゲンゲの袋を放り投げた。その音で女がピクッと目を覚ました。私は慌てて「あっ、すみません」と女に会釈した。すると女は、寝起きのしゃがれた声で「いえ……」とボソッと呟くと、そのまま寝ぼけ眼でゆっくりと席を立ちあがり、フラフラしながらトイレに向かったのだった。
二十代後半だろうか、ポッチャリとしたなかなかのイイ女だった。一瞬しか見えなかったがオッパイは大きく、太もももムチムチしていた。その黒い花柄のワンピースにはゴージャスなエロさが漂い、まるで日活ロマンポルノに出てくるインテリ音楽教師のようだった。
そんな事を思いながら、フラフラと通路を進む女の大きな尻を見ていた。すると再び前川清のようなアホ面をした駅員の顔が頭に浮かび、「ね、いいでしょ」と勝ち誇ったように笑った。私はそんな幻想の彼に「ええんちゃうの」と関西弁で答えると、溜め息混じりに視線を窓の外に向け、さっそく例の計画の構想を立て始めたのだった。
窓の外には、果てしなく広い田園が延々と続いていた。
そんな風景をぼんやりと眺めながら例の計画を立てていたのだが、しかし、そんな田園地帯の中にポツンと建っている民家を発見するたびに、きっとこんな所には、『津山三十人殺し』の犯人のような奴が住んでいるに違いないなどと妄想に駆られ、いちいちその猟奇的に荒れ果てた民家に気を取られてしまうため、例の計画はなかなか進まなかった。
これではいけないと、私は真剣に計画に取り組むべく静かに目を閉じた。このわずか二時間足らずの新幹線の中で、しっかりと計画を立てておかなければ、土曜の夜には間に合わなくなるのだ。
ネズミ男が言っていたには、火曜日以外の深夜0時以降ならいつでも妻を連れてきてもいいという事だった。
深夜0時以降からではさすがに日帰りは難しく、ホテルに一泊しなければならなかった。となると、会社が休みの第二土曜日の昼に東京を出発し、その日の深夜に決行するしか方法はなかった。
しかしその第二土曜日までは、あと二日しかなかった。
もはや例の計画に完全に取り憑かれてしまった私には、来月の第二土曜日まで待つ事など到底できるわけがなく、もしそうなれば、たちまち気が狂った私はとんでもなく卑劣で残虐な性犯罪を犯しかねないのだ。
だから何としても次の第二土曜日に決行しなければならず、この二日間で妻を説得しなければならなかった。
しかしこの計画は、ほとんど素人に過ぎない妻にはあまりにもハードルが高すぎた。たった一度だけ、寝取られプレイを強制的にさせられた事しかない経験不足の妻が、いきなり変態共がウヨウヨしている男性サウナに潜入するなど、できるわけがないのだ。
しかもこの計画は、想像を絶するほどの凄まじいプレイになる事は火を見るよりも明らかであり、そんなプレイに参加させるべく妻を説き伏せるのは、たったの二日間ではどう考えても無理だった。
私は小さな溜息をつきながら、ゆっくりと腕組みをした。それと同時に反対側の座席にいた女が再び立ち上がり、新幹線の振動にフラフラと体を揺らしながら通路に出た。
(またトイレか?)
そう驚きながら、通路を進む女の尻を舐めるように見た。
女は、わずか三十分程度の間にかれこれ三度も席を立っていた。私が田園地帯に佇む不気味な民家に気を取られていたり、例の計画をあれこれと考えている間に、ああやってフラフラしながら三度もトイレに向かっていた。
(下痢か……それとも膀胱炎か……)
そう思いながらふと女の座席に目をやると、窓の前にウィスキーのミニボトルがポツンと置いてあるのが見えた。しかもそれはアルコール度が非常に高いウィスキーであり、どうやら女はそれをロックでラッパ飲みしている様子だった。
(だから小便が近いのか……それにしても、昼間っから新幹線で酒を飲むとは……ワケありか? それともただのアル中か?)
そんなことを考えていると、通路の向こうから女がフラフラと戻ってくるのが見え、素早く私は目を閉じた。
女が近づく気配を感じながらソッと薄目を開けると、女の顔は赤く火照っていた。明らかに酔っている状態であり、その目はトロンっと緩んでいた。
フラフラとやってきた女は、倒れるようにしてドスンッと座席に座った。そして半開きの目をフワフワさせながら、しばらく窓の外をぼんやり見つめていたが、しかしすぐにスースーと寝息を立てて寝てしまったのだった。
そんな乱れた女に激しく興味を感じたが、しかし今の私はそれどころではなかった。一刻も早く、どうやって妻を説得するのかを考えなければならなかったのだ。
そう焦りながら再び目を閉じると、ダダンダダン、ダダンダダン、と鉄橋を渡る振動が脳に響いた。そんな振動が過ぎるのをジッと待ちながらも、あの時の私はどうやって妻を説得しただろうかと、あの単独男との寝取られプレイの時のことを思い出していた。
そもそも、そんなプレイを実行しようと決めたのは、私がアダルトグッズを購入したことがきっかけだった。
当時から私たち夫婦は、毎日欠かさずセックスをしていた。もちろんそれは私が異常性欲者だからであり、決して妻がそれを求めていたわけではない。むしろ妻はそれを求めるどころか、そんな私の果てしない絶倫に嫌気をさしているようだった。
このままでは離婚の危機にさらされる。
そう焦った私だったが、しかしすぐに気づいた。その果てしなく続くセックスで妻も一緒に喜ばせてやればいいという事に気づいたのだ。
さっそく私はAmazonにて、様々な性玩具を購入した。拘束具、ローター、ディルド、ろうそく、バイブ、乳首クリップ、猿轡。それらの性玩具を全て妻に試してみた。

そしていろいろ試した中、妻の反応が一番良かったのがローターだった。
それからというもの、ローターは私たち夫婦の必需品となった。
妻は、どれだけ私に激しく攻められて疲れ果てていようとも、皮を剥いたクリトリスにローターを押し付けてやればたちまちその気になった。例え連続四発のセックスで死体のようにぐったりしていても、ひとたびローターを手渡してやれば、さっそく太ももをスリスリと擦り合わせながら「ふんふん」と悩ましい鼻声を出し始め、自分で自分の乳首を指でコロコロと転がしたりしながら淫らに悶え始めた。
何よりもいやらしかったのはイク瞬間だった。妻はローターでイキそうになると、自らの意思でバイブを鷲掴みにし、それを膣に挿入した。ローターをクリトリスに押し付けたままバイブのスイッチを入れ、膣に突き刺さったそれをクネクネとくねらせながら、まるで洋モノの金髪ポルノ女優のようにハァーハァーとダイナミックな呼吸を繰り返した。そして、恍惚とした目で卑猥な自分の陰部をソッと見つめながら、黙々と絶頂に達していたのだった。

自らロータを陰部に押し当てながら、恍惚とした表情で腰をヒクヒクと痙攣させている妻のその姿は、まるで別人のようだった。、日頃セックスに対して消極的だった妻のその乱れようは、今までの妻からは想像もできなかった。
そんな妻を見た私は、激しい興奮を覚えると共に、黒々とした疑心を抱かせ、途端に私は背筋がゾッとするような恐怖を覚えた。
というのは、妻は私と結婚するまで、二人の男としか付き合ったことがないと話していたからだった。しかもセックスをしたのはその二人のうちの吉田という男だけであり、それ以外の男とはそれらしき行為は一度もなかったと断言していたのだった。
しかし、ローターを使う妻のその乱れようは尋常ではなかった。この三十年間、二人の男しか知らない初心な女とは到底思えぬような、そんな手慣れた淫乱っぷりだった。
だから私は、妻は本当はとんでもないヤリマンだったのではないだろうかと彼女の過去を疑った。いや過去だけではなく、今現在も、こっそりそこらの男たちに尻を振っているのではないかと疑心暗鬼に陥ったのだった。
しかしそんな疑心は、次第に恐怖から興奮へと変わっていった。不思議なことに、妻が見ず知らずの男たちの肉棒に溺れている姿を想像すると、今までにない興奮が湧き上がってきたのだ。
もちろん、妻が浮気をしているなど私は本気で思っていなかった。当然、結婚する前の妻がヤリマンだったなど心の奥底では信じていなかった。それらは私が勝手に捏造したものであり、あくまでも私の気狂いじみた妄想に過ぎないのだ。
が、しかし、そんな妄想は私の異常性欲に火をつけてしまった。
『他人に滅茶苦茶に犯されて悶えている妻を見てみたい』
そんな危険なスイッチが入ってしまった私は、本気でそんな願望を抱き始めた。それは、あの公衆便所で獣たちに無残に犯されていた主婦を目撃した時に感じた、あの残酷な願望と同じだった。

(つづく)
《←目次》《10話へ→》
私は異常なほどの性的興奮を催していた。朝っぱらから二回も射精している私だったが、しかし例の計画のせいで未だ悶々としていた。
それはまるで、公園で不意に目撃した新妻のパンチラのように、いつまでも脳裏にこびりついていた。ある意味一種の呪縛だった。その呪縛から抜け出すには射精するしかないのだが、しかし商談中にトイレでセンズリをこくわけにもいかず、漁業組合での私は、おぞましい計画の呪縛に囚われたまま常に欲情状態にあったのだった。
だからまともな商談など一つもしていなかった。漁業組合の貧乏臭いおばさん事務員の尻ばかりを見つめては、(今ならあの薄汚いおばさんの、恥垢だらけの蒸れ臭さマンコでも舐められる)などと卑猥な妄想を繰り返し、ゲンゲの説明を必死にしている組合長の話など何も聞いてはいなかったのだった。

長岡駅で新幹線に乗り換えた。
『Maxとき』は相変わらず空いていた。自由席でも余裕で座れたのだが、しかしお土産で貰ったゲンゲの干物が凄まじく臭うため、大事をとって乗客が少なそうなグリーン席にした。
案の定、グリーン車は貸切のようにガラガラだった。入口を入ってすぐの席に中年サラリーマンが一人座っているだけだった。
強烈な異臭物を持っていた私はひとまず安心した。あとは停車駅から誰も乗り込んで来ないことを祈るだけだと、切符の番号を見つつ座席を探した。しかし、26Aの席に辿り着いた私はたちまち絶句した。なんとその列の反対側の26Dには、女が一人、スースーと寝息を立てているではないか。
咄嗟に、あの前川清のようなアホ面をした切符売り場の駅員の顔が浮かんだ。あのバカは、グリーン車がガラガラだということを一番知っていながらも、何故にわざわざ私とこの女を同列席にしたのだと思い、激しい怒りが込み上げてきた。
なぜか関西弁で「アホちゃうか」と呟きながら、座席の上の荷物棚にゲンゲの袋を放り投げた。その音で女がピクッと目を覚ました。私は慌てて「あっ、すみません」と女に会釈した。すると女は、寝起きのしゃがれた声で「いえ……」とボソッと呟くと、そのまま寝ぼけ眼でゆっくりと席を立ちあがり、フラフラしながらトイレに向かったのだった。
二十代後半だろうか、ポッチャリとしたなかなかのイイ女だった。一瞬しか見えなかったがオッパイは大きく、太もももムチムチしていた。その黒い花柄のワンピースにはゴージャスなエロさが漂い、まるで日活ロマンポルノに出てくるインテリ音楽教師のようだった。
そんな事を思いながら、フラフラと通路を進む女の大きな尻を見ていた。すると再び前川清のようなアホ面をした駅員の顔が頭に浮かび、「ね、いいでしょ」と勝ち誇ったように笑った。私はそんな幻想の彼に「ええんちゃうの」と関西弁で答えると、溜め息混じりに視線を窓の外に向け、さっそく例の計画の構想を立て始めたのだった。
窓の外には、果てしなく広い田園が延々と続いていた。
そんな風景をぼんやりと眺めながら例の計画を立てていたのだが、しかし、そんな田園地帯の中にポツンと建っている民家を発見するたびに、きっとこんな所には、『津山三十人殺し』の犯人のような奴が住んでいるに違いないなどと妄想に駆られ、いちいちその猟奇的に荒れ果てた民家に気を取られてしまうため、例の計画はなかなか進まなかった。
これではいけないと、私は真剣に計画に取り組むべく静かに目を閉じた。このわずか二時間足らずの新幹線の中で、しっかりと計画を立てておかなければ、土曜の夜には間に合わなくなるのだ。
ネズミ男が言っていたには、火曜日以外の深夜0時以降ならいつでも妻を連れてきてもいいという事だった。
深夜0時以降からではさすがに日帰りは難しく、ホテルに一泊しなければならなかった。となると、会社が休みの第二土曜日の昼に東京を出発し、その日の深夜に決行するしか方法はなかった。
しかしその第二土曜日までは、あと二日しかなかった。
もはや例の計画に完全に取り憑かれてしまった私には、来月の第二土曜日まで待つ事など到底できるわけがなく、もしそうなれば、たちまち気が狂った私はとんでもなく卑劣で残虐な性犯罪を犯しかねないのだ。
だから何としても次の第二土曜日に決行しなければならず、この二日間で妻を説得しなければならなかった。
しかしこの計画は、ほとんど素人に過ぎない妻にはあまりにもハードルが高すぎた。たった一度だけ、寝取られプレイを強制的にさせられた事しかない経験不足の妻が、いきなり変態共がウヨウヨしている男性サウナに潜入するなど、できるわけがないのだ。
しかもこの計画は、想像を絶するほどの凄まじいプレイになる事は火を見るよりも明らかであり、そんなプレイに参加させるべく妻を説き伏せるのは、たったの二日間ではどう考えても無理だった。
私は小さな溜息をつきながら、ゆっくりと腕組みをした。それと同時に反対側の座席にいた女が再び立ち上がり、新幹線の振動にフラフラと体を揺らしながら通路に出た。
(またトイレか?)
そう驚きながら、通路を進む女の尻を舐めるように見た。
女は、わずか三十分程度の間にかれこれ三度も席を立っていた。私が田園地帯に佇む不気味な民家に気を取られていたり、例の計画をあれこれと考えている間に、ああやってフラフラしながら三度もトイレに向かっていた。
(下痢か……それとも膀胱炎か……)
そう思いながらふと女の座席に目をやると、窓の前にウィスキーのミニボトルがポツンと置いてあるのが見えた。しかもそれはアルコール度が非常に高いウィスキーであり、どうやら女はそれをロックでラッパ飲みしている様子だった。
(だから小便が近いのか……それにしても、昼間っから新幹線で酒を飲むとは……ワケありか? それともただのアル中か?)
そんなことを考えていると、通路の向こうから女がフラフラと戻ってくるのが見え、素早く私は目を閉じた。
女が近づく気配を感じながらソッと薄目を開けると、女の顔は赤く火照っていた。明らかに酔っている状態であり、その目はトロンっと緩んでいた。
フラフラとやってきた女は、倒れるようにしてドスンッと座席に座った。そして半開きの目をフワフワさせながら、しばらく窓の外をぼんやり見つめていたが、しかしすぐにスースーと寝息を立てて寝てしまったのだった。
そんな乱れた女に激しく興味を感じたが、しかし今の私はそれどころではなかった。一刻も早く、どうやって妻を説得するのかを考えなければならなかったのだ。
そう焦りながら再び目を閉じると、ダダンダダン、ダダンダダン、と鉄橋を渡る振動が脳に響いた。そんな振動が過ぎるのをジッと待ちながらも、あの時の私はどうやって妻を説得しただろうかと、あの単独男との寝取られプレイの時のことを思い出していた。
そもそも、そんなプレイを実行しようと決めたのは、私がアダルトグッズを購入したことがきっかけだった。
当時から私たち夫婦は、毎日欠かさずセックスをしていた。もちろんそれは私が異常性欲者だからであり、決して妻がそれを求めていたわけではない。むしろ妻はそれを求めるどころか、そんな私の果てしない絶倫に嫌気をさしているようだった。
このままでは離婚の危機にさらされる。
そう焦った私だったが、しかしすぐに気づいた。その果てしなく続くセックスで妻も一緒に喜ばせてやればいいという事に気づいたのだ。
さっそく私はAmazonにて、様々な性玩具を購入した。拘束具、ローター、ディルド、ろうそく、バイブ、乳首クリップ、猿轡。それらの性玩具を全て妻に試してみた。

そしていろいろ試した中、妻の反応が一番良かったのがローターだった。
それからというもの、ローターは私たち夫婦の必需品となった。
妻は、どれだけ私に激しく攻められて疲れ果てていようとも、皮を剥いたクリトリスにローターを押し付けてやればたちまちその気になった。例え連続四発のセックスで死体のようにぐったりしていても、ひとたびローターを手渡してやれば、さっそく太ももをスリスリと擦り合わせながら「ふんふん」と悩ましい鼻声を出し始め、自分で自分の乳首を指でコロコロと転がしたりしながら淫らに悶え始めた。
何よりもいやらしかったのはイク瞬間だった。妻はローターでイキそうになると、自らの意思でバイブを鷲掴みにし、それを膣に挿入した。ローターをクリトリスに押し付けたままバイブのスイッチを入れ、膣に突き刺さったそれをクネクネとくねらせながら、まるで洋モノの金髪ポルノ女優のようにハァーハァーとダイナミックな呼吸を繰り返した。そして、恍惚とした目で卑猥な自分の陰部をソッと見つめながら、黙々と絶頂に達していたのだった。

自らロータを陰部に押し当てながら、恍惚とした表情で腰をヒクヒクと痙攣させている妻のその姿は、まるで別人のようだった。、日頃セックスに対して消極的だった妻のその乱れようは、今までの妻からは想像もできなかった。
そんな妻を見た私は、激しい興奮を覚えると共に、黒々とした疑心を抱かせ、途端に私は背筋がゾッとするような恐怖を覚えた。
というのは、妻は私と結婚するまで、二人の男としか付き合ったことがないと話していたからだった。しかもセックスをしたのはその二人のうちの吉田という男だけであり、それ以外の男とはそれらしき行為は一度もなかったと断言していたのだった。
しかし、ローターを使う妻のその乱れようは尋常ではなかった。この三十年間、二人の男しか知らない初心な女とは到底思えぬような、そんな手慣れた淫乱っぷりだった。
だから私は、妻は本当はとんでもないヤリマンだったのではないだろうかと彼女の過去を疑った。いや過去だけではなく、今現在も、こっそりそこらの男たちに尻を振っているのではないかと疑心暗鬼に陥ったのだった。
しかしそんな疑心は、次第に恐怖から興奮へと変わっていった。不思議なことに、妻が見ず知らずの男たちの肉棒に溺れている姿を想像すると、今までにない興奮が湧き上がってきたのだ。
もちろん、妻が浮気をしているなど私は本気で思っていなかった。当然、結婚する前の妻がヤリマンだったなど心の奥底では信じていなかった。それらは私が勝手に捏造したものであり、あくまでも私の気狂いじみた妄想に過ぎないのだ。
が、しかし、そんな妄想は私の異常性欲に火をつけてしまった。
『他人に滅茶苦茶に犯されて悶えている妻を見てみたい』
そんな危険なスイッチが入ってしまった私は、本気でそんな願望を抱き始めた。それは、あの公衆便所で獣たちに無残に犯されていた主婦を目撃した時に感じた、あの残酷な願望と同じだった。

(つづく)
《←目次》《10話へ→》
吐泥(へろど)10
2013/06/13 Thu 00:01
翌日から、さっそく私はソレ系のサイトで単独男を探し始めた。人妻の肉体を欲しがるゲスな男たちは、ネットにウヨウヨしていた。だから単独男はいとも簡単に見つかったが、しかし問題は妻の意思だった。当然妻は、そのような見ず知らずの男とのセックスは拒むに決まっているのだ。
だから私は考えた。妻には単独男の事はギリギリまで内緒にしておき、いきなりホテルで登場させようと。そしてホテルのベッドで妻の興奮が最高潮に高まった時、いきなりサプライズ的に単独男を登場させようと企んだのだった。
その単独男は、四十後半の猿のような顔をした男だった。
事情を説明し、事前にラブホテルのクローゼットに隠れていて欲しいとお願いすると、彼はたちまち好奇の目を輝かせながら、「面白そうですね」と了承した。
何も知らない妻を、単独男が待ち伏せるラブホテルに連れて行った。部屋に入るなり早々とベッドに押し倒し、いきなりパンティーの上からローターを押し付けた。すると妻は、いつもと違う順序に、「どうしたの?」と警戒の色を浮かべ、素直に体を開かなかった。
いつもの順序では、まずは二人で風呂に入った。そこでたっぷりと尺八させ、妻の巨乳に精液をぶっかけた。それが、私たち夫婦が長年続けてきたセックスのスタートだった。
初発の精液をシャワーで洗い流すとベッドに移動し、すぐに二発目が開始された。二発目は、いつも決まって正常位で中出しした。その後、煙草一服のインターバルを挟んでから三発目に突入するのだが、そのインターバルの間に、そこで初めてローターが登場した。すでに疲れ果てている妻にローターで喜びを与え、妻の興奮が高まってきた時に、最後の三発目へと突入するのだった。

それがいつもの私たちのセックススタイルだった。ローターが登場してからというもの、余程の理由がない限り、いつも決まってこの順序だった。
しかしこの日は、突然ローターからスタートした。だから妻は戸惑い、大好きなローターを股間に押し付けられても、なかなか気分は高まらなかった。
しかしこれも計画の一つだった。私は、素の妻が他人によって開花されていく姿が見たいのだ。だから私の肉棒がまだ貫通していない状態で、他人に妻を差し出したかったのである。
「ヤだ……先にお風呂に入ろうよ……」
妻は必死に太ももを閉じながら、私の腕の中で小さく呟いた。
そんな妻の生暖かい息を耳元に感じるなり、途端に熱いものがムラッと沸き上り、同時に亀頭がズキンっとした。
シャワーを浴びていない妻の陰部。今から見ず知らずの男に、嗅がれ、舐められ、入れられるのだと思うと、息苦しくなるほどの凄まじい嫉妬と興奮が胸にムラムラと湧き上がってきた。
私は強引に妻の太ももをこじ開けた。そして震える声で、「……まだ何も刺激を与えていないクリトリスってのは敏感だろ……先にイカせてあげるよ……」と囁きながらクロッチにローターを滑らせた。
ローターの先でクリトリスを探した。グニョグニョするクロッチの裏側の中に一箇所だけコリッと硬くなっている部分を見つけ出し、そのスイッチにローターを力強く押し付けてやると、いきなり妻は「はぁん!」と大きく息を吐き、腰をピクン!と跳ね上げた。
瞬間で妻は欲情した。私に抱きつきながら卑猥にコキコキと腰を動かし、「ああん……ホントだ……いつもより感じる……」などと囁いては、みるみるクロッチを湿らせた。
この淫らな妻の声が、あのクローゼットの中に隠れている赤の他人に聞かれているのかと思うと、目眩を感じるほどの興奮に襲われた。
もう我慢できないと思った私は、頭をクラクラさせながら妻の耳元に囁いた。
「実は、ある男をここに呼んでいるんだ……」
妻は冗談だと思っているのか、子犬のように鼻をフン、フンと鳴らして悶えながら、そんな私の言葉をスルーした。
それでも私が、「本当なんだ……本当にいるんだ……今からベッドに呼んでもいいか……」と真顔で聞くと、妻は突然、その潤んだ大きな目でソッと私を見上げた。
妻はジッと私を見つめながら、ポッテリと膨らんだ下唇に真っ赤な舌をペロッと滑らせた。「その人……ここに呼んでどうするの?」と小さく呟くと、まるで私を挑発するかのように、ジーンズの中でズキズキと疼いているペニスを手の平でスリスリと摩り始めた。
「お前と……セックスさせるんだ……」
妻は、いつもの私の妄想劇だと思っているのか、冗談っぽく微笑みながら「他の男とセックスしてもいいの?」と囁いた。そしてジーンズのジッパーの中から熱り立った肉棒を摘み出すと、その白魚のような人差し指を、我慢汁が溢れる尿道にヌルヌルと滑らせた。
私は背筋をゾクゾクさせながら、「お前が他の男とヤってるところが見たいんだ……いいだろ……」と声を震わせた。すると妻は「いいわよ」と挑発的に微笑み、たじろぐ私を見つめながら肉棒を上下にシゴき始めた。そしてそのまま私の耳元にソッと唇を這わせると、明らかに欲情した声で「舐めさせて……」と囁いたのだった。
思わず私は震える指でジーンズのボタンを外した。それと同時にムクリと顔を上げた妻は、ハァハァと荒い息を吐きながらそれを突き出している私にニヤリと微笑んだ。そしてその卑猥な汁でテラテラと輝く亀頭をヌルリと口に含むと、テュパ、テュパと音を立てながらしゃぶり始めたのだった。

そんな妻は、明らかにいつもと違っていた。まるでこの後の展開を予期しているかのように乱れていた。
そんな妻の妖艶な姿に悶えながら、私は『いきなりローター』の威力の凄さを実感させられた。こんな妻なら五回は抜けると思った私は、今後のセックスの順序を改めるべきだと強く思った。
私は、ペニスをしゃぶる妻の乳肉を鷲掴みにした。そしてそれをグニグニと乱暴に揉みながら、もう片方の手でパンティーの中にローターを滑り込ませ、直接その敏感な部分にそれを押し付けてやった。
途端に妻は喘ぎ始めた。肉棒を咥えながら、ウグウグと苦しそうに悶えていた。そんなパンティーの中は、まるでペペローションを大量に垂らしたかのように濡れており、今までヴィィィィィンと響いていたローターの振動音がピチャピチャと卑猥な音に変わった。
機は熟していた。今なら妻はあの男を素直に受け入れるだろうと確信した。
私は男が隠れているクローゼットに振り向いた。既にクローゼットの扉は半分開かれ、その扉の隙間から全裸の男がジッと私を見ていた。
男の巨大な肉棒は、まるで龍が天に昇るかのように反り立っていた。亀頭の大きさ、竿の太さ、竿の長さ、すべて私のモノより遥かに勝っていた。今から妻はあんな凶暴なモノを入れられるのかと思うと、恐怖と共に激しい嫉妬に駆られ、それが複雑に混ざり合っては異常な性的興奮へと変わった。

私は、ぺちゃぺちゃとペニスをしゃぶっていた妻をソッとベッドに寝かせた。そしてパンティーの中でローターを響かせながら、できるだけ妻が驚かないよう、穏やかな口調で囁いた。
「ほら……見てごらん……あそこに男がいるよ……」
妻はローターで身悶えながら、私が指差す方向にチラッと視線を向けた。
半開きで潤んでいた妻の目がいきなりギョッと見開いた。そして「誰!」と短く叫びながら私にしがみつき、そのまま驚愕しながら凍りついた。
「大丈夫。心配するな、あの人は私がネットで見つけてきた単独さんだ」
「……た、単独さんって……」
妻は声を震わせながら、更に私にしがみついてきた。そう怯えている妻は、さっきの妖艶な妻よりも百倍エロティックだった。
「単独さんというのはね、私の代わりにお前とセックスしてくれる人のことだよ……だからお前は、今からあの人とセックスするんだ……」
そう髪を撫でながら優しく囁くと、妻は恐る恐る私の顔を見上げ、今にも泣き出しそうに目をうるうるさせながら「どうして……」と呟いた。
「お前が愛おしいからだよ……だからお前が他人に抱かれる姿が見たいんだ……」
「愛おしいのに、どうして私が他の人に抱かれるのを——」
「——それはわからない。この感情は自分でもわからない。何が何だかわからないけど、とにかくお前が他人に抱かれる姿が見たくて見たくて我慢できないんだ」
そう話している間に、男はスリスリと絨毯を鳴らしながらベッドの端にやってきた。「初めまして。田島と申します」と妻に優しく微笑みながらも、その凶暴に勃起したペニスはビクンビクンと波打っていた。
妻は慌てて掛け布団をひったくり、ガバッと音を立ててその中に潜り込んだ。
男は不安そうな顔で私を見つめながら、「大丈夫ですか?」と言った。
私はそんな男に「大丈夫です」と答えながら布団の中に手を入れた。
妻の柔らかい太ももに手を滑らせた。ピタッと閉じられていた太ももの隙間に一本一本指を差し込み、少しずつそこを開いていった。
半開きになった太ももにローターを滑り込ませ、ジトッと湿ったクロッチにそれを押し付けながらスイッチを入れた。
膨らんだ布団の中からヴィィィィィィィィィィンという振動音が響いた。
しばらくして、ソッと布団の隙間から中を覗くと、喉をヒクヒクさせながら必死に声を堪えている妻と目が合った。
「ソファーで見てるよ……」
そう呟くと、私は持っていたローターを静かに手放した。一瞬何か言いかけた妻だったが、しかしすぐに言葉を飲み込み、そのまま黙って瞳を閉じた。
そこで抵抗しないということは、妻がそれを受け入れたという事だった。私はそんな妻に、嬉しい反面、強烈なショックを受けた。私が布団から手を抜くのと入れ替わりに、男の手が布団の中に潜り込んだ。
それは、初めて私の目の前で、妻の体が他人に触れられる瞬間だった。布団の中がモゾモゾと蠢いていた。男の指が妻のどこを弄っているのか想像すると、もはや卒倒しそうになった。私はベッドの端に立ちすくんだまま、そんな残酷な布団の動きを呆然と見つめていた。
しばらくすると、男がニヤニヤと笑いながら、「相当濡れてますね」と呟いた。そんな言葉に私は殺意を覚えた。このままここにいたら、本当にこの男を殴り兼ねないと思い、ソッとその場から離れようとすると、突然男は「ほら」と言いながら布団の端を摘み、そのまま一気に布団を剥いだ。
ビクンッと驚いた妻の顔が一瞬にして固まった。
ドロドロに濡れたローターが、ヴィィィィィンと唸ったまま白いシーツの上に放り投げられていた。
妻のパンティーはすでに太ももまでずり下げられ、まるで出産する時のように股を大きく開いていた。そしてその淫らに濡れ輝いた裂け目には、男の指が二本突き刺さり、それが蛇のようにクネクネと蠢きながら、くちゃくちゃと卑猥な音を奏でていた。

まるで、警察の死体安置所で妻の惨殺死体を見せられたようだった。
妻は明らかに男の指で感じていた。あれだけ好きだったローターを放り出し、見ず知らずの男の指に身をよじらせていた。
そんな妻の姿を呆然と見つめながら、裏切られた、裏切られた、裏切られた、と何度も呟く私は、ベッドの端で寂しく響いているそのローターがどこか自分に見えた。
作戦は大成功だった。ローターにより欲情してしまった妻は、嫌がりながらも他人男を受け入れ、そして確実に他人男に感じていた。
私は今までにない複雑な感情に包まれていた。怒りと悲しみに渦巻かれ、気が狂いそうなほどに嫉妬し、そして絶望に打ちひしがれていた。
しかし、そんな絶望の後には、必ず胸底からおどろおどろしい性欲が湧き上がってきた。それは、客のいない場末のスナックの奥のボックスで、豚のように太った醜いママのチーズ臭い蒸れた陰部に舌を這わすような、そんな破滅的な異常性欲によく似ていた。
そんな異常性欲に襲われた私は、他人棒でズボズボされている妻を見ながら自涜に耽っていた。
嫌悪と絶望と快楽に脳みそをぐちゃぐちゃにされた私は、この通常では考えられない特殊な愛欲の病魔に、既にどっぷりと侵されていたのだった。

(つづく)
《←目次》《11話へ→》
だから私は考えた。妻には単独男の事はギリギリまで内緒にしておき、いきなりホテルで登場させようと。そしてホテルのベッドで妻の興奮が最高潮に高まった時、いきなりサプライズ的に単独男を登場させようと企んだのだった。
その単独男は、四十後半の猿のような顔をした男だった。
事情を説明し、事前にラブホテルのクローゼットに隠れていて欲しいとお願いすると、彼はたちまち好奇の目を輝かせながら、「面白そうですね」と了承した。
何も知らない妻を、単独男が待ち伏せるラブホテルに連れて行った。部屋に入るなり早々とベッドに押し倒し、いきなりパンティーの上からローターを押し付けた。すると妻は、いつもと違う順序に、「どうしたの?」と警戒の色を浮かべ、素直に体を開かなかった。
いつもの順序では、まずは二人で風呂に入った。そこでたっぷりと尺八させ、妻の巨乳に精液をぶっかけた。それが、私たち夫婦が長年続けてきたセックスのスタートだった。
初発の精液をシャワーで洗い流すとベッドに移動し、すぐに二発目が開始された。二発目は、いつも決まって正常位で中出しした。その後、煙草一服のインターバルを挟んでから三発目に突入するのだが、そのインターバルの間に、そこで初めてローターが登場した。すでに疲れ果てている妻にローターで喜びを与え、妻の興奮が高まってきた時に、最後の三発目へと突入するのだった。

それがいつもの私たちのセックススタイルだった。ローターが登場してからというもの、余程の理由がない限り、いつも決まってこの順序だった。
しかしこの日は、突然ローターからスタートした。だから妻は戸惑い、大好きなローターを股間に押し付けられても、なかなか気分は高まらなかった。
しかしこれも計画の一つだった。私は、素の妻が他人によって開花されていく姿が見たいのだ。だから私の肉棒がまだ貫通していない状態で、他人に妻を差し出したかったのである。
「ヤだ……先にお風呂に入ろうよ……」
妻は必死に太ももを閉じながら、私の腕の中で小さく呟いた。
そんな妻の生暖かい息を耳元に感じるなり、途端に熱いものがムラッと沸き上り、同時に亀頭がズキンっとした。
シャワーを浴びていない妻の陰部。今から見ず知らずの男に、嗅がれ、舐められ、入れられるのだと思うと、息苦しくなるほどの凄まじい嫉妬と興奮が胸にムラムラと湧き上がってきた。
私は強引に妻の太ももをこじ開けた。そして震える声で、「……まだ何も刺激を与えていないクリトリスってのは敏感だろ……先にイカせてあげるよ……」と囁きながらクロッチにローターを滑らせた。
ローターの先でクリトリスを探した。グニョグニョするクロッチの裏側の中に一箇所だけコリッと硬くなっている部分を見つけ出し、そのスイッチにローターを力強く押し付けてやると、いきなり妻は「はぁん!」と大きく息を吐き、腰をピクン!と跳ね上げた。
瞬間で妻は欲情した。私に抱きつきながら卑猥にコキコキと腰を動かし、「ああん……ホントだ……いつもより感じる……」などと囁いては、みるみるクロッチを湿らせた。
この淫らな妻の声が、あのクローゼットの中に隠れている赤の他人に聞かれているのかと思うと、目眩を感じるほどの興奮に襲われた。
もう我慢できないと思った私は、頭をクラクラさせながら妻の耳元に囁いた。
「実は、ある男をここに呼んでいるんだ……」
妻は冗談だと思っているのか、子犬のように鼻をフン、フンと鳴らして悶えながら、そんな私の言葉をスルーした。
それでも私が、「本当なんだ……本当にいるんだ……今からベッドに呼んでもいいか……」と真顔で聞くと、妻は突然、その潤んだ大きな目でソッと私を見上げた。
妻はジッと私を見つめながら、ポッテリと膨らんだ下唇に真っ赤な舌をペロッと滑らせた。「その人……ここに呼んでどうするの?」と小さく呟くと、まるで私を挑発するかのように、ジーンズの中でズキズキと疼いているペニスを手の平でスリスリと摩り始めた。
「お前と……セックスさせるんだ……」
妻は、いつもの私の妄想劇だと思っているのか、冗談っぽく微笑みながら「他の男とセックスしてもいいの?」と囁いた。そしてジーンズのジッパーの中から熱り立った肉棒を摘み出すと、その白魚のような人差し指を、我慢汁が溢れる尿道にヌルヌルと滑らせた。
私は背筋をゾクゾクさせながら、「お前が他の男とヤってるところが見たいんだ……いいだろ……」と声を震わせた。すると妻は「いいわよ」と挑発的に微笑み、たじろぐ私を見つめながら肉棒を上下にシゴき始めた。そしてそのまま私の耳元にソッと唇を這わせると、明らかに欲情した声で「舐めさせて……」と囁いたのだった。
思わず私は震える指でジーンズのボタンを外した。それと同時にムクリと顔を上げた妻は、ハァハァと荒い息を吐きながらそれを突き出している私にニヤリと微笑んだ。そしてその卑猥な汁でテラテラと輝く亀頭をヌルリと口に含むと、テュパ、テュパと音を立てながらしゃぶり始めたのだった。

そんな妻は、明らかにいつもと違っていた。まるでこの後の展開を予期しているかのように乱れていた。
そんな妻の妖艶な姿に悶えながら、私は『いきなりローター』の威力の凄さを実感させられた。こんな妻なら五回は抜けると思った私は、今後のセックスの順序を改めるべきだと強く思った。
私は、ペニスをしゃぶる妻の乳肉を鷲掴みにした。そしてそれをグニグニと乱暴に揉みながら、もう片方の手でパンティーの中にローターを滑り込ませ、直接その敏感な部分にそれを押し付けてやった。
途端に妻は喘ぎ始めた。肉棒を咥えながら、ウグウグと苦しそうに悶えていた。そんなパンティーの中は、まるでペペローションを大量に垂らしたかのように濡れており、今までヴィィィィィンと響いていたローターの振動音がピチャピチャと卑猥な音に変わった。
機は熟していた。今なら妻はあの男を素直に受け入れるだろうと確信した。
私は男が隠れているクローゼットに振り向いた。既にクローゼットの扉は半分開かれ、その扉の隙間から全裸の男がジッと私を見ていた。
男の巨大な肉棒は、まるで龍が天に昇るかのように反り立っていた。亀頭の大きさ、竿の太さ、竿の長さ、すべて私のモノより遥かに勝っていた。今から妻はあんな凶暴なモノを入れられるのかと思うと、恐怖と共に激しい嫉妬に駆られ、それが複雑に混ざり合っては異常な性的興奮へと変わった。

