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スリル11・廃人少女

2013/06/13 Thu 00:02

 その古いラブホテルは、昭和六十二年に若いホテトル嬢が変質者に殺されてから、ずっと廃墟のまま放置されていた。
 地元では有名な幽霊スポットとなり、暴走族が集まったりレイプ事件があったりと色々問題が起きていたが、しかし、平成となりバブルに突入すると、その後に世間を震撼させるカルト教団がそこを購入し、道場を建設しようとした。
 それを断固反対したのが、当時この町で県会議員をしていた大磯だった。
 大磯は、その物件をカルト教団から自費で買い取り、道場建設を阻止した。財産をなげうってまでカルト教団から町を守ろうとした大磯はたちまちヒーローとなり、翌年大磯は、知事の指名により副知事となったのだった。

 恵美と沙織は、丸いベッドに座ったまま大磯が来るのを待っていた。
 ワインレッドに輝くその部屋は、まるで血の海のようだった。
 壁もソファーも床も同じワインレッドだった。それは、一昔前の暴走族が車内に張っていたような、そんな趣味の悪いテラテラと輝く素材だった。
 二人が座っているベッドは、今時珍しい回転ベッドだった。ベッドの天井には鏡が張られており、ベッドが回るのに合わせて黄色い豆電球がチカチカと点滅した。
 そのラブホテルは、凄惨な事件のあった昭和六十二年当時から何も変わっていなかった。
 だから客は誰も寄り付かなかった。たまにそこを利用する客がいたとしても、それは何も知らない余所者だった。
 それでも大磯は、そこを改装ひとつする事無く、そのまま営業を続けていた。
 当然、経営は赤字だったが、しかし、大磯はそれで良かった。なぜならこのホテルは、大磯が個人的に愉しむ為の、趣味の部屋だからであった。

 ベッドに敷かれた掛け布団は、田舎の安宿で使っているような綿布団だった。半乾きの洗濯物のようにジメッと湿っており、ほのかにカビの匂いが漂っていた。
 恵美は、隣りに座る沙織を横目でジッと観察していた。
 沙織は美少女だった。大きな瞳とぽってりとした唇。小さな顔と長い手足。そのスラッとした小柄なスタイルは、まるでディズニーに出て来る森の妖精のように可愛かった。
 しかし、その透き通るような肌をした腕には、数えきれないほどのリストカットの痕が連なっていた。その傷がせっかくの可愛さを狂気に変え、唯ならぬ薄気味悪さを醸し出していた。
 恵美は、恐る恐る少女の顔を覗き込み、「歳はいくつ?」と優しく聞いてみた。
 しかし沙織は表情一つ変えず黙っていた。マネキン人形のような目で、目の前にある『三〇分一〇〇円』と書かれた箱型テレビをジッと見つめたまま、身動き一つしなかった。
 そんな沈黙が続く中、気が付くと時刻はとうに二時を過ぎていた。あれだけ急がせておきながら、もうすぐ三時になろうとしていた。
 恵美は、いつあの古びたドアからいきなりモンスターが飛び出してくるのだろうかとゾクゾクしていた。
 猪のような獰猛な老人。冷血で残酷で、例え人を殺しても裁かれない権力者。そんな三国志に出てくる暴君のようなモンスターが現れた瞬間を想像すると、恵美はあまりの怖さに胸を締め付けられ、おもわず泣き出してしまいそうになった。
 しかし、それこそが恵美が求めていたスリルだった。恵美にとっては、その本当に危険な恐怖こそが快感であり、この後に訪れる残酷なシーンを想像すると脳と陰部が激しく疼くのだった。
 そんな異様な疼きに耐えられなくなった恵美は、スカートの中にソッと手を忍ばせ、既にぐっしょりと湿っている下着の股間に指を這わせた。
 下着の上からクリトリスを探し出し、滲んだ汁を潤滑油にしながら指腹をヌルヌルと滑らせた。おもわず「あんっ」と声を漏らしてしまったが、しかし隣りの沙織は表情一つ変えていなかった。
 そんな沙織のTシャツの胸にソッと手をあててみた。沙織はブラジャーをつけていなかったため、すぐに恵美の手の平に若い弾力性が伝わって来た。
 そのままTシャツの中に手を入れ、直接その小さな膨らみを優しく揉んでみた。それでも沙織は無反応だった。ニキビのように小さな乳首を指で転がしても眉一つ動かさなかった。
 そんな沙織の無表情な横顔を見ていると、ふと、高校時代に読んだ石黒清一廊の『影と陰』を思い出した。
 それは昭和初期に書かれた古い小説で、中年の未亡人が、そこに下宿している男子高校生にこっそり睡眠薬を飲ませては、夜な夜な性的悪戯をするという変態小説だった。
 当時恵美は、その小説を繰り返し読みながら自慰に耽っていた。特に、眠った少年の萎れたペニスを口に含んだ未亡人が、そのまま射精させてしまうシーンに堪らない興奮を覚えていた。
 そんな古い小説を思い出した恵美は、自分もこの廃人のような少女を舌でイカせてみたいという欲望に駆られた。胸底から涌き上がってくる興奮に目眩を感じながら、恵美は沙織をベッドに寝かせてしまったのだった。
 まるで人形のように素直に仰向けになった沙織は、そのマネキンのような目で天井の鏡に映る自分を見つめていた。
 両膝を立たせ、ミニスカートの中を覗いた。やはり下着は履いていなかった。
 妙に陰毛がフワフワし、ボディーソープの香りだけが漂っていた。恐らく、連行前に藤田が慌てて洗ったのだろうと思うと、廃人のような少女が中年男に陰部を洗われている光景がメラメラと頭に浮かび、とたんに背筋がゾクゾクした。
 沙織ちゃん……と、囁きながら真っ白な太ももに頬擦りした。生クリームのような肌触りを頬に感じながら、股間の奥に息衝く割れ目を凝視した。
 その顔、その肌、その肉体は、妖精を思わせるほどに初々しい少女なのに、その一点だけは醜く穢れていた。左右の襞はダラリと垂れ下がり、その色は焦げたカルビのように真っ黒だった。
 そこに舌を伸ばし、折り畳まれていた襞を舌先で開いた。ペロンっと襞が捲れると、弛んだ穴がねっとりと口を開いていた。
 本来、この若さからして、そこはサーモンピンクに輝いていていいはずだった。しかしその内部は、まるで死んだ魚のエラのように赤黒く爛れていた。
 果たしてこの穴の中に、今までどれだけの醜い肉棒が出たり入ったりと繰り返したのだろうと思った。そして同時に、意識の無いまま変態男たちに弄ばれ、無の世界で男たちの穢れた汁をドクドクと注入されている少女の姿を想像し、恵美は異様な興奮に包まれた。
 大きく突き出した舌を割れ目に這わせ、下から上へとベロリと舐めた。舌をピリっとする酸味と、赤錆の味が口内に広がった。
 生まれて初めて女性器を舐めた。ホームレスの肛門は何度も舐めた事があるのに、女性器はこれが初めてだった。
 いつも自分が男たちからされているように、クリトリスをチロチロと転がし、そして穴の中に舌を潜り込ませた。
 べちょ、べちょ、と下品な音が鳴り響くが、しかし少女は表情一つ変えず、ジッと天井に映る自分を見つめているだけだった。
 少女の股間に顔を埋めながら、そんな天井の鏡越しに少女の気配を伺っていると、ふと自分の真後ろに人影が映っている事に気付いた。
「はっ!」と驚き、慌てて後ろを振り返ると、それと同時に、痩せこけた老爺も「えっ!」と驚いた。
「ご、ごめんなさい、覗くつもりじゃなかったんです!」
 そう必死に弁解しながら狼狽えている老爺は、まるで小学生のように小さかった。

