せんずり電話2
2013/06/15 Sat 00:02
不意に私は女性器を見せられた。しかもその女は全く見ず知らずの他人で、それを見せられた場所は喫茶店だった。
その色と形は、喫茶店を出てからも頭から離れなかった。ホテルに戻る途中に立ち寄ったコンビニでも、常にその穴は私の頭の中でヒクヒクと蠢いていた。
ムラムラしながら弁当コーナーへと向かった。せっかく福井くんだりまで出張に来たのだから、夕食くらいは地元の美味しいものを食べたかったが、しかし今の私にはそんな余裕はなかった。
それは金の事ではなく精神的な問題だった。
一刻も早くホテルに戻りたかったのだ。あの女の陰部が頭の中に鮮明に残っているうちにオナニーがしたかったのだ。
そう焦りながら、いつもの唐揚げ弁当を手にした。
すると、ふとその横に置いてあった『日本海特選にぎり寿司盛り合わせ』が目に飛び込んできた。
イカ、エビ、カニ、タコ。真っ赤なマグロとオレンジ色のイクラが、いかにも新鮮そうにテラテラと輝いていた。
(せっかく福井まで来たんだから……)
そう思いながら二百六十八円の唐揚げ弁当を元に戻し、四百九十八円のそれを手にした。
そのままレジに向かったが、レジには会社帰りのOLやサラリーマンが列をなしていたため、落ち着くまで立ち読みでもしておこうと、雑誌コーナーへと向きを変えた。
しかし、そこも人で溢れていた。この近くに専門学校でもあるのか、雑誌コーナーは大勢の若い女の子たちで占領されていた。
そんな中、唯一、ガラガラだったのが成人雑誌コーナーだった。店内は会社帰りのサラリーマンで溢れていたが、さすがにこの状況でエロ本は買えないと思ったのか、サラリーマンたちはそこを横目で見つつも、素通りしていた。
しかし、余所者の私には関係なかった。私は堂々と女の子達に並び、『日本海特選にぎり寿司盛り合わせ』を片手に、堂々と成人雑誌を物色してやった。
ラックには、『ニャン2倶楽部』や『ザ・ベスト』といった定番の雑誌が並んでいた。しかし私は、それらには目もくれず、もっとマイナーでもっとマニアックな、『やりまん四十路妻情報』や『素人のナマ下着』といった変態系雑誌を目で追っていた。
そんな中、素人投稿系雑誌に書いてあった、『深夜の公園に出没する露出夫婦』という文字が目に飛び込んできた。その文字と同時に、さっきのウェイトレスの濡れた陰部が蘇り、思わず深い鼻息をスーッと吐いてしまった。
そんな私のすぐ隣には専門学生風の女の子がいた。一般雑誌のラックから押し出され、ほぼ成人雑誌のラックに割り込んでいた。
そんな女の子の視線を気にしながら、恐る恐る雑誌をラックから抜いた。雑誌の表紙を『日本海特選にぎり寿司盛り合わせ』で素早く隠し、そそくさとその場を立ち去ろうとすると、不意に、隣で立ち読みしていた女の子の巨大なおっぱいが目に飛び込んできた。
擦れ違いざまにその胸を思い切り凝視してやった。その女のタポタポと揺れる真っ白な乳肉を妄想しながら、一刻も早くホテルに帰ってヌキたいという焦燥感に駆られていたのだった。
ホテルの部屋に入るなり急いでズボンを脱いだ。ヌルヌルに湿ったトランクスは気持ちが悪く、早くそれを脱ぎたかったのだ。
スルッとトランクスを太ももまで下げると、半勃ちのペニスがだらりと顔を出した。今までにない強烈な刺激を受けたそれは驚くほどに大量な我慢汁を垂れ流し、トランクスの裏面をぐっしょりと濡らしていた。
(あいつらは……一体何者なんだ……)
そう思いながら、未だドキドキしている自分を落ち着かせようとした。
バサバサと乱暴に抜き取ったティッシュをペニスに押し付け、冷蔵庫からミネラルウォーターを一本取り出した。股間に大量のティッシュを挟んだままその蓋をベキベキッと回し、取り敢えずパソコンを立ち上げた。
