吐泥(へろど)39
2013/06/13 Thu 00:01
浴場へと続く薄暗い通路には、どこか荒んだ空気が漂っていた。それは、廃墟と化したボウリング場や、深夜の公衆便所、オールナイトの地下映画館といった場所に漂う陰気な空気によく似ており、こんな不気味な通路を妻は全裸のまま一人で進んだのかと思うと、それだけで私は射精しそうなほどの興奮に襲われた。
そんな通路の突き当たりを右に曲がると、『ジャングル大浴場・サウナ』と書かれた浴場のドアが現れた。そのドアの前には、オレンジ色のバスタオルとサウナ用のトランクスが収納された棚あり、その横には巨大なランドリーボックスが置かれていた。
その棚の中からタオルを一枚取り出そうとすると、不意にランドリーボックスの中から、生乾きの洗濯物のような嫌な臭いが漂ってきた。
見ると、獣たちの汗と汁でぐっしょりと湿った使用済みのトランクスやタオルが大量に放り込まれていた。そこには、丸めたティッシュも混じっており、中には血のようなシミが付いた物も見受けられた。
背筋をゾッとさせながらも、猥褻な好奇心に駆られた私はその丸めたティッシュの中で一番大きな物を摘み上げた。
その、まるでテルテル坊主のように丸められたティッシュをゆっくりと解すと、案の定、中から使用済みコンドームが出てきたのだった。
強烈な焦燥感に駆られた。こんなモノが普通に捨ててある物騒な場所に、全裸の妻を一人で潜入させてしまった事に、今更ながら激しい焦りを感じた。
(今頃妻は……もう妻は……)
そう呟く私の手は震え、同時に摘んでいた使用済みコンドームがプルプルと揺れた。
不意に、薄汚い外道共が妻の裸体に群がるシーンが頭に浮かんだ。
大きく股を開かされた妻の内臓を貪り食う外道共は笑っていた。両手に肉棒を握らせ、股座の二つの穴に肉棒をピストンし、巨大な肉棒を咥えさせている外道共は、皆、薄ら笑いを浮かべていた。
そんな無残な光景が次々に頭に浮かぶと、それまで胸を締め付けていた焦燥感は次第に性的興奮へと変化し、私の思考は再び寝取られ願望の域に達した
(もっとヤってくれ……私の大切な妻を、もっともっと滅茶苦茶にしてくれ……)
妄想する私の乾いた唇から、ハァハァと荒い息が漏れた。ついさっき射精したばかりのペニスは、はち切れんばかりに勃起し、まるで蜂に刺されたかのように真っ赤に腫れ上がった亀頭は、ズキンズキンと波打ちながら疼いていた。
それを左手でがっしりと握り、ああああああ……と頭の中で悶えながらシゴいた。シゴきながらも右手に摘んでいた使用済みコンドームを目の前に突きつけた。
その先には、カルピスの原液のような精液がタプンっと溜まっていた。怪しくテラテラと輝く表面はウ○コそのものの臭いが漂い、輪ゴムのような根元部分には、パリパリに乾いたそれらしき茶色い液体が付着していた。
それは、かなり危険度の高い感染性廃棄物だった。廃棄物処理法で言えば、特別管理廃棄物に区分されるレベルの、とても危険な汚物だろう。
そうとわかっていても、それでも私はそれを亀頭にあてがった。輪っかをカリ首に引っ掛け、ペリペリとゴムを引っ張りながら、その中にペニスをすっぽりと被せ、異様な興奮に身震いした。
その異常な行為は、決して血迷ったからではなかった。それは、妻に対する贖罪の念に駆られての行為だった。今頃、きっと妻の膣にも誰の物かわからない精液がドロドロと溜まっているだろうと思うと、そうせずにはいられなかったのだった。
ゴムの上からシコシコとシゴいた。見ず知らずの男の精液が亀頭をヌルヌルと滑らせていた。
薄いゴムの中でコリコリしている肉棒の感触は、まるで他人のペニスをシゴいているようだった。今頃妻も、こうして他人棒をシコシコしているのだろうかと想像すると、自然に手首の動きが早くなってきた。
そんなゴムの中は、他人の精液でヌルヌルしていたが、しかし表面は、既に乾いてしまっていたため、それがシコシコされる度に、乾いたゴムがペリペリと独特な音を鳴らした。
卑猥な音を立てながら、立ったままシゴきまくった。中腰になり両足をスリスリと擦り合わせながら悶えていると、ふと、休憩室へと続く廊下の角から、そんな私の痴態をジッと観察している男がいることに気づいた。
男は私を見つめながら笑っていた。しかし、笑っているのは口元だけで、目は狂人のようにギラギラと光っていた。
