変態女装小説「夜蟲3」
2012/12/02 Sun 00:00
エスカレートする女装性癖をなんとか食い止めようと、わざわざ高額な女を買ってまで女の良さを知ろうとした僕でしたが、結局はミイラ取りがミイラになるというお粗末な結果に終わってしまいました。
これ以上、その性癖をエスカレートさせるのは危険でした。
それによって、地位も名誉も家族も人生さえも、全て失う事になりかねないのです。
しかし僕は、あの女を抱いた事によって、改めて男に抱かれたいという意志が強くなりました。
僕も彼女のように、薄汚い中年男に尻を振りながら、「後ろから入れて下さい……」と言ってみたくて堪らないのです。
そんな僕は、ダメだ、やめろ、と必死に自分に言い聞かせながらも、遂に女装をして夜の街に繰り出すようになりました。
それが非常に危険だと言う事はわかっています。十分わかっているつもりなのですが、しかし僕は、まるで麻薬中毒患者のように悶え苦しみながらも、夜な夜な異性に成り済ましては闇の中を徘徊してしまうのでした。
但し、そんな女装徘徊は地元では絶対にしませんでした。
地元ではあまりにも危険過ぎて、それはもはや自殺行為に等しいのです。
ですから僕の女装徘徊は、主に出張時に行われていました。
銀行員の僕は、月に数回の出張を余儀なくされていたため、それをうまく活用したのです。
その日も、大手取引先の支社工場に視察に行く為、僕は女装グッズが詰まった大きなバッグを抱えながら千葉県へと向かいました。
二泊三日のその出張には、融資課の大村君が付いてきました。
もちろん、彼は僕に女装趣味がある事など夢にも思っていません。
三時に千葉に着くと、そのまま工場へ向かいました。
巨大な工場内を視察しながら、専務の大橋さんから話を聞きました。
大橋専務は、商品の生産が間に合わないため来年からは中国人労働者を受け入れようと考えていると説明し、僕に中国の労働派遣会社の梁さんという中国人を紹介してきました。
工場の奥にある事務所で、僕と大村君は梁さんから中国人労働者について話を聞きました。
梁さんは、こういった流れ作業において、いかに中国人労働者が即戦力となるかを僕たちに必死に説いていましたが、しかし、僕はそんな話を上の空に、早く夜が来ないかとそればかりを考えていたのでした。
「本社に戻って検討します」
そんなお決まりの言葉を残し、僕と大村君は工場を後にしたのでした。
近くの定食屋で簡単な夕食を済ませると、さっそくホテルに向かいました。
ホテルに着くなり、「今日は疲れたから」と大村君に告げ、早々とエレベーターに乗り込みました。
その時点で、既に僕の心臓は張り裂けそうでした。
時刻は七時を過ぎておりました。
これからが、もう一人の僕の時間なのです。
部屋に入るなり、さっきホテルの隣のコンビニで買ったばかりの冷たい牛乳を一気に飲み干しました。
さっそく全裸になりますと、そのまま小刻みに腰を振りながら浴室へと向かい、髭、眉毛、鼻毛、脇毛、臍毛、陰毛、尻毛、臑毛、と、体のあらゆる毛を丁寧に整えました。
その間も僕の腰はゆっさゆっさと動いております。まるで、一昔前に流行った『ランバダ』のように腰を左右に振りながら、爪先で小刻みにステップを踏んでおります。
この奇怪なダンスはいったい何の意味があるのかと申しますと、先ほど一気に飲み干した冷たい牛乳を胃の中でシェイクさせているのです。
要するに、肛門に異物を挿入する前に行うエチケット。つまり『糞出し』の準備というヤツです。
幸いにも僕は胃腸が弱かったため、冷たい牛乳と腰振りダンスさえあれば下痢を噴射する事ができました。ですから浣腸などという不健全な物を使わずとも、こうして自然な形で『腸内洗浄』する事ができたのでした。
そんな、通称『ウンコダンス』をしながら、糸ようじで歯の隙間を丁寧に掃除しておりますと、早くも下腹部がゴロゴロと信号を送ってきました。
この信号音が鳴りますと、ダンスはランバダから本田美奈子のマリリンへと変わります。いわゆるラストスパートというヤツです。
腰をコキコキと激しく振りながら限界まで我慢します。尻の筋肉をギュッと締め、肛門をおもいきり凹ませながら、まるで洋物ハードコアの金髪親父のように「あうっ! おうっ!」と唸ったり、洗面台をバンバンと叩いたりしながら必死に我慢するのです。
それをした後の下痢噴射というのは、言葉では言い表せないほどの快感でした。便座に座った瞬間から下痢が噴き出し、それはシューっと音を立てながらいつまでもいつまでも続くのです。
