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スリル16・猥褻監獄

2013/06/13 Thu 00:02

 留置場の真っ黒な鉄格子のドアには、頑丈な菱形の鉄網が張られ、ドアの下部には被疑者のプライバシーを守るための乳白半透明のアクリル板が張られていた。
 しかし、恵美が入れられている部屋には、その乳白半透明のアクリル板が付いていなかった。しかもトイレには囲いが無く、床に和式便器が埋め込まれ、剥き出しにされていた。
 そこは保護房と呼ばれる特別室だった。俗に『トラ箱』と呼ばれており、主に泥酔者や暴れる者たちを隔離する為の部屋だった。
 なぜ恵美がそんな部屋に入れられたのかというと、この老朽化した小さな警察署には、女区と呼ばれる女性専用の留置場が設備されていなかったからだった。
 この警察署では、女性や少年が逮捕された場合、成人男性被疑者と隔離する為にひとまずこのトラ箱に入れられると決まっていた。そして、送検後すぐに拘置所の女区に移監されるのだが、しかし恵美の場合は違っていた。
 それは、恵美の事件が、二名を殺害した放火殺人という重罪であり、まして、完全黙秘をして取り調べには一切応じようとしていないからであり、だから送検後も、恵美はこの劣悪なトラ箱に入れられたまま、取り調べを続けられていたのだ。
 しかし、そんな酷い扱いを受けても、恵美は全く堪えていなかった。むしろ、この家畜のような生活に異様なスリルを覚え、愉しんでいるようでもあった。
 そんな恵美を監視するのは婦人警官だった。しかし五時を過ぎると婦人警官はさっさと帰ってしまい、それ以降の恵美の監視は当直の男性看守に引き継がれた。
 この警察署は、留置場の規模が小さいという事から、当直勤務の看守は二人だった。一人は常に監視台にいたが、一人は当直室で仮眠を取っており、九時の消灯時間から六時間後に交代していた。
 そんな当直勤務の看守の中に、常に顔色の悪い二十代の弱々しい青年がいた。彼はいつも先輩看守のパシリに使われ、時には、先輩達から叩かれたり蹴飛ばされたりするといったイジメを受けていた。
 いかにもメンタル面の弱そうな彼は、先輩看守達に何をされても我慢していたが、しかしその裏では、その捌け口を留置場の中の被疑者に向けていた。
 と言っても、気の弱い彼は、強面な粗暴犯や暴力団員は避け、ホームレスや老人や知的障害者といった被疑者ばかりを狙った。そんな弱者にだけ陰湿な意地悪を繰り返していたのだった。
 そんな彼にとって、隔離部屋に閉じ込められている恵美は最高の捌け口だった。恵美は、重罪事件を起こしていながらも完全黙秘しているという、いわゆる警察の敵なのである。
 だから彼は、そんな恵美を虐める事は『正義』であると信じ込んでいた。害鳥駆除という大義名分のもとに鳩を虐待する異常者のように、彼は恵美を虐待する事を勝手に正当化していたのだった。
 恵美は、これまでに何度も彼にお茶をかけられていた。お茶や弁当は、鉄格子の隅の食器孔と呼ばれる小さな扉から出し入れされるのだが、彼は、いつもそこからお茶を手渡す際、わざと紙コップを傾けては、恵美の手に熱いお茶をかけていた。
 しかもそのお茶は、異様なアンモニア臭が漂っていた。紙コップの縁にはいつもビールの泡のようなものが溜まっており、明らかに小便が混入されているとわかった。
 しかし、それでも恵美は、毎回お茶をかけられる事に文句一つ言わず、その小便入りのお茶も黙って全部飲み干した。
 そんな恵美をロッカーの影からソッと覗き見するのが、唯一彼の、先輩看守達から受けるストレスの捌け口となっていたのだった。
 しかしそれは、ある事が切っ掛けで角度を変えた。ある時を境に彼は、恵美をストレスの捌け口とするのではなく、性欲の捌け口へと変えるようになったのだ。