私は、ぺちゃぺちゃとペニスをしゃぶっていた妻をソッとベッドに寝かせた。そしてパンティーの中でローターを響かせながら、できるだけ妻が驚かないよう、穏やかな口調で囁いた。
「ほら……見てごらん……あそこに男がいるよ……」
妻はローターで身悶えながら、私が指差す方向にチラッと視線を向けた。
半開きで潤んでいた妻の目がいきなりギョッと見開いた。そして「誰!」と短く叫びながら私にしがみつき、そのまま驚愕しながら凍りついた。
「大丈夫。心配するな、あの人は私がネットで見つけてきた単独さんだ」
「……た、単独さんって……」
妻は声を震わせながら、更に私にしがみついてきた。そう怯えている妻は、さっきの妖艶な妻よりも百倍エロティックだった。
「単独さんというのはね、私の代わりにお前とセックスしてくれる人のことだよ……だからお前は、今からあの人とセックスするんだ……」
そう髪を撫でながら優しく囁くと、妻は恐る恐る私の顔を見上げ、今にも泣き出しそうに目をうるうるさせながら「どうして……」と呟いた。
「お前が愛おしいからだよ……だからお前が他人に抱かれる姿が見たいんだ……」
「愛おしいのに、どうして私が他の人に抱かれるのを——」
「——それはわからない。この感情は自分でもわからない。何が何だかわからないけど、とにかくお前が他人に抱かれる姿が見たくて見たくて我慢できないんだ」
そう話している間に、男はスリスリと絨毯を鳴らしながらベッドの端にやってきた。「初めまして。田島と申します」と妻に優しく微笑みながらも、その凶暴に勃起したペニスはビクンビクンと波打っていた。
妻は慌てて掛け布団をひったくり、ガバッと音を立ててその中に潜り込んだ。
男は不安そうな顔で私を見つめながら、「大丈夫ですか?」と言った。
私はそんな男に「大丈夫です」と答えながら布団の中に手を入れた。
妻の柔らかい太ももに手を滑らせた。ピタッと閉じられていた太ももの隙間に一本一本指を差し込み、少しずつそこを開いていった。
半開きになった太ももにローターを滑り込ませ、ジトッと湿ったクロッチにそれを押し付けながらスイッチを入れた。
膨らんだ布団の中からヴィィィィィィィィィィンという振動音が響いた。
しばらくして、ソッと布団の隙間から中を覗くと、喉をヒクヒクさせながら必死に声を堪えている妻と目が合った。
「ソファーで見てるよ……」
そう呟くと、私は持っていたローターを静かに手放した。一瞬何か言いかけた妻だったが、しかしすぐに言葉を飲み込み、そのまま黙って瞳を閉じた。
そこで抵抗しないということは、妻がそれを受け入れたという事だった。私はそんな妻に、嬉しい反面、強烈なショックを受けた。私が布団から手を抜くのと入れ替わりに、男の手が布団の中に潜り込んだ。
それは、初めて私の目の前で、妻の体が他人に触れられる瞬間だった。布団の中がモゾモゾと蠢いていた。男の指が妻のどこを弄っているのか想像すると、もはや卒倒しそうになった。私はベッドの端に立ちすくんだまま、そんな残酷な布団の動きを呆然と見つめていた。
しばらくすると、男がニヤニヤと笑いながら、「相当濡れてますね」と呟いた。そんな言葉に私は殺意を覚えた。このままここにいたら、本当にこの男を殴り兼ねないと思い、ソッとその場から離れようとすると、突然男は「ほら」と言いながら布団の端を摘み、そのまま一気に布団を剥いだ。
ビクンッと驚いた妻の顔が一瞬にして固まった。
ドロドロに濡れたローターが、ヴィィィィィンと唸ったまま白いシーツの上に放り投げられていた。
妻のパンティーはすでに太ももまでずり下げられ、まるで出産する時のように股を大きく開いていた。そしてその淫らに濡れ輝いた裂け目には、男の指が二本突き刺さり、それが蛇のようにクネクネと蠢きながら、くちゃくちゃと卑猥な音を奏でていた。

まるで、警察の死体安置所で妻の惨殺死体を見せられたようだった。
妻は明らかに男の指で感じていた。あれだけ好きだったローターを放り出し、見ず知らずの男の指に身をよじらせていた。
そんな妻の姿を呆然と見つめながら、裏切られた、裏切られた、裏切られた、と何度も呟く私は、ベッドの端で寂しく響いているそのローターがどこか自分に見えた。
作戦は大成功だった。ローターにより欲情してしまった妻は、嫌がりながらも他人男を受け入れ、そして確実に他人男に感じていた。
私は今までにない複雑な感情に包まれていた。怒りと悲しみに渦巻かれ、気が狂いそうなほどに嫉妬し、そして絶望に打ちひしがれていた。
しかし、そんな絶望の後には、必ず胸底からおどろおどろしい性欲が湧き上がってきた。それは、客のいない場末のスナックの奥のボックスで、豚のように太った醜いママのチーズ臭い蒸れた陰部に舌を這わすような、そんな破滅的な異常性欲によく似ていた。
そんな異常性欲に襲われた私は、他人棒でズボズボされている妻を見ながら自涜に耽っていた。
嫌悪と絶望と快楽に脳みそをぐちゃぐちゃにされた私は、この通常では考えられない特殊な愛欲の病魔に、既にどっぷりと侵されていたのだった。

(つづく)
《←目次》《11話へ→》
吐泥(へろど)11
2013/06/13 Thu 00:01
新幹線の窓をぼんやりと眺めていると、シャカン! という音と共にいきなり窓の外が真っ黒になった。それはまるで、不意に誰かにテレビのスイッチを消されたかのようだった。
初めてのトンネルだった。車内には、シャカン、シャカン、シャカン、というリズミカルな音が響き、今まで何の役にも立っていなかった蛍光灯がそこで初めてその力を発揮した。
真っ黒な窓に、反対側の座席の女が映っていた。いつの間に飲んだのか、窓際に置かれたミニボトルのウィスキーは既に半分に減っていた。
すっかり出来上がってしまった女は、まるで早朝の歌舞伎町の歩道に投げ捨てられている泥酔者のようにぐったりと眠っていた。
(新潟で、いったい彼女に何があったというのだ……)
そう思いながら、乱れた花柄ワンピースから伸びる太ももに目をやった。
そのだらしなく緩んだ彼女の太ももをジロジロと見ていると、今まで悶々と思い出していた初めての寝取られの記憶とそれが、頭の中でパン生地をこねるように混じり合い、思わず私は既に硬くなっている股間をスリスリと摩ってしまっていた。
初めて妻が寝取られた時の、あの興奮が蘇ってきた私は、迷う事なくズボンのチャックを開けた。
ここで一発抜くというのは、実にスリリングで刺激的な事だった。いくら泥酔しているとはいえ、通路を挟んだすぐ真横の席には見ず知らずの女がいるのだ。女がいきなり目を覚まし、もしこれが見つかって騒がれでもしようものなら、その瞬間に私の人生はわずか三十年にして幕を閉じるのだ。
しかし、こんなチャンスは二度となかった。
乗客が三人しかいない新幹線。一人は遥か後方のドア前の席で、一人は同列の反対側の窓際。しかもそれはなかなか色っぽい女であり、まして泥酔して眠ってしまっているのだ。
こんなチャンスをみすみす逃す男は、ゲイかインポか尾木ママくらいだ。そんな事を思いながら私は、人生を賭けてそこに勃起した肉棒を突き出したのだった。

親指と人差し指で摘み、そのカチカチに固まった肉の棒を上下させた。
まるでマッサージ師に肩のツボをビンゴされた時のような快楽が太ももにジワジワと走り、思わず私は、あぁぁぁ……と小さく唸りながら両脚をピーンと伸ばした。
女はずっと同じ状態で寝ていた。女にペニスを向けてシコシコとシゴきながら、「ほら、見てごらん……こんなに大っきくなってるよ……」などと囁いていると、そのだらしなく緩んだ股に異常な執着が湧き始め、何としてでもあの中を盗撮したいと思った。
壁に掛けていたスーツの内ポケットからスマホを抜き取った。ひとまずペニスをズボンに戻し、窓際の席から通路側の席へと静かに移動した。
そっと通路を覗くと、ずらりと並んだ座席が地を這う蛇のようにくねくねと蠢いていた。誰もいないことを確認し、座席の肘掛に体を傾けると、そのまま通路に身を乗り出し、スマホを握った右手を恐る恐るそこに伸ばしてみた。
女の股には程遠かったが、とりあえず三枚ほど撮ってみた。もちろん特別アプリでシャッターの疑似音は消していたため完全に無音だ。
さっそく画像を確認してみると、斜めに傾きながらぐったりしている女の上半身が写っていた。大きな乳肉が腕に押し潰され、それが柔らかそうにくにゃっと歪んでいた。
ここから撮影するとなるとこれが限界だった。どれだけ身を乗り出して腕を伸ばしてみても、股間までは到底届かない距離だった。
(さすがに隣の席に移動するというのはマズイだろ……)
そう思いながら、ふと、あのバカな中国人観光客共がよく持ち歩いている『自撮り棒』があればと思った。いつもは、あれで写真を撮りまくっている中国人カップルを見る度に殺意を覚えていたが、今はあれが喉から手が出るほどに欲しかった。
とにかくもう一度チャレンジしてみようと思った。こんなチャンスは滅多になく、ここでそれを撮り損ねたら一生悔やむに違いないのだ。
再び肘掛に体を傾け、通路に身を乗り出した。スマホを掴んだ手を限界まで伸ばし、脇の下の筋肉が引きつりそうになるのを必死に堪えながら、女の下半身に向けてシャッターを押しまくった。
と、その時、突然、通路の奥から自動ドアが開くシャーッという音が響いた。「はっ!」と息を飲みながら振り返ると、そこには大きなワゴンを押した車内販売の女がいた。
その女と目が合った。私は慌てて体勢を元に戻した。しかし、通路向こうの座席に身を乗り出していた私の姿は既に目撃されているはずであり、今更慌てても遅かった。
あの車内販売員がここを通過すれば、当然この泥酔している女に気づくはずだ。となれば、他人の私がその座席に身を乗り出していた事に不審を抱き、さっそくそれを車掌に報告する事だろう。
私は、ガラガラと近づいてくるワゴンの音に怯えながら、今撮ったばかりの画像を急いで消去した。屈強な鉄道警察を従えた車掌が、「お客様、念のため携帯電話を確認させていただけないでしょうか」と、わざと穏やかな口調で微笑む顔が頭に浮かび、途端に私は金玉を縮み上がらせた。
これは非常にまずい事になった。なんとか誤魔化さなければ、と一人焦っていると、遂にそのワゴンが私と泥酔女の間にヌッと現れた。
ショートボブの若い女が、「お弁当いかがですか……」と独り言のように呟きながらチラッと私を見た。その田舎臭い顔とオレンジ色のエプロンが何故か採れたての静岡みかんを連想させ、私は咄嗟に、この田舎娘なら誤魔化せる、と確信した。
シートから身を起こした私は、泥酔女の座席に顔を向けていたミカン娘に「あのぅ……」と声をかけた。
「はい」と満面の笑顔で振り返ったミカン娘は意外に可愛かった。最近テレビのCMでよく見かける広瀬すずに何となく似ていた。
「そちらの女性なんですけど……相当お酒を飲んでらっしゃるようで、さっきから随分とえずいてばかりいるんですけど……」
わざと神妙な面持ちでそう言うと、ミカン娘はその言葉を知らないのか、「えずく?」と目を丸めながらその小さな顔を傾げた。
「ええ、さっきからね、オェ〜オェ〜ってえずいてばかりいるんですよ……心配になって何度か声をかけてるんですがね、何も反応しないんですよ……」
そこまで言うと『えずく』の意味がわかったのか、ミカン娘は、「そうなんですか」と驚きながら、その明るい顔に不安を浮かべた。そして慌ててワゴンのタイヤにロックをかけると、泥酔女の座席にソッと屈みながら、「お客様……」と声をかけたのだった。

まんまとミカン娘は騙された。これで私が泥酔女の座席に身を乗り出していた事は正当化された。
ミカン娘は何度か声をかけていたが、しかし泥酔女は「んんん……」と唸るだけで目を開けなかった。
私は、わざとらしく「大丈夫ですかね……」などと呟き、ミカン娘のまん丸な尻越しに泥酔女の座席を覗き込んだ。ミカン娘は恐る恐る泥酔女の肩に手を置き、「お客様……」と体を揺らした。ユサユサと肩を揺さぶられる事により、泥酔女の股は益々緩んだ。そして遂に、その乱れたスカートの中から真っ赤な布が顔を出し、それを確認した私は異様なる達成感に包まれたのだった。
それは、思いもよらぬ下品なパンティーだった。
最初この女を見た時は、ミッション系私立女子学園の音楽教師のようなエレガントな気品を感じた。だから下着も、きっとラグジュアリーな高級補正下着とか、やたらとレースの多い海外高級ブランドのランジェリーなんかだろうと予想していたのだが、しかし、今そこからチラリと見える真っ赤な下着には気品の欠片も感じられなかった。まさに、立川駅の裏のピンサロ嬢が穿いているような、実に悪趣味で破廉恥なパンティーだった。
しかし私は、そんな彼女に欲情していた。いや、そんな彼女だからこそ激しく欲情した。
この女は、見た目は気品漂うゴージャスな女だが、しかし中身は、三十分四千円で本番までヤらせてくれる立川のピンサロ嬢と同じなのだ。こんな女こそが真の淫乱女なのだ。こんな女に限って、昼間は気品漂う女を演じながらも、夜ともなればケダモノ共と激しく交じり合い、想像を絶する肉便器と化すのである。

そう勝手に決めつけながら泥酔女を見ていた私は、激しく湧き上がる異常性欲にクラクラと目眩を感じていた。
人は見かけによらない……。そう心の中で呟きながら、ズボンの中で熱り立っている肉棒をこっそり握り締めていると、ふと、すぐ目の前にミカン娘の丸い尻があることに気づいた。
(この見た目は清純そうな娘も……やはりあの女と同じように中身は……)
そう思いながら私はスマホを握った。そして泥酔女に気を取られているミカン娘のスカートの下にスマホをソッと忍ばせると、「大丈夫かな……」と心配するふりを装いながら、ミカン娘のスカートの中を撮りまくってやった。
そんな画面には彼女のイメージ通りの素朴な下着が映っていた。少々残念な反面、まだまだ日本は大丈夫だという、新橋の赤提灯で酔い痴れるおっさん臭い安心感を覚えた。

本人を目の前にしながら盗撮画像を見るというのはなかなかのスリルと興奮だった。この娘のスカートの中は今こうなっているんだと、彼女と私だけしか知らない秘密を眺めながらソッとミカン娘の横顔を見ていると、リスクを背負いながらもそれに人生を賭けている盗撮オタク達の気持ちが少しだけわかった気がした。
そんな事をしていると、不意に、「ごめんなさい……」と、しゃがれた声で呟く泥酔女の声が聞こえた。見ると、ミカン娘は、まるで救急隊のように泥酔女の顔を覗き込みながら、「大丈夫ですか、医務室にご案内しましょうか?」と聞いていた。
「いえ、大丈夫です……ちょっと飲みすぎただけですから……」
女はそう答えたが、しかしその意識は朦朧としているようだった。座席にぐったりと沈んだまま、乱れたスカートもそのままだった。
そして女は、「本当に大丈夫ですから、迷惑かけてすみません……」と、面倒臭そうに呟き、まるでミカン娘を追い払うかのように再び目を閉じた。
するとミカン娘は、「では、何かありましたらこちらのボタンを押してください」と、座席の肘掛の横にある赤いスイッチを教えた。そしてお節介にもその乱れたスカートを素早く元に戻し、せっかくの赤い布切れを隠してしまったのだった。
ミカン娘が去って行った後も、女はしばらく「んん……んん……」と唸っていた。女がそう唸る度に、私はケダモノ共に陵辱されている彼女の姿を想像し、悶々としていた。
しかしそんな女が突然ゆっくりと起き上がった。トイレに行こうとしているのか、まるでリハビリ患者のように座席の手摺りに掴まりながら通路に出ようとしたのだ。
思わず私が「大丈夫ですか?」と聞くと、女は恐縮した表情で「はい、大丈夫です、すみません」と小さく頭を下げ、そのままフラフラと通路を進み始めた。
私はソッと立ち上がり、不安定な足取りで通路を進んで行く女を見た。そんな無防備な女の背中を見ながら、女がトイレのドアを開けると同時に一緒にトイレに雪崩れ込む自分の姿を想像していた。
ぐったりする女を便座に座らせ、「大丈夫ですか……吐きそうですか……」などと介抱するふりをしながら服を脱がすのだ。何度も何度も小便していた陰部は相当汚れているはずだ。そこを犬のようにベロベロと舐めまわし、そこが唾液で充分に潤ったら、朦朧とする女の股を大きく広げ、「全部吐いちゃった方が楽になりますよ」などと囁きながら、そこに肉棒をずんずんとピストンするのだ。

そんな妄想に耽りながら、もしかしたら上手くいくかもしれないぞと、本気でそう思った。もし彼女が騒ぎ出して駅員が駆け付けてきたら、「吐きそう」という彼女をトイレに連れてきて介抱してやってただけだと主張すればいい。例え女が「乱暴された」と言い張っても、昼間っから泥酔しているバカ女の話など誰も信用しないだろう。それに、きっとあの真面目なミカン娘がこの状況を説明してくれるはずである。
そう考えていると、早く彼女の後を追わなければ間に合わなくなってしまうと焦ってみたが、しかし、元々そんな度胸が私にあるわけがなく、そんな焦りも鼻から妄想劇の演出に過ぎなかったのだった。
(つづく)
《←目次》《12話へ→》
初めてのトンネルだった。車内には、シャカン、シャカン、シャカン、というリズミカルな音が響き、今まで何の役にも立っていなかった蛍光灯がそこで初めてその力を発揮した。
真っ黒な窓に、反対側の座席の女が映っていた。いつの間に飲んだのか、窓際に置かれたミニボトルのウィスキーは既に半分に減っていた。
すっかり出来上がってしまった女は、まるで早朝の歌舞伎町の歩道に投げ捨てられている泥酔者のようにぐったりと眠っていた。
(新潟で、いったい彼女に何があったというのだ……)
そう思いながら、乱れた花柄ワンピースから伸びる太ももに目をやった。
そのだらしなく緩んだ彼女の太ももをジロジロと見ていると、今まで悶々と思い出していた初めての寝取られの記憶とそれが、頭の中でパン生地をこねるように混じり合い、思わず私は既に硬くなっている股間をスリスリと摩ってしまっていた。
初めて妻が寝取られた時の、あの興奮が蘇ってきた私は、迷う事なくズボンのチャックを開けた。
ここで一発抜くというのは、実にスリリングで刺激的な事だった。いくら泥酔しているとはいえ、通路を挟んだすぐ真横の席には見ず知らずの女がいるのだ。女がいきなり目を覚まし、もしこれが見つかって騒がれでもしようものなら、その瞬間に私の人生はわずか三十年にして幕を閉じるのだ。
しかし、こんなチャンスは二度となかった。
乗客が三人しかいない新幹線。一人は遥か後方のドア前の席で、一人は同列の反対側の窓際。しかもそれはなかなか色っぽい女であり、まして泥酔して眠ってしまっているのだ。
こんなチャンスをみすみす逃す男は、ゲイかインポか尾木ママくらいだ。そんな事を思いながら私は、人生を賭けてそこに勃起した肉棒を突き出したのだった。

親指と人差し指で摘み、そのカチカチに固まった肉の棒を上下させた。
まるでマッサージ師に肩のツボをビンゴされた時のような快楽が太ももにジワジワと走り、思わず私は、あぁぁぁ……と小さく唸りながら両脚をピーンと伸ばした。
女はずっと同じ状態で寝ていた。女にペニスを向けてシコシコとシゴきながら、「ほら、見てごらん……こんなに大っきくなってるよ……」などと囁いていると、そのだらしなく緩んだ股に異常な執着が湧き始め、何としてでもあの中を盗撮したいと思った。
壁に掛けていたスーツの内ポケットからスマホを抜き取った。ひとまずペニスをズボンに戻し、窓際の席から通路側の席へと静かに移動した。
そっと通路を覗くと、ずらりと並んだ座席が地を這う蛇のようにくねくねと蠢いていた。誰もいないことを確認し、座席の肘掛に体を傾けると、そのまま通路に身を乗り出し、スマホを握った右手を恐る恐るそこに伸ばしてみた。
女の股には程遠かったが、とりあえず三枚ほど撮ってみた。もちろん特別アプリでシャッターの疑似音は消していたため完全に無音だ。
さっそく画像を確認してみると、斜めに傾きながらぐったりしている女の上半身が写っていた。大きな乳肉が腕に押し潰され、それが柔らかそうにくにゃっと歪んでいた。
ここから撮影するとなるとこれが限界だった。どれだけ身を乗り出して腕を伸ばしてみても、股間までは到底届かない距離だった。
(さすがに隣の席に移動するというのはマズイだろ……)
そう思いながら、ふと、あのバカな中国人観光客共がよく持ち歩いている『自撮り棒』があればと思った。いつもは、あれで写真を撮りまくっている中国人カップルを見る度に殺意を覚えていたが、今はあれが喉から手が出るほどに欲しかった。
とにかくもう一度チャレンジしてみようと思った。こんなチャンスは滅多になく、ここでそれを撮り損ねたら一生悔やむに違いないのだ。
再び肘掛に体を傾け、通路に身を乗り出した。スマホを掴んだ手を限界まで伸ばし、脇の下の筋肉が引きつりそうになるのを必死に堪えながら、女の下半身に向けてシャッターを押しまくった。
と、その時、突然、通路の奥から自動ドアが開くシャーッという音が響いた。「はっ!」と息を飲みながら振り返ると、そこには大きなワゴンを押した車内販売の女がいた。
その女と目が合った。私は慌てて体勢を元に戻した。しかし、通路向こうの座席に身を乗り出していた私の姿は既に目撃されているはずであり、今更慌てても遅かった。
あの車内販売員がここを通過すれば、当然この泥酔している女に気づくはずだ。となれば、他人の私がその座席に身を乗り出していた事に不審を抱き、さっそくそれを車掌に報告する事だろう。
私は、ガラガラと近づいてくるワゴンの音に怯えながら、今撮ったばかりの画像を急いで消去した。屈強な鉄道警察を従えた車掌が、「お客様、念のため携帯電話を確認させていただけないでしょうか」と、わざと穏やかな口調で微笑む顔が頭に浮かび、途端に私は金玉を縮み上がらせた。
これは非常にまずい事になった。なんとか誤魔化さなければ、と一人焦っていると、遂にそのワゴンが私と泥酔女の間にヌッと現れた。
ショートボブの若い女が、「お弁当いかがですか……」と独り言のように呟きながらチラッと私を見た。その田舎臭い顔とオレンジ色のエプロンが何故か採れたての静岡みかんを連想させ、私は咄嗟に、この田舎娘なら誤魔化せる、と確信した。
シートから身を起こした私は、泥酔女の座席に顔を向けていたミカン娘に「あのぅ……」と声をかけた。
「はい」と満面の笑顔で振り返ったミカン娘は意外に可愛かった。最近テレビのCMでよく見かける広瀬すずに何となく似ていた。
「そちらの女性なんですけど……相当お酒を飲んでらっしゃるようで、さっきから随分とえずいてばかりいるんですけど……」
わざと神妙な面持ちでそう言うと、ミカン娘はその言葉を知らないのか、「えずく?」と目を丸めながらその小さな顔を傾げた。
「ええ、さっきからね、オェ〜オェ〜ってえずいてばかりいるんですよ……心配になって何度か声をかけてるんですがね、何も反応しないんですよ……」
そこまで言うと『えずく』の意味がわかったのか、ミカン娘は、「そうなんですか」と驚きながら、その明るい顔に不安を浮かべた。そして慌ててワゴンのタイヤにロックをかけると、泥酔女の座席にソッと屈みながら、「お客様……」と声をかけたのだった。

まんまとミカン娘は騙された。これで私が泥酔女の座席に身を乗り出していた事は正当化された。
ミカン娘は何度か声をかけていたが、しかし泥酔女は「んんん……」と唸るだけで目を開けなかった。
私は、わざとらしく「大丈夫ですかね……」などと呟き、ミカン娘のまん丸な尻越しに泥酔女の座席を覗き込んだ。ミカン娘は恐る恐る泥酔女の肩に手を置き、「お客様……」と体を揺らした。ユサユサと肩を揺さぶられる事により、泥酔女の股は益々緩んだ。そして遂に、その乱れたスカートの中から真っ赤な布が顔を出し、それを確認した私は異様なる達成感に包まれたのだった。
それは、思いもよらぬ下品なパンティーだった。
最初この女を見た時は、ミッション系私立女子学園の音楽教師のようなエレガントな気品を感じた。だから下着も、きっとラグジュアリーな高級補正下着とか、やたらとレースの多い海外高級ブランドのランジェリーなんかだろうと予想していたのだが、しかし、今そこからチラリと見える真っ赤な下着には気品の欠片も感じられなかった。まさに、立川駅の裏のピンサロ嬢が穿いているような、実に悪趣味で破廉恥なパンティーだった。
しかし私は、そんな彼女に欲情していた。いや、そんな彼女だからこそ激しく欲情した。
この女は、見た目は気品漂うゴージャスな女だが、しかし中身は、三十分四千円で本番までヤらせてくれる立川のピンサロ嬢と同じなのだ。こんな女こそが真の淫乱女なのだ。こんな女に限って、昼間は気品漂う女を演じながらも、夜ともなればケダモノ共と激しく交じり合い、想像を絶する肉便器と化すのである。

そう勝手に決めつけながら泥酔女を見ていた私は、激しく湧き上がる異常性欲にクラクラと目眩を感じていた。
人は見かけによらない……。そう心の中で呟きながら、ズボンの中で熱り立っている肉棒をこっそり握り締めていると、ふと、すぐ目の前にミカン娘の丸い尻があることに気づいた。
(この見た目は清純そうな娘も……やはりあの女と同じように中身は……)
そう思いながら私はスマホを握った。そして泥酔女に気を取られているミカン娘のスカートの下にスマホをソッと忍ばせると、「大丈夫かな……」と心配するふりを装いながら、ミカン娘のスカートの中を撮りまくってやった。
そんな画面には彼女のイメージ通りの素朴な下着が映っていた。少々残念な反面、まだまだ日本は大丈夫だという、新橋の赤提灯で酔い痴れるおっさん臭い安心感を覚えた。

本人を目の前にしながら盗撮画像を見るというのはなかなかのスリルと興奮だった。この娘のスカートの中は今こうなっているんだと、彼女と私だけしか知らない秘密を眺めながらソッとミカン娘の横顔を見ていると、リスクを背負いながらもそれに人生を賭けている盗撮オタク達の気持ちが少しだけわかった気がした。
そんな事をしていると、不意に、「ごめんなさい……」と、しゃがれた声で呟く泥酔女の声が聞こえた。見ると、ミカン娘は、まるで救急隊のように泥酔女の顔を覗き込みながら、「大丈夫ですか、医務室にご案内しましょうか?」と聞いていた。
「いえ、大丈夫です……ちょっと飲みすぎただけですから……」
女はそう答えたが、しかしその意識は朦朧としているようだった。座席にぐったりと沈んだまま、乱れたスカートもそのままだった。
そして女は、「本当に大丈夫ですから、迷惑かけてすみません……」と、面倒臭そうに呟き、まるでミカン娘を追い払うかのように再び目を閉じた。
するとミカン娘は、「では、何かありましたらこちらのボタンを押してください」と、座席の肘掛の横にある赤いスイッチを教えた。そしてお節介にもその乱れたスカートを素早く元に戻し、せっかくの赤い布切れを隠してしまったのだった。
ミカン娘が去って行った後も、女はしばらく「んん……んん……」と唸っていた。女がそう唸る度に、私はケダモノ共に陵辱されている彼女の姿を想像し、悶々としていた。
しかしそんな女が突然ゆっくりと起き上がった。トイレに行こうとしているのか、まるでリハビリ患者のように座席の手摺りに掴まりながら通路に出ようとしたのだ。
思わず私が「大丈夫ですか?」と聞くと、女は恐縮した表情で「はい、大丈夫です、すみません」と小さく頭を下げ、そのままフラフラと通路を進み始めた。
私はソッと立ち上がり、不安定な足取りで通路を進んで行く女を見た。そんな無防備な女の背中を見ながら、女がトイレのドアを開けると同時に一緒にトイレに雪崩れ込む自分の姿を想像していた。
ぐったりする女を便座に座らせ、「大丈夫ですか……吐きそうですか……」などと介抱するふりをしながら服を脱がすのだ。何度も何度も小便していた陰部は相当汚れているはずだ。そこを犬のようにベロベロと舐めまわし、そこが唾液で充分に潤ったら、朦朧とする女の股を大きく広げ、「全部吐いちゃった方が楽になりますよ」などと囁きながら、そこに肉棒をずんずんとピストンするのだ。

そんな妄想に耽りながら、もしかしたら上手くいくかもしれないぞと、本気でそう思った。もし彼女が騒ぎ出して駅員が駆け付けてきたら、「吐きそう」という彼女をトイレに連れてきて介抱してやってただけだと主張すればいい。例え女が「乱暴された」と言い張っても、昼間っから泥酔しているバカ女の話など誰も信用しないだろう。それに、きっとあの真面目なミカン娘がこの状況を説明してくれるはずである。
そう考えていると、早く彼女の後を追わなければ間に合わなくなってしまうと焦ってみたが、しかし、元々そんな度胸が私にあるわけがなく、そんな焦りも鼻から妄想劇の演出に過ぎなかったのだった。
(つづく)
《←目次》《12話へ→》
吐泥(へろど)12
2013/06/13 Thu 00:01
彼女が自動ドアを出て行くのを見届け、そのまま急いで座席に着いた。ペニスを引きずり出し、その妄想を続けながらシコシコと悶えた。やはり私にはレ◯プよりもセンズリの方がお似合いだった。
妄想の中で、泥酔女の巨大な尻にガンガンと腰を打ちつけていた。泥酔女はトイレの給水タンクにしがみつきながら獣のように喘ぎ、そのムチムチとした太ももに大量の小便をダラダラと垂らしていた。
そんな妄想に合わせて手首を動かしていると、早々とイキそうになった。
私は慌てて肉棒から手を離した。肉棒は、ビクン、ビクン、と激しく脈を打ち、今にも爆発しそうな状態だった。しかし私は、せっかくなら彼女の泥酔姿を盗み見しながらこっそり射精したいと思った。だから私は、それをビクンビクンとさせたまま、彼女が座席に戻ってくるのを待つことにしたのだった。
必死に射精を堪えながらソッと天井を見上げた。次々に胸に溢れてくる興奮の塊をフーッと吐き出していると、ふと女の座席の荷物棚にあるルイ・ヴィトンのボストンバッグが目に飛び込んできた。
それを目にした瞬間、新たなる欲望が湧き上がってきた。泥酔女の緩んだ股から顔を出していた下品なパンティーが鮮明に頭に浮かび、私は、(きっと使用済み下着があるはずだ!)と凄まじい興奮に駆られた。
さっそく私は、ヒクヒクと痙攣している一触即発の肉棒を、まるで爆発物処理班の如く慎重に扱いながらズボンの中に戻した。そして座席に隠れながら首だけをヌッと伸ばした私は、まるで巣穴から顔を出すミーアキャットのように車内を伺った。
ドア前の座席に座っている中年サラリーマンのハゲた頭部が見えた。寝ているのか雑誌を読んでいるのか、そのハゲ頭はピクリとも動かなかった。もちろん通路には誰もいなかった。ドアのガラスに目を凝らしても、そこに人の気配は感じられなかった。
いける、と確信した私は、まるでコソ泥のように腰を屈めながら素早く通路を横切った。女の座席から再びミーアキャットのように首を伸ばし、沈黙を続ける車内を慎重に伺いながら、頭上の荷物棚にゆっくりと手を伸ばした。
思った以上に軽いバッグだった。片手で簡単に棚から下ろすことができた。それを女の座席に置き、急いで金色のジッパーを開けると、いきなり大型のドライヤーが現れた。化粧ポーチ、ヘアースプレー、ヴィダルサスーンのトリートメントと続き、やっとその下に、Tシャツやタオルといった衣類が押し込められていた。
とりあえず、そのTシャツを鼻に押し付けた。ユニクロのTシャツとは違い、泡のように滑らかな肌触りをしていた。女はそれを寝巻きに使用していたのか、そこにはボディーソープらしき花の香りが染み込んでいた。
そんなTシャツの脇の下をザラザラと舐めながら、綺麗に折り畳まれたタオルをペロリと捲った。その下にはクルンっと丸められたパンティーが二つ転がっていた。素早くそれを摘み上げ、テラテラと滑るそのサテン生地に鼻を押し付けてみたが、当然ながらそれは未使用であり、そこからは微かな洗濯洗剤の香りしか漂ってこなかった。
(こんなモノは松っちゃんが出演していないダウンタウンDXくらい価値のないモノだ)
そう呟きながらそれをバッグの中に落とした。
それはバッグの黒い底をコロコロと転がった。そこは既に底であり、もはやそれ以上の品は見当たらなかった。
しかし私は余裕だった。なぜなら私は知っていたからだ。旅行中の女は、使用済み下着だけを別に保管する癖があるという事を、私は毎年の社員旅行時の経験により知り得ていたのだ。
隠しても無駄だ……。そう呟きながら更にバッグの中を漁ると、案の定、バッグの右端のポケットに、ローソンのビニール袋が押し込められていた。それをシャリシャリと引きずり出し、緩い結び目を素早くスルスルと解くと、袋の奥には、クシャクシャに丸まったレース生地の物体がボテッと横たわっていたのだった。
素早くそれを袋から抜き取り、ひとまずポケットの中に押し込んだ。
もちろんこれは窃盗罪という立派な犯罪だった。が、しかし、私は余裕だった。なぜなら彼女がそれを盗まれている事に気づくのは、少なくとも家に帰ってからであり、その頃には訴えようにも訴えようがないからである。それを私は、毎年の社員旅行時の経験により知り得ていた。だから私は、堂々とそれを頂戴したのだった。
バッグの中身を元通りにし、急いでバッグを荷物棚に戻した。再びミーアキャットのように車内を伺い、誰にも見られていない事を確認すると、素早く腰を屈めて通路を横切った。
自分の座席に戻ると、さっそくポケットの中から例のブツを取り出した。
それは、手の平の中にすっぽりと収まるほど小さかった。レースのザラザラ感を指に感じながら恐る恐るそれを広げてみると、案の定それは両サイドが紐になった、いわゆる紐パンだった。
全体的に薄いピンクのそれは、正面のフロント部分だけがレースで、尻部分は布のフルバックだった。あの真っ赤な下品なパンティーと比べれば至って普通の下着だったが、しかしそこに漂う卑猥度は、今まで私が社員旅行時に見てきたモノを遥かに超えていた。
その卑猥の原因は、そこら中にくっ付いている毛玉や、プツプツと出ている縫い目のほつれ、そしてゴムの微妙な伸び具合だった。
過去、社員旅行において、数々の女子社員たちの使用済み下着を物色してきた私にとって、この所謂『履き古した下着』は、まさに『お宝』と言えた。私の性癖の範囲では、例えどれだけセクシーなランジェリーであろうと、わざと卑猥にデザインされた大人のおもちゃ屋の穴あきパンティーであろうと、この『履き古した下着』に勝る卑猥下着はなかった。この、何年間も履き続けてボロボロになった自然なフォルムこそが、私にとっては『キングオブ使用済み下着』なのであった。
そんな下着に激しく欲情していた私は、いよいよその核心に迫るべくクロッチの裏側をペロリと捲ってみた。さすがキングオブ使用済み下着だけはあった。そのシミもまた、『ベスト・オブ・シミ』と呼ぶに相応しい最高の汚れだった。

オナニーを目的とした下着のシミというのは、それなりに控えめでなければならなかった。もちろんそれは各個人それぞれの好みに分かれ、一概に全てのマニアたちがそうだとは限らないが、少なくとも私はそうだった。汚れは『多からず少からず』、匂いは『強からず弱からず』、そして味は『濃からず薄からず』。私の場合、シミはそんな塩梅のものでなければならなかったのだった。
最高の下着を手に入れた私は、さっそくその控えめなクロッチをクンクンと嗅いでみた。
薄っすらと甘い香水の香りが漂う中に、所々饐えた匂いが混じっていた。それは、駅の公衆便所の小便器に漂う下品な刺激臭によく似ており、その匂いの原因は、拭き損じた小便の残り汁が乾いたものだと分析できた。
使用済み下着のニオイの中には、恥垢そのものの強烈なイカ臭や、ドリアやチーズといったオリモノ系のモワモワした臭いなど色々あるが、私はこの小便がパリパリに乾いた饐えた臭いが一番好きだった。この臭いは、性器そのものを浮かび上がらせるだけでなく、飛び散る尿までも想像させてくれる、そんな躍動感溢れる臭いなのだ。

