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天使と悪魔1

2011/04/15 Fri 10:00

天使と悪魔1



 
              1

「でさぁ、その後、藤田先生と中山先生が一緒にお店から出てきたんだって」
「うそぉ・・・」
「うん。でね、竹本君達が2人の後を尾行したんだって。そしたらね、2人はどこに行ったと思う?」
「えっ、わかんない、どこどこ・・・」
「ラブホ・・・」
「!・・・信じられない・・・」
 優はマサミの顔を見つめたまま大きく目を開いて絶句した。
 いや、正確には絶句するフリをした。
「ね、そうだよね竹本君」
 得意気になったマサミが、教室の後で屯していた男子生徒に振り向きそう言った。
「あん?」
 男子生徒達が一斉にマサミ達を見た。
 マサミは、髪をツンツンに立てた竹本に向かって「ほら、例の藤田先生の話しよ。2人がラブホ行ったっていうの本当なんでしょ?」と、ニヤニヤと笑う。
「あぁ、本当だぜ。俺たちこの目でばっちり見たもんな・・・」
 竹本がそう言いながら体をダラダラさせながらマサミ達の席にやって来た。竹本の腰からぶら下がっている銀のチェーンがジャラジャラと音を立てた。
「スゲェんだぜアイツら。ラブホから出て来た後もよ、路地裏の隅でキスなんかしてよ・・・」
 竹本はそうニヤニヤと笑いながら、机に座っていた優の顔をソッと覗き込んだ。
 そんな優の大きな目にはウルウルと涙が溢れていた。
「えっ?・・・っていうか、なんでおまえが泣いてるわけ?」
 竹本がそう驚くと、近くに居た男子生徒達も「はぁ?」などと驚きながら、一斉に優の顔を覗き込んだ。
 そんな優は、顔を覗き込む男子生徒達に取り囲まれながら、とりあえず一粒の涙を頬に垂らさせた。
 その瞬間、男子生徒達は「マジかよ!」とゲラゲラ笑い出し、マサミも呆れ顔で「どうしたのよ優」と笑った。
「だって・・・先生達がそんな事するなんて・・・ショックなんだもん・・・」
 優はウルウルとさせた瞳で竹本達を見ると、鼻をクスンクスンとさせながらポツリとそう呟く。
 その瞬間、教室には男子生徒達の下品な笑い声が響いた。
「おまえ、マジにガキだよなぁ」
 竹本がそう言いながら机をバンバンと叩いて可笑しそうに笑うと、他の男子生徒も「十七才でまだ初潮来てねぇんじゃね」と言いながらゲラゲラと笑う。
 しかし、そう笑う男子生徒達の優を見る目に悪意はなかった。そこにいる男子生徒達の誰もが、そんな優を素直にカワイイと思っていた。
 すかさずお姉さんぶったマサミが「もう、優はウブなんだから・・・」と、クスンクスンと肩を震わす優の頭を優しく撫でた。
 優はそんな男子生徒とマサミにゆっくりと顔を上げると、鼻をクスンクスンさせては「えへっ」と照れくさそうに微笑んだのだった。

 その日の昼休み。
 教室でみんなとお喋りしていた優の携帯が「プルプルン♪」とメール着信音を奏でた。
 優は、そんなポケットの携帯を無視したまま、みんなが熱狂しながら話す「東方神起」の話題に「うんうん」と耳を傾けていた。
 しばらくすると、優はそっと席を立った。
 東方神起のブロマイドを手にした夏美が、まだ話しの途中よ、とばかりに「あれ、どこ行くの優」と優に振り向く。
「ちょっとおトイレ行って来るぅ・・・」
 優がカモシカのような長い脚でピョンっと跳ねながらそう言うと、教室にいた誰もがそんな優の可愛い仕草にうっとりと見つめた。
 そんな優が教室を出て行くと、優のか細い後ろ姿を見つめていたカオリがポツリと呟いた。
「優って、本当に処女なのかなぁ・・・」
 東方神起のブロマイドを囲んでいた女子達が、一斉にカオリに顔を向けた。
「どうしてよ」
 茂美が、失敗したアイプチの二重をパチパチさせながらカオリに聞いた。
「だって・・・あんなに可愛いのに、男が黙って指を銜えてるだけなんて変じゃない?」
 翔子と弥生が同時に「確かに・・・」と頷くと、マサミが「でもさぁ・・・」と口を挟んだ。
「あのコの家、すっごく厳しいんだよね・・・あのコ、中学ん時から凄くモテててさぁ、色んな学校の子から告られたりしてたんだけど、でもお父さんが厳しくてね、彼氏どころか男友達もいなかったかんだよね・・・」
 優と中学校が同じだったマサミのそんな言葉は説得力があった。
「じゃあさ、あんなに可愛いのに、今まで誰とも付き合った事ないの?」
 弥生が声を潜めてマサミに聞いた。
「ないない。あるわけないじゃん。そんなのお父さんにバレたらあのコぶっ殺されちゃうよ」
 マサミが目を丸めてそう首を振ると、翔子が「うっそぉ・・・もったいなぁい・・・」と唇を窄めた。
 すると茂美が、そんな翔子に「なにがもったいないのよ?」と不思議そうに聞いた。
「だってさぁ、優みたいにあれだけ可愛かったらカッコいい男の子とヤリたい放題なんだよ!なのに1人も彼氏いないなんてもったいないじゃん!」
「バーカ、優はあんたみたいなオサセちゃんとは違うの」
 茂美の言葉に翔子がプッと口を膨らませると、皆が一斉にケラケラと笑い、そのまま再び東方神起の話題へと移って行ったのだった。

