わけあり1
2013/06/15 Sat 00:01
奈良に出張に来た。田舎への出張ほどつまらないものはないが、検索ボタンを押すと、スマホの画面には若くて綺麗な女の子の写真がドッと現れた。
奈良は田舎だ。しかしデリヘルの検索結果は山のような数だ。そこには若くて綺麗な女の子の写真ばかりが掲載されている。
が、しかし、どれだけ若かろうと、どれだけ綺麗であろうと、私はそれらに全く興味を感じなかった。
それは私が変態だからだった。癖のある変態だからだった。
若くて綺麗な風俗嬢よりも、デブでもブスでも普通の主婦が良かった。旦那や子供のいる主婦に羞恥と屈辱を与えてやりたい。
それが、私の何よりもの悦びなのであった。
さっそく、サイトの上にある『好みのタイプ絞り込み』の欄に、『熟女・主婦』と二つのキーワードを入力してみた。
すると、今まで若くて綺麗な女の子の写真がズラリと並んでいた画面が一転し、豚のようなおばさん達がズラリと映し出された。
しかし、検索されたそのほとんどがSMプレイを主体とした店だった。
『好みのタイプ絞り込み』に違うキーワードを入力し直した。今度は、『素人・主婦』と入れてみた。
すると、さっきの豚おばさん達よりはマシな普通のおばさん達がズラリと現れた。
しかし、二百枚以上の写真を一つ一つ見ていくのは大変だった。
そこで私は、取り敢えずどこでもいいから電話してみようと思った。
丁度、サイトの一番上に『ワケあり主婦専門店』という、私好みの名前の店が掲載されていた。
ワケあり主婦。実に興味をそそられる響きだった。どうせ本物のワケあり主婦などいないであろうが、ひとまずその店に電話をしてみることにした。
「お電話ありがとうございます『ワケあり主婦専門店』です」
そう電話に出た男の声は、まるで寝起きのようだった。
恐らく、まだ二十代の若い男であろう、妙に脱力感のある気怠い喋り方だった。
「新大宮駅の近くのビジネスホテルなんですが、今すぐイケますか?」
「大丈夫です」
「三十代の人妻がいいんですけど……」
「大丈夫です」
「できれば気の強い人じゃなくて大人しい人が——」
「——大丈夫です」
「…………」
「大丈夫です」
「本物の主婦なんですよね」
「大丈夫です」
「完全な素人とまでは言いませんけど、できればそれに近いような……」
「大丈夫です」
「料金は、六十分一万四千円って書いてあるんですけど」
「大丈夫です」
「チェンジは無料でできると書いてありますが」
「大丈夫です」
「しつこいようですけど、本物の主婦なんですよね?」
「大丈夫です」
「本番は」
「大丈夫です」
「…………」
「大丈夫です」
全て「大丈夫」だった。何を言っても、気怠く「大丈夫」と返された。
結局私は、その「大丈夫」という返答だけでホテルの部屋番号を告げてしまった。
電話を切ってから、あの気怠そうな「大丈夫」が少し不安になったが、しかし、正直に言って田舎の風俗など最初から期待はしておらず、かろうじてセンズリの代用品になればいいというくらいにしか思っていなかったため、そんな不安はすぐに消えた。
我慢汁でヌルヌルに湿ったトランクスを履き替え、飲みかけの水を一気に飲み干した。
女が来るまでの間に興奮を昂めておこうと思った。もし化け物のようなおばさんがやって来ても、それはそれでそれなりに楽しめるよう、今のうちに脳を活性化しておこうと思ったのだ。
ベッドにゴロリと横になり、ベッドサイドテーブルに置いてあった有料アダルトビデオのメニューを眺めた。
巨乳、OL、人妻、SM、ギャル、ぽっちゃり、オナニー、乱交、盗撮、と、様々なカテゴリがズラリと並んでいた。その中に『メス豚』というカテゴリがあり、そこを開いてみると、いきなり醜い肥満女が鼻フックをされながら吐瀉物を吐いているという凄まじいパッケージ画像が映し出された。
