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それがどうした!

2012/11/17 Sat 04:25

それがどうした!

《あらすじ》
俺は余命わずかな末期ガン。怖いものはなにもない。
隣りのベッドに見舞いに来た人妻をベッドに引きずり込んだ。旦那の横でズボズボに強姦してやった。
ふん。それがどうした。



「ひと昔前だったらガンといえば絶体絶命だったけどな、今じゃ医学が発達してるからガンといっても大した事ないらしいぜ。うん。それに、キミの場合は早期発見だったんだろ、だったらそんなのちょっとした風邪みたいなもんさ。まぁ、会社の事は何も心配しなくていいから、これを機会に療養に専念するんだな」

隣のベッドから聞こえて来る話し声に、俺はおもわず吹出しそうになった。
それは明らかに気を使っている口ぶりで、必死に何かを誤魔化そうとしているのがみえみえだったからだ。

(末期だな。余命、三ヶ月って所か……)

今までの経験からそう予想した俺は、棚からみかんを取るフリをしてカーテンの隙間をソッと覗いた。
すぐ目の前に弁当箱のような四角い背中が迫っていた。スーツ姿のその男は、患者の上司なのだろうか、しきりに専務や常務の失敗談をギャグ混じりに語っては患者を必死に笑わせようとしていた。
その奥に、げっそりと項垂れる患者の姿が見えた。
患者は上司のくだらないギャグに、顔をひくひくと引き攣らせながらはははははっと無理に笑っていた。
俺と同い年くらいだろうか、まだ三十代だった。

「それじゃ、とにかくゆっくり休めや。また明日遊びに来るから」

弁当箱のような上司はそう言いながら席を立った。
上司がカーテンを出て行くと、その後を追うようにサンダルの音がスタスタと鳴った。
カーテンの隙間から病室の出口を見ると、それは若い女だった。
恐らく、患者の妻かなんかだろう、上司の背中に向かって「本当にありがとうございました」と頻りに頭を下げていた。

俺はみかんを食いながら、さっきこの病室に移動して来たばかりの隣の患者に声を掛けようかどうしようか悩んだ。
本来なら、あっちから挨拶して来るもんだ。それが常識だ。
しかし、この病室に常識は通用しなかった。
ここは、明日死んでもおかしくない患者ばかりが密かに集められた末期専用病室であり、常識が通用するような奴は一人もいないのだ。

だから俺は隣に声を掛けるのをやめた。
下手に仲良くなって、情が移ったりしたら堪ったもんじゃない。
ここでいちいちそんな事してたら、香典代がいくらあっても足りないのだ。

あぁ〜あ、と大きなアクビをしながら、俺はベッドに寝転がった。
するとそのアクビが伝染して、向かいのベッドからも、あぁ〜あ、と聞こえて来た。
死を待つだけの俺は暇で暇でしょうがなかった。
昨日、病院横のレンタルショップで借りて来たDVDでも見るかと、棚の中から数枚のDVDを取り出した。
と、その時、開いたままのカーテンの隙間から隣の患者と目が合った。

「DVDを見るんですか」

男はカリントウのようなドス黒い顔を必死に笑わせながらそう言った。いきなり挨拶もなしに問い質して来るのが、彼なりのコミュニケーションらしい。

「うん……暇だからね……」

俺も一応微笑んでやった。

「LOSTは見ました?」

「……海外ドラマの?」

「そうそう。あれ凄くおもしろいですよ。お勧めです」

「……でも、連載モノでしょ……」

「百話くらいまりますね。入院してる時なんかはもってこいですよ」

そう笑う男に、百話見終わる前に途中で死んだら無念だから、と言いそうになり慌てて言葉を呑み込んだ。

そんな話しをカーテン越しにダラダラしていると、そこにさっきの女が戻って来た。

「部長さんったらね、専務さんがお見舞いに来ても絶対にカツラを笑ったりしないように、なんて言うのよ。おかしな人ね……」

そうウフフフッと笑いながら入って来た女は、カーテンの隙間から顔を覗かせる俺を見て、一瞬、「わっ」と驚いた。

「妻の美佐です……」

男が紹介した。
女は慌てて俺に挨拶をした。
まるで百合の花のような綺麗な女だった。

翌日、俺は病院横にあるレンタルショップに行った。
『Mr・BOO!インベーダー作戦』と、『野獣死すべし』の延滞料金を請求された。見たくもなかったDVDの延滞料を取られる時ほど腹の立つ事は無い。まして『Mr・BOO!』など、あまりの馬鹿馬鹿しさに途中で寝てしまい全部見ていないのだ。だから延滞料を負けてくれよと、ロバのような顔をした女店員に言いそうになったが、しかし彼女のその剥き出された出っ歯を見ていると何故だか急にやるせなくなり、そのまま素直に延滞料を支払った。

金を払った俺は、迷う事無くアダルトコーナーへと向かった。
悩殺的なパッケージをひとつひとつ見ながら、百合の花のような女を探した。
ラックの隅でそれに似た女のDVDを発見した。
『陵辱! セレブ女の生穴ちゅーちゅートレイン』という、何が何だかわからぬタイトルだったが、その女優の雰囲気は、どことなくあいつの妻に似ていた。
それをレジに持って行くと、レジにはさっきのロバ女が一人ポツンと立っているだけだった。
さすがにこのDVDは恥ずかしいと思った。余命わずかな俺だったが、生前にちゅーちゅートレインは恥ずかしすぎた。
慌ててレジの前を素通りすると、ふとレジの正面のラックに『LOST』がシーズン1からシーズン6までズラリと並んでいるのに気付いた。
俺はそのラックから『LOST』を二枚抜き取ると、ちゅーちゅートレインをサンドイッチにして、ロバ女のいるレジに持って行ったのだった。

