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吐泥(へろど)5

2013/06/13 Thu 00:01

 ふと気がつくと私は闇の中にいた。
 静まり返った暗黒を見つめながら、(ここはどこだ?)と一瞬考えたが、すぐにここが新潟のホテルだという事に気づいた。
 いつの間にか眠ってしまっていた。シャワーを浴びた後、全裸のまま眠ってしまったのだ。
 スポンジのような硬いベッドに寝転んだまま頭上に手を伸ばした。ビニールシートのように硬い暗幕カーテンを開けると、シャッという音と共に、国道に並んでいる外灯が部屋をオレンジ色に染めた。
 むくりと起き上がり窓の外を見てみると、すぐ目の前で漆黒の海がうねうねと風に揺れていた。それはまるでどこかの地獄のように不気味であり、慌てて私はまたカーテンを閉めたのだった。

 サイドボードに手を伸ばし、テレビのリモコンを鷲掴みにした。一番大きなボタンを押すと、カチッという音と共に銀色の光が溢れ、安っぽいバラエティー番組の嘘くさい観客の笑い声が部屋に響いた。
 このまま寝てしまおうかどうしようか考えながらスマホを見た。なんとまだ七時だった。あまりの静けさにてっきり深夜だと思っていた私は、改めて田舎の閉塞感に恐怖を感じ、慌てて部屋中の電気を全て灯したのだった。

 煙草を立て続けに二本吸いながら、くだらないバラエティー番組をぼんやり眺めていた。確かその番組は、東京では誰も見ていないような深夜に放映されていたが、しかしここではゴールデンタイムだった。途切れ途切れに流れるCMも、解像度の低い静止画を背景に不気味なアナウンスが流れるだけといった昭和の時代を感じさせるものが多く、たかだかテレビで都心と地方の格差を思い知らされた。

 微かな空腹を覚えながらも三本目の煙草に指を伸ばした。狭い部屋の中は、既に真っ白な煙が充満しており、ふと年末のNHK特番で観た『検証・ホテルニュージャパン火災』のワンシーンが頭を過ぎった。
 天井の火災報知器が反応するのではないかと慌てて三本目の煙草を諦め、代わりに電話の受話器を握った。ルームサービスなどあるわけがないと思いながらも、電話に出たフロントの男に、何か食べるものはないかと聞いてみると、地下のサウナにカップラーメンの自販機があると教えてくれた。

 浴衣に着替えて部屋を出た。
 そのサウナは別会社が経営しているため、本来なら九百円の入場料がいるらしい。しかしこのホテルとは契約しているため、宿泊客はルームキーをサウナのフロントに預ければ何度でも無料で入場できるのだと、フロントの男は少し威張ってそう言った。だから私は財布もスマホも持たないまま、煙草と三百円とルームキーだけを持って部屋を出た。

 地下一階でエレベーターを降りた。狭いエレベーターホールにはボイラーの音がゴォォォォォォォと響き、人工的な生暖かい湿気が漂っていた。
 ビールケースが積み重ねられた通路の奥に、『サウナキング』と書かれた自動ドアが見えた。その自動ドアをくぐると、すぐ左手に七十年代のボウリング場を思い出させる古びたフロントがあり、その中で中日阪神戦を見ていたネズミ顔の親父がジロッと私を見た。
「お願いします」とルームキーを出した。ネズミ顔の親父は無言でそれを受け取ると、それと交換に『6番』とマジックで書かれたロッカーキーをくれた。
 通路には趣味の悪い赤い絨毯が敷き詰められていた。その通路の奥に、『ロッカールーム』と書かれたプレートがぶら下がっていた。
 分厚いカーテンを開けると、細い通路の両サイドに縦長のロッカーがずらりと並んでいた。そのロッカールームはなぜか妙に薄暗く、まるで映画館のようだった。6番のロッカーを開けると、地下鉄の階段で寝ているホームレスの匂いがした。

 全裸になった私は、まずは腹ごしらえだと、ロッカールームの隅に積んであった貸し出し用のトランクスを摘み上げた。オレンジのボーダー柄のトランクスはなぜかLLしかなく、サイズの合わないそれを履くと、まるでサーカスの団長のようだった。
 休憩室にはソープランドの待合室によく似たシャボンの匂いが漂っていた。客は一人だけだった。ずらりと並んだリクライニングソファーの端に、半裸の中年男がトドのようにぐったりと横たわっていた。
 そんな男を横目に、奥の自販機コーナーへ行くと、そこには日清のカップヌードルと天ぷらうどん、そしてハンバーガーの自販機があった。
 どれも懐かしい自販機ばかりだった。カップヌードルと天ぷらうどんで随分と悩んだが、結局ハンバーガーにした。なぜならカップヌードルも天ぷらうどんも、どちらも売り切れだったからだ。

 自販機の前のリクライニングソファーに腰掛けながらハンバーガーを囓った。懐かしい味がした。鍵っ子だった私は、土曜の昼は団地の裏の環八沿いにあるドライブインへ行き、よく一人でこれを食べていた。
 ケチャップまみれの萎れたキャベツをぺちゃぺちゃ味わっていると、不意に、そのドライブインのトイレが脳裏に蘇った。
 子供の頃、よくそのトイレでオナニーをした。卑猥な落書きやボットン便所の糞尿の匂い。そんな汚くて臭くて荒んだ雰囲気に猟奇的なエロスを感じていた私は、土曜の昼はいつもそのトイレに篭り、壁に描かれた女性器の落書きに向けて精液を飛ばした。

ウツボ10

 閑散とした休憩室には中日阪神戦のナイター中継が垂れ流されていた。ハンバーガーを食べ終えた私は、ケチャップだらけの紙を箱に押し込み、それを自販機の隙間に置いてある屑かごに捨てた。
 リクライニングソファーに凭れて煙草に火をつけた。ふーっと煙を吐きながらナイター中継に目をやった。野球には興味がなく、これの何が楽しいのか全くわからない。そんな画面を見ながら立て続けに煙を吹かしていると、ふと、視野に異様な光景が映った。えっ? と思いながら眼球だけをそこに向けた。休憩室の隅のシートで横たわっていた男が、いつの間にか全裸になっていた。

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 私と目が合うなり、男はこれ見よがしに股を開いた。ウヨウヨと生える陰毛の中に、外来種のキノコのような真っ赤な亀頭がポコンっと顔を出しているのが見えた。
 男の顔は、微笑むでもなく恥ずかしがるでもなく無表情だった。まるで蝋人形のようにジッと身動きせぬままそれを曝け出していた。
(ホモだぞ)と自分に警鐘を鳴らし、慌てて目を逸らした。異常性欲者の私ではあったが、さすがに男には欲情しなかった。欲情どころか吐き気さえ感じた。
 急に怒りを覚えた私は、吸ったばかりの煙草を乱暴に灰皿に押し潰した。嫌悪をあらわにしながら立ち上がると、そのままスタスタと男に向かって歩き出した。
 男は何を勘違いしたのか、フェラ後の淫乱女のような恍惚とした表情を浮かべ、不気味に潤んだ目で私を見ていた。半開きの唇からはハァハァと荒い息を吐き出し、その見苦しい太鼓腹を大きく揺らしていた。
 男の前を通り過ぎる瞬間、おもむろにキッと睨みつけてやった。いつの間にかキノコは膨張し、陰毛の底からカリントウのような黒棒がヌッと伸びていた。真っ赤な亀頭はヒクヒクと痙攣し、『人』という字の尿道口には淫らな汁がテラテラと輝いていた。そんなキノコは同情に値するほどに小さかった。

 これだから地方のサウナは嫌いなんだよ。
 そう呟きながら脱衣場へと向かい、ストライプのトランクスを脱衣籠の中に投げつけた。籠の横に積まれていたオレンジのタオルで股間を隠し、『ジャングル大浴場・サウナ』と書かれた分厚いガラスのドアを開けた。
 ジャングルと書かれている割には、鉢植えに入った安っぽい観葉植物がそこらじゅうに置かれているだけだった。大浴場と書かれている割には、町の銭湯ほどに小さな浴場だった。正方形の浴槽と小さな水風呂と丸いブクブクしている浴槽が三つ並び、それらが不潔っぽい観葉植物にぐるりと取り囲まれていた。
 取り敢えずブクブクしている浴槽に足を入れた。タイルの浴槽縁に腰掛け、オレンジのタオルを太ももに広げた。お湯は大量のバスクリンで緑色に染められ、ブクブクしている足元からは安っぽい匂いがムンムンと立ち上ってきた。しばらく緑の湯をぼんやり眺めていたが、どれだけ考えてもその気色の悪い湯に浸かる気が起きなかった。
 浴場の奥にログハウス調の扉があった。その扉の小窓の上に、『サウナ室』と書かれた表札が打ち付けてあった。そこに向かいながら、きっとこの重い扉を開ければ猛烈な熱気がムワッと溢れ出すだろうと予想した私は、途中の水風呂でタオルを浸し、ポタポタと水滴が垂れるそれを口にあてながら扉を開けた。しかし予想は外れた。溢れ出てきたのは強烈な熱風ではなく生暖かい温風だった。

 中は思っていたよりも広かった。十五畳ほどの長方形の空間に、オレンジ色のバスタオルが敷き詰められたひな壇が二段並んでいた。
 先客が四人いた。一人は沖縄系の青年だった。扉の前の下段に腰掛け、足元にポタポタと汗を垂らしながらジッと項垂れていた。一人はサラリーマン風の男だった。真ん中の上段で大きく股を開き、せっせと開脚前屈している。そしてあとの二人は、見るからにホモだった。神田の古本屋に山積みされているゲイ雑誌のグラビアに出てきそうな、『専務』と『熊』だった。二人はサウナの奥の突き当たりの上段で、寄り添うように並んで座っていた。

