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みんなのおもちゃ2

2012/11/17 Sat 04:25

みんなのおもちゃ2



時計の針は九時を指していた。
この町に着く電車は八時五分が最終であり、課長がこの温泉宿に来る手段は既に絶たれていた。

何としてももう一度課長とよりを戻したかった。
課長には家庭があった。私は三十を過ぎても未だ未婚の女だった。そんな状況で二人の関係がいつまでも続くとは思ってはいなかったが、しかし、このタイミングで別れるのはあまりにも残酷過ぎた。
あと一年、いや、あと半年でいいから課長と一緒にいたかった。
だから、二人の思い出の詰まったこの温泉宿を選んだのに、そんな私の最後の願いも課長には届かなかったようだ。

天井にぶら下がる弱々しい蛍光灯は終始ジーっという音を鳴らし、常に脳の一部を強迫していた。ゆっくりと部屋の隅々まで見回し、改めて薄暗い部屋だと眉を顰めた。
以前、課長と泊まった時の事を思い出すと、この部屋はバラ色に輝いていたように思う。キラキラしてふわふわして、そしていい匂いがしていた。
そんなふわふわした部屋の中で、課長は私を荒々しく抱いた。浴衣の帯で手足を縛り、身動きできなくなった私をありとあらゆる体位で犯し、明け方近くまで私の口内と膣内に何度も欲望を放出した。

そんなあの頃を思い出しながら、手の中でディルドを弄っていた。
課長のペニスの太さ、長さ、そして固さを想像しながらディルドを弄っていたが、しかし頭に浮かんで来るのは、専務の茹で過ぎた竹輪のように萎れたペニスと、いつも仮性包茎の皮の中に恥垢を溜めては醤油のような臭いを発していた島尻部長の巨根ばかりで、課長のペニスは全く浮かんで来なかった。
このまま課長の、声も、匂いも、鼾も、咳払いも、そしてあのザラザラとした顎髭の感触も忘れてしまうのではないかと思うと、居ても立ってもいられなくなり、私は思わず携帯電話を握りしめると、そのまま下着を太ももまで下げたのだった。

課長の携帯に電話するのはこれが始めてだった。
今まで課長の携帯には、電話する事もメールする事も厳しく禁じられていたのだ。
ドキドキしながら受話器を耳に押し付けていた。
今、課長は私からのこの着信音を聞いているはずだ、と思うと異様な興奮が胸を締め付け、左手の指で弄っていた乾いていたワレメがみるみる潤んでいくのがわかった。

コールは七回目で留守番電話に切り替わった。
既にワレメはヌルヌルに潤い、何の抵抗も無く人差し指をヌルリと吸い込んでいた。
もう一度電話を掛けた。留守番電話に切り替わる前にオーガズムに達しようと、曲げていた膝をピーンと伸ばし、ゆっくりと横になろうとした時、不意にコールがプッと途切れた。

横になりかけていた体を慌てて起こした。
黙ったまま耳を澄ましていると、受話器の向こうから聞き慣れたテレビ番組の音が聞こえ、それが『ダウンタウンDX』の『視聴者は見た』のコーナー曲だとわかった瞬間、リビングでそれを見ている幸せな家庭が浮かびあがり、日陰の私はおもわず身震いした。

急いでテレビ電話に切り替えた。
切られてしまったらもう二度と電話には出てくれないだろうと焦った私は、「お願いします、もう一度だけ見て下さい……」と携帯電話に囁きながら四つん這いになると、携帯のカメラの前で濡れた陰部を剥き出したのだった。

卓袱台の上に置いた携帯に尻を向け、陰部を弄った。
今、この映像を課長が見ていると思うと、それだけでワレメからは淫らな汁が溢れ、私の指をネトネトにさせてはいやらしい音を響かせた。
四つん這いのまま項垂れながら、ソッと携帯のディスプレイを見た。
黒々とした部分が鮮明に映し出され、その下着に染み付く黄色いシミまでも卑猥に映し出しているのが見えた。
下着の汚れまで課長に見られている事を知り、顔をカッと火照らせながら下唇を噛む私は、激しい羞恥心に襲われていた。
私が恥ずかしがれば恥ずかしがるほど課長は喜んだ。
そんな課長の性癖を知っていた私は、「恥ずかしい……見ないで下さい……」と矛盾した言葉を呟きながら、右手に握りしめていたディルドを口に銜えた。

課長から一言も声を掛けて貰えないまま、一心不乱にディルドをしゃぶりまくった。
この映像を見て興奮した課長が、いつか必ず声を掛けてくれるはずだと信じて、ジュブジュブと下品な音を立てながらしゃぶりまくった。
ドロドロに濡れた膣に三本の指を根元まで入れながら、片手でディルドにコンドームを被せた。
そして「課長、早く入れて、課長、早く入れて下さい」と何度も呟きながら、ディルドの先を膣の入口でぐにょぐにょと蠢かせては、更に卑猥な音を携帯に向けて鳴り響かせた。