 教室を出た優は、廊下を歩きながら携帯をパカッと開いた。
 メールを読みながら歩く優に、廊下にいた男子生徒達はチラチラと視線を向ける。
 スラリと伸びた八頭身。手足が細く長く、抱きしめれば折れてしまいそうな華奢な体。小さな顔の大きな瞳はまるでアニメの世界の少女のようにいつもキラキラと輝き、薄いピンクのリップクリームを塗った唇は剥いた海老の生身のようにプルプルしていた。
 そんな優をこっそり目で追う男子生徒達は、優のミニスカートからスラリと伸びるニーソックスの脚を見つめ、誰もがその短いスカートの中がどうなっているのかと妄想せずにはいられなかった。
 そんな男子生徒達の視線に気付きながらも、優は携帯を見つめたままスタスタと階段を降りて行った。
 階段を下りてパタンと携帯を閉じると、優はそのまま体育館へと向かった。
 体育館へ続く渡り廊下の手前で足を止めた優は、バレーボールを手にしながら体育館へと走って行く生徒達を唇を尖らせながらボンヤリと見つめ、その集団が体育館へと消えて行くのを見計らうと、上履きのまま渡り廊下からソッと降り、そのまま校舎の裏へとサッと身を隠した。
 陽の当たらない校舎の裏はジメッと湿気を帯びていた。
 苔の生える土の上を避けながら、カモシカのようにピョンピョンと飛び跳ねて歩く優は、校舎の裏にポツンとある教員用の立体駐車場の前で足を止めると、さりげなくキョロキョロしながら辺りを伺った。
 そして辺りに誰もいない事を確認すると、立体駐車場の中へと入って行き、そのままずんずんと奥へと進んで行ったのだった。
 埃っぽいコンクリートの通路を進むと、その一番奥にある『WC』とプレートが表示されたドアの前で足を止めた。
 優が辺りをキョロキョロ伺いながら、その男女兼用のトイレのドアを「コンコンコンコンコン」っと続けざまに5回ノックすると、そのドアは直ぐに開いたのだった。