大好きな小便臭にクラクラと目眩を感じながら、続いて私はそこに舌を伸ばし始めた。
そのカピカピに乾いた白いシミは、最初は砂のようにザラザラしていたが、しかしゆっくりゆっくり丹念に舌先を動かしていくと、カピカピに乾いたシミは次第にネトネトし始め、オリモノ本来の粘りに戻った。
あの女の陰部から、このヌルヌルとした卑猥な汁が滲み出ていたのだと思いながらペロペロした。不意に女の股の裏に顔を押し付け、そのドロドロに濡れた裂け目を舐めまくる自分の姿が頭に浮かんだ。そして女は、あの気品ある顔を淫乱に歪め、狂ったように喘ぎながら悶えていたのだった。

もう我慢できないと、慌ててズボンからペニスを引きずり出そうとすると、突然背後から自動ドアの開く音が聞こえてきた。
外しかけていたズボンのボタンを再び元に戻した。ソッと通路を覗いてみると、女がこちらに向かってくるのが見えた。女は相当酔いが回っているようだった。その足取りは今にも倒れそうなくらいフラフラしていた。
女は座席に着くなり、髪をバサっと垂らしてクタッと項垂れた。そして黒いワンピースの腹を小刻みに動かしながらスースーと寝息を立て始めた。
秒睡だった。あれだけ酔ってれば……と思いながら、再びズボンのボタンに指をかけた。そして大量の我慢汁を垂れ流しながらギチギチに勃起している肉棒を堂々とそこに引きずり出すと、それを眠った女に見せつけるかのようにして、根元から亀頭の先まで激しく上下にシゴいたのだった。

見ず知らずの女が眠るすぐ横で、その女の下着のニオイを嗅ぎながらオナニーをした。肉体的な快楽だけでなく、このスリリングなシチュエーションに激しい興奮を覚えていた私は、不意に川端康成の小説『眠れる美女』を思い出し、あの作家もとんでもない変態だと改めて思った。
汚れたクロッチに亀頭を当てると、眠る女をソッと見つめた。ネトネトになったオリモノを尿道に擦り付けながら、四つん這いにさせた女の割れ目の表面に亀頭をヌルヌルと滑らせているシーンを想像をした。

(入れて欲しいか……この硬い肉棒を、お前のそのドロドロに濡れたオマンコにヌプッと入れて欲しいか……)
そう呟きながら、我慢汁でヌルヌルになったクロッチを亀頭に被せた。そしてペニス全体を下着で包むと、(ほら……入っちゃったよ……ズッポリと突き刺さってるよ)などと呟き、半開きの目でハァハァと悶えながらそのシーンを頭に思い浮かべた。

肉々しい女の尻に激しく腰が打ち付けられては、黒光りした肉棒が出たり入ったりと繰り返している結合シーンが浮かんだ。それはまるでエロいgifのように、頭の中で何度も何度もリピートしていた。
下着に包んだ肉棒をゴシゴシとシゴきながら悶えていた私は、このままここに中出ししてしまおうか、それとも精液で汚さないまま持ち帰り、家に帰ってからもう一度楽しもうか、と、悩んでいた。
そんな二者択一に迫られながらゴシゴシしていると、不意に女が「んんん……」と唸りながら寝返りを打った。
女は私の座席に体を向けながら横向きになった。頬に乱れる髪。半開きの唇。そして、ぐにゃっと歪んだ大きな胸と、だらしなく緩んだ股。それらを真正面から見る事が出来るようになると、たちまち私の悩みは消え、このまま女の痴態を眺めながら、こいつの下着の中に中出してやろうと決まった。
女はスースーと寝息を立てながらも、時折「んんん……」と唸っていた。その度に私はひやっとし、手首の動きを止めていた。
唸る女を見ながら、恐らく小便がしたいのだろうと思った。勝手にそう思いながら、そこで女が大股を開き、車内に小便を噴き出すシーンを思い浮かべた。

見ないでください……見ないでください……と、今にも泣き出しそうな表情でそう言いながらも、私にそれを見せつけてくる露出狂のマゾ女。
そんなシーンを想像しながら下着をかぶせたペニスをシゴいていた私は、ふと、妻にもそんな露出をさせてみたいと思った。
そう思った瞬間、太ももの内側にゾクゾクとした痺れが走り、ピーンっと伸ばした両足が自然にスリスリと擦れあった。
(そうだ、妻に露出をさせよう)
そんな、京都の観光キャッチコピーのような言葉が頭に浮かぶと同時に、私の尿道から精液がビュッと飛んだ。
あああああああああ、と頭の中で叫びながら、下着に包んだペニスをゴシゴシとシゴきまくった。射精で朦朧とする意識の中、妻が見ず知らずの男に陰部を剥き出している姿が浮かんでは消えた。
(露出だけなら妻も嫌がらないだろう……だから最初は露出だけをさせておき、それが慣れてきたら、徐々にサウナに誘導し……)
そんな事を考えているうちにも精液は女のクロッチに容赦なくドクドクと放出された。それは次第に下着から溢れ出しては、まるで白蛇のように陰毛の中へと滑り込んで行った。
肉棒から下着を慎重に剥がし、それを素早く三つに折り畳んだ。下着の中には精液がたっぷりと包まれており、それはずっしりと重みを増していた。
いつの間にか越後湯沢を過ぎ、気がつくともうすぐ高崎だった。
まだ生暖かいそれを右手に持ったまま窓の外を見ていた私は、早く女がトイレに行かないかとそればかりを待ちわびていた。
もちろんそれは、その下着をそのまま女のバッグの中に戻すためだった。
(つづく)
《←目次》《13話へ→》
妄想の中で、泥酔女の巨大な尻にガンガンと腰を打ちつけていた。泥酔女はトイレの給水タンクにしがみつきながら獣のように喘ぎ、そのムチムチとした太ももに大量の小便をダラダラと垂らしていた。
そんな妄想に合わせて手首を動かしていると、早々とイキそうになった。
私は慌てて肉棒から手を離した。肉棒は、ビクン、ビクン、と激しく脈を打ち、今にも爆発しそうな状態だった。しかし私は、せっかくなら彼女の泥酔姿を盗み見しながらこっそり射精したいと思った。だから私は、それをビクンビクンとさせたまま、彼女が座席に戻ってくるのを待つことにしたのだった。
必死に射精を堪えながらソッと天井を見上げた。次々に胸に溢れてくる興奮の塊をフーッと吐き出していると、ふと女の座席の荷物棚にあるルイ・ヴィトンのボストンバッグが目に飛び込んできた。
それを目にした瞬間、新たなる欲望が湧き上がってきた。泥酔女の緩んだ股から顔を出していた下品なパンティーが鮮明に頭に浮かび、私は、(きっと使用済み下着があるはずだ!)と凄まじい興奮に駆られた。
さっそく私は、ヒクヒクと痙攣している一触即発の肉棒を、まるで爆発物処理班の如く慎重に扱いながらズボンの中に戻した。そして座席に隠れながら首だけをヌッと伸ばした私は、まるで巣穴から顔を出すミーアキャットのように車内を伺った。
ドア前の座席に座っている中年サラリーマンのハゲた頭部が見えた。寝ているのか雑誌を読んでいるのか、そのハゲ頭はピクリとも動かなかった。もちろん通路には誰もいなかった。ドアのガラスに目を凝らしても、そこに人の気配は感じられなかった。
いける、と確信した私は、まるでコソ泥のように腰を屈めながら素早く通路を横切った。女の座席から再びミーアキャットのように首を伸ばし、沈黙を続ける車内を慎重に伺いながら、頭上の荷物棚にゆっくりと手を伸ばした。
思った以上に軽いバッグだった。片手で簡単に棚から下ろすことができた。それを女の座席に置き、急いで金色のジッパーを開けると、いきなり大型のドライヤーが現れた。化粧ポーチ、ヘアースプレー、ヴィダルサスーンのトリートメントと続き、やっとその下に、Tシャツやタオルといった衣類が押し込められていた。
とりあえず、そのTシャツを鼻に押し付けた。ユニクロのTシャツとは違い、泡のように滑らかな肌触りをしていた。女はそれを寝巻きに使用していたのか、そこにはボディーソープらしき花の香りが染み込んでいた。
そんなTシャツの脇の下をザラザラと舐めながら、綺麗に折り畳まれたタオルをペロリと捲った。その下にはクルンっと丸められたパンティーが二つ転がっていた。素早くそれを摘み上げ、テラテラと滑るそのサテン生地に鼻を押し付けてみたが、当然ながらそれは未使用であり、そこからは微かな洗濯洗剤の香りしか漂ってこなかった。
(こんなモノは松っちゃんが出演していないダウンタウンDXくらい価値のないモノだ)
そう呟きながらそれをバッグの中に落とした。
それはバッグの黒い底をコロコロと転がった。そこは既に底であり、もはやそれ以上の品は見当たらなかった。
しかし私は余裕だった。なぜなら私は知っていたからだ。旅行中の女は、使用済み下着だけを別に保管する癖があるという事を、私は毎年の社員旅行時の経験により知り得ていたのだ。
隠しても無駄だ……。そう呟きながら更にバッグの中を漁ると、案の定、バッグの右端のポケットに、ローソンのビニール袋が押し込められていた。それをシャリシャリと引きずり出し、緩い結び目を素早くスルスルと解くと、袋の奥には、クシャクシャに丸まったレース生地の物体がボテッと横たわっていたのだった。
素早くそれを袋から抜き取り、ひとまずポケットの中に押し込んだ。
もちろんこれは窃盗罪という立派な犯罪だった。が、しかし、私は余裕だった。なぜなら彼女がそれを盗まれている事に気づくのは、少なくとも家に帰ってからであり、その頃には訴えようにも訴えようがないからである。それを私は、毎年の社員旅行時の経験により知り得ていた。だから私は、堂々とそれを頂戴したのだった。
バッグの中身を元通りにし、急いでバッグを荷物棚に戻した。再びミーアキャットのように車内を伺い、誰にも見られていない事を確認すると、素早く腰を屈めて通路を横切った。
自分の座席に戻ると、さっそくポケットの中から例のブツを取り出した。
それは、手の平の中にすっぽりと収まるほど小さかった。レースのザラザラ感を指に感じながら恐る恐るそれを広げてみると、案の定それは両サイドが紐になった、いわゆる紐パンだった。
全体的に薄いピンクのそれは、正面のフロント部分だけがレースで、尻部分は布のフルバックだった。あの真っ赤な下品なパンティーと比べれば至って普通の下着だったが、しかしそこに漂う卑猥度は、今まで私が社員旅行時に見てきたモノを遥かに超えていた。
その卑猥の原因は、そこら中にくっ付いている毛玉や、プツプツと出ている縫い目のほつれ、そしてゴムの微妙な伸び具合だった。
過去、社員旅行において、数々の女子社員たちの使用済み下着を物色してきた私にとって、この所謂『履き古した下着』は、まさに『お宝』と言えた。私の性癖の範囲では、例えどれだけセクシーなランジェリーであろうと、わざと卑猥にデザインされた大人のおもちゃ屋の穴あきパンティーであろうと、この『履き古した下着』に勝る卑猥下着はなかった。この、何年間も履き続けてボロボロになった自然なフォルムこそが、私にとっては『キングオブ使用済み下着』なのであった。
そんな下着に激しく欲情していた私は、いよいよその核心に迫るべくクロッチの裏側をペロリと捲ってみた。さすがキングオブ使用済み下着だけはあった。そのシミもまた、『ベスト・オブ・シミ』と呼ぶに相応しい最高の汚れだった。

オナニーを目的とした下着のシミというのは、それなりに控えめでなければならなかった。もちろんそれは各個人それぞれの好みに分かれ、一概に全てのマニアたちがそうだとは限らないが、少なくとも私はそうだった。汚れは『多からず少からず』、匂いは『強からず弱からず』、そして味は『濃からず薄からず』。私の場合、シミはそんな塩梅のものでなければならなかったのだった。
最高の下着を手に入れた私は、さっそくその控えめなクロッチをクンクンと嗅いでみた。
薄っすらと甘い香水の香りが漂う中に、所々饐えた匂いが混じっていた。それは、駅の公衆便所の小便器に漂う下品な刺激臭によく似ており、その匂いの原因は、拭き損じた小便の残り汁が乾いたものだと分析できた。
使用済み下着のニオイの中には、恥垢そのものの強烈なイカ臭や、ドリアやチーズといったオリモノ系のモワモワした臭いなど色々あるが、私はこの小便がパリパリに乾いた饐えた臭いが一番好きだった。この臭いは、性器そのものを浮かび上がらせるだけでなく、飛び散る尿までも想像させてくれる、そんな躍動感溢れる臭いなのだ。

大好きな小便臭にクラクラと目眩を感じながら、続いて私はそこに舌を伸ばし始めた。
そのカピカピに乾いた白いシミは、最初は砂のようにザラザラしていたが、しかしゆっくりゆっくり丹念に舌先を動かしていくと、カピカピに乾いたシミは次第にネトネトし始め、オリモノ本来の粘りに戻った。
あの女の陰部から、このヌルヌルとした卑猥な汁が滲み出ていたのだと思いながらペロペロした。不意に女の股の裏に顔を押し付け、そのドロドロに濡れた裂け目を舐めまくる自分の姿が頭に浮かんだ。そして女は、あの気品ある顔を淫乱に歪め、狂ったように喘ぎながら悶えていたのだった。

もう我慢できないと、慌ててズボンからペニスを引きずり出そうとすると、突然背後から自動ドアの開く音が聞こえてきた。
外しかけていたズボンのボタンを再び元に戻した。ソッと通路を覗いてみると、女がこちらに向かってくるのが見えた。女は相当酔いが回っているようだった。その足取りは今にも倒れそうなくらいフラフラしていた。
女は座席に着くなり、髪をバサっと垂らしてクタッと項垂れた。そして黒いワンピースの腹を小刻みに動かしながらスースーと寝息を立て始めた。
秒睡だった。あれだけ酔ってれば……と思いながら、再びズボンのボタンに指をかけた。そして大量の我慢汁を垂れ流しながらギチギチに勃起している肉棒を堂々とそこに引きずり出すと、それを眠った女に見せつけるかのようにして、根元から亀頭の先まで激しく上下にシゴいたのだった。

見ず知らずの女が眠るすぐ横で、その女の下着のニオイを嗅ぎながらオナニーをした。肉体的な快楽だけでなく、このスリリングなシチュエーションに激しい興奮を覚えていた私は、不意に川端康成の小説『眠れる美女』を思い出し、あの作家もとんでもない変態だと改めて思った。
汚れたクロッチに亀頭を当てると、眠る女をソッと見つめた。ネトネトになったオリモノを尿道に擦り付けながら、四つん這いにさせた女の割れ目の表面に亀頭をヌルヌルと滑らせているシーンを想像をした。

(入れて欲しいか……この硬い肉棒を、お前のそのドロドロに濡れたオマンコにヌプッと入れて欲しいか……)
そう呟きながら、我慢汁でヌルヌルになったクロッチを亀頭に被せた。そしてペニス全体を下着で包むと、(ほら……入っちゃったよ……ズッポリと突き刺さってるよ)などと呟き、半開きの目でハァハァと悶えながらそのシーンを頭に思い浮かべた。

肉々しい女の尻に激しく腰が打ち付けられては、黒光りした肉棒が出たり入ったりと繰り返している結合シーンが浮かんだ。それはまるでエロいgifのように、頭の中で何度も何度もリピートしていた。
下着に包んだ肉棒をゴシゴシとシゴきながら悶えていた私は、このままここに中出ししてしまおうか、それとも精液で汚さないまま持ち帰り、家に帰ってからもう一度楽しもうか、と、悩んでいた。
そんな二者択一に迫られながらゴシゴシしていると、不意に女が「んんん……」と唸りながら寝返りを打った。
女は私の座席に体を向けながら横向きになった。頬に乱れる髪。半開きの唇。そして、ぐにゃっと歪んだ大きな胸と、だらしなく緩んだ股。それらを真正面から見る事が出来るようになると、たちまち私の悩みは消え、このまま女の痴態を眺めながら、こいつの下着の中に中出してやろうと決まった。
女はスースーと寝息を立てながらも、時折「んんん……」と唸っていた。その度に私はひやっとし、手首の動きを止めていた。
唸る女を見ながら、恐らく小便がしたいのだろうと思った。勝手にそう思いながら、そこで女が大股を開き、車内に小便を噴き出すシーンを思い浮かべた。

見ないでください……見ないでください……と、今にも泣き出しそうな表情でそう言いながらも、私にそれを見せつけてくる露出狂のマゾ女。
そんなシーンを想像しながら下着をかぶせたペニスをシゴいていた私は、ふと、妻にもそんな露出をさせてみたいと思った。
そう思った瞬間、太ももの内側にゾクゾクとした痺れが走り、ピーンっと伸ばした両足が自然にスリスリと擦れあった。
(そうだ、妻に露出をさせよう)
そんな、京都の観光キャッチコピーのような言葉が頭に浮かぶと同時に、私の尿道から精液がビュッと飛んだ。
あああああああああ、と頭の中で叫びながら、下着に包んだペニスをゴシゴシとシゴきまくった。射精で朦朧とする意識の中、妻が見ず知らずの男に陰部を剥き出している姿が浮かんでは消えた。
(露出だけなら妻も嫌がらないだろう……だから最初は露出だけをさせておき、それが慣れてきたら、徐々にサウナに誘導し……)
そんな事を考えているうちにも精液は女のクロッチに容赦なくドクドクと放出された。それは次第に下着から溢れ出しては、まるで白蛇のように陰毛の中へと滑り込んで行った。
肉棒から下着を慎重に剥がし、それを素早く三つに折り畳んだ。下着の中には精液がたっぷりと包まれており、それはずっしりと重みを増していた。
いつの間にか越後湯沢を過ぎ、気がつくともうすぐ高崎だった。
まだ生暖かいそれを右手に持ったまま窓の外を見ていた私は、早く女がトイレに行かないかとそればかりを待ちわびていた。
もちろんそれは、その下着をそのまま女のバッグの中に戻すためだった。
(つづく)
《←目次》《13話へ→》
吐泥(へろど)13
2013/06/13 Thu 00:01
二日後、再び私は上越新幹線の中にいた。妻と二人で並んで座りながら、走り去る窓の外をぼんやりと眺めていた。例の計画が実行されるのは、いよいよ今夜だった。しかし私は妻を説得するどころか、そのイベントすら妻に告げることができなかった。だから妻は何も知らなかった。前日の晩、いきなり私は、「ちょっとした契約上の手違いがあってね、明日また新潟に行かなくちゃならないんだ」と嘘をつき、そして「お前も一緒にどうだい。せっかくの休みなんだし、たまには日本海の美味しい魚でも食べに行こうじゃないか」と提案した。妻は乗り気ではなかったが、翌日、渋る妻を私は強引に連れ出した。だから妻は、例の計画を何も知らされないまま、新幹線に乗せられたのだった。
越後湯沢に近づくにつれ、窓の景色がみるみると変わってきた。最初はあまり乗り気じゃなかった妻だったが、しかし、広大な大自然が窓の外に広がり始めると、急に旅行気分が出てきたのか、妻は「新潟に着いたらまずはどこのお店に行こっか」などと浮き浮きし始め、さっそくスマホで『食べログ』などを開き始めた。
越後湯沢駅に到着すると、ホームにはスーツを着たサラリーマンの集団が待ち受けていた。そこで何かの会合でもあったのか、全員同じ形の茶封筒を手にしながらぞろぞろと自由席に乗り込んできた。ガラガラだった車内が一気に人で溢れた。それまで快適だった車内には、安サラリーマン特有のタバコ臭と汗臭と加齢臭がムンムンと充満し、そこらじゅうから、「係長」や「ファンド」や「運営事業」といった言葉が聞こえてきてた。
新幹線が走り出すと、『食べログ』を見ていた妻が、「急に騒がしくなったね」とポツリと呟いた。
「うん。この前、経済新聞に、新潟県が越後湯沢の再開発に乗り出すって記事が書いてあったから、きっとその関係の役所の人たちじゃないのかな……」
そうボソッと答えると、妻はもはやそんな事はどうでもいいかのように、「うわぁ〜この海鮮丼おいしそう〜」と大きな目を餃子のように歪め、それを私に見せようとしてきた。窓に寄りかかっていた私は、「どれどれ」と言いながら体を起こした。そしてスマホを覗きながらも必要以上に寄り添い、妻の髪から漂うリンスの香りを胸深く吸い込んだ。
あと小一時間で終点の新潟だった。そろそろ実行に移らなければならないと焦っていた。計画では、大宮あたりから車内露出を始め、高崎でローターを渡してオナニーをさせ、そして越後湯沢でしゃぶらせるという順序だった。しかしまだ何も実行していなかった。ぐずぐずしているうちに越後湯沢に到着してしまった。しかも大勢の乗客が乗り込んでくるという予想外な展開に見舞われ、私の計画は出だしから躓いてしまっていた。
最初からこの調子では、例の計画など実行できるわけがなかった。焦った私は、今からでも遅くはないと妻に寄り添った。すると勘の良い妻は何かを感じ取ったのか、そんな私から素早く身を引きながら「ほら、こんなに甘エビが入ってるよ」とスマホの画面を私に向け、防御の体制に入った。
それでも私が、「本当だね……これでこの値段はお値打ちだよ……」と更に迫って行くと、妻は引いた目で私を見ながら、「どうしたの?」と首を傾げた。私は素早く妻の肩に頬を摺り寄せた。そしてタプタプの胸を下から持ち上げるように撫でながら、「我慢できなくなってきた……」と呟いた。妻は呆れたように顔を顰めながら、小さな溜息を漏らした。
妻は私の異常性欲を知っていた。それが所構わずいきなり発情するという事も、妻は嫌という程にわかっていた。妻は周囲を見回すと、まるで小便を我慢している子供を宥めるような口調で、「こんな所じゃ無理よ、夜まで我慢して」と小声で囁いた。
「わかってるよ……だからオッパイだけでいいから見せてくれよ……」
そう呟きながら、その柔らかい乳肉をゆっくりと一揉みすると、そのまま上着のボタンを外そうとした。するとその時、いきなり通路に人が現れた。それはスーツを着た四十後半の中年サラリーマンで、私たちの座席の前で足を止めた。私は慌てて妻の胸から手を離した。しかし男の視線は確実にその瞬間を捕らえており、爪楊枝のような細い目が一瞬ギョッと見開いた。
男は、「ここ、空いてますか?」と訝しげに私たちを見下ろしながらそう聞いた。「あっ、どうぞ」と妻は言いながら通路側の座席に置いていたハンドバッグを自分の尻と肘掛の隙間に入れた。「すみません……」と言いながら、男は妻の隣の座席に静かに腰を下ろした。やはりその男も皆と同じ茶封筒を持っていた。
その封筒の帯には長岡市役所とプリントされていた。
(やっぱり役人か……)
私はそう呟きながら窓の外に目をやった。この予想外の邪魔者の出現で計画は完全に頓挫だと、山だらけの風景を見ながら私は小さな溜め息を吐いたのだった。
トンネルを過ぎると、またすぐトンネルだった。その度に景色が遮られる私は、スマホの画面に走る妻の爪の音を聞きながらウトウトしていた。
ふと気づくと、いつの間にか車内は静まり返っていた。今まで騒ついていた役人共の声は消え、所々から微かな寝息が聞こえてきた。
ソッと体を起こして正面の電光掲示板を見ると、『次は長岡』と表示されていた。ついつい眠ってしまっていた私は、もはや猶予がない事に激しい焦りを感じた。
隣りを見ると妻も寝ていた。その隣りのサラリーマンも薄くなった頭をこちらにぐたっと傾けながら寝息を立てていた。みんな寝てしまったのか……と思いながら再びシートに凭れようとすると、ふと、寝ている妻の股が微かに緩んでいる事に気づいた。
出かける直前、ジーンズを履いていた妻を強引に着替えさせた。露出させるためにはスカートでなければダメだと思い、ミニのタイトスカートに履き替えさせていたのだが、それが今、なぜか不自然に太ももまで捲れ上がっているのだ。

(もしかしてこいつら……)と、いきなり私は強烈な嫉妬を覚えた。私が寝ている隙に、二人は何かいやらしいことをしていたのではないかと不審を抱いたのだ。
もちろん、そんな事が現実にあるわけがなかった。そんな事を本気で思ってはいなかった。が、しかし、敢えて私はそう思う事にした。この新潟までの残り少ない時間内に計画を遂行させるために、そんな非現実的な妄想で異常性欲を奮い立たせようとしたのだ。
スースーと寝息を立てている妻の顔をソッと覗き込んだ。既に勃起している股間を握りしめながら、妻の寝顔に(どうせ嘘寝してるんだろ?)と呟いた。そのまま体を傾け、緩んだスカートの中を覗き込んだ。(私が寝ている間に、その隣りの薄汚い親父にアソコを触らせていたんだろ……)と、恥骨に張り付くピンクのクロッチを見つめた。そして生足の膝っ小僧にソッと唇を押し付けると、(オマンコを弄られながら……そいつのペニスをしゃぶっていたんだな……)と、その光景を頭に思い描いた。

ピンクのクロッチには二本の縦皺が浮かんでいた。その皺から妻の陰部を想像し、あの何とも言えない甘い香りと、そこにペニスがヌルヌルと滑る感触を思い出しながら、私は妻の膝っ小僧をチロッと舐めた。その瞬間、妻の目がパッと開いた。妻は別段慌てる事もなく、呆れた顔で「イヤだって……」と小声で呟くと、ゆっくりと股を閉じながら捲れていたスカートを元に戻した。
「どうしてスカートが捲れてるんだよ……隣りの男にオマンコを触らせていたのか……」
そう言いながら妻の頬に顔を寄せると、妻はおもむろに「クスッ」と鼻で笑った。そんな妻は慣れていた。異常性欲者の私の狂った妄想には慣れており、私がどんなに突拍子も無いことを言い出しても、もはや驚くことはなかった。
「な、やっぱりそうなんだろ、隣の親父にオマンコを弄られながらチンポをしゃぶってたんだろ……」
そう妻の耳元に囁きながら私はスカートの中に手を入れた。妻は慌てて私の手首を押さえると、小声で「隣の人が起きるからやめて」と言いながら眉を顰めた。
「嘘をつくな。濡れてるのがバレるからだろ」
「濡れてるわけ無いでしょ」
「じゃあパンツだけでも確認させろ」
一度言い出すとそれをするまで諦めないという私の性格を、妻はよく知っていた。だから妻は面倒臭そうに溜息を吐き、「パンツだけだよ」と、私の手首を握っていた手を緩めた。
私は静かにスカートを捲り上げた。不特定多数の親父たちの寝息が響く車内に、真っ白な太ももが現れた。その異様な卑猥感にムラッと欲情した私は、太ももに押し潰された股の隙間に手を潜り込ませた。寝ていたせいか、そこは明け方の布団の中のように暖かかった。妻は隣で眠る親父を、緊張した表情でチラチラと見ながら、「早くして」と顔を歪めた。
むちむちの太ももを五本の指で押し開き、その奥にあるクロッチに指を伸ばした。ザラザラとしたクロッチを指で撫で、その中に潜む『具』の感触を確かめるかのようにグニグニと撫で回した。もちろんそこは濡れていなかった。
「もういいでしょ」
そう言いながら妻が私の手を押さえた。それでも私は強引に指を動かした。クロッチの奥に潜む穴が愛おしくて堪らず、ムチッと盛り上がった肉の割れ目を指腹で擦りまくったのだった。

「もうイヤ」と、隣の親父を気にしながら囁く妻に、私は「見られてるぞ」と呟いた。
「隣の親父は起きてるよ……さっきからソッと薄眼を開けて、お前のここを見てるよ……」
そんな私のデタラメに妻は動揺しなかった。黙ったまま項垂れ、蠢く私の手を押さえながらギュッと目を閉じていた。
(なぜ妻は動揺しないのか?)
そう思いながら、項垂れる妻の横顔を見つめた。そして、妻が動揺しない理由は、妻自身に隣の親父に見られたいという露出願望があるからに違いないなどと勝手に決めつけ、激しい嫉妬と激しい興奮の渦に巻かれた。
「本当は見られたいんだろ……その隣にいる薄汚い親父に、いやらしいオマンコを見て欲しいんだろ……」
私は、まるで暗示をかけるかのようにして、そう何度も妻の耳元に囁いた。
妻は変態なのだ。表向きは普通の主婦を装っているが、その内面にはドロドロとした変態性欲が潜んでいるのだ。その証拠に、この女は夫の私が見ている前で他人男の肉棒を咥えたことがあるのだ。そしてそれをズボズボと入れられ、夫の私の目前で絶頂に達したという前科があるのだ。
そんな妻が、こんなプレイが嫌いなわけがなかった。私はそう確信しながら、曝け出されたピンクのパンティーの上からクリトリスを見つけ出し、そこを集中的に攻めた。
最初はクニャクニャしていた感触がすぐにコリコリと変わった。全体的にグニャグニャしている中で、そこだけがポツンっと硬かった。それを人差し指でクリクリと捏ねながら、「親父が見てるぞ……クリトリスが転がされるのをジッと見てるぞ……」と、耳元に何度も囁いた。すると、それまで私の手を必死に掴んでいた妻の指の力は抜け、今までぴっちりと閉じていた股が、みるみると緩んで行った。
(こいつ……感じているな……)
そう確信した私は、伸ばした舌先で妻の耳の穴をチロチロと舐めた。妻は全く抵抗しなかった。それどころか、項垂れた口元からハァハァと猥褻な息を吐き出していた。
いけるぞ、と思った私は、クリトリスを捏ねていた指をじわじわと移動させた。そしてクロッチの端にソッと指先を引っ掛けると、「せっかくだから……みんなに見てもらおう……」と囁き、ピタリと陰部に張り付いていたピンクのクロッチを横にずらしたのだった。

(つづく)
《←目次》《14話へ→》
越後湯沢に近づくにつれ、窓の景色がみるみると変わってきた。最初はあまり乗り気じゃなかった妻だったが、しかし、広大な大自然が窓の外に広がり始めると、急に旅行気分が出てきたのか、妻は「新潟に着いたらまずはどこのお店に行こっか」などと浮き浮きし始め、さっそくスマホで『食べログ』などを開き始めた。
越後湯沢駅に到着すると、ホームにはスーツを着たサラリーマンの集団が待ち受けていた。そこで何かの会合でもあったのか、全員同じ形の茶封筒を手にしながらぞろぞろと自由席に乗り込んできた。ガラガラだった車内が一気に人で溢れた。それまで快適だった車内には、安サラリーマン特有のタバコ臭と汗臭と加齢臭がムンムンと充満し、そこらじゅうから、「係長」や「ファンド」や「運営事業」といった言葉が聞こえてきてた。
新幹線が走り出すと、『食べログ』を見ていた妻が、「急に騒がしくなったね」とポツリと呟いた。
「うん。この前、経済新聞に、新潟県が越後湯沢の再開発に乗り出すって記事が書いてあったから、きっとその関係の役所の人たちじゃないのかな……」
そうボソッと答えると、妻はもはやそんな事はどうでもいいかのように、「うわぁ〜この海鮮丼おいしそう〜」と大きな目を餃子のように歪め、それを私に見せようとしてきた。窓に寄りかかっていた私は、「どれどれ」と言いながら体を起こした。そしてスマホを覗きながらも必要以上に寄り添い、妻の髪から漂うリンスの香りを胸深く吸い込んだ。
あと小一時間で終点の新潟だった。そろそろ実行に移らなければならないと焦っていた。計画では、大宮あたりから車内露出を始め、高崎でローターを渡してオナニーをさせ、そして越後湯沢でしゃぶらせるという順序だった。しかしまだ何も実行していなかった。ぐずぐずしているうちに越後湯沢に到着してしまった。しかも大勢の乗客が乗り込んでくるという予想外な展開に見舞われ、私の計画は出だしから躓いてしまっていた。
最初からこの調子では、例の計画など実行できるわけがなかった。焦った私は、今からでも遅くはないと妻に寄り添った。すると勘の良い妻は何かを感じ取ったのか、そんな私から素早く身を引きながら「ほら、こんなに甘エビが入ってるよ」とスマホの画面を私に向け、防御の体制に入った。
それでも私が、「本当だね……これでこの値段はお値打ちだよ……」と更に迫って行くと、妻は引いた目で私を見ながら、「どうしたの?」と首を傾げた。私は素早く妻の肩に頬を摺り寄せた。そしてタプタプの胸を下から持ち上げるように撫でながら、「我慢できなくなってきた……」と呟いた。妻は呆れたように顔を顰めながら、小さな溜息を漏らした。
妻は私の異常性欲を知っていた。それが所構わずいきなり発情するという事も、妻は嫌という程にわかっていた。妻は周囲を見回すと、まるで小便を我慢している子供を宥めるような口調で、「こんな所じゃ無理よ、夜まで我慢して」と小声で囁いた。
「わかってるよ……だからオッパイだけでいいから見せてくれよ……」
そう呟きながら、その柔らかい乳肉をゆっくりと一揉みすると、そのまま上着のボタンを外そうとした。するとその時、いきなり通路に人が現れた。それはスーツを着た四十後半の中年サラリーマンで、私たちの座席の前で足を止めた。私は慌てて妻の胸から手を離した。しかし男の視線は確実にその瞬間を捕らえており、爪楊枝のような細い目が一瞬ギョッと見開いた。
男は、「ここ、空いてますか?」と訝しげに私たちを見下ろしながらそう聞いた。「あっ、どうぞ」と妻は言いながら通路側の座席に置いていたハンドバッグを自分の尻と肘掛の隙間に入れた。「すみません……」と言いながら、男は妻の隣の座席に静かに腰を下ろした。やはりその男も皆と同じ茶封筒を持っていた。
その封筒の帯には長岡市役所とプリントされていた。
(やっぱり役人か……)
私はそう呟きながら窓の外に目をやった。この予想外の邪魔者の出現で計画は完全に頓挫だと、山だらけの風景を見ながら私は小さな溜め息を吐いたのだった。
トンネルを過ぎると、またすぐトンネルだった。その度に景色が遮られる私は、スマホの画面に走る妻の爪の音を聞きながらウトウトしていた。
ふと気づくと、いつの間にか車内は静まり返っていた。今まで騒ついていた役人共の声は消え、所々から微かな寝息が聞こえてきた。
ソッと体を起こして正面の電光掲示板を見ると、『次は長岡』と表示されていた。ついつい眠ってしまっていた私は、もはや猶予がない事に激しい焦りを感じた。
隣りを見ると妻も寝ていた。その隣りのサラリーマンも薄くなった頭をこちらにぐたっと傾けながら寝息を立てていた。みんな寝てしまったのか……と思いながら再びシートに凭れようとすると、ふと、寝ている妻の股が微かに緩んでいる事に気づいた。
出かける直前、ジーンズを履いていた妻を強引に着替えさせた。露出させるためにはスカートでなければダメだと思い、ミニのタイトスカートに履き替えさせていたのだが、それが今、なぜか不自然に太ももまで捲れ上がっているのだ。

(もしかしてこいつら……)と、いきなり私は強烈な嫉妬を覚えた。私が寝ている隙に、二人は何かいやらしいことをしていたのではないかと不審を抱いたのだ。
もちろん、そんな事が現実にあるわけがなかった。そんな事を本気で思ってはいなかった。が、しかし、敢えて私はそう思う事にした。この新潟までの残り少ない時間内に計画を遂行させるために、そんな非現実的な妄想で異常性欲を奮い立たせようとしたのだ。
スースーと寝息を立てている妻の顔をソッと覗き込んだ。既に勃起している股間を握りしめながら、妻の寝顔に(どうせ嘘寝してるんだろ?)と呟いた。そのまま体を傾け、緩んだスカートの中を覗き込んだ。(私が寝ている間に、その隣りの薄汚い親父にアソコを触らせていたんだろ……)と、恥骨に張り付くピンクのクロッチを見つめた。そして生足の膝っ小僧にソッと唇を押し付けると、(オマンコを弄られながら……そいつのペニスをしゃぶっていたんだな……)と、その光景を頭に思い描いた。

ピンクのクロッチには二本の縦皺が浮かんでいた。その皺から妻の陰部を想像し、あの何とも言えない甘い香りと、そこにペニスがヌルヌルと滑る感触を思い出しながら、私は妻の膝っ小僧をチロッと舐めた。その瞬間、妻の目がパッと開いた。妻は別段慌てる事もなく、呆れた顔で「イヤだって……」と小声で呟くと、ゆっくりと股を閉じながら捲れていたスカートを元に戻した。
「どうしてスカートが捲れてるんだよ……隣りの男にオマンコを触らせていたのか……」
そう言いながら妻の頬に顔を寄せると、妻はおもむろに「クスッ」と鼻で笑った。そんな妻は慣れていた。異常性欲者の私の狂った妄想には慣れており、私がどんなに突拍子も無いことを言い出しても、もはや驚くことはなかった。
「な、やっぱりそうなんだろ、隣の親父にオマンコを弄られながらチンポをしゃぶってたんだろ……」
そう妻の耳元に囁きながら私はスカートの中に手を入れた。妻は慌てて私の手首を押さえると、小声で「隣の人が起きるからやめて」と言いながら眉を顰めた。
「嘘をつくな。濡れてるのがバレるからだろ」
「濡れてるわけ無いでしょ」
「じゃあパンツだけでも確認させろ」
一度言い出すとそれをするまで諦めないという私の性格を、妻はよく知っていた。だから妻は面倒臭そうに溜息を吐き、「パンツだけだよ」と、私の手首を握っていた手を緩めた。
私は静かにスカートを捲り上げた。不特定多数の親父たちの寝息が響く車内に、真っ白な太ももが現れた。その異様な卑猥感にムラッと欲情した私は、太ももに押し潰された股の隙間に手を潜り込ませた。寝ていたせいか、そこは明け方の布団の中のように暖かかった。妻は隣で眠る親父を、緊張した表情でチラチラと見ながら、「早くして」と顔を歪めた。
むちむちの太ももを五本の指で押し開き、その奥にあるクロッチに指を伸ばした。ザラザラとしたクロッチを指で撫で、その中に潜む『具』の感触を確かめるかのようにグニグニと撫で回した。もちろんそこは濡れていなかった。
「もういいでしょ」
そう言いながら妻が私の手を押さえた。それでも私は強引に指を動かした。クロッチの奥に潜む穴が愛おしくて堪らず、ムチッと盛り上がった肉の割れ目を指腹で擦りまくったのだった。

