変態女装小説「夜蟲5」
2012/12/02 Sun 00:00
男のその目は、まるで、道端に落ちているパンを拾って食べる乞食を見ているような、そんな蔑んだ目をしておりました。
僕は、頭取コースを約束されている大手都市銀行のエリートです。一方のこの男は、千葉の田舎町のタクシーの運転手です。年収、学歴、立場、どれを比べても、この男の社会的地位は僕よりも遥かに低いのです。
しかし、今僕は、そんな男の前で震えております。この薄汚い公衆便所で、飛び散った小便が蓄積されたタイル床に膝を付く僕は、便器でふんぞり返っているこの低所得な男の汚いペニスを、今、しゃぶろうとしているのです。
この状況に、マゾ的要素の強い女装変態な僕は、身震いするほどの欲情を感じておりました。
ハァハァと荒い息が止めどなく漏れ、ウイッグから垂れる汗はサングラスを潜っては、まるで涙のようにして頬に流れて行きました。
男に向けていた視線をゆっくりと下ろしました。
亀頭に付着する恥垢は、既に乾いてカピカピになっておりましたが、それでも尿道から溢れる我慢汁が亀頭をギラギラとエネルギッシュに輝かせておりました。
そんな亀頭に顔を近づけました。そして唇を丸く開いたまま男の股間に顔を埋めました。
唇に亀頭が触れた瞬間、それをスムーズに迎え入れようと舌を大きく突き出しました。
僕の舌の上に生暖かい亀頭が乗りました。そのままゆっくりと顔を進めて行くと、舌に尿道が滑り、そして竿が滑り込んできました。
それはまるで、蛇やトカゲといった爬虫類が口の中に潜り込んで来たような、そんな不気味な感触でした。今までフランクフルトで疑似フェラしていたあの感触とは全く別物でした。
竿の途中で顔を止めました。そして陰毛の中に指を入れ、素早く根元の部分を固定すると、はち切れんばかりの亀頭にまったりと舌を絡めました。
恥垢のざらざらした舌触りと、亀頭のコリコリした食感が、堪らなく僕の脳を刺激しました。
円を描くようにしてカリ首の周囲を舌先でなぞると、舌先に掬われた恥垢が唾液と一緒になって舌裏に溜まりました。
僕はそれを迷う事なくゴクリと飲み込みました。
見ず知らずの男の最も不潔な老廃物が、食道を通り胃の中へと流れ込んで行きます。
クラクラと目眩を感じました。あまりの興奮により、しゃがんでいる膝がガクガクと震え、もはや腰が抜けそうな状態でした。
僕はそんな状態になりながらも、必死に肉棒を銜え込んでは顔を上下に動かしていました。
じゅぶ、じゅぶ、じゅぶ、っという音が、頭の中で繰り返し響いておりました。今まで女にしゃぶらせながら客観的に聞いていたあの音を、今の僕は主観的に感じているのです。
激しく顔を動かすと、男のペニスは、まるで水を得た魚のようにして僕の口内で暴れ回りました。僕はそれを逃さないようにと必死に唇を窄め、吸い付き、そして舌で押さえつけました。
そんな僕の必死な口の動きが男を刺激したのか、男は「おおお……」と深い息を吐きながら僕の頭を両手で押さえつけました。
「このまま、口の中で出してもいいの?……」
男は声を震わせながら僕を見下ろしました。
僕はソッと男を見上げながら、コクンっと目で合図しました。
するとそれを見た男は、またしても「あぁぁぁぁぁ」と息を吐き、僕のウイッグを愛おしそうに撫で回しました。
そんな男の表情に僕は共感しました。その瞬間を目前にした今が、最も精神が高ぶっているという事を、男の僕は知っていたのです。
ですから僕は、これでもかというくらいに亀頭に舌を絡ませてやりました。狂ったように肉棒に吸い付き、睾丸や太ももを指で愛撫し、そしてギュッと唇を窄めながら、根元から亀頭まで激しくピストンしてやりました。
激しく顔を動かしておりますと、汗で滑ったサングラスがズルッとずれました。僕はサングラスを取りました。もはや、素顔を見られようと実名を知られようと、どうでもよくなっておりました。それくらい僕は興奮していたのです。
ぶちゅ、ぶちゅ、というリズミカルな音を立てながら、僕もしゃがんだ股間で自分のペニスをシゴいておりました。
しかし、すぐにイキそうになってしまう為、その度に慌てて手を離しておりました。
(できる事なら、男の精液を口で受け止めながらイキたい……)
