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スリル11・廃人少女

2013/06/13 Thu 00:02

 その古いラブホテルは、昭和六十二年に若いホテトル嬢が変質者に殺されてから、ずっと廃墟のまま放置されていた。
 地元では有名な幽霊スポットとなり、暴走族が集まったりレイプ事件があったりと色々問題が起きていたが、しかし、平成となりバブルに突入すると、その後に世間を震撼させるカルト教団がそこを購入し、道場を建設しようとした。
 それを断固反対したのが、当時この町で県会議員をしていた大磯だった。
 大磯は、その物件をカルト教団から自費で買い取り、道場建設を阻止した。財産をなげうってまでカルト教団から町を守ろうとした大磯はたちまちヒーローとなり、翌年大磯は、知事の指名により副知事となったのだった。

 恵美と沙織は、丸いベッドに座ったまま大磯が来るのを待っていた。
 ワインレッドに輝くその部屋は、まるで血の海のようだった。
 壁もソファーも床も同じワインレッドだった。それは、一昔前の暴走族が車内に張っていたような、そんな趣味の悪いテラテラと輝く素材だった。
 二人が座っているベッドは、今時珍しい回転ベッドだった。ベッドの天井には鏡が張られており、ベッドが回るのに合わせて黄色い豆電球がチカチカと点滅した。
 そのラブホテルは、凄惨な事件のあった昭和六十二年当時から何も変わっていなかった。
 だから客は誰も寄り付かなかった。たまにそこを利用する客がいたとしても、それは何も知らない余所者だった。
 それでも大磯は、そこを改装ひとつする事無く、そのまま営業を続けていた。
 当然、経営は赤字だったが、しかし、大磯はそれで良かった。なぜならこのホテルは、大磯が個人的に愉しむ為の、趣味の部屋だからであった。

