変態女装小説「夜蟲6」
2012/12/02 Sun 00:00
危険な公衆便所には、ポタポタと垂れる水道の音と、夜蟲が誘蛾灯に焼かれるジジジっという音だけが延々と続いていました。
そんな公衆便所の小便器の前で、言葉を失くしたまま立ちすくんでおりますと、乞食は、「はぁ……」と小さな溜め息をつきながら、そのガサガサの手で僕のペニスをギュッと握ってきました。
「……怖いのか?……」
乞食はゆっくりとペニスを上下させながらそう呟きました。
「……怖い……です……」
「でも立ってるぜ……」
乞食はそうニヤリと笑うと、もう片方の手を僕のスカートの中に入れてきました。そして僕の尻肉をギュッと鷲掴みにすると、そのままモゾモゾと尻のワレメを弄って来ました。
「やめて下さい……」
僕は乞食の手から逃れようと必死に尻を蠢かせました。
しかしそれは本気ではありませんでした。
そうです。恐怖がレッドゾーンに達した僕は、更に激しい被虐性欲に駆られていたのです。
乞食のガサガサとする指が、僕の肛門をガリガリと乱暴に引っ掻きました。
乞食は僕を背後から抱きしめ、左手で尻を弄りながら右手で僕のペニスをシゴいていました。
僕のうなじを乞食の臭い舌がネロネロと這い回りました。乞食の吐く息は生ゴミそのもののニオイであり、肩でズリズリと擦れる無精髭はまるでヤスリのようでした。
「もうイヤです、やめて」
僕は、敢えて女言葉で乞食の手から逃れようとしていました。
そんな自分の女言葉が、更に僕の脳を刺激し、興奮を与えてくれたからです。
「何がイヤだよ……ん?……何かがヤメてだよ……こんなにチンポ汁垂らしてるくせしやがって……」
乞食は、僕の耳元でそう唸りながらペニスをしごく手を更に早めました。
そんな僕のペニスの先からは、ぴちゅ、ぴちゅ、ぴちゅ、っといういやらしい音が響いておりました。乞食が言うように、僕の我慢汁は、あのタクシーの運転手の時よりも更に激しく溢れていたのです。
そんな自分に堪らなく興奮した僕は、背後の乞食にしなだれながらも、「あぁぁぁ、いや、もう無理です」と、女のように喘いでいました。
すると乞食は、「イキそうか? ん? このままピュっと出すか? ん?」と僕の頬をベロベロと舐め出しました。
「ああああ、ピュっと出そうです……精子がいっぱいピュっと出そうです……ああああ、もう限界です……」
そう唸りながら天井を見上げるなり、いきなり乞食が僕の顔を後ろに向け、僕の唇の中に舌を入れてきました。
乞食のドロドロとした舌が僕の口内で激しく蠢きました。ごぼごぼごぼ……という不気味な音が僕の口内で響きました。それはまるで、排水溝に溜まっていた水が抜けて行くような、そんな不気味な音でした。
初めて男にキスをされました。
しかも相手は、前歯がガタガタに欠けた薄汚い乞食です。
この地獄のような惨劇に、僕の被虐性欲はたちまちレッドゾーンを振り切りました。
そして、激しくしごかれるペニスの先からは、濃厚な精液が「ぷしゅっ」と音を立てて飛び出したのでした。
乞食は「うぐうぐ」と唸りながらも更に僕の口内に舌を激しく動かしていましたが、しかし、射精したペニスをしごくその手は次第に速度を弱めて行きました。
パンパンに溜まっていた精液を全て出し尽くした僕は、未だ乞食の舌で口内を弄られながら、その余韻に浸っていました。
ぶちょ、と音を立てながら乞食が舌を抜きました。そして個室の壁に飛び散った大量の精液を見ながら「相当溜まってたんだな」と下品に笑ったのでした。
抱きしめられていた乞食の腕から解放された僕は、やっぱりこの男にも二万円くらいやるべきだな、と思いながら、個室のタンクの上に置いたままのバッグを取ろうと個室に入りました。
そしてバッグに手をかけた瞬間、いきなり個室のドアがバタン! と閉まったのでした。