 そのトイレは、便器と手洗い場が一緒になった狭いトイレだった。
 そんな狭い空間で優を待ち受けていたのはデブっと太った暑苦しい中年男だった。
 中年男は、慌ててトイレの中に入って来た優を、両手で抱きかかえるようにして中に向かい入れた。
 そんな男の腕から「やだぁ・・・」と言いながらスリ抜けた優は、鍵を掛けたドアを背にして、便器側の中年男を見た。
 中年男は、便器を反対向きにしゃがみながら、ドアに背を向ける優をニヤニヤと見つめた。
「今日、体育あったの?・・・」
 鼻の頭にプツプツと汗の玉を作った中年男は、小声でそう呟きながら優の脚を舐めるように見回した。
「うん・・・3時限目・・・」
 コクンと頷きながら優が答えると、中年男は目を輝かせながら「なにやったの?」と聞いて来た。
「マラソンだよ」
 大きな瞳でそう答える優に、中年男は「じ、じゃ、汗、いっぱいかいたね」と、芋虫のような指をモジモジさせながらギラギラの目を光らせて優の顔を覗き込む。
「うん」
 そう頷く優を見て、中年男は「ほっ」としたように微笑み、便器にしゃがんでいる丸い背筋をブルブルブルっと震わせた。
「それで・・・や、や、約束のTバックは・・・ちゃんと履いててくれてるのかなぁ・・・」
 中年男は恥ずかしそうにモジモジしながら聞いた。ふいに俯いた中年男の額から大きな汗玉がポトポトと床のタイルに落ちる。
「うん。ちゃんと履いてるよ」
「マ、マラソンの時も履いててくれた?」
「うん」
「あはっ!はははは・・・じゃあ、Tバックは汗でビショビショだね、あはっ!」
 飢え過ぎで狂った豚のような目をしながら嬉しそうにそう笑う中年男を見つめ、優は「くすっ」と小さく微笑んだ。
 そして、優は「時間がないから・・・」とポツリと呟くと、そのままミニスカートの中にソッと両手を入れた。
 豚のように笑っていた中年男は、そんな優を見るなり急にその豚のような笑い声を「ひくっ」と止めた。
 そして、ブヨブヨに弛んだ唇をポカンと開けたまま、ハァハァと荒い息を吐きながら便器の横の床に顔を押し付け、Tバックを脱ごうとしている優のミニスカートの中を覗き込んだ。
 そんな中年男に、優は「やだぁ」と言いながらカモシカのような細い脚をキュッと閉じた。
「見てたら脱げないよぅ・・・」
 優がそう言いながら頬をブクっと膨らませると、中年男は「ご、ごめんなさい」と謝りながらも、しかしその床から顔をあげようとはしなかった。
 優は、そんな中年男にスカートの中を覗かれながら、その真っ白な太ももから白いレースのTバックをスルスルと下ろした。そして、黒いニーソックスに包まれた右足をヒョイっと上げると、少し前屈みになりながらその足首へとTバックを滑らせて行く。
 中年男のギラギラした目は、そんな優の足首で丸まっているTバックとノーパンとなったスカートの中を、忙しくも交互に行き交う。
 そんな中年男の目が急に可愛く思えた優は、小さくクスッと微笑みながら、ほんの少しだけ閉じていた太ももを弛めてやった。
 そんな優のサービスに感動した中年男は、「あぁぁ!・・・もう少し、もう少しだけ開いて下さい・・・」などと唸りながら、顔を押し付けていたタイルをザラザラと音立ては更にスカートの中を覗き込む。
「お願いします・・・お願いします・・・」と、必死に呟く中年男を見下ろす優の胸がドクンっと波打った。
 ムラムラと胸に込み上げて来た熱いものが、優の薄ピンク色した唇から「ハァ・・・」っと洩れる。
 優は、足下のタイルに顔を押し付ける中年男を見下ろしながら、弛めていた股を更に弛めた。
 そんな、肩幅ほどに脚を開いた優の股の中を、中年男は必死に覗き込みながら「ワレメだぁ・・・」といやらしく呟き、芋虫のような指で自分の股間をズボンの上から激しく揉み始めた。
「もうおしまい」
 そう笑いながら股をキュッと閉じた優は、呆然としている豚男を見つめながら素早く足首からTバックを抜き取った。
 ノソっと床から顔をあげた中年男は、右頬に小さな小石をポツポツと付けたまま、優の細く長い指に摘まれたTバックを見つめ、「おぉぉぉ・・・」と歓喜の唸りをあげた。
「はい、約束のTバック」
 そう微笑みながら差し出したTバックを、中年男は毟り取るように奪い取った。
 そしてそれを手の中に握りしめたまま「温っかい・・・」とソレに頬擦りすると、いきなりソレを優の見ている目の前で広げ始めた。
「やだ・・・優が出てってから見てよぅ・・・」
 優が照れながらソレを中年男の手から奪い取ろうとすると、中年男はソレを取られないように後に隠しながら、「お願い、もう少しだけそこにいて」と優に悲願した。
「だってぇ、もうすぐ昼休み終わっちゃうよ」
「お願い、すぐ終わるから、お願い、お小遣い5千円プラスするから・・・」
 中年男はそう言いながら慌ててズボンの中から、下着代金の1万円とは別にクシャクシャの5千円札を取り出し、それを優に差し出しながらズボンのボタンを外し始めた。
「・・・じゃあすぐイってね・・・」
 優が溜息混じりにそう言いながらサッとお金を受け取ると、中年男は「うん、大丈夫、もうイキそうだし」と必死な顔で笑いながら、ズボンからピーンっと勃起したペニスを捻り出した。
 中年男は優にわざと見せつけるかのようにペニスを突き出しシコシコとシゴき始めた。
「あぁぁ・・・うぅぅぅ・・・」と唸りながら、汚れた便器のタイル床で蠢く中年男を、優は冷ややかな目で見下ろす。
 中年男は右手でペニスをシゴきながら、もう片方の手でTバックを広げ始めた。

