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スリル12・狂宴

2013/06/13 Thu 00:02

 総白髪の髪に青白い顔。ヨレヨレの縦縞パジャマに、痩せこけた弱々しい体。そんな姿は、まさに老人ホームから脱走して来たお爺ちゃんのようだった。
 恵美は沙織の股間から慌てて起き上がると、その小さなお爺ちゃんを唖然と見ながら「もしかして……」と呟いた。
 すると、それまで狼狽えていたお爺ちゃんの顔が、急にパッと明るくなった。お爺ちゃんは、少し照れくさそうにコクンっと頷くと、「どうも、どうも、私が大磯大蔵です」と選挙中の政治家のように笑ったのだった。
 恵美は目を疑った。この小学生のように小さくて、朗らかなお爺ちゃんが、まさかあの大磯だとは信じられなかった。
 しかし、そう呆然としている恵美を優しく見つめるお爺ちゃんの目は、決して笑ってはいなかった。その目は、その性癖を持つ者に共通している狂気の目だった。貪よりと重く、ぴくりとも瞬きせず、そしてギラギラと燃えながら、黒目だけがグルグルと回っていた。
 そんな目をした男たちに、今まで散々嬲られて来た恵美にはわかった。その目を持つ男たちは女を人間とは見なしておらず、己の欲望を果たすためなら、何の躊躇も無く平気で惨い事をする狂人だという事を。
 それはまさに、己の空腹を満たす為だけに命を奪う肉食獣と同じだった。
 恵美がそれに気付いたのは、たまたまスカパーのアニマルプラネットで放映していた『ベンガル虎の晩餐』という番組を見ていた時だった。
 腹を空かせた虎が親子の鹿に襲い掛かり、瞬く間に子鹿を射止めた。そして親鹿が見ている目の前で子鹿の腹を噛み千切り、口の回りを血まみれにしながら内臓を貪り食っていた。
 それを見ていた恵美は、その時の虎の目と、今まで自分を無惨に犯してきた男たちの目が同じだという事に気付いた。そう思うと、内臓を食い荒らされている子鹿が自分のような気がしてならず、おもわず恵美はその番組を見ながらオナニーをしてしまったのだった。
 そんな肉食獣の目を輝かせながら大磯は沙織を見た。
「この子、まだ若いでしょ……」
 大磯はそう言いながら、股を開いたまま天井を見つめている沙織の顔を覗き込んだ。
「いくつですか?」
 大磯は沙織にそう聞くが、もちろん沙織は表情一つ変えないまま天井の鏡をジッと見つめたままだった。
 暫く沙織の顔を覗き込んでいた大磯が、急に恵美に振り返って聞いた。
「この子は聾唖ですか?」
「ろうあ?」
「耳が聞こえず言葉が喋れないという意味です」
 恵美は小さく首を傾げながら「多分、そうだと思います……」と答えると、大磯は何故か嬉しそうに微笑みながら「本当かなぁ……」と呟き、もう一度沙織の顔を覗き込んだ。
「麻原君も目が見えないとか言っておきながら、ちゃっかり見えてたからねぇ……私がフィリピンの幼女を紹介してやったら、『若い頃の坂口良子みたいだ』って喜んでたんだから……」
 大磯は、独り言のようにそう呟きながら沙織の股間に指を這わせた。そして沙織の表情をジッと監視しながら、そこにピチャピチャといやらしい音を立て始めた。
 麻原。確か、さっき車の中で、「大磯先生と教団はズブズブの仲だったみたいですね」と矢部が言っていた。そして、「大磯は教団の道場建設の反対をしながらも、実は教団とは裏で繋がっていたってのは本当ですか」と、どこかのレポーターのように藤田に聞き、藤田に「余計な事は話すな」と一喝されていた。
 それを思い出した恵美は、大磯の口から出た麻原という名前から、あの時矢部が言っていた事は本当だったんだと確信した。
 激しいスリルを感じた。それほどの悪党なら、本当に私を子鹿のように食い殺してしまうかもしれないと恐怖に襲われ、それと同時に異様なエロスに包まれた。