その異様な目の輝きは、明らかに私を獲物として捉えていた。
ゆっくりと近づいてくる男に危険を察知した私は、一刻も早くこの場から立ち去らなければと焦ったが、しかし、その男の鋭い眼光から発せられる異様なパワーに圧倒されてしまい、まさに蛇に睨まれたカエルの如く、足が竦んで動けなくなってしまった。
それでも私は、恐る恐るコンドームの先を引っ張り、それを引き抜こうとした。私はソッチ方面の変態ではないという事を男に知らせるためにも、一刻も早くこの変態行為を中止するべきだと思ったのだ。
ビューンっと伸びたコンドームがチュポンっと音を立てて抜けた。丸いピンクのゴム輪から前者の精液がトロッと溢れ、それが使い古されたカーペットの上にボトッと落ちた。
それをランドリーボックスの中に投げ捨てると、既に男は、私の目の前に立ちはだかっていた。
恐らく四十代だった。一見、普通のサラリーマンにも見えたが、しかし、その狂気に満ちた表情とガタイの良い体格は、まさにグラディエーター的なホモだった。
男は、無言で私を見つめながらニヤニヤと口元を歪めていた。いきなり腰に巻いていたオレンジ色のバスタオルを剥ぎ取り、それをランドリーボックスの中に放り込むと、ピンっと勃起したペニスを私に見せ付けてきた。
(怖っ……)
咄嗟にそう思いながら、早々とその場から立ち去ろうとした。
すると、背後で男がポツリと呟いた。
「それ……さっき俺が使ってたゴムだよ……」
ゾッとしながら足を止めた。恐る恐る振り返ると、グラディエーターは不敵に私を見つめながら自分のペニスをシコシコとシゴいていた。
グラディエーターは、もう片方の手でいきなり私の手首を握ると、物凄い力で私をグイッと引き寄せた。そして私のうなじに、「仮眠室に行こうか……」と囁くと、そのまま強引に歩き出そうとした。
一瞬、そのイカツイ肉棒でメリメリと引き裂かれる肛門が頭を過ぎった。ゾッとしながら慌ててその手を振り解き、「違うんです」と足を止めた。
グラディエーターは「何が?」と首を傾げながら私の顔を覗き込んだ。
「いや、私にはソッチの趣味はありませんので……」
「じゃあ、何で俺のコンドームを——」
「——失礼します」
私はそう早々と告げると、まだ何か言いたそうなグラディエーターを無視して浴場の扉を開けた。そして溢れ出る湯気に包まれながら、もう一度「失礼します」と小さく頭を下げると、そのまま後ろも振り向かないまま扉を閉めたのだった。
焦っていたため、何も考えないまま飛び込んでしまった浴場だったが、しかし、濡れたタイルを足の裏に感じた瞬間、妻の顔が頭に浮かび、急速に現実に引き戻された。
慌てて湯気の中に目を凝らした。
浴場には三人の男がいた。
一人は、ほぼスキンヘッドに近い坊主刈りの若者で、水風呂の前のタイル床にべたりと胡座をかいていた。
もう一人の男は、三十代と思われる色白の茶髪男で、浴槽の縁に座りながら足だけ湯に浸かっていた。
そして、最後の一人は、五十代と思われるムッチリと太った中年親父で、サウナ横の洗い場の椅子にどっしりと腰掛けていた。
と言っても、このムッチリ親父は体を洗っているわけではなく、髪を洗っているわけでもなかった。ムチムチとした二重アゴを歪に曲げながら顔だけを横に向かせ、露天風呂の方をジッと見つめていた。
そんなムッチリ親父の視線の先に妻がいた。浴場の一番端の洗い場でジッと蹲りながら、真っ白な湯気に身を潜めていた。
そんな妻の細い背中を見た瞬間、まだヤられていなかったという安堵感と、このままではヤられてしまうという焦燥感が複雑に絡み合った。ヤられる妻が見たい為に、わざわざ妻をここに連れてきたはずなのに、それでもまだヤられていないと知るなり、(引き返すならまだ間に合う)などという、往生際の悪さが出てきた。
浴場の三人は見るからに外道だった。湯気に身を隠しながら妻の様子をジッと伺うその姿は、まさにサバンナの茂みの中でインパラを狙う肉食獣そのものであり、ふとしたタイミングで一斉に襲いかからんばかりの、そんな唯ならぬ気配を漂わせていた。
実際、洗い場の椅子に腰掛けているムッチリ親父の股間には、真っ黒な極太肉棒がヌッと反り立っていた。