その間、僕は廃人のように目を半開きにさせ、唇の端から涎を垂らし、身震いしておりました。そして全てを出し尽くし、ホッと一息ついた瞬間に最高の開放感を得るのでした。
シャワーを終えると、バスタオルを腰に巻いたまま缶ビールを飲みました。
そしてさっそく例の巨大バッグをクローゼットの中から引きずり出し、ベッドの上に女性モノの衣類を並べました。
今夜の僕のコンセプトは、『公衆便女』でした。
昼間は普通のOLなのに、夜になると公園の公衆便所に出没しては、薄汚い男達に犯されまくるという変態性欲女の設定にしようと、既に昨夜から決めていました。その為、持って来た衣類は、若いOLが好みそうなものばかりでした。
変態性を強くする為にも、敢えてストッキングは履かず、素足にミニのフレアスカートを履きました。
もちろんノーパンでした。
女装者にとってノーパンのミニスカートほど危険なものはございませんが、しかしそれで街を徘徊した時のあの興奮というのは、そんな危険性やリスクなど霞んでしまうほどに強烈であり、ですから危険だとわかっていても、それだけはどうしても譲れなかったのでした。
上着は、白い薄手のセーターにGジャンを羽織りました。
シャギー入りのショートのウイッグを装着し、じっくりと時間をかけて丁寧に化粧を施すと、大きめのサングラスを掛けました。
そして女装の極めつけは、履き古したサンダルでした。
これは、実際に当銀行の窓口に座っている女子社員が履いていたモノでした。先月の新年会でその女子社員が酔いつぶれてしまい、その時、どさくさに紛れて盗んだモノでした。
随分と履き古された安物のサンダルでしたが、しかし僕は、今までそのサンダルで何度オナニーした事かわかりません。つい先日まで実際にこれを女が履いていたんだと思うと、それに頬擦りする僕の手は震え、脳が蕩けるような快感に包まれるのです。
それほどこのサンダルは僕にとってはお宝であり、そしてこれを履いて徘徊する事が夢なのでありました。
女装をして一歩外に出ますと、世の中全てが一変しました。
女になった僕は、今までの僕ではありません。糞がつくほどに堅い銀行員の顔は消え失せ、顔も体も脳も性格もそして吐く息の香りさえも全く違う人間に変身しました。
ホテルの前の暗い歩道を歩いていますと、自転車に乗ったおじさんや、会社帰りのサラリーマンや、コンビニの袋をぶら下げた若い女の子とすれ違いました。
しかし、誰も僕に気づいていません。その誰もが、まさか僕が三十のおっさんだとは気づいていないのです。
千葉の夜空を見上げる僕は嬉しくてたまらず、おもわず鼻歌を歌いながらスキップしたい衝動に駆られるほどの高揚感に包まれていたのでした。
そんな浮かれた気分でしばらく歩いていますと、暗い歩道の先に繁華街のネオンが見えてきました。
いくらテンションが高くとも、さすがにネオンの下を歩く度胸はありませんでした。
小さな橋の上で足を止め、わざとらしく携帯なんぞを取り出しながら緑のペンキが塗られた橋の欄干にソッと寄り添いました。
携帯を見ている振りをしながら、これからどこに行こうかと考えました。
女装した姿を他人に見られたいという願望は強くありましたが、しかし、その勇気はまだまだありません。だから明るい場所や人が大勢いる場所は無理です。かといって、誰もいない暗闇の中では、部屋で一人で女装しているのと何ら変わりありません。
せいぜい一人か二人の人がいて、ぼんやりと暗い場所。
そんな場所はないものかと考えておりますと、不意に一台のタクシーが僕の前で止まりました。
運転手は僕が乗車すると思っているのか、カチカチとハザードを付けたまま、車内からジッと僕を見ています。
そんな運転手をサングラス越しにソッと見つめながら、(見られている……)と思うと、もの凄い勢いで僕のペニスが勃起しました。
ミニのフレアスカートの真ん中がムクっと持ち上がりました。ノーパンだったため、ペニスは下着に圧迫される事なくそのままの形で反り立っております。
夜風がノーパンのミニスカートの中をすり抜け、まるでタクシーの運転手に向かって下半身を露出しているような錯覚に陥りました。
そんな状態で、僕はドキドキしながら運転手を見つめていました。
すると突然タクシーの助手席の窓がヴィィィィィィと開き、中から運転手が「乗らないの?」と面倒くさそうに聞いてきました。
男は僕よりも十歳ほど年上の四十代でした。
僕は、そんな男の視線に脅えと欲情を感じながらも、その助手席に乗り込みたいという衝動に駆られていました。そして、男の隣で静かに股を開き、欲情した性器を男に見せつけ、そのまま淫らな悪戯をされたいという願望が燃え上がりました。