 今まで優が履いていたそのTバックにはぐっしょりと黄ばんだシミが付いていた。
 そんな黄色いシミを見つめながら、「優ちゃんはコレを履いてマラソンしてたんだぁ・・・」と中年男は呟き、ハァハァと荒い息を吐きながらそれを鼻に押しあてた。
「あぁぁ・・・優ちゃんの匂いがする・・・」
 目を半開きにさせながらそれをクンクンと嗅ぐ中年男を見下ろす優は、快感で背筋をゾクゾクさせながら「舐めて・・・」と小さく呟いた。
 中年男は優を見つめながら真っ赤な舌をベロッと出すと、今まで優のアソコに食い込んでいた部分が優に見えるようにしながらベロベロと舌を動かした。
「やだぁ・・・」
 優がキュッと眉を顰めた。
 その瞬間、中年男のパンパンに腫れた陰茎から、白い精液がぴゅっ!と飛び出し、優の上履きの先にピチャっと迸ったのだった。


               2

 昼休みが始まるベルが鳴った。
 そのベルと同時に、松浦は1人そっと教室を出た。
 いつものように携帯のメールを眺めながら、上履きのまま校舎裏のジメッと湿った路地を進む。
 松浦のメールボックスには、数人の女からのメールがぎっしりと詰まっていた。相変わらず、好きだとか付き合って欲しいとかダラダラと書かれたメールを、松浦は最後まで読まずして一括消去した。
『火気厳禁』と書かれた赤い看板のあるブロック塀を過ぎると、グリーン色に塗られた鉄骨が剥き出しになった立体駐車場が現れた。
 校舎の裏にある職員用立体駐車場の裏。
 そこは、いつも昼休みになると松浦が煙草を吹かしている場所だった。
 立体駐車場のコンクリート床に飛び乗ると、そのまま上履きをペシャペシャ鳴らしながら奥へ進む。
『WC』と書かれた通路を左に曲がり、トイレのドアを横切ったその奥に、プロパンガスが並ぶコンクリートブロックで囲まれた空間があった。
 松浦はプロパンガスの前に「ふーっ」と溜息をつきながらしゃがむと、学生服の内ポケットから煙草の箱を取り出した。
 その箱に齧り付くようにして1本の煙草を銜え、同時に百円ライターをジュッと擦った。
 埃っぽいコンクリートの空間にモワッと煙草の煙が立ち上る。
 5時間ぶりの煙草にクラッと目眩を感じていると、再び松浦の携帯にメール届いた。
 メールは聡子からだった。
 ここ数ヶ月前から松浦に付き合ってくれとしつこい付きまとっている、隣町の女子校の生徒だ。
 松浦はそんなメールにうんざりしながらも、それも読まずして消去した。
 そんな松浦は、アイドル歌手並にモテる美少年だった。