「もうイヤ」と、隣の親父を気にしながら囁く妻に、私は「見られてるぞ」と呟いた。
「隣の親父は起きてるよ……さっきからソッと薄眼を開けて、お前のここを見てるよ……」
そんな私のデタラメに妻は動揺しなかった。黙ったまま項垂れ、蠢く私の手を押さえながらギュッと目を閉じていた。
(なぜ妻は動揺しないのか?)
そう思いながら、項垂れる妻の横顔を見つめた。そして、妻が動揺しない理由は、妻自身に隣の親父に見られたいという露出願望があるからに違いないなどと勝手に決めつけ、激しい嫉妬と激しい興奮の渦に巻かれた。
「本当は見られたいんだろ……その隣にいる薄汚い親父に、いやらしいオマンコを見て欲しいんだろ……」
私は、まるで暗示をかけるかのようにして、そう何度も妻の耳元に囁いた。
妻は変態なのだ。表向きは普通の主婦を装っているが、その内面にはドロドロとした変態性欲が潜んでいるのだ。その証拠に、この女は夫の私が見ている前で他人男の肉棒を咥えたことがあるのだ。そしてそれをズボズボと入れられ、夫の私の目前で絶頂に達したという前科があるのだ。
そんな妻が、こんなプレイが嫌いなわけがなかった。私はそう確信しながら、曝け出されたピンクのパンティーの上からクリトリスを見つけ出し、そこを集中的に攻めた。
最初はクニャクニャしていた感触がすぐにコリコリと変わった。全体的にグニャグニャしている中で、そこだけがポツンっと硬かった。それを人差し指でクリクリと捏ねながら、「親父が見てるぞ……クリトリスが転がされるのをジッと見てるぞ……」と、耳元に何度も囁いた。すると、それまで私の手を必死に掴んでいた妻の指の力は抜け、今までぴっちりと閉じていた股が、みるみると緩んで行った。
(こいつ……感じているな……)
そう確信した私は、伸ばした舌先で妻の耳の穴をチロチロと舐めた。妻は全く抵抗しなかった。それどころか、項垂れた口元からハァハァと猥褻な息を吐き出していた。
いけるぞ、と思った私は、クリトリスを捏ねていた指をじわじわと移動させた。そしてクロッチの端にソッと指先を引っ掛けると、「せっかくだから……みんなに見てもらおう……」と囁き、ピタリと陰部に張り付いていたピンクのクロッチを横にずらしたのだった。

(つづく)
《←目次》《14話へ→》
吐泥(へろど)14
2013/06/13 Thu 00:01
既にそこはグジョグジョに濡れていた。剥がされたクロッチの裏は、まるでシロップを垂らしたかのようにヌルヌルと濡れ輝いていた。
妻は抵抗しなかった。その股さえも閉じようとはしなかった。
「すごく濡れてるじゃないか……ほら、こうするとピチャピチャといやらしい音がするよ……」
そう囁きながら、透明の汁がとろとろと溢れる割れ目に指を滑らせると、妻はすかさず私の胸に顔を押し付けながら、「ダメ……声が出ちゃう……」と苦しそうに唸った。
チャンスだった。このタイミングで計画通りにローターを渡してやれば、妻は完全に堕ちるはずだった。が、しかし、今のこの状況は想定外だった。計画では車内がガラガラのはずだったが、現実では満席だった。しかもすぐ隣には人がいた。この状況でローターを使えば、たちまちその振動音が車内に響き、全員に気づかれてしまうのだ。
さすがにそれはまずかった。これがパチンコ店や深夜映画館といった場所で、相手がそれなりの汚れ者達だったら良かったが、しかしここは新幹線の中であり、そして相手は役人だ。ここでローターなど使えば、車掌はおろか警察にまで通報されかねないのだ。
せっかくのチャンスを逃してしまった私は、ソッと奥歯で歯ぎしりをした。しかしここで諦めるわけにはいかなかった。例の計画実行まであと十数時間しかないのだ。その間に妻を性奴隷と化しておかなければ、男性用サウナに連れ込むことなど絶対に不可能なのだ。
焦った私は、ヌルヌルと指を動かしながらクリトリスの皮を剥いた。小豆大のクリトリスがヌルッと顔を出した。痛々しく濡れ輝くそれは、今にもはち切れんばかりに勃起していた。
毎晩ローターを使用しているせいか、妻のクリトリスは異様なほどに大きく、そして極度に敏感だった。そこはまさに妻の弱点だった。セックスの最中に、その巨大化したクリトリスを指でコリコリと転がしてやると、たちまち妻は全身を痙攣させ、大量の小便をダラダラと漏らした。
そんな妻の弱点に指を押し付けてやった。ローターのように指先をブルブルと震わせてやると、いきなり妻は私の腕にガッとしがみ付きながら、苦しそうに「もうヤメて」と哀願し始めた。
しかし妻は、そう言いながらもだらしなく緩んだその股を閉じようとはしなかった。それどころか腰をコキコキと動かしては、陰毛がモサモサする恥骨を突き出したりしていた。
それは、もっと激しく弄って欲しいという意思表示に違いなかった。セックスの時、小便を漏らす直前に見せるいつもの動きと同じなのだ。
ここで小便を漏らされてはまずいと思った私は慌てて指を移動させた。そのすぐ下でぽっかりと口を開いている穴に指を滑り込ませ、指先から根元までネトネトとピストンさせた。

穴の中は焼けるように熱かった。奥からドロドロの液体が次から次へと溢れ出し、それが指をピストンさせる度にピタピタと卑猥な音を奏でていた。
ひとまず弱点を逃れた妻は、私の胸でハァハァと息を整えながら、「本当に無理。もうやめて」と呟いた。
そんな妻の表情にはマゾが浮かんでいた。それは、激しい羞恥と屈辱に与えながらも密かに悦びを感じている変態マゾヒストの顔だった。
その表情に見覚えがあった。あの日、見ず知らずの単独男に犯されながら感じていた妻が、後ろめたそうに私をチラチラと見ていたあの時と同じ顔だった。
(この調子でいけば、妻が性奴隷と化すのは時間の問題だ)
そう確信した私は、穴の中からヌルッと指を抜き取った。指に絡みつく白濁の汁を、項垂れている妻に見せつけてやった。そしてそれをおもむろにクンクンと嗅いでやると、妻は羞恥に眉を顰めながら「いやっ」と、私のその手を引っ張ろうとした。それを素早く避けながら、私は指に絡みつくその三十路女の甘酸っぱい匂いに目眩を感じていた。そして思わず「ハァ……」と興奮の息を一つ漏らすと、その指を下品にしゃぶり始め、羞恥に駆られる妻の耳元に顔を寄せては、「おっぱいを出しなさい……」と命令した。
妻は困惑していた。しかし今の妻には、その困惑は性的興奮の何物でもないことを私は知っていた。
やはり、あの時もそうだった。単独男に、「上に乗ってください」と言われた時も、妻は今と同じ困惑の表情を浮かべていた。
結局妻は、仰向けになった単独男の腰に跨った。大きく股を開き、自ら他人棒を握り、それを自分の穴に向けながらゆっくりと腰を下ろした。そして、それを驚愕しながら見ている私に向かって「見ないで」と声を震わせると、その困惑した表情のまま激しく腰を振り始めたのだった。

妻は、あの時と同じ表情を浮かべていた。私はその困惑した表情にゾクゾクしながら、妻のTシャツの大きく開いた首元にソッと手を差し込んだ。唾液と愛液でネトネトに濡れた指で乳首をコロコロと刺激しながら、もう片方の手を妻の背中に回すと、Tシャツの上から素早くブラジャーのホックを外した。
黙ったまま項垂れている妻の肩からブラジャーの紐を下ろすと、淡いグレーのTシャツの胸に、刺激されて痛々しく勃起した乳首がポツンっと浮かび上がった。それをTシャツの上からコロコロと転がしながら、「早く出しなさい」と囁くと、妻は観念したのかソッと辺りを確認しながら上着の首元に指を引っかけた。そしてゆっくりと首元のゴムを伸ばし、そこに真っ白な肉の塊を曝け出すと、自らの意思で乳首を指で弄り、その柔らかい乳肉をフルフルと揺らしたのだった。

それは一瞬の出来事だった。妻はすぐにその乳肉を元に戻してしまったが、しかしそんな妻の様子は明らかに異常な性欲に取り憑かれていた。激しい羞恥に駆られながらも、欲望を抑えきれずに自ら乳首を指で転がしたその姿は、もはや完全に変態奴隷と化していた。
さすが私の妻だった。さすが毎晩のように変態行為を繰り返されている異常性欲者の妻だけあって飲み込みが早かった。この調子なら計画は成功するだろうと安心した私は、長岡に到着する前に妻をトイレに連れ込み、滅茶苦茶に犯しまくりたい衝動に駆られた。ムチムチの尻に激しく腰を打ち続け、そのドロドロとした卑猥な穴の中に大量の精液を注入したくて堪らなくなった。

当然、妻もそれを望んでいるはずだった。妻もこのシチュエーションで肉棒を入れられたいと思っているに違いなく、今トイレに誘えば涎を垂らして付いてくるだろう。が、しかし、今はそれはできなかった。なぜなら私は、サウナに潜入するまでの間、例え妻が激しくそれを求めてきても、例え私がどれだけ興奮したとしても、絶対に挿入しないと決めていたからだった。
それは、ある意味一つの調教だった。妻の性欲を極限まで高め、肉棒に飢えた変態メス豚にさせるための手段だった。私は考えたのだ。ホテルに到着するまでの間、妻にはあらゆる性的刺激を与え、常に欲情した状態にさせておこうと。そしてホテルに着いていよいよセックスが始まると思った矢先、再びお預けを喰らわしてやろうと。
これは、毎晩嫌という程に肉棒で掻き回されている妻にとっては、気が狂いそうなほどの『焦らし』になるに違いなかった。その焦らしによって妻は、いつもはうんざりしていた肉棒が、この日は欲しくて欲しくて堪らなくなり、結果、その欲望は誰のモノでもいいから入れて欲しいというレベルまで高まるだろうと私は睨んでいたのだ。
そこまで行けばあとは簡単だった。そうなれば、あの獣共が潜むサウナに妻を連れて行くのは赤子の手をひねるようなものだった。
だから私は我慢した。今、トイレに妻を連れ込み、そのグジョグジョに濡れたオマンコにペニスをピストンさせたら最高に気持ちいいだろうと身震いしながらも、必死にそれを我慢していた。
きっと妻も同じ気持ちのはずだった。いや、同じ気持ちでなければ困るのだ。だから私はそれを確認すべく、妻の手をギュッと握りしめた。そしてソッと妻の耳元に唇を這わせながら、「トイレに行こうか……」と囁いてみると、案の定、妻は小さくコクンっと頷いた。
そんな妻の羞恥に満ちた仕草に強烈な興奮を覚えた私は、急いでズボンのチャックを開け、そこから熱り立った肉棒を摘み出した。そしてそれを妻に握らせると、その場でシコシコと手コキさせながら妻の上着を捲り、タプタプの乳肉を露出させた。

妻は隣で眠る男を気にしながらもペニスを上下にシゴいていた。それを握りながら人差し指だけ伸ばし、その指を我慢汁がダラダラと溢れる尿道に這わせてはヌルヌルさせた。
そして妻は、そうしながらも、もう片方の手をソッと自分のスカートの中に忍び込ませ、そこをモゾモゾと弄り始めた。私はゆっくりと体を起こし、前屈みになってスカートの中を覗いた。ピンクのクロッチの上部で妻の細い指が円を描くように動いていた。そこは明らかにクリトリスであり、指はそこばかりを集中的に攻めていた。
私は、スカートの中を覗きながら「もっと股を開いて見せてみろ」と命令口調で言った。妻は半開きの目で私を見下ろしながら、そろりそろりと股を肩幅ほど開いた。
「パンツを捲れ。直接オマンコをヌルヌルしろ……」
声を震わせながらそう言うと、妻は私のペニスからソッと手を離し、大きく開いた股に両手を入れた。左手の指でクロッチをずらし、右手の指で大陰唇をクパッと押し広げた。そして真っ赤に濡れ輝いた粘膜に指をヌルヌルと滑らせながら、そこに卑猥な糸を引かせたのだった。

「トイレでヤって欲しいか?」
私はそう妻に聞きながら再びシートに凭れた。妻は下唇を噛み締めながらコクンっと頷いた。私は、少しでもソッチ系に導いておこうと、「そんなにチンポが欲しいなら、ここで隣の男に入れて貰うかい?」と囁いた。妻はイヤイヤっと小さく首を振ると、「これがいいの……」と再び私のペニスを強く握りしめ、そのまま根元まで激しくシゴき始めた。
凄まじい快楽が太ももから脳天へと走った。思わず射精しそうになったが、それでも必死に堪えながら、今夜のためにもできるだけ妻をソッチのモードにしておきたく、「いいじゃないか……たまには違うチンポも味わってみろよ……あの時みたいに……」と声を震わせた。
が、しかし、妻をその気にさせるつもりで言ったその言葉は、逆に私に襲いかかってきた。さっそく私の頭に、隣の男の膝の上に乗った妻が、大きく股を開きながら腰を振っている姿が浮かんだ。そしてあの時のように、「見ないで……見ないで……」と半泣きになりながらも、自らの意思でその太くて逞しい他人棒を穴の中にヌポヌポさせている妻の姿が鮮明に浮かび上がってきた。

嫉妬と興奮が入り乱れ、ゾクゾクとした絶望に胸を締め付けられた。
本当にそうさせたい。本当に他人棒で乱れる妻を見てみたい。そう思いながらそんな妄想を頭の中に繰り広げていると、脳に溜まっていたドロドロとしたマグマが下半身へと逆流し、自然に私の両足がピーンっと伸びた。
「イクよ……」と、そう唸りながら私は妻の唇に舌を伸ばした。妻は迷うことなく私の舌を口内に受け入れると更に手の動きを早めた。妻の生暖かい舌が口内でヌルヌルと蠢き、私の敏感な脳をくすぐった。朦朧とする意識の中、『まもなく長岡、長岡です。上越線、越後中里行きは——』というアナウンスが聞こえ、それと同時に、激しく上下される肉棒の先から、ビュッ、ビュッ、と精液が発射された。
妻は素早くその精液をもう片方の手の平で受け止めた。その射精の勢いに興奮したのか、妻はいきなり私の口内にハァハァと荒い息を吐きながら猛然と舌を絡めてきた。
激しいキスをしながらも、ふと横目で見ると、妻は精液が溜まったその手を再びスカートの中に忍び込ませた。そしてそれを自身の陰部に塗りたくり、そこにペチャペチャと下品な音を立てた。
(この女は……やっぱり変態だ……)と、そうゾクゾクしながら必死に舌を絡めてくる妻の顔を見ていると、不意に妻はビクンっと腰を跳ね上げ、私の口内で「ウグウグ」と唸り始めた。(イッたな……)と思った私は、激しく絡み付いてくる妻の腕から逃れ、素早く前屈みになった。そしてその瞬間を見てやろうと思い妻の股間を覗いた。
いつの間にかパンティーは太ももへとずり下げられていた。モサモサと生え茂る陰毛の中でベロリと口を開く膣には、私の精液がべっとりと付着していた。それは卑猥を通り越して不気味だった。真っ赤な裂け目からドロリと垂れる精液は、まるでドブ川の排水溝から垂れ流されたへどろのようだった。

(つづく)
《←目次》《15話へ→》
妻は抵抗しなかった。その股さえも閉じようとはしなかった。
「すごく濡れてるじゃないか……ほら、こうするとピチャピチャといやらしい音がするよ……」
そう囁きながら、透明の汁がとろとろと溢れる割れ目に指を滑らせると、妻はすかさず私の胸に顔を押し付けながら、「ダメ……声が出ちゃう……」と苦しそうに唸った。
チャンスだった。このタイミングで計画通りにローターを渡してやれば、妻は完全に堕ちるはずだった。が、しかし、今のこの状況は想定外だった。計画では車内がガラガラのはずだったが、現実では満席だった。しかもすぐ隣には人がいた。この状況でローターを使えば、たちまちその振動音が車内に響き、全員に気づかれてしまうのだ。
さすがにそれはまずかった。これがパチンコ店や深夜映画館といった場所で、相手がそれなりの汚れ者達だったら良かったが、しかしここは新幹線の中であり、そして相手は役人だ。ここでローターなど使えば、車掌はおろか警察にまで通報されかねないのだ。
せっかくのチャンスを逃してしまった私は、ソッと奥歯で歯ぎしりをした。しかしここで諦めるわけにはいかなかった。例の計画実行まであと十数時間しかないのだ。その間に妻を性奴隷と化しておかなければ、男性用サウナに連れ込むことなど絶対に不可能なのだ。
焦った私は、ヌルヌルと指を動かしながらクリトリスの皮を剥いた。小豆大のクリトリスがヌルッと顔を出した。痛々しく濡れ輝くそれは、今にもはち切れんばかりに勃起していた。
毎晩ローターを使用しているせいか、妻のクリトリスは異様なほどに大きく、そして極度に敏感だった。そこはまさに妻の弱点だった。セックスの最中に、その巨大化したクリトリスを指でコリコリと転がしてやると、たちまち妻は全身を痙攣させ、大量の小便をダラダラと漏らした。
そんな妻の弱点に指を押し付けてやった。ローターのように指先をブルブルと震わせてやると、いきなり妻は私の腕にガッとしがみ付きながら、苦しそうに「もうヤメて」と哀願し始めた。
しかし妻は、そう言いながらもだらしなく緩んだその股を閉じようとはしなかった。それどころか腰をコキコキと動かしては、陰毛がモサモサする恥骨を突き出したりしていた。
それは、もっと激しく弄って欲しいという意思表示に違いなかった。セックスの時、小便を漏らす直前に見せるいつもの動きと同じなのだ。
ここで小便を漏らされてはまずいと思った私は慌てて指を移動させた。そのすぐ下でぽっかりと口を開いている穴に指を滑り込ませ、指先から根元までネトネトとピストンさせた。

穴の中は焼けるように熱かった。奥からドロドロの液体が次から次へと溢れ出し、それが指をピストンさせる度にピタピタと卑猥な音を奏でていた。
ひとまず弱点を逃れた妻は、私の胸でハァハァと息を整えながら、「本当に無理。もうやめて」と呟いた。
そんな妻の表情にはマゾが浮かんでいた。それは、激しい羞恥と屈辱に与えながらも密かに悦びを感じている変態マゾヒストの顔だった。
その表情に見覚えがあった。あの日、見ず知らずの単独男に犯されながら感じていた妻が、後ろめたそうに私をチラチラと見ていたあの時と同じ顔だった。
(この調子でいけば、妻が性奴隷と化すのは時間の問題だ)
そう確信した私は、穴の中からヌルッと指を抜き取った。指に絡みつく白濁の汁を、項垂れている妻に見せつけてやった。そしてそれをおもむろにクンクンと嗅いでやると、妻は羞恥に眉を顰めながら「いやっ」と、私のその手を引っ張ろうとした。それを素早く避けながら、私は指に絡みつくその三十路女の甘酸っぱい匂いに目眩を感じていた。そして思わず「ハァ……」と興奮の息を一つ漏らすと、その指を下品にしゃぶり始め、羞恥に駆られる妻の耳元に顔を寄せては、「おっぱいを出しなさい……」と命令した。
妻は困惑していた。しかし今の妻には、その困惑は性的興奮の何物でもないことを私は知っていた。
やはり、あの時もそうだった。単独男に、「上に乗ってください」と言われた時も、妻は今と同じ困惑の表情を浮かべていた。
結局妻は、仰向けになった単独男の腰に跨った。大きく股を開き、自ら他人棒を握り、それを自分の穴に向けながらゆっくりと腰を下ろした。そして、それを驚愕しながら見ている私に向かって「見ないで」と声を震わせると、その困惑した表情のまま激しく腰を振り始めたのだった。

妻は、あの時と同じ表情を浮かべていた。私はその困惑した表情にゾクゾクしながら、妻のTシャツの大きく開いた首元にソッと手を差し込んだ。唾液と愛液でネトネトに濡れた指で乳首をコロコロと刺激しながら、もう片方の手を妻の背中に回すと、Tシャツの上から素早くブラジャーのホックを外した。
黙ったまま項垂れている妻の肩からブラジャーの紐を下ろすと、淡いグレーのTシャツの胸に、刺激されて痛々しく勃起した乳首がポツンっと浮かび上がった。それをTシャツの上からコロコロと転がしながら、「早く出しなさい」と囁くと、妻は観念したのかソッと辺りを確認しながら上着の首元に指を引っかけた。そしてゆっくりと首元のゴムを伸ばし、そこに真っ白な肉の塊を曝け出すと、自らの意思で乳首を指で弄り、その柔らかい乳肉をフルフルと揺らしたのだった。

それは一瞬の出来事だった。妻はすぐにその乳肉を元に戻してしまったが、しかしそんな妻の様子は明らかに異常な性欲に取り憑かれていた。激しい羞恥に駆られながらも、欲望を抑えきれずに自ら乳首を指で転がしたその姿は、もはや完全に変態奴隷と化していた。
さすが私の妻だった。さすが毎晩のように変態行為を繰り返されている異常性欲者の妻だけあって飲み込みが早かった。この調子なら計画は成功するだろうと安心した私は、長岡に到着する前に妻をトイレに連れ込み、滅茶苦茶に犯しまくりたい衝動に駆られた。ムチムチの尻に激しく腰を打ち続け、そのドロドロとした卑猥な穴の中に大量の精液を注入したくて堪らなくなった。

当然、妻もそれを望んでいるはずだった。妻もこのシチュエーションで肉棒を入れられたいと思っているに違いなく、今トイレに誘えば涎を垂らして付いてくるだろう。が、しかし、今はそれはできなかった。なぜなら私は、サウナに潜入するまでの間、例え妻が激しくそれを求めてきても、例え私がどれだけ興奮したとしても、絶対に挿入しないと決めていたからだった。
それは、ある意味一つの調教だった。妻の性欲を極限まで高め、肉棒に飢えた変態メス豚にさせるための手段だった。私は考えたのだ。ホテルに到着するまでの間、妻にはあらゆる性的刺激を与え、常に欲情した状態にさせておこうと。そしてホテルに着いていよいよセックスが始まると思った矢先、再びお預けを喰らわしてやろうと。
これは、毎晩嫌という程に肉棒で掻き回されている妻にとっては、気が狂いそうなほどの『焦らし』になるに違いなかった。その焦らしによって妻は、いつもはうんざりしていた肉棒が、この日は欲しくて欲しくて堪らなくなり、結果、その欲望は誰のモノでもいいから入れて欲しいというレベルまで高まるだろうと私は睨んでいたのだ。
そこまで行けばあとは簡単だった。そうなれば、あの獣共が潜むサウナに妻を連れて行くのは赤子の手をひねるようなものだった。
だから私は我慢した。今、トイレに妻を連れ込み、そのグジョグジョに濡れたオマンコにペニスをピストンさせたら最高に気持ちいいだろうと身震いしながらも、必死にそれを我慢していた。
きっと妻も同じ気持ちのはずだった。いや、同じ気持ちでなければ困るのだ。だから私はそれを確認すべく、妻の手をギュッと握りしめた。そしてソッと妻の耳元に唇を這わせながら、「トイレに行こうか……」と囁いてみると、案の定、妻は小さくコクンっと頷いた。
そんな妻の羞恥に満ちた仕草に強烈な興奮を覚えた私は、急いでズボンのチャックを開け、そこから熱り立った肉棒を摘み出した。そしてそれを妻に握らせると、その場でシコシコと手コキさせながら妻の上着を捲り、タプタプの乳肉を露出させた。

妻は隣で眠る男を気にしながらもペニスを上下にシゴいていた。それを握りながら人差し指だけ伸ばし、その指を我慢汁がダラダラと溢れる尿道に這わせてはヌルヌルさせた。
そして妻は、そうしながらも、もう片方の手をソッと自分のスカートの中に忍び込ませ、そこをモゾモゾと弄り始めた。私はゆっくりと体を起こし、前屈みになってスカートの中を覗いた。ピンクのクロッチの上部で妻の細い指が円を描くように動いていた。そこは明らかにクリトリスであり、指はそこばかりを集中的に攻めていた。
私は、スカートの中を覗きながら「もっと股を開いて見せてみろ」と命令口調で言った。妻は半開きの目で私を見下ろしながら、そろりそろりと股を肩幅ほど開いた。
「パンツを捲れ。直接オマンコをヌルヌルしろ……」
声を震わせながらそう言うと、妻は私のペニスからソッと手を離し、大きく開いた股に両手を入れた。左手の指でクロッチをずらし、右手の指で大陰唇をクパッと押し広げた。そして真っ赤に濡れ輝いた粘膜に指をヌルヌルと滑らせながら、そこに卑猥な糸を引かせたのだった。

「トイレでヤって欲しいか?」
私はそう妻に聞きながら再びシートに凭れた。妻は下唇を噛み締めながらコクンっと頷いた。私は、少しでもソッチ系に導いておこうと、「そんなにチンポが欲しいなら、ここで隣の男に入れて貰うかい?」と囁いた。妻はイヤイヤっと小さく首を振ると、「これがいいの……」と再び私のペニスを強く握りしめ、そのまま根元まで激しくシゴき始めた。
凄まじい快楽が太ももから脳天へと走った。思わず射精しそうになったが、それでも必死に堪えながら、今夜のためにもできるだけ妻をソッチのモードにしておきたく、「いいじゃないか……たまには違うチンポも味わってみろよ……あの時みたいに……」と声を震わせた。
が、しかし、妻をその気にさせるつもりで言ったその言葉は、逆に私に襲いかかってきた。さっそく私の頭に、隣の男の膝の上に乗った妻が、大きく股を開きながら腰を振っている姿が浮かんだ。そしてあの時のように、「見ないで……見ないで……」と半泣きになりながらも、自らの意思でその太くて逞しい他人棒を穴の中にヌポヌポさせている妻の姿が鮮明に浮かび上がってきた。

嫉妬と興奮が入り乱れ、ゾクゾクとした絶望に胸を締め付けられた。
本当にそうさせたい。本当に他人棒で乱れる妻を見てみたい。そう思いながらそんな妄想を頭の中に繰り広げていると、脳に溜まっていたドロドロとしたマグマが下半身へと逆流し、自然に私の両足がピーンっと伸びた。
「イクよ……」と、そう唸りながら私は妻の唇に舌を伸ばした。妻は迷うことなく私の舌を口内に受け入れると更に手の動きを早めた。妻の生暖かい舌が口内でヌルヌルと蠢き、私の敏感な脳をくすぐった。朦朧とする意識の中、『まもなく長岡、長岡です。上越線、越後中里行きは——』というアナウンスが聞こえ、それと同時に、激しく上下される肉棒の先から、ビュッ、ビュッ、と精液が発射された。
妻は素早くその精液をもう片方の手の平で受け止めた。その射精の勢いに興奮したのか、妻はいきなり私の口内にハァハァと荒い息を吐きながら猛然と舌を絡めてきた。
激しいキスをしながらも、ふと横目で見ると、妻は精液が溜まったその手を再びスカートの中に忍び込ませた。そしてそれを自身の陰部に塗りたくり、そこにペチャペチャと下品な音を立てた。
(この女は……やっぱり変態だ……)と、そうゾクゾクしながら必死に舌を絡めてくる妻の顔を見ていると、不意に妻はビクンっと腰を跳ね上げ、私の口内で「ウグウグ」と唸り始めた。(イッたな……)と思った私は、激しく絡み付いてくる妻の腕から逃れ、素早く前屈みになった。そしてその瞬間を見てやろうと思い妻の股間を覗いた。
いつの間にかパンティーは太ももへとずり下げられていた。モサモサと生え茂る陰毛の中でベロリと口を開く膣には、私の精液がべっとりと付着していた。それは卑猥を通り越して不気味だった。真っ赤な裂け目からドロリと垂れる精液は、まるでドブ川の排水溝から垂れ流されたへどろのようだった。

(つづく)
《←目次》《15話へ→》
吐泥(へろど)15
2013/06/13 Thu 00:01
終点の新潟駅に着いたのは二時を少し回った頃だった。改札を出るなり、妻が「漁業組合には何時に行くの?」と聞いてきた。私は「うん……」と曖昧な返事をしながら、宛てもなく駅の中をぐるぐると歩き回っていた。
ここから例のホテルまでタクシーで三十分程度だった。計画では、この後、新潟の町をブラブラしながら妻に露出をさせ、妻の内に秘められている変態性欲を更に高める予定だった。
そうやって今夜のサウナ潜入に備えるつもりだったのだが、しかし妻の変態度は予想を遥かに超えており、既に新幹線内の第一計画だけで充分だった。今の妻なら、そこらのおっさんを捕まえて「こいつとセックスしろ」と言っても素直に従うはずであり、もうこれ以上調教を続ける必要はなかった。
しかし、だからと言ってこのままホテルに直行するというのも、あまりにも妻が哀れに思えた。だから私は駅の中をぐるぐる回りながら、取り敢えず日本海の魚だけでも食べさせてやろうと、それなりの店を探していたのだが、しかし、駅の中にあるのはフランチャイズのファーストフード店ばかりであり、事前に『食べログ』までチェックしていた妻が納得するような店は見当たらなかったのだった。
「ねぇ……さっきから何してるの?」
油の匂いがムンムンと漂うとんかつ屋の前を通り過ぎると、ふと妻がそう私の顔を覗き込んだ。その濃紺の暖簾がぶら下がるとんかつ屋の前を通るのはこれで三度目だ。
「うん……トイレを探してるんだけどね……」
そう誤魔化すと、妻は「トイレならさっきあったじゃない」と驚きながら後ろを振り向き、ドラッグストアの横の通路にぶら下がっていた『WC』のプレートを指差した。
エレベーター横の小さな書店に妻を残し、ワックスでテラテラに輝く通路をぺたぺたと歩きながらトイレに向かった。特に催しているわけではなかったが、そう言ってしまった以上、そこに行かなくてはならなかった。
ドラッグストアの店先に陳列されているトイレットペーパーが、どこか懐かしい甘い花の香りを漂わせていた。通路を曲がるなり、男子トイレの入口に置いてある『清掃中』の黄色い看板が目に飛び込んできた。しかし中を覗くと男が三人いた。一人は洗面所で手を洗い、残る二人は小便器の前で黙々と用を足していた。だから私も看板を無視してトイレに入った。
五台並んだ小便器の手前で、ドクロ柄のTシャツを着た青年が携帯を耳にあてながら用を足していた。便器を一つ挟んだ奥の便器では、ハゲ頭の老年サラリーマンが、まるで黙祷しているかのようにジッと目を閉じたまま突っ立っていた。
そんな二人の背後を横切り奥へと進んだ。最後尾の便器の横にはバケツがすっぽりと入った底の深い流し台があり、そこからモップとデッキブラシの棒が突き出していた。便器の前で足を止めると、背後の個室からカコカコカコっという音が聞こえてきた。チラッと振り向くと、清掃婦のおばさんが洋式便器の中をブラシで必死に擦っていた。
社会の窓からソッとペニスを摘まみ出すと、いきなり小便とは違う液体がドロッと流れ出た。それは、新幹線の中で射精した時の残液だった。今まで尿道に溜まっていたのが、ペニスを解放したと同時に溢れ出したのだ。
便器に垂れたそれは、ニトーっと長い糸を引きながらいつまでもぶら下がっていた。ブルブルっとペニスを振ってもその糸は切れず、慌てた私は横目で隣の老年サラリーマンを見た。

幸いにも、男は未だジッと目を閉じたままだった。恐らく前立腺を患っているのだろう、男は腐った桃のようなペニスを摘んだまま、鼻息をクフクフと鳴らしながら力んでいた。
ツユの糸をぶら下げたまま一気に小便をした。押し出されたゼリー状の残液が便器の底にボタボタと落ちた。それはまるでタピオカのようであり、尿道にゴリゴリとした違和感を感じた。
すると突然、隣の男のクフクフという鼻息がフーッという溜息に変わった。ソッと横目で見てみると、私のびしゃびしゃと放出される音に誘発されたのか、男のペニスからも小便が噴き出していた。

男は目を閉じたままだった。まるでクラッシック音楽に聴き入るかのように、気持ち良さげに目を閉じながら、びしゃびしゃと奏でる自分の小便の音を聞いていた。
それまで腐った桃のように萎れていたペニスは、激しい排尿によって躍動感がみなぎり、みるみる逞しくなってきた。それは私のモノより遥かに太かった。亀頭を形取るカリ首は、まるで彫刻刀で彫り込んだようにくっきりと浮かび上がり、獰猛な爬虫類のエラのようだった。
それを眺めていると、不意に(これを妻にしゃぶらせたい……)という欲望が湧いた。きっと今の妻なら、こんな男のペニスでも喜んでしゃぶるはずだった。この男を個室に誘い込み、そこに妻を連れ込み、私の見ている前で狂ったようにしゃぶらせたいと妄想に耽っていると、ムラムラと溢れてくる欲望で胸が苦しくなってきた。

私の脳は、既にヘドロと化していた。さっき新幹線の中で見た妻の陰部に滴る精液のように、私の脳はドロドロに溶けていた。そんな私は、男の小便が止まるのを息を殺して待っていた。男が小便を終えたら、私の妻にあなたのペニスをしゃぶらせてやってもらえませんかと、そう声を掛けようと本気で思っていたのだ。
男の小便は次第に勢いを衰え、まるで水道の蛇口を閉めたかのようにピタリと止まった。男はボテッと太った肉棒を指で摘みながらユッサユッサと上下に振った。ポタポタと垂れる雫が精液のように見え、それが滴る白い便器が、大きく口を開いた妻に思えた。
男がギギッとチャックを閉めるなり、私はジッと目を閉じている男の横顔に顔を近づけた。そして「あのぅ」と声を掛けようとした瞬間、突然男の目がカッと開いた。男はサッと振り返り私を睨んだ。その物凄い形相に、思わず「えっ」と私が怯むと、男の視線はゆっくりと私の下半身へと下り、そこで再びカッと目を見開いた。

私のペニスは勃起していた。妻がこの男のペニスをジュブジュブと下品にしゃぶる妄想をしていたため、ペニスははち切れんばかりに膨張していた。男はそんな私のペニスを、まるで親の仇でも見るような形相で睨んでいた。そしてその鋭い視線を再び私の顔に戻すと、私の目をジッと覗き込みながら、「バカモノ」とひとこと呟き、そのままスタスタとトイレを出て行ってしまったのだった。
どうやら男は、私がホモだと勘違いしたらしい。男が放ったその「バカモノ」は、私が小六の時、放課後の誰もいない教室で、高橋美優の体育ズボンの股間を嗅いでいるのを教頭先生に見つかった時に言われた「バカモノ」と同じ部類の「バカモノ」だった。
私は変態だがホモではない!
いつしか誰もいなくなったトイレを見つめながら、私はそう心に叫んだ。静まり返ったトイレには清掃婦のブラシの音だけがカコカコと鳴り響いており、まるで、見知らぬオヤジに「バカモノ」呼ばわりされた私を嘲笑っているようだった。
一瞬その音にムカッときたが、しかし、それでも私のペニスはビクンビクンっと波を打ちながら勃起を続けていた。一日に七回もの射精が軽くできるほどの私の異常性欲は、こんな事で治るほどデリケートではないのだ。
カコカコカコっというブラシ音に合わせてペニスをシゴいた。取り敢えず少しだけでも抜いておこうと思い、背後のおばさんを気にしながらこっそりとシコシコしていると、不意にそのカコカコという音がピタリと止んだ。ジャーッと個室便器の水を流す音が聞こえ、焦った私はシゴいていたペニスから慌てて手を離した。すると、それと同時にすぐ隣りの流し台におばさんの姿がヌッと現れ、おばさんはガサガサと音を立てながら汚れたブラシを洗い始めたのだった。
危ないところだった。もう少し遅れていたら、このおばさんにシコシコしている瞬間を目撃されるところだった。そう思いながら慌てて勃起するペニスをズボンに押し込もうとすると、不意にその『シコシコしている瞬間を目撃される』という自分の言葉に突然ムラッと欲情を覚えた。私はその言葉から、見ず知らずの男にオナニーを見せつけられている妻の姿を頭に思い描いてしまったのだ。
激しい興奮に襲われた私は、握っていたペニスからソッと手を離した。そしてそのまま腰を大きく反らし、それをビーンっと突き出しながら、腹筋を使ってそれをヒコヒコと動かし始めた。
それはまるで、揺れ動く張り子の虎の首のようだった。すぐ隣りでビョンビョンとバウンドしているペニスに、おばさんが気づかないわけがなかった。おばさんはモップをジャバジャバと洗いながらチラッとソレを見た。そしてさっきの男と同じようにギョッと目を見開いたのだった。