水風呂前のタイル床で胡座をかいているスキンヘッドの股間からも、真っ赤に腫れ上がった亀頭が顔を出し、浴槽の縁に腰かけている茶髪男などは、あたかもそれを妻に見せつけるかのように大きく股を開き、その天狗の鼻のように勃起したペニスを大胆に露出していた。
そんな一触即発な状況の中、入り口のドアの前に立ち竦んでいた私は、(引き返すならまだ間に合う、引き返すならまだ間に合う)と何度も呟きながら、汗で湿った拳を握りしめていた。
やはりネズミ男が言うように、素人の妻には、ここは早すぎた。つい昨日まで普通の主婦として生活してきた妻のレベルなら、オールナイトの映画館か、もしくは安全な単独男を集めての乱行パーティーからデビューするのが順序であり、いきなり外道共が蠢くサウナに全裸で放り出すというのは、あまりにも無謀過ぎた。
やっぱり連れて帰ろう。そう思いながら妻に向かって歩き出した。すると、ふと、浴槽の縁に座っていた茶髪男が、その天狗の鼻のようなペニスをシコシコとシゴき始めたのが目に飛び込んできた。
外道はこの三人だけではない。恐らく、サウナの小窓からも露天風呂の向こう側からも、外道共が妻の様子を伺っているに違いなかった。
外道共は警戒しているのだ。デブやブスやババアといった変態女ならまだしも、妻のような美女が、こんな所に一人ポツンといるのは明らかに不自然であり、それで外道共は二の足を踏んでいるのだ。
しかし、誰かが先陣を切れば、外道共は雪崩を打って襲いかかってくるに違いなかった。その一番槍が、今そこでペニスをシゴき始めた茶髪男となるのだろうかと思うと、あの天狗鼻の肉棒が、ヌルヌルに濡れた妻の蜜穴を行ったり来たりしているシーンがリアルに浮かびあがり、突然の興奮に襲われた。
胸底から熱いモノがムラムラと湧き上がってきた。
再び私の中で絶望と欲望が葛藤し始め、それらはドロドロと混ざり合っては、真っ黒なヘドロと化して私の脳を汚染した。
私は、妻の背後で足を止めた。
そこに呆然と立ち竦みながら、妻のツルンっと輝く丸い尻を見下ろしていると、不意に、私が先陣となり、外道共が見ている前で、この変態女を滅茶苦茶に犯してやりたい衝動に駆られた。
私がそこで足を止めた瞬間、それまでこっそり妻の様子を伺っていたスキンヘッドの若者とムッチリ親父と茶髪男が、慌ててこちらを見た。三人揃って首を伸ばしているその姿は、ミーアキャットのように滑稽でもあり、不気味でもあった。
妻には一切話しかけなかった。まるで他人のように妻の存在を無視しながら、洗い場に置いてあった風呂桶にドボドボと湯を溜め始めた。
それは、ここにいる外道共には、この女が私の妻であると言う事を知られたくなかったからだった。この女は、露出狂で淫乱でリンカン願望を持つ変態女であり、あくまでもこのサウナには、自分の意思により一人でやってきたという事にしておきたかったのだ。
その理由は、そうしたシチュエーションにしておいた方が、外道共の本領が発揮されると思ったからだった。寝取られ願望の夫に無理やり連れてこられた女よりも、自らの意思でここにやって来たリンカン願望女と言うことにした方が、外道共のモチベーションは向上し、躊躇なく妻を陵辱しまくれると思ったからだった。
当然、妻に対しても同じだった。
この場に私がいれば、妻も本性を曝け出せれないであろう。その一部始終を夫に見られていては、内面に隠し持っている淫乱性欲を存分に吐き出す事ができず、常に受け身のまま、ただただマグロとなってダラダラと犯されるだけになってしまうのだ。
私は、今夜妻が淫獣と化すのを望んでいるのだ。夜な夜な異常性欲者の夫に散々弄ばれながらも、ピンクローターでしか自分を慰められない可哀想な妻を、今夜ここで解放してやりたいのだ。溜めに溜め込んだその淫らなストレスを、野獣のような外道共の肉棒によって全て発散し、自らも淫獣と化して欲しいのだ。
だから私は、わざと風呂桶に湯など溜めながらも、妻の背中にソッと呟いた。
「私は先に部屋に帰ってるから……キミはサウナにでも入ってゆっくりして来なさい……」
すると妻は、私のその残酷な言葉に別段驚く事もなく、黙ったままソッと横目で私を見た。妻のその表情は怯えていた。そして、明らかに私を非難していた。
私はそんな妻の視線からソッと目を逸らしながら、意味もなく桶に溜まった湯を床にザァーっと流した。
そうしながらチラッと三人の男たちを見ると、それまでミーアキャットのように伸びていた首はいつしか元に戻っていた。