レンタルショップを出ると、そのまま病院前のコンビニに立ち寄った。
週刊誌をパラパラと立ち読みした。
トップページにあった、『関東直撃! 1年以内に必ず来る巨大大地震』というショッキングなタイトルが目に飛び込んで来た。
一瞬、「マジかよ」と背筋を凍らせたが、しかし、あと数ヶ月でこの世を去る俺には関係のない事だとふと思い、「ふん」と鼻で笑ってはページを捲ると、激安フーゾク情報を隅々まで読み漁った。

病室に戻ると、また昨日の部長さんが隣のベッドに来ていた。
部長さんの弁当箱のような四角い背中を横目に、ソッとカーテンを閉めた。
隣から、またくだらない話が聞こえて来た。
部長さんは、屁のツッパリにもならないような誤魔化し言葉ばかりを並べては、男を必死に励ましていた。
そんな部長さんの誤魔化しに、一生懸命に同意しては夫を励ましている妻が妙に痛々しく感じた。

強制的にそんな馬鹿馬鹿しい話を聞かされていた俺は、いい加減吐き気がして来た。
イライラしながらベッドを飛び降りると、そのまま病室を出ていつもの屋上へと向かったのだった。

街が一望できるその屋上は、基本的に立入禁止だった。
入口の鉄扉には『立入禁止』と書かれたプレートがぶら下がっていたが、しかしその扉の鍵はいつも開いていた。
屋上の隅に巨大な室外機が三つ並んでいた。
真ん中の室外機の裏に潜り込むと、室外機の金網に煙草の箱が四つ押し込んであった。
マイルドセブンが肺ガンの村中さんの煙草で、ハイライトが悪性リリンパ腫の武田さん、そしてパーラメントが胃がんの俺の煙草だった。
もうひとつマルボロが金網に刺さっていたが、それは先月に肝臓がんで死んだ村岡さんの煙草だった。その煙草の箱の上には黒いマジックで遺影リボンが書かれていた。それは、村岡さんが死んだ夜、煙草仲間の三人で書いたものだった。

そんな室外機の裏で一人煙草を吹かしいると、不意に鉄扉がガタンっと開く音が聞こえた。
俺は慌てる事無く、どうせ掃除のおばさんがサボりに来ているんだろうとソッと室外機の隙間から屋上を覗いた。

見覚えのある四角い背中がフェンスに沿って歩いていた。
あの弁当箱のような背中は間違いなく部長さんの背中だ。
そんな大きな背中に見え隠れしながら、あいつの妻の薄いスカートがヒラヒラと風に靡いていた。
二人はフェンスの隅で深刻そうに話し合っていた。しばらくすると暗い表情のまま歩き出し、俺が隠れている室外機に向かって来た。

「彼はまだ気付いていない」、「できるだけ苦しまないように」、「マンションの売り先は」、「葬儀は立川セレモニー会館で」、「保険金の受け取りは弁護士を通した方が」、「できるだけ娘といる時間を長く」、「よくて半年」。
そんな言葉が風に乗って聞こえて来た。
女は項垂れ、男はその顔を覗き込むようにしながら、とぼとぼとこちらに向かって来た。

二人が室外機の前を通り過ぎて行った。
室外機に身を隠しながら二人の背中に振り返ると、男の太い腕が女の細い腰を抱いているのが見えた。
奥の巨大貯水タンクの裏へと消えて行く二人の背中を見つめながら、俺は思わず「あほか」と吐き捨てたのだった。

足音を忍ばせながら貯水タンクの横にあるコンテナーの陰に隠れた。
百合の花のような女が弁当箱のような男にズボズボに犯されているシーンを想像し、おもわず勃起したペニスをジャージの上から握った。
余命わずかの夫を持つ妻とヤるなんて最高だろうな、と、舌なめずりしながらコンテーナーの隅から貯水タンクの裏をソッと覗いた。

スーツの胸の中に細い女がスッポリと収まっているのが見えた。
女のサラサラの髪が四角い部長の体の中で風に靡いていた。

「辛いのはあいつだけじゃないんだ。残される者の方がどれだけ辛いか……」

四角い部長はそう呟きながら、女の細いうなじに唇を押し付けた。
すかさず女は「いや」と体を捩った。
部長はそんな女の小さな顔をグローブのような大きな手で包み込み、自分の大きな顔に強引に引き寄せると、無理矢理キスをしようとした。
「やめて下さい……」と言いながら女がもがいた。部長の太い指が女の頬に食い込み、歪に曲った女の唇の中でピンク色した歯茎がチラッと見えた。

部長はスースーと荒い鼻息を立てながら女の唇の中に舌を捩じ込んだ。その直後、もがいていた女の体がピタリと止まり、女の細い体から力が抜けた。

女は明らかに部長の舌を吸っていた。
部長の大きな手が女のブラウスの胸を弄り、もう片方の手は女の太ももの上で必死にロングスカートをたくし上げていた。
女は部長のその手を押さえつけ、「帰ってからにして下さい……」と、唾液でテラテラに輝く唇でそう言った。

