マゾヒズムな夫婦・前編
2012/11/17 Sat 04:25
春のうららかな午後でした。
築三十五年の平屋の借家から妻を連れ出した私は、家のすぐ裏手にある土手に上りました。
土手の上を走る細い通路を、ぽかぽかした陽気に包まれながら、妻と手を繋いで散歩しました。
遠くに見える赤錆だらけの巨大鉄橋には、ひっきりなしに車が往来し、まるで植物に群がるアブラムシのようでした。
土手の下には雑草だらけの広大な河川敷が広がっていました。
河川敷には、大きな箱型テレビや白い洗濯機といった粗大ゴミが至るところに転がっており、雑草と粗大ゴミの切れ切れには無数の人の影が見えました。
仕事をサボる会社員が土手に寝転がって煙草を吹かしていました。
薄汚れた乞食が不法投棄された粗大ゴミをあれこれと漁っており、乞食がガタガタと大きな音を立てる度に、毛玉だらけの汚犬が狂ったように吠えながら走り回っていました。
川沿では、近所の老人達が何をするわけでもなくウロウロとうろつき回っていました。そんな彼らのおぼつかない足取りを遠くから見ていると、まるで彼らが人肉を求めて彷徨うゾンビのように思えてしまい、おもわず私がクスクスと笑い出すと、妻は不思議そうな顔をしながら私をソッと見たのでした。
雑草だらけの河川敷をしばらく行くと、前方に緑色した大きな野球ネットが見えて来ました。
そこは、本来は近所の中学校の野球練習場なのですが、しかし、部活動が始まる放課後までの間は、近くの巨大マンションに住む不届き者な住人達が、違法にゴルフ練習場として使っていました。
妻の手を引きながら、土手の石階段をゆっくりと下りると、そのまま敷島公園に向かって歩き出しました。
敷島公園というのは河川敷の中にある公園でした。
戦前、ここには巨大なパン工場があったらしく、その工場の名前から今のこの名前がついたようです。嘘か本当かは定かではありませんが、この町に引っ越して来た日に、大家さんからそう聞かされました。
広大な公園にはいくつもの休憩場が点々と設置されておりました。
腰上ほどの仕切りで区切られた三角屋根の休憩場には、五人ほどが座れるテーブルがあり、のんびりと寛ぐには最高のスペースでした。
私は、広大な敷地に点々とする休憩場の中から、ひとつだけポツンと離れた休憩場を選びました。
そこを選んだ理由は、そこに男の人影が見えたからです。
雲ひとつない爽やかな青空に、暗緑色と土色のまだら模様という実に趣味の悪い自衛隊のヘリが、パタパタと小気味良い音を靡かせながら浮かんでいました。
休憩場のベンチには、明らかにここで徹夜していたと思われる無精髭を生やした薄汚い男が下品な鼻鼾をかいて寝ていました。
テーブルの上には空になった缶ビールが三つ転がり、床には卑猥なページが開いたままのエロ漫画雑誌が捨ててありました。
丸められたティッシュが辺りに散らばっている所から見て、もしかしたらこの男は昨夜ここでそのエロ漫画雑誌を見ながらオナニーしていたのかも知れません。
春の穏やかな空気に包まれた清々しい河川敷ですが、しかしその休憩場の中だけは、荒んだ空気が貪よりと漂っていました。
大きな鼾をかく男の寝息には濃厚なアルコール臭が感じられ、その全身からはホームレス独特の饐えた匂いがムンムンと匂って来ました。
そんな男を休憩所の外側から覗き込んでいた私は、同じように私の隣で休憩所を覗き込んでいた妻の顔をソッと見ました。
まるで山賊のような荒々しい男の寝顔を見つめる妻のその目には、絶望の二文字がひっそりと浮かび上がっていたのでした。
最低、最悪、劣悪、どん底。
私の妻というのは、そんな絶望的な状況にエロスを感じるというおかしな性癖を持つ女でした。
それは、縄で縛られたり、蝋燭を垂らされたりという世間一般のSM性癖とは違い、レイプ、陵辱、輪姦、といった特異的な被虐性を好むという、実に危険な変態性欲を胸に潜めていたのです。