私が妻にこっそり囁きかけた事に不審を抱いたのか、そんな彼らの表情には警戒心が浮かんでいた。
これではマズイと思った。このまま立ち去れば、彼らはこれが美人局か、若しくはAVの隠し撮りではないかと疑い、スムーズに事が進まない恐れがあった。
そこで私は、妻とは何の関係もない、通りすがりの変態のふりをする事にした。
私は、わざと彼らに聞こえるくらいの声で、妻に向かって「おい、変態女、オマンコを見せてみろよ」と言った。そして、既に勃起しているペニスを妻に突きつけ、わざと彼らに見えるようにしながらそれをシコシコとシゴき始めたのだった。
いきなり豹変した私を、妻は戸惑いながらジッと見ていた。
そんな妻に、私は低く呟いた。
「黙って言う通りにしろ……奴らに私たちが夫婦だという事がバレたら……生きてここから出られないぞ……」
そう脅してやると、妻はそれを本気に受け取ったのか、ビクビクしながら辺りを見回した。そして、浴槽の縁に座りながらセンズリしている茶髪男を見つけては、その大きな目を更にギョッと見開いた。
「早くしろ……こっちを向いてそこにしゃがむんだ……」
茶髪男のセンズリが効いたのか、そんな私の命令に妻は素直に従い、恐る恐る椅子から尻を下ろすと、こちらを向いてしゃがんだ。
「そのまま股を開け! そのいやらしい穴を見せてみろ!」
わざと大きな声でそう言いながら、しゃがんだ妻の両太ももを、肩幅まで開かせた。
そこが開くなり、三人の男の首が一斉に傾いた。水風呂の前で床に胡座をかいていたスキンヘッドの男などは、そのままべたりと床に寝そべり、直下から、しゃがんだ妻の股の裏を覗き込んでいた。
そんな男たちの露骨な行動に、目眩を感じるほどの興奮に襲われた私は、咄嗟に、「しょ、しょうべんをしろ! そこにビシャビシャとしょうべんするんだ!」と叫んでいた。
私の叫び声が浴場に響くと、同時にスキンヘッドの若者がケラケラと笑いだした。その笑い声は、明らかに妻を屈辱しており、途端に私の胸は締め付けられたが、しかし、そんな屈辱感は、寝取られマゾの私の興奮を更に扇動した。
妻はジッと俯きながら下唇を噛んでいた。その表情には羞恥と屈辱が垣間見れたが、しかしそれは、見ようによっては快楽とも受け取れた。
暫くして、突然妻の陰部がプクッと膨らんだ。それと同時にそこから黄金色の水がシューッと吹き出し、薄く湯が張ったタイル床に円形状の波紋が広がった。
スキンヘッドの若者が更に声を高めて笑った。茶髪男は激しくペニスをシゴき、ムッチリ親父は、勃起した肉棒に激しく噴き出すシャワーの湯を掛けながら、小便が噴き出す妻の股間を覗き込んでいた。
そんな彼らを横目で見ながら、ひとまず彼らが私に抱いていた警戒心は消えたと思った。
妻の真正面に立つと、生温かい小便が右足の甲にシュッーと吹き掛かった。妻を見下ろしながら、そこにポテンっと垂れ下がる乳肉に向けてペニスをシゴき始めると、不意に妻と目が合った。
妻は悲しそうな目をしていた。まるで捨てられた子犬のように、寂しさと悲しみが宿っていた。
私はそんな妻の目に、更に追い討ちをかけるかのようにして、その乳肉に向けて射精してやった。ビュッ!と飛び出した精液に、妻が慌てて顔を背けると、背後でスキンヘッドの甲高い笑い声が響いた。
コリコリの乳首に亀頭を押し付け、肉棒を回転させながらそこに精液を塗り込んだ。亀頭がヌルヌルと滑り、乳首がネチャネチャと音を立てながら回転した。
「朝までには帰って来るんだぞ……」
そう小声で囁きながらソッと妻の顔を見た。
すると、妻の目には、先ほどの悲しみはもう宿っていなかった。
まるで廃人のように浮遊したその目は、二年前、赤坂のマンションで見た、あの時の変態肉便器女と同じ目だった。
(遂に妻も……ヘドロに汚染された……)
そんな恐怖と絶望に襲われた私は、慌てて妻に背を向けた。そして、逃げるようにして足早に歩きながら、脳に焼きついた妻の目を必死に振り払った。
(私は……私は……取り返しのつかないことをしてしまった……)
そう下唇を噛みながら必死に歩いていると、不意にムッチリ親父とすれ違った。(えっ!)と慌てて振り返ると、茶髪男が湯の中をゆっくりと進みながら、まるでジョーズのように妻に迫ろうとしていた。
