天使と悪魔2
2011/04/15 Fri 09:59
4
お風呂からあがった優は、冷蔵庫からアセロラドリンクを取り出すと、「ふんふん♪」と鼻歌を歌いながら二階の自室へと向かった。
真っ白なTシャツにショッキングピンクの短パン。鏡の前に座った優は、その短パンのピンクに合わせたヘアバンドで髪をキュッとアップにさせると、真っ白な額に化粧水を染み込ませたコットンでパタパタパタっと叩き始めた。
そこにふとメールの着信音が鳴る。
優は鏡に向かって額をパタパタパタさせながら、その大きな目玉だけをギロッと壁の時計に向けた。
11時15分。
(こんな時間に誰かなぁ・・・)
優はそう思いながら、窓際の机の上に置いてあった携帯を取ろうと、オデコにコットンを張付けたまま鏡台からスクッと立ち上がった。
その時、何気にレースのカーテンが引かれた窓の向こうを見た。
家の前の細い路地の電信柱の影に、誰かがソッと潜んでいるのが見えた。
(あっ!またいる!)
優は慌ててその場にスっとしゃがみ、窓から身を隠した。
その電信柱に潜む影は、数ヶ月前から優を脅かせていた。
その影は男だった。そしてその男は優の部屋をジッと見上げ、あきらかに優の何かを観察しているような様子なのだ。
そんな影に怯える優は父に訴え、その度に父が金属バット片手にその電信柱に行ってくれたのだが、しかし父がそこに行くとその影はいつの間にか消えている。
そのうち父は、優がどれだけ「またその男が電信柱の影にいる」と訴えても、「勘違いだよ」と取り合ってくれなくなった。
しかし、その影が勘違いじゃないという事を優は確信していた。
その証拠に、優が部屋の電気を消してしばらくすると、その影はそれを見届けるかのようにして、ソッと立ち去るのである。
優はしゃがんだままのアヒル歩きでベッドの横にある電気のスイッチへ向かった。
そしてそのままベッドの上に乗り、電気をパチッと消す。
レースのカーテンから外の街灯がボンヤリと照らすだけの薄暗い部屋で、優はソーッと窓の外を覗いてみた。
電信柱に潜む影は、電信柱から身を乗り出して優の部屋を見上げていた。その顔は暗くて見えないが、しかし黒い皮のジャンパーを着ているのだけがわかった。
男はしばらく電気の消えた優の部屋を見つめていたが、そのうち闇に吸い込まれて行くようにスーッと消えて行ったのであった。
(こ、怖い・・・・)
レースのカーテンの端で、人差し指の爪をカリカリと噛みながら消えて行く男を見つめる優は、電気を付けるとまたその男が戻って来るような気がし、そのまま電気も点けずにソッとベッドに腰を下ろしたのだった。
(いったい誰なんだろう・・・もしかして、またストーカーかな・・・)
そう脅える優は、過去に何度もストーカーの被害を受けた事がある。
イタズラ電話は日常茶飯事でノゾキも頻繁だった。いつも優の家のゴミ袋だけがゴミ置場から盗まれ、庭に干している洗濯物は悉く奪われた。その他にも家の表札やガーデニング用のスコップといった、そんな物を盗んでどうするんだろうと理解に苦しむ物から、おじいちゃんの盆栽やお父さんの自転車のサドルといった第三者の物までもが何者かに持ち去られた。
警察の調べによると、その犯人は複数で、しかもそれは各自が個人的に犯行に及んでいるものであり組織的な犯行ではないという見解だった。
しかし、警察はそれを調べただけであり、それ以上は何もしてくれなかった。今度また何かが盗まれたら知らせて下さい、と、爽やかに敬礼して言ったきり、その後はパトロールさえもしてくれない有り様なのだ。
そのうち、それら複数のストーカーはいよいよ実力行使に出て来た。
優の家の玄関のドアノブに精液らしきモノをぶっかけたり、精液が溜ったコンドームが宅急便で送りつけられたりした。そしてある時など、夜中にトイレの窓がバールでこじ開けられるという荒っぽい事件まで起きた。
家族は脅え、母親はノイローゼとなり、盆栽を盗まれたおじいちゃんはショックのあまりに寝込んだ(元々寝たきりだが)。
そんな犯人を一日も早く捕まえてくれと、父親は何度も警察に苦情を言ったが、しかし警察は犯人の特定のしようがないとなかなか腰を上げようとはしなかった。
