2ntブログ

オタクの穴3

2013/06/13 Thu 00:02

 朝から鳴りっぱなしのゲーム音がピタリと止まると、不意に窓の外から、「バックします、バックします」という宅配便らしきトラックのアナウンスが聞こえてきた。
 ベッドでゲームのコントローラーを握っていた益岡が、「早くしてよ、十五分の遅刻だよ」と言いながら、床でキャリーバッグに衣装を詰め込んでいる彩乃の背中を足の爪先でツンッと突いた。
 よろめく彩乃は、「ちょっと待ってよ」と言いながら、パンパンのバッグの中に白いブーツを押し込むと、「だって、急にマラッシュの衣装に変更だなんって言うんだもん……」と、その蓋を無理やり閉めた。
 ふふふ、っと笑う益岡は、「青木君は異端児だからね、ヒロインよりもヒールが好きなんですよ」と薄気味悪く呟いた。
 再び益岡がゲームのスイッチを入れると、部屋中に電子音が響き、いつもと同じ空気が部屋に流れた。
 台所の安っぽいフローリングにキャリーバッグをゴロゴロと鳴らしながら玄関のドアを開けようとすると、背後で益岡が、コントローラーをピコピコさせながら「ねぇ」と呼び止めた。

「青木君ってのはね、彼女いない歴三十五年の素人童貞なんですよ。常にすっごく溜まってる人だから、きっとキミの胸とかお尻とか色々触ってくると思うけど、絶対にエッチだけはさせないでよね……」

 益岡は、テレビ画面をジッと見つめたまま言った。「わかってる」と呟きながらドアを開けた。午前十時の強烈な直射日光が、埃にまみれた廊下を爛々と照らしていた。「信じてるから」と呟く益岡の言葉を背後にドアを閉めた。

 クラックが無数に走るコンクリートの廊下にキャリーバッグを滑らせ、赤サビだらけの縞鋼板の階段を、バッグを担ぎながら一歩一歩慎重に下りた。アパートの前の細い路地の角で、さっきの宅配トラックが立ち往生していた。「右に曲がります、右に曲がります」と執拗に警告を促しながらも、完全にその細い角で身動きできなくなっていた。
 子安駅から電車に乗った。鶴見駅で降りて東口に出た。待ち合わせの横浜銀行へとキャリーバッグをガラガラ引っ張っていくと、銀行横の高架橋の下で、ハザードを点滅させている白いワンボックスカーが見えた。
 きっとこの車だと思いながら、恐る恐る助手席の窓を覗いた。いかにもオタクっぽい薄汚い男が、運転席でスマホを弄りながらマックシェイクを啜っていた。
 コンコンと窓をノックすると、一瞬ビクンっと跳ね起きた男は、慌てて助手席の窓を開けた。
「青木さんですか?」と聞くと、男は「うん」と小さく頷きながら助手席のドアを開けた。そしてその助手席に置いてあったマックの袋を乱暴に後部座席へと放り投げながら、「荷物は後ろに積んで」と、唇の端を歪めて笑ったのだった。


 一ヶ月前のあの日、彩乃は初めて会った益岡と翌朝の九時までセックスをした。
 ミンクルの衣装は、初期、中期、後期の三パターンに分かれており、おまけに必殺技によって変身する衣装が異なっていたため、ネタは尽きることがなく、各衣装に着替える度に彩乃はセックスを求められていたのだった。
 その翌日も益岡に呼び出された。そして同じように何度も衣装を着替えさせられながら明け方までセックスした。そしてその日の帰り際、突然益岡からバイトの話を持ちかけられた。

「簡単なバイトです。コスチュームを着て撮影されるだけでいいんです。それだけで一時間三千円です。しかも、お客はみんな僕の知り合いばかりですから安心です。どうです、いい話でしょ、やってみませんか?」
 
 そう言いながら益岡は、「ミンクルにそっくりなキミなら、軽く二百万くらいは稼げますよ」と自信ありげに笑った。
 二百万円。その数字が彩乃の頭に刷り込まれた。
 その時の彩乃は、今すぐにでも家を出たかった。二百万あればこの町を出れると思った。自分の過去を誰も知らない町で、小さなマンションを借りてひっそりと暮らすことができると思った。
 だから彩乃は益岡のその話に飛びついた。すると益岡は、『ミンクル彩(18)・個人撮影会・一時間五千円・お申し込みは益岡まで』と書いたメールを作成し、コスプレした彩乃の画像と共に次々と知り合いに送り始めた。
 いつの間にか彩乃の芸名は、『ミンクル彩』と決められていた。そしてその差額の二千円についても、「マネージメントとして僕が貰うから」と勝手に決められていたのだった。
 そんなメールを送って一時間も経たないうちに、益岡の携帯に六件のメールが届いた。それら全て『ミンクル彩』の撮影会の申し込みであり、さっそく益岡はそのスケジュールを立て始めた。
 最初の客は三十代の男だった。呼び出された長者町のマンションに一人で行くと、青い王子服に白いタイツを履いた肥満男が待っていた。
 それは、ミンクルに出てくるスパルト王子のコスプレだった。まるでグリム童話に出てくる悪いガマガエル王子のように醜かったが、しかし本人は至って真面目にそれを着ていた。
 部屋には、ミンクルのフィギアがショップのように並べられていた。そこには全裸のミンクルが亀甲縛りをされている物や、しゃがんで小便をしている物まであり、見るからに危険な匂いが漂っていた。
 そんなオタク親父だったが、しかし撮影中は意外にも紳士だった。その視線は常に彩乃の胸や太ももをいやらしく凝視していたが、それでもそこに触れたりすることは一度もなかった。
 しかし彩乃は知っていた。紳士面したこの男が、着替え室にカメラを仕掛けている事を。
 着替え室と言っても、それはリビングの隅の一角をピンクのカーテンで仕切っただけのお粗末な空間だった。そこでミンクルの衣装に着替えている時、ふと足元に置いてあったクズカゴの裏に、赤いランプが光っているのを発見した。最初は、携帯電話か何かを充電しているのだろうと思っていたが、しかし、ソックスを脱ごうと前屈みになった時、それがハンディカメラの録画ランプだということに気づいた。
 しかし彩乃は知らんぷりした。それに気づかないふりをして着替えを続けた。今更着替えを盗撮されたくらいで、ここまで汚れてしまった自分の過去が変わるわけでもないのだ。

写真11_convert_20161223165334

 そんなオタクばかりを毎日三人、コンスタントにこなしていた。このオタクたちは、常に一触即発の危険を漂わせていたが、しかし、絶対に乱暴はしてこなかった。
 内気なオタクたちは、トイレや着替え室にカメラを仕掛けたり、撮影中にこっそりパンチラを撮るのが関の山だった。堂々とセクハラしてくる者は一人もいなかったため、仕事としては随分と楽だった。
 一回の撮影会で最低二時間くらいかかっていた。一日二万円ほどの収入となり、一ヶ月もすると貯金通帳には五十万円ほどのお金が貯まっていた。
 当初の二百万円には程遠い数字だったが、しかし、今までそんな大金を目にしたこともなかった彩乃は、それで十分に満足していた。
 この調子で行けば、来月にはこの町から出られると思った彩乃は、その計画を益岡に話した。そして、残りの一ヶ月はできるだけ多くの客を紹介して欲しいと頼むと、益岡は、ミンクルの天敵であるパラノア大魔王の真似をしながら「了解した」と戯けて笑ったのだった。


 青木のマンションは、日陰の住宅街の中に埋もれるように建っていた。
 いかにもバブル期に建てられた豪華なマンションだったが、しかしその白い外壁タイルは水垢で黒ずみ、そこに掲げてある『入居者募集』の看板の文字も無残に禿げていた。
 ワンボックスカーは一階の駐車場に滑り込んだ。キュキュとタイヤを鳴らしながら何度かハンドルを切り、やっと301と書かれた狭いスペースに車を駐めた。
 助手席のドアを開けると、静まり返った駐車場にコポコポと奇妙な音が響いていた。見ると駐車場のすぐ脇には用水路が流れており、その奇妙な音はそこから聞こえてくる水音だった。

