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吐泥(へろど)25

2013/06/13 Thu 00:01

 後部ドアに凭れながら夜空を見上げていた。海沿いの夜空には分裂した鼠色の雲がいくつも浮かび、それが凄い速度で風に流されては、月のあかりを消したり灯したりと繰り返していた。
 そんな夜空を見上げていた私は、狂ったように小指の爪を噛みまくっていた。今、この車の中では、互いに性器を剥き出しにした妻と他人男が二人きりなのだと思うと、強烈な焦燥感に襲われ、意味もなくこのだだっ広い駐車場を全速力で走り回りたい衝動に駆られた。
 が、しかし、そんな私のペニスは勃起していた。妻が汚されてしまうと焦りながらも、あのヌルヌルに濡れた妻の膣に、見知らぬ中年男の肉棒がヌルリと滑り込む瞬間を想像しては、痛いくらいにペニスを勃起させていたのだった。

ウツボ112

 その心境は複雑すぎるほどに複雑だった。他人男に妻をヤらせたい、他人棒で妻を乱れさせたい、と、そんな欲望を強く抱きながらも、しかし、もう一方では、妻の性器に見知らぬ男の性器がナマで擦れ合う想像に嫉妬し、妻の穴の中に名前も知らない男の精液がドクドクと中出しされている想像に絶望した。
 絶望と欲望が複雑に混じり合っていた。鼠色の雲が月を遮ると絶望し、雲が流れて月の明かりに照らされると興奮した。そんな感情に交互に襲われていた私は、まさに重度の躁鬱病者だった。駐車場のアスファルトにベタリと座り込みながら、突然頭を掻き毟ったり、いきなり股間を握りしめたりと繰り返している私は、ストレスで頭がおかしくなった動物園の熊のように滑稽だった。

 私がタクシーから出て五分が経過していた。あの狭い車内で、性器を剥き出しにした男女が五分間も一緒にいれば、既に淫らな行為が行なわれているのは必然だった。まして二人は興奮していた。例えそれが道徳に背いた罪深き行為だとわかっていても、もはや、濡れた穴を剥き出した獣と、熱り立つ肉棒を突き出した獣には、その興奮を抑える事はまず不可能であろう。
 そう思いながら腕時計を見つめていると、ひっくり返ったカエルのように股を開いた妻の上で、薄汚い中年男が必死にコキコキと腰を振っている姿が鮮明に浮かび上がり、再び激しい焦燥感に駆られた。

ウツボ113

 そんな残酷な妄想を咄嗟に掻き消した私だったが、しかし私はそうしながらもズボンの中に手を入れていた。亀頭からは大量の我慢汁が溢れていた。トランクスの前は、まるで女のクロッチのようにネチャネチャに濡れていた。そんな我慢汁を潤滑油にしながら、ペニスをヌルヌルとシゴいた。
 しかし、ふとそこであることに気づいた。もし本当に男が腰を振りまくっているのなら、その振動で車がユサユサと揺れているはずだ、と。その静けさに不審を抱いた私はゆっくりと膝を立てた。運転席のドアに両手を付き、もしかしたら、トチ狂った運転手は妻を絞殺してしまったのかも知れないなどと、有り得もしない妄想を頭に描きながら、恐る恐る運転席の窓から中を覗いた。
 青い月明かりが車内を照らしていた。ぼんやりとした薄暗い闇の中で、黒い物体がユッサユッサと揺れていた。いつの間にか男は運転席へと戻り、そのシートに仰向けに寝転びながら、リズミカルに動く黒い物体を優しく撫でていた。
 それが、どんな状況なのかすぐにわかった。男の股間で蠢くその黒い物体が何なのかもすぐにわかった。しかし私はそれを認めたくはなかった。凄まじいショックに幾度も幾度も脳を襲われながらも、その黒い物体の積極的な動きを絶対に信じたくはなかった。
 そう絶望しながら愕然と窓を覗いていると、不意に男の手が、その黒い物体に垂れ下がっている髪をゆっくりと搔き上げた。青い月明かりに妻の横顔が照らされた。ゆっくりと上下に動く妻のその横顔は、まるで女神のように美しく、そして卑猥だった。

ウツボ114

(こ、これだったら……ズボズボにヤられていた方がマシだ……)