これ系の性癖を持つ女には、よく、ブス、デブ、婆ぁ、が多いとされますが、しかし妻はブスでもデブでも婆ぁでもございません。
いや、むしろ『可愛い』と呼べる部類に入る優しい顔立ちで、そのムチムチとした体からは熟した桃のような濃厚なセックス臭がメラメラと漂い、大抵の男なら妻のその肉体、表情、仕草を見ただけで堪えきれない性的興奮に襲われるはずです。
そんな妻は今年で三十二才を迎えます。
年齢的には熟女かもしれませんが、しかし、子供を産んでおりませんので、肌はゴム毬のように弾力性があります。乳房や臀部もムチッと張りがあり、薄ピンクの乳首などは、新鮮なつぶ貝の刺身のようにコリッとしております。
尚かつ、それに増して凄いのが性器の具合です。
確かに、この七年間というもの、妻には凄まじいプレイばかりさせておりますから、性器の容姿というのはそれなりに崩れております。
が、しかし、中身の具合の方はと申しますと、正直申しまして絶品です。本来の締りの良さに加え、ヌルヌルに濡れた生肉がまるで大蛇が絡み付くかのように動き回っては、肉棒をぐにょぐにょと弄ぶのです。
恐らく、妻の穴の中では、どんな竿男でも五分と持たない事でしょう。
妻の顔や体や仕草や穴、そしてその特異的な性癖。
それらは、男を狂わすには充分の毒を含んでいました。
妻の体を一度知ってしまえば、もう他の女では物足りなくなってしまうのです。
その為、ポルノ映画館やハプニングバーなどで妻の体を知った変態達は、麻薬に取り憑かれたかのように、もう一度妻の体が欲しくて堪らなくなるのです。
そして、挙げ句の果てにストーカーと化し、妻の体欲しさに自宅にまで押し掛けてくるようになるのです。
変態男のストーカーというのは、普通のストーカーとは違い、半端ではございません。
ある時など、居留守を使って部屋に閉じ篭っていると、マンションのドアにガソリンをぶっかけられ、危うく焼き殺されるところでした。
またある時などは、五人の変態達がガラスを破って部屋に進入し、そのまま一週間監禁されてはボロ雑巾のようになるまで犯され続けた事もあります。
ですから私達夫婦は、定期的に引っ越さなければなりませんでした。
偽名を使いながら、北海道から九州まであらゆる町を点々としております。
が、しかし、それだけのリスクを背負っていても、それでも私の性癖と妻の性癖は変わりませんでした。
相も変わらず、移り住んだその土地土地のポルノ映画館や深夜の公園に出没しては、妻は犯され、私はそれを見て興奮しております。
そう考えますと、被虐性欲を互いに持つ私達夫婦にとっては、変態ストーカー達から点々と逃げ回るこのリスクというのは、ある意味『快楽』のひとつなのかも知れません。
つまり私達は、身も心も生活も、最悪な状況に追いやられればやられる程に快楽を得るという、究極のマゾヒズムな夫婦なのです………。
上空でパタパタと乾いた音を奏でていた自衛隊のヘリはいつしか消え、代わりに、遠くのグランドから野球部の少年達の元気な掛け声が春風に乗ってやって来ました。
私は、狭い休憩場の中を愕然としながら見つめている妻の手を引き、休憩場の入口へと回りました。
ベンチにゴロリと横たわる男の寝息を背後に、私は妻の足下にソッとしゃがみ込むと、そのまま妻のワンピースの裾を捲り上げました。
穏やかな春の日差しが妻の下腹部を照らし出しました。真っ白な肌に黒い陰毛が卑猥にワサワサと渦巻いています。
「そのままそこにしゃがんで股を開きなさい……そして、あの人に向けておしっこするんです……」
そう微笑みながらゆっくりと立ち上がると、妻は私とは反対にそこにしゃがみました。
妻の顔は引き攣っていました。コレ系の変態行為を何度も経験し、もはや馴れているはずの妻ですが、しかし、相手が素人だと、やはり緊張しているようです。