「今夜は病室に泊まるんだろ……明日まで我慢できないよ……」

部長はそう言いながら女の細い手を払い除けると、一気にスカートを捲し上げ、黒いラインの入った白いパンティーを曝け出したのだった。

こいつら外道だな……。
そう微笑みながら、俺は混じり合う二つの体を眺めながらペニスをシゴいた。
貯水タンクに両手を付かされた女は、パンティーだけを足首まで下げられた姿で背後から突かれていた。
余命わずかの夫に隠れ、夫の上司と病院の屋上で欲求不満を解消する妻。そんな、タンクを掻きむしる女の細い指が実に官能的だった。

部長はというと、グローブのような大きな手の平で女の小さな尻を力強く包み込みながら、そこにコキコキと腰を振っていた。
俺的にはもっと女の裸が見たく、服を着たまま互いにコキコキと腰を振るだけのそんなシーンは物足りなかった。
もっとフェラしたり、クンニしたり、斜めになったり、上に乗ったりと、色々ヤって欲しかったが、しかし事情が事情なだけに仕方ないんだろうと素直に納得してやった。

そうやってただ腰だけをコキコキと振っていた部長だったが、しばらくすると、部長はいきなりヌポッとペニスを抜いた。
今度はいよいよ騎乗位させるか? と期待していると、なんと部長はいきなり貯水タンクの壁にペニスを向け、まるで立ち小便をするかのようにピュッ、ピュッ、と精液を飛ばした。

嘘だろ? っと俺は顔を歪めた。
まだ俺も女もイッてねぇだろ! とおもわずツッコミを入れたくなった。
部長が女の尻でコキコキと腰を振り始めてから、わずか三分しか経っていなかった。
図体ばかりでかいくせして、とんだ早漏野郎だった。

女はそんな部長の射精シーンから慌てて目を反らすと、そそくさと足首のパンティーをズリ上げた。
そして乱れた髪や、ブラウスのボタンを急いで直し始めると、すっきり顔した部長が「ごめんね」と女に囁いた。

「これじゃあ余計に欲求不満が溜っちゃうよね」

部長はいやらしくそう笑いながら再び女のスカートの中に手を入れ、「指でイかせてあげるから」と囁いた。
よし! それでこそ弁当箱の部長さんだ!
そう喜びながら、今度こそ射精のタイミングを見逃さないようにと、俺はジャージから勃起したペニスを引きずり出した。

が、しかし、そんな部長の好意を女は拒否した。

「どうしてだよ、これじゃあムラムラしたままだぜ。今夜は病室で徹夜なんだろ、スッキリしておいた方がいいって」

そう言いながら再度部長は女のスカートの中に手を入れようとしたが、しかしまたしても女はそれを拒否し、もう戻らないと、と言いながら出口に向かって歩き出したのだった。

せっかくのオナニーチャンスを逃してしまった俺は、遠くで鉄扉がガシャンっと閉まる音を聞きながら、貯水タンクの裏へ向かった。
貯水タンクの壁に飛び散った部長の精液は、まるで空から落下してきた鳩の糞のようだった。
女が爪を立てていたタンクの壁に目を凝らした。埃の上に細い指のあとが残っていた。
ズリネタになるようなものは、それしかなかった。
細い指の跡に左手をあてながら右手でペニスをシゴいた。
イこうと思えばイけたが、なにやら突然アホらしくなった。
こんなモノでイクくらいなら、病室に戻ってちゅーちゅートレインで抜いた方がマシだと思った俺は、部長の精液にペっと唾を吐きかけると、そのまま出口に向かって走ったのだった。


病室に戻ると、ベッドの上には既に夕食が運ばれていた。
クソのようなメシだった。
どうせあと数ヶ月で死ぬのなら、食いたいもんを鱈腹食って死にたいものだと不貞腐れながらベッドに腰を下ろすと、いきなり隣のカーテンがスッと開いた。

「LOST。借りたんですね」

男はドス黒い顔を嬉しそうに笑わせながら、サイドテーブルの上に出しっぱなしになっているDVDを見てそう言った。

「ああ、うん……」

俺は平然と頷きながらも、LOSTの下に置いてあったちゅーちゅートレインは見つかっていないかとドキドキした。

「これ、本当におもしろいですから」

そう言いながら、男は隣りに座っていた妻に「なっ」と同意を求めた。
すると、カーテンの端から妻が恐る恐る顔を覗かせた。俺にペコッと小さくお辞儀すると、「本当におもしろいですから」と大きな目で俺を見つめながらニヤッと微笑んだ。

瞬間、俺の脳裏に貯水タンクに両手を付きながら犯されている女の小さな尻が浮かんだ。大きな男にガンガンと攻められながらも、水風船のようにポタポタと揺れていたあの白くて丸い尻が、微笑む女の白い歯と生々しく重なり亀頭にズキンっと衝撃が走った。