「演技をしててもすぐにバレちゃいますよ……」
 大磯は、沙織にそう笑いかけながらパジャマのズボンを下ろした。そしてそこに巨大な肉棒を突き出すと、「コレを入れられるとね、どんな嘘つき女だって本性を剥き出しにしちゃうんですから」とケラケラと笑い、その焼き芋のようにゴツゴツとした肉棒を自慢げにシゴき始めた。
 その真っ黒な皮が上下に動くのを恵美は呆然と見ていた。あんな大きなモノを入れられたら、きっと沙織の膣は張り裂けてしまうだろうと思うと、不意にクラクラと目眩がするほどの興奮を感じた。
 そんな恵美の様子に気付いたのか、大磯は静かに恵美に振り向くと、恵美に向かって肉棒を突き出した。
「そちらの綺麗なお姉さん。あなた、もう我慢できないんでしょ。ふふふふふ……ほら、遠慮なさらずに、さ、どうぞ」
 たちまち恵美の危機察知能力が激しく警鐘を鳴らした。しかしそれは、普通の人にとっては危機察知の警鐘だが、恵美にとっては快楽への入口に導いてくれる誘導信号であった。
 大磯の足下に縋り付き、「あぁぁ……」と声を漏らしながら唇を丸く開いた。それを口一杯に頬張り、その硬さを舌で確かめながらそこに唾液を塗り込んだ。顔ごと上下に動かすと、思いきり開かされた唇と肉棒との隙間で、ぺぷ、ぺぷ、と艶かしい音が鳴った。
「この子も可愛いが、あなたも実に美しい……それにあなたは変態だ。変態の匂いがプンプンと漂っている……美女の変態は特に美しいものです……変態美女と嘘つき娘……ふふふふふ……今夜は久しぶりに愉しめそうですね……」
 そんな大磯の声を聞きながら、恵美はそれを激しくしゃぶりまくった。左手を腰に回し、そのまま大磯の肛門を人差し指で弄った。そして右手で睾丸を優しく握り、それをふにゃふにゃと揉みながら、肉棒を唇で激しく擦った。
 暫くすると、口内で肉棒がビクンっと跳ね上がった。
 大磯は「ほっ」と息を吐くと、素早く恵美の口内から肉棒を抜いた。そして亀頭を恵美に向けながら自らそれをシゴき、恵美の顔に大量の精液を吐き出した。
「あなたがあんまり上手だから、もう出ちゃいましたよ……でも心配しないで下さい、私はずっと勃起してますし、何度でも射精する事ができますから」
 そう自慢げに笑う大磯を、眉間からドロリと垂れる精液越しに見つめた。ふと、さっき矢部が車の中で、「あの歳であれだけ元気なのは、やっぱシャブですか。佐川会の若い衆が大磯先生に回してるって噂がありますけど」と、藤田に聞いていたのを思い出した。
 反社、シャブ、教団、幼女、殺人。
 そんな危険な老人の精液が、今、恵美の顔にナメクジのように這っていた。
 恵美は唇を尖らせながらそれをズルズルっと吸い込み、それを舌と硬口蓋で磨り潰しながら、その危険な味を脳に刷り込んだ。
 そんな恵美を見下ろしながら、大磯は嬉しそうに笑った。
「後でゆっくりと可愛がってあげますから、シャワーで顔を洗って来なさい」
 そう囁く大磯の肉棒は、やはり衰えてはいなかった。これだけ大量の精液を出したというのに、その肉棒は未だ筋肉をピクピクさせていた。
 恵美はゆっくりと立ち上がると、バッグの中から化粧ポーチを取り出し、それを持ってバスルームへと向かった。
 脱衣場のドアを開けると、その奥にある浴室が不気味な闇を作っていた。昭和チックなモザイクタイル張りの浴室からは、身震いするほどの冷気と強烈なカビ臭が漂って来た。
 車の中で矢部が藤田に言っていた。
「ホテトル嬢は風呂場で殴り殺されていたらしいっすね」
 大磯の声が背後で聞こえた。
「そろそろ、その下手糞な演技はやめなさい」
 そんな大磯の声はどこか殺気を帯びていた。

(つづく)

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