そう思いながら僕は、その瞬間を狙っていたのです。
すると、便器に跨がる男の太ももが、次第にヒクヒクと震えてきました。
男は跨いでいた足を伸ばし、黒いサンダルを履いた足首をピーンっと引き攣らせています。
(そろそろだな)と、そう思った瞬間、いきなり男が「あっ」と小さく叫びながら、便座に跨がる腰を仰け反らせました。
男は天井を見上げながら「いくっ」と呟きました。そして「はふっ!」というスタッカートな息を吐き出すと同時に、僕の口内に射精したのでした。
僕は必死にペニスに食らい付いていました。
初めての口内射精に感動する暇などありませんでした。
ビュっと飛び出した精液の速度は思った以上に激しく、それをモロに喉ちんこで受け止めてしまった僕は、咽せそうになるのを堪えるだけで精一杯なのでした。
「あぁぁぁぁぁ……すげぇ……」
男はそう唸りながらも、まだまだ僕の口内に精液を注ぎ込んできました。射精というのはこんなに長いものだっただろうかと、そんな事を考えながらも、僕は口内に溜まる精液を一滴も漏らさないよう必死になっていました。
ようやく射精が止まると、男は小さな溜め息と共に「いっぱい出たでしょ」と笑いました。
僕は精液が漏れないよう、肉棒に唇を窄めながらコクンっと頷きました。
すると男は、僕の頬を優しく撫でながら、「口の中、見せてよ」と囁きました。
僕は唇を震わせながらゆっくりと口を開きました。しかし、ヌポッとペニスが抜かれると同時に、せっかく溜めておいた白い液体が唇の端にドロっと垂れてしまったのでした。
男は「うわぁ……最近溜まってたから凄い量だね」と笑いながら、僕の口の中を興味深そうに覗いていました。
僕はそんな男に見られながら、その白い液体をぺちゃぺちゃと舌で掻き回しながら味わいました。そして、強烈な苦みを感じながらも、一息にそれをゴクリと飲み込んだのでした。
しかし、粘着力のある精液は、そう簡単に飲み込む事ができませんでした。粘りのある精液が喉にくっつき、まるで痰が絡んだように苦しいのです。
僕は慌てて「ヴヴヴヴっ」と喉を鳴らし、喉に絡み付く精液を払い除けようとしました。しかしそれでも精液は流れて行かないため、咳いたり、唾を流し込んだりと色々試しておりました。
すると、トイレットペーパーでペニスをカサカサと拭いていた男が、「あんたはイかなくてもいいの?」と聞いてきました。
そこで初めて僕はまだ自分がイっていないことに気が付きました。
あれほど、男の精液を口で受け止めながら射精しようと頑張っていたのに、最後の最後でとんだ大失態を演じてしまったのでした。
すると、不意に、個室の外から誰かの足音が聞こえてきました。
瞬間、僕と男の間に緊張が走りました。二人は見つめ合ったまま身動きせず、ジッと息を潜めていました。
しばらくすると、いきなりシャカシャカシャカという歯磨きの音が聞こえてきました。
そのとたん、男は止めていた息を「ふーっ」と吐き出し、ほっとした表情で「乞食だ」と笑ったのでした。
静まり返った公衆便所に、シャカシャカシャカシャカシャカシャカと歯磨きの音が響き、時折、「カー……ペッ!」と何かを吐き出す下品な唸りが響いておりました。
僕はそんな音を聞きながら、自分の失態に愕然と項垂れていました。しかし、顔は項垂れていても、股間のペニスはこれでもかというくらいに勃起しております。
「手でイカせてあげようか?」
不意に男がボソッと呟きました。
「いいんですか?……」
僕がソッと顔を上げると、男は「当然だよ。高い金、貰ってるんだし」と優しく微笑みました。
僕はゆっくりと立ち上がりました。そして男に振り返りながら「どうせなら……」と呟きました。
「なんです?」
「……個室の外でやってもらえませんか……」
すると男は一瞬、困惑の表情を浮かべました。
「でも、乞食がいるよ?」
「……ダメですか?」
「いや、私は別にかまわないけど……本当にいいの?」
僕は静かに頷きながら「人に見られたいんです」と答え、そのまま個室ドアの鍵をガタンっと開けたのでした。
洗面所では、明らかに乞食だとわかる男が、口の周りを泡だらけにしながガシガシと歯を磨いておりました。
