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吐泥(へろど)21

2013/06/13 Thu 00:01

 時刻は既に四時を過ぎていた。ホテルの三階にある図書館のようなカフェに寄り、どうでもいいサンドイッチを食べていた。
 つい数時間前の新幹線の中では、『食べログ』を見ながらあれが食べたいこれが食べたいとはしゃいでいた妻も、今は黙ってそれを食べていた。会話もせず、目を合わせることもなく、二人はこのどこにでもあるサンドイッチを黙々と食べていた。しかもそれは異様にパサパサしており、やたらと喉に詰まるサンドイッチだった。

 向かい合って座る妻と私の間には、まるでコールタールのようなドロドロとした重たい空気が漂っていた。それは、単独男とプレイしたラブホから帰る途中の車中の空気によく似ていた。
 他人にヤられた妻と、他人にヤらせた夫。他人棒に乱れながら痴態を晒していた妻と、その妻の痴態を見ながら自慰に狂っていた夫。そんな二人が乗り込む車中は、無人のように静まり返り、互いに合わせる顔もなければ、交わす言葉もなかった。
 あの時と同じ重たい空気が、今の二人にも漂っていた。
 はっきり言って気まずかった。店員のペニスをしゃぶらせている最中は、互いにあれだけ燃え上がっていたのに、その行為後はバケツの水をぶっかけられたように冷め、嫌な気まずさだけがブスブスと燻っていた。
 そんな空気の中、アイスティーを一口飲んだ妻が、「パンツ……」とポツリと呟いた。それは、行為後の妻が初めて口にした言葉であり、その時初めて、行為後の妻の顔をまともに見た気がした。
「ああ、そうだったね……」と、慌ててポケットからピンクのパンティーを取り出すと、まるで不正な金を政治家の秘書に渡すかのように、それを机の下からソッと渡した。
 てっきりトイレに行くものと思っていたが、しかし妻は、それを受け取るなりその場で素早くそれを履いた。
 そのパンティーは他人に嗅がれたものだった。濡れたクロッチを指で弄られたものだった。普段の妻なら、そんなパンツを履く事に抵抗を感じるはずだったが、しかし今の妻はすんなりそれを履いた。
 そんな妻を見つめながら、ふと思った。
 この女は、ついさっきまで見ず知らずの男の性器を舐めていたのだ。恥垢にまみれ、強烈にイカ臭いペニスを何の抵抗もなくしゃぶり、挙句の果てには、どんな性病が含まれているかもわからないような精液を飲み干したのだ。この女は異常者なのだ。だからそんなパンツでも、この女は何の抵抗もなく履けるのだ……と。

 そう思っていると、未だドロドロに濡れている妻の膣に、それがピタリと張り付くシーンが頭に浮かんだ。そのカピカピに乾いていたクロッチに、残り汁がジワジワと染み込み、そこに新たなる卑猥なシミが浮かぶのを想像した。
 
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(恐らく今の妻は、ヤリたくてヤリたくて堪らないはずだ……)

 そう思うなり再びムラッと欲情した。私はこの短時間で既に三回も射精していた。しかし異常性欲者の私は、このままここで、妖艶な妻の顔を見ながらペニスをシゴきたいと思うほどに興奮していた。

「あの店員とヤリたかったか?」

 そう声を震わせながら妻に聞くと、妻はストローに口をつけながら上目遣いで私を見た。そして白いストローに茶色いアイスティーをスッと走らせると、私の目をジッと見たまま「クスッ」と小さく笑った。
 それは、ついさっきまでMだった妻からは想像できないSの微笑みだった。そんな挑発的な微笑みに私は心の臓を抉られた。怒り、悲しみ、絶望、嫉妬。それらが頭の中でドロドロと渦巻き、それと同時に身震いするような性的興奮を覚えた私は、拳が震えるほどに激しく動揺した。

 そもそも寝取られ願望者というのは、限りなくSでありながら、果てしなくMだった。最愛の妻を見ず知らずの男に抱かせるというサディズムな凶暴性は、妻のメスの部分を見てみたいというマゾヒズムな被虐性が起源であり、寝取られ願望のある夫というのは、表裏一体化したサドマゾヒズムなのである。
 もちろん、それに従う妻も同じだった。他人棒に悶えている時の妻は、その姿を最愛の夫に『見られている』というM的な快楽と、『見せている』というS的な快楽に溺れていた。その二つの快楽を交互に受けながら、それによって異常な性欲を湧き上がらせているのだった。

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 妻のその小悪魔的な微笑みを見た瞬間、私は凄まじい恐怖に襲われた。店員の肉棒に唇を滑らせていたシーンや、恍惚とした表情で精液を飲んでいたシーンが頭の中を駆け巡り、思わず私は、泣き出したくなるほどの絶望感に襲われた。
 もうやめよう、と思った。こんなことを続けていると、今に取り返しのつかないことになってしまうと心底思った。最愛の妻を壊したくない。最愛の妻を失くしたくない。そう焦りながら私は、今すぐ東京に帰ろうと思い、無言でスクっと立ち上がった。
 すると、ストローを唇に挟んだままの妻が「ん?」と首を傾げながら私を見上げた。

「もう行くの? まだサンドイッチがこんなに残ってるよ?」

 私の絶望感を逆撫でするかのように妻は優しく微笑んだ。妻のその愛らしい顔を見ていると、突然胸底から異様な興奮がムラムラと湧き上がってきた。

(お前はその唇であの薄汚いチンポをしゃぶっていた……チンカスも精液も、そのアイスティーのように飲み込んでしまった……)