ハァハァハァっと、私の熱い呼吸が寒々とした部屋に響いていた。
去年の今頃は、この部屋に二つの熱い呼吸が重なっていた。
しかし今は無情にも私一人の熱い呼吸しか響いていない。
なんとしても、もう一度課長に触られたかった。
アソコを舐められ、太い肉棒を押し込まれ、そして熱い汁を膣にぶちまけて欲しかった。
しかし、受話器の向こうの課長は黙したままで、一向に声を掛けてくれる気配は見られなかった。

思い出して欲しかった。いつも私を抱きながら、「ヌルヌルだ」、「温かい」、「コリコリする」、と、私の膣穴に陰茎を出し入れしながら呻いていたあの頃を思い出して欲しかった。

「ちゃんと見てて下さい……」

嗚咽混じりの声でそう呟きながら、ゆっくりとディルドの底に中指をあて、少しずつ少しずつ中指を曲げた。
まるで座薬を挿入する時のようにディルドがゆっくりと沈んでいった。弛んだコンドームがプチプチプチっとゴムの音を鳴らす。
私の口から、「あぁぁぁぁぁ……」と卑猥な声が自然に洩れ始めると、ワレメはずっぽりとディルドを銜え込んでいたのだった。

机の上に置いた携帯のカメラを意識しながら、結合部分がはっきりと見えるよう尻を突き出した。
根元までずっぽりと入ったディルドを伝い、生温かい汁が私の指にトロトロと垂れた。

この生温かい汁の感触を課長は思い出してくれただろうか。
キミの体液は甘いね、と笑いながら私の陰部に、ヌラヌラと舌を這い回していたあの頃を課長は思い出してくれただろうか。
課長に背後から攻められるのを想像しながら、摘んだディルドを上下に動かし始めた。
ディルドで圧迫される度に、淫らな穴から大量の汁がぶちゅぶちゅと押し出され、汁は陰毛で卑猥な糸を引きながら畳の上に垂れ落ちた。

「もっと、もっと、もっと激しくして下さい課長……」

ハァハァと荒い息を吐きながら腰を振り、ドロドロに濡れたディルドを赤黒い穴の中にスポスポとピストンさせた。
静まり返った日本間には、私の啜り泣きと淫穴が奏でる湿った音だけが淋しく響いていた。
薄暗く湿っぽいこの古い日本間とその音は、まるで昭和初期の悲しい赤線を再現しているようだった。
今、課長が私の淫らな姿を見ている。ダウンライトが温かく灯るリビングで、テレビを見ている奥さんを気にしながらも、課長は私のこの破廉恥な姿を見て欲情しているはずだ。

そう思うと、たちまち絶頂が込み上げて来た。
私はヌポヌポとディルドをピストンさせながら、もう片方の手指をクリトリスに這わせた。
クリトリスはびっくりするくらい大きくなっていた。
キミのクリトリスは赤ちゃんのチンコくらい大きいね、と囁きながら、真っ赤な舌でそれを転がしていた課長の姿を思い出した。

「見て下さい課長、クリトリスが、こんなに、こんなに大きくなってます」

そう囁きながら小指の先くらいある大きなクリトリスを激しく転がすと、たちまち強烈な電撃が脳天を貫き、まるで十階のビルから両手を広げて飛び降りたような、そんな開放感に包まれた。

無意識のうちに凄まじい声をあげていた。
客観的に耳に飛び込んで来るその声は、叫ぶ本人ですら恥ずかしくなってしまうような、そんな卑猥な言葉ばかりだった。
四つん這いのまま失禁した。
最初は、蛇が威嚇するかのようにシャッ! と勢い良く飛び出した黄色い小水だったが、次第に速度を緩めると、それは太ももを伝ってはゆっくりと流れ、古畳をグジョグジョに湿らせていった。

全てを出し尽くした私は、ぐったりとする腰を伸ばしながら起き上がった。
小便で濡れた指で髪を掻き分けると、濡れた畳に転がるディルドを机の上に拾い上げ、携帯カメラを覗き込んだ。
携帯は未だ課長と繋がっていた。
私は携帯を取り、ポツポツと空いた小穴に耳を押し当てた。受話器の向こうではいつの間にかテレビの音は消え、シーンっと静まり返っていた。
「課長……」
しゃがれた声で呟くと、受話器の向こうに、ジッと息を潜めている人間の気配を感じた。
慌てて「課長」ともう一回呟いた。
悲願するかのように「課長……課長……」と何度も呟いた。
しばらくすると、ガサッと何かが擦れる音が聞こえた。
その音が、いつも課長と電話で話す時に聞こえる課長の顎髭が受話器に擦れる音だと気付いた瞬間、今まで私の心に立ち込めていた暗雲が一瞬にして晴れた。