「懐かしいなぁ……僕達がこれを見てたのは、美佳が生まれたばかりの頃だったよな……」

そう言いながら男がLOSTを手に取った。
真ん中に挟まれていたちゅーちゅートレインが病室のダウンライトに照らされた。
俺の体が固まった。
男がLOSTの表紙を懐かしそうに眺めているうちに、素早くちゅーちゅートレインを隠そうとそこに手を伸ばした瞬間、いきなり女と目が合った。
女は妙に焦っている俺を見て、不思議そうに「ん?」と首を傾げると、何気に俺が手を伸ばした先をチラッと見た。
女がギョッとした。
俺もギョッとした。
女のその目は、道路の片隅に転がっていた腐乱した豚の死骸を不意に発見した瞬間のような目で、俺のその目は、ウンコしている最中にいきなりトイレのドアを開けられた瞬間のような目だった。

「これ、シーズン3から急速におもしろくなりますからね、絶対に最後まで見て下さいよ」

男が嬉しそうに呟いた。

いきなり俺の頭にカッと血が上った。
おもわず俺は、「シーズン3まで生きてれば見るよ」と吐き捨て、男の手からDVDを乱暴に奪い取ると、そのまま無愛想にカーテンをシャッ! と閉めた。

しばらくの間、女がギョッと目を見開いた顔が頭から離れなかった。
俺はそんな女の目に激しい羞恥心を覚えながら、「舐めてんじゃねぇゾ、四角いおっさんに屋上で犯されてたくせに」と小さく呟き、LOSTをおもいっきりゴミ箱の中に放り捨ててやったのだった。

その夜、九時の消灯前に強烈な抗がん剤を投与された隣の男は、院内の電気が消える前に大鼾をかいて寝てしまった。

消灯と同時にテレビにイヤホンを挿した。
俺はヘッドホンも持っていた。ヘッドホンでもいいのだが、しかしヘッドホンだと両耳が塞がれる為、見回りの看護婦が来ても気付かない事が今までに何度かあった。だからオナニーをする時にはイヤホンじゃないと危険なのだ。

ちゅーちゅートレインはなかなか興奮できる作品だった。
というか、作品自体は大した事ないのだが、女優が隣の女によく似ていたため、屋上で見たあの光景と画面の中で悶える女優がリンクして激しく興奮できたのだった。

ひととおり見終えると、フィニッシュを決めていたシーンまで巻き戻しし、素早くパジャマのズボンを下げた。
ビンビンに勃起したペニスがスタンドライトに照らされていた。

カーテンには女の細いシルエットがぼんやりと浮かんでいた。鼻息さえも聞こえるような至近距離でオナニーするというこのシチュエーションに、気が狂いそうなほどに興奮していた。

画面の中で悶え狂う女と、女のシルエットを交互に見ながらシコシコとシゴいた。
すぐにイキそうになり、慌ててペニスから手を離した。ピクピクと痙攣する一触即発のペニスを見つめながら般若心経を唱え、その沸き上がるマグマを鎮圧させた。

すると、いきなり女のシルエットがすくっと立ち上がるのが見えた。
女の手には携帯らしきものが握られており、微かなバイブ音が聞き取れた。
誰かから電話が掛かって来たのだろう、女は足を忍ばせながら病室を出ると、扉のすぐ横で足を止めては「もしもし」と声を潜めた。

俺は素早くベッドから起き上がると、カーテンの隙間から入口を見た。
ドアは半分開いていた。俺は床のタイルに素足をヒタヒタさせながらドアまで行くと、ドアの隙間に耳をソッと傾け、女の話し声を盗み聞きしたのだった。

睨んだ通り、相手は例の部長のようだった。
女はしきりに「無理です」や、「明日じゃダメですか」と何かを断っていた。恐らくあのクソ部長は、病院の駐車場辺りから電話を掛けているに違いなく、今から病院を出て来い、などと勃起したチンポをシゴキながら女を誘っているのだろうと、俺は勝手に想像を膨らませた。

「とにかく、あの人がいつ目を覚ますかわかりませんから、今は無理です。明日にして下さい」

女は、そう何度も同じ事を繰り返しながら電話を切った。

女は携帯をパタンっと閉じると、静まり返った廊下に大きな溜息を響かせた。
そしてクルッとこちらに向くと、そのままドアをスルスルっと開けた。
ドアの前で腰を屈めていた俺と目が合った。
女はさっきと同じようにギョッと目を見開き、呆然と俺を見つめていた。