駅のトイレの清掃婦など、どうせシルバーセンターから派遣された老婆だと思っていた。少なくとも東京駅の清掃婦の感覚でいけばそうに違いなかったが、しかしそのおばさんは違った。四十代前半のパート主婦といった感じの、至って普通のおばさんだった。
全然イケると思った。熟女独特のポチャポチャとした体は胸もそれなりに大きく、尻だって作業ズボンをパンパンにさせるほどにムチムチしていた。恐らく、そんなおばさんの股間は、朝からの労働によってムレムレに蒸れているはずだ。剛毛の奥に潜むキクラゲのような陰唇は汗と小便の残り汁でテラテラに濡れ輝き、それを指でぺろりと捲れば、その中からきっと凄まじい発酵臭が漂ってくるだろう。
そんなことを妄想していると、無性にこのおばさんの股間に顔を埋めたいというマゾ心が生まれ、更に異常な妄想がモワモワと溢れてきた。
妄想の中のおばさんは、私に「そこに座りなさい」と言った。私は素直に便所の床にベタリと尻を下ろすと、作業ズボンを脱ぎ始めたおばさんを見上げながらペニスをシゴき始めた。
下半身裸になったおばさんは、「舐めてもいいわよ」と薄ら笑いを浮かべながら、床に座っている私の顔を跨ぐと、黒いブラジャーから引きずり出したブヨブヨの乳を自分で揉み始めた。そしておばさんは、乗馬するかのように腰をコキコキと動かしながら、その蒸れた股間を私の顔に擦り付けてきた。
タワシのような剛毛が額をゴシゴシし、腐った柿のような陰部が鼻の上をヌルヌルする。私はハァハァと荒い息を吐きながらも、そのドロドロになった割れ目に舌を伸ばし、必死にそこをベロベロと舐め回した。そしてそのチーズ臭い白濁の恥垢から、肛門のティッシュの欠片に至るまで、私はおばさんの恥部を全て味わうのだった。

そんな妄想をしながら、いつしか私はペニスをシゴいていた。
現実のおばさんが、ジッと固まったまま、上下する私の肉棒を黙って見ていた。
「ハァハァ……おばさん……私と個室に行きませんか……おばさんのアソコをイクまで舐めてあげますよ……」
おばさんの目を見つめながらそう唸った。おばさんは身動きしないまま無言で私を見ている。
「入れさせてくださいよ……コレをおばさんのオマンコにズボズボさせて下さいよ……ほら、見てくださいよ、凄くビンビンしてるでしょ……おばさんがイクまでずっと動かし続けますから……だからそのヌルヌルマンコに入れさせてくださいよ……」
そう囁きながらペニスを激しくシゴいた。それでもおばさんは眉一つ動かさず、私のその奇行を黙ってじっと見つめていた。

ペニスをシゴくという肉体的快感と、見ず知らずのおばさんにオナニーを見られているという精神的快感がヘドロ化した脳をドロドロと搔き回し、私の興奮を最高潮まで高めた。
「あっ、イキますよ、あっ、見ててください、あっ、あっ」
そう小さく叫びながら、白い陶器に精液をビュッビュッと飛ばし、快楽に両足をモゾモゾさせながら、はあぁぁぁぁぁぁ……と深い息を吐いた。半開きの目でおばさんの顔を覗き込むと、真っ赤な舌を突き出し、古いイタリア映画のスケベ親父がするように舌をレロレロと動かして見せた。
するとおばさんは真顔でジッと私を見つめながら「バカモノ」と呟き、何事もなかったかのように再びモップをバシャバシャと洗い始た。
そんなおばさんが呟いた「バカモノ」も、やっぱりあの時の教頭先生の「バカモノ」と同じだった。
(つづく)
《←目次》《16話へ→》
ここから例のホテルまでタクシーで三十分程度だった。計画では、この後、新潟の町をブラブラしながら妻に露出をさせ、妻の内に秘められている変態性欲を更に高める予定だった。
そうやって今夜のサウナ潜入に備えるつもりだったのだが、しかし妻の変態度は予想を遥かに超えており、既に新幹線内の第一計画だけで充分だった。今の妻なら、そこらのおっさんを捕まえて「こいつとセックスしろ」と言っても素直に従うはずであり、もうこれ以上調教を続ける必要はなかった。
しかし、だからと言ってこのままホテルに直行するというのも、あまりにも妻が哀れに思えた。だから私は駅の中をぐるぐる回りながら、取り敢えず日本海の魚だけでも食べさせてやろうと、それなりの店を探していたのだが、しかし、駅の中にあるのはフランチャイズのファーストフード店ばかりであり、事前に『食べログ』までチェックしていた妻が納得するような店は見当たらなかったのだった。
「ねぇ……さっきから何してるの?」
油の匂いがムンムンと漂うとんかつ屋の前を通り過ぎると、ふと妻がそう私の顔を覗き込んだ。その濃紺の暖簾がぶら下がるとんかつ屋の前を通るのはこれで三度目だ。
「うん……トイレを探してるんだけどね……」
そう誤魔化すと、妻は「トイレならさっきあったじゃない」と驚きながら後ろを振り向き、ドラッグストアの横の通路にぶら下がっていた『WC』のプレートを指差した。
エレベーター横の小さな書店に妻を残し、ワックスでテラテラに輝く通路をぺたぺたと歩きながらトイレに向かった。特に催しているわけではなかったが、そう言ってしまった以上、そこに行かなくてはならなかった。
ドラッグストアの店先に陳列されているトイレットペーパーが、どこか懐かしい甘い花の香りを漂わせていた。通路を曲がるなり、男子トイレの入口に置いてある『清掃中』の黄色い看板が目に飛び込んできた。しかし中を覗くと男が三人いた。一人は洗面所で手を洗い、残る二人は小便器の前で黙々と用を足していた。だから私も看板を無視してトイレに入った。
五台並んだ小便器の手前で、ドクロ柄のTシャツを着た青年が携帯を耳にあてながら用を足していた。便器を一つ挟んだ奥の便器では、ハゲ頭の老年サラリーマンが、まるで黙祷しているかのようにジッと目を閉じたまま突っ立っていた。
そんな二人の背後を横切り奥へと進んだ。最後尾の便器の横にはバケツがすっぽりと入った底の深い流し台があり、そこからモップとデッキブラシの棒が突き出していた。便器の前で足を止めると、背後の個室からカコカコカコっという音が聞こえてきた。チラッと振り向くと、清掃婦のおばさんが洋式便器の中をブラシで必死に擦っていた。
社会の窓からソッとペニスを摘まみ出すと、いきなり小便とは違う液体がドロッと流れ出た。それは、新幹線の中で射精した時の残液だった。今まで尿道に溜まっていたのが、ペニスを解放したと同時に溢れ出したのだ。
便器に垂れたそれは、ニトーっと長い糸を引きながらいつまでもぶら下がっていた。ブルブルっとペニスを振ってもその糸は切れず、慌てた私は横目で隣の老年サラリーマンを見た。

幸いにも、男は未だジッと目を閉じたままだった。恐らく前立腺を患っているのだろう、男は腐った桃のようなペニスを摘んだまま、鼻息をクフクフと鳴らしながら力んでいた。
ツユの糸をぶら下げたまま一気に小便をした。押し出されたゼリー状の残液が便器の底にボタボタと落ちた。それはまるでタピオカのようであり、尿道にゴリゴリとした違和感を感じた。
すると突然、隣の男のクフクフという鼻息がフーッという溜息に変わった。ソッと横目で見てみると、私のびしゃびしゃと放出される音に誘発されたのか、男のペニスからも小便が噴き出していた。

男は目を閉じたままだった。まるでクラッシック音楽に聴き入るかのように、気持ち良さげに目を閉じながら、びしゃびしゃと奏でる自分の小便の音を聞いていた。
それまで腐った桃のように萎れていたペニスは、激しい排尿によって躍動感がみなぎり、みるみる逞しくなってきた。それは私のモノより遥かに太かった。亀頭を形取るカリ首は、まるで彫刻刀で彫り込んだようにくっきりと浮かび上がり、獰猛な爬虫類のエラのようだった。
それを眺めていると、不意に(これを妻にしゃぶらせたい……)という欲望が湧いた。きっと今の妻なら、こんな男のペニスでも喜んでしゃぶるはずだった。この男を個室に誘い込み、そこに妻を連れ込み、私の見ている前で狂ったようにしゃぶらせたいと妄想に耽っていると、ムラムラと溢れてくる欲望で胸が苦しくなってきた。

私の脳は、既にヘドロと化していた。さっき新幹線の中で見た妻の陰部に滴る精液のように、私の脳はドロドロに溶けていた。そんな私は、男の小便が止まるのを息を殺して待っていた。男が小便を終えたら、私の妻にあなたのペニスをしゃぶらせてやってもらえませんかと、そう声を掛けようと本気で思っていたのだ。
男の小便は次第に勢いを衰え、まるで水道の蛇口を閉めたかのようにピタリと止まった。男はボテッと太った肉棒を指で摘みながらユッサユッサと上下に振った。ポタポタと垂れる雫が精液のように見え、それが滴る白い便器が、大きく口を開いた妻に思えた。
男がギギッとチャックを閉めるなり、私はジッと目を閉じている男の横顔に顔を近づけた。そして「あのぅ」と声を掛けようとした瞬間、突然男の目がカッと開いた。男はサッと振り返り私を睨んだ。その物凄い形相に、思わず「えっ」と私が怯むと、男の視線はゆっくりと私の下半身へと下り、そこで再びカッと目を見開いた。

私のペニスは勃起していた。妻がこの男のペニスをジュブジュブと下品にしゃぶる妄想をしていたため、ペニスははち切れんばかりに膨張していた。男はそんな私のペニスを、まるで親の仇でも見るような形相で睨んでいた。そしてその鋭い視線を再び私の顔に戻すと、私の目をジッと覗き込みながら、「バカモノ」とひとこと呟き、そのままスタスタとトイレを出て行ってしまったのだった。
どうやら男は、私がホモだと勘違いしたらしい。男が放ったその「バカモノ」は、私が小六の時、放課後の誰もいない教室で、高橋美優の体育ズボンの股間を嗅いでいるのを教頭先生に見つかった時に言われた「バカモノ」と同じ部類の「バカモノ」だった。
私は変態だがホモではない!
いつしか誰もいなくなったトイレを見つめながら、私はそう心に叫んだ。静まり返ったトイレには清掃婦のブラシの音だけがカコカコと鳴り響いており、まるで、見知らぬオヤジに「バカモノ」呼ばわりされた私を嘲笑っているようだった。
一瞬その音にムカッときたが、しかし、それでも私のペニスはビクンビクンっと波を打ちながら勃起を続けていた。一日に七回もの射精が軽くできるほどの私の異常性欲は、こんな事で治るほどデリケートではないのだ。
カコカコカコっというブラシ音に合わせてペニスをシゴいた。取り敢えず少しだけでも抜いておこうと思い、背後のおばさんを気にしながらこっそりとシコシコしていると、不意にそのカコカコという音がピタリと止んだ。ジャーッと個室便器の水を流す音が聞こえ、焦った私はシゴいていたペニスから慌てて手を離した。すると、それと同時にすぐ隣りの流し台におばさんの姿がヌッと現れ、おばさんはガサガサと音を立てながら汚れたブラシを洗い始めたのだった。
危ないところだった。もう少し遅れていたら、このおばさんにシコシコしている瞬間を目撃されるところだった。そう思いながら慌てて勃起するペニスをズボンに押し込もうとすると、不意にその『シコシコしている瞬間を目撃される』という自分の言葉に突然ムラッと欲情を覚えた。私はその言葉から、見ず知らずの男にオナニーを見せつけられている妻の姿を頭に思い描いてしまったのだ。
激しい興奮に襲われた私は、握っていたペニスからソッと手を離した。そしてそのまま腰を大きく反らし、それをビーンっと突き出しながら、腹筋を使ってそれをヒコヒコと動かし始めた。
それはまるで、揺れ動く張り子の虎の首のようだった。すぐ隣りでビョンビョンとバウンドしているペニスに、おばさんが気づかないわけがなかった。おばさんはモップをジャバジャバと洗いながらチラッとソレを見た。そしてさっきの男と同じようにギョッと目を見開いたのだった。

駅のトイレの清掃婦など、どうせシルバーセンターから派遣された老婆だと思っていた。少なくとも東京駅の清掃婦の感覚でいけばそうに違いなかったが、しかしそのおばさんは違った。四十代前半のパート主婦といった感じの、至って普通のおばさんだった。
全然イケると思った。熟女独特のポチャポチャとした体は胸もそれなりに大きく、尻だって作業ズボンをパンパンにさせるほどにムチムチしていた。恐らく、そんなおばさんの股間は、朝からの労働によってムレムレに蒸れているはずだ。剛毛の奥に潜むキクラゲのような陰唇は汗と小便の残り汁でテラテラに濡れ輝き、それを指でぺろりと捲れば、その中からきっと凄まじい発酵臭が漂ってくるだろう。
そんなことを妄想していると、無性にこのおばさんの股間に顔を埋めたいというマゾ心が生まれ、更に異常な妄想がモワモワと溢れてきた。
妄想の中のおばさんは、私に「そこに座りなさい」と言った。私は素直に便所の床にベタリと尻を下ろすと、作業ズボンを脱ぎ始めたおばさんを見上げながらペニスをシゴき始めた。
下半身裸になったおばさんは、「舐めてもいいわよ」と薄ら笑いを浮かべながら、床に座っている私の顔を跨ぐと、黒いブラジャーから引きずり出したブヨブヨの乳を自分で揉み始めた。そしておばさんは、乗馬するかのように腰をコキコキと動かしながら、その蒸れた股間を私の顔に擦り付けてきた。
タワシのような剛毛が額をゴシゴシし、腐った柿のような陰部が鼻の上をヌルヌルする。私はハァハァと荒い息を吐きながらも、そのドロドロになった割れ目に舌を伸ばし、必死にそこをベロベロと舐め回した。そしてそのチーズ臭い白濁の恥垢から、肛門のティッシュの欠片に至るまで、私はおばさんの恥部を全て味わうのだった。

そんな妄想をしながら、いつしか私はペニスをシゴいていた。
現実のおばさんが、ジッと固まったまま、上下する私の肉棒を黙って見ていた。
「ハァハァ……おばさん……私と個室に行きませんか……おばさんのアソコをイクまで舐めてあげますよ……」
おばさんの目を見つめながらそう唸った。おばさんは身動きしないまま無言で私を見ている。
「入れさせてくださいよ……コレをおばさんのオマンコにズボズボさせて下さいよ……ほら、見てくださいよ、凄くビンビンしてるでしょ……おばさんがイクまでずっと動かし続けますから……だからそのヌルヌルマンコに入れさせてくださいよ……」
そう囁きながらペニスを激しくシゴいた。それでもおばさんは眉一つ動かさず、私のその奇行を黙ってじっと見つめていた。

ペニスをシゴくという肉体的快感と、見ず知らずのおばさんにオナニーを見られているという精神的快感がヘドロ化した脳をドロドロと搔き回し、私の興奮を最高潮まで高めた。
「あっ、イキますよ、あっ、見ててください、あっ、あっ」
そう小さく叫びながら、白い陶器に精液をビュッビュッと飛ばし、快楽に両足をモゾモゾさせながら、はあぁぁぁぁぁぁ……と深い息を吐いた。半開きの目でおばさんの顔を覗き込むと、真っ赤な舌を突き出し、古いイタリア映画のスケベ親父がするように舌をレロレロと動かして見せた。
するとおばさんは真顔でジッと私を見つめながら「バカモノ」と呟き、何事もなかったかのように再びモップをバシャバシャと洗い始た。
そんなおばさんが呟いた「バカモノ」も、やっぱりあの時の教頭先生の「バカモノ」と同じだった。
(つづく)
《←目次》《16話へ→》
吐泥(へろど)16
2013/06/13 Thu 00:01
慌ててトイレから飛び出した。きっとあのババアは、さっき私があのジジイの言われた「バカモノ」を聞いていたに違いなく、だからあのババアは、私の事をホモで露出狂の変質者だと思っているはずだった。
警察に通報でもされたら厄介だと思った。急いでここから立ち去ろうと妻が待つ書店に向かった。
しかしそこに妻の姿はなかった。書店の隣りにあるCDショップも、そのまた隣りにある文房具店も全て探してみたが、妻の姿はどこにも見当たらなかった。
(逃げた……)
そう愕然とする私は、CDショップの店頭にズラリと並べられている『新潟ロマンスグレー』というCDジャケットを呆然と見つめながら立ち竦んでいた。
妻が逃げるわけがなかった。ましてこんな場所で突破的に逃げるなど考えられなかった。そんな事はわかっていた。わかってはいたが、しかし、今まで自分が妻に対して行ってきた行為があまりにも酷すぎたため、その罪悪感がそんな恐怖を作り出したのだ。
(もしかしたらあいつは、本当は嫌だったのかも知れない……私が勝手にあいつを淫乱だと決めつけていただけで、本当はあいつは、私の変態プレイが嫌で嫌で堪らなかったのかも知れない……)
そう思いながら私は激しい焦燥感に駆られていた。その小さな店の店頭に三百枚近く並んでいる『新潟ロマンスグレー』のCDに不審の念を抱く事もなく、それを歌っている地元演歌歌手が、『田中角斗』という名前だという事にも何の違和感を感じる暇もなく、ただただ妻に逃げられたという恐怖妄想に襲われていた。
『にっ、ににににに新潟ぁ〜♪ 流れ流れて新潟ぁ〜♪』
山積みにされたCDの真ん中に丸型のCDプレイヤーが置いてあり、『新潟ロマンスグレー』が垂れ流しにされていた。どこかで聞いたことのあるそのアップテンポなメロディーは、明らかに何かをパクっているようだった。そんな『新潟ロマンスグレー』のサビが、暗雲立ち込める私の頭の中で延々とリピートされていた。その百姓のような面構えをした『田中角斗』のポスターを見上げていた私は、そこでふと、(もしかしたら妻は誰かに連れて行かれたのかもしれない)という、また新たな妄想を抱き始めた。
確かに今の妻は欲情していた。日頃はセックスに対して消極的だったあの妻が、なんと新幹線の中で「入れて」と要求してくるほどに狂っていたのだ。しかも新幹線でのその行為は中途半端だった。わざと欲求不満にさせようと、意図的に中途半端にしていたため激しく欲情しているはずだった。
今の妻なら、誰が見ても悶々としている事に気付くはずだった。男なら、妻のあのいやらしい胸や尻から溢れる卑猥なフェロモンに気付かないわけがなかった。だから妻は、どこかの男に声をかけられ、フラフラと付いて行ってしまったのかも知れなかった。そして今頃は、既に駅裏辺りの鄙びたラブホに連れ込まれ、複数の男達に陵辱されているのかも知れない……

そのシーンが頭に浮かぶなり、思わず私は「ひっ」と小さな悲鳴をあげて肩を窄めていた。すると、そんな私の一部始終を山積みのCDの裏から見ていた若い女店員が、私と同じように「ひっ」と小さな悲鳴をあげて肩を窄めた。
私はその店員をギロッと睨むと、「キミ」と声をかけた。店員はCDの隙間から恐る恐る私を覗きながら、蚊の鳴くような声で「はい」と返事をした。「妻を探してるんだが……」と言いながらその店員をまじまじと見下ろした。赤い縁のメガネを掛けた丸々と太った女の子だった。その丸いメガネのレンズにはやたらと大きな目が浮かび、まるで昔のTVアニメのアラレちゃんのようだった。
「三十前後で黒い服を着てるんだけど、見なかったかね」
そう聞くと、店員は「黒い服……」と呟きながら首を傾げた。肉まんのような二重あごが右に傾き、ぐにゃっと潰れてはカバの尻肉のように歪んだ。そんな店員の顔は、角度によってはアラレちゃんではなくケント・デリカットに見えた。
そのまま暫く停止していた店員だったが、ふと、顔を傾けている右の通路を見つめながら「あっ」と目を開き、「もしかして……あの人じゃないですか?」と通路の奥を指差した。
慌てて振り返ると、通路の奥にある近畿日本ツーリストのパンフレットラックの前に妻がいた。いつの間にそこに居たのか、妻はスーツを着た男と何やら話し込んでいた。
「あっ、あれだ」と走り出そうとしながらも、私はもう一度店員に振り返った。そして『新潟ロマンスグレー』のCDを指差しながら、「こいつは誰だ」と店員に聞いた。すると店員はCDの隙間から私をジッと見ながら「知りません」と即答した。「知らないのになぜこんなに宣伝している」と矢継ぎ早に聞くと、店員はなぜか自信に満ちた表情を浮かべながら「知りません」とキッパリと答え、突然CDプレイヤーの音量を最大に上げたのだった。
『にっ、ににににに新潟ぁ〜♪ しのびあう恋、新潟ぁ〜♪』
そんな恥ずかしいムード歌謡を背景に私は通路を走り出した。突然鳴り響いた田中角斗の歌声に、妻とその男が同時に振り返った。
妻は私に気付くなり「ねぇ」と手を挙げた。しかし男は複雑な表情を浮かべながら黙って私を見ていた。
そんな男の表情から、この男は妻を誘惑していたに違いないと思うと、不意に『新潟ロマンスグレー』のアップテンポな曲が私に闘志を沸かせ、このままその男に飛び蹴りを喰らわしてやりたくなった。
が、しかし、二人に近づくにつれ、そんな私の闘志はみるみる失せていった。なんとそのスーツを着た男は、さっきトイレで私に「バカモノ」と吐き捨てた男だったのだ。
しまったと思いながらも、慌てて足を止めた。しかし既に私は二人の前に立っていた。チラッと男を見ると、男も私に気づいているらしく不敵に私を睨んでいた。この男とさっきの清掃婦の証言が一致すれば、今夜の私は新潟警察署に宿泊だ。
私は素早く男から顔を逸らし、そそくさと妻に「行くよ」と告げた。
すると妻は「ねぇ、これ見てよ」と言いながら、近畿日本ツーリストのショーウィンドゥに貼ってあるポスターを指差した。
それはホテル日航新潟のポスターだった。そこに『ばかうけ展望室』と書かれており、妻はそれを指差しながら「ここに行ってみようよ」と言っているのだった。
正直、行きたくなかった。展望台から新潟の町など見下ろして何が楽しいのだと激しくそう思った。それに、その『ばかうけ』という名前がまた憎たらしい。田中角斗にしろ、これにしろ、どうして新潟はわざわざ憎たらしいネーミングをつけたがるのだろう。
無性に腹が立ってきた私は、「今夜は別のホテルを予約してるから今度にしよう。さ、行くよ」と妻に言いながら、そそくさとその場を立ち去ろうとした。すると、いきなりそのバカモノ親父が「ここは宿泊客じゃなくても無料で入れますよ」と口を挟んできた。たちまち妻もそれに同乗するかのように、「そうなんだって。だからちょっとだけ行ってみようよ」と私の袖を摘んだ。そしてオモチャをねだる子供のように私の腕をブラブラと振ったのだった。
「わかったよ……」
仕方なくそう頷きながら私は歩き出した。妻も一緒に歩き出しながら振り返り、バカモノ親父に向かって「ありがとうございました」と愛想を振りまいた。ソッと振り返ると、バカモノ親父はいやらしい笑みを浮かべながら妻に手を振っていた。
そんな親父を見た瞬間、ふと、きっとこの親父は、妻のいやらしい体をジロジロと視姦しながら観光案内をしていたんだと思った。妻のその大きな乳肉に顔を埋めている自分を想像しながら、その『ばかうけ展望室』などというどうでもいい観光地を紹介したに違いないと思った。

そう思うなり、そんなスケベ爺にいきなりバカモノ呼ばわりされた怒りが再び蘇った。
カッと頭に血がのぼるなり、私は思わず「あんた!」と叫んでいた。ラックの前にしゃがみながらパンフレットを補充している親父は「ん?」と驚きながら顔を向けた。
私は親父に向かってツカツカと歩きながら、(想像してただろ……想像してただろ……今お前は、くだらない観光案内をしながら、私の妻のアソコの色や匂いや味を想像していただろ……そしてそこに顔を埋めながら、犬のようにそこらじゅうを嗅ぎ回り、そして蛇のようにヌルヌルと舐めるのを想像してただろ……)とブツブツと呟いていた。そして、本当に親父にそうされている妻の姿を妄想し、同時に亀頭をズキンっと疼かせた。

親父の前で足を止めると、親父は不審げな表情を浮かべながらゆっくりと立ち上がり、「何か?」とタバコ臭い息を吐いた。
「実はね、私は聖路加病院の医師なんだよ。だからさっきあんたが小便しているのをジッと見てたんだよ。ズバリ教えておいてあげるけど、あんた、とっても危険だよ。あんたのあの排尿の症状は間違いなく前立腺ガンだ。うん。恐らくステージ4だ。一刻も早く手術しないと手遅れになるぞバカモノ」
咄嗟にそんなデタラメがベラベラと口から出た。
親父はポカンっと口を開けたまま黙って私の話を聞いていた。
言うだけ言うと、そのまま早々と逃げた。走りながら振り返ると、親父は「えっ?」と唸ったまま亀のように首を伸ばしていた。
ざまあみろ。

(つづく)
《←目次》《17話へ→》
警察に通報でもされたら厄介だと思った。急いでここから立ち去ろうと妻が待つ書店に向かった。
しかしそこに妻の姿はなかった。書店の隣りにあるCDショップも、そのまた隣りにある文房具店も全て探してみたが、妻の姿はどこにも見当たらなかった。
(逃げた……)
そう愕然とする私は、CDショップの店頭にズラリと並べられている『新潟ロマンスグレー』というCDジャケットを呆然と見つめながら立ち竦んでいた。
妻が逃げるわけがなかった。ましてこんな場所で突破的に逃げるなど考えられなかった。そんな事はわかっていた。わかってはいたが、しかし、今まで自分が妻に対して行ってきた行為があまりにも酷すぎたため、その罪悪感がそんな恐怖を作り出したのだ。
(もしかしたらあいつは、本当は嫌だったのかも知れない……私が勝手にあいつを淫乱だと決めつけていただけで、本当はあいつは、私の変態プレイが嫌で嫌で堪らなかったのかも知れない……)
そう思いながら私は激しい焦燥感に駆られていた。その小さな店の店頭に三百枚近く並んでいる『新潟ロマンスグレー』のCDに不審の念を抱く事もなく、それを歌っている地元演歌歌手が、『田中角斗』という名前だという事にも何の違和感を感じる暇もなく、ただただ妻に逃げられたという恐怖妄想に襲われていた。
『にっ、ににににに新潟ぁ〜♪ 流れ流れて新潟ぁ〜♪』
山積みにされたCDの真ん中に丸型のCDプレイヤーが置いてあり、『新潟ロマンスグレー』が垂れ流しにされていた。どこかで聞いたことのあるそのアップテンポなメロディーは、明らかに何かをパクっているようだった。そんな『新潟ロマンスグレー』のサビが、暗雲立ち込める私の頭の中で延々とリピートされていた。その百姓のような面構えをした『田中角斗』のポスターを見上げていた私は、そこでふと、(もしかしたら妻は誰かに連れて行かれたのかもしれない)という、また新たな妄想を抱き始めた。
確かに今の妻は欲情していた。日頃はセックスに対して消極的だったあの妻が、なんと新幹線の中で「入れて」と要求してくるほどに狂っていたのだ。しかも新幹線でのその行為は中途半端だった。わざと欲求不満にさせようと、意図的に中途半端にしていたため激しく欲情しているはずだった。
今の妻なら、誰が見ても悶々としている事に気付くはずだった。男なら、妻のあのいやらしい胸や尻から溢れる卑猥なフェロモンに気付かないわけがなかった。だから妻は、どこかの男に声をかけられ、フラフラと付いて行ってしまったのかも知れなかった。そして今頃は、既に駅裏辺りの鄙びたラブホに連れ込まれ、複数の男達に陵辱されているのかも知れない……

そのシーンが頭に浮かぶなり、思わず私は「ひっ」と小さな悲鳴をあげて肩を窄めていた。すると、そんな私の一部始終を山積みのCDの裏から見ていた若い女店員が、私と同じように「ひっ」と小さな悲鳴をあげて肩を窄めた。
私はその店員をギロッと睨むと、「キミ」と声をかけた。店員はCDの隙間から恐る恐る私を覗きながら、蚊の鳴くような声で「はい」と返事をした。「妻を探してるんだが……」と言いながらその店員をまじまじと見下ろした。赤い縁のメガネを掛けた丸々と太った女の子だった。その丸いメガネのレンズにはやたらと大きな目が浮かび、まるで昔のTVアニメのアラレちゃんのようだった。
「三十前後で黒い服を着てるんだけど、見なかったかね」
そう聞くと、店員は「黒い服……」と呟きながら首を傾げた。肉まんのような二重あごが右に傾き、ぐにゃっと潰れてはカバの尻肉のように歪んだ。そんな店員の顔は、角度によってはアラレちゃんではなくケント・デリカットに見えた。
そのまま暫く停止していた店員だったが、ふと、顔を傾けている右の通路を見つめながら「あっ」と目を開き、「もしかして……あの人じゃないですか?」と通路の奥を指差した。
慌てて振り返ると、通路の奥にある近畿日本ツーリストのパンフレットラックの前に妻がいた。いつの間にそこに居たのか、妻はスーツを着た男と何やら話し込んでいた。
「あっ、あれだ」と走り出そうとしながらも、私はもう一度店員に振り返った。そして『新潟ロマンスグレー』のCDを指差しながら、「こいつは誰だ」と店員に聞いた。すると店員はCDの隙間から私をジッと見ながら「知りません」と即答した。「知らないのになぜこんなに宣伝している」と矢継ぎ早に聞くと、店員はなぜか自信に満ちた表情を浮かべながら「知りません」とキッパリと答え、突然CDプレイヤーの音量を最大に上げたのだった。
『にっ、ににににに新潟ぁ〜♪ しのびあう恋、新潟ぁ〜♪』
そんな恥ずかしいムード歌謡を背景に私は通路を走り出した。突然鳴り響いた田中角斗の歌声に、妻とその男が同時に振り返った。
妻は私に気付くなり「ねぇ」と手を挙げた。しかし男は複雑な表情を浮かべながら黙って私を見ていた。
そんな男の表情から、この男は妻を誘惑していたに違いないと思うと、不意に『新潟ロマンスグレー』のアップテンポな曲が私に闘志を沸かせ、このままその男に飛び蹴りを喰らわしてやりたくなった。
が、しかし、二人に近づくにつれ、そんな私の闘志はみるみる失せていった。なんとそのスーツを着た男は、さっきトイレで私に「バカモノ」と吐き捨てた男だったのだ。
しまったと思いながらも、慌てて足を止めた。しかし既に私は二人の前に立っていた。チラッと男を見ると、男も私に気づいているらしく不敵に私を睨んでいた。この男とさっきの清掃婦の証言が一致すれば、今夜の私は新潟警察署に宿泊だ。
私は素早く男から顔を逸らし、そそくさと妻に「行くよ」と告げた。
すると妻は「ねぇ、これ見てよ」と言いながら、近畿日本ツーリストのショーウィンドゥに貼ってあるポスターを指差した。
それはホテル日航新潟のポスターだった。そこに『ばかうけ展望室』と書かれており、妻はそれを指差しながら「ここに行ってみようよ」と言っているのだった。
正直、行きたくなかった。展望台から新潟の町など見下ろして何が楽しいのだと激しくそう思った。それに、その『ばかうけ』という名前がまた憎たらしい。田中角斗にしろ、これにしろ、どうして新潟はわざわざ憎たらしいネーミングをつけたがるのだろう。
無性に腹が立ってきた私は、「今夜は別のホテルを予約してるから今度にしよう。さ、行くよ」と妻に言いながら、そそくさとその場を立ち去ろうとした。すると、いきなりそのバカモノ親父が「ここは宿泊客じゃなくても無料で入れますよ」と口を挟んできた。たちまち妻もそれに同乗するかのように、「そうなんだって。だからちょっとだけ行ってみようよ」と私の袖を摘んだ。そしてオモチャをねだる子供のように私の腕をブラブラと振ったのだった。
「わかったよ……」
仕方なくそう頷きながら私は歩き出した。妻も一緒に歩き出しながら振り返り、バカモノ親父に向かって「ありがとうございました」と愛想を振りまいた。ソッと振り返ると、バカモノ親父はいやらしい笑みを浮かべながら妻に手を振っていた。
そんな親父を見た瞬間、ふと、きっとこの親父は、妻のいやらしい体をジロジロと視姦しながら観光案内をしていたんだと思った。妻のその大きな乳肉に顔を埋めている自分を想像しながら、その『ばかうけ展望室』などというどうでもいい観光地を紹介したに違いないと思った。

そう思うなり、そんなスケベ爺にいきなりバカモノ呼ばわりされた怒りが再び蘇った。
カッと頭に血がのぼるなり、私は思わず「あんた!」と叫んでいた。ラックの前にしゃがみながらパンフレットを補充している親父は「ん?」と驚きながら顔を向けた。
私は親父に向かってツカツカと歩きながら、(想像してただろ……想像してただろ……今お前は、くだらない観光案内をしながら、私の妻のアソコの色や匂いや味を想像していただろ……そしてそこに顔を埋めながら、犬のようにそこらじゅうを嗅ぎ回り、そして蛇のようにヌルヌルと舐めるのを想像してただろ……)とブツブツと呟いていた。そして、本当に親父にそうされている妻の姿を妄想し、同時に亀頭をズキンっと疼かせた。

親父の前で足を止めると、親父は不審げな表情を浮かべながらゆっくりと立ち上がり、「何か?」とタバコ臭い息を吐いた。
「実はね、私は聖路加病院の医師なんだよ。だからさっきあんたが小便しているのをジッと見てたんだよ。ズバリ教えておいてあげるけど、あんた、とっても危険だよ。あんたのあの排尿の症状は間違いなく前立腺ガンだ。うん。恐らくステージ4だ。一刻も早く手術しないと手遅れになるぞバカモノ」
咄嗟にそんなデタラメがベラベラと口から出た。
親父はポカンっと口を開けたまま黙って私の話を聞いていた。
言うだけ言うと、そのまま早々と逃げた。走りながら振り返ると、親父は「えっ?」と唸ったまま亀のように首を伸ばしていた。
ざまあみろ。

(つづく)
《←目次》《17話へ→》
吐泥(へろど)17
2013/06/13 Thu 00:01
信濃川沿いの真新しい道路を進んで行くと、日本海特有の貪よりとした空に聳え立つペンシル型のビルが見えてきた。
タクシーは日航ホテルの駐車場へと滑り込んだ。メーターをギギッと鳴らした運転手が、慣れた口調で「ばかうけのエレベーターはそっちですから」と言った。『ばかうけ展望室』を『ばかうけ』と短縮していう所がいちいち憎たらしく感じた。
タクシーを降りると、いきなり強烈な潮風に吹き飛ばされそうになった。ホテルの脇を流れる信濃川のすぐ先は海らしく、暴風に近い潮風が狂ったようにビュービューと吹き荒んでいた。急いでホテルに避難し、そのままエレベーターに乗った。エレベーターを降りると、建物全体が暴風でゆらゆらと揺れており、このまま倒れるのではないかという恐怖に駆られた。
展望台からは新潟の町が一望できた。貪よりと曇っているくせに日本海はキラキラと輝いていた。妻は子供のようにはしゃぎながら、「見て見てあれが佐渡島だよ」と窓の外を指差していた。そんな妻に、「こんなのいつでもグーグルアースで見れるよ」と水を差す私は、一刻も早くここから立ち去りたかった。
展望台はぐるりと一周できるようになっており、東西南北の景色が眺められるようになっていた。客は見事に一人もいなかった。誰もいない通路を歩きながら、妻は「この景色、貸切だね」と喜んでいた。そんな子供のような妻に、思わず私はゾクッと欲情した。
(ここで少しだけ弄ってやるか……)
そう思いながら私は、本当に誰もいないかもう一度確認した。エレベーター前にある『おみやげコーナー』には若い男の店員が一人いたが、それ以外は誰もいなかった。ただし、所々に防犯カメラが設置されていた。カメラは厄介だぞと思いながら私は、それを一つ一つ確認しながら北側へと向かった。
北側の通路の一番奥は行き止まりになっていた。ここならば『おみやげコーナー』の店員から見られることはなかった。そこに到着すると、妻は、「うわぁ……大っきな港だね……」と言いながら窓の下に広がる港に目を丸めた。
私はすぐさま防犯カメラの死角を探した。そしてカメラの真下なら大丈夫だろうと思い、突き当たりの非常階段側にある窓を覗きながら、「ほら、こっちから見てごらん、船が何隻も見えるよ」と、カメラの死角に妻を誘導した。
「本当だぁ……綺麗な船だね……外国の船かなぁ……」
そう窓の下を覗き込んでいる妻の背後に寄り添った。「ん?」と優しく微笑みながら振り向く妻の左頬に、ソッと右頬を擦り寄せると、柔らかい頬の感触と共に甘い化粧の香りを感じた。
「貸し切りだから誰も見てないよ……」と囁きながら私はスカートの上から妻の尻を撫でた。すると妻は別段嫌がることもなく、再び「んふっ」と微笑みながら、そのまま黙って窓の下を覗き込んだのだった。

