複雑なともだち2
2012/12/02 Sun 00:00
PM八時二十五分。
僕は加藤の家のすぐ近くのコンビニで立ち読みをしていた。
加藤の家に行くのは九時と決めていた。
僕が来るまでの間に、加藤は彼女をその気にさせておくと自信ありげに言っていた。
ファッション雑誌を立ち読みしていた僕の自慢のペニスは、既に八時頃から硬くなっていた。
今夜、いよいよ童貞とおさらばできると思うと、僕のテンションは異様に高くなっていたのだった。
しかし、その一方で不安も激しかった。もしかしたら加藤の彼女に拒否られるのではないかという不安でいっぱいだった。
そんな事を考えながら立ち読みしていると、あっという間に時刻は九時に差し掛かろうとしていた。
僕は慌ててファッション雑誌をラックに戻した。
百円のおにぎりをひとつ買い、それを駐車場でパリパリと音たてながら戦の前の腹ごしらえをした。
すぐ目の前に、加藤の家が見えた。
二階の加藤の部屋を見上げながら、僕は玄関に向かって歩き出したのだった。
玄関のドアは開いていた。
僕は計画通り無言で家に上がると、そのまま忍び足で階段を上った。
階段の中段辺りからテレビの音が聞こえて来た。
AV女優のいやらしい喘ぎ声が響いてくる。
どうやら加藤は、作戦通りに彼女にAVを見せているらしい。
部屋のドアの前で足を止めた僕は、恐る恐るドアに耳を押し付けた。
「凄いチンポだな……真奈美もあんなチンポにヤられたいか?」
加藤の声がボソボソっと聞こえて来た。
部屋には、AV女優の喘ぎ声に混じり、若い女の悩ましい声も響いていた。
僕はそんなドアの前で大きく深呼吸をした。
そして息を殺しながらドアノブを回し、ノックもせぬまま一気にドアを開けた。
「加藤いる?」
そう言いながら部屋を覗き込むと、裸で床に寝転がっていた二人が、一斉にガバっと上半身を起き上がらせた。
その時、脚をM時に開きながら寝転んでいた彼女の股間に、加藤が指がモゾモゾと動いていたのを僕は見逃さなかった。
「だ、誰だよ!」
加藤がわざとらしく叫んだ。
「ごめん、吉本だよ。何度呼んでも出てこなかったから……」
僕はそう言いながら扉に身を隠した。
「吉本? なんだよこんな時間に……」
「うん……実はちょっと親父と揉めちゃってさ……家を出て来ちゃったんだ……」
そう言いながらそっとドアの隙間を覗くと、スラリと細い彼女の背中が見えた。彼女は慌ててパンティーを履いているのか、真っ白な背中に長い黒髪が揺れていた。
急いでトランクスを履いた加藤が、そんな彼女に黒いTシャツを投げ渡し、「早く、早く」と急かした。
パンティーを履き終えた彼女は、ブラジャーを付けないままそのTシャツを頭から被った。
そんな彼女の胸がタポタポと揺れていた。それはまるで二次元の中で描かれているかのように、大きくて白くてそして見事に美しかった。
身支度を終えた加藤が「いいよ」と僕を呼ぶと、僕はわざとらしく「ごめんね……」と言いながら恐る恐るドアから顔を出した。
加藤は迷惑そうな表情を浮かべながらも、「また家出してきたのかよ……しょうがねぇなぁ……」などとセリフを呟きながら僕を部屋に招いた。
僕は恐縮しながら、窓際にあるビールケースで作ったソファーに腰を下ろした。
加藤の部屋のソファーとベッドは、酒屋から盗んで来たビールケースで作られていた。並べたビールケースの上にベニヤ板を置き、そこに布団を敷くというそのベッドは、見た目は公園のホームレスのように見窄らしかったが、しかし、寝心地はあれでなかなか良いものだった。
僕は加藤が作ってくれたシナリオ通りに事情を説明した。
家に帰れなくなったという僕を、加藤は「しょうがねぇな」とぼやきながらも、「泊めてやるよ」と言った。
そんな台本通りのやり取りの後、加藤はいよいよ彼女に矛先を向けた。
「紹介するよ、俺の彼女、真奈美」
すかさず僕が「どうも」と頭を下げると、真奈美は恥ずかしそうに前髪を整えながら「どうも」と頭を下げた。
そんな真奈美は、確かに加藤が言う通り滅茶苦茶可愛かった。
加藤曰く、父親が韓国人で母親が日本人のハーフらしく、だから純正の日本人にはない色っぽさと可愛らしさがあるのだという。
しかしながら、顔も然ることながらそのスタイルには驚いた。
