わけあり2
2013/06/15 Sat 00:01
ワケあり主婦を部屋の奥へと連行した。
デリヘルなのだからわざわざ連行する必要はないのだが、しかしこの被虐的なマゾ女には、『連行』という言葉が妙に似合った。
部屋の中央で立ち止まらせた。私だけベッドに腰掛け、女の体を舐めるように見つめながら、「そのままスカートを捲ってみて下さい」と囁いた。
女は一瞬、えっ? という顔をしながらも、「先にお店に電話をかけさせてください」と言った。
「わかってます。あなた達の事情はわかってますけど、私はまだあなたに決めたわけではありません。色々とチェックさせてもらってからチェンジするかどうかを決めさせてもらいます」
「…………」
「当然でしょ。仮にね、ヤマダ電機で19インチのテレビを買うとしましょうよ、そうなったらあなた、そのテレビを買う前にリモコンをカチカチしたりして色々調べたりするでしょ?」
「…………」
「それと同じですよ。一万四千円と言ったら私にとっては大金ですからね。それだけの買い物を今からしようとしてるんですから、事前に私があなたの体を調べるのは当然でしょ」
女は複雑な表情を浮かべながらも、しかし、私のそのケチ臭い意見に反論しなかった。というか、この小心者の女は、反論できるだけの勇気を持っていなかった。
「さ、時間がありませんから、早くスカートを捲ってください」
そう急かせると、女は左手をモジモジさながらフレアスカートの裾を摘んだ。
一呼吸置き、女は一気にスカートを捲り上げた。黒いストッキングに包まれた腰部が露わになると、女の表情は羞恥と不快と難色で歪み、更に複雑になった。
そんな黒いストッキングの中には、レースのピンクの短パンのようなものが透けて見えた。
それは恐らく下着の上に履くオーバーショーツというものだった。以前、出会い系で知り合った五十過ぎのおばさんもそれを履いていた。
それが、アイドル歌手たちのような『見せパン』的な可愛いオーバーショーツなら良かったのだが、しかし、この女が履いているそれは妙に所帯染みており、出会い系で知り合ったおばさん同様、悲しくなるほど貧乏くさかった。
一瞬にして意欲を削がれてしまった私は、小さく溜息をつきながら、「それもズラしてマンコを見せてください」と言った。
女は顔を引き攣らせながらも素直にそれに従った。左手の指をストッキングのゴムに掛け、スルスルッと片手でそれを太ももまで下ろした。
弛んだ下腹部に伸び放題の陰毛がわさわさしていた。ピンクのオーバーショーツの下に履いていたベージュのパンティーが乱暴に捲れていた。そんなだらしなさがより卑猥感を醸し出し、まるで夜の公園で露出している狂った女のように見えた。
再び興奮を覚えた私が、「ンフフフフ」と笑いながら乾いた舌を舐めると、女はゾッとした表情で慌てて私から目を逸らした。
そんな女は、危なくなったらすぐに逃げようと思っているのか、右手にバッグを持ったままだった。
私はゆっくりとベッドから立ち上がると、そのまま女の足元にソッとしゃがんだ。
わさわさとする陰毛を覗き込みながら、その奥でベロリと垂れ下がっている二枚のびらびらを見ていた。
「もういいですか……」
頭上から女の声が聞こえた。そっと見上げると、顔を引き攣らせた女が私を見下ろしていた。
「まだです」
そう言いながら再びそこを覗き込むと、女は「部屋に入ったら、すぐにお店に電話をしなくちゃならないんです、早くお店に電話を入れないと……」と弱々しい声で言った。
「それはあなた達の都合です。私は客です。その商品に欠陥がないかどうかを確かめる権利があります」
「欠陥……ですか?……」
「そうです。欠陥です。あなたが恐ろしい性病を持っている可能性は無きにしも非ずですからね」
そう言いながら、まるで精密検査をするかのように更に股の隙間を覗き込んだ。
「性病は大丈夫です……ちゃんと検査してますから……」
「ふん。あなた達は何かと言うとすぐに『大丈夫』ですね。あなた達のような低劣な者達の『大丈夫』にどれだけの信用度があるんですか……」