 松浦が煙草を半分まで吸い終えた頃、いきなり通路から、ジリ、ジリ、っと小石を踏みながら歩いて来る足音が聞こえて来た。
 慌てて煙草を消しながら、そこに籠っている煙をパタパタと手で払う。
(誰だ?・・・・)
 松浦はシケモクをポケットの中に入れながら不思議に思った。
 この立体駐車場に生徒は立ち入り禁止だ。ここは教師すら登下校以外は滅多にやって来ない場所なのだ。
 松浦はコンクリートブロックに背をあてながらソッと通路を覗いてみた。
 見た事の無いおっさんがこちらに向かって歩いて来ていた。そのおっさんはやたらと薄汚く、まるで浮浪者のようだ。
 松浦は思った。
(こいつが噂のトイレットペーパー泥棒か?・・・・)
 昨年から、学校のトイレからトイレットペーパーが盗まれるという事件が相次いでいた。松浦は、このおっさんが立体駐車場のトイレのトイレットペーパーを盗みに来た犯人だと思ったのだ。
(よし・・・俺がとっ捕まえてやる・・・)
 松浦は、おっさんがトイレに入っていくのをワクワクしながら見ていた。そして、ヤツがトイレットペーパーを抱えながら出て来た所を、飛び蹴りを喰らわすかそれとも後から後頭部をぶん殴るかどっちにしようかと、そのジャニーズ顔負けの美顔をニヤニヤさせながら考えていたのだった。
 すると、しばらくすると再び足音が聞こえて来た。
(仲間がいるのか?)
 そう慌てた松浦は、再びコンクリートブロックの影に隠れながらソッと通路を覗き込んだ。
(トイレットペーパー泥棒ごときに仲間?・・・)
 そんな事を不思議に思いながら通路に目を凝らしていると、ふいにセーラー服の女生徒がキョロキョロと辺りを伺いながらやって来るのが見えた。
(あいつ・・・B組の浅岡優じゃねぇのか?・・・)
 松浦は素直に驚いた。学校でもアイドル的な存在の浅岡優がどうしてこんな所にいるのかと不思議で堪らなかった。
 そんな浅岡優の様子はあきらかに挙動不審だった。何度も何度も辺りをキョロキョロしながら、ゆっくりと進み、そしてトイレの前で足を止め、また辺りを伺う。
(あいつが・・・トイレットペーパー泥棒の犯人だったとは・・・)
 松浦は、浅岡優のその天使のような可愛い顔を見つめながら首を傾げた。
(あんな純粋で可愛い浅岡が・・・これは何かの間違いだろ?・・・)
 松浦がそう思った瞬間、浅岡優はトイレのドアを「コンコンコンコンコン」っと続けざまに5回ノックした。その不自然なノックの仕方は明らかに暗号めいている。
 するといきなりトイレのドアがスッと開いた。そして中から、さっきのおっさんの腕がニュッと飛び出し、浅岡優の細い体を抱きしめるようにしてトイレの中へと攫っていった。
 一瞬、松浦は浅岡優が変質者に拉致されたと思い、慌てて通路に飛び出した。
 しかし、トイレの中からは浅岡優の叫び声も何も聞こえて来ない。
(これはいったいどーいうことだよ・・・)
 松浦は心臓をバクバクさせながら、そのドアをジッと見つめた。
 怪しい。めちゃくちゃ怪しい。
 松浦は足を忍ばせながらトイレの前を横切ると、そのまま立体駐車場の裏へと潜り込んだ。
 向こう側の大通りとの境に立てられた高いブロック塀の隙間に忍び込み、膝まで伸びる雑草を踏みしめながらトイレの裏へと行った。
 壁の換気扇の横に小さな窓がある。幸いな事にその窓は少しだけ開いていた。
 松浦は、雑草の中に埋もれていたコンクリートのブロックを見つけると、それを静かに窓の下へと運び、その上に乗りながら、ソッと窓の隙間に顔を近づける。
「あはっ!はははは・・・じゃあ、Tバックは汗でビショビショだね、あはっ!」
 なにやら薄気味悪いおっさんの声が聞こえて来た。
 Tバックという言葉に反応した松浦は、(まさか、あの純粋な美少女が・・・)と心臓をバクバクさせながら、窓の隙間をソーッと覗き込んだのだった。