スラリと細身のくせに胸と尻がやたらと大きく、そしてその形は見事なほどに美しいのだ。
これも、加藤曰くハーフだかららしく、又、セックス時の感度や乱れ方、そして貪欲な性欲も、純正の日本人娘にはないハードなものらしい。
僕はそんな加藤情報を思い出しながら真奈美を見ていた。
今からこのハーフ娘と濃厚なセックスができるのかと思うと、僕は小さな目眩に頭をクラクラさせられていたのだった。
「こいつは、俺の親友で吉本って言うんだ。あだ名はデカチン。ウチの学校で一番チンポがデカいんだ」
加藤はケラケラと笑いながら僕をそう紹介した。
すると真奈美はたちまち戸惑いながら、「やだぁ」と加藤の腕を叩き、やり場のない視線を慌ててテレビに向けた。
が、しかし、そんなテレビではAVが垂れ流しされたままだった。
画面では、獣のように欲情した女が、逞しいペニスを口一杯に頬張りながら必死に顔を上下に動かしているシーンが映し出されていたのだ。
そんなシーンをまともに見てしまった真奈美は、カッと顔を赤らめた。今まで普通に見ていたAVも、第三者が加わる事で非常に気まずいものになってしまったようだ。
サッと顔を伏せた真奈美は、慌てて加藤の袖を引っ張りながら「テレビ……」と呟いた。
加藤は「えっ?」と振り返ると、真っ赤な顔して項垂れている真奈美を見ながら「ああコレね」とテレビを指差した。
そして加藤はニヤニヤと笑いながら僕に言った。
「このAV凄いだろ。『巨大ペニスの逆襲』っていう最新作なんだ。へへへへ、実はこのAVはさ、なんと真奈美の私物なんだぜ、凄いだろ」
加藤がそう言うなり、真奈美が「違うわよ!」と加藤の背中を突き飛ばした。
「だって本当の事じゃねぇか、これおまえが持って来たんだから」
「違うわよ。これパパのよ! あんたが持って来いっていうから、パパの部屋から盗んで来たんじゃない!」
「同じ事だよ。いつもパパさんの部屋からこっそり拝借して見てんだから……」
加藤は、まるでセクハラ親父のような下品な顔で「ひひひひひ」っと笑った。
真奈美は「もう知らない!」と頬をプッと膨らませたっきり横を向いてしまった。
すると加藤はすかさず僕にウィンクした。
それは、この作戦が順調だという合図だった。
加藤は僕にそう合図を送りながらも、「なぁ、怒んなよ真奈美ぃ」と甘えた声で彼女の細い肩に腕を回した。
「もうヤダ。私帰る」
真奈美はそう言いながら、肩に回した加藤の腕を必死に振り払おうとしていた。
「んな事言うなよ……ごめんね、謝るから許してくれよ……」
加藤は真奈美を抱きしめながら耳元でそう呟くと、体育座りしていた真奈美の股間にスルリと手を入れた。
「ヤだって……」とその手を真奈美が慌てて掴んだ。
すると加藤はもう片方の手で真奈美の巨大な胸を揉み始め、「怒んなよ、謝ってるじゃないか」とキスをしようとした。
それを躱そうと真奈美がもがいた。
「友達が見てるじゃない、やめてよ」と、必死に加藤のキスから逃れようとしていた真奈美だったが、しかし、加藤がベッドの毛布を真奈美の頭に被せ、毛布の中で真奈美の体を強く抱きしめると、そんな真奈美の抵抗は一瞬にして治まったのだった。
しばらく二人は毛布に包まっていた。
加藤が何やらヒソヒソと囁いている声が聞こえて来る。
少しするとそんな毛布がモゾモゾと動き始めた。
恐らくキスをしているのだろう、毛布の中からは舌が絡み合うペチペチという湿った音が聞こえて来た。
僕は、すぐ目の前で他人がキスをしているというこの状況に激しい興奮を覚えた。
僕は正真正銘の童貞だった。
一日、二回のオナニーで満足しているスケベな思春期の童貞高校生なのだ。
そんな僕の前で、今、あの可愛いハーフの女の子がエッチな事をしている。
僕はキスをした事もなければ、女の胸を揉んだ事もない。
もちろん、女の性器など生で見た事もなければ匂いを嗅いだ事もない。
そんな僕がこの状況で普通でいられるはずはなかった。
カーッと顔が熱くなり、下半身が堪らなくムズムズして来た。
すぐ目の前に彼女のブラジャーが転がっていた。テレビではいやらしいAV女優がじゅぷじゅぷとフェラチをしている。
オナニーのネタは揃っていた。