しかし、それらの犯人が誰であるかは、ストーカー被害者の張本人である優が一番知っていた。
そう、その犯人たちは、これまでに優が性的オモチャにした男達の仕業だという事を、優は最初から気付いていたのだ。
しかし、だからと言って、それを親や警察に素直に言うわけにはいかない。
まさか、その犯人全員が、優が出会い系サイトで知り合った男達だなどと言えるわけがないのだ。
そのうち、優のストーカーの被害に遭っているという噂が学校中に広まった。
しかし、学校では超アイドル的存在の優がストーカー被害に遭う事くらい当然のことだろうと、その噂はキムタクが女子アナと深夜のデートをしていたくらいの程度で治まり、そのうち自然消滅していったのだった。
それからしばらくして、そんな複数のストーカーはプッツリと消えた。
不思議な事に、あれだけ毎日のように精液がぶっかけられていたドアノブも、一切汚されなくなったのだ。
(いったい何があったんだろう・・・)
一斉に影を潜めたストーカー達を不気味に思っていると、そのストーカー達と入れ替わるようにして電信柱に潜む影の男が現れたのだ。
優は、今までのストーカー達よりも、電信柱に潜む影の男を怖れた。
今までのストーカー達には心当たりがあったが、しかしここ最近は出会い系で知り合った男達をむやみに捨てたりしていなかった優は、電信柱に潜む影の男には全く身に覚えがないのだ。
(あいつはいったい誰なの・・・・)
そんな不気味な影に脅える優は、薄暗い部屋の中で静かに携帯を開いた。
外の街灯がボンヤリ差し込むだけの部屋に、開かれた携帯の照明がパッと光り、脅えていた優を少しだけ安心させてくれた。
優はメールボックスを開いた。
さっき届いたメールには送信名もなくタイトルもなかった。
薄気味悪かったが、とりあえずそのメールを開いてみる。
《俺、おまえの秘密、知ってるぞ》
そのメールはたったそれだけしか書いてなかった。
だからこうしろという要求もなく、ただそれだけがポツンと打ち込んであった。
秘密・・・
優は大きな目を天井に向けながら自分の秘密を考えた。
しかし、あまりにも秘密が多すぎる優は、それ以上考えるのが面倒臭くなり、そのままベッドにゴロンと横になったのだった。
5
「ねぇ、サトルぅ・・・」
貪よりとした怪しい空気が漂うクラブZ。その奥のテーブルで、ジントニックをチビリチビリと舐める松浦の体にしなだれかかってきた女は、そのままソファーに座る松浦の膝の上に上半身を横たえた。
「っせぇなぁ・・・」
女の茶髪を掴み上げ、膝の上から引きずり下ろそうとすると、女はそれを振り払いながら再び松浦の太ももにしがみつき、「ねぇ、お願い・・・」と悲痛な声を出しながら、松浦のズボンのベルトに手を掛けた。
「いいかげんにしろよ!」
松浦は膝をあげて、太ももの上の女を突き飛ばした。
「お願い・・・しゃぶるだけでいいから・・・サトルのオチンチン頂戴・・・」
真っ黒な床に尻餅を付いた女は、そう言いながらまるでゾンビのように松浦の足にしがみついた。
女のワンピースの胸元から見える、真っ赤なブラジャーに包まれた白い巨乳が松浦の脛にムニュッと押し付けられた。
「ジャンキーは嫌いなんだよ・・・」
松浦はそう吐き捨てるとそのまま席を立ち、足下に縋り付く女を乱暴に蹴散らすと、ムンムンと不気味な熱気が漂うフロアの中へと足早に去った。
「もぅ・・・サトルのバカ・・・」
そう項垂れる茶髪女の腕を、松浦の横のソファーでふんぞり返っていた男が強引に引っ張り、そのまま女をソファーに座らせた。
「へへへへ・・・松浦は女にゃ興味はねぇからよ、あいつは諦めな姉ちゃん・・・」
男はそういいながら女のヒョウ柄のミニスカートの中に手を入れ、真っ赤なパンティーの上から女の股間をスリスリと撫でた。
「女に興味ないって・・・どーいう事?・・・サトルってホモ?・・・」
女はテーブルの上に置いてあった松浦のジントニックを手に取ると、ロレツの曲がらない口調でそう言いながらそれを一気に飲み干した。
「バカ、そんな事あいつの前で言ってみろ、マジぶっ殺されるぜ、なぁ」