「あんた、今、誰と電話してたんだよ……」

俺はゆっくりと体を起き上がらせながら小声で聞いた。

「だ、誰って……どうしてですか?……」

女はゴクリと唾を飲みながら聞いた。

「どうせ部長さんだろ……俺は全部知ってんだぜ……」

俺の目をジッと見つめたまま女は放心状態になった。

「さっきの屋上のアレ。全部、携帯に録画させてもらったよ……」

女の小さな肩がビクンっと跳ねた。

「末期ガンの旦那がアレを見たらいったいどうなるだろうね……」

俺がそう言い終わらないうちに、女は今にも泣き出しそうな表情で自分の拳をガリッと噛み、尻をモゾモゾさせながら「許して下さい」と小さく呟いた。

「許すも許さねぇも……まぁ、あんた次第だけどね……」

女は眉を八の字にさせながら「いくらですか」と聞いて来た。
そんな女の表情に、俺のマゾヒストな一面が頭の中でドス黒い渦を作り始めた。

「まぁ、ここじゃなんだら、こっちでゆっくり話そうや……」

そう言いながら、俺は静かにカーテンを掻き分け、アンアンといやらしい声が洩れているイヤホンが転がる自分のベッドに、ゆっくりと腰を下ろしたのだった。

しばらくベッドの上で胡座をかいたまま待っていると、女は恐る恐るカーテンを掻き分けながら入って来た。

「ここじゃなく、廊下じゃダメですか……」

女は話し声が隣の旦那に聞こえるのを怖れているのか、しきりに病室の外に出たがった。

確かに、じっくりとこの女を犯すにはここでは危険すぎた。
物音に気付いた旦那がいきなりカーテンを開ける危険性もあれば、他の患者が気配に気付いて覗きに来る恐れもあった。
が、しかし、俺はあえてここでこの腐れ女を犯してやりたかった。
隣で寝ている旦那に脅えながら犯されるという罰を、俺はこの女に与えやりたかったのだ。

「廊下で待ってますから」とカーテンから出て行こうとする女の腕を、俺はおもいきり掴んだ。
そして素早く女の背後に回ると、その細い体をがっしりと抱きしめながら、「声を出すと旦那が目を覚ますぞ」と、古典的な脅し文句を耳元に囁いた。

女の首筋には甘い香りが漂っていた。
女は蚊の鳴くような小声で「やめて下さい」と言いながら、ブラウスの上を這い回る俺の手を押さえつけた。

「声を出すなって言ってるだろ……バレて困るのはおまえのほうなんだぜ……」

俺はそう笑いながら女の口元を手の平で塞いだ。
そしてそのまま、そのペラペラの薄いロングスカートを、屋上で見た部長と同じようにスリスリとたくし上げた。

真っ白な細い脚は、リカちゃん人形のように長い為、スカートの裾をヘソまでたくし上げるのに結構な時間を要した。
太ももが顔を出すと同時に、さっき屋上で見た黒いラインの入った白いパンティーが現れた。
女は口を塞がれたまま、そんな俺の腕を必死に振り解こうとしていたのだった。

パンティーの上から膣に触れた。
ツルツルとしたパンティーの生地の中にグニョグニョとした肉を感じた。
口を塞いだまま女の顔を見た。
そんな女の目は、古いアメリカ映画で見た、電気椅子に座らされた死刑囚のように泳いでいた。

「騒ぐなよ。声を出すんじゃねぇぞ。大人しくしてたら全て忘れてやる……だから騒ぐな。いいか? 約束できるか?」

黒髪に鼻を押し付けながらそう囁くと、女は肩を震わせながらコクンっと頷いた。

そのまま女をベッドに突き倒した。
ベッドのパイプがガシャッと鳴った。女は「うっ」と呻きながらベッドにうつ伏せになり、慌てて俺に振り返った。

女を見下ろしながらパジャマのズボンをするりと剥いだ。
女の目の前に褐色の肉棒がニョキッと飛び出し、瞬間、女が唇の端をギュッと噛んだ。

「すぐ終わらせるから少しだけ我慢してろ……」

下卑た笑顔を浮かべながら、俺は我慢汁がネチャっと光る亀頭を突き出した。
女はそんな肉棒からソッと目を反らしながらゆっくりとベッドに顔を押し付けると、細い肩を震わせながらシクシクと泣き出したのだった。

ベッドの下にしゃがんだ俺は、うつ伏せに寝転んだ女のスカートを腰まで捲った。
白いパンティーに包まれた女の尻はまるで少女のように小さな尻だった。しかし形は良く、肉付きもそれなり良い。水を掬うように両手で尻肉を包み込むと、掌の中で真っ白な肉がふるふると揺れた。

そのままの体勢でパンティーを下ろした。
一瞬女の腰が躊躇ったが、しかしそこに抵抗する気力は無く、ただただベッドに顔を押し付けてはシクシクと泣き、人形のようにされるがままになっていた。

二つの丸い尻肉の谷間の奥に、この百合の花のような女には似合わないグロテスクな生き物が潜んでいた。しかし、このグニュグニュとした赤黒い生き物こそが、この女の本性なのかもしれない。

優しく尻を撫でながら指先を谷間に滑り込ませた。尻肉がピクッと反応し、アポロチョコのような肛門がキュッと萎縮した。
サワサワの陰毛をすり抜け、じっとりと湿ったグロテスクな部分に到着すると、ついさっき部長のペニスが突き刺さっていた膣を指で開いた。

ドス黒いヒダの奥から、目を見張るほどに美しい桃色の生肉が顔を出した。ダウンライトに照らされる桃色の穴はハチミツを垂らしたように粘膜がキラキラと輝き、まるで餌を欲しがる錦鯉の口のように筋肉がヒクヒクと動いていた。

そんな神秘的な穴を目の前にして、とたんに堪らなくなった俺は尻の谷間に顔を押し付けた。
水風船のように柔らかい尻肉が顔面で潰れ、谷間からは獣臭が微かに匂った。
これが部長のニオイなのかと、そのニオイに刺激を受けた俺は、迷う事なくそこに舌を這わせたのだった。

固くなったクリトリス、赤黒く爛れた小陰唇、パックリと口を開いた桃色の穴とキュッと口を窄めた茶色い肛門。
それらを、まるでコース料理を頂くように順番に味わった。
女の尻がさっきよりも激しく反応し始めた。
そんな尻を両手でがっちりと固定しながら、俺はそこに漂う不浄な部長のニオイを舌で消し去った。