「その用水路にはね、春になるとボラが大量発生するんだ」

 そう呟きながら、青木は後部座席から彩乃のキャリーバッグを下ろした。そしてそれをそのままゴロゴロと引きずりながら歩き出したため、慌てて彩乃が「自分で持ちます」とキャリーバッグに手を伸ばそうとすると、青木は「それなら、先に行ってエレベーターのボタンを押しててよ」と笑いながら駐車場の奥を指差した。
「はい」と小さく返事をしながら彩乃は先に進んだ。静まり返った駐車場にヒールの踵がカツコツと響いた。ふと、あの細い用水路に大量発生したボラの大群が頭を過ぎり、歩きながら背筋がブルっと震えた。
 しかしそれは、決してボラの大群を想像したからではなかった。それは、背後からゴロゴロと迫ってくる青木が、ミニスカートから伸びる太ももの裏や尻や腰を視姦している気配を感じたため震えたものだった。

写真12_convert_20161223165526

 青木の部屋は普通の部屋だった。フィギアもポスターも何もなく、比較的すっきりしていた。
 着替えはここでして下さいと言われ脱衣場に案内された。甘いボディーソープの香りが漂い、棚のタオルは一枚一枚几帳面に畳まれていた。
 そこにカメラは見当たらなかった。今までのオタクたちは、最低でも着替え室とトイレにはカメラを仕掛けていた。この業界はそれが当たり前だった。暗黙の了解で、盗撮も料金に含まれているのだ。
 が、しかし、ここにはカメラが仕掛けられていなかった。
 彩乃は、今までのオタクとは何かが違うと違和感を感じながらも、マラッシュの衣装に着替えた。いつもと違うメイクをし、ゴールドのウィッグを付け、緑のリボンでサイドテールに縛った。
 最後はパンティーだった。ミクルンのライバルであるマラッシュは、性器も肛門もないミューテーションだったため、マラッシュのコスプレをする時はノーパンと決まっているのだ。
 ミニスカートの中に手を入れ、そのままパンティーを太ももまでスルッと下ろした。うぐいす色のパンティーの裏は、一部だけがテラテラと輝き、そこに透明の糸を引いていた。
 それは、青木の執拗なる視姦によって滲み出た恥汁だった。その粘りっけのある汁を目にした瞬間、今まで草食系のオタク達に生殺しにされていた陰部がズキンっと疼いたのだった。

写真13_convert_20161223165539

 部屋へ行くと、青木はソファーにポツンと座りながらスマホを弄っていた。そこにはカメラも照明も何も準備されておらず、今から撮影する気配は全く感じられなかった。
 彩乃に気づいた青木は、「あっ、どうぞ」と言いながら尻をずらしてソファーを空けた。恐る恐るそこに腰掛けると、「何か飲む?」と言いながらスマホをシャキンっと閉じた。
「いえ……」と首を振る彩乃の顔を青木は真正面から覗き込んだ。「かわいいね……だけど、やっぱりキミはマラッシュよりもミンクルに似てるね」などと呟きながら、右頭に縛ったサイドテールの髪を指で解き始めた。
 今までの空気ではなかった。状況が全く違っていた。今までのオタクはお世辞など口にする間もなくカメラのシャッターを切りまくっていたのだ。
 項垂れたまま黙っていた彩乃が、「あのぅ……」と言いながらソッと顔を上げた。真正面に迫る青木のギラギラした目に一瞬怯えながらも、「撮影は……」と聞いた。
「撮影?」と小首を傾げながら、青木は「僕にそんな趣味はないよ」と笑った。そして更に彩乃の顔に顔を近づけながら、「キミは撮影して欲しいの?」と囁き、彩乃の細い肩に腕を回してきたのだった。

 やっぱりいつもと違う。
 そう確信するなり、青木のカサカサの唇が彩乃の唇を塞いだ。そしてそのまま顔を斜めに向け、閉じていた彩乃の唇を舌でこじ開けてきた。
 生温い青木の舌が、口内でゆっくりと回転した。頭の中で(どういうこと?)と問いながらも、その滑らかに動き回る青木の舌に彩乃は舌を絡めてしまっていた。
 久しぶりの優しいキスは、瞬時に彩乃の脳を蕩けさせた。この一ヶ月、撮影が忙しくてセックスする暇がなかった。オタク達に着替えやトイレを盗撮され、性欲ばかりがムンムンと溜まっていたが、しかし、忙しさに駆られてそれを発散できずにいた。
 そんな溜まりに溜まっていた性欲は、艶かしい舌で唇をこじ開けられた事によって一気に溢れ出した。
 脳が乱れた彩乃は、舌で口内を掻き回されながら、「んんん……んんん……」と唸っていた。そしてここを触ってと言わんばかりに、自らノーパンの股を大きく開くと、衣装の上から胸を摩っていた青木の指が、まるでそこに吸い寄せられるようにスルスルと音を立てて下って行った。
 すると、静かに舌を抜いた青木が、割れ目に四本の指を滑らせながら「もうヌルヌルだね……」っと囁いた。

写真14_convert_20161223165552

 気がつくと彩乃は悲鳴をあげていた。四本の指が、プチャプチャと卑猥な音を立てて這い回る度に彩乃が悲鳴をあげるため、それはまるでギターを弾いているようだった。
 その指が、ヌルヌルと滑りながら穴をこじ開けてきた。縦に並んだ四本の指は、明らかに割れ目よりも大きかったが、それでもその指は縦に整列したまま前に進み、強引に穴の中に潜り込んできた。
 四本に並んだ指は、歪に窄められながらも、狭い穴の中をグニョグニョと蠢いた。それらが根元まで沈んでしまうと、二軍の親指が陰毛を掻き分け、そこに飛び出しているクリトリスに攻撃を仕掛けてきた。
 穴の中を搔き回す四本の指と、クリトリスを乱暴に転がし回る親指に、彩乃は、「はぁぁぁぁん」と大きな悲鳴をあげ、思わず腰を引いてしまった。
 すると指は、いとも簡単にヌルっと抜けた。青木は無数の糸を引く指を彩乃に見せつけた。そして「噂通りの変態だね」と微笑むと、そのままソファーを滑り降り、彩乃の真正面にしゃがみながらその両足をソファーの上にゆっくりと持ち上げた。
 M字に広げられた股の中を、青木はニヤニヤしながら見ていた。「尻の穴にまで垂れてるよ」などと羞恥を与えながら、そのヌルヌルに濡れた指先を割れ目に沿って上下させ、そこに卑猥な音をピチャピチャと立てた。

写真15_convert_20161223165612

 そうしながらも青木は、悶える彩乃に「おっぱい出してごらん」と囁いた。
 その青木の声が脳をぐるぐると回転させた。彩乃は目眩を感じながらもその命令に従い、そこに巨大な柔肉を波打たせた。

「おっきなおっぱい……乳首もビンビンに勃ってんじゃん」

 青木はニヤニヤ笑いながら、痛々しいまでに勃起した乳首を指でポロポロと転がした。すかさず彩乃が「あああん」と身を捩らせると、そんな彩乃を満足そうに見つめながら、「さすが超人気のミクルン彩だけあって感度いいね」と意味ありげに笑った。
 再び青木は両足を持ち上げた。ソファーの上でまんぐり返しのような体勢にしながら、改めて彩乃の目を見つめた。

「どうして欲しい? もうチンチン入れちゃう? それとも先に舐めて欲しい?」

 まるで子供に話しかけるような幼稚な口調でそう言いながら、青木は首を小さく傾げた。
 彩乃は、ハァハァと荒い息を吐きながらそんな青木を見下ろしていた。そして、「……舐めて……ください……」と途切れ途切れに答えると、剥き出しにした膣をヒクヒクさせながら腰を持ち上げた。
 ニヤリと笑った青木は、真っ赤な舌をゆっくりと突き出した。わざとそのシーンを彩乃に見せつけようと両手で尻を持ち上げると、そのドロドロにふやけた割れ目に舌をペタッと這わせた。
 ぺちゃ、ぺちゃ、ぺちゃ、と、まるで猫がミルクを飲んでいるような音が部屋に響いた。その舌は、膣、クリトリス、小陰唇の隙間など、あらゆる部分を滑りまくり、キュッと窄んだ肛門までも丁寧に舐めていた。
 そうしながらも青木は上目遣いで彩乃を見つめ、時折、「これで四万なら安いもんだね」などと呟いた。
 そんな青木の呟く言葉を朦朧とする意識の中で聞きながら、彩乃はやっとこの状況を理解した。

