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吐泥(へろど)9

2013/06/13 Thu 00:01

 漁業組合でさっさと商談を終わらせた私は、急いで電車に飛び乗った。

 私は異常なほどの性的興奮を催していた。朝っぱらから二回も射精している私だったが、しかし例の計画のせいで未だ悶々としていた。
 それはまるで、公園で不意に目撃した新妻のパンチラのように、いつまでも脳裏にこびりついていた。ある意味一種の呪縛だった。その呪縛から抜け出すには射精するしかないのだが、しかし商談中にトイレでセンズリをこくわけにもいかず、漁業組合での私は、おぞましい計画の呪縛に囚われたまま常に欲情状態にあったのだった。
 だからまともな商談など一つもしていなかった。漁業組合の貧乏臭いおばさん事務員の尻ばかりを見つめては、(今ならあの薄汚いおばさんの、恥垢だらけの蒸れ臭さマンコでも舐められる)などと卑猥な妄想を繰り返し、ゲンゲの説明を必死にしている組合長の話など何も聞いてはいなかったのだった。

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 長岡駅で新幹線に乗り換えた。
『Maxとき』は相変わらず空いていた。自由席でも余裕で座れたのだが、しかしお土産で貰ったゲンゲの干物が凄まじく臭うため、大事をとって乗客が少なそうなグリーン席にした。

 案の定、グリーン車は貸切のようにガラガラだった。入口を入ってすぐの席に中年サラリーマンが一人座っているだけだった。
 強烈な異臭物を持っていた私はひとまず安心した。あとは停車駅から誰も乗り込んで来ないことを祈るだけだと、切符の番号を見つつ座席を探した。しかし、26Aの席に辿り着いた私はたちまち絶句した。なんとその列の反対側の26Dには、女が一人、スースーと寝息を立てているではないか。
 咄嗟に、あの前川清のようなアホ面をした切符売り場の駅員の顔が浮かんだ。あのバカは、グリーン車がガラガラだということを一番知っていながらも、何故にわざわざ私とこの女を同列席にしたのだと思い、激しい怒りが込み上げてきた。
 なぜか関西弁で「アホちゃうか」と呟きながら、座席の上の荷物棚にゲンゲの袋を放り投げた。その音で女がピクッと目を覚ました。私は慌てて「あっ、すみません」と女に会釈した。すると女は、寝起きのしゃがれた声で「いえ……」とボソッと呟くと、そのまま寝ぼけ眼でゆっくりと席を立ちあがり、フラフラしながらトイレに向かったのだった。

 二十代後半だろうか、ポッチャリとしたなかなかのイイ女だった。一瞬しか見えなかったがオッパイは大きく、太もももムチムチしていた。その黒い花柄のワンピースにはゴージャスなエロさが漂い、まるで日活ロマンポルノに出てくるインテリ音楽教師のようだった。
 そんな事を思いながら、フラフラと通路を進む女の大きな尻を見ていた。すると再び前川清のようなアホ面をした駅員の顔が頭に浮かび、「ね、いいでしょ」と勝ち誇ったように笑った。私はそんな幻想の彼に「ええんちゃうの」と関西弁で答えると、溜め息混じりに視線を窓の外に向け、さっそく例の計画の構想を立て始めたのだった。

 窓の外には、果てしなく広い田園が延々と続いていた。
 そんな風景をぼんやりと眺めながら例の計画を立てていたのだが、しかし、そんな田園地帯の中にポツンと建っている民家を発見するたびに、きっとこんな所には、『津山三十人殺し』の犯人のような奴が住んでいるに違いないなどと妄想に駆られ、いちいちその猟奇的に荒れ果てた民家に気を取られてしまうため、例の計画はなかなか進まなかった。
 これではいけないと、私は真剣に計画に取り組むべく静かに目を閉じた。このわずか二時間足らずの新幹線の中で、しっかりと計画を立てておかなければ、土曜の夜には間に合わなくなるのだ。

 ネズミ男が言っていたには、火曜日以外の深夜0時以降ならいつでも妻を連れてきてもいいという事だった。
 深夜0時以降からではさすがに日帰りは難しく、ホテルに一泊しなければならなかった。となると、会社が休みの第二土曜日の昼に東京を出発し、その日の深夜に決行するしか方法はなかった。
 しかしその第二土曜日までは、あと二日しかなかった。
 もはや例の計画に完全に取り憑かれてしまった私には、来月の第二土曜日まで待つ事など到底できるわけがなく、もしそうなれば、たちまち気が狂った私はとんでもなく卑劣で残虐な性犯罪を犯しかねないのだ。
 だから何としても次の第二土曜日に決行しなければならず、この二日間で妻を説得しなければならなかった。
 しかしこの計画は、ほとんど素人に過ぎない妻にはあまりにもハードルが高すぎた。たった一度だけ、寝取られプレイを強制的にさせられた事しかない経験不足の妻が、いきなり変態共がウヨウヨしている男性サウナに潜入するなど、できるわけがないのだ。
 しかもこの計画は、想像を絶するほどの凄まじいプレイになる事は火を見るよりも明らかであり、そんなプレイに参加させるべく妻を説き伏せるのは、たったの二日間ではどう考えても無理だった。
 私は小さな溜息をつきながら、ゆっくりと腕組みをした。それと同時に反対側の座席にいた女が再び立ち上がり、新幹線の振動にフラフラと体を揺らしながら通路に出た。

(またトイレか?)