男はそう言いながら周りの男達にそう言うと、みんなが一斉にニヤニヤした。
そしてそのうちの一人の男がソファーからゆっくりと身を起こし、テーブルの上のグラスをゆっくり握りながら、「サトルはホモじゃねぇ・・・あいつは童貞なんだ」と呟いた。
すると周りの男達が一斉に破廉恥な声をあげてケラケラと笑い始めた。
「本当?・・・サトルは童貞なの?」
ジントニックのグラスを乱暴に置いた女が、隣りの男に慌てて振り向く。
「あぁ・・・あいつは正真正銘のチェリーボーイだ・・・」
男はそう笑いながら女の真っ赤なパンティーを指でずらし、ヒョウ柄のミニスカートから女の性器を剥き出しにさせると、そこに二本の指を這わせた。
男の指が女の濃厚な汁でネチネチと音を立てはじめると、男はもう片方の手で自分のズボンのチャックを開け勃起するイチモツを捻り出した。
「しゃぶれよ・・・」
男は女の熱い穴の中に指を深く入れながら囁いた。
すると女は「その前に入れてよ・・・」と真っ赤な口紅を光らせて怪しく笑い、ソファーの上の男の膝の上に跨がったのだった。
ドンドンドンっと重低音が激しく響くフロアは、まるで地下鉄工事の現場のようだった。
照明がひとつもない真っ暗なフロアは、かろうじてDJブースから洩れる灯りだけが、そこに蠢く男と女を怪しく映し出していた。
薄らと見える人影を避けながら、松浦はフロアの奥にある出口に向かっていた。
そんな松浦に気付いた女達が、「ねぇ・・・」と言いながら松浦の腰に手を回して来た。
ここに集まる女達は、この超美少年の松浦に抱かれたくてウズウズしているのだ。
しかし、そんな女達を松浦は悉く追い払った。
そんな松浦は決して女が嫌いというわけではなかった。
いや、まだ童貞なだけに、松浦は早く女とヤリたくてヤリたくて堪らないのだ。
ただ松浦は、このクラブに集まっているようなラリッた女や酔っぱらった女には全く興味がなかった。
(どれだけ可愛くたって、酒や薬に頼って乱れる女なんて興味ねぇ・・・俺は、素の変態女が好きなんだ・・・)
松浦は心の中でそう呟きながら、しなだれかかってくる女達を次々に押しのけ、そして(そう・・・俺は浅岡優みたいな素の変態とヤリたいんだよ・・・)と、怪しく微笑み、出口へと続く螺旋階段を上って行ったのだった。
クラブZを出ると、松浦はそのままブラブラと夜の繁華街をブラついた。
そして繁華街の出口にある小さな公園に辿り着くと、そこで携帯を開いた。
何気なく携帯をピッピッピッと押すと、ディスプレイに「浅岡優」という名前が表示された。
それは、れいの職員用立体駐車場のトイレで浅岡の本性を目撃した日、クラスの女子生徒からこっそり聞き出した優の携帯番号と、そしてメールアドレスだった。
(今からあいつをここに呼び出してやろうか・・・)
松浦は、ムラムラと興奮しながらも、携帯の発進ボタンの上に指を置いたまま、「浅岡優」と表示されたディスプレイを見つめていた。
(あいつは俺には逆らえない・・・俺はあいつの秘密を知っている・・・だからこんな時間でも俺に呼び出されればあいつはきっと来る・・・いや、来なくちゃならない・・・)
そうニヤリと笑う松浦は、優をこの公園に呼び出してからの事を悶々と妄想した。
(みんなにバラされたくなかったら言う事を聞け・・・そう言いながら、あいつを・・・)
松浦は誰もいない夜の公園を見回した。
(そうだ、あのトイレに連れ込もう・・・)
公園の奥に、蛍光灯がパカパカと切れ掛かっている薄汚い公衆便所を見つけた。
(あんな汚い場所が変態女にはお似合いだぜ・・・)
松浦はそう不敵に笑いながら、ゆっくりとその公衆便所へと向かったのだった。
まるでフラッシュライトのようにパカパカと点滅する蛍光灯には、大量の蜘蛛の巣が張り巡らされ、そこには無数の小さな虫の死骸が蜘蛛に食べられる事もなく漠然と張り付いていた。
『池袋秋山愚連隊』
そんなスプレーの落書きがされた入口を潜ると、ひんやりとしたタイルの冷たさが松浦の全身を包み込む。
ガランっとした男子便所には、小便器に洩れる水の音が、まるで小川のせせらぎのようにチョロチョロと響いていた。
そんな小便器の前に立った松浦は、妄想の中で優をこの落書きだらけの荒んだ壁に押し付けた。