(つづく)

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変態

スリル12・狂宴

2013/06/13 Thu 00:02

 総白髪の髪に青白い顔。ヨレヨレの縦縞パジャマに、痩せこけた弱々しい体。そんな姿は、まさに老人ホームから脱走して来たお爺ちゃんのようだった。
 恵美は沙織の股間から慌てて起き上がると、その小さなお爺ちゃんを唖然と見ながら「もしかして……」と呟いた。
 すると、それまで狼狽えていたお爺ちゃんの顔が、急にパッと明るくなった。お爺ちゃんは、少し照れくさそうにコクンっと頷くと、「どうも、どうも、私が大磯大蔵です」と選挙中の政治家のように笑ったのだった。
 恵美は目を疑った。この小学生のように小さくて、朗らかなお爺ちゃんが、まさかあの大磯だとは信じられなかった。
 しかし、そう呆然としている恵美を優しく見つめるお爺ちゃんの目は、決して笑ってはいなかった。その目は、その性癖を持つ者に共通している狂気の目だった。貪よりと重く、ぴくりとも瞬きせず、そしてギラギラと燃えながら、黒目だけがグルグルと回っていた。
 そんな目をした男たちに、今まで散々嬲られて来た恵美にはわかった。その目を持つ男たちは女を人間とは見なしておらず、己の欲望を果たすためなら、何の躊躇も無く平気で惨い事をする狂人だという事を。
 それはまさに、己の空腹を満たす為だけに命を奪う肉食獣と同じだった。
 恵美がそれに気付いたのは、たまたまスカパーのアニマルプラネットで放映していた『ベンガル虎の晩餐』という番組を見ていた時だった。
 腹を空かせた虎が親子の鹿に襲い掛かり、瞬く間に子鹿を射止めた。そして親鹿が見ている目の前で子鹿の腹を噛み千切り、口の回りを血まみれにしながら内臓を貪り食っていた。
 それを見ていた恵美は、その時の虎の目と、今まで自分を無惨に犯してきた男たちの目が同じだという事に気付いた。そう思うと、内臓を食い荒らされている子鹿が自分のような気がしてならず、おもわず恵美はその番組を見ながらオナニーをしてしまったのだった。
 そんな肉食獣の目を輝かせながら大磯は沙織を見た。
「この子、まだ若いでしょ……」
 大磯はそう言いながら、股を開いたまま天井を見つめている沙織の顔を覗き込んだ。
「いくつですか?」
 大磯は沙織にそう聞くが、もちろん沙織は表情一つ変えないまま天井の鏡をジッと見つめたままだった。
 暫く沙織の顔を覗き込んでいた大磯が、急に恵美に振り返って聞いた。
「この子は聾唖ですか?」
「ろうあ?」
「耳が聞こえず言葉が喋れないという意味です」
 恵美は小さく首を傾げながら「多分、そうだと思います……」と答えると、大磯は何故か嬉しそうに微笑みながら「本当かなぁ……」と呟き、もう一度沙織の顔を覗き込んだ。
「麻原君も目が見えないとか言っておきながら、ちゃっかり見えてたからねぇ……私がフィリピンの幼女を紹介してやったら、『若い頃の坂口良子みたいだ』って喜んでたんだから……」
 大磯は、独り言のようにそう呟きながら沙織の股間に指を這わせた。そして沙織の表情をジッと監視しながら、そこにピチャピチャといやらしい音を立て始めた。
 麻原。確か、さっき車の中で、「大磯先生と教団はズブズブの仲だったみたいですね」と矢部が言っていた。そして、「大磯は教団の道場建設の反対をしながらも、実は教団とは裏で繋がっていたってのは本当ですか」と、どこかのレポーターのように藤田に聞き、藤田に「余計な事は話すな」と一喝されていた。
 それを思い出した恵美は、大磯の口から出た麻原という名前から、あの時矢部が言っていた事は本当だったんだと確信した。
 激しいスリルを感じた。それほどの悪党なら、本当に私を子鹿のように食い殺してしまうかもしれないと恐怖に襲われ、それと同時に異様なエロスに包まれた。
「演技をしててもすぐにバレちゃいますよ……」
 大磯は、沙織にそう笑いかけながらパジャマのズボンを下ろした。そしてそこに巨大な肉棒を突き出すと、「コレを入れられるとね、どんな嘘つき女だって本性を剥き出しにしちゃうんですから」とケラケラと笑い、その焼き芋のようにゴツゴツとした肉棒を自慢げにシゴき始めた。
 その真っ黒な皮が上下に動くのを恵美は呆然と見ていた。あんな大きなモノを入れられたら、きっと沙織の膣は張り裂けてしまうだろうと思うと、不意にクラクラと目眩がするほどの興奮を感じた。
 そんな恵美の様子に気付いたのか、大磯は静かに恵美に振り向くと、恵美に向かって肉棒を突き出した。
「そちらの綺麗なお姉さん。あなた、もう我慢できないんでしょ。ふふふふふ……ほら、遠慮なさらずに、さ、どうぞ」
 たちまち恵美の危機察知能力が激しく警鐘を鳴らした。しかしそれは、普通の人にとっては危機察知の警鐘だが、恵美にとっては快楽への入口に導いてくれる誘導信号であった。
 大磯の足下に縋り付き、「あぁぁ……」と声を漏らしながら唇を丸く開いた。それを口一杯に頬張り、その硬さを舌で確かめながらそこに唾液を塗り込んだ。顔ごと上下に動かすと、思いきり開かされた唇と肉棒との隙間で、ぺぷ、ぺぷ、と艶かしい音が鳴った。
「この子も可愛いが、あなたも実に美しい……それにあなたは変態だ。変態の匂いがプンプンと漂っている……美女の変態は特に美しいものです……変態美女と嘘つき娘……ふふふふふ……今夜は久しぶりに愉しめそうですね……」
 そんな大磯の声を聞きながら、恵美はそれを激しくしゃぶりまくった。左手を腰に回し、そのまま大磯の肛門を人差し指で弄った。そして右手で睾丸を優しく握り、それをふにゃふにゃと揉みながら、肉棒を唇で激しく擦った。
 暫くすると、口内で肉棒がビクンっと跳ね上がった。
 大磯は「ほっ」と息を吐くと、素早く恵美の口内から肉棒を抜いた。そして亀頭を恵美に向けながら自らそれをシゴき、恵美の顔に大量の精液を吐き出した。
「あなたがあんまり上手だから、もう出ちゃいましたよ……でも心配しないで下さい、私はずっと勃起してますし、何度でも射精する事ができますから」
 そう自慢げに笑う大磯を、眉間からドロリと垂れる精液越しに見つめた。ふと、さっき矢部が車の中で、「あの歳であれだけ元気なのは、やっぱシャブですか。佐川会の若い衆が大磯先生に回してるって噂がありますけど」と、藤田に聞いていたのを思い出した。
 反社、シャブ、教団、幼女、殺人。
 そんな危険な老人の精液が、今、恵美の顔にナメクジのように這っていた。
 恵美は唇を尖らせながらそれをズルズルっと吸い込み、それを舌と硬口蓋で磨り潰しながら、その危険な味を脳に刷り込んだ。
 そんな恵美を見下ろしながら、大磯は嬉しそうに笑った。
「後でゆっくりと可愛がってあげますから、シャワーで顔を洗って来なさい」
 そう囁く大磯の肉棒は、やはり衰えてはいなかった。これだけ大量の精液を出したというのに、その肉棒は未だ筋肉をピクピクさせていた。
 恵美はゆっくりと立ち上がると、バッグの中から化粧ポーチを取り出し、それを持ってバスルームへと向かった。
 脱衣場のドアを開けると、その奥にある浴室が不気味な闇を作っていた。昭和チックなモザイクタイル張りの浴室からは、身震いするほどの冷気と強烈なカビ臭が漂って来た。
 車の中で矢部が藤田に言っていた。
「ホテトル嬢は風呂場で殴り殺されていたらしいっすね」
 大磯の声が背後で聞こえた。
「そろそろ、その下手糞な演技はやめなさい」
 そんな大磯の声はどこか殺気を帯びていた。