 私は一段上がり、入口前で項垂れている沖縄青年の背後にソッと腰を下ろした。しかし、上段に座っても一向に熱さを感じなかった。
 まるでコタツの中に潜っているような、そんなじんわりとした生暖かさが漂っているだけなのだ。
 もしかしたらここは低温サウナなのだろうかと不審に思いながら辺りを見回すと、ふと、扉の前に置いてあった屑篭の中が目に飛び込んできた。
 そこには、オレンジ色のキャップを被った『ぺぺローション』の空容器が転がり、そしてその容器に、コンドームらしきグリーンの物体がベタリと張り付いていた。

 嫌な予感がした。あの休憩室の露出男といい、この異様に生温いサウナといい、何か無性に嫌な胸騒ぎがした。
 よく見れば、目の前に座っている沖縄青年の背中や腰のラインは妙に女っぽかった。そして、私の隣りでせっせと開脚前屈しているサラリーマン風の男も、いかにもそのナマコのような巨大ペニスをアピールしているかのように、それを卑猥に剥き出していた。

(間違いない……ここはハッテン場だ……)

 そう気付くなり、私は凄まじい恐怖に襲われたのだった。

(つづく)

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変態

吐泥(へろど)6

2013/06/13 Thu 00:01

 休憩室での遭遇には怒りをあらわにした私だったが、しかしこの密室での遭遇は、間違えてライオンの檻に迷い込んでしまったような、そんな逃げ場のない恐怖を感じた。
 一刻も早くここから出たいと思った。しかし、入ってすぐに出るというのもそれなりの度胸が必要であり、気の小さな私には容易ではなかった。
 仕方なく顔を隠すように項垂れた。弛んだ腹を見つめながら、こんなサウナなんかに来なければ良かったと何度も何度も呟き、熱さから出た汗とは違う嫌な汗を脇の下からタラタラと垂れ流していたのだった。

 テレビは壁に埋め込まれていた。やはりここでもナイター中継が放映されていたが、しかしそれは分厚いアクリル板に仕切られていたため、ボソボソと篭る解説者の声は雑音でしかなかった。
 そんなテレビから、突然、「ボーボバン! ボーボバン!」と叫ぶ解説者の篭った声が騒がしく響いた。上目遣いでそっとテレビを見てみると、画面には『ホームラン』という白い文字が浮かび、その背後では、黒いストライプのユニームを着た若い選手が、まるでグリコの看板のようなポーズを取りながら走っていた。
 隣の男が開脚前屈を止めた。じっと画面を見つめながら「六対三か……」と吐き出すように呟いた。その声を聞き、ふと私は、この喧騒に乗じようと思った。あたかも中日ファンであるかのように、「チッ」と舌打ちしながら出て行こうと思ったのだ。
 が、しかし、そう思って腰を上げようとした瞬間、突然奥からチューチューという奇妙な音が聞こえ、私は出鼻をくじかれた。
 それはネズミの鳴き声のようだった。
 その異音につられて振り向くと、そこには、今までに見たこともないようなおぞましい世界が広がっていたのだった。

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 巨大な熊が、ピンっと勃起した専務のペニスの先にチューチューと吸い付きながら、自分のペニスをシコシコとシゴいていた。
 一瞬にして体が固まり、全身から汗が噴き出した。もちろんサウナによる発汗ではなく恐怖による冷や汗だった。
 しかし私は、その醜い光景に釘付けになっていた。それは、あの公衆便所で主婦が二人の男に陵辱されているのを目撃した時と同じだった。スリルとエロスが脳内で複雑に混じり合い、まるで、初めて『家畜人ヤプー』を読んだ時のような猟奇的な異常興奮に駆られてしまっていたのだった。

 嫌な沈黙の中、チューチューという音だけが響いていた。ドキドキしながらその音に耳を傾けていると、突然その音はチューチューからチュプチュプへと変化し、そしてそれは次第に速度を速めてはジュプジュプと変わった。
 そんな下品な音が響く中、不意に「んっ」という男の声が聞こえ、思わず私は横目で奥を見てしまった。
 ペニスをベロっと吐き出した熊が、慌てて専務の足元に跪いた。専務はハァハァと荒い息を吐きながら熊の唾液でネトネトになった自身のペニスをしごき、その先を熊の唇に向けた。
 熊の恍惚とした顔に、濃厚な精液が、びゅっ、びゅっ、と飛び散った。専務は、みるみる汚れていく熊の顔を冷淡な目で見下ろしながら、震える声で「ほれ、ほれ」と呟いていたのだった。

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 そんな凄まじい光景がすぐ真横で繰り広げられているにもかかわらず、サラリーマン風の男は平然とテレビを見ながら開脚前屈を続けていた。下段で項垂れている沖縄青年も全く微動だにしなかった。
 しかし私は気づいていた。開脚前屈している男の股間が徐々に変化していることを。そして、すぐ目の前に座っている沖縄青年の右肩が、先ほどから微妙に揺れている事を。
 このままではマズい。そう思うと同時に、不意に開脚前屈している男が「おたくは中日ファンですか?」と私に話しかけてきた。
 私は無言で男を見た。男の大きく開脚された股間の真ん中からは、既に弓のようにしなった肉棒がニョキッと突き出ていた。それはまるで別の生き物のようにヒコヒコと動き、獰猛に腫れ上がった亀頭が張り子の虎のように揺れていた。
 それを目にした瞬間、私はそれを妻にしゃぶらせたいと思った。そして、それを妻の穴の中に挿入させ、内部でヒコヒコと動く肉棒に密かに感じている妻の背信的な姿を見てみたいと思った。
 その光景を想像するなり、激しい嫉妬と興奮が凄まじい勢いで湧き上がってきた。カッと頭に血が上った私はズカズカと扉へと進み、飛び出すようにしてそこから脱出したのだった。

 すぐ目の前の洗い場に腰を下ろした。頭上のシャワーをひねり、熱い湯を頭から浴びた。
 危ないところだった。あのまま行けば私は妻と化し、妻を演じながらあの男の肉棒を咥えてしまうところだった。
 頭を冷やそう。そう思いながらシャワーの温度を下げ、項垂れた後頭部にキンキンの冷水を浴びせた。しかし、項垂れると同時に熱り立った自身のペニスが目に飛び込み、その異常興奮は冷めるどころか更に奮い立った。
 頭上から顔に垂れてくる冷水を、ブシュルルルルル、ブシュルルルルル、と唇で鳴らしながら肉棒を握りしめた。それをゆっくりと前後させながら、この洗い場でさっきの男の肉棒を咥えさせられている妻の姿を思い浮かべた。

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 妻はタイル床に正座させられていた。男は妻に「手を使うな」と言い、口だけをぽっかりと開けている妻の口内に、反り立つペニスをヌポヌポと出し入れしていた。
 男は、「おお……凄いよ奥さん……」と唸りながら、妻の顔に向けて更に激しく腰を振っていた。男の腰が動く度に妻の大きな乳肉がタプンタプンっと揺れていた。
 そんな妄想をしながらペニスをしごいていると、そこで初めて隣の洗い場に人がいることに気づいた。
 慌てて手を止めたが、しかし、その人はもはや七十近いお爺ちゃんであり、私のその行為に気づかないまま髭を剃っていた。
 私は横目でそのお爺ちゃんを見ながら再びペニスをしごいた。こんな老人ともヤらせて見たい。あの萎れた尻肉の谷間に顔を入れさせ、年季の入った肛門や睾丸を妻に舐めさせてみたい。そんな事を想像しながら私はペニスをシゴいた。

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 ふと気がつくと、そんな私をジッと見つめている二人の男がいた。一人はさっきの開脚前屈の男で、すぐ横の水風呂に浸かりながら私の行為を観察していた。そしてもう一人は休憩室にいた露出男だった。彼はおもむろに私の真正面に立ちながら、上下に動く私のペニスをジッと見つめていた。
 驚いた私は一瞬その手を止めたが、しかし、もはや異常性欲のスイッチが入ってしまっていた私の手はすぐに動き出した。その恥ずかしい行為を見てくれと言わんばかりに、大胆にそれを剥き出しながら大きくしごき始めた。

 本来なら、このような姿を同性に見られるのは耐えられない屈辱のはずだ。
 しかし私は屈辱を感じるどころか快楽を感じていた。
 なぜなら、今の私は妻だからである。
 私の脳内で今のこの状況は、卑猥極まりないハッテン場でオナニーしている妻が、変態男たちに見られているという状況なのである。
 妻になりきった私は、椅子に腰掛けていた右足をわざと爪先立たせ、男たちに尻の裏までも見せつけた。(見ないで……見ないでください……)と羞恥に満ちた妻の声を蘇らせながら股の裏にボディーソープを塗りたくると、緩んだ肛門に人差し指を第一関節まで差し込み、ヌポヌポしてやったのだった。

 二人の男は、そんな私の股の裏を無言で覗いていた。露出男は勃起し、開脚前屈の男は右手をリズミカルに動かしながら、水風呂の水をタプタプと揺らしていた。
 ふと私は、今からこの二人をホテルの部屋に連れて行きたいと思った。そして二人して、妻を演じる私を嬲りものにして欲しいと本気で思った。

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 しかし、そんな狂気の願望が湧き上がると同時に、その無残な光景がリアルに浮かび上がり、それに刺激された私のペニスの先から大量の精液が飛び出した。
 すると、すかさず露出男が「あっ」と叫び、慌てて私の足元に跪いた。そして上下する私の亀頭に向かって大きく口を開けると、吹き出す残液を一滴残らず口内で受け止めた。
 露出男は、恍惚とした表情で口をぺちゃぺちゃさせた。そして自分のペニスを狂ったようにしごきながら私のそれを飲み干すと、奇妙な声で悶えながら私の太ももに向けて精液を飛ばした。
 そんな露出男の顔はナマズのようだった。腰をヒクヒクさせながら射精するその姿は、まさに泥水の中でのたうち回っている大ナマズのようだった。
 そう思った途端、急に私は吐き気を感じた。そこに射精後の嫌悪感も合併し、今までの興奮は突然怒りに変わった。
 そんなナマズを冷たく見下ろしながら、淡々とシャワーで股間を洗い流した。そしてさっさと出口に向かって歩き出すと、心の中で(腐れ外道どもが)と捨て台詞を呟きながら、最後にもう一度振り返った。
 ナマズ顔の男がこっちを見ていた。
 よく見るとその顔は、ナマズというより石破茂だった。