(ここでオナニーするんだ・・・)
松浦は、小便器から漂うアンモニア臭に刺激されながら、妄想の中の優にオナニーを命じた。
まるでアイドル歌手のように可愛い優が、この薄汚い公衆便所で変態オナニーをするシーンを思い浮かべながら、松浦は静かにズボンのチャックを開けた。
そしてピーンっと勃起したペニスを捻り出しながら、妄想の中の優に言う。
(しゃぶりたいだろ変態・・・それとも、もうグショグショになっているソコに入れて欲しいか・・・)
そう呟きながら、松浦は小便器に向かってシコシコとペニスをシゴいた。
(あんなキモいおっさんにさえアソコを見せるくらいだ・・・俺にだったら中出しだってさせてくれるだろう・・・)
松浦は、まだ知らない挿入の感触を想像しながら、壁に押し付けた優の股間の中でグイグイと腰を振る自分の姿を妄想した。
快楽がジワジワと松浦の背筋に広がって来た。
妄想の中の優が松浦の体にしがみつき「ごめんなさい!ごめんなさい!」と耳元で喘ぐ。
松浦がそんな妄想の優の唇の中に舌を押し込もうとした瞬間、いきなり小便器の中にヌッと手が現れ、シコシコと上下にシゴく松浦の手を静かに停止させた。
「えっ?!」
松浦は慌てて後を振り向いた。
そこには、どこかの会社の係長っといった感じの中年男が、ニヤニヤと笑いながら立っていた。
松浦は、一瞬この男は刑事かもしれないと思い、その対応に焦った。
そしてとりあえずペニスをズボンにしまおうとしたその瞬間、中年男のそのゴツゴツとした手がそれを制止させた。
「ヤメなくてもいいじゃないですか・・・さ、こっちでゆっくり楽しみましょう・・・」
中年男はニヤニヤしながら松浦にそう囁くと、そのまま松浦の手を引いて、後の個室へと入って行く。
(ホモだ・・・・)
松浦は一瞬ムカッ!と来た。
というのは、これだけ女にモテるにも関わらず、いつまでも童貞だった松浦は、周りからホモだと噂されていたからだ。
(冗談じゃねぇ!)
そうカッ!と来た松浦が、中年男に掴まれた腕を振り払おうとした瞬間、中年男がいきなり呟いた。
「ほほぅ・・・キミは凄い包茎だね・・・象さんみたいだよ」
中年男はそう言いながらホホホホホっと笑い、松浦のペニスをソッと握りながら個室のドアをバタンと閉めた。
その言葉で突然頭の中が真っ白になった松浦は、まるで電池の切れたロボットのように止まってしまい、そのバタンっと響くドアが閉まる音さえもスローモーションになっていた。
包茎。
これが超美少年松浦が今だ童貞だった理由だった。
彼の中学生の時のあだ名は、ズバリ『象さん』だった。
学校のトイレで友達と並んで小便をする度に、皆は松浦に向かって「♪ぞう~さん♪ぞう~さん♪お~鼻が長いのよ♪」とからかった。
そんな時、松浦の両親は離婚した。
松浦は、両親の離婚を理由にグレ始め、そして登校拒否となる。
しかし、松浦の登校拒否の本当の理由は、包茎をバカにされるのが嫌だったからである。
さすがに包茎が理由で登校拒否をしているなどとは誰も気付かなかった。
そんな松浦は、高校生になるとメキメキと美少年ぶりを発揮し、たちまち学校のアイドル的存在となった。
幸いにも、この高校には中学時代の松浦のあだ名を知る者は1人もおらず、松浦はそれを誰にも知られる事無くアイドルとしての座に君臨し続けて来た。
だから松浦は女とセックスができなかった。
セックスをすれば、相手にその凄い包茎がバレてしまうからだ。
そんな事が噂にでもなれば、松浦はたちまちアイドルの座を引きずり下ろされてしまう。そうなれば、また昔のように象さんに舞い戻るのだ。
そんな理由から、松浦はどれだけ綺麗な女に誘われようとも、その貞操を頑に守り続けていたのだった。
そんな松浦の秘密が、今、この薄汚いホモ親父によって暴かれた。
松浦にとってトラウマとも呼べる『象さん』という言葉を、このホモ親父はサラリと言ってのけたのだ。
松浦は愕然とした。
愕然としながら、松浦の足下にしゃがみ込んだおっさんを静かに見下ろしポツリと思う。
(秘密がバレてしまった以上、このおっさんを殺すしかない・・・・)