次第に、僕の口からハァハァと熱い息が漏れ始めました。それを悟られないように慌てて俯くと、ミニスカートには勃起したペニスがくっきりと浮かび上がり、そしてそのスカートの持ち上がった部分には、十円玉ほどの濡れたシミがじんわりと広がっていたのでした。
(どうしよう……)
僕は下唇を噛んだまま、タクシーに乗ろうかどうしようか迷っていました。
すると、男は「乗らないんだね」と言いながら助手席の窓をヴィィィィィィと閉めたのでした。
「あ、待って下さい!」
思わず僕はタクシーに向かって手を挙げました。
すると男は、発進しようとしていたギアを慌てて元に戻し、素早く後部座席のドアをガチャッと開けたのでした。
まるで拳銃を背中に突きつけられているような恐怖でした。このまま逃げ出したいという気持ちと、一刻も早くそこに乗り込みたいという感情がぶつかり合い、心臓の鼓動を激しく鳴らしていました。
僕はゆっくりと歩き出しました。それはまるで夢遊病者のようであり、勝手に足が動くという感じでした。
僕は歩道の端で立ち止まりました。しかし僕は、後部座席には乗りませんでした。
もはや興奮がレッドゾーンに達してしまっていた僕は、無意識に助手席のドアを開けていたのでした。
いきなり助手席に乗り込んできた僕を、男は一瞬、「えっ?」と驚きながら見てました。
そして僕が助手席のドアを閉めると、男は辺りをきょろきょろしながら「他に誰か乗るの?」と聞いてきました。
声を出せない僕は、ジッと項垂れたまま無言で首を振りました。
すると男は、ならばどうしてあんたは助手席に乗るんだと不思議そうに小首を傾げておりましたが、急に何かを納得したかのように「……で、どちらまで?」と聞いてきたのでした。
僕は答えられません。声を出せば僕が男だと言う事がバレてしまいます。
僕は黙ったままバッグの中から財布を取り出しました。そしてそこから二万円を抜き取ると、黙って男にソレを差し出しました。
男はそれを不思議そうに見つめながら「料金は後でいいですよ」と呟きました。そしてメーターを摘みながら「とりあえず行き先を教えて下さいよ」と小さな笑みを浮かべました。
僕は黙ったまま閉じていた股をゆっくりと緩めました。
脳みそがグルグルと回転し、まるでアルコール度の強いロシアの酒を一気に飲み干したような目眩を感じました。
男は黙ったまま僕の股間をジッと見つめていました。
そんな視線に背筋をゾクゾクさせながらも、僕の股はジワリジワリと広がって行き、いつしかそれは肩幅まで開いておりました。
「あんた、男か?……」
男の湿った声が、項垂れる僕の耳元をくすぐりました。
男の声とほぼ同時に大型トラックが真っ黒な排気ガスを噴き出しながらタクシーの横を走り過ぎて行きました。
僕は無言でスカートの端を摘みました。そして、ゆっくりゆっくりスカートを捲り上げ、その現物を示しながら男の質問に答えたのでした。
自分のどこにそんな勇気があったのかと、自分でも驚いているほどでした。女装した姿を他人に見られるだけで身が竦む思いをしていた僕が、なんと、見知らぬ男に勃起したペニスを見せつけているのです。
羞恥心と恐怖心とが急速に混じり合い、それが性的興奮となって僕の口からハァハァと漏れ出しました。
太ももの間からニョキッと飛び出した亀頭は、透明の我慢汁を座席シートにニトーっと垂らしております。
それを項垂れたままジッと見ていた僕は、それを上下にシゴきたい衝動に駆られていました。今ここでシコシコとシゴけば、僕はほんの三擦りでイってしまう事でしょう。
そんな事を思いながら下唇を噛んでいると、不意に男が「触って欲しいのか……」とボソリと呟きました。
僕はゴクリと唾を呑み込んだ後、小さくコクンっと頷きました。
「じゃあ、さっきの金、貰ってもいいか?」
男は僕に顔を寄せながら言いました。
僕はバッグの中に投げ捨てていた二万円を摘むと、恐る恐る男に差し出しました。
男は「悪いねぇ、こんなに……」と嬉しそうに笑いながらそれを受け取ると、そのままゆっくりと車を走らせ、その小さな橋の袂を左折して、川沿いの細い路地に車を止めたのでした。
カッチカッチとハザードランプが点滅する音が、ひっきりなしに車内に響いていました。
男はサイドブレーキをギギギッっと上げると、さっそく僕の太ももを摩り始めました。
「あぁぁん……」
おもわず僕は身をよじらせ、まるで女の喘ぎ声のような声を漏らしました。
もちろんそれは無意識に漏れた自然の声であり、決して作った声などではありません。
今まで、まさか自分がそんな声を出すなどとは思ってもいなかった為、僕は激しい羞恥に駆られながら慌てて口を閉じました。
