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スリル15・取調室

2013/06/13 Thu 00:02

「どうせ死刑なんだからさ、もうどうなってもいいじゃないか……ほら、もっと足開いて……」
 煙草臭い息が恵美の頬を掠めた。それは貪よりと生温かく、まるで蛇が這っているかのように薄気味悪かった。
「あららら、もうこんなに濡れてるじゃん。ほら、ちょっと触っただけでも指がヌルヌルと吸い込まれていくよ……」
 ヌメった壷の中に潜り込んだ男の指は、まるで捕獲されたウナギのようにうねうねと動き始めた。
 恵美は小さく唇を開いた。そこからほんの少しだけ息を漏らしながら、目の前に広げられた三日前の朝刊を何度も何度も読み返していたのだった。

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8日午後4時30分頃、浦川町にあるラブホテル『エリザベス浦川』が全焼し、焼け跡から二人の男女の惨殺死体が発見された事件で、三ツ和警察署は、現場にいた女を現住建造物放火と殺人の疑いで逮捕した。
逮捕されたのは、八隅町に住む無店舗型風俗店『サラマンドラ』従業員、加藤恵美容疑者(25)で、三ツ和警察署によると、加藤容疑者は現場近くの路上で全裸で踞っており、保護しようとした消防署員に対し、「私が火をつけました、私が二人を殺しました」と容疑を認めたため、駆けつけた警察官に逮捕された。
焼死体で発見された二人の男女には、それぞれ拷問をされたような痕が残っており、損傷が激しい事からまだ身元はわかっていないが、調べに対し加藤容疑者は、殺害した二人は全く知らない人などと答えており、動機についても「今は何も話したくない」と黙秘していると言う。
このラブホテルは、昭和62年にも風俗嬢が変質者に殺害されるという猟奇事件が起きており、犯人が特定されないまま平成24年に捜査が打ち切られていた。
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 恵美は、今までとは全く違う新たなスリルに脳を痺れさせていた。
 放火殺人。しかも二名を拷問の上、殺害。
 昨夜遅くに面会にやって来た当番弁護士は、眠そうな目を擦りながら「罪を認めたら確実に死刑ですね」と呟き、大型犬のような大きなあくびをした。
 死刑。
 そのシーンを想像しただけで恵美のクリトリスがジンジンと疼いた。
 法廷で死刑を宣告される自分。拘置所で刑務官の足音に脅えながら執行を待つ自分。そして、目隠しされ首に真っ白なロープを巻いたまま、いつ足下の床がバッタンと開くかと震えている自分。その、どの自分を想像してみても凄まじいスリルに襲われ、恵美は今までにない異常な興奮に包まれた。
 そんな恵美の異常興奮をいち早く見破ったのは、五十半ばのベテラン刑事だった。
 逮捕直後から完全黙秘している恵美は、薄暗い取調室で、一日中ジッと項垂れたままだった。そんな恵美を取り調べていた刑事は、最初のうちは自供させようと必死になっていたが、しかし、二日目の検事調べが終わり、十日間の勾留が決まると急に態度をがらりと変えた。
「あんたが働いてたデリヘル、変態専門らしいね」
 そう苦笑いを浮かべる刑事の表情には、それまでの必死さは消え去り、どこか余裕の太々しさが浮かんでいた。
「あんたほどの美人だったら、普通のデリでも雇ってくれるでしょ」
 刑事はそう笑いながら事務椅子をゆっくりと立ち上がると、その事務椅子を、恵美が座るパイプ椅子の真横に並べた。
 恵美が座るパイプ椅子は床にビス止めされていた。椅子のパイプ部分には、恵美の腰にぶら下がっている手錠の青い紐がぐるぐると巻き付けられ、恵美は立ち上がる事すらできなくなっていた。
 そんな拘束状態の中、刑事は、「やっぱ、あんたも変態かね……」と囁き、恵美の太ももを摩り始めた。
 恵美が黙ったままでいると、刑事の手はジャージのゴムの中に潜り込み、下着の上から股間をスリスリと撫で始めた。
 そのジャージは留置場から借りた『官物』だった。逮捕当時、恵美は全裸だったため、下着もジャージもタオルも歯ブラシも、全て官物を借りていた。
 刑事は、横目で恵美の表情をジッと確認しながら、もう片方の手でペニスを摘まみ出し、その真っ赤に腫れ上がった亀頭を恵美の右腕にスリスリと擦り付けて来た。
「あんた、二人も殺しちゃってるんだから、もう二度とコレに触れなくなるかも知れないよ……」
 そう話す刑事の股間を、恵美は乾いた喉にゴクリと唾を押し込みながらソッと横目で見た。
 その真っ赤な亀頭から見て、明らかに仮性包茎だった。パンパンにエラを張ったカリ首の裏には、できそこないの素麺のような白い恥垢がグルリと巻き付き、ベロリと剥かれた皮の裏側は、汗と小便の残り汁が混ざった汁でギトギトに濡れ輝いていた。
 恵美は無意識のうちに上半身を右側に傾けた。すると刑事は、嬉しそうにニヤリと笑いながら、そんな恵美の後頭部にそっと手をあて、そのまま恵美の顔を自分の股間に押し付けたのだった。
 そのヌルヌルとする臭汁が唇に触れた瞬間、おもわず恵美は「うっ」と眉間を顰めてしまった。
 しかし、それでも恵美はそこに舌を絡ませ、恥垢が溜まったカリ首に舌を回転させながらそれを優しく銜え込んだ。
 そのまま、二、三度、顔を上下させると、早くも刑事は「ダメダメ」と呟いた。そして、股間から恵美の顔をゆっくりと離しながら、「さすが変態専門のプロだけあるね、もう出ちゃいそうだよ」と笑うと、恵美の肩を優しく抱きながら、「どうせ死刑なんだからさ……」と囁いたのだった。