百合の花のような女の陰部の味を、たっぷりと堪能した俺はゆっくりと尻から顔を上げた。
パジャマの袖で口の回りの唾液を拭いながらベッドの端に腰掛けると、唾液でテラテラと輝く女の陰部を見下ろした。

「部長とのセックスは気持ち良かったか?……」

そう呟きながら少女のように小さな尻を優しく撫でた。

「旦那の余命はあと幾ばくかしかないっつうのに、よくヤるよな……しかも旦那が入院している病院の屋上で……」

下卑た笑いを浮かべながら膣を弄ると、泣き濡れる女はベッドに顔を押し付けたままヒクッと喉を鳴らした。
しかし、そう泣いているにも関わらず、女の膣には明らかに唾液とは違うヌルヌルとした液体が溢れていた。

「なんだこりゃ……濡れてるじゃねぇか……隣で旦那が寝てるっていうのに、よくそんな気になれるもんだなぁ……」

俺は嫌味っぽくそう言いながら、パジャマのズボンを足首まで下げ、そのまま女の背中の上に体を這わせた。

「欲しくなったのか?……ん?……俺のチンポはあの四角い部長なんかよりもずっとでけぇし、それに長持ちするぞ……」

髪が乱れた耳元でそう囁きながら、柔らかい尻肉の谷間に固いペニスをスリスリと擦り付けた。

「入れて欲しいか?」

女の薄い耳を唇に挟みながら聞いた。
女は黙ったまま唇を噛んでいた。女の長いマツゲは涙でキラキラと輝いていた。

「どうなんだよ……コレを入れて欲しいのか欲しくないのか……」

ペニスを摘んだ俺は、尻肉の谷間でそれをグニグニと回転させると、亀頭の先で小陰唇をヌルヌルと泳がした。
蓋をしていた小陰唇がヌチャヌチャと開閉し、中から粘着力のある汁がタラタラと溢れ出した。
そうしながらもう片方の指で固くなったクリトリスをコリコリと転がすと、腰をモゾモゾさせ始めた女は、遂に「んんんっ……」といやらしい声を洩らした。

それが合図だった。
俺は尻の谷間にゆっくりと腰を沈め、一気に子宮の壁までペニスを滑り込ませた。
浴室の椅子に座りながら、ボディーソープをたっぷりとペニスに塗り込んだような、そんな懐かしい感触が下半身に広がった。

女は必死に声を堪えながらベッドのシーツを鷲掴みにしていた。
不意に隣のベッドから旦那の咳が二度ほど聞こえた。
女が慌ててガバッと顔を起こし、今にも泣き出しそうな表情でカーテンを見つめた。

そんな女の切ない顔が、俺のサド心を堪らなく揺さぶった。
旦那が目を覚ましたかもしれないという最悪な状況下、俺は女の細い腰を持ち上げ、尻を高く突き上げさせた四つん這いの体勢にした。
女は無言で首を振り、カーテンの向こうで旦那が起きているからと必死に俺に訴えた。

それがどうした。
俺に明日は約束されていないんだ。俺はいつ死んでもおかしくないんだ。
もうすぐ俺はパッと消えるんだ。何の予告もなしに、あるとき突然、パッと消えてなくなるんだ。
だからどうした。それがどうした。
どうせもうすぐ消えてなくなる俺だ、この先てめぇらがどうなろうと俺には知ったこっちゃねぇ。

俺はそう女の耳元で呟きながら非情に笑い、女の尻におもいきり腰を打ち付けた。

静まり返った病室の片隅で、ギシギシと軋むパイプベッドの音と、声を必死に押し殺した女の啜り泣きが、古い井戸の奥底でナマズが蠢くように静かに響いていたのだった。


             


翌朝、朝食のカートが病室前にやってきても、隣のベッドから女は出て来なかった。
豚のような配食係の女に急かされながら、番号札のかかったプレートをカートから引きずり出すと、背後で「おはようございます」と声が聞こえた。
振り向くと隣の男が濁った笑顔で立ちすくんでいた。

「あれ? 奥さんは?」

俺は別カートに置いてあったヨーグルトを取りながら、さりげなく聞いた。
旦那は覇気の無い目を貪よりと動かしながら、カートの中にある自分の番号札を探し、「娘を保育園に連れてかなくちゃなりませんので、今朝早くに家に戻りました……」と気怠く呟くと、カートの中から自分のプレートを抜き取った。

「ふぅ〜ん……奥さんも大変だねぇ……」

そう呟きながらスリッパを鳴らして自分のベッドに戻った。
『めざましテレビ』を見ながら家畜の餌のような朝食を貪り喰った。
若い女子アナの細い腰を見ていると、昨夜の女のクネクネと蠢いていたスケベな腰の動きを思い出し、おもわず布団の中で固くなっているペニスを握り締めた。