 それは、恵美がこのトラ箱で生活するようになって四日目の夜だった。
 その晩、恵美は、いつも二十分おきに巡視する彼の足音に耳を傾けていた。その足音が聞こえたらすぐに実行できるよう、既に布団の中でジャージのズボンと下着を脱いでいた。
 饐えた臭いのする布団に包まりながら恵美は震えていた。その瞬間を想像すると激しい恐怖に襲われたが、その一方で膣の奥からいやらしい汁がジワジワと溢れて来た。
 暫くすると、スニーカーのゴムがキュッキュッと擦れる足音が聞こえて来た。それはみるみる恵美の部屋へと近付き、そのまま何事も無く普通に通り過ぎて行ってしまった。
 恵美はまだ実行に移さなかった。実行するのは、彼が正面通路ではなく裏通路を通過する時だと決めていた。
 その裏通路というのは、部屋の奥の格子窓の向こう側にある通路だった。
 つまり、部屋が縦長である事から、正面と裏から監視できるようになっていたのだ。
 彼のスニーカーが、正面通路の突き当たりをキュッと回る音が聞こえた。それと同時に恵美は布団から抜け出し、下半身を剥き出したまま、奥の鉄格子の窓へと向かった。
 その窓にはガラスは無く、鉄格子が嵌め込まれているだけだった。部屋の通気を考えてか、その鉄格子は縦スリット窓のように床まで伸びていた。
 そんな鉄格子のすぐ前には和式便器があった。一般の房では便器は壁で囲まれ、何の変哲も無い普通のトイレだったが、しかしこのトラ箱だけは、和式便器が剥き出しにされていた。恵美の場合、女性という事で、便器の横に一メートルほどの仕切り板が置かれていたが、しかし、それはあくまでも正面通路から目隠しされているだけであり、裏通路からは、便器の底の汚物までもが丸見えになってしまうのだった。
 そんな人権を無視した和式便器に、下半身裸の恵美は素早くしゃがんだ。おもいきり足を開き、黒々とした股間を突き出し、息を潜めた。
 薄暗い裏通路の奥からキュッキュッと響くゴム音が近付いて来た。そしてそれは、恵美の目論み通り、便器にしゃがむ恵美の真横でピタっと止まった。
 鉄格子の向こう側に安物のスニーカーが見えた。それを確認するなり恵美は一気に放尿した。
 黄ばんだ便器にビシャビシャと尿が飛び散った。それと同時に、項垂れていた恵美の視界からスニーカーがソッと消えた。
 格子の向こうを横目で見ると、通路の床に伏せながら恵美の股間を覗いている彼の姿が見え、背筋にゾゾっと寒気が走った。
 放尿が終わると、尿がポタポタと垂れる陰部に指を這わせた。指で割れ目を開き、膣筋に力を入れてその内部を剥き出しにすると、中に溜まっていた透明の液体が、ニトッ……と糸を引いて便器の底に垂れた。
 鉄格子の向こう側からギラギラする視線を感じながら、恵美はその赤く輝く毒々しい穴の中に指を滑り込ませた。そしてそこにグチャグチャと卑猥な音を響かせた。
 脳を突き抜けるような快感が走った。思わず「はんっ」と天井に顔を向けると、廊下に這った彼の体がユッサユッサと蠢いているのがわかった。
 恵美は視線を彼に向けた。堂々と彼を見つめながらオナニーをした。
 彼も、どうせこの女は死刑になるキチガイだ、とでも思ったのか、上下に動くペニスを堂々と見せつけてきた。
 恵美は、しゃがんだまま鉄格子に右足を掛けた。まるで雄犬が小便をするようなポーズになると、クパッと開いた膣を三本の指でドロドロと掻き回し、強烈なスリルに心臓を鷲掴みにされながら絶頂に達したのだった。
 それとほぼ同時に、廊下の冷たい床に彼の精液がパタパタと飛び散った。
 その晩からだった。
 彼は恵美をストレスの捌け口としてではなく、性欲の捌け口として見るようになったのだった。

(つづく)

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