それを見るなり、それまでの恐怖と絶望は欲情へと変わった。
それは、私の脳髄に沈殿していたヘドロが、再び動き出した瞬間だった。
(つづく)
《←目次》《40話へ→》
そんな通路の突き当たりを右に曲がると、『ジャングル大浴場・サウナ』と書かれた浴場のドアが現れた。そのドアの前には、オレンジ色のバスタオルとサウナ用のトランクスが収納された棚あり、その横には巨大なランドリーボックスが置かれていた。
その棚の中からタオルを一枚取り出そうとすると、不意にランドリーボックスの中から、生乾きの洗濯物のような嫌な臭いが漂ってきた。
見ると、獣たちの汗と汁でぐっしょりと湿った使用済みのトランクスやタオルが大量に放り込まれていた。そこには、丸めたティッシュも混じっており、中には血のようなシミが付いた物も見受けられた。
背筋をゾッとさせながらも、猥褻な好奇心に駆られた私はその丸めたティッシュの中で一番大きな物を摘み上げた。
その、まるでテルテル坊主のように丸められたティッシュをゆっくりと解すと、案の定、中から使用済みコンドームが出てきたのだった。
強烈な焦燥感に駆られた。こんなモノが普通に捨ててある物騒な場所に、全裸の妻を一人で潜入させてしまった事に、今更ながら激しい焦りを感じた。
(今頃妻は……もう妻は……)
そう呟く私の手は震え、同時に摘んでいた使用済みコンドームがプルプルと揺れた。
不意に、薄汚い外道共が妻の裸体に群がるシーンが頭に浮かんだ。
大きく股を開かされた妻の内臓を貪り食う外道共は笑っていた。両手に肉棒を握らせ、股座の二つの穴に肉棒をピストンし、巨大な肉棒を咥えさせている外道共は、皆、薄ら笑いを浮かべていた。
そんな無残な光景が次々に頭に浮かぶと、それまで胸を締め付けていた焦燥感は次第に性的興奮へと変化し、私の思考は再び寝取られ願望の域に達した
(もっとヤってくれ……私の大切な妻を、もっともっと滅茶苦茶にしてくれ……)
妄想する私の乾いた唇から、ハァハァと荒い息が漏れた。ついさっき射精したばかりのペニスは、はち切れんばかりに勃起し、まるで蜂に刺されたかのように真っ赤に腫れ上がった亀頭は、ズキンズキンと波打ちながら疼いていた。
それを左手でがっしりと握り、ああああああ……と頭の中で悶えながらシゴいた。シゴきながらも右手に摘んでいた使用済みコンドームを目の前に突きつけた。
その先には、カルピスの原液のような精液がタプンっと溜まっていた。怪しくテラテラと輝く表面はウ○コそのものの臭いが漂い、輪ゴムのような根元部分には、パリパリに乾いたそれらしき茶色い液体が付着していた。
それは、かなり危険度の高い感染性廃棄物だった。廃棄物処理法で言えば、特別管理廃棄物に区分されるレベルの、とても危険な汚物だろう。
そうとわかっていても、それでも私はそれを亀頭にあてがった。輪っかをカリ首に引っ掛け、ペリペリとゴムを引っ張りながら、その中にペニスをすっぽりと被せ、異様な興奮に身震いした。
その異常な行為は、決して血迷ったからではなかった。それは、妻に対する贖罪の念に駆られての行為だった。今頃、きっと妻の膣にも誰の物かわからない精液がドロドロと溜まっているだろうと思うと、そうせずにはいられなかったのだった。
ゴムの上からシコシコとシゴいた。見ず知らずの男の精液が亀頭をヌルヌルと滑らせていた。
薄いゴムの中でコリコリしている肉棒の感触は、まるで他人のペニスをシゴいているようだった。今頃妻も、こうして他人棒をシコシコしているのだろうかと想像すると、自然に手首の動きが早くなってきた。
そんなゴムの中は、他人の精液でヌルヌルしていたが、しかし表面は、既に乾いてしまっていたため、それがシコシコされる度に、乾いたゴムがペリペリと独特な音を鳴らした。
卑猥な音を立てながら、立ったままシゴきまくった。中腰になり両足をスリスリと擦り合わせながら悶えていると、ふと、休憩室へと続く廊下の角から、そんな私の痴態をジッと観察している男がいることに気づいた。
男は私を見つめながら笑っていた。しかし、笑っているのは口元だけで、目は狂人のようにギラギラと光っていた。
その異様な目の輝きは、明らかに私を獲物として捉えていた。
ゆっくりと近づいてくる男に危険を察知した私は、一刻も早くこの場から立ち去らなければと焦ったが、しかし、その男の鋭い眼光から発せられる異様なパワーに圧倒されてしまい、まさに蛇に睨まれたカエルの如く、足が竦んで動けなくなってしまった。