松浦はそう呟きながら、子供の時、金曜ロードショーで見た『人間の証明』という映画をふと思い出した。
華やかなファッション業界に君臨する女王。その女王は女王として君臨していく為に、醜い過去を闇に葬った。その為に、女王は過去を知る者達を次々に殺していく。そう、それが例え自分の子供であっても・・・
ふいに松浦の脳裏でジョー山中が歌い出した。
「♪ママぁ~ドゥユリーメンバー♪」
松浦はそんなジョー山中の哀愁漂う歌声に包まれながら、足下でしゃがんでいる中年男の首を絞めようと、静かに静かに両手を伸ばす。
その時、いきなり凄い衝撃が松浦の下半身を襲った。
「ひっ!」
そう小さく叫びながら慌てて下半身を見ると、なんと中年男がトカゲのようにレロレロと舌を出し入れしながら、松浦の象さんペニスを舐めていた。
「キミ・・・とっても美男子なのに・・・こんなに凄い包茎だなんて・・・残念だね・・・」
中年男はそう囁きながら松浦のウドのようなペニスに舌を絡ませた。
中年男の生温かい舌がペニスの先やら裏やら根元やらをチロチロと這い回る。
(あぁぁぁ・・・・・・)
松浦は、あまりの感触の良さに心の中で唸った。
フェラチオと呼ばれるモノがこんなに気持ちがイイものだなんて思いもよらなかった松浦は、もっともっと舐めて欲しいという欲望に駆られ、中年男に向けて更にペニスを突き出した。
「ん?・・・はははは・・・気持ちいいんだね?・・・いいよ、たっぷりと感じなさい・・・」
中年男はそう笑うと、今度はゆっくりと口を開き、松浦のペニスをそのままヌルッと飲み込んだ。
「あぁぁ!・・・・」
遂に松浦は声をあげてしまった。それほどこの中年男の口の中は気持ちが良かったのだ。
松浦は朦朧とする意識の中で思った。
こいつを殺すのは、射精してからでも遅くはない、と。
そう思った瞬間、何かに解放されたような松浦は、ジュボジュボと音を立てて顔を上下さす中年男を見下ろしながらバカみたいに喘ぎまくった。
スポンっとペニスを口から抜いた中年男は、今度は松浦の金玉をチロチロと舐め始めた。
「そ、そ、そんなトコまで・・・」
ブルブルと震える松浦が情けない声を出すと、中年男はうふふふふふっと不気味に笑いながら、松浦の体をそのまま後ろ向きにし、個室の壁に手を付かせた。
そして松浦のムキっと突き出した尻の谷間をゆっくりと押し開くと、中年男はソコにソッと顔を近づけながら「可愛いアナルだね・・・」と囁き、松浦の肛門に熱い息を吹き掛けた。
そんな中年男の手は、しっかりと松浦の象さんをシコシコとシゴいていた。
ペニスをシゴかれながら、肛門をチロチロと舐められる松浦は、個室の壁に顔を押し付けながら、まるで魘されるかのように詩を呟き始めた。
「母さん・・・・僕のあの帽子どうしたでせうね・・・・ええ、夏、碓氷峠から霧積へ行くみちで渓谷へ落としたあの麦藁帽ですよ・・・・」
そう、ボソボソと詩を呟き始めた松浦に、中年男は「おっ?」と尻から顔を上げ、松浦の背中を見上げながら「それは『人間の証明』の詩だな」と嬉しそうにニッ!と白い歯を見せて微笑んだ。
そんな松浦の肛門は、中年男の唾液でネトネトになった。
中年男は、更にそこにポケットから取り出した『ペペローション・ポケットタイプ』をヌルヌルと塗り込み、ついでに松浦のペニスにもヌルヌルと塗り込み、そして自分の巨大松茸にもダラダラと塗り込んだ。
中年男はその作業を終えると、まだブツブツと詩を唱えている松浦の背中を静かに抱きしめた。
ローションでヌラヌラと輝く中年男の巨大松茸が、ポツリと口を開けた松浦の肛門の周りをヌルヌルと滑り回る。
「力を抜いて・・・・」
中年男は松浦の耳元に優しく囁いた。
松浦は、中年男の虫歯臭をまともに嗅ぎながらも、中年男の言われる通りガックリと力を落とす。
「行くよ・・・」
中年男はそう言いながら、松浦の肛門に巨大松茸の先を突き立てた。
そしてググッ!と腰を押し出すのと同時に中年男が「キスミー!」と叫ぶ。
すると、ヌルッ!と巨大松茸をぶち込まれた松浦が「ハレルヤ!」と叫ぶ。
そんな2人の人間の証明が、夜の池袋の公園で悲しく谺したのだった。
(つづく)
《←目次へ》《3話へ続く→》