ペットボトルの口にチュルチュルと音を立て、乾いた喉に徐々に水を流し込んだ。面白いように喉が、ゴク、ゴク、と鳴った。気がつくと一気に半分以上も飲み干しており、急に怖くなって慌ててペットボトルの口を唇から抜いた。
『六甲のおいしい水』のおかげで、ひとまずドキドキとした鼓動は治まった。
しかし、亀頭の先を濡らす汁をティッシュでカサカサと拭き取っていると、そのうちムラムラとした興奮が胸底から湧き上がり、再びあの濡れた割れ目が鮮明に蘇ってきた。
むちむちとした白い太ももの奥に真っ黒な物体が潜んでいた。
乱雑に伸びまくる陰毛はウヨウヨと肛門にまで逹し、綺麗に整えられたそれよりも、より一層卑猥感を漂わせていた。
そのモサモサとした陰毛の中では、キクラゲのような二枚の黒いビラビラがベロリと捲れ、真っ赤に爛れた粘膜が剥き出されていた。
テラテラと濡れ輝く粘膜の中心には、小さな穴がぽっかりと口を開いており、まるで餌を欲しがる鯉の口のようにヒクヒクと痙攣しては、そこから透明の汁をタラタラと垂らしていた。
そんな卑猥な女性器を思い出しながら亀頭をティッシュで拭いていると、今まで半勃ちだったそれは、いつしかフランクフルトのようにビンッと勃起していた。
ヤリたい。そう思いながらそれを上下にシゴき、もう片方の手でマウスを握った。発注書のひな形を開くと、シコシコしながら急いで発注書を書き直し、それを先方のアドレスに送信した。
すぐさま先方の会社に電話をかけ、書き直した発注書をメールで送ったことを伝えた。そうしながらも私は、ずっとペニスをシゴき続けていたのだった。
電話を切るなり、一刻も早くエロ本で抜こうと思った。
あんなモノをいきなり見せつけられ、このまま正常でいられるはずがないのだ。
コンビニの袋を取ろうとベッドサイドテーブルの上を手探りしていると、不意にスマホが指先に触れた。
その瞬間、ふと面白そうな考えが浮かんだ。
それは、さっきの喫茶店に電話を掛け、あの変態女に卑猥な言葉を囁きながら射精しようという陰気な企みだった。
さっそく私はグーグルマップを開いた。喫茶店の店名がわからなかったため、このホテルをグーグルマップで開き、そこから喫茶店に辿ろうと思ったのだ。
福井市片町で検索し、このホテルを見つけた。そのすぐそばにコーヒーカップのマークが表示されており、そこに『リペア』と書かれていた。
電話番号をメモに控えながら、もう片方の手で勃起しているペニスを握り締めた。そして、こちらの番号がわからないよう最初に『184』をプッシュし、非通知で電話をかけた。
プルルルルル、プルルルルル、とコールが続いた。女が出てくれ、女が出てくれ、と祈りながらペニスを上下にシゴいた。8コールめでやっと電話に出た。受話器の向こうから「はいリペアです」と聞こえてきたその声は、紛れもなくさっき私に性器を見せつけてきたあの女の声だった。
一瞬心臓が飛び跳ね、思わず電話を切ってしまいそうになった。
そのまま私が黙っていると、女は「もしもし?」と何度も言った。その甘ったるい声が脳を掻き回し、あの濡れ輝いた穴や剛毛な陰毛がメラメラと蘇ってきた。
私は声を震わせながら、「あのぅ……」と呟いた。
女は、何の疑いもなく、「はい、リペアでございます」ともう一度店名を繰り返した。
女は普通だった。つい三十分ほど前、見ず知らずの客に陰部を露出していたとは思えない、平然とした口調だった。
私は、そんな女の、まるで何もなかったかのような二重人格性に狂気を感じた。そして同時に、こんな狂った女ならば、誰にでもヤラせてくれるのではないだろうかと思った。
激しい興奮に胸を押し潰されながら、何かに取り憑かれたかのようにペニスをシゴきまくった。気がつくと、スマホに向かって「ハァ、ハァ」と荒い息まで吐いていた。
しかし女は電話を切らなかった。女は受話器の向こうでジッと身を潜め、私の卑猥な呼吸を黙って聞いていた。