(これくらい強烈なヤツを事前に観ておけば、どんなババアがやってきても対応できるだろう……)
そう思いながらテレビのリモコンを操作し、三百七十円のそれを購入したのだった。
黒い画面から、『変態メス豚女・優里香・28歳・主婦』という白い文字がフェードインし、それが五秒ほど静止した後、ゆっくりとフェードアウトしていった。
それがタイトルだったのか、いきなりラブホの室内が映し出された。見るからに馬鹿そうな中年デブ女が、ベッドの上で正座しながら項垂れていた。
ストーリもなく、セリフもなく、照明もなければ映像も乱れていた。延々とハンディカムで撮影されているところから見て、恐らくそれはインディーズビデオに違いなかった。
全裸となった中年デブ女が、醜い乳房を曝け出しながらオナニーを始めた。ボカシはいたって薄く、真っ黒な小陰唇まではっきりと見ることができた。
ビデ論を無視したインディーズビデオというのは、映像も悪く女優も悪かったが、しかし、逆にそれがリアリティーを増し、独特な卑猥感を醸し出していた。
中年デブ女が指オナニーで絶頂に達すると、すぐさまガリガリに痩せた中年男が現れ、そのムチムチとした女の体に黙々とロープを巻き始めた。そうされながらも中年デブ女は、ガリガリ男の股間に向かって首を伸ばし、そこに反り勃つ肉棒を下品にしゃぶりまくっていた。
亀甲縛りにされた中年デブ女の体に、ガリガリ男が卑猥な落書きを始めた。『淫豚』、『家畜』、『公衆便所』などとマジックを走らせながら、ガリガリ男は中年デブ女の淫穴に反り勃つ肉棒を挿入した。
ガリガリ男が腰を振る度に、中年デブ女は豚のように鳴いた。後背位で突かれながら肛門にバイブを入れられると、中年デブ女は狂ったように喚きながら失禁し、花柄の羽毛掛け布団をベシャベシャに濡らした。
そのうち中年デブ女は「出ちゃう、出ちゃう」と泣き始めた。ガリガリ男が肛門のバイブをピストンさせる度、中年デブ女は必死になってそう喚いていた。
そんな中年デブ女に、突然ガリガリ男はアイマスクを装着させた。そしてチェーンの付いた革のマスクで口を塞ぐと、そのままトイレに連行した。
中年デブ女は便器に座らされた。そんな中年デブ女の耳元に顔を寄せたガリガリ男が、「今から調教して貰うからね……」と囁くと、突然焦り始めた中年デブ女が、革マスクの中で「ウーウー」と唸り出したのだった。
そんな中年デブ女をトイレに一人残し、ガリガリ男はトイレを出た。
するといつの間にか、部屋には二人の男が待ち受けていた。
「私の妻は変態メス豚女です。マンコとアナルに同時に中出ししてやって下さい」
ガリガリ男は二人の男にそう告げた。そしてそのまま部屋の隅の椅子にソッと腰掛けると、二人の男は無言で服を脱ぎ始めた。
一人の男の背中には中途半端な観音様の刺青が彫られ、もう一人の男の腹には40センチほどの手術創が浮かんでいた。
リアルだった。二人の男には、AV男優にはない危険な素人感がムンムンと漂っていた。
(そっか……あのデブ女房は、今からこの二人の男にヤられる事を知らされていなかったんだな……)
なかなか手の込んだ寝取られビデオだと思った。
しかし、それを夫から告げられた時の中年デブ女の焦りようや、それを二人の男たちに告げた時のガリガリ夫の絶望的な表情は、とても演技には見えなかった。
もしかしたらこれは実録かもしれない。変態夫が妻を騙し、他人男達に陵辱されるシーンを撮影し、それをインディーズの会社に投稿してきたものなのかも知れない。
そう思いながらそれを見ていると、激しい興奮が下腹部から湧き上がってきた。
革マスクの中で泣き叫ぶ中年デブ女がトイレから引きずり出され、ベッドに投げ出された。二人の男達が、まるで家畜を扱うように中年デブ女を陵辱し始め、それを見ていたガリガリ夫がセンズリを始めた。