(つづく)

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変態

スリル13・針地獄

2013/06/13 Thu 00:02

 ドン……ドン……
 シャワーを終えた恵美は、洗面所の鏡に向かいながらアイラインを引いていた。
 あの誰もが恐れる大磯が、あんなに小さなお爺ちゃんだったとは意外だった。それまで恵美が描いていた大磯は、三国志に出て来る暴君・董卓だった。あの弱々しいお爺ちゃんからは全く想像ができなかった。
 それでもあのペニスは凄かった。あの獰猛な肉棒を思い出しながら恵美はポーチの中から口紅を摘んだ。そしてあの目。あの冷酷な目は只者ではない、と思いながら真っ赤な口紅を唇に滑らせたのだった。
 ドン……ドン……
 先ほどから聞こえて来る音が気になった。それは、上階で子供が飛び跳ねているような音だった。マンションではよく聞く音だったが、しかしこの客が誰もいない古びたラブホテルでは、その音は明らかに違和音だった。
 胸にバスタオルを巻いた。しかし、思い直してバスタオルを剥ぎ取った。
 獣のように犯されたい。
 そう思った恵美は、全裸のままドアを開けた。
 ドン……ドン……と鳴っていたその音が、いきなり鮮明に聞こえた。
 見ると、全裸の老人がベッドの上でゴーゴーを踊っていた。
 その痩せこけた老いた背中を見つめながら、何が何だかわからないまま後手でドアを閉めると、背後でドアがガチャっと鳴った。
 その音に気付いた大磯がサッと振り返った。
 大磯の顔は血まみれだった。そして、振り上げたままの拳も血で真っ赤に染まっていた。
 その老人はゴーゴーを踊っていたのではなかった。
 その老人は仰向けの沙織に馬乗りになりながら殴っていたのだった。

「この子は困った子です。どれだけ言ってもこの下手糞な演技をやめようとしないんです」
 大磯は血飛沫が飛び散った頬を歪め、そう笑った。
 沙織の顔は、既に原型がわからないほどに腫れ上がり、まるで『らんちゅう』と呼ばれる金魚のようになっていた。
 潰れた鼻からは止めどなく鼻血が流れ、ズタズタに切れた唇からはドス黒い血がドクドクと溢れていた。
 しかし、それでも沙織は、呻き声一つあげないまま天井の鏡をジッと見つめていた。あれだけ大きかった目は、腫れてほとんど塞がっていたが、それでもその奥に、身動き一つしない黒目がポツンとあるのが見えた。
「手伝って頂けますか?」
 大磯はそう言いながら、突然ベッドの下から荒縄をズルズルと引きずり出した。
 いつの間に隠していたのか、そのベッドの下には、おどろおどろしい拷問グッズが沢山押し込まれていたのだった。

 命じられるまま、恵美は沙織の両手首に縄を巻いた。
 大磯は、ブツブツと独り言を呟きながら、イルカのように美しい沙織の裸体に荒縄を巻き付け、その真っ白な肌に殺伐とした荒縄をギシギシと食い込ませた。
 身動きできなくなった沙織を見て満足そうな笑みを浮かべると、突然大磯は黒皮のポーチの中から布団針を一本取り出した。
 それは、一般家庭で普通に使われている縫い針よりも、長さも太さも倍ほどある物騒な針だった。
 大磯はその針の先で沙織の太ももをチクチクと刺した。そしてパンパンに腫れ上がった沙織の顔を覗き込みながら「痛いですか?」と聞いた。
 無反応の沙織にニヤリと微笑んだ大磯は、「それではここはどうですか?」と言いながら沙織の右足を持ち上げ、膝の真裏の柔らかい部分に針先をプスっ刺した。
 それでも沙織は眉一つ動かさなかった。
「おかしいですね……ここは刺青でも最も痛い場所だと聞いたんですがね……」
 大磯はそう首を傾げながらも、しかしどこか嬉しそうだった。
 針をそこに突き刺したまま、再び大磯は黒革のポーチを弄ると、中から手の平サイズのスタンガンを取り出した。
 ジジジジッ!
 その音だけで恵美は震え上がった。それは小さいながらも、凄まじい勢いで青い電流を弾かせていた。
 大磯はニヤニヤと笑いながら、膝の裏に突き刺した針にスタンガンの先をソッとあてた。そしてカサカサの唇をペロリと舌でなぞると、迷う事無く、そこにバチバチバチと音を立てたのだった。
 沙織の足はビクンっと飛び跳ね、そのままベッドにドテッと落ちた。
 それで沙織が悲鳴でも上げていれば、この状況は変わったかも知れないが、しかし沙織は鼻息一つ漏らさなかった。
「キミはどこまで頑固なんだ!」
 いきなりそう叫ぶと、膝の裏に刺さったままの針の頭めがけ、まるで蚊を叩き殺すかのように、パン! と手の平で叩いた。
 沙織の膝の裏には、あの太くて長い布団針が、根元まですっぽりと突き刺さっていた。それでも沙織は身動き一つしなかったのだった。