(つづく)

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変態

吐泥(へろど)7

2013/06/13 Thu 00:01

 スマホのアラーム音にびっくり仰天した。
 緊急地震速報の受信音によく似たアラーム音には一向に慣れることができなかった。だから私の心臓は、毎朝目覚めと共に激しく鼓動していた。だったらアラーム音を変えればいいじゃない、と妻は言ったが、しかし、音を変えたら今度は起きられないのではないかという不安に駆られ、結局この二年間、毎朝私はそのアラーム音に仰天し続けている。

 バサッと起き上がると、急いでサイドテーブルの上のスマホを鷲掴みし、その忌々しいアラームを止めた。テレビのスイッチを入れ、再びベッドにドスンッと崩れ落ちると、眠い、寝たい、眠い、寝たい、と頭の中で繰り返しながら、必要以上にフカフカなホテルの枕に頭部を埋めた。
 テレビから『めざましジャンケン』が聞こえてきた。
 私の朝の楽しみは、『めざまし』のカトパンを見ながら朝立ちした陰部を弄る事だった。全裸で四つん這いになったカトパンが、三宅アナにクタクタと指マンされながらシャーシャーと潮を吹き、そうされながらも、あのポッテリとした唇で軽部アナの巨大な包茎ペニスにしゃぶりついては悶えているといった、そんな妄想と共にカトパンを楽しんでいた。
 しかし、そんなカトパンが突然『めざまし』から姿を消した。
 だから私は、さっそくNHKの『おかさんといっしょ』に乗り換え、たくみお姉さんの見事な美脚にシコシコとよからぬ妄想を抱いていたのだが、しかし不運にも、そのたくみお姉さんも、この春『おかさんといっしょ』を卒業してしまい、朝の私の楽しみは尽く潰されてしまったのだった。

 漁業組合には十時に伺う事になっていた。まだ三時間近くも時間があった。
 煙草で黄ばんだ天井を見つめながら微睡んでいると、寝惚けた脳に昨夜の記憶がぼんやりと浮かんできた。
 あれは夢だったのだろうか?
 そう思いながら記憶を辿っていくと、次第にサウナ室の汗臭さやナイター中継の篭った音、専務のペニスをしゃぶる熊の姿や、私の精液を口で受け止めるナマズの顔などが鮮明に蘇ってきた。
 快感と不快感が交互に襲ってきた。あの状況で、妻になりきって射精したのは今までにない快楽だったが、しかし元々男に興味がないせいか、あの男たちのスネ毛や吹き出物だらけの尻を思い出す度に怒りと吐き気を覚えた。
 そんな複雑な心境で勃起したペニスを弄っていると、ふと、もしあのまま、妻になりきった私が本当に彼らをこの部屋に招いていたらどうなっていただろうかと、そのおぞましい光景をリアルに想像してしまった。
 するとその想像は、いつしか妻があの醜い男たちに無残に嬲られているシーンへと変わった。四つん這いにされた妻が、開脚前屈の男に巨大な肉棒をズボズボとピストンされていた。そして同時にナマズ男の肉棒を咥えさせられながらウグウグと唸っていた。
 そんな妻の陰部はドロドロに濡れていた。妻の汁によってその結合部分がブチャブチャといやらしい音を奏でいた。
 妻は後ろめたそうな目で私をジッと見ていた。それはあの時と同じ目だった。そんな目で私を見つめながら、妻は密かに何度も絶頂に達していたのだった。

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 気がつくと、私は発情した男子学生のようにペニスをしごきまくっていた。そう気づいた時には既にイキそうになっており、このまま掛け布団の裏側に発射してしまおうかどうしようかと悩みながら、その手の動きと快感を微調整していたのだった。

 しばらく考えた後、私はある決心をした。今からもう一度あのサウナへ行きそこで射精しよう、と。
 一触即発の肉棒からパッと手を離し、その手でスマホを掴んだ。サウナの営業時間を調べようと思い、グーグルで『新潟 サウナキング』と検索すると、『温泉情報ガルバー』というサイトがトップに表示された。そこには施設情報とアクセスと口コミが書かれていた。
 サウナキングは二十四時間営業だった。入浴料は千八百円で、零時を過ぎると深夜料金となり二千五百円に跳ね上がっていた。口コミは一件だけだった。タイトルには「キモい!」と書かれ、コメントには「最悪です」とだけ書かれていた。当然、星はひとつだった。
 この口コミを書いた人は、きっと至って正常な人だったんだろうなと思いながらスマホを閉じようとすると、ズラリと並んだ検索結果の中に『ハッテン場』という文字を見つけ、不意に指が止まった。
 それは、『ミーコとケンヤの全国露出旅』というブログだった。露出趣味のあるカップルが全国を露出しながら旅するという実に馬鹿げた内容で、その中の『まさかのハッテン場に潜入!』という記事にサウナキングのことが書かれていた。
 記事には、『さすがは信越最大のハッテン場です、男性専用サウナなのに女性の私でも普通に入場させてくれました』と書いてあり、その女が見知らぬ一般の客と性器の洗い合いをしている画像がアップされていた。

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 その画像に強烈な衝撃を受けた私は、もしそれが本当に可能であるのなら、昨夜私が抱いていた変態願望も夢ではないと鼻息を荒くした。
 それを確かめようと、私は早々とベッドから飛び起きた。プラスチック棒のルームキーを鷲掴みにし、乱れた浴衣を整えながら部屋のドアを開けると、静まり返った朝の廊下にスタスタとスリッパの音を鳴らしたのだった。

 エレベーターを降りると、早朝だというのにボイラーの音が響いていた。こんな時間にも客がいるのだろうかと思いながら恐る恐る自動ドアを開けると、赤い絨毯の通路に掃除機を持ったおばさんが立っていた。
 カウンターに昨夜の親父の姿はなかった。掃除のおばさんが、「ホテルのお客さんだね」と確認しながら面倒臭そうにカウンターにやってきた。  
 あの親父になら、本当にこのサウナであのブログのような出来事が可能なのかどうか確認できそうだったが、しかし、さすがにこのおばさんにはそれを確認することはできないと思った。
 私は小さく舌打ちしながらルームキーをカウンターの上に置いた。五十を過ぎたおばさんはそれを素早くカウンター裏の木箱に落とすと、馬のような出っ歯を剥き出しにしながら、「浴場は八時から掃除に入るからサウナはストップだよ」と呟いた。

 浴場には数人の先客がいた。昨夜は先客達のいやらしい視線を痛いほどに感じたが、しかし今朝は私をそんな目で見る者は一人もいなかった。
 見るからにノーマルな人達ばかりだった。恐らく彼らは、ここがどんな所なのか何も知らないホテルの宿泊客だろう。
 そんな先客を横目に、私は昨夜と同じ洗い場に腰を下ろした。白いボディーソープを手の平にピュッピュッとプッシュすると、不意に、あの男の精液を手の平に吐き出していた妻の姿を思い出した。
 途端にムラムラと欲情した私は、手の平に溜まったボディーソープを身体中に塗りたくった。既にビンビンに反り立っていたペニスにも、それをゆっくりと塗り込んだ。
 背後の洗い場では二人の男が体を洗っていた。その男たちを鏡で観察しながら腰を浮かし、股の裏に手の平を滑り込ませた。
 男性サウナの洗い場で変態男たちに尻を嬲られている妻。
 そんな設定で妻になりきった私は、背後の男たちに向けてソッと尻肉を開いた。剥き出された肛門に指腹をヌルヌルと滑らせながら、「やめて下さい」と妻の声真似をして呟いてみると、男たちのヌルヌルした指の動きにジッと耐えている妻の姿がリアルに浮かんできた。
 
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 そんな妄想にクラクラと目眩を感じながらペニスをシゴきまくった。ボディーソープがくちゃくちゃといやらしい音を立て、背後の男たちに気付かれるのではないかとヒヤヒヤしながらシゴきまくっていた。
 妄想の中では、変態男たちが代わる代わる妻に精液をかけていた。顔、胸、背中、尻。その屈辱的な液体を全身に吹きかけられながらも、それでも妻はジッと耐えていた。
 しかし私は知っていた。妻は密かにそんな陵辱に悦びを感じている事を。
 あの時もそうだった。あのラブホテルの赤いソファーの上で、見ず知らずの単独男にユッサユッサと体を揺さぶられていた時もそうだった。
 あの時妻は、それを黙って観察していた私に、「もうイヤ」と呟いた。しかし私がトイレに行くふりをして、こっそりクローゼットの隅から覗いていると、妻は自らの意思でキスを迫り、その見ず知らずの薄汚い中年男の舌に激しく舌を絡めながら、自ら腰を振りまくっていた。

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 妻はそんな女なのだ。元々は性には疎い純粋な女だったが、しかし夫の私が異常性欲者だったため、知らず識らずのうちにそこまで開発されてしまっていたのだ。
 そんな妻の内面に隠された変態性欲を思い出しながら、更に激しくペニスをシゴいていると不意に真正面にある扉がギィッと開いた。
 扉の向こうから出てきたのはさっきの掃除のおばさんだった。勃起したペニスをシゴいている私の姿をいきなり真正面から見せつけられたおばさんは、たちまちデッキブラシを片手に持ったままその場に固まってしまった。
 それでも私は行為を続けた。わざとおばさんに見せつけるようにしながら、大きく股を開いてシゴいて見せた。
 ソッとおばさんの顔を見てみると、おばさんはギュっと顔を顰めながら、まるで生ゴミに湧いたウジ虫を見るような目で私を見ていた。
 そんなおばさんの冷たい視線が更に私の異常性欲を刺激した。堪らず私はおばさんに向かって「出ます……見ててください……」と呟くと、尿道から勢いよく噴き出した真っ白な精液を、目の前に置いてあったアロエのボディーソープのペットボトルにぶっかけたのだった。