私もセンズリしていた。両足をピーンと伸ばしながらペニスを上下にシゴき、醜い中年デブ女が二つの穴を塞がれるのを真剣に見ていた。
と、その時、突然部屋のチャイムが鳴り響いた。
慌ててテレビを消した。
ベッドから飛び降り、急いでクローゼットへと向かうと、取り敢えずそこにぶら下がっていたバスローブを羽織った。
ペニスは勃起したままだった。しかも射精寸前の状態であり、黒いトランクスの股間は我慢汁のシミでじっとりと湿っていた。
とにかく勃起を治めなければとドアの前で深呼吸した。いくら相手が風俗嬢と言えど、勃起したまま出迎えるというのはあまりにも恥ずかしいのだ。
しかし、ペニスは一向に治る気配を見せなかった。あの中年デブ女の刺激が相当効いているのか、ペニスは勃起が治るどころかジンジンと疼いていた。
このままでは女が帰ってしまうと焦りながらも、とりあえずドアスコープを覗いてみる事にした。あまりにも酷いようなら、このままチェンジすればいいのだ。
そう思いながら恐る恐るドアスコープを覗き込むと、髪の長い痩せた女が項垂れていた。項垂れているため顔は見えなかったが、何やら貪よりとした暗い陰を背負った女だった。
しかし、そのスタイルや雰囲気からして、思っていたほど醜い女ではなさそうだったため、取り敢えずこの女に決める事にした。
勃起したペニスを腹に押し当て、硬い肉棒をトランクスのゴムに挟んだ。そのままバスローブで前を隠し、これなら大丈夫だろうと入り口にあった等身大の鏡で股間を確認しながらドアを開けた。
「こんばんは……『ワケあり主婦』から来ましたミズキです……」
女は上目遣いでソッと私を見上げながら、蚊の泣くような声で呟いた。
「おっ」と思うほどの、なかなかの美形だった。スッと鼻筋が通り、切れ長の目は大きく、どことなく若い頃のいしだあゆみに似ていた。
スタイルも良かった。足も細く、腰もくびれ、全体的にスレンダーだったが、しかし、胸や尻にはそれなりの肉は付いていた。
女は、長い髪を垂らしたまま黙ってその場で項垂れていた。見た目はなかなかの美人だが、そこに漂う雰囲気はまるで幽霊のように薄暗かった。
「チェンジは……よろしいでしょうか……」
女は、長い髪の隙間から恐る恐る私を見上げながらそう聞いた。
そこから漂ってくる絶望感というかどん底感は、まさに店名通りの『ワケあり主婦』そのものだった。
「とりあえず、どうぞ」と私はドアを大きく開いた。
女は妙にオドオドしながら、「失礼します……」と一歩部屋の中に入った。
「歳はいくつですか?」
部屋の入り口に立ったままそう聞いた。
「……三十四歳です……」
そう答えるなり、女の背後でドアがカチャっと閉まった。
「子供はいますか?」
「……はい……」
「旦那さんは?」
「います……」
「この仕事は長いんですか?」
「いえ……四回目です……」
女がそう答えるなり、私は女の白いブラウスのボタンにそっと指を伸ばした。
静かにボタンを外し始めると、一瞬女は戸惑いながら私の目を見上げた。が、しかし、私が優しく微笑みかけると、女はその目に恐怖を浮かべながらゆっくりと視線を戻した。
(気の小さな女だ……)
そう思いながら、「本当にワケありですか?」と聞いた。
女は項垂れたまま「はい……」と答えた。
「どんなワケですか?」
女は、少し間を置いた後、「借金です……」と小さく答えた。
「そっか……借金か……」
そう言いながら、私はブラウスの胸元をソッと開いた。
白い乳肉がポテンッとしていた。決して大きくはなく、少し垂れ気味ではあったが、しかしそれは主婦の乳らしく、生クリームのように柔らかそうだった。
女は抵抗しなかった。文句一つ言わなかった。恥ずかしそうにジッと俯きながら下唇を甘噛みしていた。
そんな、被虐的なワケあり主婦に異様な興奮を覚えた。
私はその温かくも柔らかい乳肉をソッと掌に包み込むと、彼女の耳元で「どうぞ……」と囁きながら、彼女のその細い腕を静かに引いたのだった。