「これは、私に対する挑戦だね」
 大磯は、まるで子供のように笑いながら、その巨大な肉棒を沙織の膣に押し付けた。
 濡れていない膣にそれが入るわけがなかった。しかし、それでも大磯は強引にそれを突き刺し、そこをメリメリと無惨に引き裂いた。
 そこから溢れるドス黒い血を潤滑油にしながら腰を振っていた大磯は、新たな布団針を摘まみ上げると、それをクリトリスに貫通させた。
 それでも物足りないのか、沙織の真っ白な腹に五本もの布団針を突き刺し、それを一本一本順番に手の平で叩いていった。
 それはまるで豆腐に針を突き刺しているようだった。針は、いとも簡単に沙織の腹の中にスポスポと消えていった。
 このままでは沙織は死んでしまう。そう思った瞬間、恵美は失禁してしまった。
 するとそれに気付いた大磯は大いに喜び、そのまま沙織の顔を跨ぎなさいと命令した。
 逆らえば自分の腹にも針を埋め込まれると恐れた恵美は、水死体のようにブクブクに腫れた沙織の顔を恐る恐る跨ぐと、沙織の顔面にびしゃびしゃと尿を飛び散らせた。
 顔面を覆っていた血が流れ落ち、その生々しい顔がみるみる現れて来た。
 すると、不意に大磯の腰の動きがぴたりと止まった。
「ちっ」
 大磯は、沙織の顔を見ながらそう舌打ちした。
 そして再び腰を動かし始めると、沙織を跨いでいる恵美にニヤニヤと笑いかけながら、「もう死んじゃってますよこの子」と、残念そうに呟いた。
 それでも大磯は、冷たくなった沙織の股で激しく腰を振っていた。そして「はっ! はっ!」とスタッカートな呼吸を始めると、突然奇怪な奇声をあげ、死体となった沙織の中に果てた。
 大磯は「ふーっ……」と息を吐きながらヌポッと肉棒を抜いた。精液と血にまみれたそれをピクピクさせながら、「死ぬ寸前の膣は素晴らしいシマリなんですけどね……残念です、見逃してしまいました」と笑った。
 大磯はゆっくりと立ち上がると、肉の塊となった沙織をドスドスと蹴り転がし、そのままベッドの下に落した。そしてしゃがんだままの恵美を突き飛ばし、ベッドに尻餅をついたままの恵美の股間に血まみれの肉棒を突き立てた。
 亀頭まではヌルっと滑り込んだが、しかし、あまりにも太い肉棒は真ん中辺りで止まってしまった。
「痛いですか?」
 そう耳元で囁く大磯の声に、激しいスリルを感じた恵美は、「奥まで入れて下さい!」と泣き叫んでいた。
 それはまさに獣のセックスだった。恵美は何発も何発も顔面を殴打されながら、「もっと! もっと!」と喘いだ。
 大磯はそんな恵美の太ももに布団針の先をチクチクと刺し、「コレも奥まで入れてあげましょうか?」と笑った。
 その狂気の目に、失神しそうなほどのスリルに襲われた恵美は、無意識のうちに「殺して下さい! 私も殺して下さい!」と叫び、自ら腰を振っていいたのだった。

(つづく)