「…………」
黙ってしまった女の太ももをツンツンと突き、「もう少し股を開いてください」と言うと、女は諦めたかのように両足を肩幅まで広げた。
女の太ももに頬を摺り寄せながらローアングルで股間の裏を覗き込むと、いかにも臭そうな中年女のくたびれた性器がムンムンと蒸れていた。
そこを覗き込みながら自分の股間に手を這わした。トランクスの上から勃起したペニスを握りしめ、まるでバイブのようにそれを小刻みに動かした。
それを見た女が、「前金なんですけど……」と恐る恐る呟いた。私は女の股を覗き込みながら、「まだあなたを買うとは言ってません!」と裏声で叫び、そのどさくさに紛れて女の太ももをチロッと舐めた。
そして女の股からゆっくりと顔を上げると、太ももで止まっていたパンティーのクロッチを指差しながら、「なんですかこの汚れは!」と、再び猛禽類のような声で叫んだ。
焦った女が慌てて股を閉じると、汚れたクロッチは股に挟まれた。
私は女の顔を見上げながら、「どうしてそんなに汚れてるんですか」と聞いた。
女は恥ずかしそうにモジモジしながら、「すみません……急に呼び出されて、パート先から直にここに来たものですから……」と白状した。
「そうですか……だからこんなにダサいパンツを履いてるんですね……」
私はそう納得しながらも、「だからと言って、この汚れは酷すぎるでしょ」と更に問い詰めると、女は恥ずかしそうに顔を顰めながら、「今日はサービスデーだったので……忙しくて……」と蚊の鳴くような声でそう答えた。
「どんな仕事をしてるんですか?」
「……スーパーでレジを打ってます……」
「レジが忙しいとオリモノが多くなるんですか?」
「……そういうわけではないんですが……」
「性病じゃないんですか?」
「いえ、それは本当に大丈夫です」
「旦那さんとはセックスしてるんですか?」
「してます」
「旦那さん、あなたとセックスしていてなんともないですか?」
「なんともないです」
「それにしては汚れが酷すぎますよね……」
「……多分、排卵日ですから……それで……」
「排卵? どれ、もっとちゃんと見せてくださいよ、排卵のオリモノかどうか確かめますから」
そう言うと、女は何の疑いもなくクロッチを指で摘んだ。そしてそれを股間から引っ張り出すと、その卑猥に汚れた部分を私に見せたのだった。
こうなればこっちのものだった。
女は気が小さい上にバカだった。このまま行けば、この女は私の言うことを何でも聞く奴隷と化すだろう。
私はそう細く微笑みながら、その乾いた卵の黄身のようなオリモノを間近に覗き込んだ。
「うん……確かに、排卵日のオリモノのように濃厚だ……」
その言葉に安堵したのか、女は素早くそこを隠そうとした。
「あ、いや、ちょっと待ってください」
「…………」
「見た目だけではわかりませんよ。匂いを嗅いでみなくては、それが性病による膿なのか、排卵によるオリモノなのかは判別できません」
「…………」
女は困惑した表情を浮かべながら、「どうすればいいんですか」と聞いてきた。
「とりあえず脱いでください」
「…………」
女は黙って前屈みになった。そして足を片方ずつあげながら、それを足首からスッと抜いた。
「貸してください」
そう手を差し出すと、女の表情は更に困惑した。
そんな女の困惑する表情から、この女は本物の主婦だろうと確信した。
もしこれが場慣れした風俗嬢だったなら、開き直ってくるか、若しくは、その下着を私に渡す際、追加料金を要求してくるであろう。
そうしないという事は、この女は擦れていないのだ。彼女自身が言っているように、この女は、本当に旦那と子供と借金を背負っているのだ。デリヘル経験は四回しかなく、昼間はスーパーのレジでバイトしながら下着にオリモノをこびりつかせている、本物のワケあり主婦なのだ。
そう思うと私の興奮は更に激しくなってきた。素人同然の本物ワケあり主婦を、今からじっくり陵辱できるのだと想像すると、身震いするほどの興奮を覚えた。
ハァハァと荒い息を唇から漏らしながら、「早くしなさい」と言った。