これが、ハプバやネットで知り合ったような『合意の相手』であるのなら、そこに恐怖や緊張は生まれないでしょうが、しかし、相手が何も知らない素人の場合では、凄まじい恐怖に襲われます。
それは、相手がどんな人物かわからないから怖いのです。
相手が我々と同じ変態ならばいいのですが、しかし、もしかしたらそれを見るなりいきなり激怒し、髪を掴まれ、顔面をおもいきり蹴飛ばされては、そのまま死に追いやられる可能性もございます。
又、もしかしたら、携帯で警察に通報されたり、大声で騒がれたりという危険性もございます。
だから何も知らない素人を相手にする時は、いつもこの『もしかしたら』の恐怖に襲われるのですが、しかし、その恐怖もまた私達夫婦にとっては最高の快楽なのでございました。
私は、震える妻の背中を見つめながら休憩所を出ると、休憩所を囲む仕切りの影にソッと身を潜め、しゃがんだまま雑草を掻き分けながらベンチで寝ている男の背後に回りました。
仕切りに顔を押し付けながらソッと休憩場の中を覗くと、私のすぐ真下でグーグーと鼾をかいている男がいました。そして、そんな男に向けて、しゃがんだ股をM字に開いている妻の姿が真正面に見えました。
妻は、仕切りの影に私を確認すると、M字に開いた股の中に両手を這わせ、グロテスクなワレメを両手で開きました。
赤く爛れた内部が卑猥に剥き出されました。まるで深海魚が大きく口を開いたようなそのワレメは、既にいやらしい汁でギラギラと輝いています。
妻は私の目を恐る恐る見上げると、決心するかのように大きく深呼吸しました。
そして、息を吐くと同時に震える下唇をキュッと噛みしめると、大きく開いたワレメの奥から、いきなりシュッ! と小便を噴き出したのでした。
シュゥゥゥゥ………っという、まるで蛇が威嚇するような音が、仕切りにグルリと囲まれた休憩場の中で響きました。
さっそくその音と妻の気配に気付いた男がムクリと頭を起こしました。そしてベンチに寝転がったまま、「マジかよ」と、呆然と呟きました。
男の背後に潜んでいた私は、慌てて仕切りの壁に身を隠しました。
もし、男に見つかれば、素直に「妻を犯して下さい」と頼もうと思っていました。しかし、もし見つからなければ、そのまま妻が陵辱されるのを、ここからこうして覗いていようと思っていました。
私としては、できれば、このまま見つからずに妻が犯されるシーンを覗いていたいのが本心です。
股をM字に開きながら小便を続ける妻に、男は慌ててベンチに座りながら、「ダメだよ、こんなとこで小便しちゃ……ほら、辺りがびしょびしょじゃないかよ……」と、叱るように言いました。
独特な訛りのある声でした。その声からして、恐らくこの男は、私と同年代の四十代前半ではないかと思われます。
きっと、東北方面から派遣でやって来たのでしょう、しかし、あまりの鈍臭さに即刻『首切り』され、家も職も金も無く、途方に暮れながらふらふらと彷徨い歩いているホームレスの類いではないかと想像できます。
仕切りの壁から中をソッと覗いて見ると、前屈みになる男の赤いTシャツの背中が見えました。
男は、「ダメだよこんなとこで小便しちゃ……」と、ブツブツと何度も同じ言葉を繰り返しながら、しゃがんでいる妻の股間を覗き込んでいました。
大きく開かれた性器からシャーシャーと噴き出していた小便が、次第に勢いを無くしていきました。
チョロチョロと流れる小便は妻の丸い尻を伝わり、コンクリートの床にポタポタと雫を垂らしています。
そんな小便の雫を、ぐったりと項垂れながら見ている妻のその表情には、マゾ特有の絶望的な欲情がはっきりと浮かび上がっておりました。
見ず知らずの男に放尿している姿を見られ、尚かつ、開いた性器をマジマジと覗かれているのです。それは、マゾな妻には堪らない興奮なのです。
「あんた、ソコ、何で拭ぐんだ? 拭ぐもの持ってきてんのか?」