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変態

スリル14・回る切腹

2013/06/13 Thu 00:02

 大磯は悪魔のように目を輝かせながら、広げた手の平を恵美の太ももに叩き付けた。パン! と乾いた音が鳴ると同時に六センチほどの布団針が根元まで叩き込まれ、まるで電流を流されたかのように右足がビンっと跳ね上がった。
 こむら返りのような激痛が脳を貫いた。
 大磯は正常位で激しく腰を振りながら、「ひぃーっ!」と全身を引き攣らせる恵美の中に三度目の射精をした。
 さすがに六十五歳の老人には連続三回の射精は堪えたらしく、大磯はベッドにゴロリと倒れると胸をゼェゼェと鳴らしながら「少し休憩しましょう……」と呟いた。
 大磯はゆっくりと起き上がると、ドロドロの肉棒をブラブラさせながらドアへと向かった。そして、「三十分ほど待ってて下さい。パワーを注入してきますから」と笑い、そのまま部屋を出て行ってしまった。
 恵美は起き上がろうとするが、しかし、少しでも体を動かそうとすると全身の筋肉が引き攣り、太ももから脳にかけて激痛が走った。
 その針を抜かなければ動けないと思い、恐る恐る太ももに指を伸ばした。
 針の刺さった場所を指探りしていると、乾いた血がパサパサと剥がれた。親指大にポコンっと腫れた部分に針の頭を見つけ、そこに爪先を引っ掻けた。針が動く度に激痛が走ったが、それをゆっくりと引き抜くと、それまでの激痛が嘘のように消えた。
 しかし、右足は痺れていた。ベッドから立とうとすると、太股が雑巾のように搾られるような鈍い痛みが走り、足の力が抜けた。
 恵美は昭和の回転ベッドに腰掛けたまま、(逃げるなら今だ)と、下唇を噛んでいた。
 しかし、もう一度あのスリルを感じたかった。ここで逃げなければ殺されてしまうとわかっていながらも、それでもあの巨大な肉棒で激しく膣をほじくられ、全身に針を叩き込まれたいと思っていた。
 焦燥感に駆られながらゆっくりと立ち上がると、右足を引きずりながらドアに向かった。
 逃げるなら今だ……と、何度も呟きながらドアを開け、静まり返った廊下を恐る恐る覗いた。
 廊下に顔を出した瞬間、いきなり目が合った。
 すぐ目の前に立っていた。
 ハァハァと肩で息をしながら、血走った目で恵美を睨み、「この部屋だったのか」と低い声で呟いた。
 そこに立っていたのは大磯ではなかった。狐のように引き攣った顔で恵美を睨んでいたのは、殺された沙織の父であり、サラマンドラの店長でもある原山だった。
 原山は恵美を突き飛ばすと、「沙織はどこだ!」と怒鳴りながら部屋に入って来た。原山の左手にはポリタンクが握られ、右手には鋭く光る出刃包丁が握られていた。
 誰もいない部屋を必死に見回しながら、「先生はどこだ!」と恵美に出刃包丁を突き付けた。顎をガクガクと震わせながら「さっき出て行きました」と答えると、原山は、今にも泣き出しそうな感情のこもった声で「沙織は!」と叫んだ。
 恵美は血まみれの回転ベッドに振り返った。
 すかさず原山は回転ベッドに駆け寄った。そしてベッドと壁の隙間に蹴り落されていた沙織の死体を発見すると、両手で顔を塞ぎながら「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」と断末魔のような悲鳴を上げたのだった。
 原山は、目玉が飛び出そうなほどに目を開きながら沙織を見ていた。両手に持っていたポリタンクと包丁をボトっと床に落すと、震える両手を広げ、「あぁぁ! あぁぁ!」と甲高い声を漏らしながら崩れ落ちた。
 愛する我が子の無惨な拷問死体を目の当たりにした原山は、もはや尋常ではなかった。この世のものとは思えぬ形相で下唇を噛み千切り、大量の血を顎から喉へとダラダラ垂らしながら狂犬のように唸っていた。