男はそんな僕に「本物の女みたいだな」と薄ら笑いを浮かべながら僕のペニスを三本の指で摘み、慣れた手つきでシコシコと上下させ始めたのでした。
生まれて初めて男にペニスを握られました。そしていやらしくシコシコとシゴかれました。
その事実だけでも卒倒しそうなくらいの凄まじい興奮を得ていた僕は、もはや我慢の限界に来ていました。
「あぁぁ……イッちゃいそうです……」
僕は初めて声を発しました。
すると男は「えっ? もうイッちゃうの?」と素っ頓狂な声を出し、慌ててペニスから手を離しました。
「こんな所で出されちゃ、後で掃除が大変だ」
男はそう笑いながらダッシュボードからティッシュを取り出しました。
その時僕は、何を血迷ったのかいきなりバッグの中から財布を取り出しました。
そして中からもう一万円を取り出すと、それを男に渡したのです。
「えっ?……なにこれ?」
男は右手にティッシュを持ち、左手でその一万円札を摘みながら驚いて僕を見ました。
「……どこか……静かな所で……お願いできませんか……」
僕は恐る恐るそう告げました。
「ああ、ホテルとかそういう所ね」
男はそう言いながら頷きました。
「はい……」と、そう頷く僕は、この際この男と徹底的にいやらしい事をしてみたいと思いました。男のペニスをしゃぶり、男の精液を飲み、そして肛門を犯されたいと僕は本気でそう思っていました。
しかし、男は「でもね……」と言葉を続けました。
「エンジンが止められないんだよ。この車は旧型だからさ、エンジン止めちゃうとタコグラフが動作しなくなっちゃってサボってるのが会社にバレちゃうんだよね……」
男はそう言いながらも「困ったな……」っとハンドルにもたれました。その一万円を返さない所を見ると、どうやら男は何とかして僕の要望に応えようと考えているようです。
しばらくすると、男は「よし」と言いながらサイドブレーキを外しました。
「もってこいの場所があったよ。このすぐ先にさ、誰も来ない公園があるよ」
男はそう笑いながら車を走らせました。
そして川沿いの細い路地を乱暴にスピードを出しながら、話を続けました。
「去年ね、その公園でホームレスが二人も殺されたんだよ。金属バットで頭を叩き割られてね。まぁ、多分、いつもあの辺をうろついてた金髪中学生のガキ共の仕業だろうとは思うんだけど、それでもまだ犯人が捕まってないって事で、誰もあそこには寄り付かないんだよ。あそこならエンジン掛けっぱなしでも大丈夫だし、公衆便所の個室だったら、車内みたいに人に見られる心配がないからゆっくりできると思うんだけどね……どうする?」
男は「どうする?」と聞きながらも、既に車をその公園へと走らせています。
僕は男のそんな話を聞きながら、自分でペニスをシゴいていました。脳みそがグルグルと回って止まらなくなっていた僕には、殺人事件があった公衆便所であろうと自殺の名所であろうと、もはやどこでも良かったのです。
男は、公園の隅にある大きな木の下で車を止めました。
そして、薄暗い公園の奥にある古ぼけた公衆便所を指差しながら、「どうだい。なかなかいい雰囲気出てるだろ?」と笑いました。
男はその一万円がどうしても欲しいらしく、執拗にその公衆便所を勧めてきます。
「ほら、便所だったらさ、ティッシュとか無しでそのままピュっと飛ばす事もできるしさ、こんな車の中よりも楽しめると思うんだよね……」
男は僕の耳元でそう囁きながら僕の股間にソッと手を回しました。そして我慢汁が溢れた尿道を人差し指でヌルヌルと擦りながら、「どうする?」と熱い息を僕のうなじに吐きかけました。
それはまるで、男が必死に女を口説いているような感じでした。
僕はそんな男の仕草や愛撫に、本物の女になったような気がして更に欲情してきました。
そして、男のいやらしい愛撫にハァハァと荒い息を吐きながら、「あそこでいいです」と頷きました。
すると男は「じゃあ、この金、貰ってもいい?」と、未だ摘んで離さずにいた一万円札を僕に見せました。
僕がコクンっと頷くと、男はニヤリと微笑みながら、それをポケットの中に押し込みました。
男はそそくさとシートベルトを外し、そのままドアを開けました。
「じゃあ行こうか」と言いながら男が外に出るなり、生温い夜風が車内に注ぎ込み、M時に開いていた僕の股間を卑猥に撫でました。
ハァハァと荒い息を吐きながらスカートの中にペニスを隠した僕は、ソッと横目で窓の外を見ました。
闇に潜む公衆便所の外灯には、無数の夜蟲が狂喜乱舞していたのでした。
(つづく)
《←目次へ》《4話へ→》