女は怯える目で私を見ていた。そして小刻みに手を震るわせながら、恐る恐るそれを私の手に渡したのだった。
羞恥に駆られた女の目の前で嗅いでやった。犬のように、スッ、スッ、と鼻を鳴らしながら、そのカリカリに固まった黄色いオリモノを嗅ぎまくってやった。
そこには働く女の匂いが染み付いていた。汗と恥垢と小便の残り汁が乾いた饐えた匂いがプンプンと漂っていた。
「こりゃあ、臭いなぁ……」
わざとそう呟いてやると、女は下唇をギュッと噛みながらソッと項垂れた。
「目を逸らさないでください。ちゃんと見ててください」
そう言いながら、私は恐る恐る女が顔を上げるのを見計らい、女がこちらを見ると同時に黄色いシミをベロベロと舐めてやった。
「やめてください!」
女は、今にも泣き出さんばかりの表情になりながら、慌てて私の手からそれを奪い取った。一度それを拳の中に握りしめ、そしてそれをそのままトートバッグの口にスッと落とすと、「もういいですか」と眉を潜めながら訴えた。
「まぁ、匂いも味も普通ですけどね……」
私はそう言いながら立ち上がった。そして、古畑任三郎を少し意識しながらベッドに静かに腰を下ろすと、「ただ、それはあくまでも下着ですからね……現物を直に確かめて見ないことには、なんとも言えませんね……」と唇の端を不敵に歪めた。
そこまで言えば、さすがのバカ主婦でも、これが私の手口だと言う事に気づいたようだった。女は必死な口調で「前金でお願いします」と焦り始めると、下着を落としたトートバッグの口から携帯を取り出した。
「お店に電話するのはいいですけど、ただ、まだ私はあなたに決めたわけではありません。まだあなたが性病ではないというはっきりとした確信は——」
私がそう言い終わらぬ間に、女は緊迫した顔で、「早くお店に電話をしないとドライバーさんがここに来ちゃいます」と、まるで脅迫めいたことを吐き捨て、素早く携帯に指を走らせた。
さすがにそれはマズイと思った。先月も出張で名古屋に行った際、やはりこの時と同じようにデリヘル嬢に何癖をつけては、前金を払わないままセクハラ行為を続けていた。しかし、女に電話をかけさせなかったせいか、すぐに用心棒のような厳つい男が部屋に駆けつけ、問答無用で顔面を数発殴られたうえ、おまけに罰金として二万円をふんだくられては散々な目に遭わされたばかりだった。
だから私は慌てて女に「あっ、ちょっとキミ」と言った。
女はそんな私を横目で見ながら、「連絡遅れてすみません、ミズキです」と言った。
私は素早くベッドサイドに手を伸ばした。そこの引き出しを開けながら、「わかりました。わかりましたよ。キミを信用して前金を払いますよ」と呟き、そこに入れておいた財布を取り出した。
女は携帯電話を耳に押し当てたまま私を見ていた。私が財布の中から一万四千円を抜き取り、それを彼女に差し出すまで用心深く私を見ていた。
女は受け取った金を確認すると、そこで初めて、「さっきお部屋に入りましたので」と告げた。そして電話を切るなり、そそくさとスカートを脱ぎ始め、「先にシャワーで流させていただきますので」と言いながら、脱いだスカートをクローゼットのカゴの中に入れた。
完全に女のペースになっていた。
このままでは、ありきたりな普通のコースで終わってしまうと危惧した私は、なんとか自分のペースにしなければと焦った。
女は下半身を剥き出しにしたまま、白いブラウスのボタンを外し始めた。
一万四千円。私にとっては大金だった。この大金を、死に金にするか生き金にするかはスタートで決まるのだ。
なんとしてでも、もう一度私のペースに戻さなければならなかった。
私はクローゼットに向かってスタスタと歩き出すと、ブラウスを脱いだ直後の女の腕を掴み、「シャワーは結構ですから」と女の手を引いた。
「でも」と焦る女をベッドに突き飛ばした。
ベッドに尻餅をつきながら愕然としている女を見下ろし、「シャワーはいいですから、サービスデーで汚れたマンコを見せてください」と不敵に微笑んでやった。
一瞬にして女の顔に恐怖が浮かんだ。
これでまた、私のペースに戻った。