 異常な原山を見て咄嗟に危険を察した恵美は、全裸のままそこから逃げ出そうとしドアノブを握った。すると、突然背後で原山が歌い出した。
「そーだ、恐れないでみーんなの為に、愛と勇気だけがとーもだちさー」
 そんな歌声と共に、ビシャ、ビシャ、という音が聞こえてきた。恵美はドアノブを握ったまま振り返った、
 原山は両手に持ったポリタンクを上下に振り、沙織の死体にガソリンらしき液体をかけていた。同じ歌詞ばかりを繰り返しながら、回転ベッドやカーテンにもそれを撒き散らし、挙げ句の果てには、まるでシャワーのようにして、自分の頭にそれをぶっかけていた。
 部屋中に危ない匂いがメラメラと漂い始めた。
 原山は、空になったポリタンクを放り投げると、出刃包丁を片手にガソリンで湿ったベッドの上に飛び乗った。そして枕元にあるスイッチ盤を出刃包丁の柄でガンガンと叩き始めた。
 ガタンっという振動と共に回転ベッドが回り始め、天井の豆電球がチカチカと点滅し始めた。それと同時に有線のスイッチが入ったのか、天井に吊り下げられていた古びたスピーカーから大音量の曲が鳴り響いた。
 その曲は、ちあきなおみの『喝采』という、かなり古い歌謡曲だった。曲に合わせてベッドで正座する原山が回っていた。
 原山はワイシャツのボタンを引き千切ると、タプタプに弛んだ腹を曝け出し、そこに出刃包丁の先を突き付けた。
 とたんに原山の喉から「ひぃーひぃー」と猛禽類のような情けない声が漏れた。が、しかし、原山はいきなりギョッと目を見開くと、刃先を左の脇腹に突き刺した。
 音も無いまま包丁は腹の中に滑り込んだ。原山は唇を真一文字に結びながら「うぐぅぅぅ」と唸り、そのまま一気に右の脇腹までかっ捌いた。
 まるで水風船を踏み潰したかのように大量の血がブッと噴き出した。それが無数の点となって、辺り一面に赤い水玉模様を作った。
 腹は見事にパックリと開いていた。赤黒い腹の中からゴボゴボと内臓が零れ、それが正座する原山の太ももに溢れた。
 一瞬、正気に戻ったのか、原山は「あぁぁ……」と唸りながら恵美の顔を見上げた。その情けない表情には、やらなきゃ良かった、という後悔がはっきりと浮かんでいた。
 恵美の顔を見つめたまま、無言で涙をポロポロと流している原山に、恵美は「火!」と叫び、正座する原山の足下に転がっている百円ライターを指差した。
 それはいわゆる『介錯』の意味が込められていた。恵美は、一刻も早く原山を楽にしてやりたいと思ったのだ。
 原山は二度頷くと、震える手で百円ライターを握った。しかし、それを何度か擦るが、血で滑っているのかなかなか火はつかなかった。
 そうしながらも原山は、いきなりゴボッとゲロを吐いた。血が混じったそのゲロの中には、お昼に待機所で食べた『サッポロ一番塩ラーメン』の麺が、消化されずに混じっていた。
 それを見ながら恵美は、あのとき原山は、まさかそれが最後の食事になるとは思ってもいなかっただろうと思った。
 そう思うと、恵美は急に悲しくなった。わんわんと泣きながら、ソファーテーブルの灰皿の中にポツンと置いてあったラブホテルのマッチを手に取り、その一本をシュッと擦った。
 回転ベッドはクルクルと回っていた。
 内臓を飛び出した原山もクルクルと回っていた。
 火のついたマッチを回転ベッドに向かって投げると、同時に、ドン! という音が響き、重たい熱風が恵美を包み込んだ。
 真っ黒な煙が竜巻のような渦を作り、みるみる天井を真っ暗にしていった。
 真っ赤に燃え盛る炎の中、クルクルと回る回転ベッドの上で原山が悲しそうに踊っていた。
 そんな壮絶なシーンとは不釣り合いに、ちあきなおみが熱唱していた。
 あれは三年前、止める、あなた、駅に残し。
 その悲しい歌声は、黒煙に包まれながら天井の隅で響いていたのだった。