昼を過ぎた頃、カーテンの向こう側に複数の靴音を聞いた。
携帯で2ちゃんねるを見ていた俺は、その足音が隣のベッドで止まるのを確認すると、慌てて上半身を起こした。

「おぉ〜い、元気にしてるかぁ」

そう体育会系のノリでカーテンを開けたのは四角い部長だった。
それは、末期患者の病棟ではありえない挨拶だった。

携帯を弄るフリをしながら、カーテンの微かな隙間から部長の顔を見た俺は、ふと、もしかしたらこいつは昨夜の出来事を女から聞いているかも知れない、と警戒した。

「今日は専務が来てくれたんだぜぇ〜」

四角い部長は、そう言いながら後ろの男を前面に押し出した。
四角い部長のその戯けた口ぶりは、恐らくすぎちゃんを意識しているのだろうと思うと、強烈にムカついてきた。

「具合はどうかね」

専務と呼ばれた男がありきたりな花束を手にしながらヌッと顔を出した。一瞬、ムツゴロウかと思った。

男と、四角い部長と、ムツゴロウのような専務が、どーでもいい会話を始めた。
俺はそんな会話に耳を傾けながら、女は来ていないのかとカーテンの隙間から必死に女の姿を捜した。

すると、少し遅れてスリッパの音が廊下から聞こえて来た。
俺は素早くベッドから降りると、カーテンの隙間から病室の入口を見た。
ペタペタと鳴るスリッパの音がみるみると近付いてきた。
白いセーターと薄ピンクのスカートを履いた女が現れた。
薄暗い病室にパッと一輪の花が咲いたようだった。

俺のベッドを通り過ぎようとした女をカーテンの隙間からソッと呼び止めた。
肩をピクンッと跳ね上げた女は、えっ! と驚いた表情で足を止め、その大きな瞳をみるみると恐怖色に染めた。

俺はカーテンから手を出すと、まるで獣が獲物に喰らい付くかのように素早く女の細い腕を掴み、そのままカーテンの中に引きずり込んだ。

薄いカーテンに仕切られた向こう側には、旦那と部長と専務がボソボソと話しをしていた。窓から差し込む午後の気怠い日差しが、仕切りのカーテンに三人のシルエットを浮かび上がらせていた。

この状況は、この女にとって一触即発の状況だった。
小さく咳き込んだだけでも、自分がそこにいることが旦那達にバレてしまうというギリギリの状況なのだ。

そんな状況の中で、俺は女の柔らかい体に抱きついた。
女は必死に首を振った。声が出せない女はジェスチャーによって抵抗するしかなかったのだ。

そんな女の耳元に俺は静かに囁いた。

「すぐに終わらせるから」

すると女は、もがいていた体を必死に静めた。
この状況では素直に観念するしか方法はないのだ。

俺は女の細い体を背後から抱きしめながら、女の匂いを胸一杯に吸い込んだ。
女の髪からは高級なリンスの香りが漂い、細いうなじからは薔薇の香りのボディーソープがムンムンと漂って来た。
恐らく女は朝一番でシャワーを浴び、昨日の部長と俺のニオイを必死に証拠隠滅したのだろう。

そんな白いうなじと柔らかい頬に唇を押しあてながら、浄めた女の匂いを嗅ぎまくっていると、突然、カーテンの向こう側から「あれ? 美佐は一緒じゃなかったんですか?」と、男が部長に聞く声が聞こえた。
瞬間、女は眉間にギュッと皺を寄せ、唇を噛んだ。

「あれ? 本当だ。エレベーターまで一緒だったんだけど変だな……」

そう呟く部長がパイプ椅子から立ち上がる音が聞こえた。
女を探しに行こうとする部長の気配に、女は俺の腕の中で身を縮め、息を潜めた。それはまるでナチスの足音に脅えながら身を隠すユダヤ人のようだった。

それをチャンスとばかりに、俺は女の足下にしゃがみ込むと、ピンクのスカートの中に素早く手を入れ、一気にパンティーを下ろした。
身動きできない女は、学校の廊下でおしっこを洩らしてしまった少女のように、両手で顔を塞ぎながら震えていた。

パンティーを足首から抜き取ると、再び立ったまま女を背後から抱きしめた。
スカートを捲り上げると、カーテンから透ける午後の日差しに、真っ白な下腹部が曝け出された。
俺は女の右足を持ち上げ、踵をベッドの上に置いた。

白い股が開らかれた。色素の薄い陰毛の中にドス黒い一本線がスッと走っていた。
そんな一本線を指で開こうとすると、女の小さな体が微かに抵抗を見せた。

その時、廊下を出て行った部長が革靴の音を響かせながら病室に帰って来た。

「ナースステーションにもいなかったよ……どこ行ったんだろ……」


部長のその言葉に女の抵抗が止んだ。
その隙にワレメを指で押し開き、粘膜部分を剥き出しにした。
真昼に見る女の陰部はあまりにも卑猥すぎた。

立ったまま指を穴の中に入れた。
驚いた事に、女のソコはヌルヌルに濡れていた。

「なんだよコレ……おまえ、この状況で感じてるのか?」

耳元でそう囁いてやると、女はそれがよほど屈辱的だったのか、イヤイヤと首を振りながら再び小さな抵抗を始めた。

そんな女の肩を抱きながら、静かにベッドに押し倒した。
そこで暴れれば当然ベッドは激しい音を立てるだろう。
それに気付いているのか、仰向けに寝転がった女は両手で顔を塞ぎながら、静かに肩を震わせていた。