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 浴場を出ると、腰にバスタオルを巻いたまま休憩室へと向かった。寝ているうちに溜まった精液を吐き出した私の足取りは妙に軽かった。
『とくダネ』が垂れ流しにされている無人の休憩室で無料のミネラルウォーターを一気に飲み干した。その紙コップを屑篭に捨てると同時に、腰に巻いたバスタオルを脱衣カゴに投げ捨て、そのままロッカー室へと向かった。
 浴衣を羽織って暗幕カーテンを開けると、フロントには昨夜のネズミ男の姿があった。
 ネズミ男は、カウンターに寄りかかりながら『スッキリ』を見ていた。私に気付くと、テレビをジッと見たまま「こいつは悪い奴だよ」と独り言のように呟きながら、私のルームキーを木箱から取り出した。
 そんなテレビに映っていたのはトトロのような顔をした太った中年男だった。画面のテロップには『知的障害のある女性ばかりを狙った犯行』と表示されていた。
 話のきっかけを作るチャンスだと思った私は、「何やったんですかコイツ」と言いながらテレビを覗くと、ネズミ男はなぜか自慢げに、「障害者をヤっちゃったらしいよ」と答えた。

「そんな女とヤって楽しいんですかね……」

 私はそう呟きながらルームキーを摘んだ。

「楽しいんだろうね。世の中には変な趣味な奴がいっぱいいますからね」

 そう苦笑いするネズミ男を、「ところで……」と横目で見つつ、私は玄関に並べてあったホテルのスリッパを履きながら、「このサウナって女性でも入れるんですか?」と単刀直入に聞いてみた。
 ネズミ男は、「え?」と私の顔を見た。
 私は手に持っていたスマホを見せつけながら、「いえね、さっきこのサウナの営業時間を調べたくてネットを見てたら、女性がこのサウナに入ってるブログを見つけましてね……」と、唇の端をいやらしく歪ませた。
 一瞬、ネズミ男の目が鋭くなった。私はカウンターに身を乗り出した。そしてネズミ男の耳元に、「私もそっちの趣味があるんです。ですから——」と声を潜めると、ネズミ男は微かに右眉を吊り上げながら「知らないねぇ……」と小さく頷いた。
 それでも私は、更に「いや、ですから、このブログに……」と言いながら、さっきのブログを開こうとすると、ネズミ男は私を無視するかのように再びテレビに目をやった。そしてその蛭子能収のような顔をした犯人を見つめながら、「こいつは本物の悪党だよ……」と呟いたのだった。

(つづく)

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変態

吐泥(へろど)8

2013/06/13 Thu 00:01

 常識的に考えて、あんな事を客が勝手にできるはずがなかった。もしこれが客が勝手にやった事なら、彼らはとっくに店側から訴えられ、ブログのあの記事も削除されているはずなのだ。
 しかし彼らは、未だ堂々とあの記事をブログにアップしている。という事は、店側は彼らのあの行為を黙認していたに違いなく、店側はそれを知ってて彼らに場所を提供した可能性は非常に高いのだ。
 しかし、それでもネズミ男は、「知らないねぇ……」とシラを切った。
 きっとネズミ男は、あれが公然猥褻罪という違法行為になる事を知っているのだ。そしてそれを店側が黙認していたとなると、店側も何らかの罰則を受ける可能性がある事もネズミ男は知っているのだ。だからネズミ男は、一見の客である私を警察か何かと勘違いし、警戒しているのだった。

(やはり、頻繁に通って常連にならなければ情報は得られないか……)

 そう諦めると、不意にカウンター裏のカーテンがサッと開いた。そこから顔を出したのは例の掃除のおばさんだった。
 おばさんは、「店長、明日のシフトなんですけど……」と言いながらチラッと私を見た。そして私を見るなりギョッと目を見開き、慌ててネズミ男の耳元に顔を近づけたのだった。
 おばさんは、私を横目で睨みながら何やらコソコソと話していた。ネズミ男は「ウンウン」と小さく頷きながら、意味ありげに私をジッと睨んでいた。
 おばさんが私の事を話しているのは一目瞭然だった。恐らく、私がセンズリを見せつけた事を告げ口しているのだ。

(マズいぞ……)

 そう思いながら早々と店を出ようとした。
 するとネズミ男は、「わかった、わかった」と言いながらおばさんの顔を引き離した。そして「もう上がっていいから」と、さっさとおばさんをカーテンの裏へと追いやると、店を出ようとしていた私を、いきなり「あんた」と呼び止めたのだった。

「誤解です、あれはあのおばさんに見せつけるつもりじゃなかったんです」

 振り向きざまにそう言い訳した。実際、あれは意図的に見せたのではなく、偶然に見られたのだ。まして相手は毒虫のような顔をしたおばさんであり、どちらかといえば、見られた私の方が被害者なのだ。
 そう必死に言い訳しようとすると、ネズミ男はテレビをジッと見つめたまま、突然「どっちですか」と聞いてきた。

「どっち?……って何が?」

「参加する方か、参加させる方か、どっちです」

「…………」

 一瞬その意味がわからなかったが、しかしすぐに理解できた。
 恐らくネズミ男は、私があのおばさんに射精シーンを見せつけた事を知り、私が警察関係者ではないと思ったのだろう。それで私を信用し、自分がそのプレイに参加したいのか、それとも妻をプレイに参加させたいのかと、そう聞いているのだ。

 すかさず私は「参加させる方です」と答えた。ネズミ男はジロッと私を見つめながら「奥さんかね」と聞いた。私がコクンっと頷くと、ネズミ男は再びテレビに視線を戻し、静かにチャンネルを変えた。

『羽鳥慎一モーニングショー』でも蛭子能収似の犯人が取り上げられていた。こちらは『スッキリ』とは違い、犯人が知的障害者の女性を施設から連れ出そうとしている監視カメラの映像が繰り返し流されていた。
 ネズミ男は、そんな映像を見ながら自分の股間をスリスリと撫で始めた。そしてジャージに浮かんだ肉棒をグイグイと握りながら、「知的障害者の女ってのは凄く乱れるんだよ……あいつら本能で生きてるからね、ズボズボとチンポをピストンしてやると、獣みたいな声を出してヨガるんだな……」と呟き、いやらしい目をして微笑んだ。

「……障害者とヤッたことあるんですか?」

 恐る恐るそう聞くと、ネズミ男は財布の中から一枚のカードを取り出した。そしてそれを自慢げに私に見せびらかしながら、「こう見えても私は、こんな資格を持ってるのだ」と笑った。そのカードには、『知的障害者福祉司』と書いてあった。それを見た瞬間、(こいつは本物だ)と息を飲んだ。そしてその公序良俗に反した凄まじい光景を想像しては背筋を震わせたのだった。

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「で、あんたの奥さんの歳はいくつだい」

 ネズミ男は、そのいやらしい目で私を見たまま言った。
 不意にネズミ男に滅茶苦茶に犯される妻を想像してしまった私は、複雑な気持ちで「三十です……」と答えた。

「三十ですかぁ……おいしい年頃だな……」

「…………」

「寝取られの経験は?」

「……一度だけ……」

 そう答えると、ネズミ男は嬉しそうに目を丸めながら「一回ってか!」と身を乗り出した。

「はい……一度だけネットで募集した単独さんと……」

「……そりゃあ、ほとんど素人ですなぁ……」

 ネズミ男はそういやらしく笑うと、独り言のように「なかなか面白そうだ……」と呟いた。そしてカウンターの上に置いてあったセブンスターの箱にソッと指を伸ばすと、「深夜0時以降なら……ホテルの客も一般客もほとんどいませんから……大丈夫ですよ」と、意味ありげに笑った。

「12時を過ぎれば、妻もここに入れるということですね」

 身を乗り出してそう念を押すと、ネズミ男は唇の端をいやらしく歪めながら「但し、火曜日はダメですよ。私は毎週火曜日が休みですから」と呟き、カサカサと音を立てながらセブンスターの箱の中を指で弄った。
 煙草をつまみ出そうとするネズミ男の指の動きと、あの時の単独男の指の動きが、不意に私の頭の中で重なった。

 ラブホテルのベッドの上で、妻は四つん這いにされていた。
 黒いブラジャーがずらされると豊満な乳肉が溢れ出し、それがひょうたんのように垂れてタプンっと波打った。黒いパンティーがずらされると、真っ白な肌にウヨウヨと生える陰毛がモサッと顔を出し、その中心にある一本線の裂け目がクニャッと見えた。
 妻の真後ろに腰を下ろす単独男は、そのムチムチとした尻肉をいやらしく撫でながら、ソッと尻の裏を覗き込んだ。そして卑猥に黒ずんだ部分を犬のようにクンクンと嗅ぎながら、「人妻の匂いがしますね……」と微笑んだ。
 妻は、今にも泣き出しそうな目で、ベッド脇のソファーに腰掛ける私をじっと見ていた。そして震える声で「やっぱり無理……」と何度も呟くが、しかし私はそれを無視し、その悲惨な妻の姿を見ながら無言でペニスをシゴいていた。
 しばらくすると、尻肉を撫でていた単独男の指が、大きく開いた尻の谷間に下りていった。二本の指はゆっくりと肛門を通過すると、ピタリと口を閉じていた二枚の陰唇の隙間にネチャッと滑り込んだ。