               3


「ねぇねぇ優、今度の土曜日さぁ、北高の男子達とボーリングに行くんだけど、一緒に来てくれないかなぁ・・・」
 放課後、C組の河西典子がB組の教室にやって来るなり優に小声でそう行った。
「えっ?・・・どうして私が?」
 優は小動物的な大きな目で河西典子を見つめた。
 河西典子とは1年生の時に同じクラスだったが、しかし2年生になってからは言葉を交わす事もない仲だったからだ。
「うん・・・北高の子達がね、優を一緒に連れて来いってうるさいのよ・・・」
「でも私・・・その人達知らないし・・・」
「大丈夫。みんなとってもいい子達ばかりだから。それになかなかのイケメン揃いなのよ」
 河西典子がそう笑いながら、強引に話しを進めようとしていると、そこにB組の女子達が割り込んで来た。
「ダメだよ典子、優はそんなとこに絶対行かせないよ」
 中学生の時から優の親衛隊的存在のマサミが河西典子の前に毅然と立ちはだかった。
「えー、どーしてよー、みんな優を連れて来いってうるさいのよー」
 河西典子が唇を尖らせながらそう言うと、マサミは「ダメダメダメダメ」っと問答無用の対応で、河西典子を廊下へと追い出してしまった。
「そんな所に優がノコノコ出て行くわけないじゃん、ねー」
 2つ縛りの茂美が、キョトンっとしている優にそう笑いかける。
「しかもバカの北高なんて、けっ!、優を連れて来いなんて百年早いわよ!」
 茶髪の翔子が吐き捨てるようにそう言うと、教室の後にいた男子生徒達が「どうしたどうした」と優の席にドヤドヤと集まって来た。
 そんな男子生徒に、翔子が得意満面になって今の話を話し始めると、そこにマサミが戻って来た。
「さ、優、帰ろ」
 河西典子を追い出したマサミは、まるでお母さんのような表情で優を見た。
 するとそんなマサミの顔を見ながら、優が「でも・・・」と急に泣きそうな顔をした。
「どうしたの?」
 皆が一斉に優に振り向いた。
「・・・また・・・ないの・・・」
 優の今にも泣き出しそうなその声に、マサミが「なにが?」と慌てて聞き直す。
「・・・お弁当・・・」
 優のその言葉に、皆が一斉に「またぁ?!」と叫んだ。
 そんな優の私物が盗まれるのは日常茶飯事だった。
 ノート、教科書、シャープペン、といった学習用具から、座布団、上履き、下履き、体育着、まで、ありとあらゆる物が盗まれていた。
 その為、優の下駄箱だけ特別に教室に設置され、又、優だけ特別に鍵付きのロッカーが与えられるといった学校側の特別配慮もあり、それらの品々が盗まれる事はなくなっていたのだが、しかし、最近になって優の弁当が盗まれるという事件が相次いでいた。
「弁当はどこに置いてたの?」
 マサミが厳しい口調で優に聞いた。
「・・・ここ・・・」
 優は弱々しく人差し指を付きたて、机の中を指差した。
「だから私が何度も言ってるじゃない!机の中には何も入れずに全部ロッカーに入れなさいって!」
「だって・・・お弁当、残しちゃったんだもん・・・」
「残すとか残さないとかの問題じゃなくて!・・・もう!・・・」
 マサミはプクッと頬を膨らませながら優を睨んだ。
「ごめんなさい・・・」
 そう言いながら、優が小さな顔をがっくりと項垂れさせると、男子生徒の1人が「奥にあるんじゃねぇのかぁ・・・」と言いながら、いきなり優が座っている椅子の横にストンっと腰を下ろし、机の中を覗き込んだ。
 机の中を覗き込むその男子生徒が、あまりにも優のミニスカートに密着した為、優は一瞬ヒヤッとした。
 そう、優は昼休みからずっとノーパンのままなのだ。
「ねぇなぁ・・・・」
 その男子生徒がゆっくりと立ち上がると、茂美が好奇心旺盛な目を光らせながら「お弁当の中身、残ったままなの?」と優に聞いた。
 コクンっと頷く優を見つめながら、茂美は「そいつ・・・優の食べ残しの弁当をどうするんだろう・・・」とニヤニヤと笑い始めた。
「そりゃあ決まってるだろ・・・浅岡の唾液が付いた箸とか齧りかけの卵焼きとかペロペロ舐めてアレするんだよ・・・」
 男子生徒がニタニタといやらしく笑いながらそう言うと、茂美が「うっ!変態だ!」と叫び、それに対して他の男子生徒達がウヒヒヒヒっと下品に笑いながら「ぶっかけるのかもしんねぇぞ!」などと叫び出したりして教室は騒然とした。
「もうあんた達ヤメなさいよ!」
 しょんぼりする優の肩を抱きながらマサミが男子生徒達にそう怒鳴ると、男子生徒達のテンションは余計ヒートアップし、いつしか教室の中には「変態!変態!」という変態コールが沸き上がる始末となった。
「うるせぇ!」
 突然、教室の後から怒声が響いた。
 その強烈な怒声に、戯けていた男子生徒達が一斉にビクッ!と停止し、一瞬にして教室はシーンと静まり返った。
「てめぇら、いつまでガタガタ騒いでんだ!・・・とっとと帰れ!」
 そう怒鳴りながら立ち上がったのは、この学校の番長、加藤マサルだった。
 加藤マサルは停止したままの男子生徒達を恐ろしい眼力で睨みながら、机の横にぶら下げていたカバンをひょいと肩に担いだ。
 そして四角い体をノソノソとさせながら教室のドアヘと向かうと、その細く鋭い視線で優をチラッと見ながら呟いた。
「弁当残してんじゃねぇよ・・・世の中にはメシを食えねぇヤツらはごまんといるんだ・・・」
 そう言いながら加藤マサルは教室のドアを乱暴に開け、そのまま廊下に消えて行った。
 教室はしばらくの間静まり返ったままだった。
 それほど、この加藤マサルという番長の存在は凄かったのだった。