女を見下ろしながらパジャマのズボンとトランクスを同時に下ろした。
ビンビンに勃起したペニスを突き立てながらベッドに上がると、仰向けに寝転がる女の両太ももを両腕に抱えた。
M字に開いた股の奥では、だらりと口を開いた膣がたらたらと涎を垂らしていた。
そこにパンパンに腫れ上がった亀頭を擦り付け、互いの潤滑油を混ぜては、くちゃ、くちゃ、と下品な音を立てた。

「わかってると思うけど、声を出すなよ……」

両手で塞がれた女の顔を覗き込みながらそう呟くと、女は指の隙間からソッと俺を見つめ、コクンっと小さく頷いた。

ズズズッとペニスを押し込んだ。
女の体が、灯油ストーブの上で焼かれるスルメのようにジワジワとよじれ始め、顔を塞いでいた手でシーツを鷲掴みにした。

女は完全に感じているようだった。
ゆっくりと腰を動かす度に、下唇を強く噛み締め、洩れそうになる声を必死に堪えていた。

女の細い足首を両手でギュッと握り締め、カエルのように開いた股にコキコキと腰を振ると、ヌポヌポと出入りするペニスがまともに見えた。
女は切ない目で俺を見つめながら、膣から白濁の液体をタラタラと流している。

そんな女の官能的な姿に、おもわず俺の腰が早くなった。
ヌポヌポと激しくピストンするペニスに、女は細い腰をエビ反らせ、そして遂に「うっ」と声を上げてしまった。

隣から聞こえていた雑談が一瞬止まった。
俺は「まずい!」と思いながら腰を止めた。そして息を潜めながら、ベッドの隅に放置されていたパンティーをたぐり寄せると、慌てて女の口の中に押し込んだのだった。

ペニスを突き刺したまま女を抱きしめていた俺は、しばらく腰の動きを止めていた。
息を殺しながら女の顔をソッと見ると、女は口にパンティーを押し込んだままジッと俺の目を見ていた。
互いに見つめ合いながら身を潜めていると、ふと子供の頃によく遊んだ『かくれんぼ』を思い出した。

しかし、隣は明らかにこちらに不信感を抱いたようだった。
恐らく三人ともこちらに耳を傾けているのだろう、妙な静けさがカーテンの向こうに漂っていた。

いつ、隣の男が「あのぅ……」と言いながらカーテンを覗き込んでくるかわからない恐怖に、俺の背中がヒヤヒヤした。
しかし、それでも俺のペニスは萎まなかった。
女の穴からも次々にトロトロ液が溢れている。

再び俺は腰を動かした。
見つかったらどうしようっという恐怖に包まれながらも、見つかったら見つかったで、それがどうした、という開き直りが、俺の腰を動かしていた。

ヌポヌポとペニスを突き刺しながら、女の小さな乳を揉みまくった。桜貝のような乳首を吸い、肛門に人差し指を突っ込んでやった。
女も乱れた。大きな目を半開きにさせながら、俺の腰の動きに合わせて、その細い腰を小刻みに振っていた。

「それにしても美佐ちゃん遅いなぁ……ちょっと携帯に電話してみたらどうだ?」

部長が男に呟く声がカーテンの向こう側から聞こえてきた。
「そうですね」と男が答えると同時に、女のスカートのポケットの中でコロコロと転がっている携帯電話に気付いた。

女は、部長と男のそのやり取りに気付いていなかった。
自ら両脚を高く抱え上げ、もっと奥までと言わんばかりに腰を突き上げていた。

ここで女の携帯が鳴れば、この薄いカーテンはたちまち開かれるだろう。
女をスコスコと犯している俺を見て、男が叫び、部長が俺に襲い掛かり、そして専務が警察に電話を掛けるだろう。

今ならまだ間に合う。
今なら携帯の電源を切る時間はある。

しかし俺は電話の電源を切らなかった。
どうせ俺はもうすぐ消えてなくなるんだ。
殴られようが、警察に捕まろうが、それがどうした。
俺には知ったこっちゃねぇ。

いきなり俺と女の太ももの間で、けたたましい電子音が鳴り出した。
女がギョッ! と目を見開き、ガバッと顔を上げた。
カーテンの向こうから「ここだ!」という声が聞こえ、シャッ! と音を立ててカーテンが開かれると、昼の日差しが交わり合う俺と女を激しく照らした。

俺は腰を振ったままゆっくりと三人に顔を向けた。
愕然としている三人の顔は、まるで歌舞伎役者のようだ。

「ちょっと待て……今、中で出すから……」

三人に向かってそう呟くと、部長が「貴様ぁ!」と叫び、すかさず専務がパイプ椅子を掴んだ。

女がパンティーを口から吐き出しながら「あなた!」と叫んだ。
あなたと叫ばれた男は、震える拳を握りしめながら俺を見つめ、「殺してやる……」と唸った。

殺す?
上等じゃねぇか、どうせもうすぐ死ぬんだ。
そう思った瞬間、俺の精液が女の膣の中で破裂した。

その快楽に、おもわず「あぁぁぁ」と唸り声を上げると、パイプ椅子をわなわなと掴んだ専務が、「貴様のような奴は地獄に落ちるぞ!」と叫んだ。

俺はそんな専務を見つめながら笑った。
そしてゆっくりと天井を見上げながら、誰に言うでも無くポツリと呟いた。

「それがどうした……」

(完)

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