みんなのおもちゃ3
2012/11/17 Sat 04:25
白衣のマッサージ師は三十前後の男だった。
太々しい態度でズカズカと部屋に入って来ると、勝手に布団の脇に腰を下ろし、掛け布団を乱暴に剥ぐった。
「じゃあ、うつ伏せになって下さい……」
男はそう言いながら腕時計を見つめると、「四十分コースでよろしかったですか?」と無愛想に聞いた。
敷き布団の真ん中に十円玉くらいのシミが蛍光灯に映し出されていた。
それは紛れもなく私の陰部から滲み出たオナニーの汁だった。
激しい羞恥に襲われた私は、男がシミを見つける前にと慌てて布団にうつ伏せになった。
そして布団に顔を押し付けたまま「四十分でお願いします」と答えると、いきなり男の大きな手が私の肩を鷲掴みにしたのだった。
マッサージは淡々と進んで行った。
二人に会話は一切なく、男の手が浴衣に擦れる音と、床の間に置いてある古臭い置き時計の針の音だけが静粛に響いていた。
熱気を発する大きな手は、肩、腕、背中と進み、そしていよいよ腰に差し掛かった。
腰を揉まれる度に股が擦れ、膣の中のディルドがグイグイと蠢いた。
しかしそこに快感はなかった。今はただ、バレたらどうしようという焦りだけが私を襲い、快感どころの騒ぎではなかった。
腰が終わると、続いて男の手は太ももの裏へと進んだ。
浴衣の裾は乱れ、男の指が生肌にグイグイと食い込んで来た。
既にパンティーは濡れていた。もし今、男が浴衣の裾を覗き込めば、濡れたパンティーとその中にある異物は丸見えだった。
そう思うと、焦りと羞恥に混じりながらも、別の感情がムラムラと沸いて出て来た。
私はピタリと閉じていた太ももを微かに緩ませた。
太ももを揉む男の手の動きに合わせ、下半身がユッサユッサと揺れると、愛液に溢れた膣の中でディルドが溺れていた。
(このまま背後から突いて欲しい……)
そう熱い吐息を吐きながら床の間の時計に目をやると、既に十五分が経過していた。
受話器の向こう側で、「早くしろ」と唸っている課長の顔が浮かんだ。
ここで課長の期待を裏切れば、課長との関係は本当に終わってしまうと焦った私は意を決した。
「あのぅ……」
そう言いながら顔を上げると、脹ら脛を揉んでいた男が「はぁ」と気のない返事をした。
「最近、凄く骨盤が痛いんです……」
私はそう呟きながら尾てい骨辺りを指でゴリゴリと押した。
「骨盤?……」
男は尻の上を指でグリグリと押しながら「この辺ですか?」と聞いて来た。
「いえ、そこじゃなくて……」
そう言いながらゆっくりと起き上がった私は、男に背を向けたまま浴衣の帯を解いた。
布団に膝を付いた私の足下に、しわくちゃの浴衣がパラリと落ちた。
蛍光灯に照らされた小豆色の乳房がピーンっと立っていた。
「この辺です……お尻の両側にあるこの骨がギシギシと痛むんです……」
パンティー一枚の姿で尻の両側を指で押しながら呟いた。
背中を見つめる男の気配が変わるのを肌で感じた。
ディルドを挟んだ股間にキュッと力が入った。
男は黙ったまま私の尻の両側にソッと手をあてた。そして五本の指腹でその柔らかさを確かめるようにして尻肉を揉んだ。
「……この辺……ですか?……」
男が呟いた。
その声が私の足下から聞こえて来た事で、男が股間を覗き込んでいる気配を感じた。
強烈な羞恥心が私を包み込んだ。
濡れたパンティーとディルドの膨らみを、今、見ず知らずの赤の他人に見られていると思うと、崩れ落ちそうなくらいの羞恥を感じた。
男は私の股間を覗き込みながら、「この辺ですかね……」と、尻と太ももの境目を指で押した。
私は、もっと見やすいようにと、立てていた膝を肩幅くらいに広げながら「そこです……」と答えた。
股間を覗き込む男の熱い息が、私の膝の裏にハーハーと吹き掛かった。おもわず私の唇からも熱い息が漏れた。
「……ここは、骨盤じゃなくて股関節ですね……」
男はそう言いながらゆっくりと体を起こした。そして両膝を立てている私の背中に、「では、詳しく調べてみますので仰向けになって下さい……」と囁いた。
そんな男の熱い息が私のうなじをいやらしく撫でた。おもわず声が出そうになった私はもうこれ以上は我慢できないと思った。
受話器の向こう側で興奮している課長の澱んだ目が頭に浮かんだ。そんな課長の荒い息を想像しながら、私はスルスルとパンティーを下ろしたのだった。
周囲に人の気配を感じさせない古い旅館は、大草原にポツンと取り残された山小屋のような静けさに包まれていた。
足首から抜き取ったパンティーのクロッチは、まるで『とろろ汁』を垂らしたかのように白濁の液でドロドロに濡れていた。
ディルドで蓋をしているにも関わらずここまで濡れているのは、それだけ自分がこのシチュエーションに感じているのだと思い、今すぐ肉棒を挿入されたい衝動に駆られた。
汚れたパンティーを布団の下にソッと押し込んでいると、それをジッと見ている男の視線を背後に感じた。
普通なら、マッサージ中に客がいきなり全裸になればそれなりに戸惑うはずだ。
しかしこの男は動揺していなかった。それどころか、どこか余裕が感じられた。