「えっ?」と振り返ると、そこには乞食が立っていました。
乞食はいきなり僕の胸ぐらを掴みました。そして座った目で僕を睨みながら「しゃぶれ」と唸り、僕を床にねじ伏せたのでした。
床に膝をつかされた僕の目の前に、悲惨なペニスがヌッと反り立っていました。
ペニスの竿は、まるで水虫のようにボロボロと皮が剥がれ、その赤く爛れた患部はジクジクと膿んでおりました。
そして紫色の亀頭には、赤い湿疹のようなものがポツポツと広がり、ベロリと爛れた尿道からは、黄色い膿汁がドロリと滲み出ておりました。
それはまさに病んだペニスでした。その病気がただの皮膚病なのか、それとも悪性の性病なのかはわかりませんが、とにかくそのペニスは臭く、そして目を背けたくなるような無惨な有り様でした。
おもわず僕の口から「うわっ」と言う声が漏れました。
しかし、アゴが震えていたため、その声は「あわわわわわ」と響きました。
「ほら、ベロベロに舐めろよ」
乞食がそれを僕の唇に押し付けた瞬間、僕はサッと顔を背けました。
すると乞食のボロボロのサンダルの先が、ドスっ! と鈍い音を立てて僕の腹に食い込みました。
「うっ」と腹を押さえて踞ると、すると今度は乞食のパンチが僕の頭や背中に滅茶苦茶に連打されました。
「早くしゃぶれって! 早くしゃぶれって! 早くしゃぶれって!」
乞食はそう繰り返しながら叫びました。
乞食のその目は、まるで気が狂った日本猿が威嚇しているような、そんな病的な目でした。
乞食は散々僕を殴ると、ハァハァと肩で息をしながらも、そこに踞る僕の顔を上げ、もはや観念している僕の唇の中に無惨なペニスを入れて来ました。
口の中でピストンするそれは、カサカサに乾いてひび割れた団子のような食感でした。ペニスが動く度に爛れた皮が口の中で剥がれ、それが唾液と一緒に喉に滑り込んで行きました。
乞食は、ニヤニヤと気味の悪い目で僕を見下ろしていました。
そんな僕の目の前に乞食の陰毛が迫っていました。ふと、その陰毛の中に米粒ほどの小さな虫が無数に張り付いているのが見えました。
それがいわゆる『毛ジラミ』という虫だと気づいた僕は、猛烈な吐き気に襲われ、「ぐえっ!」と嗚咽しながらペニスを吐き出してしまったのでした。
そんな僕を、乞食は怒る事無くニヤニヤと笑いながら見てました。
「口でイかせてくれねぇのなら、穴でイかせてもらうしかねぇなぁ」
そう呟くと、乞食は僕をその場に立たせました。
そしておもいきり僕の頬をバチン! と殴り、「ぎゃーぎゃー騒ぐと、仲間連れて来て殺しちまうからな」と、病的な目で凄むと、そのまま僕を便器の上に腹這いにさせたのでした。
スカートを捲り上げられ、突き出した尻を乱暴に舐められました。
乞食のナメクジのような舌が、僕の肛門や睾丸の裏を満遍なく這い回りました。このまま肛門を犯されるのだろうと絶望にくれながらも、それでも僕のペニスは最高潮に勃起しておりました。
不意に乞食は個室のドアを開けました。そしてドアが閉まらないよう隙間に足を挟んだまま体を半分外に出すと、何やら個室の壁をガサガサと鳴らし始めました。
いったい何をしているのだろうと、恐る恐るそこに視線を向けてみますと、なんと乞食は、先ほど僕が壁に飛ばした精液を手の平に掬っていたのでした。
そして乞食は、右手に掬った精液をドロドロさせながらドアを閉めると、それを僕の肛門に塗り込み始めたのでした。
「おまえ、処女だろ」
乞食は、そう笑いながら僕の肛門に指を入れてきました。
「そうです。許して下さい……」
本気で脅えていた僕からは、もはや女言葉は消えていました。
「ビビってんのか?……へへへへ……でもよ、ビビってる割には、おまえのチンポコ、ピコピコしてるぜ」