明らかに猥褻な悪戯電話であるにもかかわらず、それでも電話を切らないまま、その「ハァ、ハァ」という卑猥な息づかいにジッと耳を傾けているということは、女はそれを受け入れているという証拠だった。
あの女は、見ず知らずの一見の客に陰部を露出するほどの変態なのだ。あんな事を平気でするくらいだから、私以外の客にもそれらしき事をしている可能性は非常に高く、だからこんな悪戯電話はよく掛ってくるのかも知れなかった。
そう思うと、今頃あの変態女は、ノーパンのスカートの中に手を忍ばせているかも知れないと思った。私のこの卑猥な荒い息づかいを聞きながら、あのドロドロに濡れたワレメに指をヌルヌルと滑らせながら、オナニーしているのかも知れないと想像した。
そんな想像と共に更に欲情した私は、遂に女に話しかけた。声を震わせながら「あなたのアソコを舐めさせて下さい……」と囁いた。
女は黙っていた。
すぐさま私はスマホに向かって舌を出し、そして、わざと下品にべちゃべちゃと舌を鳴らした。
「今からそちらに行きます……あなたのアソコを舐めさせてください……肛門まで綺麗に舐めますから僕のチンポも舐めてください……」
そう震える声で囁きながらペニスをシゴいた。
今まで、他人に向かってそんな卑猥な言葉を囁いた事はなかった。満員電車の中や、歩道ですれ違う女に、心の中でそんな事を囁いた事は何度もあったが、しかし、それを声に出して言ったことは一度もなかった。
そんな自分の言葉に激しく興奮した私は、本気であの女とヤリたいと思った。
実際、今からあの喫茶店へ行き、「あなたの奥さんとヤらせて下さい」とマスターに交渉してみるのも一つの方法だった。又、ホテルの部屋番号を教え、「夫婦で来てください」と言ってみるのも一つの手だった。
もしかしたら上手く行くかもしれなかった。あの夫婦は明らかに寝取られ趣味があるか、もしくは露出狂だ。誰にでもヤらせるレベルの変態であり、そんな夫婦なら、もしかしたらその誘いに乗ってくるかもしれなかった。
が、しかし、頭ではそう思っていても、では実際にそんな事が私にできるかと言えば答えはノーだった。
というのは、私は女に対して極度に臆病だからだ。私という男は、親子ほど歳の離れた年下の風俗嬢に対しても敬語を使うほどに気が小さいのだ。
そんな私が女を誘えるわけがなかった。例え相手が誰にでもヤらせる変態女であっても、私のような小心者が公然と女を誘うことなど絶対にありえず、仮に、誘うことができて本当にあの夫婦が部屋にやって来たとしても、恐らく私はドアを開けないであろう。
だから私のような陰気な変態には、こうして悪戯電話でシコシコしている方が性に合っているのである。
気がつくと、私は自分のスマホをベロベロと舐めていた。
そこをベロベロしながら、黒いミニスカートを腰までたくし上げた女の股間に吸い付く妄想を描いていた。
妄想の中の女の陰部はトロトロに濡れ、鼻をくすぐる陰毛は汗臭かった。
女はカウンターに凭れながらハァハァと荒い息を吐き、股間に吸い付く私をジッと見下ろしていた。
カウンターの奥に旦那がいた。他人男に陰部を舐められている妻の姿を複雑な表情で見つめながら、自分のペニスをシゴいていた。
そんな妄想を繰り広げながら、「オマンコ汁が肛門まで垂れてますよ……」とスマホに囁いた。
「肛門も舐めてあげますから、私の顔にお尻を突き出してください……」
そう言いながらペニスをシゴきまくり、スマホにハァハァと熱い息を吐きかけた。
女は黙っていたが、しかし電話を切ろうとはしなかった。ジッと息を潜めたまま、私が囁く卑猥な言葉を聞いていた。
(電話を切らないということは……この女は欲情している……)
そう確信しながら、私は女の尻に顔を埋める妄想をしていたのだった。
(つづく)
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