 ベッドに敷かれた掛け布団は、田舎の安宿で使っているような綿布団だった。半乾きの洗濯物のようにジメッと湿っており、ほのかにカビの匂いが漂っていた。
 恵美は、隣りに座る沙織を横目でジッと観察していた。
 沙織は美少女だった。大きな瞳とぽってりとした唇。小さな顔と長い手足。そのスラッとした小柄なスタイルは、まるでディズニーに出て来る森の妖精のように可愛かった。
 しかし、その透き通るような肌をした腕には、数えきれないほどのリストカットの痕が連なっていた。その傷がせっかくの可愛さを狂気に変え、唯ならぬ薄気味悪さを醸し出していた。
 恵美は、恐る恐る少女の顔を覗き込み、「歳はいくつ?」と優しく聞いてみた。
 しかし沙織は表情一つ変えず黙っていた。マネキン人形のような目で、目の前にある『三〇分一〇〇円』と書かれた箱型テレビをジッと見つめたまま、身動き一つしなかった。
 そんな沈黙が続く中、気が付くと時刻はとうに二時を過ぎていた。あれだけ急がせておきながら、もうすぐ三時になろうとしていた。
 恵美は、いつあの古びたドアからいきなりモンスターが飛び出してくるのだろうかとゾクゾクしていた。
 猪のような獰猛な老人。冷血で残酷で、例え人を殺しても裁かれない権力者。そんな三国志に出てくる暴君のようなモンスターが現れた瞬間を想像すると、恵美はあまりの怖さに胸を締め付けられ、おもわず泣き出してしまいそうになった。
 しかし、それこそが恵美が求めていたスリルだった。恵美にとっては、その本当に危険な恐怖こそが快感であり、この後に訪れる残酷なシーンを想像すると脳と陰部が激しく疼くのだった。
 そんな異様な疼きに耐えられなくなった恵美は、スカートの中にソッと手を忍ばせ、既にぐっしょりと湿っている下着の股間に指を這わせた。
 下着の上からクリトリスを探し出し、滲んだ汁を潤滑油にしながら指腹をヌルヌルと滑らせた。おもわず「あんっ」と声を漏らしてしまったが、しかし隣りの沙織は表情一つ変えていなかった。
 そんな沙織のTシャツの胸にソッと手をあててみた。沙織はブラジャーをつけていなかったため、すぐに恵美の手の平に若い弾力性が伝わって来た。
 そのままTシャツの中に手を入れ、直接その小さな膨らみを優しく揉んでみた。それでも沙織は無反応だった。ニキビのように小さな乳首を指で転がしても眉一つ動かさなかった。
 そんな沙織の無表情な横顔を見ていると、ふと、高校時代に読んだ石黒清一廊の『影と陰』を思い出した。
 それは昭和初期に書かれた古い小説で、中年の未亡人が、そこに下宿している男子高校生にこっそり睡眠薬を飲ませては、夜な夜な性的悪戯をするという変態小説だった。
 当時恵美は、その小説を繰り返し読みながら自慰に耽っていた。特に、眠った少年の萎れたペニスを口に含んだ未亡人が、そのまま射精させてしまうシーンに堪らない興奮を覚えていた。
 そんな古い小説を思い出した恵美は、自分もこの廃人のような少女を舌でイカせてみたいという欲望に駆られた。胸底から涌き上がってくる興奮に目眩を感じながら、恵美は沙織をベッドに寝かせてしまったのだった。
 まるで人形のように素直に仰向けになった沙織は、そのマネキンのような目で天井の鏡に映る自分を見つめていた。
 両膝を立たせ、ミニスカートの中を覗いた。やはり下着は履いていなかった。
 妙に陰毛がフワフワし、ボディーソープの香りだけが漂っていた。恐らく、連行前に藤田が慌てて洗ったのだろうと思うと、廃人のような少女が中年男に陰部を洗われている光景がメラメラと頭に浮かび、とたんに背筋がゾクゾクした。
 沙織ちゃん……と、囁きながら真っ白な太ももに頬擦りした。生クリームのような肌触りを頬に感じながら、股間の奥に息衝く割れ目を凝視した。
 その顔、その肌、その肉体は、妖精を思わせるほどに初々しい少女なのに、その一点だけは醜く穢れていた。左右の襞はダラリと垂れ下がり、その色は焦げたカルビのように真っ黒だった。
 そこに舌を伸ばし、折り畳まれていた襞を舌先で開いた。ペロンっと襞が捲れると、弛んだ穴がねっとりと口を開いていた。
 本来、この若さからして、そこはサーモンピンクに輝いていていいはずだった。しかしその内部は、まるで死んだ魚のエラのように赤黒く爛れていた。
 果たしてこの穴の中に、今までどれだけの醜い肉棒が出たり入ったりと繰り返したのだろうと思った。そして同時に、意識の無いまま変態男たちに弄ばれ、無の世界で男たちの穢れた汁をドクドクと注入されている少女の姿を想像し、恵美は異様な興奮に包まれた。
 大きく突き出した舌を割れ目に這わせ、下から上へとベロリと舐めた。舌をピリっとする酸味と、赤錆の味が口内に広がった。
 生まれて初めて女性器を舐めた。ホームレスの肛門は何度も舐めた事があるのに、女性器はこれが初めてだった。
 いつも自分が男たちからされているように、クリトリスをチロチロと転がし、そして穴の中に舌を潜り込ませた。
 べちょ、べちょ、と下品な音が鳴り響くが、しかし少女は表情一つ変えず、ジッと天井に映る自分を見つめているだけだった。
 少女の股間に顔を埋めながら、そんな天井の鏡越しに少女の気配を伺っていると、ふと自分の真後ろに人影が映っている事に気付いた。
「はっ!」と驚き、慌てて後ろを振り返ると、それと同時に、痩せこけた老爺も「えっ!」と驚いた。
「ご、ごめんなさい、覗くつもりじゃなかったんです!」
 そう必死に弁解しながら狼狽えている老爺は、まるで小学生のように小さかった。

(つづく)

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