(つづく)
《←目次》《2話へ→》
奈良は田舎だ。しかしデリヘルの検索結果は山のような数だ。そこには若くて綺麗な女の子の写真ばかりが掲載されている。
が、しかし、どれだけ若かろうと、どれだけ綺麗であろうと、私はそれらに全く興味を感じなかった。
それは私が変態だからだった。癖のある変態だからだった。
若くて綺麗な風俗嬢よりも、デブでもブスでも普通の主婦が良かった。旦那や子供のいる主婦に羞恥と屈辱を与えてやりたい。
それが、私の何よりもの悦びなのであった。
さっそく、サイトの上にある『好みのタイプ絞り込み』の欄に、『熟女・主婦』と二つのキーワードを入力してみた。
すると、今まで若くて綺麗な女の子の写真がズラリと並んでいた画面が一転し、豚のようなおばさん達がズラリと映し出された。
しかし、検索されたそのほとんどがSMプレイを主体とした店だった。
『好みのタイプ絞り込み』に違うキーワードを入力し直した。今度は、『素人・主婦』と入れてみた。
すると、さっきの豚おばさん達よりはマシな普通のおばさん達がズラリと現れた。
しかし、二百枚以上の写真を一つ一つ見ていくのは大変だった。
そこで私は、取り敢えずどこでもいいから電話してみようと思った。
丁度、サイトの一番上に『ワケあり主婦専門店』という、私好みの名前の店が掲載されていた。
ワケあり主婦。実に興味をそそられる響きだった。どうせ本物のワケあり主婦などいないであろうが、ひとまずその店に電話をしてみることにした。
「お電話ありがとうございます『ワケあり主婦専門店』です」
そう電話に出た男の声は、まるで寝起きのようだった。
恐らく、まだ二十代の若い男であろう、妙に脱力感のある気怠い喋り方だった。
「新大宮駅の近くのビジネスホテルなんですが、今すぐイケますか?」
「大丈夫です」
「三十代の人妻がいいんですけど……」
「大丈夫です」
「できれば気の強い人じゃなくて大人しい人が——」
「——大丈夫です」
「…………」
「大丈夫です」
「本物の主婦なんですよね」
「大丈夫です」
「完全な素人とまでは言いませんけど、できればそれに近いような……」
「大丈夫です」
「料金は、六十分一万四千円って書いてあるんですけど」
「大丈夫です」
「チェンジは無料でできると書いてありますが」
「大丈夫です」
「しつこいようですけど、本物の主婦なんですよね?」
「大丈夫です」
「本番は」
「大丈夫です」
「…………」
「大丈夫です」
全て「大丈夫」だった。何を言っても、気怠く「大丈夫」と返された。
結局私は、その「大丈夫」という返答だけでホテルの部屋番号を告げてしまった。
電話を切ってから、あの気怠そうな「大丈夫」が少し不安になったが、しかし、正直に言って田舎の風俗など最初から期待はしておらず、かろうじてセンズリの代用品になればいいというくらいにしか思っていなかったため、そんな不安はすぐに消えた。
我慢汁でヌルヌルに湿ったトランクスを履き替え、飲みかけの水を一気に飲み干した。
女が来るまでの間に興奮を昂めておこうと思った。もし化け物のようなおばさんがやって来ても、それはそれでそれなりに楽しめるよう、今のうちに脳を活性化しておこうと思ったのだ。
ベッドにゴロリと横になり、ベッドサイドテーブルに置いてあった有料アダルトビデオのメニューを眺めた。
巨乳、OL、人妻、SM、ギャル、ぽっちゃり、オナニー、乱交、盗撮、と、様々なカテゴリがズラリと並んでいた。その中に『メス豚』というカテゴリがあり、そこを開いてみると、いきなり醜い肥満女が鼻フックをされながら吐瀉物を吐いているという凄まじいパッケージ画像が映し出された。
(これくらい強烈なヤツを事前に観ておけば、どんなババアがやってきても対応できるだろう……)