 そう驚きながら、通路を進む女の尻を舐めるように見た。
 女は、わずか三十分程度の間にかれこれ三度も席を立っていた。私が田園地帯に佇む不気味な民家に気を取られていたり、例の計画をあれこれと考えている間に、ああやってフラフラしながら三度もトイレに向かっていた。

(下痢か……それとも膀胱炎か……)

 そう思いながらふと女の座席に目をやると、窓の前にウィスキーのミニボトルがポツンと置いてあるのが見えた。しかもそれはアルコール度が非常に高いウィスキーであり、どうやら女はそれをロックでラッパ飲みしている様子だった。

(だから小便が近いのか……それにしても、昼間っから新幹線で酒を飲むとは……ワケありか? それともただのアル中か?)

 そんなことを考えていると、通路の向こうから女がフラフラと戻ってくるのが見え、素早く私は目を閉じた。
 女が近づく気配を感じながらソッと薄目を開けると、女の顔は赤く火照っていた。明らかに酔っている状態であり、その目はトロンっと緩んでいた。
 フラフラとやってきた女は、倒れるようにしてドスンッと座席に座った。そして半開きの目をフワフワさせながら、しばらく窓の外をぼんやり見つめていたが、しかしすぐにスースーと寝息を立てて寝てしまったのだった。

 そんな乱れた女に激しく興味を感じたが、しかし今の私はそれどころではなかった。一刻も早く、どうやって妻を説得するのかを考えなければならなかったのだ。
 そう焦りながら再び目を閉じると、ダダンダダン、ダダンダダン、と鉄橋を渡る振動が脳に響いた。そんな振動が過ぎるのをジッと待ちながらも、あの時の私はどうやって妻を説得しただろうかと、あの単独男との寝取られプレイの時のことを思い出していた。

 そもそも、そんなプレイを実行しようと決めたのは、私がアダルトグッズを購入したことがきっかけだった。
 当時から私たち夫婦は、毎日欠かさずセックスをしていた。もちろんそれは私が異常性欲者だからであり、決して妻がそれを求めていたわけではない。むしろ妻はそれを求めるどころか、そんな私の果てしない絶倫に嫌気をさしているようだった。
 このままでは離婚の危機にさらされる。
 そう焦った私だったが、しかしすぐに気づいた。その果てしなく続くセックスで妻も一緒に喜ばせてやればいいという事に気づいたのだ。
 さっそく私はAmazonにて、様々な性玩具を購入した。拘束具、ローター、ディルド、ろうそく、バイブ、乳首クリップ、猿轡。それらの性玩具を全て妻に試してみた。

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 そしていろいろ試した中、妻の反応が一番良かったのがローターだった。
 それからというもの、ローターは私たち夫婦の必需品となった。
 妻は、どれだけ私に激しく攻められて疲れ果てていようとも、皮を剥いたクリトリスにローターを押し付けてやればたちまちその気になった。例え連続四発のセックスで死体のようにぐったりしていても、ひとたびローターを手渡してやれば、さっそく太ももをスリスリと擦り合わせながら「ふんふん」と悩ましい鼻声を出し始め、自分で自分の乳首を指でコロコロと転がしたりしながら淫らに悶え始めた。
 何よりもいやらしかったのはイク瞬間だった。妻はローターでイキそうになると、自らの意思でバイブを鷲掴みにし、それを膣に挿入した。ローターをクリトリスに押し付けたままバイブのスイッチを入れ、膣に突き刺さったそれをクネクネとくねらせながら、まるで洋モノの金髪ポルノ女優のようにハァーハァーとダイナミックな呼吸を繰り返した。そして、恍惚とした目で卑猥な自分の陰部をソッと見つめながら、黙々と絶頂に達していたのだった。

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 自らロータを陰部に押し当てながら、恍惚とした表情で腰をヒクヒクと痙攣させている妻のその姿は、まるで別人のようだった。、日頃セックスに対して消極的だった妻のその乱れようは、今までの妻からは想像もできなかった。
 そんな妻を見た私は、激しい興奮を覚えると共に、黒々とした疑心を抱かせ、途端に私は背筋がゾッとするような恐怖を覚えた。
 というのは、妻は私と結婚するまで、二人の男としか付き合ったことがないと話していたからだった。しかもセックスをしたのはその二人のうちの吉田という男だけであり、それ以外の男とはそれらしき行為は一度もなかったと断言していたのだった。
 しかし、ローターを使う妻のその乱れようは尋常ではなかった。この三十年間、二人の男しか知らない初心な女とは到底思えぬような、そんな手慣れた淫乱っぷりだった。
 だから私は、妻は本当はとんでもないヤリマンだったのではないだろうかと彼女の過去を疑った。いや過去だけではなく、今現在も、こっそりそこらの男たちに尻を振っているのではないかと疑心暗鬼に陥ったのだった。

 しかしそんな疑心は、次第に恐怖から興奮へと変わっていった。不思議なことに、妻が見ず知らずの男たちの肉棒に溺れている姿を想像すると、今までにない興奮が湧き上がってきたのだ。
 もちろん、妻が浮気をしているなど私は本気で思っていなかった。当然、結婚する前の妻がヤリマンだったなど心の奥底では信じていなかった。それらは私が勝手に捏造したものであり、あくまでも私の気狂いじみた妄想に過ぎないのだ。
 が、しかし、そんな妄想は私の異常性欲に火をつけてしまった。

『他人に滅茶苦茶に犯されて悶えている妻を見てみたい』

 そんな危険なスイッチが入ってしまった私は、本気でそんな願望を抱き始めた。それは、あの公衆便所で獣たちに無残に犯されていた主婦を目撃した時に感じた、あの残酷な願望と同じだった。

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(つづく)

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