(これは最初から……撮影会ではなく売春だったんだ……)

 益岡に売られたんだと思った。マンションを出る前、「絶対にエッチだけはさせないでよね」などと念を押していた益岡のわざとらしさに怒りを覚えた。
 しかし、だからと言って、今のこの状況から逃れたいというわけではなかった。
 陰部を舐められながら悶えている彩乃は、益岡に対する不信感を激しく募らせながらも、早く肉棒を入れて欲しいと思っていたのだった。

写真16_convert_20161223165624

(つづく)

《←目次》《4話へ→》

変態

オタクの穴4

2013/06/13 Thu 00:02

 翌日、益岡のマンションに行くと、そこにはいつものようにゲームの音だけが響いていた。
 何日間も引き籠もったままの部屋には、据えた獣臭が漂っていた。それは、駅の地下道で寝ているホームレスの前を通り過ぎた際、一瞬プンっと漂うあの匂いによく似ていた。
 益岡は、部屋に入ってきた彩乃に振り向きもしないまま、無言でコントローラをカチカチと鳴らしていた。
 ベッドの下には、汁が半分残っているカップ麺の空箱が二つ並んでいた。枕元にはスナック菓子の袋が散乱し、胡座をかいて座っているその足元には、1000㎖のコーヒー牛乳の紙パックが口を開いたまま置いてあった。
 その光景は、明らかに昨日と同じだった。そのグレーのTシャツも、掛け布団の乱れ具合も、眼鏡のレンズに付着したフケの位置さえも何も変わっておらず、全て昨日のままだった。

(この男は……一生ここでこうして生きていくんだろうな……)

 そう思いながら、そこに突っ立ったまま黙って益岡を見下ろしていると、不意に益岡は「チッ」と舌打ちし、乱れた掛け布団の中にコントローラーを投げ捨てた。
 不貞腐れたようにコーヒー牛乳の紙パックを乱暴に鷲掴みにすると、昨日の件を察しているのか、まるで威嚇するかのようにギロリと彩乃を睨みながらそれをゴクゴクと飲み始めた。

「なんか文句あります?」

 空の紙パックをベッドの下に投げ捨てながら益岡が言った。
 彩乃は、昨日の事をはっきりと言ってやるつもりでいた。最初から売春させる目的で青木の所に出向かせた事や、自分に内緒で四万円もの料金を青木に請求していた事など、厳しく問い質してやるつもりでいた。
 が、しかし、益岡のその開き直った態度を見た瞬間、当初の強気は瞬く間に弱気に変わってしまった。その濁った目玉にギロリと睨まれていると、途端に何も言えなくなり、ただただモジモジしながら項垂れてしまったのだった。
 そんな彩乃の弱気な姿勢が益岡を付け上がらせた。この女は何も言えない小心者だと悟った益岡は、その険しい表情を急に余裕の笑みに変えながら、「今日は六組も予約が入ってるから、早く準備して下さいよ」と言い、再びコントローラーに手を伸ばしたのだった。

(ここで何も言わなければ、このままズルズルと続いてしまう……)

 そう焦りながら彩乃はキャリーバッグの蓋を開けた。売春させられるのなら、今までの取り分を変更して欲しいというその一言を、どのタイミングで言い出そうかと悩みながら、キャリーバッグの中から昨日のマラッシュの衣装を取り出した。
 空になったキャリーバッグにミンクルの衣装を詰めようとすると、不意に益岡が、「まだ時間があるから、ちょっとミンクルの衣装を着てみてよ」と言った。
 一瞬戸惑ったが、すぐに「はい……」と呟きながら、素直にその命令に従った。素早くメイクをし、衣装に着替え、ピンクのウィッグを装着した。
「これでいいですか……」と、ベッドでゲームをしている益岡の前に立った。すると益岡は「おっ」と言いながらゲームをセーブし、そのままベッドにゴロリと寝転がったのだった。

「こっちに来てください。面白いDVDがありますから一緒に見ましょう」

 益岡は、コーヒー牛乳の紙パックが置いてあった場所をポンポンと叩きながらそう笑った。
 ブルーレイのリモコンをカチカチし始めた益岡を横目で見ながら、彩乃は恐る恐るベッドに上がった。チャンスを見計らい、売上の取り分の話を切り出そうと思いながら、静かにそこに腰を下ろした。
 今までゲームが映し出されていたテレビの画面がスッと暗くなった。妙に画像の悪い映像が現れ、それと同時に彩乃は絶句した。
 なんとそこには、昨日の青木と自分の行為が映し出されていたのだった。

写真17_convert_20161223165645

 それは明らかに盗撮された動画だった。脱衣場やトイレにカメラは仕掛けられていなかったが、まさか部屋にカメラが仕掛けられていたとは思いもよらなかった。
 しかし、どうしてこの動画を益岡が持っているのか。
 彩乃は、そう嫌な胸騒ぎを覚えながら、獣のように醜い自分のその醜態を愕然と見ていた。

「なかなか凄い事してるじゃん……」

 そう呟きながら、益岡は枕元に置いてあったポテトチップスの袋の中を指でカシャカシャと探った。

「昨日、あれだけエッチはしないで下さいよって注意してたのに、これ、ズッボズボにオマンコしちゃってますよね……」

 そう言いながら、口一杯に含んだポテトチップスをザクザクと咀嚼する益岡は、「これは契約違反だよね」、「罰金じゃ済まないよね」、「一歩間違えば僕も売春管理で逮捕だよね」などと嫌味ったらしく呟き、グイグイと圧力をかけてきた。最初から売春目的で彩乃を青木に派遣したにもかかわらず、あくまでも彩乃が勝手に性行為をしたかのように愚痴り始めたのだ。
 それは、売春で得た利益を、益岡が独り占めしようとしているからに違いなかった。
 案の定、それによって彩乃は何も言えなくなってしまった。この状況で取り分の交渉などできるわけがなかった。それよりも今は、逆に罰金を請求されそうな雰囲気なのだ。
 だから彩乃は黙っていた。実際、益岡に忠告されたのも事実だったし、青木にヤらせてしまったのも事実だったため、何も反論もできないまま黙っているしかなかった。
 すると益岡は、そんな黙ったままの彩乃の太ももをスリスリと摩り始め、突然もう片方の手でパジャマのズボンを脱ぎ始めた。
 ビーンッと勃起したペニスが天井に向かって反り立っていた。ドス黒い皮には無数の血管を浮き出し、まるで別の生き物のようにヒクヒクと脈を打っていた。
 益岡はニヤニヤと笑いながら「青木みたいに僕のも抜いてよ」と言うと、強引に彩乃の顔をペニスに引き寄せた。そして亀頭を目の前にして戸惑っている彩乃の頭をグイグイと押しながら、「青木みたいに、ねっとりとしたフェラしてよ」と、その唇に亀頭を押し付けてきたのだった。

 バナナを頬張るようにそれをゆっくりと口内に含んだ。亀頭に舌を這わすと、カリ首の裏にこびりついていた恥垢がポロポロと砕け、強烈なイカ臭が口内に広がった。
 そんな亀頭に舌を絡めながら顔を上下させると、チュッパ、チュッパ、とリズミカルな音が部屋に響いた。それを益岡は、首を持ち上げながらジッと見ていた。そして、「ハァァァァ」と虫歯臭い息を大きく吐き出しながら、「金玉もモミモミして……」と、少年のように囁いた。

写真18_convert_20161223165658


「おおおっ……ううっ……」と、唸る益岡を上目遣いに見ながら、肉棒を根元まで飲み込んだ。ジュプ、ジュプ、と下品な音をわざと立てながらしゃぶってやった。
 益岡は悶えながらも、「罰金はちゃんと払ってもらうからね」と呟いた。
 彩乃はゆっくりと肉棒を口から抜いた。そして、唾液にまみれたそれを手でシコシコしごきながら「いくらですか」と聞くと、益岡は腰をヒクヒクさせながら「百万」と言った。
 絶句した彩乃の手が動きを止めた。すると益岡はすかさずその手を掴み、彩乃の体を強引に引き寄せながら「ただし……」と呟いた。