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 灰色の陰唇が捲られ、テラテラと濡れ輝くピンク色の内臓が剥き出された。そこに男の指がヌルヌルと滑り始めると、それと同時に妻はサッと私から顔を背け、枕に顔を押し付けた。
 指の動きが早くなるにつれ、枕に顔を埋める妻の呼吸はゴール直後のマラソン選手のように早くなっていた。
 しばらく表面をヌルヌルと滑っていた指だったが、しかし遂に小さな穴を指先に捕らえると、男は躊躇うことなく、指を根元までヌルリと滑り込ませた。
 妻の呼吸はたちまち悲鳴へと変わった。指は穴の中を滅茶苦茶に掻き回し、そこにクタクタと卑猥な音を鳴らした。穴から溢れ出た透明の汁が男の手首を伝わり、ベッドのシーツにポタポタと垂れていた。
 妻は枕に押し付けていた顔をイヤイヤと左右に振りながら、その垂れ下がった豊満な乳肉をタプタプと激しく揺らした。
 すると男はそんな妻の体をいきなり反転させ、わざと私に見せつけるかのようにして、仰向けに寝転がした妻の穴に更に二本の指を挿入した。
 ドロドロに濡れた穴の中に四本の指をピストンさせながら、男はソッと妻の耳元に唇を這わせた。「旦那さんが見てますよ」と野太い声で囁くと、我に返った妻は赤子のような泣き声で喘ぎ出し、「見ないで、見ないで」と必死にもがき始めた。
 しかし男の指は今までになく激しくピストンされ、グチャグチャという卑猥な音でそんな妻の声を掻き消した。すると突然、そんな妻の声がピタリと止まり、それと同時に妻の下半身がビクンっと跳ね上がった。
 一瞬の沈黙の中、穴に突き刺さった四本の指の隙間から、いきなり透明の液体がビュッと飛び出した。それは男の指の動きに合わせ、ビュッ、ビュッ、と断続的に噴射した。そんな妻は、まるでくしゃみを我慢しているような顔をしながら、ヒクヒクと全身を痙攣させていたのだった。

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 ネズミ男がセブンスターの箱を弄る指の動きを見ていると、そんな残酷な光景が鮮明に蘇ってきた。
 胸に次々と熱いものが込み上げ、それをゆっくりと吐き出していると、いきなりカウンターから身を乗り出したネズミ男が私の股間を指差し、「大丈夫かね」と笑った。
 見ると、肌けた浴衣のブリーフには激しく勃起した肉棒の形がくっきりと浮かび上がっていた。しかもブリーフの一部はじっとりと湿り、卑猥にテラテラと輝いていた。
 慌てて浴衣を元に戻した。すると、それを覗き込んでいたネズミ男が突然私の手首を掴み、「ちょっと、休んでいきませんか」と意味ありげに笑ったのだった。

 カウンターの裏にある煙草臭い小部屋に連れて行かれた私は、まるで操り人形のようにソファーに座らされ、ブリーフを足首まで下ろされた。
 ネズミ男は、「カチカチですね」と笑いながら私の足元にソッとしゃがんだ。そしてそれを根元からギュッと握ると、「奥さんが、見ず知らずの男のペニスをこうする所を見たいんですか」と囁き、それをゆっくりとシゴき始めた。

「……はい……見たいです……私の妻を滅茶苦茶に犯して下さい……」

 そう声を震わせると、ネズミ男は不敵にニヤリと笑いながら、「私に任せなさい」と頷き、そのまま私のペニスをペロリと口に含んだ。そして、まるで欲情した女のように目を半開きにさせながら、顔を前後に振り始めた。
 男にしゃぶられたのは初めてだった。私は異常性欲者だったがその趣味だけはなかった。
 しかし、ジュルジュルと音を立てながらそれをしゃぶるネズミ男を見ていると、不意にそれが妻に見えてきて、妻もこうして見ず知らずの男たちのペニスをしゃぶるのだろうかと想像していると、たちまち尿道の底からゾクゾクとしたものがこみ上げてきた。
 私は両足をピーンっと伸ばした。そしてネズミ男の薄くなった頭部を優しく撫でながら、「ゆきこ……」と囁くと、彼の生暖かい口内に欲望の塊を吐き出した。
 朦朧とした意識の中、醜い中年男がペニスを咥えたままゴクリと喉を鳴らすのを見た。
 その瞬間、不意に、何故カトパンは『めざまし』を卒業したのだろうかという、どうでもいい事が頭に浮かんだ。

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(つづく)

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変態

吐泥(へろど)9

2013/06/13 Thu 00:01

 漁業組合でさっさと商談を終わらせた私は、急いで電車に飛び乗った。

 私は異常なほどの性的興奮を催していた。朝っぱらから二回も射精している私だったが、しかし例の計画のせいで未だ悶々としていた。
 それはまるで、公園で不意に目撃した新妻のパンチラのように、いつまでも脳裏にこびりついていた。ある意味一種の呪縛だった。その呪縛から抜け出すには射精するしかないのだが、しかし商談中にトイレでセンズリをこくわけにもいかず、漁業組合での私は、おぞましい計画の呪縛に囚われたまま常に欲情状態にあったのだった。
 だからまともな商談など一つもしていなかった。漁業組合の貧乏臭いおばさん事務員の尻ばかりを見つめては、(今ならあの薄汚いおばさんの、恥垢だらけの蒸れ臭さマンコでも舐められる)などと卑猥な妄想を繰り返し、ゲンゲの説明を必死にしている組合長の話など何も聞いてはいなかったのだった。

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 長岡駅で新幹線に乗り換えた。
『Maxとき』は相変わらず空いていた。自由席でも余裕で座れたのだが、しかしお土産で貰ったゲンゲの干物が凄まじく臭うため、大事をとって乗客が少なそうなグリーン席にした。

 案の定、グリーン車は貸切のようにガラガラだった。入口を入ってすぐの席に中年サラリーマンが一人座っているだけだった。
 強烈な異臭物を持っていた私はひとまず安心した。あとは停車駅から誰も乗り込んで来ないことを祈るだけだと、切符の番号を見つつ座席を探した。しかし、26Aの席に辿り着いた私はたちまち絶句した。なんとその列の反対側の26Dには、女が一人、スースーと寝息を立てているではないか。
 咄嗟に、あの前川清のようなアホ面をした切符売り場の駅員の顔が浮かんだ。あのバカは、グリーン車がガラガラだということを一番知っていながらも、何故にわざわざ私とこの女を同列席にしたのだと思い、激しい怒りが込み上げてきた。
 なぜか関西弁で「アホちゃうか」と呟きながら、座席の上の荷物棚にゲンゲの袋を放り投げた。その音で女がピクッと目を覚ました。私は慌てて「あっ、すみません」と女に会釈した。すると女は、寝起きのしゃがれた声で「いえ……」とボソッと呟くと、そのまま寝ぼけ眼でゆっくりと席を立ちあがり、フラフラしながらトイレに向かったのだった。

 二十代後半だろうか、ポッチャリとしたなかなかのイイ女だった。一瞬しか見えなかったがオッパイは大きく、太もももムチムチしていた。その黒い花柄のワンピースにはゴージャスなエロさが漂い、まるで日活ロマンポルノに出てくるインテリ音楽教師のようだった。
 そんな事を思いながら、フラフラと通路を進む女の大きな尻を見ていた。すると再び前川清のようなアホ面をした駅員の顔が頭に浮かび、「ね、いいでしょ」と勝ち誇ったように笑った。私はそんな幻想の彼に「ええんちゃうの」と関西弁で答えると、溜め息混じりに視線を窓の外に向け、さっそく例の計画の構想を立て始めたのだった。

 窓の外には、果てしなく広い田園が延々と続いていた。
 そんな風景をぼんやりと眺めながら例の計画を立てていたのだが、しかし、そんな田園地帯の中にポツンと建っている民家を発見するたびに、きっとこんな所には、『津山三十人殺し』の犯人のような奴が住んでいるに違いないなどと妄想に駆られ、いちいちその猟奇的に荒れ果てた民家に気を取られてしまうため、例の計画はなかなか進まなかった。
 これではいけないと、私は真剣に計画に取り組むべく静かに目を閉じた。このわずか二時間足らずの新幹線の中で、しっかりと計画を立てておかなければ、土曜の夜には間に合わなくなるのだ。

 ネズミ男が言っていたには、火曜日以外の深夜0時以降ならいつでも妻を連れてきてもいいという事だった。
 深夜0時以降からではさすがに日帰りは難しく、ホテルに一泊しなければならなかった。となると、会社が休みの第二土曜日の昼に東京を出発し、その日の深夜に決行するしか方法はなかった。
 しかしその第二土曜日までは、あと二日しかなかった。
 もはや例の計画に完全に取り憑かれてしまった私には、来月の第二土曜日まで待つ事など到底できるわけがなく、もしそうなれば、たちまち気が狂った私はとんでもなく卑劣で残虐な性犯罪を犯しかねないのだ。
 だから何としても次の第二土曜日に決行しなければならず、この二日間で妻を説得しなければならなかった。
 しかしこの計画は、ほとんど素人に過ぎない妻にはあまりにもハードルが高すぎた。たった一度だけ、寝取られプレイを強制的にさせられた事しかない経験不足の妻が、いきなり変態共がウヨウヨしている男性サウナに潜入するなど、できるわけがないのだ。
 しかもこの計画は、想像を絶するほどの凄まじいプレイになる事は火を見るよりも明らかであり、そんなプレイに参加させるべく妻を説き伏せるのは、たったの二日間ではどう考えても無理だった。
 私は小さな溜息をつきながら、ゆっくりと腕組みをした。それと同時に反対側の座席にいた女が再び立ち上がり、新幹線の振動にフラフラと体を揺らしながら通路に出た。

(またトイレか?)

 そう驚きながら、通路を進む女の尻を舐めるように見た。
 女は、わずか三十分程度の間にかれこれ三度も席を立っていた。私が田園地帯に佇む不気味な民家に気を取られていたり、例の計画をあれこれと考えている間に、ああやってフラフラしながら三度もトイレに向かっていた。

(下痢か……それとも膀胱炎か……)

 そう思いながらふと女の座席に目をやると、窓の前にウィスキーのミニボトルがポツンと置いてあるのが見えた。しかもそれはアルコール度が非常に高いウィスキーであり、どうやら女はそれをロックでラッパ飲みしている様子だった。

(だから小便が近いのか……それにしても、昼間っから新幹線で酒を飲むとは……ワケありか? それともただのアル中か?)