ムッチリとした尻肉は、スカートの上からでも十分に楽しむことができた。円を描くように手の平を滑らせ、時折その谷間に指を這わせてはスリスリと擦った。そうしながらも指先を徐々にスカートの裾へと伸ばすと、再度周囲を充分に確認した後、するりとスカートの中に手を滑り込ませた。
妻は「やだぁ」と慌ててスカートの裾を押さえた。そして背後をキョロキョロと見回しながら、「人が来たらどうするのよ」と私の手首を掴み、そこから私の手を抜こうとした。
「大丈夫だって、こんな所、誰も来やしないよ……」
そう言いながら私は、強引に妻の尻肉を鷲掴みにした。焦った妻は、「本当にヤダ、お願いだからやめて」と言いながらスカートの中で必死に私の手を押さえつけた。私はそんな妻の耳元にそっと唇を這わせた。そして「新幹線の中でもそんな事言ってたけど……結局、感じてたじゃないか……」と囁きながら妻の手を振り解くと、そのままその手を素早く腹へと回し、臍の下からパンティーの中へと滑り込ませたのだった。

そこに指が触れるなり、妻は「ハァん」と鼻から息を吐き、腰をカクンっ砕かせた。既にそこは驚くほどに濡れていた。まるでローションを垂らしたかのような割れ目は、軽く指を滑らすだけでヌルリと指を飲み込んだ。
「凄いじゃないか……どうしたんだよこれ……」
そう囁きながらドロドロの水袋を二本の指でグジュグジュに掻き回してやると、妻はゆっくりと背筋を反らしながら私の胸に凭れ、ゾッとするようないやらしい目で私を見た。
「お願い……新幹線の中からずっと我慢してるの……だから触らないで……我慢できなくなっちゃう……」
そう囁く妻の口紅の香りにクラクラと目眩を感じた。ふと、今まで妻は子供ようにはしゃぎながらも、実は内面では疼いていたのだと思った。あの近畿日本ツーリストの男と話していた時も、ここに来るまでのタクシーの中でも妻は悶々としていたのだ。普通の女、普通の妻、それを平然と装いながらも、妻はペニスを入れて欲しくてアソコをヌルヌルにしていたのである。
それを思うと、胸底から激しい興奮が次から次へと湧いてきた。この調子で行けば、妻をサウナに連れ込む事など容易い事だと思ったが、しかし、サウナまではまだ十時間以上も時間があり、それまでの間に妻の興奮が冷める可能性も十分にあった。だから私は、念には念を入れておこうと、更にここで妻を焦らす事にした。
いきなり妻の体を反転させた。正面からパンティーの中に手を入れ、ゴワゴワとした陰毛の奥に指を潜らせた。妻のうなじに唇を這わせながら、「我慢できないなら、ここでヤっちゃおうか……」と囁き、そっとズボンのチャックを開けた。
ガチガチに勃起したペニスの先を妻の太ももにムニムニと押し付けた。弾力性のある太ももは亀頭を跳ね返し、その度に亀頭と太ももの間で我慢汁がニトニトと糸を引いた。そうしながらパンティーを下ろすと、やはりそこでもクロッチの裏側にべっとりと付着していた汁が、ニトニトと糸を引いていた。
そんなパンティーを太ももまで下ろした。卑猥にとぐろを巻いた陰毛がモサッと溢れた。そこに亀頭をジリジリと擦り付けながら「入れて欲しいか」と聞くと、妻は「入れて……もう我慢できない……」と悲痛な声で囁きながらいきなりペニスを握りしめた。
妻は自分の股間を覗き込みながらペニスを陰毛の中に潜り込ませた。そして亀頭をクリトリスに押し付けると、いきなり手首をブルブルと震わせた。

私の亀頭はまるでピンクローターだった。妻はそうしながらも、時折、腰をクイッと突き上げては亀頭を穴の中にヌポッと入れたりしていた。それが穴の中に入る度に、私は「あぁ」と情けない声を出していた。まさに火傷の如く敏感になっていた私の亀頭に、そのヌルッとした粘膜の肉感は、残酷すぎるほどに気持ち良すぎたのだ。
それを何度も繰り返された私は我慢できなくなっていた。焦らすつもりが焦らせてしまい、もはやそんな計画などどうでもいいと思ってしまった。カーッと頭に血が上った私は、いきなり妻の両肩を鷲掴みにすると、乱暴に妻の体を回転させた。そして再び背後から妻を抱くと、素早くスカートを捲り上げ、パンティーを一気に足首まで下げた。
ムチムチとした尻肉を両手で鷲掴みにし、尻の谷間に亀頭を挟んだ。その弾力性のある尻肉を五本の指でグニグニと捏ねながら、割れ目に挟んだ亀頭を圧迫した。谷間の底では、陰毛をウヨウヨさせた大陰唇がプクッと膨らんでいた。尻肉が歪む度に割れ目がネチャッと捲れ、その奥に潜んでいるピンクの穴が、まるで餌を欲しがる鯉の口のようにパクパクしていた。
このまま一気に腰を突き出せば、たちまち私の肉棒は、根元までこの濡れ穴の中に飲み込まれてしまうだろう。そう思いながら、その瞬間の感触を想像しては背筋をゾクゾクさせていた私だったが、しかし、それによって今まで溜まりに溜まっていた妻の性欲がガス抜きされてしまい、今夜の計画が上手くいかないのではないかと、なかなかそのひと突きができずにいた。
そうモジモジしている私に痺れを切らしたのか、妻は突然窓際の手摺りに寄りかかり、おもいきり尻を突き出した。そしてその尻をくねくねと振りながらペニスを探し出し、そのパックリと開いたピンクの濡れ穴に亀頭をネチャネチャと擦り付けてきたのだった。

(つづく)
《←目次》《18話へ→》
タクシーは日航ホテルの駐車場へと滑り込んだ。メーターをギギッと鳴らした運転手が、慣れた口調で「ばかうけのエレベーターはそっちですから」と言った。『ばかうけ展望室』を『ばかうけ』と短縮していう所がいちいち憎たらしく感じた。
タクシーを降りると、いきなり強烈な潮風に吹き飛ばされそうになった。ホテルの脇を流れる信濃川のすぐ先は海らしく、暴風に近い潮風が狂ったようにビュービューと吹き荒んでいた。急いでホテルに避難し、そのままエレベーターに乗った。エレベーターを降りると、建物全体が暴風でゆらゆらと揺れており、このまま倒れるのではないかという恐怖に駆られた。
展望台からは新潟の町が一望できた。貪よりと曇っているくせに日本海はキラキラと輝いていた。妻は子供のようにはしゃぎながら、「見て見てあれが佐渡島だよ」と窓の外を指差していた。そんな妻に、「こんなのいつでもグーグルアースで見れるよ」と水を差す私は、一刻も早くここから立ち去りたかった。
展望台はぐるりと一周できるようになっており、東西南北の景色が眺められるようになっていた。客は見事に一人もいなかった。誰もいない通路を歩きながら、妻は「この景色、貸切だね」と喜んでいた。そんな子供のような妻に、思わず私はゾクッと欲情した。
(ここで少しだけ弄ってやるか……)
そう思いながら私は、本当に誰もいないかもう一度確認した。エレベーター前にある『おみやげコーナー』には若い男の店員が一人いたが、それ以外は誰もいなかった。ただし、所々に防犯カメラが設置されていた。カメラは厄介だぞと思いながら私は、それを一つ一つ確認しながら北側へと向かった。
北側の通路の一番奥は行き止まりになっていた。ここならば『おみやげコーナー』の店員から見られることはなかった。そこに到着すると、妻は、「うわぁ……大っきな港だね……」と言いながら窓の下に広がる港に目を丸めた。
私はすぐさま防犯カメラの死角を探した。そしてカメラの真下なら大丈夫だろうと思い、突き当たりの非常階段側にある窓を覗きながら、「ほら、こっちから見てごらん、船が何隻も見えるよ」と、カメラの死角に妻を誘導した。
「本当だぁ……綺麗な船だね……外国の船かなぁ……」
そう窓の下を覗き込んでいる妻の背後に寄り添った。「ん?」と優しく微笑みながら振り向く妻の左頬に、ソッと右頬を擦り寄せると、柔らかい頬の感触と共に甘い化粧の香りを感じた。
「貸し切りだから誰も見てないよ……」と囁きながら私はスカートの上から妻の尻を撫でた。すると妻は別段嫌がることもなく、再び「んふっ」と微笑みながら、そのまま黙って窓の下を覗き込んだのだった。

ムッチリとした尻肉は、スカートの上からでも十分に楽しむことができた。円を描くように手の平を滑らせ、時折その谷間に指を這わせてはスリスリと擦った。そうしながらも指先を徐々にスカートの裾へと伸ばすと、再度周囲を充分に確認した後、するりとスカートの中に手を滑り込ませた。
妻は「やだぁ」と慌ててスカートの裾を押さえた。そして背後をキョロキョロと見回しながら、「人が来たらどうするのよ」と私の手首を掴み、そこから私の手を抜こうとした。
「大丈夫だって、こんな所、誰も来やしないよ……」
そう言いながら私は、強引に妻の尻肉を鷲掴みにした。焦った妻は、「本当にヤダ、お願いだからやめて」と言いながらスカートの中で必死に私の手を押さえつけた。私はそんな妻の耳元にそっと唇を這わせた。そして「新幹線の中でもそんな事言ってたけど……結局、感じてたじゃないか……」と囁きながら妻の手を振り解くと、そのままその手を素早く腹へと回し、臍の下からパンティーの中へと滑り込ませたのだった。

そこに指が触れるなり、妻は「ハァん」と鼻から息を吐き、腰をカクンっ砕かせた。既にそこは驚くほどに濡れていた。まるでローションを垂らしたかのような割れ目は、軽く指を滑らすだけでヌルリと指を飲み込んだ。
「凄いじゃないか……どうしたんだよこれ……」
そう囁きながらドロドロの水袋を二本の指でグジュグジュに掻き回してやると、妻はゆっくりと背筋を反らしながら私の胸に凭れ、ゾッとするようないやらしい目で私を見た。
「お願い……新幹線の中からずっと我慢してるの……だから触らないで……我慢できなくなっちゃう……」
そう囁く妻の口紅の香りにクラクラと目眩を感じた。ふと、今まで妻は子供ようにはしゃぎながらも、実は内面では疼いていたのだと思った。あの近畿日本ツーリストの男と話していた時も、ここに来るまでのタクシーの中でも妻は悶々としていたのだ。普通の女、普通の妻、それを平然と装いながらも、妻はペニスを入れて欲しくてアソコをヌルヌルにしていたのである。
それを思うと、胸底から激しい興奮が次から次へと湧いてきた。この調子で行けば、妻をサウナに連れ込む事など容易い事だと思ったが、しかし、サウナまではまだ十時間以上も時間があり、それまでの間に妻の興奮が冷める可能性も十分にあった。だから私は、念には念を入れておこうと、更にここで妻を焦らす事にした。
いきなり妻の体を反転させた。正面からパンティーの中に手を入れ、ゴワゴワとした陰毛の奥に指を潜らせた。妻のうなじに唇を這わせながら、「我慢できないなら、ここでヤっちゃおうか……」と囁き、そっとズボンのチャックを開けた。
ガチガチに勃起したペニスの先を妻の太ももにムニムニと押し付けた。弾力性のある太ももは亀頭を跳ね返し、その度に亀頭と太ももの間で我慢汁がニトニトと糸を引いた。そうしながらパンティーを下ろすと、やはりそこでもクロッチの裏側にべっとりと付着していた汁が、ニトニトと糸を引いていた。
そんなパンティーを太ももまで下ろした。卑猥にとぐろを巻いた陰毛がモサッと溢れた。そこに亀頭をジリジリと擦り付けながら「入れて欲しいか」と聞くと、妻は「入れて……もう我慢できない……」と悲痛な声で囁きながらいきなりペニスを握りしめた。
妻は自分の股間を覗き込みながらペニスを陰毛の中に潜り込ませた。そして亀頭をクリトリスに押し付けると、いきなり手首をブルブルと震わせた。

私の亀頭はまるでピンクローターだった。妻はそうしながらも、時折、腰をクイッと突き上げては亀頭を穴の中にヌポッと入れたりしていた。それが穴の中に入る度に、私は「あぁ」と情けない声を出していた。まさに火傷の如く敏感になっていた私の亀頭に、そのヌルッとした粘膜の肉感は、残酷すぎるほどに気持ち良すぎたのだ。
それを何度も繰り返された私は我慢できなくなっていた。焦らすつもりが焦らせてしまい、もはやそんな計画などどうでもいいと思ってしまった。カーッと頭に血が上った私は、いきなり妻の両肩を鷲掴みにすると、乱暴に妻の体を回転させた。そして再び背後から妻を抱くと、素早くスカートを捲り上げ、パンティーを一気に足首まで下げた。
ムチムチとした尻肉を両手で鷲掴みにし、尻の谷間に亀頭を挟んだ。その弾力性のある尻肉を五本の指でグニグニと捏ねながら、割れ目に挟んだ亀頭を圧迫した。谷間の底では、陰毛をウヨウヨさせた大陰唇がプクッと膨らんでいた。尻肉が歪む度に割れ目がネチャッと捲れ、その奥に潜んでいるピンクの穴が、まるで餌を欲しがる鯉の口のようにパクパクしていた。
このまま一気に腰を突き出せば、たちまち私の肉棒は、根元までこの濡れ穴の中に飲み込まれてしまうだろう。そう思いながら、その瞬間の感触を想像しては背筋をゾクゾクさせていた私だったが、しかし、それによって今まで溜まりに溜まっていた妻の性欲がガス抜きされてしまい、今夜の計画が上手くいかないのではないかと、なかなかそのひと突きができずにいた。
そうモジモジしている私に痺れを切らしたのか、妻は突然窓際の手摺りに寄りかかり、おもいきり尻を突き出した。そしてその尻をくねくねと振りながらペニスを探し出し、そのパックリと開いたピンクの濡れ穴に亀頭をネチャネチャと擦り付けてきたのだった。

(つづく)
《←目次》《18話へ→》
吐泥(へろど)18
2013/06/13 Thu 00:01
「早く入れて……」
そう卑猥に尻を振る妻に、もうこれ以上我慢できなかった。そこで私は、ピンクの粘膜にピタピタと押し付けられている亀頭を見下ろしながら、十回だけピストンしようと思った。十回のピストンでピタリと止めてしまえば、それは逆に刺激剤となり、今の妻の性欲を更に高める事に成り得るのだ。そう私は必死に思い込みながらも、その妥協を強引に正当化したのだった。
開いた割れ目に亀頭を押し付けたままペニスの根元を摘んだ。そしてそれをグルグルと回しながら妻の汁を亀頭に満遍なく塗り込むと、ヌルヌルになった亀頭の先を鯉の口のような小さな穴に突き立てながら妻の腰を両手で押さえた。
「入れるよ……」
そう呟いた時、ふと、妻の足元でビーンっと伸びているピンクのパンティーが目に飛び込んできた。これは目立つと思った。もし今、誰かが西側の通路からこの北側の通路に曲がって来たとしても、この離れた距離なら私たちの背中しか見えず、まさか私たちがセックスしているなどとは思わないだろう。が、しかし、この足首に下りているピンクのパンティーが見られたら、その行為をしている事が一目瞭然なのだ。

これは目立ち過ぎると焦った私は、既にカリ首まで沈んでいた亀頭をそこからヌポッと抜き、そのまま妻の足元にしゃがんだ。妻は不満げに表情を歪めながら足元を覗き込み、「どうしたの?」と聞いてきた。私は「これは目立ち過ぎるから脱ごう」と言うと、素早く妻の右足を持ち上げ、そこからピンクのパンティーをスルリと抜き取った。
と、その時、いきなり西側の通路の方から、明らかに団体と思われるガヤガヤとした喧騒が聞こえてきた。私は、「やばいぞ」と小さく叫びながら慌てて立ち上がった。それに合わせて妻も、手摺りに寄りかかったまま片手でサッとスカートを下ろし、そのまま何もなかったかのように平然と窓の向こうの大海原を見つめた。間一髪だった。
団体が一気に押し寄せてきた。中国語が飛び交い、辺りは何とも言えないキツい香辛料の香りに包まれた。バスガイドのおばさんが、「どちらからお見えですか」と妻に話しかけた。「東京です」と笑顔で答える妻のその冷静さに私は激しい疑念を抱いた。
妻はノーパンなのだ。この女は、つい一分前までドロドロに濡れたオマンコを剥き出しながら、「早く入れて」と尻を振っていたのである。なのに今は普通の女だった。つい一分前まで想像を絶する変態女だったのに、今は「東京です」などと、平然と笑顔を振り巻いているのだ。
不意に、サッとスカートを下ろした瞬間の、あの妻の慣れた手つきが頭に浮かんだ。この女はいつもそうしているのかも知れない、と思った。私が会社に行っている時、セールスマンの若い男に玄関でソッとヤらせているのではないかという、そんな過剰な妄想が浮かび上がってきた。

そんな疑念を勝手に抱き、激しい嫉妬に駆られた。バスガイドと話す妻の手を強引に引っ張り、いきなりズカズカとエレベーターホールに向かって歩き出した。妻はそんな私の顔を恐る恐る覗き込みながら「何を怒ってるの?」と聞いてきた。
私は、この女は病気だ、と思った。性欲が制御できず、ヤリたくなったらどこでも誰にでも股を開く病的な変態女だ、と思い込んだ。そう思うことにより、今のこの『普通の妻』に対し、激しい興奮を得ることができた。
通路の角を曲がると、正面におみやげコーナーが見えた。その奥に簡易的なテーブルが並んだ喫茶コーナーがあり、私は「コーヒーを飲んでいこう」と言いながらそこに進んだ。
エレベーターホール前の案内所にいた若い男性店員が私たちに気付いた。案内所のカウンターから喫茶コーナーのカウンターへと慌てて移動した彼は、ぎこちない笑顔で「いらっしゃいませ」と私たちを迎えた。
喫茶コーナーには客は誰もいなかった。それでも私は敢えて一番奥の隅のテーブルに腰掛け、どうでもいい新潟の景色に目をやった。妻は不安げな表情を浮かべながら、「ねぇ、さっきから何怒ってるの?」と私の真正面に座った。「別に怒ってなんかいないよ」と呟き、テーブルの上に灰皿がないかと探していると、妻は唇を尖らせながら「パンツ、返してよ」と、上目遣いで私を見た。
そんな妻の背後に、お冷のグラスを二つ手にした店員が近づいてくるのが見えた。それをチラチラと確認しながら「店員が来たぞ……股を開け……」と呟くと、妻は不安げな目を「えっ」と見開きながら後ろを振り向いた。私は素早くテーブルの下で妻のヒールを靴の先でツンツンと突きながら、「いいから、そのまま股を開くんだ……」と命令した。すると妻はその意味がやっと理解できたのか、ソッと前を向きながら下唇を噛んだ。そして背後に迫る店員の足音に脅えながら、テーブルの下でゆっくりと股を開いたのだった。

「僕はアイスコーヒー。キミは?」と、そう妻に聞いた。妻はカッと顔を赤らめながら、「アイスティー……」と呟き、そのまま下を向いてしまった。
妻は羞恥に駆られていた。新幹線の時よりも緊張していた。もちろんその店員は、まさか妻がテーブルの下で陰部を曝け出しているとは夢にも思っていないはずだ。しかし、そうわかっていても、やはり寝ている者よりも起きている者の前で露出する方が緊張するらしく、妻はあの新幹線で露出していた時とは明らかに違う羞恥の表情を浮かべ、噛み締めた下唇をブルブルと震わせていた。
「アイスコーヒーをお一つと、アイスティーをお一つですね……」
そうモタモタと伝票に書き込んでいる店員は、妙にナヨナヨとした二十代の青年だった。その瘦せこけた体と黒縁メガネはいかにもオタクっぽく、絶対に童貞だと思った。
その真面目そうな青年の顔を見ていると、不意にこの童貞オタク青年に妻のアソコを見せてみたいという衝動に駆られた。貪欲な親父たちに陵辱されて悶えるMな妻も見てみたいが、こんな童貞青年を弄んでいるSな妻も見てみたいと思ったのだ。
彼が立ち去るなり、「あいつ、キミのオッパイばかり見てたね」と笑うと、妻は私のその笑顔が命令の終わりの合図だと思ったのか、テーブルの下で大きく開いていた股を静かに閉じ始めた。「まだ閉じちゃダメだよ。いいって言うまでちゃんと開いておくんだ……」と、そう言いながら慌ててテーブルの下を覗くと、妻は恨めしそうな目で私を見ながら、今閉じたばかりの股を再び開いたのだった。
窓の光に照らされた陰毛が、まるで廃墟の工場に捨てられたエロ本のように卑猥だった。黒光りした小陰唇がだらしなく半開きし、その奥で痛々しい赤肉がテラテラと輝いていた。
私はそこを覗き込みながら、「指で開いてみろ……」とそう命令した。すると、暫くしてタランチュラのように動く十本の指がテーブルの上からゆっくりと降りてきた。二つの手は、そのまま太ももの内側にぺたりと張り付き、親指だけを中心に伸ばした。親指はヌルヌルと滑りながらも、器用にそのどす黒いビラビラを捕らえ、ゆっくりと開いた。透明の汁がネチャっと糸を引き、中から真っ赤に爛れた生肉がヌルっと現れた。それは威嚇するエイリアンのようにグロテスクでもあり、熟した桃のようにエロチックでもあった。

剥き出された赤い穴はヒクヒクと小さなしゃっくりを繰り返していた。その度に透明の汁がタラタラと垂れ、肛門までもテラテラと濡らしていた。私はその穴の中にペニスがヌルヌルと動き回る感触を思い出しながらムラムラと興奮していた。そしてその興奮が暴走し、「あの店員、きっと童貞だぜ……そのいやらしいオマンコ、見せてみるか?」と声を震わせると、いきなり妻は「いやよ」と冷たく答え、素早く股をサッと閉じた。背筋がゾッとした。私はこれが怖かったのだ。この、いきなり妻の興奮がピタリと冷めるという事を、何より私は怯えていたのだった。
そのような状況は過去に何度かあった。私が寝取られに目覚めた頃、妻を熱海の温泉に連れて行ったことがあるのだが、その晩、セックスしながら私は、「ノーブラ、ノーパンの浴衣姿でマッサージしてもらおう」と妻に囁きかけていた。そんな私の囁きに妻は興奮していた。「押入れに隠れながら、キミがマッサージのおじさんにバックからヤられるのを見ているから」と囁きながら腰を振っていると、妻はそのシーンをリアルに想像していたのか、私がそう囁く度に狂ったように悶えていた。

しかし、いざ本当にマッサージに電話をかけようとすると、妻はいきなり素に戻り、「絶対にヤダ」と激しく抵抗した。
同じように、私の実家に帰った時もそうだった。セックス中、隣の部屋で寝ている弟に見せつけてやろうと囁きかけては妻をその気にさせたのだが、しかし、いざ隣の部屋の襖を開けようとすると妻はいきなり激怒し、そのセックスは無残にも途中で中断されてしまったのだった。そんなことが度々あったため、私は今回もサウナの玄関でいきなりドタキャンされるのではないかと怯えていたのだった。
私は(このままではマズイぞ……)と思いながら、慌ててテーブルの下から抜け出した。そして、同じ失敗を繰り返さないためにも、今のうちに徹底的に妻を欲情させておかなければと思いながら、いそいそと妻の隣の席に移動した。
妻はそんな私を訝しげに見ながら「何?」と首を傾げた。「いや……さっき途中で邪魔されただろ……」と言いながらズボンのチャックを開け、そこからギチギチに勃起したペニスを摘み出すと、妻は店内を見回しながら、「こんな所で出さないでよ、店員さんに見つかっちゃうじゃない」と慌てた。「大丈夫よ、まだ来ないよ……シコシコしてくれよ……」と私は妻の手を握った。すると妻は、「早くホテルに行きましょうよ……」と困惑しながらも、私のそれを力強く握った。

妻の手が上下に動き出すと、私の手も自然に妻の股間へと伸びた。最初は「ヤだ」と私の手を振り払っていた妻だったが、しかし私の指先がその巨大に膨張したクリトリスに触れるなり、突然妻は下唇を噛んで俯いてしまった。
その突起物は、まるでロボットのスイッチのようだった。『弱』のレベルで優しくヌルヌルと転がしてやると、妖艶に腰をくねらせながら鼻を「ふん、ふん」と切なく鳴らし、レベル『強』で激しくコリコリと転がしてやると、腰をヒクヒクと痙攣させては私の腕にしがみ付き、顔を苦しそうに顰めては『んん……んん……』と卑猥に唸った。
そんなスイッチの強と弱を交互に繰り返しながら指をじわじわと下ろしていくと、指はドロドロと汁が溢れる裂け目にツルンっと吸い込まれた。穴の中は異様に熱かった。ザラザラとする天井に指腹をヌルヌルと滑らせながら、ゆっくり穴の奥へと指を沈めた。丸いブヨブヨとした壁に突き当たると、不意に、思い出横丁のホルモン屋の、脂がたっぷりと付いた小腸を思い出した。
「あの童貞君に、ここをこうして弄らせてみないか」
そう提案しながら指を回転させ、穴の中を乱暴に掻き回した。ぶちょ、ぶちょ、という下品な音がテーブルの下で響いていた。もはや妻は抵抗する力もなく、その快楽に身を委ねるかの如く、ただただ股をだらしなく緩ませていた。

「もうダメ……早くホテルに連れてってよ……」
そう腕にしがみ付いてくる妻の耳元に、「あの童貞くんも一緒にホテルに連れて行かないか……」と囁いた。妻は黙っていた。答えないまま、鼻を「ふん、ふん」と鳴らし、右手に握った肉棒を突然上下にシゴき始めた。その瞬間、私はイケると思った。この無言の手コキが確固たる意思表示であり、今の妻なら、素直にあの青年とセックスするだろうと確信した。
私は本気で悩んだ。ここであの青年を挑発し、もし青年がその気になればそのままこの全日空ホテルに部屋を取り、そこに青年を連れ込むのだ。サウナまではまだ時間があった。その間、妻にあの童貞青年を性玩具にさせ……
そんな寝取られもなかなか面白いと思った。私は、本気でそれを実行しようかどうしようか悩みながら、童貞青年を性玩具にする妻の猥褻な姿を想像していたのだった。

(つづく)
《←目次》《19話へ→》
そう卑猥に尻を振る妻に、もうこれ以上我慢できなかった。そこで私は、ピンクの粘膜にピタピタと押し付けられている亀頭を見下ろしながら、十回だけピストンしようと思った。十回のピストンでピタリと止めてしまえば、それは逆に刺激剤となり、今の妻の性欲を更に高める事に成り得るのだ。そう私は必死に思い込みながらも、その妥協を強引に正当化したのだった。
開いた割れ目に亀頭を押し付けたままペニスの根元を摘んだ。そしてそれをグルグルと回しながら妻の汁を亀頭に満遍なく塗り込むと、ヌルヌルになった亀頭の先を鯉の口のような小さな穴に突き立てながら妻の腰を両手で押さえた。
「入れるよ……」
そう呟いた時、ふと、妻の足元でビーンっと伸びているピンクのパンティーが目に飛び込んできた。これは目立つと思った。もし今、誰かが西側の通路からこの北側の通路に曲がって来たとしても、この離れた距離なら私たちの背中しか見えず、まさか私たちがセックスしているなどとは思わないだろう。が、しかし、この足首に下りているピンクのパンティーが見られたら、その行為をしている事が一目瞭然なのだ。

これは目立ち過ぎると焦った私は、既にカリ首まで沈んでいた亀頭をそこからヌポッと抜き、そのまま妻の足元にしゃがんだ。妻は不満げに表情を歪めながら足元を覗き込み、「どうしたの?」と聞いてきた。私は「これは目立ち過ぎるから脱ごう」と言うと、素早く妻の右足を持ち上げ、そこからピンクのパンティーをスルリと抜き取った。
と、その時、いきなり西側の通路の方から、明らかに団体と思われるガヤガヤとした喧騒が聞こえてきた。私は、「やばいぞ」と小さく叫びながら慌てて立ち上がった。それに合わせて妻も、手摺りに寄りかかったまま片手でサッとスカートを下ろし、そのまま何もなかったかのように平然と窓の向こうの大海原を見つめた。間一髪だった。
団体が一気に押し寄せてきた。中国語が飛び交い、辺りは何とも言えないキツい香辛料の香りに包まれた。バスガイドのおばさんが、「どちらからお見えですか」と妻に話しかけた。「東京です」と笑顔で答える妻のその冷静さに私は激しい疑念を抱いた。
妻はノーパンなのだ。この女は、つい一分前までドロドロに濡れたオマンコを剥き出しながら、「早く入れて」と尻を振っていたのである。なのに今は普通の女だった。つい一分前まで想像を絶する変態女だったのに、今は「東京です」などと、平然と笑顔を振り巻いているのだ。
不意に、サッとスカートを下ろした瞬間の、あの妻の慣れた手つきが頭に浮かんだ。この女はいつもそうしているのかも知れない、と思った。私が会社に行っている時、セールスマンの若い男に玄関でソッとヤらせているのではないかという、そんな過剰な妄想が浮かび上がってきた。

そんな疑念を勝手に抱き、激しい嫉妬に駆られた。バスガイドと話す妻の手を強引に引っ張り、いきなりズカズカとエレベーターホールに向かって歩き出した。妻はそんな私の顔を恐る恐る覗き込みながら「何を怒ってるの?」と聞いてきた。
私は、この女は病気だ、と思った。性欲が制御できず、ヤリたくなったらどこでも誰にでも股を開く病的な変態女だ、と思い込んだ。そう思うことにより、今のこの『普通の妻』に対し、激しい興奮を得ることができた。
通路の角を曲がると、正面におみやげコーナーが見えた。その奥に簡易的なテーブルが並んだ喫茶コーナーがあり、私は「コーヒーを飲んでいこう」と言いながらそこに進んだ。
エレベーターホール前の案内所にいた若い男性店員が私たちに気付いた。案内所のカウンターから喫茶コーナーのカウンターへと慌てて移動した彼は、ぎこちない笑顔で「いらっしゃいませ」と私たちを迎えた。
喫茶コーナーには客は誰もいなかった。それでも私は敢えて一番奥の隅のテーブルに腰掛け、どうでもいい新潟の景色に目をやった。妻は不安げな表情を浮かべながら、「ねぇ、さっきから何怒ってるの?」と私の真正面に座った。「別に怒ってなんかいないよ」と呟き、テーブルの上に灰皿がないかと探していると、妻は唇を尖らせながら「パンツ、返してよ」と、上目遣いで私を見た。
そんな妻の背後に、お冷のグラスを二つ手にした店員が近づいてくるのが見えた。それをチラチラと確認しながら「店員が来たぞ……股を開け……」と呟くと、妻は不安げな目を「えっ」と見開きながら後ろを振り向いた。私は素早くテーブルの下で妻のヒールを靴の先でツンツンと突きながら、「いいから、そのまま股を開くんだ……」と命令した。すると妻はその意味がやっと理解できたのか、ソッと前を向きながら下唇を噛んだ。そして背後に迫る店員の足音に脅えながら、テーブルの下でゆっくりと股を開いたのだった。

「僕はアイスコーヒー。キミは?」と、そう妻に聞いた。妻はカッと顔を赤らめながら、「アイスティー……」と呟き、そのまま下を向いてしまった。
妻は羞恥に駆られていた。新幹線の時よりも緊張していた。もちろんその店員は、まさか妻がテーブルの下で陰部を曝け出しているとは夢にも思っていないはずだ。しかし、そうわかっていても、やはり寝ている者よりも起きている者の前で露出する方が緊張するらしく、妻はあの新幹線で露出していた時とは明らかに違う羞恥の表情を浮かべ、噛み締めた下唇をブルブルと震わせていた。
「アイスコーヒーをお一つと、アイスティーをお一つですね……」
そうモタモタと伝票に書き込んでいる店員は、妙にナヨナヨとした二十代の青年だった。その瘦せこけた体と黒縁メガネはいかにもオタクっぽく、絶対に童貞だと思った。
その真面目そうな青年の顔を見ていると、不意にこの童貞オタク青年に妻のアソコを見せてみたいという衝動に駆られた。貪欲な親父たちに陵辱されて悶えるMな妻も見てみたいが、こんな童貞青年を弄んでいるSな妻も見てみたいと思ったのだ。
彼が立ち去るなり、「あいつ、キミのオッパイばかり見てたね」と笑うと、妻は私のその笑顔が命令の終わりの合図だと思ったのか、テーブルの下で大きく開いていた股を静かに閉じ始めた。「まだ閉じちゃダメだよ。いいって言うまでちゃんと開いておくんだ……」と、そう言いながら慌ててテーブルの下を覗くと、妻は恨めしそうな目で私を見ながら、今閉じたばかりの股を再び開いたのだった。
窓の光に照らされた陰毛が、まるで廃墟の工場に捨てられたエロ本のように卑猥だった。黒光りした小陰唇がだらしなく半開きし、その奥で痛々しい赤肉がテラテラと輝いていた。
私はそこを覗き込みながら、「指で開いてみろ……」とそう命令した。すると、暫くしてタランチュラのように動く十本の指がテーブルの上からゆっくりと降りてきた。二つの手は、そのまま太ももの内側にぺたりと張り付き、親指だけを中心に伸ばした。親指はヌルヌルと滑りながらも、器用にそのどす黒いビラビラを捕らえ、ゆっくりと開いた。透明の汁がネチャっと糸を引き、中から真っ赤に爛れた生肉がヌルっと現れた。それは威嚇するエイリアンのようにグロテスクでもあり、熟した桃のようにエロチックでもあった。

剥き出された赤い穴はヒクヒクと小さなしゃっくりを繰り返していた。その度に透明の汁がタラタラと垂れ、肛門までもテラテラと濡らしていた。私はその穴の中にペニスがヌルヌルと動き回る感触を思い出しながらムラムラと興奮していた。そしてその興奮が暴走し、「あの店員、きっと童貞だぜ……そのいやらしいオマンコ、見せてみるか?」と声を震わせると、いきなり妻は「いやよ」と冷たく答え、素早く股をサッと閉じた。背筋がゾッとした。私はこれが怖かったのだ。この、いきなり妻の興奮がピタリと冷めるという事を、何より私は怯えていたのだった。
そのような状況は過去に何度かあった。私が寝取られに目覚めた頃、妻を熱海の温泉に連れて行ったことがあるのだが、その晩、セックスしながら私は、「ノーブラ、ノーパンの浴衣姿でマッサージしてもらおう」と妻に囁きかけていた。そんな私の囁きに妻は興奮していた。「押入れに隠れながら、キミがマッサージのおじさんにバックからヤられるのを見ているから」と囁きながら腰を振っていると、妻はそのシーンをリアルに想像していたのか、私がそう囁く度に狂ったように悶えていた。

しかし、いざ本当にマッサージに電話をかけようとすると、妻はいきなり素に戻り、「絶対にヤダ」と激しく抵抗した。
同じように、私の実家に帰った時もそうだった。セックス中、隣の部屋で寝ている弟に見せつけてやろうと囁きかけては妻をその気にさせたのだが、しかし、いざ隣の部屋の襖を開けようとすると妻はいきなり激怒し、そのセックスは無残にも途中で中断されてしまったのだった。そんなことが度々あったため、私は今回もサウナの玄関でいきなりドタキャンされるのではないかと怯えていたのだった。
私は(このままではマズイぞ……)と思いながら、慌ててテーブルの下から抜け出した。そして、同じ失敗を繰り返さないためにも、今のうちに徹底的に妻を欲情させておかなければと思いながら、いそいそと妻の隣の席に移動した。
妻はそんな私を訝しげに見ながら「何?」と首を傾げた。「いや……さっき途中で邪魔されただろ……」と言いながらズボンのチャックを開け、そこからギチギチに勃起したペニスを摘み出すと、妻は店内を見回しながら、「こんな所で出さないでよ、店員さんに見つかっちゃうじゃない」と慌てた。「大丈夫よ、まだ来ないよ……シコシコしてくれよ……」と私は妻の手を握った。すると妻は、「早くホテルに行きましょうよ……」と困惑しながらも、私のそれを力強く握った。

妻の手が上下に動き出すと、私の手も自然に妻の股間へと伸びた。最初は「ヤだ」と私の手を振り払っていた妻だったが、しかし私の指先がその巨大に膨張したクリトリスに触れるなり、突然妻は下唇を噛んで俯いてしまった。
その突起物は、まるでロボットのスイッチのようだった。『弱』のレベルで優しくヌルヌルと転がしてやると、妖艶に腰をくねらせながら鼻を「ふん、ふん」と切なく鳴らし、レベル『強』で激しくコリコリと転がしてやると、腰をヒクヒクと痙攣させては私の腕にしがみ付き、顔を苦しそうに顰めては『んん……んん……』と卑猥に唸った。
そんなスイッチの強と弱を交互に繰り返しながら指をじわじわと下ろしていくと、指はドロドロと汁が溢れる裂け目にツルンっと吸い込まれた。穴の中は異様に熱かった。ザラザラとする天井に指腹をヌルヌルと滑らせながら、ゆっくり穴の奥へと指を沈めた。丸いブヨブヨとした壁に突き当たると、不意に、思い出横丁のホルモン屋の、脂がたっぷりと付いた小腸を思い出した。
「あの童貞君に、ここをこうして弄らせてみないか」
そう提案しながら指を回転させ、穴の中を乱暴に掻き回した。ぶちょ、ぶちょ、という下品な音がテーブルの下で響いていた。もはや妻は抵抗する力もなく、その快楽に身を委ねるかの如く、ただただ股をだらしなく緩ませていた。