「今のキミに現金で払えと言っても無理だろうから、給料から少しずつ返済してくれればいいですよ。もちろん、それが返済できるだけの客を僕が責任を持って毎日紹介しますから、ふふふふ……心配しないでください……」

 そう言いながら益岡は、彩乃を腹の上に跨がせ、その大きな胸に顔を押し付けた。そしてそのままスカートの中を弄ると、素早くパンティーを引き摺り下ろし、既に濡れている彩乃の陰部に亀頭をグイグイと押し付けてきた。
 彩乃は、体をギュッと抱きしめられながら、「それは売春しろって事ですか」と聞いた。すると益岡はペニスの根元を握りしめ、その濡れた穴を亀頭でぐちゃぐちゃと掻き回しながら、「売春しろとは言ってません。それはキミの勝手です。ヤりたくなければヤらなければいいし、ヤりたかったら勝手にヤレバいい。それは自己判断で決めてください」と笑った。
 それに対して彩乃が「でも」と言おうとすると、まるでその口を塞ぐかのように、益岡は一気に腰を突き上げた。
 ツルンっと滑り込んだペニスは、勢い良く根元まで突き刺さった。「あああん!」と仰け反る彩乃の腰に素早く腕を回すと、益岡は彩乃の下半身をがっしりと固定し、何度も何度も腰を突き上げた。

「でも、とか言わないでください。僕に逆らっちゃダメです。このDVDが市場に出回ったらキミの人生は終わりです。だから僕に逆らわないで下さい。絶対に僕に逆らわないで下さい」

 益岡は、彩乃の耳元にそう念仏のように唱えながら、石のように硬いペニスを激しくピストンさせた。

写真19_convert_20161223165710

 それを繰り返される彩乃の頭の中は、まるでリセットボタンを押されたかのように真っ白になった。卑劣な脅迫と強烈な快感に思考回路は破壊され、もはや何も考えられなくなってしまったのだった。

 その日の午後、さっそく客を取らされた。いつものようにミンクルの衣装が詰まったキャリーバッグを引きずりながらマンションを出たが、しかしその行き先は薄汚いラブホテルだった。
 相手は、やはりオタクだった。ただし、今までの気弱なオタクとは違い、明らかに性欲を剥き出しにした獣のようなオタクだった。
 しかも獣は三匹いた。三匹の獣は、もはやミンクル彩をちやほやしてはくれなかった。そこには、あのアイドル扱いされていた華やかな撮影会の雰囲気はなく、淫欲に満ちた獣達の、どす黒い性欲だけがムラムラと漂っていたのだった。

写真20_convert_20161223165720

 そんな客を、毎日七人取らされていた。ミクルンピューラの熱狂的なファンは全国各地に大勢いたため、ミンクルによく似た彩乃とヤリたがるオタクは後を絶たなかった。
 料金は二時間四万円だった。回転率を良くするため、撮影会を兼ねての仲間内での複数プレイを推進しており、その場合は一人につき三万円とされていた。
 そのうち彩乃に入るのは一万円だった。しかし、そこから衣装代と罰金を引かれ、実際に彩乃の手元に残るのは、一人の客につき三千円程度だった。
 それでも彩乃は、逆らうことなく益岡の命令通り働いた。
 それは、例のDVDで脅迫されていたからではなかった。益岡が怖いわけでもなく、金が欲しいわけでもなかった。
 マゾヒスト。
 そんな哀れな性癖を持つ彩乃にとって、この生活は決して苦ではなかった。むしろ、毎日十人近くの獣達に肉便器のように扱われることにより、喜びを感じていたのだった。

(オタクの穴・完)

《←目次》

変態

吐泥(へろど)目次

2013/06/13 Thu 00:01


《1話》
《2話》
《3話》
《4話》
《5話》
《6話》
《7話》
《8話》
《9話》
《10話》
《11話》
《12話》
《13話》
《14話》
《15話》
《16話》
《17話》
《18話》
《19話》
《20話》
《21話》
《22話》
《23話》
《24話》
《25話》
《26話》
《27話》
《28話》
《29話》
《30話》
《31話》
《32話》
《33話》
《34話》
《35話》
《36話》
《37話》
《38話》
《39話》
《40話》
《41話》
《42話》
《43話》
《44話》
《45話》
《46話》
《47話》
《48話》
《49話》
《50話》
《51話》
《52話》
《53話・完結》

変態

吐泥(へろど)1

2013/06/13 Thu 00:01


 灰色の海が広がっていた。空には分厚い雲がだんだんに重なり、今にも大粒の雨を降らそうとしていた。
 電車を降りるなり、生ぬるい潮風が頬と首をねちゃねちゃにした。どんよりとした重たい空気は異様なほどの湿気を含んでおり、その小さな駅には水族館のような湿った匂いが充満していた。

 そこは新潟県にある人口四万人足らずの小さな港町だった。フードリサーチ会社で働く私は、日本海沿岸で水揚げされる『幻魚』を調査するためにこの町にやってきた。それは、幻魚を新商品として売り出そうとしている大手居酒屋チェーンからの依頼だった。

げんげ

 幻魚は、正式名称をノロゲンゲと言うが、地元の者は、『げんぎょ』や『げんげ』と呼んでいた。水深二百メートルから千五百メートルほどの所に棲息する深海魚で、干した物を軽く炙って食べるとかなりの美味らしいのだが、しかし見た目があまりにもグロテスクなため、地元でも敬遠する人は多いらしい。

 とまぁ、そんな情報をネットで入手した私は、既に電車の中でそれをレポートにまとめていた。そもそも、そんな珍魚の調査などまともにする気は無かった。ネットで収集した情報と、漁業組合で調べた仕入れ価格表をレポートにまとめ、それと一緒に現地で手に入れた現物を提出すればいいだけの話なのである。

雨雲

 薄ら寂しい駅前でタクシーを拾った。本当はこのまま漁業組合へ行き、幻魚の値段交渉にあたる予定だったが、しかしこの異様なまでの湿気で頭がどんよりと重く、全くその気にならなかった。明日にしよう。と、そう気怠く思った私は、ニワトリのような顔をした老運転手にビジネスホテルの名を告げたのだった。

 そのビジネスホテルは、日本海に面した国道沿いに建てられていた。外壁の白タイルは水垢で黒ずみ、汚れた窓の逆三角形の赤いシールだけがやたらと目立っていた。地上八階、地下一階。屋上に設置された『素泊まり1泊3800円』の看板に止まる数羽のカラスと、目の前の道路をひっきりなしに走り去る大型トラックの轟音が、その退廃的な雰囲気をより醸し出していた。

 狭い部屋はシングルベッドとテレビ台に占領され、監獄のような圧迫感が感じられた。シーツも浴衣も必要以上の洗濯糊でバリバリし、窓の暗幕カーテンには苦い煙草のヤニ臭が漂っていた。
 清掃は明らかにいい加減だった。恐る恐るテレビの裏を覗いてみると、埃まみれの配線の中に四方がギザギザになった四角い袋が紛れ込んでおり、それを指で摘み上げてみると、案の定それは、封が切られたコンドームの袋だった。
 嫌な予感がした私は、一応ベッドの下も覗いてみた。すると壁際に何やら白いモノがぶら下がっているのが見えた。慌ててベッドに上がってベッドと壁の隙間からそれを摘み上げた。
 なんとそれは使用済みのナプキンだった。背筋がゾッとした。それは、ヘルパーのおばさんに濡れタオルで体を拭いてもらいながら勃起していた痴呆症の父を、襖の隙間から目撃してしまった時に感じたおぞましさによく似ていた。