 そんなことを考えていると、通路の向こうから女がフラフラと戻ってくるのが見え、素早く私は目を閉じた。
 女が近づく気配を感じながらソッと薄目を開けると、女の顔は赤く火照っていた。明らかに酔っている状態であり、その目はトロンっと緩んでいた。
 フラフラとやってきた女は、倒れるようにしてドスンッと座席に座った。そして半開きの目をフワフワさせながら、しばらく窓の外をぼんやり見つめていたが、しかしすぐにスースーと寝息を立てて寝てしまったのだった。

 そんな乱れた女に激しく興味を感じたが、しかし今の私はそれどころではなかった。一刻も早く、どうやって妻を説得するのかを考えなければならなかったのだ。
 そう焦りながら再び目を閉じると、ダダンダダン、ダダンダダン、と鉄橋を渡る振動が脳に響いた。そんな振動が過ぎるのをジッと待ちながらも、あの時の私はどうやって妻を説得しただろうかと、あの単独男との寝取られプレイの時のことを思い出していた。

 そもそも、そんなプレイを実行しようと決めたのは、私がアダルトグッズを購入したことがきっかけだった。
 当時から私たち夫婦は、毎日欠かさずセックスをしていた。もちろんそれは私が異常性欲者だからであり、決して妻がそれを求めていたわけではない。むしろ妻はそれを求めるどころか、そんな私の果てしない絶倫に嫌気をさしているようだった。
 このままでは離婚の危機にさらされる。
 そう焦った私だったが、しかしすぐに気づいた。その果てしなく続くセックスで妻も一緒に喜ばせてやればいいという事に気づいたのだ。
 さっそく私はAmazonにて、様々な性玩具を購入した。拘束具、ローター、ディルド、ろうそく、バイブ、乳首クリップ、猿轡。それらの性玩具を全て妻に試してみた。

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 そしていろいろ試した中、妻の反応が一番良かったのがローターだった。
 それからというもの、ローターは私たち夫婦の必需品となった。
 妻は、どれだけ私に激しく攻められて疲れ果てていようとも、皮を剥いたクリトリスにローターを押し付けてやればたちまちその気になった。例え連続四発のセックスで死体のようにぐったりしていても、ひとたびローターを手渡してやれば、さっそく太ももをスリスリと擦り合わせながら「ふんふん」と悩ましい鼻声を出し始め、自分で自分の乳首を指でコロコロと転がしたりしながら淫らに悶え始めた。
 何よりもいやらしかったのはイク瞬間だった。妻はローターでイキそうになると、自らの意思でバイブを鷲掴みにし、それを膣に挿入した。ローターをクリトリスに押し付けたままバイブのスイッチを入れ、膣に突き刺さったそれをクネクネとくねらせながら、まるで洋モノの金髪ポルノ女優のようにハァーハァーとダイナミックな呼吸を繰り返した。そして、恍惚とした目で卑猥な自分の陰部をソッと見つめながら、黙々と絶頂に達していたのだった。

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 自らロータを陰部に押し当てながら、恍惚とした表情で腰をヒクヒクと痙攣させている妻のその姿は、まるで別人のようだった。、日頃セックスに対して消極的だった妻のその乱れようは、今までの妻からは想像もできなかった。
 そんな妻を見た私は、激しい興奮を覚えると共に、黒々とした疑心を抱かせ、途端に私は背筋がゾッとするような恐怖を覚えた。
 というのは、妻は私と結婚するまで、二人の男としか付き合ったことがないと話していたからだった。しかもセックスをしたのはその二人のうちの吉田という男だけであり、それ以外の男とはそれらしき行為は一度もなかったと断言していたのだった。
 しかし、ローターを使う妻のその乱れようは尋常ではなかった。この三十年間、二人の男しか知らない初心な女とは到底思えぬような、そんな手慣れた淫乱っぷりだった。
 だから私は、妻は本当はとんでもないヤリマンだったのではないだろうかと彼女の過去を疑った。いや過去だけではなく、今現在も、こっそりそこらの男たちに尻を振っているのではないかと疑心暗鬼に陥ったのだった。

 しかしそんな疑心は、次第に恐怖から興奮へと変わっていった。不思議なことに、妻が見ず知らずの男たちの肉棒に溺れている姿を想像すると、今までにない興奮が湧き上がってきたのだ。
 もちろん、妻が浮気をしているなど私は本気で思っていなかった。当然、結婚する前の妻がヤリマンだったなど心の奥底では信じていなかった。それらは私が勝手に捏造したものであり、あくまでも私の気狂いじみた妄想に過ぎないのだ。
 が、しかし、そんな妄想は私の異常性欲に火をつけてしまった。

『他人に滅茶苦茶に犯されて悶えている妻を見てみたい』

 そんな危険なスイッチが入ってしまった私は、本気でそんな願望を抱き始めた。それは、あの公衆便所で獣たちに無残に犯されていた主婦を目撃した時に感じた、あの残酷な願望と同じだった。

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(つづく)

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変態

吐泥(へろど)10

2013/06/13 Thu 00:01

 翌日から、さっそく私はソレ系のサイトで単独男を探し始めた。人妻の肉体を欲しがるゲスな男たちは、ネットにウヨウヨしていた。だから単独男はいとも簡単に見つかったが、しかし問題は妻の意思だった。当然妻は、そのような見ず知らずの男とのセックスは拒むに決まっているのだ。
 だから私は考えた。妻には単独男の事はギリギリまで内緒にしておき、いきなりホテルで登場させようと。そしてホテルのベッドで妻の興奮が最高潮に高まった時、いきなりサプライズ的に単独男を登場させようと企んだのだった。

 その単独男は、四十後半の猿のような顔をした男だった。
 事情を説明し、事前にラブホテルのクローゼットに隠れていて欲しいとお願いすると、彼はたちまち好奇の目を輝かせながら、「面白そうですね」と了承した。

 何も知らない妻を、単独男が待ち伏せるラブホテルに連れて行った。部屋に入るなり早々とベッドに押し倒し、いきなりパンティーの上からローターを押し付けた。すると妻は、いつもと違う順序に、「どうしたの?」と警戒の色を浮かべ、素直に体を開かなかった。

 いつもの順序では、まずは二人で風呂に入った。そこでたっぷりと尺八させ、妻の巨乳に精液をぶっかけた。それが、私たち夫婦が長年続けてきたセックスのスタートだった。
 初発の精液をシャワーで洗い流すとベッドに移動し、すぐに二発目が開始された。二発目は、いつも決まって正常位で中出しした。その後、煙草一服のインターバルを挟んでから三発目に突入するのだが、そのインターバルの間に、そこで初めてローターが登場した。すでに疲れ果てている妻にローターで喜びを与え、妻の興奮が高まってきた時に、最後の三発目へと突入するのだった。

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 それがいつもの私たちのセックススタイルだった。ローターが登場してからというもの、余程の理由がない限り、いつも決まってこの順序だった。
 しかしこの日は、突然ローターからスタートした。だから妻は戸惑い、大好きなローターを股間に押し付けられても、なかなか気分は高まらなかった。
 しかしこれも計画の一つだった。私は、素の妻が他人によって開花されていく姿が見たいのだ。だから私の肉棒がまだ貫通していない状態で、他人に妻を差し出したかったのである。

「ヤだ……先にお風呂に入ろうよ……」

 妻は必死に太ももを閉じながら、私の腕の中で小さく呟いた。
 そんな妻の生暖かい息を耳元に感じるなり、途端に熱いものがムラッと沸き上り、同時に亀頭がズキンっとした。
 シャワーを浴びていない妻の陰部。今から見ず知らずの男に、嗅がれ、舐められ、入れられるのだと思うと、息苦しくなるほどの凄まじい嫉妬と興奮が胸にムラムラと湧き上がってきた。
 私は強引に妻の太ももをこじ開けた。そして震える声で、「……まだ何も刺激を与えていないクリトリスってのは敏感だろ……先にイカせてあげるよ……」と囁きながらクロッチにローターを滑らせた。
 ローターの先でクリトリスを探した。グニョグニョするクロッチの裏側の中に一箇所だけコリッと硬くなっている部分を見つけ出し、そのスイッチにローターを力強く押し付けてやると、いきなり妻は「はぁん!」と大きく息を吐き、腰をピクン!と跳ね上げた。
 瞬間で妻は欲情した。私に抱きつきながら卑猥にコキコキと腰を動かし、「ああん……ホントだ……いつもより感じる……」などと囁いては、みるみるクロッチを湿らせた。
 この淫らな妻の声が、あのクローゼットの中に隠れている赤の他人に聞かれているのかと思うと、目眩を感じるほどの興奮に襲われた。
 もう我慢できないと思った私は、頭をクラクラさせながら妻の耳元に囁いた。

「実は、ある男をここに呼んでいるんだ……」

 妻は冗談だと思っているのか、子犬のように鼻をフン、フンと鳴らして悶えながら、そんな私の言葉をスルーした。
 それでも私が、「本当なんだ……本当にいるんだ……今からベッドに呼んでもいいか……」と真顔で聞くと、妻は突然、その潤んだ大きな目でソッと私を見上げた。
 妻はジッと私を見つめながら、ポッテリと膨らんだ下唇に真っ赤な舌をペロッと滑らせた。「その人……ここに呼んでどうするの?」と小さく呟くと、まるで私を挑発するかのように、ジーンズの中でズキズキと疼いているペニスを手の平でスリスリと摩り始めた。

「お前と……セックスさせるんだ……」

 妻は、いつもの私の妄想劇だと思っているのか、冗談っぽく微笑みながら「他の男とセックスしてもいいの?」と囁いた。そしてジーンズのジッパーの中から熱り立った肉棒を摘み出すと、その白魚のような人差し指を、我慢汁が溢れる尿道にヌルヌルと滑らせた。
 私は背筋をゾクゾクさせながら、「お前が他の男とヤってるところが見たいんだ……いいだろ……」と声を震わせた。すると妻は「いいわよ」と挑発的に微笑み、たじろぐ私を見つめながら肉棒を上下にシゴき始めた。そしてそのまま私の耳元にソッと唇を這わせると、明らかに欲情した声で「舐めさせて……」と囁いたのだった。
 思わず私は震える指でジーンズのボタンを外した。それと同時にムクリと顔を上げた妻は、ハァハァと荒い息を吐きながらそれを突き出している私にニヤリと微笑んだ。そしてその卑猥な汁でテラテラと輝く亀頭をヌルリと口に含むと、テュパ、テュパと音を立てながらしゃぶり始めたのだった。