乞食はそう言いながら、僕の勃起するペニスに僕の精液を塗り込み、そしてくちゅくちゅといやらしい音を立てながらシゴき始めました。
「心はビビってても体は求めてるんだよ……大丈夫よ、痛くしないからケツの力を抜け……」
そう笑う乞食は、一本だった指を二本増やし、三本の指で肛門を押し広げました。
便器に腹這いになっていた僕が「ちょっと待って下さい!」と、慌てて叫んだ瞬間、乞食は亀頭の先をそこに嵌め込み、そして一気に三本の指を抜いたのでした。
僕の肛門括約筋は乞食の亀頭をパックリと挟んでいました。
焦った僕が「あっ」と背筋を捩らせようとすると、乞食は逃がしてなるものかと一気に腰を突いてきました。
ビリビリビリっという音が脳に響き、強烈な痛みが肛門から脳天に貫きました。
「ぎゃっ!」と叫びながら便器のタンクにしがみつくと、乞食はそんな僕の体を凄い力で押さえつけながら「痛いのは最初だけだって!」と唸り、そのままスコスコと腰を動かし始めたのでした。
カタン、カタン、カタン、カタン……。
便器のタンクの蓋がリズミカルな音を立てていました。
やっと強烈な痛みから解放された僕は、そんな陶器の音を聞きながら、便器の裏に飛び散っている誰かの大便をジッと見つめていました。
醜い肉の塊が僕の肛門を出たり入ったりしております。
巨大な座薬がヌルリと滑り込んで来た感覚と、太いウンコを放出するような感覚が内臓の中で延々と続いています。
強烈な痛みからは解放されましたが、しかし、乞食のペニスの角度が変わる度に、また違う痛みが脳を襲いました。
その度に僕は「うっ!」と仰け反るのですが、しかし乞食は、僕が感じているのだと勘違いし、更にその部分を突いてくるのでした。
僕は便器の裏にこびりついた誰かの大便をジッと見つめながら、ひたすら耐えていました。早く終わってくれないかとそればかりを念じながら、便器にしがみついておりました。
乞食はそんな僕の尻をぴしゃぴしゃと叩き、そしてスリスリと撫で回しながら、「気持ちいいだろ……気持ちいいだろ……」と勝手な事をほざいておりました。
そんな乞食の身勝手な言葉をジッと聞いていた僕は、ふと、先日、飯島君から買った、あのモデルクラブの淫売女を思い出しました。
そうです。まさにあの時の僕はこの乞食で、そしてあの時の彼女は今の僕なのです。
あの時彼女は、どれだけ僕が変態な事をしようとも何一つ抵抗しませんでした。それどころか、あの状況の中、僕を喜ばせようと必死に演技をしていたくらいでした。
僕は、汚い公衆便所で乞食にオカマを掘られながら、心から彼女の偉大さに気づきました。そして同時に、彼女の真似は、僕ができる次元ではない事に改めて気づかされたのでした。
まるで拳銃を打ち込まれたように、頭にぽっかりと穴が開いたような感じでした。
あれだけ高揚していた女装も今では忌々しく、一刻も早くそれらを脱ぎ捨てたいと心からそう思っていました。
僕の尻で、乞食が「ふぁん………」という情けない声を漏らしました。
それと同時に、肛門に生暖かい液体がにゅるにゅると走るのがわかりました。
乞食の腰の動きが次第に穏やかになりました。
肛門からやっとペニスが抜き取られました。
ヌポっと蓋を抜かれた肛門から大量の精液がドロドロと溢れ出すのがわかりました。
「はぁ………」という乞食の溜め息が、糞尿漂う個室に重く広がったのでした。
走り去る乞食の足音を遠くに聞きながら、床に転がるサングラスを拾いました。
今までに無い激しい嫌悪感に襲われながら乱れたウイッグを直し、もう二度と女装はしないと心に誓いながら個室を出ました。
ドアを開けた瞬間、隣の個室のドアの前にスーツを着たサラリーマン風の男が呆然と立っておりました。
男の下半身は裸でした。ズボンもパンツも履かず、細い足首に黒い靴下だけが矢鱈と目立っていました。