 真っ白な綿の中にドス黒い血がじっとりとしみ込んでいた。それを愕然としながら見つめていると、ふと、男に悟られぬようこっそりそれをベッドと壁の隙間に押し込んでいる女の痛々しい秘事が目に浮かんだ。
 例えどんな理由があろうとも、こんな物をこんな所に押し込むのは許される事ではなかった。かの世界的に常識知らずな支那人とて、ベッドの隙間に汚物を入れるのはさすがに躊躇するはずである。
 そんな非常識が平気でできる人間は明らかにまともな人間ではない。恐らくこれは、名も知らない男の性器を平気でしゃぶるデリヘル嬢や、援交女○高生や売春人妻といった、そんなクソもミソも区別のできない破綻者の仕業に間違いないのだ。
 私はそのドス黒いシミを見つめながら、小さなため息と共に静かにベッドに胡座をかいた。行為中、どのタイミングでこれをそこに押し込んだのかと、あらゆるパターンを想像しながらそれを見つめていると、再び私は、痴呆症の父の勃起した一物を不意に見せつけられたようなおぞましさに包まれた。
 そのおぞましさは脳髄を激しく掻き乱し、まるで五十女の陰毛のような黒々とした淫らな渦に巻き込まれた。胸を押し潰される私は、強烈な息苦しさに身悶えながらも、ふと気がつくと、そのドス黒いシミに恐る恐る鼻を近づけていた。そう、私こそが正真正銘の破綻者なのだ。

 魚の干物のような嫌悪臭が鼻腔を行ったり来たりしていた。今自分は、見ず知らずの他人の陰部から滲み出た不浄な血を嗅いでいるのだと思うと、異常な興奮が胸にムラムラと湧き上がり、短い目眩に断続的に襲われた。
 それをベッドの上に広げた。クンニするように四つん這いになりながら匂いを嗅ぎ、そのままズボンとパンツを同時に下ろすと、既にはち切れんばかりに勃起した肉棒を狂ったようにシゴキまくった。
 ものの数秒で絶頂がこみ上げてきた。一瞬、そこに肉棒を擦り付け、それに包まれたままそこに射精したいという衝動に駆られたが、しかし、それはさすがに危険すぎると思い、慌てて思い止まった。
 一触即発の肉棒をヒクヒクさせながらクローゼットへと走り、スーツの内ポケットから携帯を取り出した。妻に電話をかけ、再びベッドに戻って他人の使用済みナプキンを犬のように嗅ぎまくった。
 何度目かのコールの後、汗ばんだ受話口から、「はい」という妻の短い声が聞こえてきた。

「今、ホテルに着いたよ……」

「そう」

 妻のその短い声と同時にスッと匂いを嗅ぐと、不意にネチョっと白い糸を引く妻の陰部が頭に浮かんだ。

イトヒキ

「一応、ホテルの電話番号と部屋番号を伝えておくよ」

「うん。ちょっと待って、今メモするから……」

 メモ帳を捲るカサカサっという音が聞こえてきた。

「いいよ」

「部屋は305号室……ホテルの電話番号は、025……」

 私がそう伝えると、すぐに妻がそれを復唱した。
 そんないつもの出張時のマニュアルを終えると、早速私は声を潤ませた。

「あのさぁ……」

「うん」

「今、シゴいてるんだ……」

「…………」

「なんかエッチな事、言ってくれよ……」

「できないよ……」

「じゃあオッパイの映像を送ってくれ」

 私がそう言うと、妻は戸惑いながらもスマホをテレビ電話に切り替えた。そして、「早くして、四時に美容院に行くんだから……」と面倒臭そうに言いながら、その巨大な柔肉の塊を画面に映し出した。

ウツボ1_convert_20160422173418

 真っ白な柔肉がフルフルと小刻みに震えていた。毎晩その絶品な柔肉に溺れていた私だったが、しかし、こうして違う場所で画像として見てみると、改めてそのいやらしさが脳にズキズキと伝わり、私は狂ったように肉棒をシゴき始めた。

「もういい?」

 妻が言った。それは、たっぷりと時間をかけてしゃぶらせている時に、時折つぶやくあの言葉と同じだった。

「ダメだ……指で乳首を転がして硬くさせてくれ……」

 ハァハァと荒い息を吐きながらそう言うと、小さな溜息と共に画面に妻の指が現れ、真っ白な柔肉の先の色素をコロコロと転がし始めた。
 みるみる硬くなっていく乳首を見つめながら、私は、この女とヤリたい、と素直にそう思った。この女とは昨夜二回もしたはずなのに、その気持ちは異常なほどに昂ぶっているのだ。
 しばらくすると、妻は「もう無理」と言いながら、その指の動きを止めた。それは、三回目をしようと再び股に潜り込んだ時に妻がつぶやく、あの言葉と同じだった。
 私は、「わかったよ。じゃあ速攻でイクからオマンコを見せてくれよ」と急かせるように言った。すると妻は、半ば泣きそうな声で「本当にもう時間がないんだからね……」と呟き、素早くスカートを捲り上げるシーンを画面に映したのだった。

 薄ピンクのパンティーがムチムチの太ももをスルスルと降りていくのを見つめながら、私はナプキンに鼻を近づけた。真っ白な肌にとぐろを巻く陰毛が画面に現れると、ナプキンのドス黒い血をクンクンと嗅ぎながら「早く股を開いて」と唸り、肉棒を激しくシゴいた。
 太ももが弛むと、そこからグロテスクな肉色が飛び出した。くにゃっと歪んだ割れ目の左右には使い古した小陰唇がだらしなく垂れ、それがとぐろを巻く獰猛な陰毛とコラボしては、より一層卑猥感を醸し出していた。

「指で開いてくれ……ベロンっと開いてその中を見せてくれ……」

 そう言うか言わないかの間に、妻は自らの意思でそれを開いた。案の定、その中はテラテラと濡れ輝いていた。同時に飛び出したクリトリスも、まるでパチンコ玉のように膨張していた。

ウツボ2_convert_20160422173456

「濡れてるじゃないか……」と声を震わせながら、私は必死にナプキンの匂いを嗅いだ。そして、きっと妻の陰部もこんな匂いがしているんだろうと思いながら映像を見ていると、思わずそこに舌が伸び、その誰の物かわからないドス黒いシミを舐めてしまった。
 それは恐ろしく臭みのある味だった。まるで腐った秋刀魚を食べたような独特な臭みが口内に広がっていた。それでも私は、汚れたナプキンに舌をザラザラと這わせ続けた。このナプキンは妻の物だ、妻はこの薄ら寂しい町で行きずりの男とこのホテルにしけ込み、そしてこのベッドの上で狂ったように交わっていたに違いないと滅茶苦茶に想像しながら、口内に溜まった臭汁をゴクリと飲み干した。

「もういい?」

 そんな妻の声を無視しながら、唾液でぐっしょりと湿ったナプキンで肉棒を包み込んだ。これをどんな女が陰部に貼り付けていたかはわからない。豚のような醜い肥満女かも知れないし、はたまた性病持ちの商売女かも知れない。しかし、今の私にはそんなことは関係なかった。もはや興奮のマックスに達してしまった私にはそれが誰のものでも構わなかった。いや、むしろ精神科医から異常性欲者であると診断された私には、それが狂ったシャブ中女の物であったり、化け物のような中年女の物であったほうが、より興奮度を増してくれるのだ。

 仰向けに寝転がった私は、左手にスマホを持ち、右手で肉棒を包んだナプキンをガシガシとシゴいた。「まだ?」と聞いてくる妻に、「顔を見せてくれ」と言うとすぐに画面が乱れ、妻の顔がアップで映し出された。
 画面の妻に向かって「どうして濡れてるんだ?」と聞いた。妻の愛らしい目に羞恥がほんのりと浮かんだ。「……わかんない」と呟いたまま下唇を噛んで黙る妻のその表情は、あのラブホテルであの薄汚い単独男性に背後から攻められていた時と同じ表情だった。

 そのラブホテルというのは……

 それは、今から一年ほど前の、古いラブホテルの一室での出来事だった……。

(つづく)

《←目次》《2話へ→》

変態

吐泥(へろど)2

2013/06/13 Thu 00:01

 その古いラブホテルは球場の裏手にあった。そこで私は、見ず知らずの男と絡み合う妻を愕然と見ていた。
 私は乱される妻の顔ばかり見ていた。他にも見るべき所は沢山あった。結合部分やフェラシーンやクンニシーンなど、興味深い箇所は沢山あったが、しかしそのような経験が初めてだった私にはそれらを見る余裕はなく、まるで出産に立ち会った夫のように、ただただひたすら妻の顔を心配そうに見つめていたのだった。
 もちろん妻も初めてだった。だから妻も、その見ず知らずの中年男にちょっと体を触れただけで絶望的な表情を浮かべ、巨大なペニスを口に含まされたり、ぶよぶよの睾丸を舐めさせられている時など、ずっと嫌悪の表情を浮かべていた。
 しかし、それが奉仕する側から奉仕される側に変わると、妻のその表情に変化が現れ始めた。それは、単独男が妻の股に顔を埋め、ペチャペチャと下品な音を立てて性器を舐め始めた時だった。