個室から出るなり、乞食はジロッと横目で僕を睨みましたが、しかし、ここではこんな光景は珍しくないのか、乞食は知らん顔して歯磨きを続けていたのでした。
僕は、敢えて乞食から見える位置に立ち止まりました。そして立ったまま静かにスカートを捲り、勃起するペニスを突き出すと、男に向かって「お願いします」と小さく呟いたのでした。
男はニヤニヤと笑いながら、僕のペニスを上下に動かしました。
さすが男だけあって、彼は男の感じる部分を心得ていました。カリ首を指に挟みながら、亀頭中心にズリズリと擦ってきます。
僕は、立ったまま膝をがくがくさせ、そして腰をコキコキとくねらせながらハァハァと荒い息を吐き出しました。
僕は激しく興奮しておりました。薄汚い公衆便所で、見知らぬタクシー運転手に手こきされる姿を乞食に見られる女装中年、というこの色情的で猟奇的なエログロナンセンス状態に、僕は小便が漏れそうなくらい感じておりました。
「見慣れねぇ顔だけど、どこの雑巾だよ?」
突然、乞食が男に話しかけてきました。乞食は洗面所に真っ黒な足を乗せ、足の指と指の間を水道の水で洗いながら僕をジロッと睨んでいます。
因に、「雑巾(ぞうきん)」というのは、この辺りで使われている隠語らしく、オカマの事をそう呼ぶらしいです。ウリ専を「ボロ雑巾」と呼び、素人を「まっさら(新品)」と呼ぶらしく、この時も男は、「まっさらの素人さんだよ。趣味なんだってさ」と乞食に答えていました。
「へぇ〜……素人さんがこんな危ねぇ所に来るなんて珍しいねぇ……」
乞食は、濡れた足を真っ黒なタオルで拭きながらそう笑いました。
「俺が連れて来たんだよ。ついさっきタクシーん中で誘われたんだけどね、でもタクシーじゃラブホとか入れねぇからさ、だから仕方なくここに連れて来たってわけさ」
男がそう答えると、乞食は再び「へぇ〜……」と言いながら僕を見つめ、何やら意味ありげな薄気味悪い笑みを浮かべました。そして、タオルで拭き取った足にボロボロのサンダルを履きながら、「って事は、あの公園の前に止まってるシータクはアンタのかい」と男に聞きました。
「そうだよ」
「なんかよぅ、車ん中でサイレンみたいなのがピーピーと鳴ってたぜ」
「うそ!」
ペニスをシゴく男の手が止まりました。
「やべぇよ! それ本社からの呼び出し無線だよ!」
そう慌て始めた男は、「早くイッてくれ、頼む」と言いながら、再び僕のペニスをシゴき始めたのですが、しかしそれはヒステリックな援交女子高生のような酷く乱暴なシゴき方であり、おもわず僕は「痛っ」と呻いては腰を引いてしまったのでした。
「おいおい、そんな乱暴にしたら可哀想じゃねぇか。どら、俺が代わりにやっててやっから、あんた無線に出てこいよ」
乞食はそう言いながら僕に近づいてきました。
乞食のボロボロのサンダルがズルズルと近づいて来る中、男は咄嗟に「ごめんね」と僕に謝りました。そしてそのままスタスタと入口に歩き出し、すれ違う乞食に「悪ぃな」と一言告げると、猛ダッシュで公衆便所を出て行ったのでした。
そんな男の後ろ姿を愕然と見ていた僕の鼻を、何やら異様なニオイが襲いました。
はっ、と気づくと、既に乞食は僕の隣に立っていました。貪よりとした濁り目で僕を睨んでいる乞食からは、猫の糞のようなキツイ匂いがプンプンと漂ってきました。
「ほら、チンポコこっちに向けろ。代わりにやってやっから」
乞食はそう言いながら、ガサガサの手を出してきました。
「でも……」
恐怖を感じた僕がそう戸惑っていますと、乞食は「あいつはもう帰っちゃ来ねぇよ」と、ポツリと呟きました。
その瞬間、走り去って行くタクシーのライトが、暗い公園に反射するのが見えました。
それを見たとたん、僕の恐怖は更に膨らみました。
見知らぬ街の不気味な公園の公衆便所に置いてきぼりにされ、まして、今、僕の目の前には、日本猿のような凶暴な目をした中年乞食が、チンポコをシゴいてやるからと、薄汚い手を出しているのです。
背筋がゾッとしました。
このままここで惨殺されるのではないかという恐怖が、僕の脳をジリジリと締め付けたのでした。
(つづく)
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