「もうダメ……早くホテルに連れてってよ……」
そう腕にしがみ付いてくる妻の耳元に、「あの童貞くんも一緒にホテルに連れて行かないか……」と囁いた。妻は黙っていた。答えないまま、鼻を「ふん、ふん」と鳴らし、右手に握った肉棒を突然上下にシゴき始めた。その瞬間、私はイケると思った。この無言の手コキが確固たる意思表示であり、今の妻なら、素直にあの青年とセックスするだろうと確信した。
私は本気で悩んだ。ここであの青年を挑発し、もし青年がその気になればそのままこの全日空ホテルに部屋を取り、そこに青年を連れ込むのだ。サウナまではまだ時間があった。その間、妻にあの童貞青年を性玩具にさせ……
そんな寝取られもなかなか面白いと思った。私は、本気でそれを実行しようかどうしようか悩みながら、童貞青年を性玩具にする妻の猥褻な姿を想像していたのだった。

(つづく)
《←目次》《19話へ→》
吐泥(へろど)19
2013/06/13 Thu 00:01
童貞青年を性玩具にする妻。実に魅力的な寝取られプレイだったが、しかしそんな私の企みは脆くも崩れた。妻はそんな私の企みを予感していたのか、アイスコーヒーとアイスティーを持った青年がこちらに向かって来るなり私のペニスから手を離し、それまでだらりと緩ませていた股を、いきなりギシッと閉じてしまったのだ。
実は私は、青年がテーブルの上にアイスコーヒーを置くのを狙っていた。その瞬間、わざとそのアイスコーヒーに肘をぶつけ、それを床にぶちまけようと企んでいたのだ。そうなれば当然、青年は慌てて床のコーヒーを拭き始めるだろう。真面目そうな青年は、きっとテーブルの下にまで頭を潜らせながらせっせと拭き始めるだろう。そこで青年は妻の性器を間近に見せつけられるのだ。グジョグジョと指が蠢き、いやらしい汁がダラダラと溢れるその卑猥な光景を間近に見せつけられた童貞は、激しく興奮するに違いなかった。
そして、更に追い討ちをかけるかのように、妻の顔を私の股間に押し付けてやるつもりだった。その時の妻は、見ず知らずの青年に陰部を見られているというこの異常な状況に、極度な興奮状態に陥っているはずであり、だから妻は、迷うことなく私の肉棒にしゃぶりつくに違いなかった。

そこまで青年に見せつけておき、青年の興奮状態を見計らった上で、私がソッと青年に誘いの手を差し伸べるのだ。「私たちの部屋に遊びに来ないか?」と……。
それが私の企みだった。だから私は妻の妖艶な手コキに必死に耐えながら、彼が来るのを待っていたのだが、しかし、またしてもドタキャンされた。あと一歩のところで全ての行為を強制終了され、無残にもドタキャンされてしまったのだった。
無念に顔を歪めていた私は、今の妻のこの状態ではまだまだ安心できないと思った。このままではサウナの入り口でドタキャンされる可能性も高く、何かもっと強烈な楔(くさび)を、今のうちに妻の精神に打ち込んでおかなければと改めて思い知らされた。
妙に冷め切った空気の中、私は無言でアイスコーヒーを啜った。香りもコクも全く感じられない黒い水だった。それでも喉が渇いていた私は、それを一気にズズズッと飲み干し、まだ半分以上アイスティーが残っている妻に、「行くぞ」とボソッと呟いた。
スタスタとレジに向かう途中、またしても妻が「何か怒ってる?」と聞いてきた。私はそう首を傾げている妻の顔を覗き込み、「あたりまえだ」とぶっきら棒に吐き捨てた。
「どうして怒ってるの?」
「キミがドタキャンするからだ」
「ドタキャン? 私が何をドタキャンしたの?」
「あの店員にオマンコを見せなかった」
「私、そんな事するなんて言ってないわよ」
「ああ、言ってないさ。言っていないとも。言ってはないが、しかしキミのアソコは濡れていた。それに私がそれを提案した時、キミは黙ったまま私のチンポもシコシコした。あれは明らかにそれに合意したという意思表示じゃないか!」
突然そう声を荒げると、妻は慌てて辺りを見回した。そして素早く私の袖をギュッと掴むと、「大きな声で変なこと言わないでよ」と、私の目をキッと睨んだのだった。
妻のその目に、私は素直に(マズい)と思った。ここで妻を怒らせてしまっては今後の計画が全て台無しになってしまう恐れがあるのだ。が、しかし、だからと言って、ここでいきなり態度を急変させるのも良くなかった。ここで私が妻に気を使い、下手に出るような事になれば、今後、この旅行においての主導権は妻が握ることになるだろう。そうなれば、それこそサウナの計画など夢のまた夢となり、インチキレビューだらけの食べログ人気店をぐるぐる回るだけのバカ旅行となってしまうのだ。
だからこそ引けなかった。たとえ妻が、怒ろうが、嫌がろうが、泣き喚こうが、ここは絶対に引いてはいけない場面だった。そう思いながら私は黙ってレジに進んだ。今の妻はSになりかけている。そんな妻を一気にドMのヘドロの中に沈めるような、そんな何か強烈なダメージはないものかと考えながら進んだ。
レジの前で足を止めると、奥の厨房からヌッと顔を出した童貞青年が、「ありがとうございますぅ」と語尾を伸ばしながら出てきた。全然忙しくないくせに忙しいふりをしているのが妙に痛々しく、こんなヤツにチンポやマンコを見せなくて良かったとつくづく思った。
童貞は私から伝票を受け取ると、「ご一緒でよろしかったですか?」と聞いた。当たり前だ見ればわかるだろいちいち聞くなゆとりバカ、と心の中で呟きながら「はい」と答えると、童貞は、アイスコーヒーとアイスティーで……と独り言のように呟きながらそれをレジに打ち込み、満面の笑顔で「千百五十円になりますぅ」と、また語尾を伸ばした。その笑顔と口調にイラっとしながらポケットに手を入れると、ふと妻のパンティーが指先に触れた。
途端に(これだ!)と思った。これなら妻にM的な羞恥ダメージを与えられると確信した。チラッと後ろを見ると、妻はまだ不機嫌な顔をして突っ立っていた。心の中で、(そんな不貞腐れた態度も今のうちだぞ……)と呟きながら、それをポケットの中からソッと摘み出した。そしてそれをレジカウンターの上にバサっと置くと、そのネトネトに濡れたクロッチを童貞の前で広げ、「あれ……財布はこっちだったかな……」と、わざとらしくもう片方のポケットを弄り始めたのだった。

童貞は瞬き一つせず、ぐっしょりと濡れた卑猥なクロッチを横目で見ていた。それは、誰が見ても使用済み下着だった。又、この状況から見て、その下着の持ち主がそこにいる女である事は一目瞭然だった。
私はそんな童貞の顔をチラチラと確認しながら背後の妻に振り向いた。そして「財布が見当たらないから、そっちで払っておいてくれ」と言いながら妻にその場所を譲った。「えっ? 財布がないの?」と驚いた妻は、取り敢えず支払いだけ済ませようとバッグから財布を取り出した。そして「おいくらですか?」と改めて聞きながら一歩前に出た瞬間、それを見つけた妻の目がギョッと見開いた。
「あ、はい、千百五十円になります」
そう慌てて答える童貞は、もはや語尾を伸ばしていなかった。妻は自分の汚れた下着を愕然と見つめたまま、財布の中から千円札を二枚取り出した。そんな妻の指は震えていた。重なった二枚の千円札が、震える妻の指でカサカサと乾いた音を鳴らしていた。
「二千円お預かりします」
そう童貞が金を受け取ると、妻のその指が恐る恐るパンティーに伸びた。どうやら妻は、童貞がお釣りを数えている間に、さりげなくそれを取り戻そうとしているらしい。
そんな妻の表情は羞恥で歪んでいた。そのネトネトに濡れているそれは、紛れもなく自分の陰部から滲み出た恥汁であり、そんな汚物を、こうして公然と赤の他人に見られるというのは、女の妻にとってはきっと凄まじい羞恥に違いなかった。
このダメージによって、この後、妻がどう出るかは、もはや賭けだった。怒り狂ってこのまま東京に帰ってしまう可能性もあれば、このままMのヘドロの中にどっぷりと沈む可能性もあった。だから私は、ドキドキしながら妻の表情を伺っていた。丁と出るか半と出るか、それによって今後の私たちの夫婦の関係も変わり、そしてこの小説のストーリーも大きく変わるのだ。
妻は顔を真っ赤に紅潮させながら、そこでベロリと広げられているパンティーに恐る恐る指を伸ばしていた。その表情は激怒しているようにも見え、不意に私は悪い予感を覚えた。が、しかし私は、ふと、妻のその指がパンティーに近づくにつれ、妻の表情がジワジワと変化し始めている事に気づいた。それはあの時に見た、羞恥が欲情へと変わっていく瞬間によく似ていた。
あの時とは、今から半年ほど前の出来事だった。妻が入浴中、何気に私が風呂場のドアを開けると、妻はタイルの上にしゃがみながら小便をしていたのだ。

妻は私に気付くと慌てて太ももにシャワーをあて、証拠隠滅を図ろうとした。しかし、しゃがんだ妻の足元には黄金色に染まった水が広がり、それを完全に隠し通すことはできなかった。
「小便してるのか?」と聞くと、妻は「してないよ」と平然と嘘をついた。そう嘘をつく妻に異様な欲情を覚えた私は、いきなりズカズカと浴室に入り込み、正面から妻の股間を覗いてやった。
案の定、しゃがんだ股からはシャーっと小便が吹き出していた。妻は真っ赤な顔をしながら「あっちに行ってよ」と怒っていたが、しかし女の小便はすぐには止まらないらしく、そのままそれを黙って見られるしか方法はなかった。
私はそんな妻に「股を開いて見せてみろ」と言った。そう言いながらズボンのボタンを外し、勃起したペニスをシコシコとシゴいて見せた。妻は「いやよ、出てってよ」と嫌悪を露わにしていたが、しかし、そんな妻の表情に、羞恥に駆られたマゾの欲望が浮かんでいるのを私は見逃さなかった。
だから私は、わざとシコシコとシゴくペニスを妻に向けながら、「ほら、早く股を開くんだ、小便しているそこに精液をぶっかけてやるから」と言った。すると妻は、今にも泣き出さんばかりに顔を顰め、「もう、出てってよ……」と声を震わせたが、しかし、そう言いながらも妻は股をジワジワと開き始め、その惨めな排尿シーンを私に見せつけた。

小便が吹き出る陰部からは、小便とは違う汁が垂れ、それがタイルの床に向かってニトーっと糸を引いていた。妻は排尿シーンを見られながら興奮していたのだ。
やはり妻はMだった。そう思った私は、まだ小便をしている最中の妻をその場に立ち上がらせようとした。すると妻は、抵抗することなく素直にそれを受け入れ、小便を垂れ流したままその場にゆっくりと立ち上がった。
壁に手をつかせ、尻を突き出させた。尻肉の片側を乱暴に押し開くと、股間の裏側から溢れる小便が太ももにダラダラと垂れているのが見えた。羞恥に駆られた妻が、「もうやめて……」と声を震わせた。それでも私は太ももの裏側に流れる温水を手で掬い、わざとジュルルルっと下品な音を立ててそれを飲んでやった。すると、更に羞恥に駆られた妻が、自らの意思で尻を動かし始めた。「お願いだからやめて……」と言いながらも、早く入れてとばかりに腰をコキコキと振り、その尻肉を私のペニスにグイグイと押し付けてきた。
私は、卑猥に揺れ動くその尻を見下ろしながら、(こいつは本物のマゾだ)と確信した。そして、(このメス豚めが)と心で呟きながら、その死んだ赤貝のようにだらしなく口を開いていた穴に向けて一気に腰を突き上げた。
何の障害もなくペニスがヌルっ滑り込むと、妻は背中を仰け反らせながら「あんっ」と天井を見上げた。そしてそのまま腰を振り、くちゅくちゅと湿った音と、ハァハァと切ない息を浴室に響かせた。
そんな妻の淫らな姿に目眩を感じるほどの興奮を覚えた私は、立ったまま腰を振る妻の腹を抱きかかえた。そしてそのまま機械のように高速で腰を振りまくり、更に妻をマゾのメス豚として狂わせてやったのだった。

あの時の、あの排尿を見られている時の妻の表情と、今の、この汚れた下着を見ず知らずの店員に晒されている時の妻の表情は同じだった。激しい羞恥が性的興奮へと変化した時の、マゾ女独特の歪んだ快楽がそこに滲み出ていた。
そんな妻の指が、カウンターに投げ捨てられたパンティーに触れようとしていた。妻の変化に気づいていた私は、素早く妻の体を押しのけ、カウンターの前に立った。そしてそのパンティーをサッと横取りすると、お釣りを出そうとしていた店員に「これ、凄いだろ」と笑いかけた。
隣にいた妻と、正面にいた店員の顔が、一瞬にして硬直するのがわかった。
私は背筋をゾクゾクさせながら指でパンティーを開いた。そしてそのネトネトに汚れたクロッチを店員に見せつけながら、「この女のパンツだよ」と下品に微笑み、それを目の当たりにしていた妻をヘドロの中に突き落としてやったのだった。

(つづく)
《←目次》《20話へ→》
実は私は、青年がテーブルの上にアイスコーヒーを置くのを狙っていた。その瞬間、わざとそのアイスコーヒーに肘をぶつけ、それを床にぶちまけようと企んでいたのだ。そうなれば当然、青年は慌てて床のコーヒーを拭き始めるだろう。真面目そうな青年は、きっとテーブルの下にまで頭を潜らせながらせっせと拭き始めるだろう。そこで青年は妻の性器を間近に見せつけられるのだ。グジョグジョと指が蠢き、いやらしい汁がダラダラと溢れるその卑猥な光景を間近に見せつけられた童貞は、激しく興奮するに違いなかった。
そして、更に追い討ちをかけるかのように、妻の顔を私の股間に押し付けてやるつもりだった。その時の妻は、見ず知らずの青年に陰部を見られているというこの異常な状況に、極度な興奮状態に陥っているはずであり、だから妻は、迷うことなく私の肉棒にしゃぶりつくに違いなかった。

そこまで青年に見せつけておき、青年の興奮状態を見計らった上で、私がソッと青年に誘いの手を差し伸べるのだ。「私たちの部屋に遊びに来ないか?」と……。
それが私の企みだった。だから私は妻の妖艶な手コキに必死に耐えながら、彼が来るのを待っていたのだが、しかし、またしてもドタキャンされた。あと一歩のところで全ての行為を強制終了され、無残にもドタキャンされてしまったのだった。
無念に顔を歪めていた私は、今の妻のこの状態ではまだまだ安心できないと思った。このままではサウナの入り口でドタキャンされる可能性も高く、何かもっと強烈な楔(くさび)を、今のうちに妻の精神に打ち込んでおかなければと改めて思い知らされた。
妙に冷め切った空気の中、私は無言でアイスコーヒーを啜った。香りもコクも全く感じられない黒い水だった。それでも喉が渇いていた私は、それを一気にズズズッと飲み干し、まだ半分以上アイスティーが残っている妻に、「行くぞ」とボソッと呟いた。
スタスタとレジに向かう途中、またしても妻が「何か怒ってる?」と聞いてきた。私はそう首を傾げている妻の顔を覗き込み、「あたりまえだ」とぶっきら棒に吐き捨てた。
「どうして怒ってるの?」
「キミがドタキャンするからだ」
「ドタキャン? 私が何をドタキャンしたの?」
「あの店員にオマンコを見せなかった」
「私、そんな事するなんて言ってないわよ」
「ああ、言ってないさ。言っていないとも。言ってはないが、しかしキミのアソコは濡れていた。それに私がそれを提案した時、キミは黙ったまま私のチンポもシコシコした。あれは明らかにそれに合意したという意思表示じゃないか!」
突然そう声を荒げると、妻は慌てて辺りを見回した。そして素早く私の袖をギュッと掴むと、「大きな声で変なこと言わないでよ」と、私の目をキッと睨んだのだった。
妻のその目に、私は素直に(マズい)と思った。ここで妻を怒らせてしまっては今後の計画が全て台無しになってしまう恐れがあるのだ。が、しかし、だからと言って、ここでいきなり態度を急変させるのも良くなかった。ここで私が妻に気を使い、下手に出るような事になれば、今後、この旅行においての主導権は妻が握ることになるだろう。そうなれば、それこそサウナの計画など夢のまた夢となり、インチキレビューだらけの食べログ人気店をぐるぐる回るだけのバカ旅行となってしまうのだ。
だからこそ引けなかった。たとえ妻が、怒ろうが、嫌がろうが、泣き喚こうが、ここは絶対に引いてはいけない場面だった。そう思いながら私は黙ってレジに進んだ。今の妻はSになりかけている。そんな妻を一気にドMのヘドロの中に沈めるような、そんな何か強烈なダメージはないものかと考えながら進んだ。
レジの前で足を止めると、奥の厨房からヌッと顔を出した童貞青年が、「ありがとうございますぅ」と語尾を伸ばしながら出てきた。全然忙しくないくせに忙しいふりをしているのが妙に痛々しく、こんなヤツにチンポやマンコを見せなくて良かったとつくづく思った。
童貞は私から伝票を受け取ると、「ご一緒でよろしかったですか?」と聞いた。当たり前だ見ればわかるだろいちいち聞くなゆとりバカ、と心の中で呟きながら「はい」と答えると、童貞は、アイスコーヒーとアイスティーで……と独り言のように呟きながらそれをレジに打ち込み、満面の笑顔で「千百五十円になりますぅ」と、また語尾を伸ばした。その笑顔と口調にイラっとしながらポケットに手を入れると、ふと妻のパンティーが指先に触れた。
途端に(これだ!)と思った。これなら妻にM的な羞恥ダメージを与えられると確信した。チラッと後ろを見ると、妻はまだ不機嫌な顔をして突っ立っていた。心の中で、(そんな不貞腐れた態度も今のうちだぞ……)と呟きながら、それをポケットの中からソッと摘み出した。そしてそれをレジカウンターの上にバサっと置くと、そのネトネトに濡れたクロッチを童貞の前で広げ、「あれ……財布はこっちだったかな……」と、わざとらしくもう片方のポケットを弄り始めたのだった。

童貞は瞬き一つせず、ぐっしょりと濡れた卑猥なクロッチを横目で見ていた。それは、誰が見ても使用済み下着だった。又、この状況から見て、その下着の持ち主がそこにいる女である事は一目瞭然だった。
私はそんな童貞の顔をチラチラと確認しながら背後の妻に振り向いた。そして「財布が見当たらないから、そっちで払っておいてくれ」と言いながら妻にその場所を譲った。「えっ? 財布がないの?」と驚いた妻は、取り敢えず支払いだけ済ませようとバッグから財布を取り出した。そして「おいくらですか?」と改めて聞きながら一歩前に出た瞬間、それを見つけた妻の目がギョッと見開いた。
「あ、はい、千百五十円になります」
そう慌てて答える童貞は、もはや語尾を伸ばしていなかった。妻は自分の汚れた下着を愕然と見つめたまま、財布の中から千円札を二枚取り出した。そんな妻の指は震えていた。重なった二枚の千円札が、震える妻の指でカサカサと乾いた音を鳴らしていた。
「二千円お預かりします」
そう童貞が金を受け取ると、妻のその指が恐る恐るパンティーに伸びた。どうやら妻は、童貞がお釣りを数えている間に、さりげなくそれを取り戻そうとしているらしい。
そんな妻の表情は羞恥で歪んでいた。そのネトネトに濡れているそれは、紛れもなく自分の陰部から滲み出た恥汁であり、そんな汚物を、こうして公然と赤の他人に見られるというのは、女の妻にとってはきっと凄まじい羞恥に違いなかった。
このダメージによって、この後、妻がどう出るかは、もはや賭けだった。怒り狂ってこのまま東京に帰ってしまう可能性もあれば、このままMのヘドロの中にどっぷりと沈む可能性もあった。だから私は、ドキドキしながら妻の表情を伺っていた。丁と出るか半と出るか、それによって今後の私たちの夫婦の関係も変わり、そしてこの小説のストーリーも大きく変わるのだ。
妻は顔を真っ赤に紅潮させながら、そこでベロリと広げられているパンティーに恐る恐る指を伸ばしていた。その表情は激怒しているようにも見え、不意に私は悪い予感を覚えた。が、しかし私は、ふと、妻のその指がパンティーに近づくにつれ、妻の表情がジワジワと変化し始めている事に気づいた。それはあの時に見た、羞恥が欲情へと変わっていく瞬間によく似ていた。
あの時とは、今から半年ほど前の出来事だった。妻が入浴中、何気に私が風呂場のドアを開けると、妻はタイルの上にしゃがみながら小便をしていたのだ。

妻は私に気付くと慌てて太ももにシャワーをあて、証拠隠滅を図ろうとした。しかし、しゃがんだ妻の足元には黄金色に染まった水が広がり、それを完全に隠し通すことはできなかった。
「小便してるのか?」と聞くと、妻は「してないよ」と平然と嘘をついた。そう嘘をつく妻に異様な欲情を覚えた私は、いきなりズカズカと浴室に入り込み、正面から妻の股間を覗いてやった。
案の定、しゃがんだ股からはシャーっと小便が吹き出していた。妻は真っ赤な顔をしながら「あっちに行ってよ」と怒っていたが、しかし女の小便はすぐには止まらないらしく、そのままそれを黙って見られるしか方法はなかった。
私はそんな妻に「股を開いて見せてみろ」と言った。そう言いながらズボンのボタンを外し、勃起したペニスをシコシコとシゴいて見せた。妻は「いやよ、出てってよ」と嫌悪を露わにしていたが、しかし、そんな妻の表情に、羞恥に駆られたマゾの欲望が浮かんでいるのを私は見逃さなかった。
だから私は、わざとシコシコとシゴくペニスを妻に向けながら、「ほら、早く股を開くんだ、小便しているそこに精液をぶっかけてやるから」と言った。すると妻は、今にも泣き出さんばかりに顔を顰め、「もう、出てってよ……」と声を震わせたが、しかし、そう言いながらも妻は股をジワジワと開き始め、その惨めな排尿シーンを私に見せつけた。

小便が吹き出る陰部からは、小便とは違う汁が垂れ、それがタイルの床に向かってニトーっと糸を引いていた。妻は排尿シーンを見られながら興奮していたのだ。
やはり妻はMだった。そう思った私は、まだ小便をしている最中の妻をその場に立ち上がらせようとした。すると妻は、抵抗することなく素直にそれを受け入れ、小便を垂れ流したままその場にゆっくりと立ち上がった。
壁に手をつかせ、尻を突き出させた。尻肉の片側を乱暴に押し開くと、股間の裏側から溢れる小便が太ももにダラダラと垂れているのが見えた。羞恥に駆られた妻が、「もうやめて……」と声を震わせた。それでも私は太ももの裏側に流れる温水を手で掬い、わざとジュルルルっと下品な音を立ててそれを飲んでやった。すると、更に羞恥に駆られた妻が、自らの意思で尻を動かし始めた。「お願いだからやめて……」と言いながらも、早く入れてとばかりに腰をコキコキと振り、その尻肉を私のペニスにグイグイと押し付けてきた。
私は、卑猥に揺れ動くその尻を見下ろしながら、(こいつは本物のマゾだ)と確信した。そして、(このメス豚めが)と心で呟きながら、その死んだ赤貝のようにだらしなく口を開いていた穴に向けて一気に腰を突き上げた。
何の障害もなくペニスがヌルっ滑り込むと、妻は背中を仰け反らせながら「あんっ」と天井を見上げた。そしてそのまま腰を振り、くちゅくちゅと湿った音と、ハァハァと切ない息を浴室に響かせた。
そんな妻の淫らな姿に目眩を感じるほどの興奮を覚えた私は、立ったまま腰を振る妻の腹を抱きかかえた。そしてそのまま機械のように高速で腰を振りまくり、更に妻をマゾのメス豚として狂わせてやったのだった。

あの時の、あの排尿を見られている時の妻の表情と、今の、この汚れた下着を見ず知らずの店員に晒されている時の妻の表情は同じだった。激しい羞恥が性的興奮へと変化した時の、マゾ女独特の歪んだ快楽がそこに滲み出ていた。
そんな妻の指が、カウンターに投げ捨てられたパンティーに触れようとしていた。妻の変化に気づいていた私は、素早く妻の体を押しのけ、カウンターの前に立った。そしてそのパンティーをサッと横取りすると、お釣りを出そうとしていた店員に「これ、凄いだろ」と笑いかけた。
隣にいた妻と、正面にいた店員の顔が、一瞬にして硬直するのがわかった。
私は背筋をゾクゾクさせながら指でパンティーを開いた。そしてそのネトネトに汚れたクロッチを店員に見せつけながら、「この女のパンツだよ」と下品に微笑み、それを目の当たりにしていた妻をヘドロの中に突き落としてやったのだった。

(つづく)
《←目次》《20話へ→》
吐泥(へろど)20
2013/06/13 Thu 00:01
妻が慌ててパンティーを奪い取る可能性はあった。
が、しかし、もはや妻はヘドロに足を取られていた。
横目でチラッと妻を見ると、妻は硬直したままジッと下を向き、羞恥で震える下唇をぎゅっと噛み締めたままだった。
こうなれば、あとはこっちのものだった。ヘドロから抜け出せなくなった妻は、そのままヘドロに飲み込まれて行くだけだ。そして自身もドロドロと蠢くヘドロと化していき、また違う誰かをヘドロの中に引きずり込むのだ。
その生贄がまさにこの店員だった。
本人を目前に、いきなり使用済み下着のシミを見せつけられた彼は、レジの前で身動きひとつせぬままそれをじっと見つめていた。衝撃、恐怖、高揚、戸惑い。この一瞬の間にそれらの表情を見せた彼は既に性的興奮しているに違いなく、恐らくレジカウンターの裏では、ズボンの股間に肉棒の形をくっきりと浮かばせているに違いなかった。
そんな彼の目を見ながら、私はクロッチに指を伸ばした。妻の汁がベッタリと付着しているクロッチに指をヌルヌルと滑らせた。そしてそれを彼に見せつけながら、「キミも触ってごらん」と怪しく微笑み、それを彼の前にそっと差し出した。
彼はそれをじっと見つめたまま、その細長い首にゴルフボール大の喉仏をゴクリと上下させた。そして私たちを一度も見ることなく恐る恐るそこに指を伸ばすと、まるで傷口に軟膏を塗りこむようにして、指をヌルヌルと回し始めたのだった。
さすが童貞青年だけあって堕ちるのが早かった。
ものの数分で彼はヘドロに足を取られてしまった。私は奇妙な高揚感を覚えながら、隣で項垂れている妻を見た。
妻は顔を伏せながらも、前髪の隙間からその光景をジッと見ていた。今にも泣き出しそうな表情をしていたが、しかしマゾが見せる絶望的な表情というのは、いわゆる快楽の表情であるという事を私は知っている。
私は妻の耳元にソッと顔を寄せると、レジ横にあったマガジンラックを指差しながら、「そこでしゃがんで股を開きなさい」と囁いた。
すかさず上目遣いの妻の視線がゆっくりと私に向けられた。妻は黙ったまま横目で私をジッと見つめ、恨めしそうな目で何かを必死に訴えていた。
さすがに、そこまで自分の意思ではできないようだった。欲望はあっても体が言う事を聞かないらしく、妻の足は竦んでいた。だから私は妻の腰にソッと手を回し、妻をその場所へと誘導する事にした。「ほら」と耳元で囁きながら妻の体をソッと押すと、妻は抵抗することなく歩き出した。項垂れながら歩く妻のその姿は、まるで処刑場に連行される死刑囚のようだった。
レジの横にあるマガジンラックの前は、展望台からも監視カメラからも死角になっていた。そこにしゃがめば、レジに立っている青年以外からは、誰からも見られることはなかった。
そこに項垂れたまま突っ立っている妻に、私はまるで犬に躾をしているかのように「しゃがみなさい」と命令した。
私のその声に合わせ、店員の目玉がギロリと横に向くのがわかった。
妻は下唇を噛み締めながらゆっくりと腰を下ろすと、目の前に並んだ二つの膝っ小僧を見つめたまま固まってしまった。そんな妻に、「おっぱいを出しなさい」と言うと、それまで目玉だけを横に向けていた店員が顔ごとこちらにサッと向けた。
いきなり店員と目が合った私は、「ここだったら出しても構わないでしょ?」と聞いた。
店員は黙ったまま唇を震わせ、何かと必死に葛藤していた。
「見たいでしょ?」と、更に私は店員を追い込むと、店員は黒縁メガネの中の目玉をそわそわと動かし始めた。そして意を決したようにコクンっと小さく頷くと、その血走った目玉を妻に向けたのだった。
「よし」と私が唇を歪めると、それを合図に妻が上着をスルスルと捲り始めた。
ヘソ、脇腹の順番でブラジャーに包まれた乳肉が現れた。そしてそのブラジャーを捲り上げると、そこから豊満な乳肉がポロンっと溢れ、まるで巨大な水風船のようにタプンっと跳ねた。
「どうだ……大きいだろ……あれは猫の腹みたいに柔らかくて温かいんだぞ……」
そう店員に振り返りながら笑いかけると、店員は呆然と見ていたその目をいきなりギョッと見開き、再びゴルフボール大の喉仏をゴクリと上下させた。
そんな店員の視線の先には、今にも泣きそうな顔をした妻が股を大きく開いていた。まだ私は何も命令していないというのに、妻は自らの意思で股を開き、その卑猥な陰部を見ず知らずの青年に露出していたのだった。

そんな妻の勝手な行動に、私は金属バットで後頭部を殴られたような衝撃を受けた。そのショックが次第に嫉妬へと変わり、妻に対する疑念へと変わった。
しかしそんな感情はすぐに性的興奮へと移行され、私は激しい欲情の念を抱いた。この異常なる感情の変化は、まさに寝取られ願望者の悲しき性だった。
妻の陰部からは透明の汁が糸を引き、それが床に垂れては小さな水溜りを作っていた。それを店員は、半開きの唇からハァハァと荒い息を吐きながら凝視していた。
(見るな……見ないでくれ……)私はそう店員の横顔に必死に呟いていた。しかし、そう呟きながらも、私はそっとパンティーを摘み上げるとそれを店員の目前に突きつけた。
「あの変態女のマンコの匂い……嗅いでみろよ……」
そう囁くと、店員は一瞬私の目をギロッと睨みながらも、恐る恐るそれを受け取った。そして震える指でそれを広げると、その一番汚れた部分を見つめながら大きく息を吐き、そこにゆっくりと鼻を近づけようとした。
しかし、それを見ていた妻が、「やめて」と悲痛な声で言うと、店員は「はっ」と我に帰った。そしていきなり「すみません」と謝りながら慌ててパンティーをカウンターの上に置いた。
すかさず私は店員の耳元に顔を近づけた。「キミはバカだな……」と囁きながら再びパンティーを摘んだ。そして、「あの女はマゾなんだ。羞恥心を与えられて喜ぶ変態なんだ。だから『やめて』と言いながらも実はそれを望んでいるんだよ……」と笑い、摘んだパンティーを彼の目の前にぶら下げた。
すると店員は、「そ、そうなんですか……」と呟き、ブラブラとぶら下がる目の前のパンティーをジッと見つめた。「ほら」と私がそれを突き出すと、店員はまるで催眠術にかかったかのように恐る恐るそれを摘み返し、酷く戸惑いながらもその一番汚れた部分をクンクンと嗅ぎ始めたのだった。

「どうだい……いやらしい匂いが脳をジンジンと痺れさせるだろ……」
「……はい……」
「変態女の汁はどんな匂いがする?」
「……汗の匂いがします……」
店員は、荒い息を震わせながらそう答えた。
そんな店員の耳元に、私は再び顔を寄せた。そして、熱い息をその耳元に吹きかけながら、「あの女とヤらせてあげようか?」と囁いた。
すかさず店員が、「で、でも……」と慌てて私に振り返った。私は鼻で笑いながら、「どうせキミは童貞だろ……彼女いないんだろ……あんないい女とデキる何て、こんなチャンスは二度とないぜ……」と囁いた。すると店員は愕然としながら再び顔を妻に向けた。そして妻のその淫らな姿を怯えた目で見つめながら、再び「でも……」と呟いたのだった。
私は素早く辺りを見回した。この優柔不断な童貞青年をホテルの部屋に連れ込むには、かなりの時間を要するだろうと思った私は、手っ取り早くそこら辺でデキないものかと、急いでその場所を探した。
レジカウンターの裏に狭い厨房があった。その厨房の奥に、いかにも裏口っぽいガラスのドアが見えた。「あのドアの向こうは?」とそこを指差しながら聞くと、店員は「バルコニーですけど……」と答えた。
確かここは三十一階だった。パンフレットにも地上百二十五メートルの展望台と書いてあった。そんなバルコニーなら、外から誰かに見られる心配はない。
そう思うなり、私は店員に「あのバルコニーで待ってろ」と告げた。店員は「えっ!」と戸惑っていたが、しかし私に強引に背中を押され、三十一階のバルコニーへと突き出された。
すぐさま妻のところへ戻ると、しゃがんだまま項垂れていた妻を強引に立たせ、無言でバルコニーへと連行した。
バルコニーのドアを開けるなり、生温い潮風の突風が襲いかかってきた。三畳ほどの狭いスペースに巨大なダストボックスが置かれ、正面のフェンスは花壇で仕切られていた。そんなバルコニーの隅で、店員は呆然と立ち尽くしていた。
もはや言葉はいらなかった。私は店員のズボンに手を伸ばすと、無言でベルトを外し始めた。「いや、ちょっと、それは……」と焦ってはいたが、しかし彼は、私のその手を止めようとはしなかった。
既にペニスは勃起していた。さすが童貞だと頷けるほどに劣悪な代物だった。仮性包茎の皮はベロリと捲れ、テラテラに濡れ輝いた亀頭がヌッと突き出ていた。その痛々しいほどにピンク色をした亀頭には白濁の恥垢がドロドロと付着し、まるで犬のペニスのようだった。
この汚いペニスを妻に……と思うと、たちまち私は強烈な興奮に襲われた。
彼は名前も知らない見ず知らずの男だ。不細工で不潔で貧乏くさい童貞男で、しかもそのペニスはこれだけ汚れているのだ。
寝取られという特殊な性癖を持つマゾヒストな私にとって、彼は申し分のない相手だった。妻の相手となるべく男というのは、キラキラと輝くジャニーズ系の美少年よりも、ドロドロとした蛭子能収系のキモ男の方が良く、そんな男に大切な妻を汚されるシチュエーションの方が、マゾヒストな私は興奮するのである。
私は、ドアの前で項垂れている妻の前に立つと、いきなりスカートの中に手を入れ、乱暴に陰毛の中を弄った。ヌルヌルの割れ目に指を滑らせ、グチュグチュと卑猥な音を立てると、「うっ」と顔を顰める妻の顔を覗き込みながら、「あの汚いちんぽをしゃぶりなさい」と囁いた。
妻は今にも泣き出しそうな表情で、「いや……」と呟いたが、それでも私は妻の手を強引に引っ張り、店員の足元に妻をしゃがませた。
店員のズボンを足首までスルッと下ろし、妻の目の前に強烈にイカ臭い肉棒を突き立ててやると、妻はゆっくりと私の顔を見上げながら、もう一度「いや……」と首を振ったが、しかし、そう首を振りながらも妻の手はペニスへと伸びていた。
妻の指がその根元をがっしりと握りしめた。途端に店員は「あっ」と小さく叫びながら腰をスッと引いた。
妻はその臭汁がテラテラと濡れ輝く肉棒を上下に動かし始めた。そして恨めしそうな目で私を見つめながらそこに顔を近づけると、まるで大型犬が水を飲むように大きく舌を動かしながら、ペニスの裏を舐め始めたのだった。

店員はハァハァと荒い息を吐きながら、ベロベロと舌を動かす妻を見下ろしていた。時折私を見つめては何かを必死に訴えていたが、私はそんな店員の視線を無視し、しゃがんだ妻の背後に腰を下ろした。
妻の背中をそっと抱きしめると、甘い香水が漂ううなじに顔を埋めた。白く柔らかいうなじに唇を滑らせ、そのまま耳元に、「童貞のチンポはおいしいか……」と囁き、心の中で(変態女……)と付け加えた。
そんな卑猥な言葉をコソコソと耳元に囁きながら、私は妻のワンピースのボタンを外した。巨大な乳肉がポタンっと溢れ、店員の視線が一気にそこに注がれた。私は店員にサービスするかのように、その乳肉を両手の平で持ち上げると、それをタプタプと揺らしてやった。すると私のその手の平に妻の乳首がコリコリと擦れた。それに刺激されたのか、今まで舌をベロベロと動かしていた妻は「ああああ」と息を吐き、そしてそのまま丸く開いたその口でペニスをパクッと咥えたのだった。

私のすぐ目の前で、妻が見知らぬ男の肉棒を咥えていた。「んぐ、んぐ、んぐ」と喉を鳴らし、その唇に、プチャ、プチャ、プチャ、という湿った音を立てていた。
嫉妬と興奮が入り乱れ、クラクラと目眩を感じた。しゃがんだ妻のスカートを捲し上げると、ポチャポチャとした大きな尻が堰を切ったかのようにプルンっと飛び出した。それはまるで、皿に落とされたプッチンプリンのようにフルルンっと揺れていた。
その谷間に指を滑り込ませると、大量の汁がネバネバと指に絡みついてきた。そうしながら、もう片方の手でズボンのチャックを開け、勃起したペニスを妻の尻肉にグイグイと押し付けた。そうしながら、店員の肉棒を行ったり来たりしている妻の唇を見ていると、このまま尻から入れてしまいたいという衝動に駆られた。
他人のペニスを咥える妻を背後から犯す。それは恐らく、今までにない快楽に違いなかった。そのヌルヌルの穴にペニスをヌポヌポさせ、尻をユッサユッサと激しく揺らし、そして店員が射精すると同時に、そこに大量の精液を中出しする。
今までに、幾度も夢見たシーンだった。それを妄想をするだけで、凄まじい快楽を得ることができるほどだった。