暗雲の隙間から差し込む光りに照らされながら、私は嬉しさのあまり声を押し殺して泣いた。
しかし、この先、再び私の心に、今まで以上に貪よりとした暗雲が込めるとは、この時の私はまだ気付いていなかったのだった。




「質問はするな……」
それが課長の第一声だった。
ヴヴゥンという痰を切る唸りが受話器に響いた。いつも課長は話しをする前には必ずこうして痰を切る。

「何も聞くな。黙ったまま私の言うことを素直に聞くんだ。それが出来ないのなら、電話を切る……」

課長はそう呟いた。受話器の向こうは怖いくらいにシーンっと静まり返っていた。
恐らく、奥さんに見つからないよう書斎の隅で息を殺しながら携帯を耳に当てているのだろう。
課長のその姿を想像すると切なさが込み上げ、胸が激しく締め付けられた。

私は素直に「わかりました」と返事をした。
どうして来てくれなかったんですか、と、その理由だけでも聞きたかったが、しかし、ここで電話を切られてしまったらもう二度と課長の声が聞けなくなるような気がして、怖くて聞けなかった。

「フロントに電話してマッサージを頼みなさい。強く揉んでくれる男のマッサージ師がいいと頼むんだ」

嫌な予感がした。正座する膝に小便が染み込んだ畳がジメジメし、慌ててから膝をズラした。
わざわざ男のマッサージ師を指名する意図が手に取るようにわかった。思わず「もう課長以外の男は嫌です」と口走りそうになったが、電話を切られるのを怖れていた私は慌ててその言葉を呑み込んだ。

「……わかりました」
そう返事をすると、課長はサディスティックな深い溜息を吐いた。そして、乾いた唇を湿らすようにペチャッと唾液の音を立てながら、声を震わせた。

「そのディルドをアソコに入れたままマッサージされなさい……ディルドを入れたままマッサージされるんだ……マッサージされながら一枚一枚服を脱いで裸になれ……全裸になって、素っ裸になって、乳もアソコも、おまんこに突っ込んだディルドも全部見られて、そして滅茶苦茶に犯されるんだ……ハァハァハァハァ……そして、その一部始終を、テレビ電話で私に送信するんだ……」

課長の荒い息が私の耳をくすぐった。
私はそんな課長の声を切なく聞きながら、小陰唇を指で開いた。そして携帯カメラにその桃色の粘膜穴を剥き出しながらディルドをゆっくりと挿入すると、マゾヒズムな口調で「わかりました……」と小さく答えたのだった。

課長の命令を頭に描きながら布団の中で踞っていた。
見ず知らずのマッサージ師に、挿入されたディルドを発見された時の事を想像するだけで、激しい羞恥心が私の胸を締め付けた。
しかし、そんな私の姿を携帯のライブ映像で見ながら興奮している課長を想像すると、いつしかその羞恥心が快楽へと変わり、膣に挟まったディルドをピストンさせずにはいられなくなったのだった。





マッサージを待っている間、既に二度も絶頂に達した。
二度目の絶頂が終わった時、コンコンっと冷たいノックの音が入口のドアに響いた。
私は慌てて布団から飛び起きると課長に電話をした。
課長はワンコールで電話に出た。
受話器から伝わって来る鼻息は、既に興奮している様子だった。

急いで携帯をテレビ電話に切り替えた。
それをテーブルの上に置き、布団が画面に映るようにセットした。

「見えますか?」

そう聞くと、「うん」と答える課長の声がスピーカーから漏れた。

再びドアがコンコンっとノックされた。
レンズがズレないようにソッと携帯から手を離すと、急いで廊下の襖を開けた。
ほんのりとカビ臭い廊下に出ると、和室には似合わない鉄の扉が正面に見えた。
ひと昔前の古い防火扉は、まるで刑務所の扉のように重圧だった。

寒々とした鉄のドアに顔を近づけドアスコープを恐る恐る覗くと、ドアスコープをジッと見つめ返す若い男が立っていた。
私の気配に気付いたのか、男は扉に向かって「マッサージですぅ」と関西訛りで呟いた。
見るからに生意気そうな顔をしていた。

ドアに向かって「はい……」と返事をすると、その微かな腹筋の動きでパンツの中のディルドが動いた。パンツの上からディルドの位置を素早く直しながら、もう一度、ドアスコープから男の顔を見た。
男は、早く開けろよ、と言わんばかりにイライラし、鍵のかかったドアノブをガチャンガチャと回しては、尖らせたくちびるで「ちっ」と舌打ちした。

気が短そうな男だった。
こんな男にコレが見つかれば、犯される前に殴られそうだと背筋が凍った。
鉄の鍵をガタンっと下ろすと、恐る恐るドアを押した。まるで歯医者でドリルを口内に入れられる瞬間のような恐怖が私を襲った。

ドアの向こうで不機嫌そうな男が小さく会釈した。
無意識に膝がガクガクと震えた。
それと同時に膣内のディルドも小刻みに微震したのだった。

(つづく)

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