全裸になった私は乳房も陰部も一切隠さなかった。
布団の脇で胡座をかいていた男は黙ったまま私の胸を鋭く見つめた。
まるで蛇のような冷たい目をしていた。
その視線をゆっくりと下げ、陰毛が密集する下腹部で止めた。
上半身を前屈みにさせながら下腹部に顔を近づけた男は、「痛いのはここですよね」と言いながら、いきなり陰毛が生え茂る股間の隙間に人差し指を入れた。
冷たい人差し指が、閉じている太ももの内側をグニグニと押しまくった。そしてそこに伸びる一本の筋を見つけてはそれをクリクリと転がした。
「これ『恥骨筋』って言うんですけどね、無理に開脚とかするとすぐに痛めちゃうんですよね……」
男は筋をクリクリと弄りながら、そう薄ら笑いを浮かべた。
そんな男の折り曲げられた人差し指の第二関節が、ディルドを飲み込んでいる小陰唇に当たっていた。男が筋をクリクリする度に、濡れた小陰唇がヌルヌルと動いていた。
「最近、無理なストレッチとかしませんでしたか?」
男は股間からソッと指を抜きながら私の顔を見た。
項垂れたまま首を左右に振る私の目に、テラテラと濡れ輝く男の人差し指が映っていた。
そのまま布団に仰向けに寝かされた。
恐らく男は、私の膣に異物が挿入されている事を既に気付いているはずだ。そしてもちろん、私の膣が異様に濡れている事にも気付いているはずだった。
しかし男は素知らぬ顔をしていた。まるでそれを無視するのように、全裸で横たわる私の肩を普通に揉み始めたのだった。
まるで手術室の台の上に乗せられたように、私は目を閉じたまま息を潜めていた。
さすがに股を開く勇気はなく、両脚をピーンッと揃えたまま太ももを閉じていた。
受話器の向こう側で、「早く股を開きなさい」と鼻息を荒くしている課長の顔が浮かんだ。
しかし、何度も股を開こうと試みたが、緊張する私の筋肉はそれを頑に拒んでいた。
「ご旅行ですか?」
男はそう言いながら私の左腕を揉み始めた。
「……はい……」
「お一人で?」
「……はい……」
「へぇ〜……珍しいですね、こんな田舎町に一人で旅行に来るなんて……」
私は曖昧に返事をしながら、そうブツブツと呟いている男をソッと薄目で見た。
胡座をかいている男は、私の左腕を自分の太ももの上に乗せ、手首から掌までをグイグイと指圧していた。
しかし、男のその視線は指圧する左腕ではなく、私の股間に注がれていた。白い下腹部にフワフワと逆立つ陰毛をジッと捕らえていた。
股を開くなら今だと思った。
ここで閉じた太ももを緩めれば、必ず男は開いた股間を覗き込むだろうと思った。
きっと課長はそんなシーンを期待しているはずだ。
しかし、いくら課長の期待に応えようとしても、体が言う事を聞いてくれなかった。
ここで股を開けば、ディルドがずっぽりと突き刺さった陰部が丸見えになってしまうと思うと、どうしても体が動かなくなってしまうのだ。
開きたい。でも開けない。
そんな葛藤を繰り返していると、ふと私は指先に奇妙な感触を感じた。
薄目を開けたままソッと横目で指先を見た。
案の定その感触は、勃起した筋肉の感触だった。
男の太ももの上で手首を揉まれているその指先が、男の白いズボンの股間に押し付けられていたのだ。
指先にコリコリとした固い感触を感じる度に、私の体温は上昇して行った。
極度な緊張のせいで一時は冷めていた感情が、まるで床に垂らした灯油に点火したようにジワジワと燃え広がって来たのだ。
「あのぅ……」
私は目を閉じたまま、重く漂っていた沈黙を破った。
「腕はもういいです……それよりも、さっきの筋のほうを重点的にお願いできませんか……」
私の声は震えていた。その声に連動するかのように、ゆっくりと立たせた両膝が小刻みに震えた。
産婦人科の診察台の上に寝そべるように両膝を立てると、さすがに男は少し動揺したようだった。
「ああ……はい。では、そっちを重点的に……」
男は声を震わせながら揉んでいた私の左手をソッと布団の上に戻した。
そして、胡座をかいていた足を正座に組み替えると、両膝を立てた私の股間を静かに覗き込んだのだった。
一瞬、男の呼吸が止まった。
ドロドロに濡れた膣に突き刺さったディルドをまともに目にして、まるで人形のように全身を硬直させていた。
そんな男の視線に私の変態性欲が一気に燃え上がった。
このシーンを課長が見ているのだと思うと更に私の変態性欲は熱く燃え滾り、私は男と課長に見つめられながら股を大きく開いた。
男の指が恐る恐る股間に迫って来た。
カエルのように開いた股に走る一本の筋を男は指で押さえ、黙ったままその筋をグリグリと動かした。
揺れる男の手の甲が、膣から飛び出したディルドの底に当たっていた。
膣の中でディルドがグニグニと蠢いた。
ディルドが抜けないようにと必死に膣を締めていると、蠢くディルドが膣壁にグイグイと食い込んだ。
いつしか私はいやらしい声を洩らしていたのだった。
(つづく)
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