そう思いながらテレビのリモコンを操作し、三百七十円のそれを購入したのだった。
黒い画面から、『変態メス豚女・優里香・28歳・主婦』という白い文字がフェードインし、それが五秒ほど静止した後、ゆっくりとフェードアウトしていった。
それがタイトルだったのか、いきなりラブホの室内が映し出された。見るからに馬鹿そうな中年デブ女が、ベッドの上で正座しながら項垂れていた。
ストーリもなく、セリフもなく、照明もなければ映像も乱れていた。延々とハンディカムで撮影されているところから見て、恐らくそれはインディーズビデオに違いなかった。
全裸となった中年デブ女が、醜い乳房を曝け出しながらオナニーを始めた。ボカシはいたって薄く、真っ黒な小陰唇まではっきりと見ることができた。
ビデ論を無視したインディーズビデオというのは、映像も悪く女優も悪かったが、しかし、逆にそれがリアリティーを増し、独特な卑猥感を醸し出していた。
中年デブ女が指オナニーで絶頂に達すると、すぐさまガリガリに痩せた中年男が現れ、そのムチムチとした女の体に黙々とロープを巻き始めた。そうされながらも中年デブ女は、ガリガリ男の股間に向かって首を伸ばし、そこに反り勃つ肉棒を下品にしゃぶりまくっていた。
亀甲縛りにされた中年デブ女の体に、ガリガリ男が卑猥な落書きを始めた。『淫豚』、『家畜』、『公衆便所』などとマジックを走らせながら、ガリガリ男は中年デブ女の淫穴に反り勃つ肉棒を挿入した。
ガリガリ男が腰を振る度に、中年デブ女は豚のように鳴いた。後背位で突かれながら肛門にバイブを入れられると、中年デブ女は狂ったように喚きながら失禁し、花柄の羽毛掛け布団をベシャベシャに濡らした。
そのうち中年デブ女は「出ちゃう、出ちゃう」と泣き始めた。ガリガリ男が肛門のバイブをピストンさせる度、中年デブ女は必死になってそう喚いていた。
そんな中年デブ女に、突然ガリガリ男はアイマスクを装着させた。そしてチェーンの付いた革のマスクで口を塞ぐと、そのままトイレに連行した。
中年デブ女は便器に座らされた。そんな中年デブ女の耳元に顔を寄せたガリガリ男が、「今から調教して貰うからね……」と囁くと、突然焦り始めた中年デブ女が、革マスクの中で「ウーウー」と唸り出したのだった。
そんな中年デブ女をトイレに一人残し、ガリガリ男はトイレを出た。
するといつの間にか、部屋には二人の男が待ち受けていた。
「私の妻は変態メス豚女です。マンコとアナルに同時に中出ししてやって下さい」
ガリガリ男は二人の男にそう告げた。そしてそのまま部屋の隅の椅子にソッと腰掛けると、二人の男は無言で服を脱ぎ始めた。
一人の男の背中には中途半端な観音様の刺青が彫られ、もう一人の男の腹には40センチほどの手術創が浮かんでいた。
リアルだった。二人の男には、AV男優にはない危険な素人感がムンムンと漂っていた。
(そっか……あのデブ女房は、今からこの二人の男にヤられる事を知らされていなかったんだな……)
なかなか手の込んだ寝取られビデオだと思った。
しかし、それを夫から告げられた時の中年デブ女の焦りようや、それを二人の男たちに告げた時のガリガリ夫の絶望的な表情は、とても演技には見えなかった。
もしかしたらこれは実録かもしれない。変態夫が妻を騙し、他人男達に陵辱されるシーンを撮影し、それをインディーズの会社に投稿してきたものなのかも知れない。
そう思いながらそれを見ていると、激しい興奮が下腹部から湧き上がってきた。
革マスクの中で泣き叫ぶ中年デブ女がトイレから引きずり出され、ベッドに投げ出された。二人の男達が、まるで家畜を扱うように中年デブ女を陵辱し始め、それを見ていたガリガリ夫がセンズリを始めた。
私もセンズリしていた。両足をピーンと伸ばしながらペニスを上下にシゴき、醜い中年デブ女が二つの穴を塞がれるのを真剣に見ていた。