(つづく)
《←目次》《3話へ→》
デリヘルなのだからわざわざ連行する必要はないのだが、しかしこの被虐的なマゾ女には、『連行』という言葉が妙に似合った。
部屋の中央で立ち止まらせた。私だけベッドに腰掛け、女の体を舐めるように見つめながら、「そのままスカートを捲ってみて下さい」と囁いた。
女は一瞬、えっ? という顔をしながらも、「先にお店に電話をかけさせてください」と言った。
「わかってます。あなた達の事情はわかってますけど、私はまだあなたに決めたわけではありません。色々とチェックさせてもらってからチェンジするかどうかを決めさせてもらいます」
「…………」
「当然でしょ。仮にね、ヤマダ電機で19インチのテレビを買うとしましょうよ、そうなったらあなた、そのテレビを買う前にリモコンをカチカチしたりして色々調べたりするでしょ?」
「…………」
「それと同じですよ。一万四千円と言ったら私にとっては大金ですからね。それだけの買い物を今からしようとしてるんですから、事前に私があなたの体を調べるのは当然でしょ」
女は複雑な表情を浮かべながらも、しかし、私のそのケチ臭い意見に反論しなかった。というか、この小心者の女は、反論できるだけの勇気を持っていなかった。
「さ、時間がありませんから、早くスカートを捲ってください」
そう急かせると、女は左手をモジモジさながらフレアスカートの裾を摘んだ。
一呼吸置き、女は一気にスカートを捲り上げた。黒いストッキングに包まれた腰部が露わになると、女の表情は羞恥と不快と難色で歪み、更に複雑になった。
そんな黒いストッキングの中には、レースのピンクの短パンのようなものが透けて見えた。
それは恐らく下着の上に履くオーバーショーツというものだった。以前、出会い系で知り合った五十過ぎのおばさんもそれを履いていた。
それが、アイドル歌手たちのような『見せパン』的な可愛いオーバーショーツなら良かったのだが、しかし、この女が履いているそれは妙に所帯染みており、出会い系で知り合ったおばさん同様、悲しくなるほど貧乏くさかった。
一瞬にして意欲を削がれてしまった私は、小さく溜息をつきながら、「それもズラしてマンコを見せてください」と言った。
女は顔を引き攣らせながらも素直にそれに従った。左手の指をストッキングのゴムに掛け、スルスルッと片手でそれを太ももまで下ろした。
弛んだ下腹部に伸び放題の陰毛がわさわさしていた。ピンクのオーバーショーツの下に履いていたベージュのパンティーが乱暴に捲れていた。そんなだらしなさがより卑猥感を醸し出し、まるで夜の公園で露出している狂った女のように見えた。
再び興奮を覚えた私が、「ンフフフフ」と笑いながら乾いた舌を舐めると、女はゾッとした表情で慌てて私から目を逸らした。
そんな女は、危なくなったらすぐに逃げようと思っているのか、右手にバッグを持ったままだった。
私はゆっくりとベッドから立ち上がると、そのまま女の足元にソッとしゃがんだ。
わさわさとする陰毛を覗き込みながら、その奥でベロリと垂れ下がっている二枚のびらびらを見ていた。
「もういいですか……」
頭上から女の声が聞こえた。そっと見上げると、顔を引き攣らせた女が私を見下ろしていた。
「まだです」
そう言いながら再びそこを覗き込むと、女は「部屋に入ったら、すぐにお店に電話をしなくちゃならないんです、早くお店に電話を入れないと……」と弱々しい声で言った。
「それはあなた達の都合です。私は客です。その商品に欠陥がないかどうかを確かめる権利があります」
「欠陥……ですか?……」
「そうです。欠陥です。あなたが恐ろしい性病を持っている可能性は無きにしも非ずですからね」
そう言いながら、まるで精密検査をするかのように更に股の隙間を覗き込んだ。
「性病は大丈夫です……ちゃんと検査してますから……」
「ふん。あなた達は何かと言うとすぐに『大丈夫』ですね。あなた達のような低劣な者達の『大丈夫』にどれだけの信用度があるんですか……」
「…………」