それでも私は、恐る恐るコンドームの先を引っ張り、それを引き抜こうとした。私はソッチ方面の変態ではないという事を男に知らせるためにも、一刻も早くこの変態行為を中止するべきだと思ったのだ。
ビューンっと伸びたコンドームがチュポンっと音を立てて抜けた。丸いピンクのゴム輪から前者の精液がトロッと溢れ、それが使い古されたカーペットの上にボトッと落ちた。
それをランドリーボックスの中に投げ捨てると、既に男は、私の目の前に立ちはだかっていた。
恐らく四十代だった。一見、普通のサラリーマンにも見えたが、しかし、その狂気に満ちた表情とガタイの良い体格は、まさにグラディエーター的なホモだった。
男は、無言で私を見つめながらニヤニヤと口元を歪めていた。いきなり腰に巻いていたオレンジ色のバスタオルを剥ぎ取り、それをランドリーボックスの中に放り込むと、ピンっと勃起したペニスを私に見せ付けてきた。
(怖っ……)
咄嗟にそう思いながら、早々とその場から立ち去ろうとした。
すると、背後で男がポツリと呟いた。
「それ……さっき俺が使ってたゴムだよ……」
ゾッとしながら足を止めた。恐る恐る振り返ると、グラディエーターは不敵に私を見つめながら自分のペニスをシコシコとシゴいていた。
グラディエーターは、もう片方の手でいきなり私の手首を握ると、物凄い力で私をグイッと引き寄せた。そして私のうなじに、「仮眠室に行こうか……」と囁くと、そのまま強引に歩き出そうとした。
一瞬、そのイカツイ肉棒でメリメリと引き裂かれる肛門が頭を過ぎった。ゾッとしながら慌ててその手を振り解き、「違うんです」と足を止めた。
グラディエーターは「何が?」と首を傾げながら私の顔を覗き込んだ。
「いや、私にはソッチの趣味はありませんので……」
「じゃあ、何で俺のコンドームを——」
「——失礼します」
私はそう早々と告げると、まだ何か言いたそうなグラディエーターを無視して浴場の扉を開けた。そして溢れ出る湯気に包まれながら、もう一度「失礼します」と小さく頭を下げると、そのまま後ろも振り向かないまま扉を閉めたのだった。
焦っていたため、何も考えないまま飛び込んでしまった浴場だったが、しかし、濡れたタイルを足の裏に感じた瞬間、妻の顔が頭に浮かび、急速に現実に引き戻された。
慌てて湯気の中に目を凝らした。
浴場には三人の男がいた。
一人は、ほぼスキンヘッドに近い坊主刈りの若者で、水風呂の前のタイル床にべたりと胡座をかいていた。
もう一人の男は、三十代と思われる色白の茶髪男で、浴槽の縁に座りながら足だけ湯に浸かっていた。
そして、最後の一人は、五十代と思われるムッチリと太った中年親父で、サウナ横の洗い場の椅子にどっしりと腰掛けていた。
と言っても、このムッチリ親父は体を洗っているわけではなく、髪を洗っているわけでもなかった。ムチムチとした二重アゴを歪に曲げながら顔だけを横に向かせ、露天風呂の方をジッと見つめていた。
そんなムッチリ親父の視線の先に妻がいた。浴場の一番端の洗い場でジッと蹲りながら、真っ白な湯気に身を潜めていた。
そんな妻の細い背中を見た瞬間、まだヤられていなかったという安堵感と、このままではヤられてしまうという焦燥感が複雑に絡み合った。ヤられる妻が見たい為に、わざわざ妻をここに連れてきたはずなのに、それでもまだヤられていないと知るなり、(引き返すならまだ間に合う)などという、往生際の悪さが出てきた。
浴場の三人は見るからに外道だった。湯気に身を隠しながら妻の様子をジッと伺うその姿は、まさにサバンナの茂みの中でインパラを狙う肉食獣そのものであり、ふとしたタイミングで一斉に襲いかからんばかりの、そんな唯ならぬ気配を漂わせていた。
実際、洗い場の椅子に腰掛けているムッチリ親父の股間には、真っ黒な極太肉棒がヌッと反り立っていた。
水風呂前のタイル床で胡座をかいているスキンヘッドの股間からも、真っ赤に腫れ上がった亀頭が顔を出し、浴槽の縁に腰かけている茶髪男などは、あたかもそれを妻に見せつけるかのように大きく股を開き、その天狗の鼻のように勃起したペニスを大胆に露出していた。