★ウツボ3_convert_20160727192842

 その時も、やはり妻の顔には嫌悪の表情は浮かんでいたが、しかし、その表情には何やら困惑している様子が見受けられた。
 それはきっと、妻は密かに男の舌に快楽を得ていたからに違いなかった。私が見ている手前、表向きには嫌悪を示していた妻だったが、しかしその内面では、クリトリスを舐められて感じてしまっていたのだ。
 嫌悪と快楽。そんな理性と本能が妻の中で葛藤していたのであろう、その今にも泣き出しそうな顔は、嫌がっているようにも見えれば、喜んでいるようにも見えた。
 もしここに私がいなければ、おそらく妻は淫らな声を張り上げて悶えている事だろう。自らの意思で自分の両足を両腕に抱え込み、これでもかというくらいに股を開きながら、もっと舐めてと腰を突き上げているに違いなかった。

★ウツボ4_convert_20160727192914

 私は密かに悶えていた。妻に対する疑念が奇妙な感情を呼び起こし、複雑な性的興奮に襲われながらも、必死に妻の顔を覗き込んでいた。
 妻は、私がそれを見て興奮している事に気づいているようだった。そんな妻が単独男に四つん這いにされ、いよいよその巨大なペニスを背後から挿入されそうになると、突然私に振り向きながら、「見ないで……」と弱々しく呟いた。
 すると男がそんな妻の尻をいやらしく撫でながら、「ダメだよ奥さん、ちゃんと旦那さんに見てもらわなくちゃ」と野太い声で笑い、その大粒イチゴのような亀頭を妻の割れ目に這わせた。
 それでも妻は必死に私に振り返りながら、「お願い、見ないで」と悲痛に言った。
 しかし私はその時見てしまった。私は見逃さなかった。そう言いながらも妻が、その巨大な肉棒をより深く挿入させるために、自らの意思で尻を更に突き出していたのを……。

 男は、そんな妻の剥き出された裂け目の表面に、パンパンに腫れ上がった亀頭を擦り付けた。両手を腰に当て、腰だけを巧みにコキコキと動かしながら、妻の粘膜に亀頭を滑らせていた。

「旦那さん、奥さんのオマンコ、もうヒクヒクしてますよ。我慢できないみたいですから入れてあげてもいいですか?」

 男がそう言いながら私に振り返った。男は典型的なサル顔で、『猿の惑星』に出てくる茶色い毛をしたザイアス博士によく似ていた。
 この男は、この手のプレイに随分と手馴れているようだった。男は、私たち夫婦が寝取られプレイは初めてだということを知っているため、わざとそのような残酷な言葉を放っては、私や妻に羞恥と屈辱を与えているのだ。その言葉によって私たちの興奮をより高め、同時に自らもそんな私たち夫婦を見ては背徳の興奮を得ようとしているのだった。

 そんな男の意図的な言葉に、私はまんまと翻弄された。こんなサル男に感じさせられている妻に激しい嫉妬の念を抱き、そして今まさに見ず知らずの他人のペニスで妻が汚されようとしているこの瞬間に私は身震いし、凄まじい絶望感と性的興奮に脳を掻き乱されていた。

「それじゃあ……入れますからね……」

 男はそう短く呟くと、猫が背伸びをしているようなポーズで尻を突き出している妻の両太ももを両腕で押さえ込み、そのままパックリと開いた妻の尻肉の谷間に向かってゆっくりと腰を突き上げた。
 テラテラと赤く濡れ輝く妻の割れ目に、見知らぬ男の巨大な肉棒が滑り込んだ。それはまるでコンニャクゼリーをカップから押し出した瞬間のように滑らかであり、その巨大な肉棒はいとも簡単に根元までツルンっと飲み込まれてしまったのだった。

ウツボ3

「あああ……凄く締ってますよ奥さん……」

 男はそう唸りながらみるみる腰の動きを早めていった。その腰の動きが乱暴になるにつれ私の心も乱れた。まるで突然地震に襲われた老婆のようにおろおろする私は、意味もなく人差し指の爪をカリカリと噛みながら、蹂躙される妻の顔を恐る恐る見た。
 そこに目を向けた瞬間、いきなり妻と目が合った。
 妻はじっと私を見ていた。その表情は、脱糞している姿を人間に見られている犬のようであり、今までに見たことのない羞恥にかられた表情だった。
 尻から突き上げられる振動に肩をユッサユッサと揺らしながら、妻が再び「見ないで……」と言った。しかしその声は先ほどのような悲痛な叫びではなく、もはや猛威を振るう肉棒の威力に観念してしまったかのような、どこか諦めが感じられる呟きにすぎなかった。
 そのまま妻は、この見ず知らずの男に様々な体位で犯された。横向きにされ、がっしりと体を抱き締められながら強引にキスをされている妻を見ていると、そのあまりの刺激に、思わず私はその場にヘナヘナとへたり込んでしまっていた。
 頭上から、「キスはイヤ」という妻の抵抗の声が聞こえてきた。床にへたり込んだ私のすぐ目の前では二人の結合部分が、くちゃくちゃといやらしい音を立てていた。そんな結合部分には白濁の汁が溢れていた。それは明らかに妻のモノと思われる汁であり、それを見た瞬間、「キスはイヤ」と抵抗している妻の声に、私は更なる興奮を覚えたのだった。

★ウツボ5_convert_20160727192934

 あの時の、あの妻の背徳的な表情と声と白濁の汁が、今テレビ電話の画面に映っている妻の顔と大きく重なった。
 私はあの時の興奮を思い出しながら、右手に握りしめたナプキンをガシガシと激しくシゴき、その中に大量の精液を放出した。
 クフッ、クフッ、と鼻を鳴らしながら射精していると、妻が「もういいの?」と恐る恐る首を傾げた。
 そんな妻の愛らしい目を見つめながら射精する私は、他人男の肉棒に乱れる妻の、あの残酷なシーンをもう一度見たいと必死に思いながら、その誰の物かわからぬ使用済みナプキンの中に、異常な欲望を出し尽くしたのだった。

★ウツボ6_convert_20160727193001


(つづく)

《←目次》《3話へ→》

変態

吐泥(へろど)3

2013/06/13 Thu 00:01

 妻との電話を切ると、私は小さな溜息をつきながら汚れたナプキンを二つ折りにした。ゆっくりとベッドを降り、そのままトイレへと向かった。大量の精液を吸い込んだそれは大福餅のように重く、便器の裏にあった汚物入れにそれを捨てると、まるで肉片を投げ捨てたかのようなドサッと重い音がした。

 まるでどこかの収容所のような簡易的すぎる便器だった。だから便座を上げないままそこに小便をしてやった。未だ勃起していたペニスは尿道口が圧迫されており、小便はまるで高圧洗浄機のように凄まじい勢いで噴き出した。なぜか無性に愉快になった私は「それっ!」と子供のような掛け声をかけながらそこらじゅうに小便を飛ばした。
 シャワーカーテンやトイレットペーパーホルダーが精液混じりの小便で濡れた。更に私は爪先立ちになり、噴射したままのペニスを洗面所に向けると、鏡の前に置いてあった『消毒済み』のビニール袋に包まれたプラスチック製のコップが見事に吹き飛ばされ、カラカラと派手な音を立ててバスタブの底に落ちていった。

 そのままシャワーを浴びた。必要以上のボディーソープを股間に塗りたくり、そこにシャワーを向けた瞬間、そこで初めて靴下を履いたままだということに気づいた。
 恨み言を呟きながら既にベタベタになった靴下を脱いだ。そして「ボケが!」と吐き捨てながらクリーム色した浴室の壁にそれを投げつけると、黒い靴下は、バタッ! という音を立てながら、『へ』という字のまま壁に張り付いた。