(つづく)

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変態

スリル15・取調室

2013/06/13 Thu 00:02

「どうせ死刑なんだからさ、もうどうなってもいいじゃないか……ほら、もっと足開いて……」
 煙草臭い息が恵美の頬を掠めた。それは貪よりと生温かく、まるで蛇が這っているかのように薄気味悪かった。
「あららら、もうこんなに濡れてるじゃん。ほら、ちょっと触っただけでも指がヌルヌルと吸い込まれていくよ……」
 ヌメった壷の中に潜り込んだ男の指は、まるで捕獲されたウナギのようにうねうねと動き始めた。
 恵美は小さく唇を開いた。そこからほんの少しだけ息を漏らしながら、目の前に広げられた三日前の朝刊を何度も何度も読み返していたのだった。

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8日午後4時30分頃、浦川町にあるラブホテル『エリザベス浦川』が全焼し、焼け跡から二人の男女の惨殺死体が発見された事件で、三ツ和警察署は、現場にいた女を現住建造物放火と殺人の疑いで逮捕した。
逮捕されたのは、八隅町に住む無店舗型風俗店『サラマンドラ』従業員、加藤恵美容疑者(25)で、三ツ和警察署によると、加藤容疑者は現場近くの路上で全裸で踞っており、保護しようとした消防署員に対し、「私が火をつけました、私が二人を殺しました」と容疑を認めたため、駆けつけた警察官に逮捕された。
焼死体で発見された二人の男女には、それぞれ拷問をされたような痕が残っており、損傷が激しい事からまだ身元はわかっていないが、調べに対し加藤容疑者は、殺害した二人は全く知らない人などと答えており、動機についても「今は何も話したくない」と黙秘していると言う。
このラブホテルは、昭和62年にも風俗嬢が変質者に殺害されるという猟奇事件が起きており、犯人が特定されないまま平成24年に捜査が打ち切られていた。
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 恵美は、今までとは全く違う新たなスリルに脳を痺れさせていた。
 放火殺人。しかも二名を拷問の上、殺害。
 昨夜遅くに面会にやって来た当番弁護士は、眠そうな目を擦りながら「罪を認めたら確実に死刑ですね」と呟き、大型犬のような大きなあくびをした。
 死刑。
 そのシーンを想像しただけで恵美のクリトリスがジンジンと疼いた。
 法廷で死刑を宣告される自分。拘置所で刑務官の足音に脅えながら執行を待つ自分。そして、目隠しされ首に真っ白なロープを巻いたまま、いつ足下の床がバッタンと開くかと震えている自分。その、どの自分を想像してみても凄まじいスリルに襲われ、恵美は今までにない異常な興奮に包まれた。
 そんな恵美の異常興奮をいち早く見破ったのは、五十半ばのベテラン刑事だった。
 逮捕直後から完全黙秘している恵美は、薄暗い取調室で、一日中ジッと項垂れたままだった。そんな恵美を取り調べていた刑事は、最初のうちは自供させようと必死になっていたが、しかし、二日目の検事調べが終わり、十日間の勾留が決まると急に態度をがらりと変えた。
「あんたが働いてたデリヘル、変態専門らしいね」
 そう苦笑いを浮かべる刑事の表情には、それまでの必死さは消え去り、どこか余裕の太々しさが浮かんでいた。
「あんたほどの美人だったら、普通のデリでも雇ってくれるでしょ」
 刑事はそう笑いながら事務椅子をゆっくりと立ち上がると、その事務椅子を、恵美が座るパイプ椅子の真横に並べた。
 恵美が座るパイプ椅子は床にビス止めされていた。椅子のパイプ部分には、恵美の腰にぶら下がっている手錠の青い紐がぐるぐると巻き付けられ、恵美は立ち上がる事すらできなくなっていた。
 そんな拘束状態の中、刑事は、「やっぱ、あんたも変態かね……」と囁き、恵美の太ももを摩り始めた。
