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吐泥(へろど)3

2013/06/13 Thu 00:01

 妻との電話を切ると、私は小さな溜息をつきながら汚れたナプキンを二つ折りにした。ゆっくりとベッドを降り、そのままトイレへと向かった。大量の精液を吸い込んだそれは大福餅のように重く、便器の裏にあった汚物入れにそれを捨てると、まるで肉片を投げ捨てたかのようなドサッと重い音がした。

 まるでどこかの収容所のような簡易的すぎる便器だった。だから便座を上げないままそこに小便をしてやった。未だ勃起していたペニスは尿道口が圧迫されており、小便はまるで高圧洗浄機のように凄まじい勢いで噴き出した。なぜか無性に愉快になった私は「それっ!」と子供のような掛け声をかけながらそこらじゅうに小便を飛ばした。
 シャワーカーテンやトイレットペーパーホルダーが精液混じりの小便で濡れた。更に私は爪先立ちになり、噴射したままのペニスを洗面所に向けると、鏡の前に置いてあった『消毒済み』のビニール袋に包まれたプラスチック製のコップが見事に吹き飛ばされ、カラカラと派手な音を立ててバスタブの底に落ちていった。

 そのままシャワーを浴びた。必要以上のボディーソープを股間に塗りたくり、そこにシャワーを向けた瞬間、そこで初めて靴下を履いたままだということに気づいた。
 恨み言を呟きながら既にベタベタになった靴下を脱いだ。そして「ボケが!」と吐き捨てながらクリーム色した浴室の壁にそれを投げつけると、黒い靴下は、バタッ! という音を立てながら、『へ』という字のまま壁に張り付いた。

 浴室を出ると、濡れた体のままベッドに倒れた。スポンジのように硬いマットは中途半端に体を跳ね返し、一瞬脳がクラッと揺れた。
 タバコのヤニで黄ばんだ天井を見つめながら、未だ勃起が収まらないペニスを握った。妻は陰部を濡らしたまま美容院に行ったのだろうかと思うと、不意に男性美容師に股間を舐められている妻の姿が目に浮かんだ。

美容院


 私は異常に性欲が強かった。それは、精神科の医師に異常性欲者だと診断された事があるほど異常だった。だから私は日に何度も射精しなければならなかった。だからほぼ毎日のように妻の体を貪っていたのだった。
 妻は私よりも五つ年下の三十歳だった。四年前に友人の紹介で知り合い、その一年後に結婚した。結婚してかれこれ三年になるが、私は出張で家をあけたとき以外は毎晩妻の体を貪り続けていた。
 しかし、私は異常でも、妻はいたって正常だった。正常者が、その意に反して毎晩二回も三回も攻められるというのは、恐らく、拷問に匹敵するほどの苦しみに違いなく、実際、陰部が濡れなかったり、時折「もう疲れた……」などと弱音を吐くことが多々あった。
 それでも私は、大量のローションを妻の陰部に塗り込み、もはや死体のようにぐったりしている妻の体を執拗に攻め続けた。お前のそのいやらしい体が悪いんだ、そのタプタプと波打つ巨乳が興奮を誘発しているからだ、などと、あたかもそれを妻のせいにしながら、その異常性欲を妻の体に放出していたのだった。

 そんな私の異常な性欲に妻が気づかないわけがなかった。二回、三回と私が求める度に、妻は「何かの病気じゃないの?」と心配するようになってきた。しかし、さすがに精神科の医師から異常性欲者と診断されたなどと話せるわけがなかった。だから私はそれを妻には黙っていた。
 最初のうちは、それが妻に発覚する事を私は恐れていた。異常性欲者などという事がバレれば離婚されるのではないかと怯えていたのだ。
 されど私の異常性欲は一向に収まらなかった。それどころか、動物のようにただただ延々と腰を振っているだけの単純な性交では次第に物足りなくなってきた。その性欲は日に日に変態性が強くなり、ドロドロとした欲望が脳を支配するようになってきたのだった。