 膝がガクガクと震えた。目は血走り、奥歯が鳴り、全身の毛穴が開いた。

(もしあの時、私があの場にいなければ、きっとお前はあの店員にヤらせていたはずだ……例えあの店員がそれを拒否したとしても、お前はあいつを床に押し倒し、強引にあいつの上に跨っては、チンポを自分のマンコに入れていただろう……)

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 その光景を想像すると、半開きの唇からハァハァと荒い息が漏れた。その激しい酸素により、それまで絶望で固まっていた脳が活性化し始め、みるみると感情が蘇ってきた。
「行くぞ」と呟く私は、痛いほどに勃起していた。そのままスタスタと歩き出すと、妻は「もう」と唇を尖らせながら立ち上がり、慌てて伝票を持ってレジに走った。
 出口で立ち止まっていた私は、レジでお金を払っている妻を見ていた。レジを打つ男性店員のすぐ目の前で、妻の大きな乳肉がタプタプしていた。それを見ながらズボンのポケットの中に手を入れた。そしてポケットの中から勃起したペニスをギュッと握りしめながら、(あの女を……滅茶苦茶にしてやる……)と呟いた。そんな私の脳は、再びヘドロと化していた。

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 ホテルを出ると、正面玄関の通路で待機していたタクシーに乗り込んだ。例のビジネスホテルの名を告げると、運転手は、「今からだと一時間ぐらいかかりますよ」と言いながらバックミラーで私を見つめ、「電車だったら十五分で着きますけど……」と言った。
 いかにも善良そうな運転手だった。五十代半ばだろうか、制帽からはみ出した鬢はほとんど白髪だった。
 そんな運転手の、パリッと糊付けされた几帳面なワイシャツの襟を見つめながら、「結構ですよ」と答えると、運転手は「ありがとうございます」と嬉しそうに微笑み、その笑顔のままタクシーを発進させたのだった。

 今から一時間かかったとしても、ホテルに到着するのは六時だった。それでも作戦決行までにはまだ六時間もあり、その間、いかにして今の妻の性欲を保っておこうかと考えていた。
 とりあえずチェックインし、部屋で有料のアダルトビデオを見せながら、ローターでオナニーでもさせておくか……。
 ふとそう思ったが、しかし、それでイキ過ぎて満足されてしまっては元も子もなかった。かといって、何の刺激も与えないまま六時間放置しておくというのは、せっかく苦労して沸かした熱湯をわざわざ冷ましてしまうようなものだった。

(この六時間は、私にとって最も長い六時間になりそうだ……)

 その難解さに覚悟しながらぼんやり窓の外を眺めていると、ふと道路の右手に海が見えてきた。
 左の座席に座っていた妻に「ほら」と指を差した。妻はゆっくりと身を乗り出しながら窓の外を眺め、「海だね」と呟いた。
 私の太ももの上では、前屈みで窓の外を見つめる妻のおっぱいが、まるで水を入れすぎた水風船のようにタプタプと揺れていた。私はそこにソッと手を這わせた。ボテッと垂れる柔肉を手の平で支え、その柔肉のグラムを量るかのように持ち上げたりして弄んだ。
 妻は私のその手を振り払おうともせず無言で海を眺めていた。しかし、私の左手が妻の背中へと回り、ワンピースの上からブラのフックを外そうとすると、急に妻は眉を八の字に下げながら、無言でイヤイヤと首を横に振った。
 それでも私はブラのフックを外した。そしてワンピースの上からブラの肩紐を下ろそうとすると、慌てて妻が元の位置に戻ろうとしたため、私は妻の腰に腕を回してそれを制止した。
 そのまま妻の上半身を膝の上に押さえ込んだ。運転手に聞こえないくらいの小声で「このままジッとしてろ……」と囁くと、妻は小さな溜息と共に力を抜いた。
 素早くブラの肩紐を両肩ずらした。腕の関節で止まったブラを強引に抜こうとすると、妻はそんな私の手をソッと振り払い、自分でそれを片方の袖から抜き取った。
 素早く上着を捲ると、二つの巨大な柔肉の塊がボテンっと垂れた。ポテンポテンと波打つそれは、中年女独特の柔らかさがあった。まるでスライムのようであり、揉んでいるだけでアドレナリンが放出された。
 
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 それを揉みながら、もうすぐこれを見ず知らずの男たちが弄ぶのかと思うと、たちまち激しい嫉妬と興奮に襲われ、途端に目の前がクラクラした。
 ポテンっと垂れる生乳を五本の指でムニュっと握った。妻は抵抗することもなく下唇をキュッと噛んだ。
 そのまま人差し指を伸ばし乳首をコロコロと転がすと、窓の外を見ていた妻が、途端に「はっ」と息を飲みながら項垂れた。「感じる?」と耳元に囁くと、妻は無言で私の股間に手を伸ばし、既に固くなっている肉棒をギュッと握ったのだった。

 すぐ目の前の運転席には、見知らぬ中年男がいた。気がつけば、この狭い空間の中には、私たち夫婦以外に他人男がもう一人いたのだ。
 改めてそれに気付いた瞬間、最も長いと思っていたこの六時間が急に短く感じ、これからの一分一秒が大切に思えた。

(今度はこの運転手を、ヘドロに引きずり込むか……)

 そう思いながら私は、この中年タクシードライバーのペニスを強引に咥えさせられている妻の悲惨な姿を思い浮かべた。そしてギラギラとした強烈な興奮に胸を締め付けられながら、なぜか無性に可笑しくて堪らなくなったのだった。

ウツボ93

(つづく)

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