そんな一触即発な状況の中、入り口のドアの前に立ち竦んでいた私は、(引き返すならまだ間に合う、引き返すならまだ間に合う)と何度も呟きながら、汗で湿った拳を握りしめていた。
やはりネズミ男が言うように、素人の妻には、ここは早すぎた。つい昨日まで普通の主婦として生活してきた妻のレベルなら、オールナイトの映画館か、もしくは安全な単独男を集めての乱行パーティーからデビューするのが順序であり、いきなり外道共が蠢くサウナに全裸で放り出すというのは、あまりにも無謀過ぎた。
やっぱり連れて帰ろう。そう思いながら妻に向かって歩き出した。すると、ふと、浴槽の縁に座っていた茶髪男が、その天狗の鼻のようなペニスをシコシコとシゴき始めたのが目に飛び込んできた。
外道はこの三人だけではない。恐らく、サウナの小窓からも露天風呂の向こう側からも、外道共が妻の様子を伺っているに違いなかった。
外道共は警戒しているのだ。デブやブスやババアといった変態女ならまだしも、妻のような美女が、こんな所に一人ポツンといるのは明らかに不自然であり、それで外道共は二の足を踏んでいるのだ。
しかし、誰かが先陣を切れば、外道共は雪崩を打って襲いかかってくるに違いなかった。その一番槍が、今そこでペニスをシゴき始めた茶髪男となるのだろうかと思うと、あの天狗鼻の肉棒が、ヌルヌルに濡れた妻の蜜穴を行ったり来たりしているシーンがリアルに浮かびあがり、突然の興奮に襲われた。
胸底から熱いモノがムラムラと湧き上がってきた。
再び私の中で絶望と欲望が葛藤し始め、それらはドロドロと混ざり合っては、真っ黒なヘドロと化して私の脳を汚染した。
私は、妻の背後で足を止めた。
そこに呆然と立ち竦みながら、妻のツルンっと輝く丸い尻を見下ろしていると、不意に、私が先陣となり、外道共が見ている前で、この変態女を滅茶苦茶に犯してやりたい衝動に駆られた。
私がそこで足を止めた瞬間、それまでこっそり妻の様子を伺っていたスキンヘッドの若者とムッチリ親父と茶髪男が、慌ててこちらを見た。三人揃って首を伸ばしているその姿は、ミーアキャットのように滑稽でもあり、不気味でもあった。
妻には一切話しかけなかった。まるで他人のように妻の存在を無視しながら、洗い場に置いてあった風呂桶にドボドボと湯を溜め始めた。
それは、ここにいる外道共には、この女が私の妻であると言う事を知られたくなかったからだった。この女は、露出狂で淫乱でリンカン願望を持つ変態女であり、あくまでもこのサウナには、自分の意思により一人でやってきたという事にしておきたかったのだ。
その理由は、そうしたシチュエーションにしておいた方が、外道共の本領が発揮されると思ったからだった。寝取られ願望の夫に無理やり連れてこられた女よりも、自らの意思でここにやって来たリンカン願望女と言うことにした方が、外道共のモチベーションは向上し、躊躇なく妻を陵辱しまくれると思ったからだった。
当然、妻に対しても同じだった。
この場に私がいれば、妻も本性を曝け出せれないであろう。その一部始終を夫に見られていては、内面に隠し持っている淫乱性欲を存分に吐き出す事ができず、常に受け身のまま、ただただマグロとなってダラダラと犯されるだけになってしまうのだ。
私は、今夜妻が淫獣と化すのを望んでいるのだ。夜な夜な異常性欲者の夫に散々弄ばれながらも、ピンクローターでしか自分を慰められない可哀想な妻を、今夜ここで解放してやりたいのだ。溜めに溜め込んだその淫らなストレスを、野獣のような外道共の肉棒によって全て発散し、自らも淫獣と化して欲しいのだ。
だから私は、わざと風呂桶に湯など溜めながらも、妻の背中にソッと呟いた。
「私は先に部屋に帰ってるから……キミはサウナにでも入ってゆっくりして来なさい……」
すると妻は、私のその残酷な言葉に別段驚く事もなく、黙ったままソッと横目で私を見た。妻のその表情は怯えていた。そして、明らかに私を非難していた。
私はそんな妻の視線からソッと目を逸らしながら、意味もなく桶に溜まった湯を床にザァーっと流した。
そうしながらチラッと三人の男たちを見ると、それまでミーアキャットのように伸びていた首はいつしか元に戻っていた。
私が妻にこっそり囁きかけた事に不審を抱いたのか、そんな彼らの表情には警戒心が浮かんでいた。
これではマズイと思った。このまま立ち去れば、彼らはこれが美人局か、若しくはAVの隠し撮りではないかと疑い、スムーズに事が進まない恐れがあった。