が、しかし、私は耐えた。いつもの私なら見境なく欲望を遂げようとするが、しかし今日の私は違った。
それは、あと数時間もすれば、もっと凄い快楽を現実に得られることができるからである。だから私は必死に我慢した。まるで素股ヘルスの尻コキのように、尻肉の谷間にペニスをヌルヌルと滑らせるだけに留めていた。
そうやって必死に耐えていると、頭上から聞こえてくる店員の鼻息が次第に乱れてきた。その鼻息に合わせ、妻の顔の動きも激しくなってきた。(そろそろだな)と思いながら、私もその瞬間に便乗しようと、尻肉に擦り付けるペニスの動きを早めた。
その直後、店員が「あっ」と小さく叫んだ。(イッたな……)と思いながら、私は肉棒を咥える妻の横顔を見つめた。
妻の顔の動きは止まっていた。迸る精液を受け止めている最中らしく、まるで炭酸飲料水を一気飲みしているかのように苦しそうな表情をしていた。
そんな妻の耳元にソッと唇を這わせた。「全部飲み干すんだよ……」と囁くなり、自分で言ったその言葉に脳を刺激されてしまった私は、たちまち妻の尻に大量の精液を飛び散らせた。
店員が、「ああああ……」と唸りながら空を見上げた。妻は「んん……んん……」と唸りながら顔をゆっくりと動かした。そんな妻の両頬が凹んでいた。そんな妻の喉がゴクリと動いた。

(つづく)
《←目次》《21話へ→》
が、しかし、もはや妻はヘドロに足を取られていた。
横目でチラッと妻を見ると、妻は硬直したままジッと下を向き、羞恥で震える下唇をぎゅっと噛み締めたままだった。
こうなれば、あとはこっちのものだった。ヘドロから抜け出せなくなった妻は、そのままヘドロに飲み込まれて行くだけだ。そして自身もドロドロと蠢くヘドロと化していき、また違う誰かをヘドロの中に引きずり込むのだ。
その生贄がまさにこの店員だった。
本人を目前に、いきなり使用済み下着のシミを見せつけられた彼は、レジの前で身動きひとつせぬままそれをじっと見つめていた。衝撃、恐怖、高揚、戸惑い。この一瞬の間にそれらの表情を見せた彼は既に性的興奮しているに違いなく、恐らくレジカウンターの裏では、ズボンの股間に肉棒の形をくっきりと浮かばせているに違いなかった。
そんな彼の目を見ながら、私はクロッチに指を伸ばした。妻の汁がベッタリと付着しているクロッチに指をヌルヌルと滑らせた。そしてそれを彼に見せつけながら、「キミも触ってごらん」と怪しく微笑み、それを彼の前にそっと差し出した。
彼はそれをじっと見つめたまま、その細長い首にゴルフボール大の喉仏をゴクリと上下させた。そして私たちを一度も見ることなく恐る恐るそこに指を伸ばすと、まるで傷口に軟膏を塗りこむようにして、指をヌルヌルと回し始めたのだった。
さすが童貞青年だけあって堕ちるのが早かった。
ものの数分で彼はヘドロに足を取られてしまった。私は奇妙な高揚感を覚えながら、隣で項垂れている妻を見た。
妻は顔を伏せながらも、前髪の隙間からその光景をジッと見ていた。今にも泣き出しそうな表情をしていたが、しかしマゾが見せる絶望的な表情というのは、いわゆる快楽の表情であるという事を私は知っている。
私は妻の耳元にソッと顔を寄せると、レジ横にあったマガジンラックを指差しながら、「そこでしゃがんで股を開きなさい」と囁いた。
すかさず上目遣いの妻の視線がゆっくりと私に向けられた。妻は黙ったまま横目で私をジッと見つめ、恨めしそうな目で何かを必死に訴えていた。
さすがに、そこまで自分の意思ではできないようだった。欲望はあっても体が言う事を聞かないらしく、妻の足は竦んでいた。だから私は妻の腰にソッと手を回し、妻をその場所へと誘導する事にした。「ほら」と耳元で囁きながら妻の体をソッと押すと、妻は抵抗することなく歩き出した。項垂れながら歩く妻のその姿は、まるで処刑場に連行される死刑囚のようだった。
レジの横にあるマガジンラックの前は、展望台からも監視カメラからも死角になっていた。そこにしゃがめば、レジに立っている青年以外からは、誰からも見られることはなかった。
そこに項垂れたまま突っ立っている妻に、私はまるで犬に躾をしているかのように「しゃがみなさい」と命令した。
私のその声に合わせ、店員の目玉がギロリと横に向くのがわかった。
妻は下唇を噛み締めながらゆっくりと腰を下ろすと、目の前に並んだ二つの膝っ小僧を見つめたまま固まってしまった。そんな妻に、「おっぱいを出しなさい」と言うと、それまで目玉だけを横に向けていた店員が顔ごとこちらにサッと向けた。
いきなり店員と目が合った私は、「ここだったら出しても構わないでしょ?」と聞いた。
店員は黙ったまま唇を震わせ、何かと必死に葛藤していた。
「見たいでしょ?」と、更に私は店員を追い込むと、店員は黒縁メガネの中の目玉をそわそわと動かし始めた。そして意を決したようにコクンっと小さく頷くと、その血走った目玉を妻に向けたのだった。
「よし」と私が唇を歪めると、それを合図に妻が上着をスルスルと捲り始めた。
ヘソ、脇腹の順番でブラジャーに包まれた乳肉が現れた。そしてそのブラジャーを捲り上げると、そこから豊満な乳肉がポロンっと溢れ、まるで巨大な水風船のようにタプンっと跳ねた。
「どうだ……大きいだろ……あれは猫の腹みたいに柔らかくて温かいんだぞ……」
そう店員に振り返りながら笑いかけると、店員は呆然と見ていたその目をいきなりギョッと見開き、再びゴルフボール大の喉仏をゴクリと上下させた。
そんな店員の視線の先には、今にも泣きそうな顔をした妻が股を大きく開いていた。まだ私は何も命令していないというのに、妻は自らの意思で股を開き、その卑猥な陰部を見ず知らずの青年に露出していたのだった。

そんな妻の勝手な行動に、私は金属バットで後頭部を殴られたような衝撃を受けた。そのショックが次第に嫉妬へと変わり、妻に対する疑念へと変わった。
しかしそんな感情はすぐに性的興奮へと移行され、私は激しい欲情の念を抱いた。この異常なる感情の変化は、まさに寝取られ願望者の悲しき性だった。
妻の陰部からは透明の汁が糸を引き、それが床に垂れては小さな水溜りを作っていた。それを店員は、半開きの唇からハァハァと荒い息を吐きながら凝視していた。
(見るな……見ないでくれ……)私はそう店員の横顔に必死に呟いていた。しかし、そう呟きながらも、私はそっとパンティーを摘み上げるとそれを店員の目前に突きつけた。
「あの変態女のマンコの匂い……嗅いでみろよ……」
そう囁くと、店員は一瞬私の目をギロッと睨みながらも、恐る恐るそれを受け取った。そして震える指でそれを広げると、その一番汚れた部分を見つめながら大きく息を吐き、そこにゆっくりと鼻を近づけようとした。
しかし、それを見ていた妻が、「やめて」と悲痛な声で言うと、店員は「はっ」と我に帰った。そしていきなり「すみません」と謝りながら慌ててパンティーをカウンターの上に置いた。
すかさず私は店員の耳元に顔を近づけた。「キミはバカだな……」と囁きながら再びパンティーを摘んだ。そして、「あの女はマゾなんだ。羞恥心を与えられて喜ぶ変態なんだ。だから『やめて』と言いながらも実はそれを望んでいるんだよ……」と笑い、摘んだパンティーを彼の目の前にぶら下げた。
すると店員は、「そ、そうなんですか……」と呟き、ブラブラとぶら下がる目の前のパンティーをジッと見つめた。「ほら」と私がそれを突き出すと、店員はまるで催眠術にかかったかのように恐る恐るそれを摘み返し、酷く戸惑いながらもその一番汚れた部分をクンクンと嗅ぎ始めたのだった。

「どうだい……いやらしい匂いが脳をジンジンと痺れさせるだろ……」
「……はい……」
「変態女の汁はどんな匂いがする?」
「……汗の匂いがします……」
店員は、荒い息を震わせながらそう答えた。
そんな店員の耳元に、私は再び顔を寄せた。そして、熱い息をその耳元に吹きかけながら、「あの女とヤらせてあげようか?」と囁いた。
すかさず店員が、「で、でも……」と慌てて私に振り返った。私は鼻で笑いながら、「どうせキミは童貞だろ……彼女いないんだろ……あんないい女とデキる何て、こんなチャンスは二度とないぜ……」と囁いた。すると店員は愕然としながら再び顔を妻に向けた。そして妻のその淫らな姿を怯えた目で見つめながら、再び「でも……」と呟いたのだった。
私は素早く辺りを見回した。この優柔不断な童貞青年をホテルの部屋に連れ込むには、かなりの時間を要するだろうと思った私は、手っ取り早くそこら辺でデキないものかと、急いでその場所を探した。
レジカウンターの裏に狭い厨房があった。その厨房の奥に、いかにも裏口っぽいガラスのドアが見えた。「あのドアの向こうは?」とそこを指差しながら聞くと、店員は「バルコニーですけど……」と答えた。
確かここは三十一階だった。パンフレットにも地上百二十五メートルの展望台と書いてあった。そんなバルコニーなら、外から誰かに見られる心配はない。
そう思うなり、私は店員に「あのバルコニーで待ってろ」と告げた。店員は「えっ!」と戸惑っていたが、しかし私に強引に背中を押され、三十一階のバルコニーへと突き出された。
すぐさま妻のところへ戻ると、しゃがんだまま項垂れていた妻を強引に立たせ、無言でバルコニーへと連行した。
バルコニーのドアを開けるなり、生温い潮風の突風が襲いかかってきた。三畳ほどの狭いスペースに巨大なダストボックスが置かれ、正面のフェンスは花壇で仕切られていた。そんなバルコニーの隅で、店員は呆然と立ち尽くしていた。
もはや言葉はいらなかった。私は店員のズボンに手を伸ばすと、無言でベルトを外し始めた。「いや、ちょっと、それは……」と焦ってはいたが、しかし彼は、私のその手を止めようとはしなかった。
既にペニスは勃起していた。さすが童貞だと頷けるほどに劣悪な代物だった。仮性包茎の皮はベロリと捲れ、テラテラに濡れ輝いた亀頭がヌッと突き出ていた。その痛々しいほどにピンク色をした亀頭には白濁の恥垢がドロドロと付着し、まるで犬のペニスのようだった。
この汚いペニスを妻に……と思うと、たちまち私は強烈な興奮に襲われた。
彼は名前も知らない見ず知らずの男だ。不細工で不潔で貧乏くさい童貞男で、しかもそのペニスはこれだけ汚れているのだ。
寝取られという特殊な性癖を持つマゾヒストな私にとって、彼は申し分のない相手だった。妻の相手となるべく男というのは、キラキラと輝くジャニーズ系の美少年よりも、ドロドロとした蛭子能収系のキモ男の方が良く、そんな男に大切な妻を汚されるシチュエーションの方が、マゾヒストな私は興奮するのである。
私は、ドアの前で項垂れている妻の前に立つと、いきなりスカートの中に手を入れ、乱暴に陰毛の中を弄った。ヌルヌルの割れ目に指を滑らせ、グチュグチュと卑猥な音を立てると、「うっ」と顔を顰める妻の顔を覗き込みながら、「あの汚いちんぽをしゃぶりなさい」と囁いた。
妻は今にも泣き出しそうな表情で、「いや……」と呟いたが、それでも私は妻の手を強引に引っ張り、店員の足元に妻をしゃがませた。
店員のズボンを足首までスルッと下ろし、妻の目の前に強烈にイカ臭い肉棒を突き立ててやると、妻はゆっくりと私の顔を見上げながら、もう一度「いや……」と首を振ったが、しかし、そう首を振りながらも妻の手はペニスへと伸びていた。
妻の指がその根元をがっしりと握りしめた。途端に店員は「あっ」と小さく叫びながら腰をスッと引いた。
妻はその臭汁がテラテラと濡れ輝く肉棒を上下に動かし始めた。そして恨めしそうな目で私を見つめながらそこに顔を近づけると、まるで大型犬が水を飲むように大きく舌を動かしながら、ペニスの裏を舐め始めたのだった。

店員はハァハァと荒い息を吐きながら、ベロベロと舌を動かす妻を見下ろしていた。時折私を見つめては何かを必死に訴えていたが、私はそんな店員の視線を無視し、しゃがんだ妻の背後に腰を下ろした。
妻の背中をそっと抱きしめると、甘い香水が漂ううなじに顔を埋めた。白く柔らかいうなじに唇を滑らせ、そのまま耳元に、「童貞のチンポはおいしいか……」と囁き、心の中で(変態女……)と付け加えた。
そんな卑猥な言葉をコソコソと耳元に囁きながら、私は妻のワンピースのボタンを外した。巨大な乳肉がポタンっと溢れ、店員の視線が一気にそこに注がれた。私は店員にサービスするかのように、その乳肉を両手の平で持ち上げると、それをタプタプと揺らしてやった。すると私のその手の平に妻の乳首がコリコリと擦れた。それに刺激されたのか、今まで舌をベロベロと動かしていた妻は「ああああ」と息を吐き、そしてそのまま丸く開いたその口でペニスをパクッと咥えたのだった。

私のすぐ目の前で、妻が見知らぬ男の肉棒を咥えていた。「んぐ、んぐ、んぐ」と喉を鳴らし、その唇に、プチャ、プチャ、プチャ、という湿った音を立てていた。
嫉妬と興奮が入り乱れ、クラクラと目眩を感じた。しゃがんだ妻のスカートを捲し上げると、ポチャポチャとした大きな尻が堰を切ったかのようにプルンっと飛び出した。それはまるで、皿に落とされたプッチンプリンのようにフルルンっと揺れていた。
その谷間に指を滑り込ませると、大量の汁がネバネバと指に絡みついてきた。そうしながら、もう片方の手でズボンのチャックを開け、勃起したペニスを妻の尻肉にグイグイと押し付けた。そうしながら、店員の肉棒を行ったり来たりしている妻の唇を見ていると、このまま尻から入れてしまいたいという衝動に駆られた。
他人のペニスを咥える妻を背後から犯す。それは恐らく、今までにない快楽に違いなかった。そのヌルヌルの穴にペニスをヌポヌポさせ、尻をユッサユッサと激しく揺らし、そして店員が射精すると同時に、そこに大量の精液を中出しする。
今までに、幾度も夢見たシーンだった。それを妄想をするだけで、凄まじい快楽を得ることができるほどだった。

が、しかし、私は耐えた。いつもの私なら見境なく欲望を遂げようとするが、しかし今日の私は違った。
それは、あと数時間もすれば、もっと凄い快楽を現実に得られることができるからである。だから私は必死に我慢した。まるで素股ヘルスの尻コキのように、尻肉の谷間にペニスをヌルヌルと滑らせるだけに留めていた。
そうやって必死に耐えていると、頭上から聞こえてくる店員の鼻息が次第に乱れてきた。その鼻息に合わせ、妻の顔の動きも激しくなってきた。(そろそろだな)と思いながら、私もその瞬間に便乗しようと、尻肉に擦り付けるペニスの動きを早めた。
その直後、店員が「あっ」と小さく叫んだ。(イッたな……)と思いながら、私は肉棒を咥える妻の横顔を見つめた。
妻の顔の動きは止まっていた。迸る精液を受け止めている最中らしく、まるで炭酸飲料水を一気飲みしているかのように苦しそうな表情をしていた。
そんな妻の耳元にソッと唇を這わせた。「全部飲み干すんだよ……」と囁くなり、自分で言ったその言葉に脳を刺激されてしまった私は、たちまち妻の尻に大量の精液を飛び散らせた。
店員が、「ああああ……」と唸りながら空を見上げた。妻は「んん……んん……」と唸りながら顔をゆっくりと動かした。そんな妻の両頬が凹んでいた。そんな妻の喉がゴクリと動いた。

(つづく)
《←目次》《21話へ→》
吐泥(へろど)21
2013/06/13 Thu 00:01
時刻は既に四時を過ぎていた。ホテルの三階にある図書館のようなカフェに寄り、どうでもいいサンドイッチを食べていた。
つい数時間前の新幹線の中では、『食べログ』を見ながらあれが食べたいこれが食べたいとはしゃいでいた妻も、今は黙ってそれを食べていた。会話もせず、目を合わせることもなく、二人はこのどこにでもあるサンドイッチを黙々と食べていた。しかもそれは異様にパサパサしており、やたらと喉に詰まるサンドイッチだった。
向かい合って座る妻と私の間には、まるでコールタールのようなドロドロとした重たい空気が漂っていた。それは、単独男とプレイしたラブホから帰る途中の車中の空気によく似ていた。
他人にヤられた妻と、他人にヤらせた夫。他人棒に乱れながら痴態を晒していた妻と、その妻の痴態を見ながら自慰に狂っていた夫。そんな二人が乗り込む車中は、無人のように静まり返り、互いに合わせる顔もなければ、交わす言葉もなかった。
あの時と同じ重たい空気が、今の二人にも漂っていた。
はっきり言って気まずかった。店員のペニスをしゃぶらせている最中は、互いにあれだけ燃え上がっていたのに、その行為後はバケツの水をぶっかけられたように冷め、嫌な気まずさだけがブスブスと燻っていた。
そんな空気の中、アイスティーを一口飲んだ妻が、「パンツ……」とポツリと呟いた。それは、行為後の妻が初めて口にした言葉であり、その時初めて、行為後の妻の顔をまともに見た気がした。
「ああ、そうだったね……」と、慌ててポケットからピンクのパンティーを取り出すと、まるで不正な金を政治家の秘書に渡すかのように、それを机の下からソッと渡した。
てっきりトイレに行くものと思っていたが、しかし妻は、それを受け取るなりその場で素早くそれを履いた。
そのパンティーは他人に嗅がれたものだった。濡れたクロッチを指で弄られたものだった。普段の妻なら、そんなパンツを履く事に抵抗を感じるはずだったが、しかし今の妻はすんなりそれを履いた。
そんな妻を見つめながら、ふと思った。
この女は、ついさっきまで見ず知らずの男の性器を舐めていたのだ。恥垢にまみれ、強烈にイカ臭いペニスを何の抵抗もなくしゃぶり、挙句の果てには、どんな性病が含まれているかもわからないような精液を飲み干したのだ。この女は異常者なのだ。だからそんなパンツでも、この女は何の抵抗もなく履けるのだ……と。
そう思っていると、未だドロドロに濡れている妻の膣に、それがピタリと張り付くシーンが頭に浮かんだ。そのカピカピに乾いていたクロッチに、残り汁がジワジワと染み込み、そこに新たなる卑猥なシミが浮かぶのを想像した。

(恐らく今の妻は、ヤリたくてヤリたくて堪らないはずだ……)
そう思うなり再びムラッと欲情した。私はこの短時間で既に三回も射精していた。しかし異常性欲者の私は、このままここで、妖艶な妻の顔を見ながらペニスをシゴきたいと思うほどに興奮していた。
「あの店員とヤリたかったか?」
そう声を震わせながら妻に聞くと、妻はストローに口をつけながら上目遣いで私を見た。そして白いストローに茶色いアイスティーをスッと走らせると、私の目をジッと見たまま「クスッ」と小さく笑った。
それは、ついさっきまでMだった妻からは想像できないSの微笑みだった。そんな挑発的な微笑みに私は心の臓を抉られた。怒り、悲しみ、絶望、嫉妬。それらが頭の中でドロドロと渦巻き、それと同時に身震いするような性的興奮を覚えた私は、拳が震えるほどに激しく動揺した。
そもそも寝取られ願望者というのは、限りなくSでありながら、果てしなくMだった。最愛の妻を見ず知らずの男に抱かせるというサディズムな凶暴性は、妻のメスの部分を見てみたいというマゾヒズムな被虐性が起源であり、寝取られ願望のある夫というのは、表裏一体化したサドマゾヒズムなのである。
もちろん、それに従う妻も同じだった。他人棒に悶えている時の妻は、その姿を最愛の夫に『見られている』というM的な快楽と、『見せている』というS的な快楽に溺れていた。その二つの快楽を交互に受けながら、それによって異常な性欲を湧き上がらせているのだった。

妻のその小悪魔的な微笑みを見た瞬間、私は凄まじい恐怖に襲われた。店員の肉棒に唇を滑らせていたシーンや、恍惚とした表情で精液を飲んでいたシーンが頭の中を駆け巡り、思わず私は、泣き出したくなるほどの絶望感に襲われた。
もうやめよう、と思った。こんなことを続けていると、今に取り返しのつかないことになってしまうと心底思った。最愛の妻を壊したくない。最愛の妻を失くしたくない。そう焦りながら私は、今すぐ東京に帰ろうと思い、無言でスクっと立ち上がった。
すると、ストローを唇に挟んだままの妻が「ん?」と首を傾げながら私を見上げた。
「もう行くの? まだサンドイッチがこんなに残ってるよ?」
私の絶望感を逆撫でするかのように妻は優しく微笑んだ。妻のその愛らしい顔を見ていると、突然胸底から異様な興奮がムラムラと湧き上がってきた。
(お前はその唇であの薄汚いチンポをしゃぶっていた……チンカスも精液も、そのアイスティーのように飲み込んでしまった……)
膝がガクガクと震えた。目は血走り、奥歯が鳴り、全身の毛穴が開いた。
(もしあの時、私があの場にいなければ、きっとお前はあの店員にヤらせていたはずだ……例えあの店員がそれを拒否したとしても、お前はあいつを床に押し倒し、強引にあいつの上に跨っては、チンポを自分のマンコに入れていただろう……)

その光景を想像すると、半開きの唇からハァハァと荒い息が漏れた。その激しい酸素により、それまで絶望で固まっていた脳が活性化し始め、みるみると感情が蘇ってきた。
「行くぞ」と呟く私は、痛いほどに勃起していた。そのままスタスタと歩き出すと、妻は「もう」と唇を尖らせながら立ち上がり、慌てて伝票を持ってレジに走った。
出口で立ち止まっていた私は、レジでお金を払っている妻を見ていた。レジを打つ男性店員のすぐ目の前で、妻の大きな乳肉がタプタプしていた。それを見ながらズボンのポケットの中に手を入れた。そしてポケットの中から勃起したペニスをギュッと握りしめながら、(あの女を……滅茶苦茶にしてやる……)と呟いた。そんな私の脳は、再びヘドロと化していた。

ホテルを出ると、正面玄関の通路で待機していたタクシーに乗り込んだ。例のビジネスホテルの名を告げると、運転手は、「今からだと一時間ぐらいかかりますよ」と言いながらバックミラーで私を見つめ、「電車だったら十五分で着きますけど……」と言った。
いかにも善良そうな運転手だった。五十代半ばだろうか、制帽からはみ出した鬢はほとんど白髪だった。
そんな運転手の、パリッと糊付けされた几帳面なワイシャツの襟を見つめながら、「結構ですよ」と答えると、運転手は「ありがとうございます」と嬉しそうに微笑み、その笑顔のままタクシーを発進させたのだった。
今から一時間かかったとしても、ホテルに到着するのは六時だった。それでも作戦決行までにはまだ六時間もあり、その間、いかにして今の妻の性欲を保っておこうかと考えていた。
とりあえずチェックインし、部屋で有料のアダルトビデオを見せながら、ローターでオナニーでもさせておくか……。
ふとそう思ったが、しかし、それでイキ過ぎて満足されてしまっては元も子もなかった。かといって、何の刺激も与えないまま六時間放置しておくというのは、せっかく苦労して沸かした熱湯をわざわざ冷ましてしまうようなものだった。
(この六時間は、私にとって最も長い六時間になりそうだ……)
その難解さに覚悟しながらぼんやり窓の外を眺めていると、ふと道路の右手に海が見えてきた。
左の座席に座っていた妻に「ほら」と指を差した。妻はゆっくりと身を乗り出しながら窓の外を眺め、「海だね」と呟いた。
私の太ももの上では、前屈みで窓の外を見つめる妻のおっぱいが、まるで水を入れすぎた水風船のようにタプタプと揺れていた。私はそこにソッと手を這わせた。ボテッと垂れる柔肉を手の平で支え、その柔肉のグラムを量るかのように持ち上げたりして弄んだ。
妻は私のその手を振り払おうともせず無言で海を眺めていた。しかし、私の左手が妻の背中へと回り、ワンピースの上からブラのフックを外そうとすると、急に妻は眉を八の字に下げながら、無言でイヤイヤと首を横に振った。
それでも私はブラのフックを外した。そしてワンピースの上からブラの肩紐を下ろそうとすると、慌てて妻が元の位置に戻ろうとしたため、私は妻の腰に腕を回してそれを制止した。
そのまま妻の上半身を膝の上に押さえ込んだ。運転手に聞こえないくらいの小声で「このままジッとしてろ……」と囁くと、妻は小さな溜息と共に力を抜いた。
素早くブラの肩紐を両肩ずらした。腕の関節で止まったブラを強引に抜こうとすると、妻はそんな私の手をソッと振り払い、自分でそれを片方の袖から抜き取った。
素早く上着を捲ると、二つの巨大な柔肉の塊がボテンっと垂れた。ポテンポテンと波打つそれは、中年女独特の柔らかさがあった。まるでスライムのようであり、揉んでいるだけでアドレナリンが放出された。

それを揉みながら、もうすぐこれを見ず知らずの男たちが弄ぶのかと思うと、たちまち激しい嫉妬と興奮に襲われ、途端に目の前がクラクラした。
ポテンっと垂れる生乳を五本の指でムニュっと握った。妻は抵抗することもなく下唇をキュッと噛んだ。
そのまま人差し指を伸ばし乳首をコロコロと転がすと、窓の外を見ていた妻が、途端に「はっ」と息を飲みながら項垂れた。「感じる?」と耳元に囁くと、妻は無言で私の股間に手を伸ばし、既に固くなっている肉棒をギュッと握ったのだった。
すぐ目の前の運転席には、見知らぬ中年男がいた。気がつけば、この狭い空間の中には、私たち夫婦以外に他人男がもう一人いたのだ。
改めてそれに気付いた瞬間、最も長いと思っていたこの六時間が急に短く感じ、これからの一分一秒が大切に思えた。
(今度はこの運転手を、ヘドロに引きずり込むか……)
そう思いながら私は、この中年タクシードライバーのペニスを強引に咥えさせられている妻の悲惨な姿を思い浮かべた。そしてギラギラとした強烈な興奮に胸を締め付けられながら、なぜか無性に可笑しくて堪らなくなったのだった。

(つづく)
《←目次》《22話へ→》
つい数時間前の新幹線の中では、『食べログ』を見ながらあれが食べたいこれが食べたいとはしゃいでいた妻も、今は黙ってそれを食べていた。会話もせず、目を合わせることもなく、二人はこのどこにでもあるサンドイッチを黙々と食べていた。しかもそれは異様にパサパサしており、やたらと喉に詰まるサンドイッチだった。
向かい合って座る妻と私の間には、まるでコールタールのようなドロドロとした重たい空気が漂っていた。それは、単独男とプレイしたラブホから帰る途中の車中の空気によく似ていた。
他人にヤられた妻と、他人にヤらせた夫。他人棒に乱れながら痴態を晒していた妻と、その妻の痴態を見ながら自慰に狂っていた夫。そんな二人が乗り込む車中は、無人のように静まり返り、互いに合わせる顔もなければ、交わす言葉もなかった。
あの時と同じ重たい空気が、今の二人にも漂っていた。
はっきり言って気まずかった。店員のペニスをしゃぶらせている最中は、互いにあれだけ燃え上がっていたのに、その行為後はバケツの水をぶっかけられたように冷め、嫌な気まずさだけがブスブスと燻っていた。
そんな空気の中、アイスティーを一口飲んだ妻が、「パンツ……」とポツリと呟いた。それは、行為後の妻が初めて口にした言葉であり、その時初めて、行為後の妻の顔をまともに見た気がした。
「ああ、そうだったね……」と、慌ててポケットからピンクのパンティーを取り出すと、まるで不正な金を政治家の秘書に渡すかのように、それを机の下からソッと渡した。
てっきりトイレに行くものと思っていたが、しかし妻は、それを受け取るなりその場で素早くそれを履いた。
そのパンティーは他人に嗅がれたものだった。濡れたクロッチを指で弄られたものだった。普段の妻なら、そんなパンツを履く事に抵抗を感じるはずだったが、しかし今の妻はすんなりそれを履いた。
そんな妻を見つめながら、ふと思った。
この女は、ついさっきまで見ず知らずの男の性器を舐めていたのだ。恥垢にまみれ、強烈にイカ臭いペニスを何の抵抗もなくしゃぶり、挙句の果てには、どんな性病が含まれているかもわからないような精液を飲み干したのだ。この女は異常者なのだ。だからそんなパンツでも、この女は何の抵抗もなく履けるのだ……と。
そう思っていると、未だドロドロに濡れている妻の膣に、それがピタリと張り付くシーンが頭に浮かんだ。そのカピカピに乾いていたクロッチに、残り汁がジワジワと染み込み、そこに新たなる卑猥なシミが浮かぶのを想像した。

(恐らく今の妻は、ヤリたくてヤリたくて堪らないはずだ……)
そう思うなり再びムラッと欲情した。私はこの短時間で既に三回も射精していた。しかし異常性欲者の私は、このままここで、妖艶な妻の顔を見ながらペニスをシゴきたいと思うほどに興奮していた。
「あの店員とヤリたかったか?」
そう声を震わせながら妻に聞くと、妻はストローに口をつけながら上目遣いで私を見た。そして白いストローに茶色いアイスティーをスッと走らせると、私の目をジッと見たまま「クスッ」と小さく笑った。
それは、ついさっきまでMだった妻からは想像できないSの微笑みだった。そんな挑発的な微笑みに私は心の臓を抉られた。怒り、悲しみ、絶望、嫉妬。それらが頭の中でドロドロと渦巻き、それと同時に身震いするような性的興奮を覚えた私は、拳が震えるほどに激しく動揺した。
そもそも寝取られ願望者というのは、限りなくSでありながら、果てしなくMだった。最愛の妻を見ず知らずの男に抱かせるというサディズムな凶暴性は、妻のメスの部分を見てみたいというマゾヒズムな被虐性が起源であり、寝取られ願望のある夫というのは、表裏一体化したサドマゾヒズムなのである。
もちろん、それに従う妻も同じだった。他人棒に悶えている時の妻は、その姿を最愛の夫に『見られている』というM的な快楽と、『見せている』というS的な快楽に溺れていた。その二つの快楽を交互に受けながら、それによって異常な性欲を湧き上がらせているのだった。

妻のその小悪魔的な微笑みを見た瞬間、私は凄まじい恐怖に襲われた。店員の肉棒に唇を滑らせていたシーンや、恍惚とした表情で精液を飲んでいたシーンが頭の中を駆け巡り、思わず私は、泣き出したくなるほどの絶望感に襲われた。
もうやめよう、と思った。こんなことを続けていると、今に取り返しのつかないことになってしまうと心底思った。最愛の妻を壊したくない。最愛の妻を失くしたくない。そう焦りながら私は、今すぐ東京に帰ろうと思い、無言でスクっと立ち上がった。
すると、ストローを唇に挟んだままの妻が「ん?」と首を傾げながら私を見上げた。
「もう行くの? まだサンドイッチがこんなに残ってるよ?」
私の絶望感を逆撫でするかのように妻は優しく微笑んだ。妻のその愛らしい顔を見ていると、突然胸底から異様な興奮がムラムラと湧き上がってきた。
(お前はその唇であの薄汚いチンポをしゃぶっていた……チンカスも精液も、そのアイスティーのように飲み込んでしまった……)
膝がガクガクと震えた。目は血走り、奥歯が鳴り、全身の毛穴が開いた。
(もしあの時、私があの場にいなければ、きっとお前はあの店員にヤらせていたはずだ……例えあの店員がそれを拒否したとしても、お前はあいつを床に押し倒し、強引にあいつの上に跨っては、チンポを自分のマンコに入れていただろう……)

その光景を想像すると、半開きの唇からハァハァと荒い息が漏れた。その激しい酸素により、それまで絶望で固まっていた脳が活性化し始め、みるみると感情が蘇ってきた。
「行くぞ」と呟く私は、痛いほどに勃起していた。そのままスタスタと歩き出すと、妻は「もう」と唇を尖らせながら立ち上がり、慌てて伝票を持ってレジに走った。
出口で立ち止まっていた私は、レジでお金を払っている妻を見ていた。レジを打つ男性店員のすぐ目の前で、妻の大きな乳肉がタプタプしていた。それを見ながらズボンのポケットの中に手を入れた。そしてポケットの中から勃起したペニスをギュッと握りしめながら、(あの女を……滅茶苦茶にしてやる……)と呟いた。そんな私の脳は、再びヘドロと化していた。

ホテルを出ると、正面玄関の通路で待機していたタクシーに乗り込んだ。例のビジネスホテルの名を告げると、運転手は、「今からだと一時間ぐらいかかりますよ」と言いながらバックミラーで私を見つめ、「電車だったら十五分で着きますけど……」と言った。
いかにも善良そうな運転手だった。五十代半ばだろうか、制帽からはみ出した鬢はほとんど白髪だった。
そんな運転手の、パリッと糊付けされた几帳面なワイシャツの襟を見つめながら、「結構ですよ」と答えると、運転手は「ありがとうございます」と嬉しそうに微笑み、その笑顔のままタクシーを発進させたのだった。
今から一時間かかったとしても、ホテルに到着するのは六時だった。それでも作戦決行までにはまだ六時間もあり、その間、いかにして今の妻の性欲を保っておこうかと考えていた。
とりあえずチェックインし、部屋で有料のアダルトビデオを見せながら、ローターでオナニーでもさせておくか……。
ふとそう思ったが、しかし、それでイキ過ぎて満足されてしまっては元も子もなかった。かといって、何の刺激も与えないまま六時間放置しておくというのは、せっかく苦労して沸かした熱湯をわざわざ冷ましてしまうようなものだった。
(この六時間は、私にとって最も長い六時間になりそうだ……)
その難解さに覚悟しながらぼんやり窓の外を眺めていると、ふと道路の右手に海が見えてきた。
左の座席に座っていた妻に「ほら」と指を差した。妻はゆっくりと身を乗り出しながら窓の外を眺め、「海だね」と呟いた。
私の太ももの上では、前屈みで窓の外を見つめる妻のおっぱいが、まるで水を入れすぎた水風船のようにタプタプと揺れていた。私はそこにソッと手を這わせた。ボテッと垂れる柔肉を手の平で支え、その柔肉のグラムを量るかのように持ち上げたりして弄んだ。
妻は私のその手を振り払おうともせず無言で海を眺めていた。しかし、私の左手が妻の背中へと回り、ワンピースの上からブラのフックを外そうとすると、急に妻は眉を八の字に下げながら、無言でイヤイヤと首を横に振った。
それでも私はブラのフックを外した。そしてワンピースの上からブラの肩紐を下ろそうとすると、慌てて妻が元の位置に戻ろうとしたため、私は妻の腰に腕を回してそれを制止した。
そのまま妻の上半身を膝の上に押さえ込んだ。運転手に聞こえないくらいの小声で「このままジッとしてろ……」と囁くと、妻は小さな溜息と共に力を抜いた。
素早くブラの肩紐を両肩ずらした。腕の関節で止まったブラを強引に抜こうとすると、妻はそんな私の手をソッと振り払い、自分でそれを片方の袖から抜き取った。
素早く上着を捲ると、二つの巨大な柔肉の塊がボテンっと垂れた。ポテンポテンと波打つそれは、中年女独特の柔らかさがあった。まるでスライムのようであり、揉んでいるだけでアドレナリンが放出された。

それを揉みながら、もうすぐこれを見ず知らずの男たちが弄ぶのかと思うと、たちまち激しい嫉妬と興奮に襲われ、途端に目の前がクラクラした。
ポテンっと垂れる生乳を五本の指でムニュっと握った。妻は抵抗することもなく下唇をキュッと噛んだ。
そのまま人差し指を伸ばし乳首をコロコロと転がすと、窓の外を見ていた妻が、途端に「はっ」と息を飲みながら項垂れた。「感じる?」と耳元に囁くと、妻は無言で私の股間に手を伸ばし、既に固くなっている肉棒をギュッと握ったのだった。
すぐ目の前の運転席には、見知らぬ中年男がいた。気がつけば、この狭い空間の中には、私たち夫婦以外に他人男がもう一人いたのだ。
改めてそれに気付いた瞬間、最も長いと思っていたこの六時間が急に短く感じ、これからの一分一秒が大切に思えた。
(今度はこの運転手を、ヘドロに引きずり込むか……)
そう思いながら私は、この中年タクシードライバーのペニスを強引に咥えさせられている妻の悲惨な姿を思い浮かべた。そしてギラギラとした強烈な興奮に胸を締め付けられながら、なぜか無性に可笑しくて堪らなくなったのだった。

(つづく)
《←目次》《22話へ→》