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 しかし、今の妻にそれを求めるのはあまりにも残酷すぎた。今の妻は、絶倫なる私の異常性欲によって身も心も疲れ果て、股を開くことですらやっとなのだ。
 だから私は、それを補うためにそれなりの風俗に通った。夜な夜な怪しげな小部屋で、子豚のような娘を縄で縛って犯したり、ガリガリに痩せた中年女の見窄らしい尻に蝋燭を垂らしながら肛門を犯したりと変態行為を繰り返していた。
 しかし私のこの異常性欲は尋常ではなかったため、とてもではないが風俗では金が続かなかった。しかたなく私は、自慰によってその性欲を放出しようとした。そして公園の女子便所に忍び込むようになったのだが、しかしそう簡単に女は現れるはずがなく、結局誰一人として覗けないまま、尻を蚊に刺されるだけで退散する日々が続いていたのだった。

 思うように射精できない私は、もはや一触即発の危機にあった。会社にいても電車に乗っていても射精することばかり考え、頭の中では常に真っ白な精液がシュパシュパと気持ち良く迸っていた。
 そんな妄想の心地良い射精が、現実の私を更に追い込んだ。一刻も早く射精しなければ本当に気が狂ってしまうという強迫観念に駆られた私は、遂にその一線を超えてしまったのだった。

 それは今から三ヶ月ほど前、仕事帰りにまた例の公衆便所に立ち寄った時のことだった。
 今度こそは今度こそはと思いながら女子便所に忍び込むと、いつもは静まり返っているはずのその場所にガタガタという激しい振動音が響いていた。
 その音は一番奥の個室から聞こえてきた。一瞬、清掃中だと思い、焦ってその場を逃げ出しそうになったが、しかしこんな時間に清掃などしているわけがない事にすぐに気付き、私はその怪しげな振動音に大きな期待を膨らませながら、奥の個室へと足を忍ばせたのだった。
 素早く隣の個室に忍び込み、息を殺してドアを閉めた。案の定、隣の個室からはその規則的に続く振動音と共にリズミカルな呼吸が聞こえてきた。しかもその呼吸は複数であり、時折その呼吸に混じって野太い男の声がボソボソと聞こえてきた。
 遂に現場を取り押さえたと心が躍った。しかもそれは、女子が排泄しているといった安っぽい現場ではなく、明らかに男女が淫らに交わっているといったレアな現場なのだ。
 まさかこんな場面に出くわすとは思ってもいなかった私は、何度も何度も無言でガッツポーズを取りながら、急いで内ポケットからスマホを取り出した。
 荒い鼻息を必死に堪えながらスマホのカメラを起動させた。録画ボタンを押すと音が鳴ってしまうため、取り敢えずカメラのままでスマホを個室の壁の上へと持ち上げた。
 いきなり天井の蛍光灯がアップで映し出され、一瞬画面が真っ白になった。慎重に手首を曲げながら角度を変え、隣の個室の底にカメラを向けると、画面に黒い二つの頭がぼんやりと浮かび上がった。そしてその奥に更にもう一つの頭が見え、それが規則的に続く振動音と共にユッサユッサと揺れていた。

ウツボ5

 初めてだった。他人のセックスをリアルで見るのも初めてだし、当然、三人プレイを見るのも初めてだった。
 攻める男達は、私と同じ年くらいの中年男で、攻められている女も三十前後の中年女だった。三人は無言で黙々と作業を続けていた。その結合部分までは見ることができなかったが、そのネチャネチャと粘り気のある音からして、その女が相当濡れていることが窺い知れた。
 これは凄いお宝に出くわしたものだと、喜び勇んでズボンの中からペニスを引きずり出した私だったが、しかし、しばらくすると何やらその様子がおかしいことに気づいた。
 そう思ったのは、床に散らばっている品々が目に飛び込んできたからだった。それはパック詰めされた豚肉や日清のサラダ油だった。大根や長ネギや半分にカットされた白菜が床に転がり、個室の隅に投げ捨てられたスーパー大黒屋のビニール袋の中では、パック入りの豆腐が無残に潰れているのが見えた。
 もしやと思いながら素早くカメラを女の顔に向けてみた。そしてそこにズームしてみると、グスグスと泣きながら肉棒を咥えている女の顔がアップで映し出された。
 その右頬は赤く腫れていた。首には引っかき傷のような跡が無数に走り、肉棒を咥えているその唇にも紫色の血玉がいくつも浮かんでいた。私は指を震わせながらレンズをズームアウトし、女の太ももにビリビリに破れたパンティーがぶら下がっているのを見た。
 これは紛れもなくレ○プだった。買い物帰りの主婦が二人の男にレ○プされているに違いないのである。
 そう確信した瞬間、背筋にゾゾゾッと寒気が走り、それまでペニスを上下させていた手が途端に凍りついた。