そこで私は、妻とは何の関係もない、通りすがりの変態のふりをする事にした。
私は、わざと彼らに聞こえるくらいの声で、妻に向かって「おい、変態女、オマンコを見せてみろよ」と言った。そして、既に勃起しているペニスを妻に突きつけ、わざと彼らに見えるようにしながらそれをシコシコとシゴき始めたのだった。
いきなり豹変した私を、妻は戸惑いながらジッと見ていた。
そんな妻に、私は低く呟いた。
「黙って言う通りにしろ……奴らに私たちが夫婦だという事がバレたら……生きてここから出られないぞ……」
そう脅してやると、妻はそれを本気に受け取ったのか、ビクビクしながら辺りを見回した。そして、浴槽の縁に座りながらセンズリしている茶髪男を見つけては、その大きな目を更にギョッと見開いた。
「早くしろ……こっちを向いてそこにしゃがむんだ……」
茶髪男のセンズリが効いたのか、そんな私の命令に妻は素直に従い、恐る恐る椅子から尻を下ろすと、こちらを向いてしゃがんだ。
「そのまま股を開け! そのいやらしい穴を見せてみろ!」
わざと大きな声でそう言いながら、しゃがんだ妻の両太ももを、肩幅まで開かせた。
そこが開くなり、三人の男の首が一斉に傾いた。水風呂の前で床に胡座をかいていたスキンヘッドの男などは、そのままべたりと床に寝そべり、直下から、しゃがんだ妻の股の裏を覗き込んでいた。
そんな男たちの露骨な行動に、目眩を感じるほどの興奮に襲われた私は、咄嗟に、「しょ、しょうべんをしろ! そこにビシャビシャとしょうべんするんだ!」と叫んでいた。
私の叫び声が浴場に響くと、同時にスキンヘッドの若者がケラケラと笑いだした。その笑い声は、明らかに妻を屈辱しており、途端に私の胸は締め付けられたが、しかし、そんな屈辱感は、寝取られマゾの私の興奮を更に扇動した。
妻はジッと俯きながら下唇を噛んでいた。その表情には羞恥と屈辱が垣間見れたが、しかしそれは、見ようによっては快楽とも受け取れた。
暫くして、突然妻の陰部がプクッと膨らんだ。それと同時にそこから黄金色の水がシューッと吹き出し、薄く湯が張ったタイル床に円形状の波紋が広がった。
スキンヘッドの若者が更に声を高めて笑った。茶髪男は激しくペニスをシゴき、ムッチリ親父は、勃起した肉棒に激しく噴き出すシャワーの湯を掛けながら、小便が噴き出す妻の股間を覗き込んでいた。
そんな彼らを横目で見ながら、ひとまず彼らが私に抱いていた警戒心は消えたと思った。
妻の真正面に立つと、生温かい小便が右足の甲にシュッーと吹き掛かった。妻を見下ろしながら、そこにポテンっと垂れ下がる乳肉に向けてペニスをシゴき始めると、不意に妻と目が合った。
妻は悲しそうな目をしていた。まるで捨てられた子犬のように、寂しさと悲しみが宿っていた。
私はそんな妻の目に、更に追い討ちをかけるかのようにして、その乳肉に向けて射精してやった。ビュッ!と飛び出した精液に、妻が慌てて顔を背けると、背後でスキンヘッドの甲高い笑い声が響いた。
コリコリの乳首に亀頭を押し付け、肉棒を回転させながらそこに精液を塗り込んだ。亀頭がヌルヌルと滑り、乳首がネチャネチャと音を立てながら回転した。
「朝までには帰って来るんだぞ……」
そう小声で囁きながらソッと妻の顔を見た。
すると、妻の目には、先ほどの悲しみはもう宿っていなかった。
まるで廃人のように浮遊したその目は、二年前、赤坂のマンションで見た、あの時の変態肉便器女と同じ目だった。
(遂に妻も……ヘドロに汚染された……)
そんな恐怖と絶望に襲われた私は、慌てて妻に背を向けた。そして、逃げるようにして足早に歩きながら、脳に焼きついた妻の目を必死に振り払った。
(私は……私は……取り返しのつかないことをしてしまった……)
そう下唇を噛みながら必死に歩いていると、不意にムッチリ親父とすれ違った。(えっ!)と慌てて振り返ると、茶髪男が湯の中をゆっくりと進みながら、まるでジョーズのように妻に迫ろうとしていた。
それを見るなり、それまでの恐怖と絶望は欲情へと変わった。
それは、私の脳髄に沈殿していたヘドロが、再び動き出した瞬間だった。
(つづく)
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