 浴室を出ると、濡れた体のままベッドに倒れた。スポンジのように硬いマットは中途半端に体を跳ね返し、一瞬脳がクラッと揺れた。
 タバコのヤニで黄ばんだ天井を見つめながら、未だ勃起が収まらないペニスを握った。妻は陰部を濡らしたまま美容院に行ったのだろうかと思うと、不意に男性美容師に股間を舐められている妻の姿が目に浮かんだ。

美容院


 私は異常に性欲が強かった。それは、精神科の医師に異常性欲者だと診断された事があるほど異常だった。だから私は日に何度も射精しなければならなかった。だからほぼ毎日のように妻の体を貪っていたのだった。
 妻は私よりも五つ年下の三十歳だった。四年前に友人の紹介で知り合い、その一年後に結婚した。結婚してかれこれ三年になるが、私は出張で家をあけたとき以外は毎晩妻の体を貪り続けていた。
 しかし、私は異常でも、妻はいたって正常だった。正常者が、その意に反して毎晩二回も三回も攻められるというのは、恐らく、拷問に匹敵するほどの苦しみに違いなく、実際、陰部が濡れなかったり、時折「もう疲れた……」などと弱音を吐くことが多々あった。
 それでも私は、大量のローションを妻の陰部に塗り込み、もはや死体のようにぐったりしている妻の体を執拗に攻め続けた。お前のそのいやらしい体が悪いんだ、そのタプタプと波打つ巨乳が興奮を誘発しているからだ、などと、あたかもそれを妻のせいにしながら、その異常性欲を妻の体に放出していたのだった。

 そんな私の異常な性欲に妻が気づかないわけがなかった。二回、三回と私が求める度に、妻は「何かの病気じゃないの?」と心配するようになってきた。しかし、さすがに精神科の医師から異常性欲者と診断されたなどと話せるわけがなかった。だから私はそれを妻には黙っていた。
 最初のうちは、それが妻に発覚する事を私は恐れていた。異常性欲者などという事がバレれば離婚されるのではないかと怯えていたのだ。
 されど私の異常性欲は一向に収まらなかった。それどころか、動物のようにただただ延々と腰を振っているだけの単純な性交では次第に物足りなくなってきた。その性欲は日に日に変態性が強くなり、ドロドロとした欲望が脳を支配するようになってきたのだった。

ウツボ4_convert_20160422173521

 しかし、今の妻にそれを求めるのはあまりにも残酷すぎた。今の妻は、絶倫なる私の異常性欲によって身も心も疲れ果て、股を開くことですらやっとなのだ。
 だから私は、それを補うためにそれなりの風俗に通った。夜な夜な怪しげな小部屋で、子豚のような娘を縄で縛って犯したり、ガリガリに痩せた中年女の見窄らしい尻に蝋燭を垂らしながら肛門を犯したりと変態行為を繰り返していた。
 しかし私のこの異常性欲は尋常ではなかったため、とてもではないが風俗では金が続かなかった。しかたなく私は、自慰によってその性欲を放出しようとした。そして公園の女子便所に忍び込むようになったのだが、しかしそう簡単に女は現れるはずがなく、結局誰一人として覗けないまま、尻を蚊に刺されるだけで退散する日々が続いていたのだった。

 思うように射精できない私は、もはや一触即発の危機にあった。会社にいても電車に乗っていても射精することばかり考え、頭の中では常に真っ白な精液がシュパシュパと気持ち良く迸っていた。
 そんな妄想の心地良い射精が、現実の私を更に追い込んだ。一刻も早く射精しなければ本当に気が狂ってしまうという強迫観念に駆られた私は、遂にその一線を超えてしまったのだった。

 それは今から三ヶ月ほど前、仕事帰りにまた例の公衆便所に立ち寄った時のことだった。
 今度こそは今度こそはと思いながら女子便所に忍び込むと、いつもは静まり返っているはずのその場所にガタガタという激しい振動音が響いていた。
 その音は一番奥の個室から聞こえてきた。一瞬、清掃中だと思い、焦ってその場を逃げ出しそうになったが、しかしこんな時間に清掃などしているわけがない事にすぐに気付き、私はその怪しげな振動音に大きな期待を膨らませながら、奥の個室へと足を忍ばせたのだった。
 素早く隣の個室に忍び込み、息を殺してドアを閉めた。案の定、隣の個室からはその規則的に続く振動音と共にリズミカルな呼吸が聞こえてきた。しかもその呼吸は複数であり、時折その呼吸に混じって野太い男の声がボソボソと聞こえてきた。
 遂に現場を取り押さえたと心が躍った。しかもそれは、女子が排泄しているといった安っぽい現場ではなく、明らかに男女が淫らに交わっているといったレアな現場なのだ。
 まさかこんな場面に出くわすとは思ってもいなかった私は、何度も何度も無言でガッツポーズを取りながら、急いで内ポケットからスマホを取り出した。
 荒い鼻息を必死に堪えながらスマホのカメラを起動させた。録画ボタンを押すと音が鳴ってしまうため、取り敢えずカメラのままでスマホを個室の壁の上へと持ち上げた。
 いきなり天井の蛍光灯がアップで映し出され、一瞬画面が真っ白になった。慎重に手首を曲げながら角度を変え、隣の個室の底にカメラを向けると、画面に黒い二つの頭がぼんやりと浮かび上がった。そしてその奥に更にもう一つの頭が見え、それが規則的に続く振動音と共にユッサユッサと揺れていた。

ウツボ5

 初めてだった。他人のセックスをリアルで見るのも初めてだし、当然、三人プレイを見るのも初めてだった。
 攻める男達は、私と同じ年くらいの中年男で、攻められている女も三十前後の中年女だった。三人は無言で黙々と作業を続けていた。その結合部分までは見ることができなかったが、そのネチャネチャと粘り気のある音からして、その女が相当濡れていることが窺い知れた。
 これは凄いお宝に出くわしたものだと、喜び勇んでズボンの中からペニスを引きずり出した私だったが、しかし、しばらくすると何やらその様子がおかしいことに気づいた。
 そう思ったのは、床に散らばっている品々が目に飛び込んできたからだった。それはパック詰めされた豚肉や日清のサラダ油だった。大根や長ネギや半分にカットされた白菜が床に転がり、個室の隅に投げ捨てられたスーパー大黒屋のビニール袋の中では、パック入りの豆腐が無残に潰れているのが見えた。
 もしやと思いながら素早くカメラを女の顔に向けてみた。そしてそこにズームしてみると、グスグスと泣きながら肉棒を咥えている女の顔がアップで映し出された。
 その右頬は赤く腫れていた。首には引っかき傷のような跡が無数に走り、肉棒を咥えているその唇にも紫色の血玉がいくつも浮かんでいた。私は指を震わせながらレンズをズームアウトし、女の太ももにビリビリに破れたパンティーがぶら下がっているのを見た。
 これは紛れもなくレ○プだった。買い物帰りの主婦が二人の男にレ○プされているに違いないのである。
 そう確信した瞬間、背筋にゾゾゾッと寒気が走り、それまでペニスを上下させていた手が途端に凍りついた。

 見つかったら殺される。そう思った私は恐る恐るスマホを下げ、息を殺しながら既に萎んでいるペニスをズボンの中に押し込んだ。しかし、それ以上は身動きできなかった。足がすくみ、膝がガクガクと震え、もはや眼球だけしか動かせなくなってしまっていたのだった。

 石のように凍りついてしまった私の耳に、女が乗せられている便器の蓋がギシギシと軋む音が延々と響いていた。すると、その音の中に、「んんんんんん」っと唸る男の声が混じった。どうやら男は射精したらしく、へらへらと笑いながらもう一人の男に「たっぷり出してやったよ」と囁いていた。
 しばらくすると、ガサガサと衣類を整える音と共に、携帯の疑似シャッター音がシャカシャカと鳴り出した。男たちは、「警察に言ったら奥さんのこの写真をネットにばらまくからな」などと口々に脅し、そのまま堂々と個室のドアを開けた。