黙ってしまった女の太ももをツンツンと突き、「もう少し股を開いてください」と言うと、女は諦めたかのように両足を肩幅まで広げた。
女の太ももに頬を摺り寄せながらローアングルで股間の裏を覗き込むと、いかにも臭そうな中年女のくたびれた性器がムンムンと蒸れていた。
そこを覗き込みながら自分の股間に手を這わした。トランクスの上から勃起したペニスを握りしめ、まるでバイブのようにそれを小刻みに動かした。
それを見た女が、「前金なんですけど……」と恐る恐る呟いた。私は女の股を覗き込みながら、「まだあなたを買うとは言ってません!」と裏声で叫び、そのどさくさに紛れて女の太ももをチロッと舐めた。
そして女の股からゆっくりと顔を上げると、太ももで止まっていたパンティーのクロッチを指差しながら、「なんですかこの汚れは!」と、再び猛禽類のような声で叫んだ。
焦った女が慌てて股を閉じると、汚れたクロッチは股に挟まれた。
私は女の顔を見上げながら、「どうしてそんなに汚れてるんですか」と聞いた。
女は恥ずかしそうにモジモジしながら、「すみません……急に呼び出されて、パート先から直にここに来たものですから……」と白状した。
「そうですか……だからこんなにダサいパンツを履いてるんですね……」
私はそう納得しながらも、「だからと言って、この汚れは酷すぎるでしょ」と更に問い詰めると、女は恥ずかしそうに顔を顰めながら、「今日はサービスデーだったので……忙しくて……」と蚊の鳴くような声でそう答えた。
「どんな仕事をしてるんですか?」
「……スーパーでレジを打ってます……」
「レジが忙しいとオリモノが多くなるんですか?」
「……そういうわけではないんですが……」
「性病じゃないんですか?」
「いえ、それは本当に大丈夫です」
「旦那さんとはセックスしてるんですか?」
「してます」
「旦那さん、あなたとセックスしていてなんともないですか?」
「なんともないです」
「それにしては汚れが酷すぎますよね……」
「……多分、排卵日ですから……それで……」
「排卵? どれ、もっとちゃんと見せてくださいよ、排卵のオリモノかどうか確かめますから」
そう言うと、女は何の疑いもなくクロッチを指で摘んだ。そしてそれを股間から引っ張り出すと、その卑猥に汚れた部分を私に見せたのだった。
こうなればこっちのものだった。
女は気が小さい上にバカだった。このまま行けば、この女は私の言うことを何でも聞く奴隷と化すだろう。
私はそう細く微笑みながら、その乾いた卵の黄身のようなオリモノを間近に覗き込んだ。
「うん……確かに、排卵日のオリモノのように濃厚だ……」
その言葉に安堵したのか、女は素早くそこを隠そうとした。
「あ、いや、ちょっと待ってください」
「…………」
「見た目だけではわかりませんよ。匂いを嗅いでみなくては、それが性病による膿なのか、排卵によるオリモノなのかは判別できません」
「…………」
女は困惑した表情を浮かべながら、「どうすればいいんですか」と聞いてきた。
「とりあえず脱いでください」
「…………」
女は黙って前屈みになった。そして足を片方ずつあげながら、それを足首からスッと抜いた。
「貸してください」
そう手を差し出すと、女の表情は更に困惑した。
そんな女の困惑する表情から、この女は本物の主婦だろうと確信した。
もしこれが場慣れした風俗嬢だったなら、開き直ってくるか、若しくは、その下着を私に渡す際、追加料金を要求してくるであろう。
そうしないという事は、この女は擦れていないのだ。彼女自身が言っているように、この女は、本当に旦那と子供と借金を背負っているのだ。デリヘル経験は四回しかなく、昼間はスーパーのレジでバイトしながら下着にオリモノをこびりつかせている、本物のワケあり主婦なのだ。
そう思うと私の興奮は更に激しくなってきた。素人同然の本物ワケあり主婦を、今からじっくり陵辱できるのだと想像すると、身震いするほどの興奮を覚えた。
ハァハァと荒い息を唇から漏らしながら、「早くしなさい」と言った。
女は怯える目で私を見ていた。そして小刻みに手を震るわせながら、恐る恐るそれを私の手に渡したのだった。