 ヌッと突き出した肉棒を、ヌルヌルと咥える妻の横顔を見ながら私は震え上がった。ここで私が見たかったのは消極的な妻だった。激しく欲情していながらも、その感情を必死にひた隠しながらヤられている妻を求めていた。しかし今の妻は逆だった。男の亀頭に絡みつく妻の舌の動きは明らかに積極的であり、必要以上に他人男を悦ばせようとしていた。
 これは、さっきの展望台での出来事とは大きく異なっていた。他人の男性器をしゃぶるという行為は同じでも状況が違っていた。展望台での妻は、ただ単に私の命令に従っただけだった。しかし、今の妻は、私の命令以外のことまで積極的に行っていた。例えそれが運転手の強要であったとしても、それは許されないことだった。あくまでも妻は私が所有する性奴隷であり、私以外の男の命令に従ってはいけないのだ。
 妻のその行為は、主人の私に対する裏切り行為だった。私の命令通りに、黙ってセックスだけヤらせておけばいいものを、妻は自ら積極的にあの汚れたペニスに舌を動かしているのだ。その必要以上なサービスは、明らかに裏切り行為だった。
 私は、今までにないショックに襲われていた。あの大人しい妻が、私の見ていない所でここまで変貌するのかと思うと、これが妻の本性だったのかと激しい怒りと悲しみに胸を締め付けられ、思わず運転席のドアに拳を叩きつけそうになった。
 が、しかし、私のその拳は勃起したペニスを握り締めていた。いつの間にズボンのボタンを外したのか、気がつくと私はペニスを剥き出しにしながらソレをシコシコとシゴいていた。

ウツボ115

 それに気づいた瞬間、今まで込み上げていた怒りと悲しみは、瞬時に快楽へと変わった。寝取られ願望者の悲しい性だった。マゾヒストの惨めな性だった。愛する妻が、この見ず知らずの薄汚い中年男のペニスを積極的に舐めている姿に、私は強烈な性的興奮を覚えていたのだった。

 上下する妻の頭部は、時には小さく、そして時には大きく動いていた。小さく動いている時は、亀頭を唇で挟みながらパフパフしたり、舌先で尿道をチロチロと舐めたりしていた。大きく動いている時はソレを根元まで飲み込み、窄めた唇で竿全体を上下に摩擦していた。
 その一連の動きは、いつも私にしてくれる愛撫と同じだった。だから妻の舌が各箇所を愛撫する度に、今この運転手がどんな快楽を得ているのかが手に取るようにわかり、嫉妬が渦巻いた。舌の些細な動きによって、いちいち嫉妬していた私だったが、その中でも何より嫉妬したのが、運転手の手が妻の髪を掴んでいる事だった。

ウツボ116

 これには嫉妬というより怒りを感じた。髪を鷲掴みにする運転手のその手は、もっと早くしゃぶれと言わんばかりに妻の頭部を動かしており、そこには背筋がゾッとするような陵辱感が漂っていた。
 それを見ながら私は、こんな田舎のタクシードライバー風情に、と激しい怒りを感じた。この運転手は、ついさっきまで、「本当にいいんですか……」などと声を震わせていた小心者なのだ。しかし、私が車から出て行ったために突然気が大きくなり、本性を剥き出しにした野獣へと変貌したのだ。
 きっとこのフェラも、運転手が無理矢理させたに違いなかった。妻を本物の変態肉便器だと蔑んだ運転手は、ペニスを挿入する前にもっと愉しんでやろうと、嫌がる妻にフェラを強要したのだろう。
 そんな運転手は、妻にペニスをしゃぶらせながら妻の尻を弄っていた。髪を鷲掴みにしていたもう片方の手を妻の尻に伸ばし、手首をくねくねと動かしながら、妻の尻肉をグニョグニョと歪めていた。

ウツボ117

 その手首の激しい動きからして、かなり乱暴に陰部を弄っている様子が伺えた。恐らく指を何本挿入し、内臓を抉り出すかのように滅茶苦茶に掻き回しているに違いなかった。
 妻が陵辱されている。私の大切な妻が、加齢臭漂う中年親父の性玩具にされている。そう思えば思う分、妻に対する愛おしさが倍増した。まるで、今までずっと片思いしていた女の子が、実はサッカー部の先輩とデキていたという事実を知らされた瞬間の学生のような、そんな悲しい切なさに胸を締め付けられた。
 が、しかし、そんな切なさも、妻の次なる行動で一瞬にして消え去った。
 口内にペニスをブシュブシュとピストンさせていた妻は、突然運転手の太ももに手を伸ばし、その股を大きく広げ始めた。シートの上で股を広げさせられた運転手は、まるでオムツを交換する赤ちゃんのようだった。妻は、口からペニスをベチョっと抜くと、そのままシワシワの睾丸をザラザラと舐めた。そしてその舌先を更に股間の奥へと滑らせて行くと、握ったペニスを上下にシゴきながら、その尻毛だらけの醜い肛門をチロチロと舐め始めた。
 それら一連の変態行為は、全て妻が自分の意思により行った裏切り行為だった。

ウツボ118

(つづく)

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