僕はこのままここで一発抜きたくて堪らなかった。彼女のブラジャーの匂いを嗅ぎながら、このパンパンに堪っている精液を思い切り噴き出してやりたかった。
すると、毛布の中から真奈美の声が聞こえて来た。
「ヤだって……ダメだって……」
二人が包まった毛布の下の方がモゾモゾと動いていた。
どうやら加藤は彼女のアソコを触っているらしい。
そのまま二人はもがきながら、ゴロリと横に寝転がった。
毛布からは二人の生脚が飛び出し、四本の脚が複雑に絡み合っていた。
「もう、やめてよ、本当にヤダって……」
真奈美は、今にも泣き出しそうな鼻声でそう言った。
しかし、加藤の動きは止まらなかった。
それどころか加藤は、真奈美に気づかれないようにそろりそろりと毛布を捲り上げた。
僕にそこを見せようとしているのか、なんと真奈美の下半身をそこに曝け出したのだ。
捲られた毛布は、真奈美の太ももの上で、丁度ミニスカートほどの長さで止まっていた。
僕はすかさず踞った。
真奈美の長い脚の隙間を、床に這いつくばりながら覗き込んだ。
すると加藤はそれを察したのか、真奈美の太ももの隙間に手を入れた。
そして、閉じていた真奈美の股をゆっくりゆっくり押し広げた。
真奈美の股がみるみる開き、まるでカエルがひっくり返ったように広げられた。
真っ黒なパンティーの中心をいやらしくなぞっていた加藤の指が、僕に向かってカモンカモンっと合図した。
僕は息を殺しながら床を這い、股間に向かって匍匐前進した。
すぐ目の前に真奈美の広げた股が迫った。
そんな真奈美の黒いパンティーの中心部は、何やら怪しげにじっとりと湿っていたのだった。
もはや我慢できなくなった僕は、床に伏せたまま腰を蠢かせた。
床にペニスがグイグイと押し付けられ、おもわず僕の口から「はぁはぁ」という息が漏れた。
すると、僕のその荒い息に気づいたのか、真奈美がいきなり股を閉じた。そしてものすごい勢いでサッと毛布を引き寄せると、再び毛布の中に潜り込んでしまったのだった。
慌てた僕は元の位置に戻った。
そして素知らぬ顔をしながら、床に転がっていたヤングジャンプを手にし、それを読んでいるフリをした。
毛布の中から、二人がコソコソと喋っている声が聞こえて来た。
僕はそんなコソコソ声に耳を澄ましながらも、何やら妙に不気味な『横浜線ドッペルゲンガー』という漫画を目で追った。
「いいじゃねぇか、見せてもらうだけなんだか……」
加藤が何かを説得していた。
「ヤだって……」
「どうしてよ」
「だってそんな事頼むの恥ずかしいよぅ」
「大丈夫だって、あいつは中学生の時からみんなに見せまくってんだから、何も遠慮する事ねぇって」
「でも……」と、真奈美が言いかけた時に、いきなり毛布の中から「なっ、吉本」という加藤の声が飛んで来た。
「えっ?……何が?」
いきなりそう呼ばれた僕が戸惑っていると、加藤は毛布をガバッと剥いだ。
そして真奈美を抱きしめたまま、僕の顔を見ながら「いいだろ」と笑った。
「いいって……何の事?」
「あのさぁ、こいつがおまえのチンポを見せて欲しいって言うんだよ」
すかさず真奈美が「私そんな事言ってないって!」と叫んだ。
「ああ、確かに見せて欲しいとまでは言ってはないけど、でも、学校一のデカチンを見てみたいって言ったじゃないか」
「違うわよ、学校一のデカチンってどのくらいデカいんだろうね、って言ったんじゃない」
「そんなの同じ事だよ」
加藤は真奈美にそう言うと、ニヤニヤと笑いながら僕を見た。
「なぁ吉本、いいだろ。おまえの勃起したチンポ、こいつに見せてやってくれねぇかなぁ」
加藤が言うと、真奈美は呆れたように「もう知らない」と頬を膨らませ、プイっとそっぽを向いてしまった。
それは作戦通りだった。
これが加藤の考えた作戦の始まりだった。
この作戦を作った加藤は断言していた。
その立派なペニスを見れば真奈美は絶対にソレを欲しがる、と。
僕はニヤニヤと笑う加藤と、そっぽを向いている真奈美を交互に見つめながら、「別にいいけど……」と呟いた。
気が付くと、テレビで垂れ流しされていたAVは既に砂の嵐になっていた。
(つづく)
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