羞恥に駆られた女の目の前で嗅いでやった。犬のように、スッ、スッ、と鼻を鳴らしながら、そのカリカリに固まった黄色いオリモノを嗅ぎまくってやった。
そこには働く女の匂いが染み付いていた。汗と恥垢と小便の残り汁が乾いた饐えた匂いがプンプンと漂っていた。
「こりゃあ、臭いなぁ……」
わざとそう呟いてやると、女は下唇をギュッと噛みながらソッと項垂れた。
「目を逸らさないでください。ちゃんと見ててください」
そう言いながら、私は恐る恐る女が顔を上げるのを見計らい、女がこちらを見ると同時に黄色いシミをベロベロと舐めてやった。
「やめてください!」
女は、今にも泣き出さんばかりの表情になりながら、慌てて私の手からそれを奪い取った。一度それを拳の中に握りしめ、そしてそれをそのままトートバッグの口にスッと落とすと、「もういいですか」と眉を潜めながら訴えた。
「まぁ、匂いも味も普通ですけどね……」
私はそう言いながら立ち上がった。そして、古畑任三郎を少し意識しながらベッドに静かに腰を下ろすと、「ただ、それはあくまでも下着ですからね……現物を直に確かめて見ないことには、なんとも言えませんね……」と唇の端を不敵に歪めた。
そこまで言えば、さすがのバカ主婦でも、これが私の手口だと言う事に気づいたようだった。女は必死な口調で「前金でお願いします」と焦り始めると、下着を落としたトートバッグの口から携帯を取り出した。
「お店に電話するのはいいですけど、ただ、まだ私はあなたに決めたわけではありません。まだあなたが性病ではないというはっきりとした確信は——」
私がそう言い終わらぬ間に、女は緊迫した顔で、「早くお店に電話をしないとドライバーさんがここに来ちゃいます」と、まるで脅迫めいたことを吐き捨て、素早く携帯に指を走らせた。
さすがにそれはマズイと思った。先月も出張で名古屋に行った際、やはりこの時と同じようにデリヘル嬢に何癖をつけては、前金を払わないままセクハラ行為を続けていた。しかし、女に電話をかけさせなかったせいか、すぐに用心棒のような厳つい男が部屋に駆けつけ、問答無用で顔面を数発殴られたうえ、おまけに罰金として二万円をふんだくられては散々な目に遭わされたばかりだった。
だから私は慌てて女に「あっ、ちょっとキミ」と言った。
女はそんな私を横目で見ながら、「連絡遅れてすみません、ミズキです」と言った。
私は素早くベッドサイドに手を伸ばした。そこの引き出しを開けながら、「わかりました。わかりましたよ。キミを信用して前金を払いますよ」と呟き、そこに入れておいた財布を取り出した。
女は携帯電話を耳に押し当てたまま私を見ていた。私が財布の中から一万四千円を抜き取り、それを彼女に差し出すまで用心深く私を見ていた。
女は受け取った金を確認すると、そこで初めて、「さっきお部屋に入りましたので」と告げた。そして電話を切るなり、そそくさとスカートを脱ぎ始め、「先にシャワーで流させていただきますので」と言いながら、脱いだスカートをクローゼットのカゴの中に入れた。
完全に女のペースになっていた。
このままでは、ありきたりな普通のコースで終わってしまうと危惧した私は、なんとか自分のペースにしなければと焦った。
女は下半身を剥き出しにしたまま、白いブラウスのボタンを外し始めた。
一万四千円。私にとっては大金だった。この大金を、死に金にするか生き金にするかはスタートで決まるのだ。
なんとしてでも、もう一度私のペースに戻さなければならなかった。
私はクローゼットに向かってスタスタと歩き出すと、ブラウスを脱いだ直後の女の腕を掴み、「シャワーは結構ですから」と女の手を引いた。
「でも」と焦る女をベッドに突き飛ばした。
ベッドに尻餅をつきながら愕然としている女を見下ろし、「シャワーはいいですから、サービスデーで汚れたマンコを見せてください」と不敵に微笑んでやった。
一瞬にして女の顔に恐怖が浮かんだ。
これでまた、私のペースに戻った。
(つづく)
《←目次》《3話へ→》