 加藤マサルは1年の時に荒谷高校からこの学校に転校して来た生徒だった。
 柔道の猛者で、数々の大会では圧倒的な強さを誇り、彼に敵う高校生はまずいないとまで噂されていた加藤だったが、しかしある時、全国大会で決勝戦に進出した加藤は大失態を犯した。
 そう、ここ一番という決勝戦の場で、なんと加藤は対戦相手と組み合いながらも糞をちびってしまったのだ。
 激しく組み合いながらビチビチと下痢糞をちびる加藤は心で叫んだ。
(くそっ!ハメられた!)
 加藤は悔しさのあまり泣きそうになりながらも、試合前、いきなり対戦相手のコーチから貰ったミカンを思い出していた。
 そのコーチはいきなり加藤の控え室にやってきた。
 そして、1人ポツンと柔軟体操をしている加藤に向かって「キミが加藤君か。お互い頑張ろう!」などと爽やかに握手を求め、そして加藤にそっとミカンを差し出した。
 加藤は無類のミカン好きだった。そのコーチが立ち去るや否や、加藤はミカンにむしゃぶりついた。
 そのミカンは、なにかブヨブヨとして少し変な味がした。が、しかし、本来食い意地が酷く、まして無類のミカン好きな加藤にとって、多少ミカンが痛んでいようとも、そんな事は関係なかった。
 そんなブヨブヨのミカンをグチョグチョと食いながら加藤は思った。
(なんて素敵なコーチなんだ・・・よし、正々堂々と戦ってやる・・・)
 大勢の観客が見守る中、畳の上で組み合う加藤の真っ白な柔道着がみるみると茶色く染まりはじめ、会場は騒然とした。
 しかし加藤はそれでも諦めず、相手を寝技に持ち込んだ。
 加藤は相手の腕を取り、これでもかというくらいに腕を捩じ伏せた。
 加藤のグショグショに湿った茶色い尻が相手の顔に押し付けられた。
 すかさず相手は畳をバンバンと叩き、「くせぇーっ!」と叫びながら降参した。
 加藤は泣いた。泣きながら飛び上がり、大きくガッツポーズを取ると、思いあまって会場に向かって「エイドリアーン!」などと叫んでしまう。
 が、しかし会場はドン引きだった。
 赤や白の旗を持った審判達が慌てて固まると、なにやらヒソヒソと話し始める。
「えっ?・・・どうしてだよ・・・」
 加藤は高く突き上げていた拳をゆっくりと下ろしながら、審判達に向かって呟いた。
「反則!」
 審判の1人がいきなり加藤に向かってそう叫ぶと、倒れていた選手がいきなり立ち上がり、「オェー・・・」と嗚咽しながら走っていった。
 そんな選手の後ろ姿を見つめる加藤の目に、腐ったミカンをくれたコーチの不敵の笑みが飛び込んで来た。
「っの野郎!」
 加藤はキレた。
「腐ったミカンなんかよこしやがって!」
 そう叫ぶ加藤は、そのコーチに襲いかかり、自慢の一本背負いでコーチを床に叩き付けた。
 警備員達が「やめろー!」と叫びながら一斉に加藤マサルに飛び掛かった。
 警備員に羽交い締めにされる加藤を見て、加藤の担任の坂本が「かとーっ!」と絶叫し、観客の誰かがふいに中島みゆきの「世情」を口ずさんだのだった・・・・。

 そんな加藤は瞬間にグレた。
 最初のうちは「腐ったミカンの糞ちびり」などと噂され、学校ではイジメの対象にされたものだが、しかし加藤は柔道の猛者だ。いじめるヤツラを「俺は腐ったミカンじゃねぇ!」と、次々と御自慢の一本背負いで叩きのめしていくと、知らないうちに加藤は荒谷高校の番長になっていた。
 そして札付きのワルとして名を轟かせた加藤はいつしか荒谷高校を追放され、この学校に流れ着いたのだった。