 刑事の煙草臭い息が頬を掠めた。
 言われるがままに股を開くと、刑事の指はすぐさまクロッチを掻き分け、既にヌルヌルになっている恵美の陰部を捕らえた。
 刑事は、目をギラギラさせながら「もうこんなに濡れてるじゃん……」と喜んだ。刑事の手が潜り込んだジャージの股間は歪に膨らみ、まるで小動物が潜んでいるかのようにモゾモゾと蠢いていた。
 刑事は、穴の中を指で滅茶苦茶に掻き回しながら、「こんな綺麗な女を、死刑にしてしまうのは勿体ないねぇ」と呟き、静まり返った取調室に、くっちゃ、くっちゃ、と卑猥な音を立てた。
 恵美は、そんな野蛮な愛撫に膣筋をキュンキュンとさせながらも、机の上に広げられていた三日前の朝刊を見つめていた。その記事に書かれている、『昭和62年にも風俗嬢が変質者に殺害されるという猟奇事件が起きており、犯人が特定されないまま——』という部分を、何度も読み返しながら、ふと、あの悪魔のような大磯の笑顔を思い出していた。
 恵美は横目でソッと刑事を見た。
「昭和62年にあのホテルで起きた事件の犯人は……わかっていないんですか……」
 そう聞くと、刑事は初めて喋った恵美に驚きながらも、「ふっ」っと鼻で笑った。
「犯人は、最初からわかってたさ……わざと二十五年間寝かせて時効にしたんだよ……」
「どうして?」
 恵美が振り返ると、刑事は恵美の顔を真正面から見つめながら、「綺麗な目だな」と優しく笑った。
 刑事は穴からヌルっと指を抜くと、そのドロドロに濡れた指でパイプ椅子に巻き付けられた手錠の紐を緩め始めた。そして、そこに恵美を立たせ、「取りあえず、中出しさせてよ」と、ジャージを足首まで下ろすと、既にダラリと口を開いている穴に亀頭を突き付けた。
 コリコリと硬い肉棒が、ヌルヌルの筒の中にツルンっと滑り込んで来た。
 机に両手を付いたまま「あんっ」と腰を撓らせると、刑事はハァハァと呻きながら耳元に囁いた。
「あの化け物をパクれない事くらい、あんたが一番よく知ってるだろ」
 その瞬間、恵美の頭に、大磯のあの狂気に満ちた目が、鮮明に浮かんだのだった。

(つづく)

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