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 そんな妻は、明らかにいつもと違っていた。まるでこの後の展開を予期しているかのように乱れていた。
 そんな妻の妖艶な姿に悶えながら、私は『いきなりローター』の威力の凄さを実感させられた。こんな妻なら五回は抜けると思った私は、今後のセックスの順序を改めるべきだと強く思った。
 私は、ペニスをしゃぶる妻の乳肉を鷲掴みにした。そしてそれをグニグニと乱暴に揉みながら、もう片方の手でパンティーの中にローターを滑り込ませ、直接その敏感な部分にそれを押し付けてやった。
 途端に妻は喘ぎ始めた。肉棒を咥えながら、ウグウグと苦しそうに悶えていた。そんなパンティーの中は、まるでペペローションを大量に垂らしたかのように濡れており、今までヴィィィィィンと響いていたローターの振動音がピチャピチャと卑猥な音に変わった。

 機は熟していた。今なら妻はあの男を素直に受け入れるだろうと確信した。
 私は男が隠れているクローゼットに振り向いた。既にクローゼットの扉は半分開かれ、その扉の隙間から全裸の男がジッと私を見ていた。
 男の巨大な肉棒は、まるで龍が天に昇るかのように反り立っていた。亀頭の大きさ、竿の太さ、竿の長さ、すべて私のモノより遥かに勝っていた。今から妻はあんな凶暴なモノを入れられるのかと思うと、恐怖と共に激しい嫉妬に駆られ、それが複雑に混ざり合っては異常な性的興奮へと変わった。

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 私は、ぺちゃぺちゃとペニスをしゃぶっていた妻をソッとベッドに寝かせた。そしてパンティーの中でローターを響かせながら、できるだけ妻が驚かないよう、穏やかな口調で囁いた。

「ほら……見てごらん……あそこに男がいるよ……」

 妻はローターで身悶えながら、私が指差す方向にチラッと視線を向けた。
 半開きで潤んでいた妻の目がいきなりギョッと見開いた。そして「誰!」と短く叫びながら私にしがみつき、そのまま驚愕しながら凍りついた。

「大丈夫。心配するな、あの人は私がネットで見つけてきた単独さんだ」

「……た、単独さんって……」

 妻は声を震わせながら、更に私にしがみついてきた。そう怯えている妻は、さっきの妖艶な妻よりも百倍エロティックだった。

「単独さんというのはね、私の代わりにお前とセックスしてくれる人のことだよ……だからお前は、今からあの人とセックスするんだ……」

 そう髪を撫でながら優しく囁くと、妻は恐る恐る私の顔を見上げ、今にも泣き出しそうに目をうるうるさせながら「どうして……」と呟いた。

「お前が愛おしいからだよ……だからお前が他人に抱かれる姿が見たいんだ……」

「愛おしいのに、どうして私が他の人に抱かれるのを——」

「——それはわからない。この感情は自分でもわからない。何が何だかわからないけど、とにかくお前が他人に抱かれる姿が見たくて見たくて我慢できないんだ」

 そう話している間に、男はスリスリと絨毯を鳴らしながらベッドの端にやってきた。「初めまして。田島と申します」と妻に優しく微笑みながらも、その凶暴に勃起したペニスはビクンビクンと波打っていた。
 妻は慌てて掛け布団をひったくり、ガバッと音を立ててその中に潜り込んだ。
 男は不安そうな顔で私を見つめながら、「大丈夫ですか?」と言った。
 私はそんな男に「大丈夫です」と答えながら布団の中に手を入れた。
 妻の柔らかい太ももに手を滑らせた。ピタッと閉じられていた太ももの隙間に一本一本指を差し込み、少しずつそこを開いていった。
 半開きになった太ももにローターを滑り込ませ、ジトッと湿ったクロッチにそれを押し付けながらスイッチを入れた。
 膨らんだ布団の中からヴィィィィィィィィィィンという振動音が響いた。
 しばらくして、ソッと布団の隙間から中を覗くと、喉をヒクヒクさせながら必死に声を堪えている妻と目が合った。

「ソファーで見てるよ……」

 そう呟くと、私は持っていたローターを静かに手放した。一瞬何か言いかけた妻だったが、しかしすぐに言葉を飲み込み、そのまま黙って瞳を閉じた。
 そこで抵抗しないということは、妻がそれを受け入れたという事だった。私はそんな妻に、嬉しい反面、強烈なショックを受けた。私が布団から手を抜くのと入れ替わりに、男の手が布団の中に潜り込んだ。
 それは、初めて私の目の前で、妻の体が他人に触れられる瞬間だった。布団の中がモゾモゾと蠢いていた。男の指が妻のどこを弄っているのか想像すると、もはや卒倒しそうになった。私はベッドの端に立ちすくんだまま、そんな残酷な布団の動きを呆然と見つめていた。
 しばらくすると、男がニヤニヤと笑いながら、「相当濡れてますね」と呟いた。そんな言葉に私は殺意を覚えた。このままここにいたら、本当にこの男を殴り兼ねないと思い、ソッとその場から離れようとすると、突然男は「ほら」と言いながら布団の端を摘み、そのまま一気に布団を剥いだ。

 ビクンッと驚いた妻の顔が一瞬にして固まった。
 ドロドロに濡れたローターが、ヴィィィィィンと唸ったまま白いシーツの上に放り投げられていた。
 妻のパンティーはすでに太ももまでずり下げられ、まるで出産する時のように股を大きく開いていた。そしてその淫らに濡れ輝いた裂け目には、男の指が二本突き刺さり、それが蛇のようにクネクネと蠢きながら、くちゃくちゃと卑猥な音を奏でていた。

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 まるで、警察の死体安置所で妻の惨殺死体を見せられたようだった。
 妻は明らかに男の指で感じていた。あれだけ好きだったローターを放り出し、見ず知らずの男の指に身をよじらせていた。
 そんな妻の姿を呆然と見つめながら、裏切られた、裏切られた、裏切られた、と何度も呟く私は、ベッドの端で寂しく響いているそのローターがどこか自分に見えた。

 作戦は大成功だった。ローターにより欲情してしまった妻は、嫌がりながらも他人男を受け入れ、そして確実に他人男に感じていた。
 私は今までにない複雑な感情に包まれていた。怒りと悲しみに渦巻かれ、気が狂いそうなほどに嫉妬し、そして絶望に打ちひしがれていた。
 しかし、そんな絶望の後には、必ず胸底からおどろおどろしい性欲が湧き上がってきた。それは、客のいない場末のスナックの奥のボックスで、豚のように太った醜いママのチーズ臭い蒸れた陰部に舌を這わすような、そんな破滅的な異常性欲によく似ていた。

 そんな異常性欲に襲われた私は、他人棒でズボズボされている妻を見ながら自涜に耽っていた。
 嫌悪と絶望と快楽に脳みそをぐちゃぐちゃにされた私は、この通常では考えられない特殊な愛欲の病魔に、既にどっぷりと侵されていたのだった。

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(つづく)

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変態

吐泥(へろど)11

2013/06/13 Thu 00:01

 新幹線の窓をぼんやりと眺めていると、シャカン! という音と共にいきなり窓の外が真っ黒になった。それはまるで、不意に誰かにテレビのスイッチを消されたかのようだった。
 初めてのトンネルだった。車内には、シャカン、シャカン、シャカン、というリズミカルな音が響き、今まで何の役にも立っていなかった蛍光灯がそこで初めてその力を発揮した。
 真っ黒な窓に、反対側の座席の女が映っていた。いつの間に飲んだのか、窓際に置かれたミニボトルのウィスキーは既に半分に減っていた。
 すっかり出来上がってしまった女は、まるで早朝の歌舞伎町の歩道に投げ捨てられている泥酔者のようにぐったりと眠っていた。

(新潟で、いったい彼女に何があったというのだ……)

 そう思いながら、乱れた花柄ワンピースから伸びる太ももに目をやった。
 そのだらしなく緩んだ彼女の太ももをジロジロと見ていると、今まで悶々と思い出していた初めての寝取られの記憶とそれが、頭の中でパン生地をこねるように混じり合い、思わず私は既に硬くなっている股間をスリスリと摩ってしまっていた。
 初めて妻が寝取られた時の、あの興奮が蘇ってきた私は、迷う事なくズボンのチャックを開けた。
 ここで一発抜くというのは、実にスリリングで刺激的な事だった。いくら泥酔しているとはいえ、通路を挟んだすぐ真横の席には見ず知らずの女がいるのだ。女がいきなり目を覚まし、もしこれが見つかって騒がれでもしようものなら、その瞬間に私の人生はわずか三十年にして幕を閉じるのだ。
 しかし、こんなチャンスは二度となかった。
 乗客が三人しかいない新幹線。一人は遥か後方のドア前の席で、一人は同列の反対側の窓際。しかもそれはなかなか色っぽい女であり、まして泥酔して眠ってしまっているのだ。
 こんなチャンスをみすみす逃す男は、ゲイかインポか尾木ママくらいだ。そんな事を思いながら私は、人生を賭けてそこに勃起した肉棒を突き出したのだった。