 加藤は家に帰るなりそそくさと自分の部屋に閉じ篭った。
 部屋の隅のベッドに腰を下ろすと、ふーっ・・・と大きな溜息をつきながらカバンをソッと開ける。
 加藤のカバンの中で、番長らしくもないキティーちゃんのハンカチに包まれた小さな弁当箱がカランっと音を立てた。
「優・・・・」
 加藤は感極まった声でそう呟きながら、そのキティーちゃんのハンカチに包まれた弁当箱を取り出した。
 キティーちゃんのハンカチをゆっくりと解いていく。
 中の弁当箱をソッと取り出すと、まずはそのキティーちゃんのハンカチを鼻に押し付けた。
 ハンカチのザラザラとした感触が加藤の鼻に擦り付けられ、同時にケチャップと甘い卵焼きの混ざった香りが加藤の鼻孔に忍び込んで来た。
「あぁぁ・・・優・・・」
 加藤はそう唸りながら学生ズボンのベルトを外した。そして、ズボンの中からガッツリと勃起したペニスを捻り出すと、それをシコシコと上下にシゴき始めた。
 柔道の猛者であり、そして学校では番長として一目置かれているだけはあり、そんな加藤のペニスは函館名物「イカ飯」のように、どっしりと太くそして黒かった。
 が、しかし、そんな逞しいペニスの先は、まるで中途半端な「初日の出」のように真っ赤な亀頭が半分しか出ていない。
 そう、この番長として怖れられている柔道の猛者は、なんと包茎だったのだ。
 加藤は、そんな包茎ペニスをキティーちゃんのハンカチで包み込むと、「おぉぉぉ・・・」と唸りながらソレを激しくシゴいた。
 加藤の妄想の中で、太ももの上で「うん、うん」と切なく喘ぎながら激しく尻を振る優の姿がいた。
 そんな妄想とシゴきを存分に味わった加藤は、続いて弁当を手にした。
「うふふふふふっ」と番長らしからぬ笑みを洩らしながら弁当の蓋を開ける。
 小さな弁当箱の中には、のりたまのふりかけがまぶされた小さなおにぎりがひとつと、少し齧った鳥の唐揚げひとかけら、トマトひとかけら、半分齧った卵焼き、そして親指ほどの真っ赤な魚肉ソーセージがコロンっと転がっていた。
「あらら・・・優ちゃん、いっぱいお弁当残しちゃって・・・」
 なぜか加藤は新妻のような喋り方でそう言った。
 そして迷う事無くそのおにぎりを摘まみ上げると、「こ、こ、このおむすびは・・・ゆ、ゆ、優が握ったのかなぁ・・・」などと、今度は山下清のマネをしながら、そのおにぎりをペロペロと舐め始めた。
 加藤の頭に、エプロン姿の優が小さな手でキュッキュッとおにぎりを握る姿がモヤモヤと浮かんで来る(エプロンの下はなぜか裸)。
「あぁぁ・・・優・・・・」
 いきなり興奮した加藤はそのおにぎりのなかにペニスを突き刺した。
 そしてポロポロと米が崩れるのもおかまいなしに、米粒だらけのペニスをネチャネチャとシゴいた。
 そうしながらも、ベッドの上に四つん這いになった加藤は、弁当箱に顔を近づけ、その中にあるトマトをペロペロと舐め始めた。
 加藤の頭の中では、脚をM字に開いた優が、股間を舐める加藤に向かって「加藤君やめて・・・」と喘いでいる。
「濡れてるよ・・・すんごく濡れてるよ・・・」
 そう唸りながら、四つん這いになった番長はトマトから出る汁をジュージューと啜った。
 大興奮の中、ハァハァと荒い息を吐きながら魚肉ソーセージを摘まみ上げた加藤は、その親指大の魚肉ソーセージを、四つん這いの尻に持っていった。
 そしてソーセージをケツ毛がウヨウヨと生える肛門に押し付けながら、「やだ!やだ!そこはヤダ!優、壊れちゃう!」などと、今度は自身が優になりながらそう叫ぶと、そのソーセージを開いた肛門の中にムニムニと埋め込んでいく・・・。
 ベッドの上で四つん這いになる加藤は、肛門にソーセージをポッコリと刺したまま、米粒だらけのペニスをシゴき、弁当の中のトマトをレロレロと舐め、キティーちゃんのハンカチの匂いを嗅いだ。
「あっあっイキそうだよ優!」
 そう叫び米粒だらけの包茎チンポをネチャネチャとシゴく。
「いや、だめ、中で出しちゃイヤ!」
 今度はそう叫びながら肛門のソーセージをクニクニとピストンさせる。
「あぁぁぁ、無理だ優、出ちゃうよ!」
 また米粒だらけのペニスをシゴく。
 そしてまた、すかさず肛門のソーセージを摘むと、それをピストンさせながら「あん!あん!優もいっちゃう!」と叫ぶ。
 一人二役の番長のオナニーはなかなか忙しい。
 すると、米粒をネチネチと鳴らしながらペニスをシゴいていた加藤が「あっ、出る!」と唸った。
 皮の中からドロッと溢れる精液がドボドボドボっと布団に垂れた。
「あぁぁぁー!」
 そう唸りながら力んだ加藤の肛門から魚肉ソーセージかスポン!と、まるで豆鉄砲のように飛び出し、それが畳の上にポトンっと落ちてコロコロと転がった。
 転がるソーセージが親指にコツンっと当たり、ピタッと止まった。
「えっ?」
 慌てて振り返った加藤の目に、スーパーの制服を着た母親がブルブルと震えながら立っているのが目に飛び込んで来た。
 その瞬間、加藤の母親が悲痛に叫んだ。

「マサルー!・・・・・・・」

(つづく)

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