 男たちの足音が遠ざかって行った。男たちの足音が完全に消えると、冷たい便所には女の震えたすすり泣きだけが悲しく響いた。
 私は、そんな悲惨な鳴き声を聞きながら未だ震えていた。しかし、そんな凄まじい恐怖に襲われながらも、不意に私の脳がぐるぐると回り始めた。それは、12才の頃、初めて姉の使用済み下着を手にした時の興奮によく似ていた。ダメだダメだと自分に言い聞かせながら洗濯機の中からそれを摘み出し、その強烈にイカ臭い黄ばんだシミに舌をザラザラと這わせながら射精した、あの時の背徳的な興奮と全く同じだった。

 ぐるぐると回る脳の動きに合わせ、胸に熱いものが込み上げてきた。それを吐き出そうとそれまで真一文字に閉じていた唇を緩めると、途端に生温い息が堰を切ったように溢れ出し、卑猥な呼吸と共に肩が上下に動き出した。
 はぁ、はぁ、はぁ、と続く自分の呼吸に耳を澄ましていた。ふと気がつくと、いつの間にそうしたのか、私は熱り立つ肉棒をがっしりと握りしめ、それを上下にシゴいていたのだった。

 ダメだダメだ。あの時のように必死に自分にそう言い聞かせるが、しかし私の足は勝手に動き出した。突き出した肉棒をシコシコさせながら個室から出ると、ドアが開きっぱなしの隣の個室へと進み、迷うことなくその個室に侵入しては素早く後ろ手でドアの鍵を閉めた。
 未だそのままの状態ですすり泣きしていた女が、私を見てギョッと目を見開いた。「あわわわわ」と何か言おうとしている女に、「大丈夫です、大丈夫ですから」とそう言いながら服を脱ぎ始めると、驚愕する女の顎と膝がガクガクと震え始め、同時に便座がカタカタと音を立てた。
 全裸となった私は、便座に座る女の真正面にゆっくりと腰を下ろした。「大丈夫ですから」と呟きながら震える女の太ももをゆっくりと押し開いた。
 ウヨウヨと伸びる陰毛の奥に、散々弄ばれて赤く爛れた裂け目がべろりと半開きになっていた。無残な股間と女の顔を交互に見ると、女は顎をガクガクさせながら「許してください……」と声を震わせ、怯えた目に涙をウルウルさせた。そんな女の裂け目の中には、白いモノが溜まっていた。人差し指で肛門の上を押してみると、歪んだ裂け目の中から、まるでヘドロのようなケモノ共の精がドロリと垂れたのだった。

ウツボ6_convert_20160422173542

(つづく)

《←目次》《4話へ→》

変態

吐泥(へろど)4

2013/06/13 Thu 00:01

 ダメだダメだ。ダメだダメだ。とそう何度も自分に言い聞かせながらも、肛門へと垂れ落ちる精液を唇の先で捕らえ、まるで痰を啜るかのようにズズズッと吸い取った。青汁のような苦味と臭味を口内に感じながら、見ず知らずの男の精液を飲み込む自分に興奮を覚えた。
 舌を勃起した男根のように固め、精液だらけの女の裂け目をそれで掻き回した。女は震えているだけで抵抗しなかった。完全に無抵抗だった。ここまで打ちのめされてしまった女というのは、夕刻の海岸沿いに浮かんでいるクラゲのように弛く、もはやなんでも受け入れてしまうのだ。
 まるで納豆を食べているように口内をネトネトさせながら、「大丈夫ですよ、大丈夫ですよ」と呟く私は、その場にゆっくりと立ち上がると、便座の上でぐったりしている女の両足をM字に開いた。両腕で女の足を固定しながら女の顔を真正面から覗き込み、「大丈夫ですから」ともう一度そう呟くと、ダラダラになった裂け目に硬くなった肉棒の先をヌルヌルと擦り付けた。

ウツボ7_convert_20160422173559

 女の喉元がゴクリと上下に動いた。女は悲観した目で私を見つめているだけで、その目に抵抗する意思は見られなかった。
 ここまで本能の赴くままに動いていた私だったが、しかし、女のその目をまともに見た瞬間、突然理性が目覚めた。
 この人は奥さんなんだ。きっと今頃、旦那や子供達は、「お母さん遅いね……」と言いながら時計ばかりを見つめ、それぞれに最悪な状況を思い浮かべては密かに神に祈っている事であろう。
 そう思うと凄まじい恐怖が襲いかかり、この場に及んで私はビビってしまった。そんな旦那や子供たちが想像している最悪な状況を、今私は現実にしようとしているのだ。私ごときの愚かな人間が、一つの家族の運命を左右してしまうなど許される事ではなく、もし私がこの一線を越えてしまえば、今後とんでもない罰が下るのではないかとビビってしまったのだった。
 しかし、そんな理性は一瞬にして消えた。裂け目の表面をヌルヌルと上下していた亀頭が、ぽっかりと口を開いていた小さな穴の中にヌルッと滑り込んでしまうと、そんな安っぽい理性は瞬く間に消え去った。
 見ず知らずの女の膣に亀頭が突き刺さっていた。見ず知らずの男たちの精液が亀頭に絡みついてきた。頭の中で何かがパンっと破裂した。私は猛然と女の肩に抱きつき、その震える唇に吸い付いた。そして硬い肉棒を根元まで押し込み、そのヌルヌルとした生温かい穴の感触に身震いすると、嫌がる女の口内を舌で滅茶苦茶に掻き回しながら、私は狂ったように腰を振り始めたのだった。

ウツボ8

 出来心だった。レ○プされた直後の女ならレ○プしてしまってもいいだろうと思った。どうせこの女は既に二匹の猛獣に食い荒らされているのだから、今更私がその残骸を貪ったところで何も変わりはしないだろうと思った。そんな自己中心的な考えから、私は無抵抗な奥さんの膣内に三回射精し、口内に一回ぶちまけ、肛門にまでそれを注入した。
 その翌日、私は酷い鬱に落ち込んだ。自分が犯したその非道な行いに、改めて凄まじい嫌悪感と罪悪感に襲われた私は、あの時便所の床で無残に潰れていた『おかめ納豆』のパックが頭から離れず、徹底的に苦しめられた。
 しかし私は、あの残酷な光景を思い出しながら何度も自涜した。奥さんのあの脅えた目や、唇を噛み締めながら震えていたすすり泣き、そして、私の腰の動きが早くなる度に時折漏らした、「あぁぁ」という淫らな喘ぎを鮮明に思い出しながら、あの時と同じ不浄な液体を手の中に放出していた。
 そのうち、妻を攻めている最中も、あの時の奥さんを思い出すようになった。悶える妻をそっと見つめながら、もしあの時、便所でレ○プされていたのが妻だったらと想像しては、その恐怖に背筋を凍らせた。
 しかしそんな恐怖は次第に欲望へと変わり、せっせと腰を振っている私の脳裏に背徳的な妄想を巡らせた。
 それは、買い物帰りの妻が、あの獰猛な男たちにラブホテルに連れ込まれるというものだった。妻は全裸にされ、手首を縛られ、他の男たちに見下ろされながらズボズボと犯されていた。あの時の奥さんのようにすすり泣きしながらも、密かにバスローブの紐で猿轡された口から卑猥な呼吸を漏らしていた。

ウツボ9_convert_20160422173821

 揺れ動く巨乳を見つめながら、私はそんな淫らな妻の姿を想像していた。
 異常な興奮に駆られた私は、他人に陵辱される妻が果たしてどう乱れるのかを確かめたいと思った。そして、夫の私にも見せた事のない淫らな姿を他人に曝け出している妻を、本気で見てみたいとそう思った。
 私は凄まじい背徳感に襲われながらも、妻のヌルヌルの穴の中に肉棒を激しくピストンさせていた。そして他人男に妻をヤらせてみたいという欲望を常に漲らせながら、その穴の中に幾度も幾度も不浄な精を放出していたのだった。

 私はあの公衆便所で人間としての第一線を超えてしまった。
 それ以来私は、妻に対する愛情が特殊なものへと変化した。
 確かに私は妻を愛していた。自分の命よりも大切な人だと本心からそう思っていたが、しかしその反面で、私は妻に対して破滅的な妄想を抱き始めた。
 そんな私は、いつしかあの公衆便所の男たちと同じヘドロと化していたのだった。

(つづく)

《←目次》《5話へ→》

変態
« Prev | HOME | Next »

FX
ブログパーツ アクセスランキング