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 親指と人差し指で摘み、そのカチカチに固まった肉の棒を上下させた。
 まるでマッサージ師に肩のツボをビンゴされた時のような快楽が太ももにジワジワと走り、思わず私は、あぁぁぁ……と小さく唸りながら両脚をピーンと伸ばした。
 女はずっと同じ状態で寝ていた。女にペニスを向けてシコシコとシゴきながら、「ほら、見てごらん……こんなに大っきくなってるよ……」などと囁いていると、そのだらしなく緩んだ股に異常な執着が湧き始め、何としてでもあの中を盗撮したいと思った。
 壁に掛けていたスーツの内ポケットからスマホを抜き取った。ひとまずペニスをズボンに戻し、窓際の席から通路側の席へと静かに移動した。
 そっと通路を覗くと、ずらりと並んだ座席が地を這う蛇のようにくねくねと蠢いていた。誰もいないことを確認し、座席の肘掛に体を傾けると、そのまま通路に身を乗り出し、スマホを握った右手を恐る恐るそこに伸ばしてみた。
 女の股には程遠かったが、とりあえず三枚ほど撮ってみた。もちろん特別アプリでシャッターの疑似音は消していたため完全に無音だ。
 さっそく画像を確認してみると、斜めに傾きながらぐったりしている女の上半身が写っていた。大きな乳肉が腕に押し潰され、それが柔らかそうにくにゃっと歪んでいた。
 ここから撮影するとなるとこれが限界だった。どれだけ身を乗り出して腕を伸ばしてみても、股間までは到底届かない距離だった。

(さすがに隣の席に移動するというのはマズイだろ……)

 そう思いながら、ふと、あのバカな中国人観光客共がよく持ち歩いている『自撮り棒』があればと思った。いつもは、あれで写真を撮りまくっている中国人カップルを見る度に殺意を覚えていたが、今はあれが喉から手が出るほどに欲しかった。
 とにかくもう一度チャレンジしてみようと思った。こんなチャンスは滅多になく、ここでそれを撮り損ねたら一生悔やむに違いないのだ。
 再び肘掛に体を傾け、通路に身を乗り出した。スマホを掴んだ手を限界まで伸ばし、脇の下の筋肉が引きつりそうになるのを必死に堪えながら、女の下半身に向けてシャッターを押しまくった。

 と、その時、突然、通路の奥から自動ドアが開くシャーッという音が響いた。「はっ!」と息を飲みながら振り返ると、そこには大きなワゴンを押した車内販売の女がいた。
 その女と目が合った。私は慌てて体勢を元に戻した。しかし、通路向こうの座席に身を乗り出していた私の姿は既に目撃されているはずであり、今更慌てても遅かった。
 あの車内販売員がここを通過すれば、当然この泥酔している女に気づくはずだ。となれば、他人の私がその座席に身を乗り出していた事に不審を抱き、さっそくそれを車掌に報告する事だろう。
 私は、ガラガラと近づいてくるワゴンの音に怯えながら、今撮ったばかりの画像を急いで消去した。屈強な鉄道警察を従えた車掌が、「お客様、念のため携帯電話を確認させていただけないでしょうか」と、わざと穏やかな口調で微笑む顔が頭に浮かび、途端に私は金玉を縮み上がらせた。

 これは非常にまずい事になった。なんとか誤魔化さなければ、と一人焦っていると、遂にそのワゴンが私と泥酔女の間にヌッと現れた。
 ショートボブの若い女が、「お弁当いかがですか……」と独り言のように呟きながらチラッと私を見た。その田舎臭い顔とオレンジ色のエプロンが何故か採れたての静岡みかんを連想させ、私は咄嗟に、この田舎娘なら誤魔化せる、と確信した。

 シートから身を起こした私は、泥酔女の座席に顔を向けていたミカン娘に「あのぅ……」と声をかけた。
「はい」と満面の笑顔で振り返ったミカン娘は意外に可愛かった。最近テレビのCMでよく見かける広瀬すずに何となく似ていた。

 「そちらの女性なんですけど……相当お酒を飲んでらっしゃるようで、さっきから随分とえずいてばかりいるんですけど……」

 わざと神妙な面持ちでそう言うと、ミカン娘はその言葉を知らないのか、「えずく?」と目を丸めながらその小さな顔を傾げた。

「ええ、さっきからね、オェ〜オェ〜ってえずいてばかりいるんですよ……心配になって何度か声をかけてるんですがね、何も反応しないんですよ……」

 そこまで言うと『えずく』の意味がわかったのか、ミカン娘は、「そうなんですか」と驚きながら、その明るい顔に不安を浮かべた。そして慌ててワゴンのタイヤにロックをかけると、泥酔女の座席にソッと屈みながら、「お客様……」と声をかけたのだった。

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 まんまとミカン娘は騙された。これで私が泥酔女の座席に身を乗り出していた事は正当化された。
 ミカン娘は何度か声をかけていたが、しかし泥酔女は「んんん……」と唸るだけで目を開けなかった。
 私は、わざとらしく「大丈夫ですかね……」などと呟き、ミカン娘のまん丸な尻越しに泥酔女の座席を覗き込んだ。ミカン娘は恐る恐る泥酔女の肩に手を置き、「お客様……」と体を揺らした。ユサユサと肩を揺さぶられる事により、泥酔女の股は益々緩んだ。そして遂に、その乱れたスカートの中から真っ赤な布が顔を出し、それを確認した私は異様なる達成感に包まれたのだった。

 それは、思いもよらぬ下品なパンティーだった。
 最初この女を見た時は、ミッション系私立女子学園の音楽教師のようなエレガントな気品を感じた。だから下着も、きっとラグジュアリーな高級補正下着とか、やたらとレースの多い海外高級ブランドのランジェリーなんかだろうと予想していたのだが、しかし、今そこからチラリと見える真っ赤な下着には気品の欠片も感じられなかった。まさに、立川駅の裏のピンサロ嬢が穿いているような、実に悪趣味で破廉恥なパンティーだった。

 しかし私は、そんな彼女に欲情していた。いや、そんな彼女だからこそ激しく欲情した。
 この女は、見た目は気品漂うゴージャスな女だが、しかし中身は、三十分四千円で本番までヤらせてくれる立川のピンサロ嬢と同じなのだ。こんな女こそが真の淫乱女なのだ。こんな女に限って、昼間は気品漂う女を演じながらも、夜ともなればケダモノ共と激しく交じり合い、想像を絶する肉便器と化すのである。

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  そう勝手に決めつけながら泥酔女を見ていた私は、激しく湧き上がる異常性欲にクラクラと目眩を感じていた。
 人は見かけによらない……。そう心の中で呟きながら、ズボンの中で熱り立っている肉棒をこっそり握り締めていると、ふと、すぐ目の前にミカン娘の丸い尻があることに気づいた。

(この見た目は清純そうな娘も……やはりあの女と同じように中身は……)

 そう思いながら私はスマホを握った。そして泥酔女に気を取られているミカン娘のスカートの下にスマホをソッと忍ばせると、「大丈夫かな……」と心配するふりを装いながら、ミカン娘のスカートの中を撮りまくってやった。
 そんな画面には彼女のイメージ通りの素朴な下着が映っていた。少々残念な反面、まだまだ日本は大丈夫だという、新橋の赤提灯で酔い痴れるおっさん臭い安心感を覚えた。
 
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 本人を目の前にしながら盗撮画像を見るというのはなかなかのスリルと興奮だった。この娘のスカートの中は今こうなっているんだと、彼女と私だけしか知らない秘密を眺めながらソッとミカン娘の横顔を見ていると、リスクを背負いながらもそれに人生を賭けている盗撮オタク達の気持ちが少しだけわかった気がした。

 そんな事をしていると、不意に、「ごめんなさい……」と、しゃがれた声で呟く泥酔女の声が聞こえた。見ると、ミカン娘は、まるで救急隊のように泥酔女の顔を覗き込みながら、「大丈夫ですか、医務室にご案内しましょうか?」と聞いていた。

「いえ、大丈夫です……ちょっと飲みすぎただけですから……」

 女はそう答えたが、しかしその意識は朦朧としているようだった。座席にぐったりと沈んだまま、乱れたスカートもそのままだった。
 そして女は、「本当に大丈夫ですから、迷惑かけてすみません……」と、面倒臭そうに呟き、まるでミカン娘を追い払うかのように再び目を閉じた。
 するとミカン娘は、「では、何かありましたらこちらのボタンを押してください」と、座席の肘掛の横にある赤いスイッチを教えた。そしてお節介にもその乱れたスカートを素早く元に戻し、せっかくの赤い布切れを隠してしまったのだった。

 ミカン娘が去って行った後も、女はしばらく「んん……んん……」と唸っていた。女がそう唸る度に、私はケダモノ共に陵辱されている彼女の姿を想像し、悶々としていた。
 しかしそんな女が突然ゆっくりと起き上がった。トイレに行こうとしているのか、まるでリハビリ患者のように座席の手摺りに掴まりながら通路に出ようとしたのだ。
 思わず私が「大丈夫ですか?」と聞くと、女は恐縮した表情で「はい、大丈夫です、すみません」と小さく頭を下げ、そのままフラフラと通路を進み始めた。

 私はソッと立ち上がり、不安定な足取りで通路を進んで行く女を見た。そんな無防備な女の背中を見ながら、女がトイレのドアを開けると同時に一緒にトイレに雪崩れ込む自分の姿を想像していた。
 ぐったりする女を便座に座らせ、「大丈夫ですか……吐きそうですか……」などと介抱するふりをしながら服を脱がすのだ。何度も何度も小便していた陰部は相当汚れているはずだ。そこを犬のようにベロベロと舐めまわし、そこが唾液で充分に潤ったら、朦朧とする女の股を大きく広げ、「全部吐いちゃった方が楽になりますよ」などと囁きながら、そこに肉棒をずんずんとピストンするのだ。

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 そんな妄想に耽りながら、もしかしたら上手くいくかもしれないぞと、本気でそう思った。もし彼女が騒ぎ出して駅員が駆け付けてきたら、「吐きそう」という彼女をトイレに連れてきて介抱してやってただけだと主張すればいい。例え女が「乱暴された」と言い張っても、昼間っから泥酔しているバカ女の話など誰も信用しないだろう。それに、きっとあの真面目なミカン娘がこの状況を説明してくれるはずである。
 そう考えていると、早く彼女の後を追わなければ間に合わなくなってしまうと焦ってみたが、しかし、元々そんな度胸が私にあるわけがなく、そんな焦りも鼻から妄想劇の演出に過ぎなかったのだった。

(つづく)

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