 恵美が黙ったままでいると、刑事の手はジャージのゴムの中に潜り込み、下着の上から股間をスリスリと撫で始めた。
 そのジャージは留置場から借りた『官物』だった。逮捕当時、恵美は全裸だったため、下着もジャージもタオルも歯ブラシも、全て官物を借りていた。
 刑事は、横目で恵美の表情をジッと確認しながら、もう片方の手でペニスを摘まみ出し、その真っ赤に腫れ上がった亀頭を恵美の右腕にスリスリと擦り付けて来た。
「あんた、二人も殺しちゃってるんだから、もう二度とコレに触れなくなるかも知れないよ……」
 そう話す刑事の股間を、恵美は乾いた喉にゴクリと唾を押し込みながらソッと横目で見た。
 その真っ赤な亀頭から見て、明らかに仮性包茎だった。パンパンにエラを張ったカリ首の裏には、できそこないの素麺のような白い恥垢がグルリと巻き付き、ベロリと剥かれた皮の裏側は、汗と小便の残り汁が混ざった汁でギトギトに濡れ輝いていた。
 恵美は無意識のうちに上半身を右側に傾けた。すると刑事は、嬉しそうにニヤリと笑いながら、そんな恵美の後頭部にそっと手をあて、そのまま恵美の顔を自分の股間に押し付けたのだった。
 そのヌルヌルとする臭汁が唇に触れた瞬間、おもわず恵美は「うっ」と眉間を顰めてしまった。
 しかし、それでも恵美はそこに舌を絡ませ、恥垢が溜まったカリ首に舌を回転させながらそれを優しく銜え込んだ。
 そのまま、二、三度、顔を上下させると、早くも刑事は「ダメダメ」と呟いた。そして、股間から恵美の顔をゆっくりと離しながら、「さすが変態専門のプロだけあるね、もう出ちゃいそうだよ」と笑うと、恵美の肩を優しく抱きながら、「どうせ死刑なんだからさ……」と囁いたのだった。

 刑事の煙草臭い息が頬を掠めた。
 言われるがままに股を開くと、刑事の指はすぐさまクロッチを掻き分け、既にヌルヌルになっている恵美の陰部を捕らえた。
 刑事は、目をギラギラさせながら「もうこんなに濡れてるじゃん……」と喜んだ。刑事の手が潜り込んだジャージの股間は歪に膨らみ、まるで小動物が潜んでいるかのようにモゾモゾと蠢いていた。
 刑事は、穴の中を指で滅茶苦茶に掻き回しながら、「こんな綺麗な女を、死刑にしてしまうのは勿体ないねぇ」と呟き、静まり返った取調室に、くっちゃ、くっちゃ、と卑猥な音を立てた。
 恵美は、そんな野蛮な愛撫に膣筋をキュンキュンとさせながらも、机の上に広げられていた三日前の朝刊を見つめていた。その記事に書かれている、『昭和62年にも風俗嬢が変質者に殺害されるという猟奇事件が起きており、犯人が特定されないまま——』という部分を、何度も読み返しながら、ふと、あの悪魔のような大磯の笑顔を思い出していた。
 恵美は横目でソッと刑事を見た。
「昭和62年にあのホテルで起きた事件の犯人は……わかっていないんですか……」
 そう聞くと、刑事は初めて喋った恵美に驚きながらも、「ふっ」っと鼻で笑った。
「犯人は、最初からわかってたさ……わざと二十五年間寝かせて時効にしたんだよ……」
「どうして?」
 恵美が振り返ると、刑事は恵美の顔を真正面から見つめながら、「綺麗な目だな」と優しく笑った。
 刑事は穴からヌルっと指を抜くと、そのドロドロに濡れた指でパイプ椅子に巻き付けられた手錠の紐を緩め始めた。そして、そこに恵美を立たせ、「取りあえず、中出しさせてよ」と、ジャージを足首まで下ろすと、既にダラリと口を開いている穴に亀頭を突き付けた。
 コリコリと硬い肉棒が、ヌルヌルの筒の中にツルンっと滑り込んで来た。
 机に両手を付いたまま「あんっ」と腰を撓らせると、刑事はハァハァと呻きながら耳元に囁いた。
「あの化け物をパクれない事くらい、あんたが一番よく知ってるだろ」
 その瞬間、恵美の頭に、大磯のあの狂気に満ちた目が、鮮明に浮かんだのだった。

(つづく)

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変態
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