そんな奇怪な男は、個室から出て来た僕からソッと顔を背けると、まるでそこを見て下さいと言わんばかりにスーツの裾を両手でたくし上げました。
きっとこの男は、隣の個室から僕が乞食に犯されるのを見ていたのでしょう。そして、下半身を露出しながら僕が個室から出てくるのを待ち伏せていたのです。
見た所、男は僕と同年代でした。その高そうなスーツや黒光りする革靴からして、会社ではそれなりの立場だろうと思われます。
僕はそんな男に、僕と同じニオイを感じました。
きっと彼も、抑圧された毎日の中で、必死に逃げ場所を探しているのでしょう。
小便器横の磨りガラスに、トチ狂った一匹の巨大な蛾が何度も何度も体当たりしておりました。本気でその分厚いガラスが破れるとでも思っているのか、巨大な蛾はゴツゴツと鈍い音を響かせながら何度もチャレンジしております。
それを破った所で、その巨大な蛾にいったい何が待ち受けているというのでしょう。命を賭けてそれを破った所で、彼を待ち受けているのはこの糞尿漂う排泄場なのです。
僕は、そんな蛾と男を同時に見つめながら、僕もキミもあの蛾と同じだね、と心で呟きました。
男は小刻みに唇を震わせながら、まるで廊下に立たされている生徒のようにジッと床を見つめていました。
男は何も言いませんが、彼が今何を望んでいるのかは手に取るようにわかりました。
そんな僕の視線に感じているのか、男のペニスはムクムクと反応し始め、あっという間に亀頭は天井を見上げました。
曝け出した本性を他人に見られる事で興奮しているのか、男のスーツの胸はハァハァと上下し始め、反り立つペニスはピクピクと引き攣り、そして亀頭の先には卑猥な汁がテラテラと光っていました。
きっと彼は、ソレをおもいきりシゴきたいんだろうと思いました。
そして僕に見られながら、その溜まりに溜まったモノをおもいきり放出したいんだろうと思いました。
そんな彼の願望が痛いほどに伝わってきた僕は、そんな彼の横顔を見つめながらサングラスを外しました。
そして無言のまま彼の足下にソッと腰を下ろすと、これを最後にしようと心の中で呟きながら、社会で抑圧された彼のソレを口の中に滑り込ませたのでした。
卑猥な粘着音が僕の口から漏れ、男の口から情けない声が漏れました。
僕はハァハァと喘ぐ男の腰に手を回し、そして男の尻肉を鷲掴みにしながら、じゅぶじゅぶと顔を振りました。
すると、わずか1分も経たないうちに、彼の性器から濃厚な精液が飛び出しました。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
男はそう深く息を吐きながら僕の頭部を両手で押さえつけました。
すると、ふと、入口の方から「ジリッ」と小石が擦れる音が聞こえてきました。
精液にまみれた男の亀頭をピチャピチャと舐めながらソッと横目で入口を見ると、そこにはマリオブラザースのように丸々と太った男が二人、ニヤニヤと笑いながらこっちを見ていました。
男は、僕の口からヌルっとペニスを抜き取ると、射精したばかりにも関わらず、「アナルに入れてもいいですか?」と聞いてきました。
すると、丸々と太った二人の男が僕の背後に歩み寄り、二人の内の赤いシャツを着た方のデブが僕の股間を覗き込みながら「その前に僕にしゃぶらせてよ」と、女言葉で笑いました。
もはやガラスに体当たりしていた巨大蛾のあの音は聞こえてきませんでした。
きっと彼は死んだのです。
目的を達成せぬまま、薄汚い公衆便所の裏で無惨に死んだのです。
そんな蛾の死骸には、きっと無数の夜蟲が群がっている事でしょう。
そう、今の僕のように。
(夜蟲・完)
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