男はボサボサの髪をガシガシと掻きながら言いました。そんな男の髪は、頭皮の油でネトネトに輝いております。
妻はそんな男に対し、項垂れたまま首を左右に振りました。
すると男は、「しゃあねぇべ……」と呟きながらベンチの隅に置いてあったクリネックスティッシュの箱を鷲掴みすると、「貸してやっぺよ」と、ティッシュを二、三枚抜き取りながら言いました。
妻がゆっくりと顔を上げました。
大きな目が恐怖で潤み、いやらしい唇が微かに震えています。明らかに、この恥辱に性的興奮を感じている表情です。
そんな妻が、「すみません……」と小さく呟きながら、恐る恐る男に手を差し出しました。
すると男は、抜き取ったティッシュの束を妻の手には渡さず、そのまま妻をニヤニヤと見つめながら、「俺が拭いてやっから、ケツ、向けてみな」と、声を震わせながら言ったのでした。
仕切りの影からその光景を見ていた私は、これはおもわぬ獲物を見つけたとニヤリと微笑みました。
馬鹿で田舎者でスケベ。精力的にも強い年齢で、攻撃的に妻の体を貪るタイプ。特に不潔なところが良く、不潔であればあるほど、妻への被虐度は増していきます。
更にこの男の良い点は、全く警戒心がないところです。
普通なら、まずは回りに人が居ないかを確かめるものです。近くに男が潜んでいないか、通行人はいないか、はたまた、もしかしたらこれはAVの隠し撮りなのではないかと疑うのが普通です。
しかしこの男はそれを考えていません。久々に見た『生のオマンコ』に興奮してしまい、そこまで頭が回らないのです。
まさに動物。まさに獣。こんな男が、私達夫婦にとって理想の獲物といえるのでした。
そんな男はティッシュの塊を手にしたまま、妻がゆっくりと起き上がるのを見ていました。男の肉体労働者的な逞しい肩が、ハァハァと荒い呼吸で揺れています。
立ち上がった妻に、男は大きなテーブルを指差しながら、「この上で四つん這いになったらいい、そのほうが拭きやすい」と、下品に笑いました。
妻はその恥辱なシーンを生々しく想像したのか、一瞬、表情に陰りを見せました。しかし、その陰りはマゾヒズムな妻を興奮させている証拠です。
妻はゆっくりとテーブルによじ登ると、男に言われたままそこに四つん這いになり、ベンチに腰掛ける男に向かって尻を突き出しました。
男は剥き出された尻を見るなり、一瞬、武者震いしました。
「マジかよ……」と独り言を呟きながら、尻肉の谷間でキュッと口を閉じている赤いワレメにティッシュの塊を押し付けました。
カサカサカサ。
男はいいかげんにソコを拭くと、すぐにティッシュを離し、再び現れた赤いワレメを覗き込みました。
「小便、ちゃんと拭きとったのに、まだ濡れてるべさ……」
男はそう笑いながら、テーブルに顔を押し付けながら羞恥に耐えている妻を見ました。
男は、妻がこっちを見ていないかどうかを確認しているのか、何度も何度も妻と陰部を交互に見つめ、そして妻が見ていない事を知ると、妻にバレないようにソッとワレメに顔を近づけ、まるで犬のようにワレメの匂いをクンクンと嗅いでいます。
「まだ濡れてるみたいだしよ、もうちょっと奥まで拭いてみっぺ」
男はそうニヤニヤと笑いながら妻の尻に手を置きました。
男の手が尻に触れたと同時に、妻の腰がヒクッと動きました。恐らく妻は、そのまま尻を叩かれたいと思っているはずです、そしてバシバシと叩かれた挙げ句、太い肉棒を尻の穴に突っ込んで欲しいと願っているはずです。
調教されている妻は、そんな女なのです。
男は左手で尻肉を押し広げました。
黒ずんだ小陰唇がペチャッと開き、中から桃色した内臓が顔を出しました。
フー……フー……フー……、と、マラソンランナーのような呼吸をする男は、テラテラと濡れ輝く膣の内部を間近で覗き込みながら、もう片方の手でワレメの右端を広げたのでした。
(後編へ続く)
《←目次へ》《後編へ続く→》