 見つかったら殺される。そう思った私は恐る恐るスマホを下げ、息を殺しながら既に萎んでいるペニスをズボンの中に押し込んだ。しかし、それ以上は身動きできなかった。足がすくみ、膝がガクガクと震え、もはや眼球だけしか動かせなくなってしまっていたのだった。

 石のように凍りついてしまった私の耳に、女が乗せられている便器の蓋がギシギシと軋む音が延々と響いていた。すると、その音の中に、「んんんんんん」っと唸る男の声が混じった。どうやら男は射精したらしく、へらへらと笑いながらもう一人の男に「たっぷり出してやったよ」と囁いていた。
 しばらくすると、ガサガサと衣類を整える音と共に、携帯の疑似シャッター音がシャカシャカと鳴り出した。男たちは、「警察に言ったら奥さんのこの写真をネットにばらまくからな」などと口々に脅し、そのまま堂々と個室のドアを開けた。

 男たちの足音が遠ざかって行った。男たちの足音が完全に消えると、冷たい便所には女の震えたすすり泣きだけが悲しく響いた。
 私は、そんな悲惨な鳴き声を聞きながら未だ震えていた。しかし、そんな凄まじい恐怖に襲われながらも、不意に私の脳がぐるぐると回り始めた。それは、12才の頃、初めて姉の使用済み下着を手にした時の興奮によく似ていた。ダメだダメだと自分に言い聞かせながら洗濯機の中からそれを摘み出し、その強烈にイカ臭い黄ばんだシミに舌をザラザラと這わせながら射精した、あの時の背徳的な興奮と全く同じだった。

 ぐるぐると回る脳の動きに合わせ、胸に熱いものが込み上げてきた。それを吐き出そうとそれまで真一文字に閉じていた唇を緩めると、途端に生温い息が堰を切ったように溢れ出し、卑猥な呼吸と共に肩が上下に動き出した。
 はぁ、はぁ、はぁ、と続く自分の呼吸に耳を澄ましていた。ふと気がつくと、いつの間にそうしたのか、私は熱り立つ肉棒をがっしりと握りしめ、それを上下にシゴいていたのだった。

 ダメだダメだ。あの時のように必死に自分にそう言い聞かせるが、しかし私の足は勝手に動き出した。突き出した肉棒をシコシコさせながら個室から出ると、ドアが開きっぱなしの隣の個室へと進み、迷うことなくその個室に侵入しては素早く後ろ手でドアの鍵を閉めた。
 未だそのままの状態ですすり泣きしていた女が、私を見てギョッと目を見開いた。「あわわわわ」と何か言おうとしている女に、「大丈夫です、大丈夫ですから」とそう言いながら服を脱ぎ始めると、驚愕する女の顎と膝がガクガクと震え始め、同時に便座がカタカタと音を立てた。
 全裸となった私は、便座に座る女の真正面にゆっくりと腰を下ろした。「大丈夫ですから」と呟きながら震える女の太ももをゆっくりと押し開いた。
 ウヨウヨと伸びる陰毛の奥に、散々弄ばれて赤く爛れた裂け目がべろりと半開きになっていた。無残な股間と女の顔を交互に見ると、女は顎をガクガクさせながら「許してください……」と声を震わせ、怯えた目に涙をウルウルさせた。そんな女の裂け目の中には、白いモノが溜まっていた。人差し指で肛門の上を押してみると、歪んだ裂け目の中から、まるでヘドロのようなケモノ共の精がドロリと垂れたのだった。

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(つづく)

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