と、その時、突然部屋のチャイムが鳴り響いた。
慌ててテレビを消した。
ベッドから飛び降り、急いでクローゼットへと向かうと、取り敢えずそこにぶら下がっていたバスローブを羽織った。
ペニスは勃起したままだった。しかも射精寸前の状態であり、黒いトランクスの股間は我慢汁のシミでじっとりと湿っていた。
とにかく勃起を治めなければとドアの前で深呼吸した。いくら相手が風俗嬢と言えど、勃起したまま出迎えるというのはあまりにも恥ずかしいのだ。
しかし、ペニスは一向に治る気配を見せなかった。あの中年デブ女の刺激が相当効いているのか、ペニスは勃起が治るどころかジンジンと疼いていた。
このままでは女が帰ってしまうと焦りながらも、とりあえずドアスコープを覗いてみる事にした。あまりにも酷いようなら、このままチェンジすればいいのだ。
そう思いながら恐る恐るドアスコープを覗き込むと、髪の長い痩せた女が項垂れていた。項垂れているため顔は見えなかったが、何やら貪よりとした暗い陰を背負った女だった。
しかし、そのスタイルや雰囲気からして、思っていたほど醜い女ではなさそうだったため、取り敢えずこの女に決める事にした。
勃起したペニスを腹に押し当て、硬い肉棒をトランクスのゴムに挟んだ。そのままバスローブで前を隠し、これなら大丈夫だろうと入り口にあった等身大の鏡で股間を確認しながらドアを開けた。
「こんばんは……『ワケあり主婦』から来ましたミズキです……」
女は上目遣いでソッと私を見上げながら、蚊の泣くような声で呟いた。
「おっ」と思うほどの、なかなかの美形だった。スッと鼻筋が通り、切れ長の目は大きく、どことなく若い頃のいしだあゆみに似ていた。
スタイルも良かった。足も細く、腰もくびれ、全体的にスレンダーだったが、しかし、胸や尻にはそれなりの肉は付いていた。
女は、長い髪を垂らしたまま黙ってその場で項垂れていた。見た目はなかなかの美人だが、そこに漂う雰囲気はまるで幽霊のように薄暗かった。
「チェンジは……よろしいでしょうか……」
女は、長い髪の隙間から恐る恐る私を見上げながらそう聞いた。
そこから漂ってくる絶望感というかどん底感は、まさに店名通りの『ワケあり主婦』そのものだった。
「とりあえず、どうぞ」と私はドアを大きく開いた。
女は妙にオドオドしながら、「失礼します……」と一歩部屋の中に入った。
「歳はいくつですか?」
部屋の入り口に立ったままそう聞いた。
「……三十四歳です……」
そう答えるなり、女の背後でドアがカチャっと閉まった。
「子供はいますか?」
「……はい……」
「旦那さんは?」
「います……」
「この仕事は長いんですか?」
「いえ……四回目です……」
女がそう答えるなり、私は女の白いブラウスのボタンにそっと指を伸ばした。
静かにボタンを外し始めると、一瞬女は戸惑いながら私の目を見上げた。が、しかし、私が優しく微笑みかけると、女はその目に恐怖を浮かべながらゆっくりと視線を戻した。
(気の小さな女だ……)
そう思いながら、「本当にワケありですか?」と聞いた。
女は項垂れたまま「はい……」と答えた。
「どんなワケですか?」
女は、少し間を置いた後、「借金です……」と小さく答えた。
「そっか……借金か……」
そう言いながら、私はブラウスの胸元をソッと開いた。
白い乳肉がポテンッとしていた。決して大きくはなく、少し垂れ気味ではあったが、しかしそれは主婦の乳らしく、生クリームのように柔らかそうだった。
女は抵抗しなかった。文句一つ言わなかった。恥ずかしそうにジッと俯きながら下唇を甘噛みしていた。
そんな、被虐的なワケあり主婦に異様な興奮を覚えた。
私はその温かくも柔らかい乳肉をソッと掌に包み込むと、彼女の耳元で「どうぞ……」と囁きながら、彼女のその細い腕を静かに引いたのだった。
(つづく)
《←目次》《2話へ→》