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亀のあくび1

2013/06/08 Sat 00:00

亀のあくび1



 亀があくびをするのを見た。
 別に何とも思わぬまま、エスカレーターで地下一階の食品売り場まで一気に下りた。いずれにせよ金がなかった。冷蔵ケースに恐ろしい数の水戸納豆が並んでいた。意味もなく白菜の白い部分に爪先を刺した。サクッという音が小気味良く、いくつもいくつも刺して回った。菓子コーナーでスニッカーズを万引きしようかどうしようか五分ほど悩んだ。結局カロリーメイトも一緒に万引きしてやった。そのまま出口に向かって歩いていると、突然、(亀もあくびをするのだろうか?)という疑問が湧き、居ても立ってもいられなくなった。その真相を確かめようと、再びエスカレーターに乗ってはみたものの、しかし、七階の『南アメリカ爬虫類展』までは随分と長く、次第にそれを知った所で人生が変わるわけでもないと考え始め、三階の婦人服売り場でエスカレーターを下りた。そんな俺は、かれこれ二ヶ月ほど失業中だった。

 二ヶ月前まで近所のコンビニで深夜のバイトをしていた。しかし、ある日、たまたまおでんの汁の中に痰を垂らしていた所を客に見つかり、さっそく店長に告げ口されて解雇された。なぜおでんの中に痰など垂らしたのかは自分でもわからなかったが、以前から俺は、あつあつの肉まんの表面に精液を塗り込んだり、一度口に含んだ唐揚げを再び保温ケースに戻したりするおかしな癖があった。なぜそんな事をするのかその原因は自分でもわからなかったが、ただ、中学の時にも俺は、給食が保管されている調理室に忍び込み、何の理由もないままカレーが入っている食缶の中にカリカリに乾いた猫のウ○コを入れたりした事が度々あった為、だからこの癖は、もしかしたら幼少の頃に何らかの心的外傷を受けた事によって起こった急性ストレス障害なのかも知れなかった。そう思った俺は、さっそく労働基準監督署に出向き、そんな障害の恐れのある俺を無下に解雇した店長の所業を激しく訴えた。場合によっては告訴も辞さないぞ、というくらいの強い姿勢で窓口のカウンターをバンバンと叩いてやった。が、しかし、俺は労働基準監督署を追い出された。これ以上大きな声を出されますと警察に通報しなければなりませんよ、などと窓口のババアに脅された挙げ句、二度とその門をくぐる事を許されなかったのだった。


 あまりの蒸し暑さに七転八倒しながら、俺は畳みの上に放り投げていたアイフォンを指で手繰り寄せた。その最新型のアイフォンは、当然ながら自分で買った物ではなく、あいつの名義でローンを組んで購入した物だった。
『よく使う項目』を開いた。そこには、近所の銭湯と、近所のラーメン屋と、そしてあいつの携帯番号が表示されているだけだった。
 みゆきは俺よりも七歳年下の二十三歳だった。いわゆる『色白ぽっちゃり型』の女で、その真っ白な肌はつきたての餅のようにムチムチし、揉みしだくと生クリームのように柔らかかった。何より俺が気に入ってたのは、巨乳というか爆乳に近いその大きな乳だった。それはロケットのような形をした下垂型で、いかにもスキモノらしいだらしない柔肉の塊だった。
 そんな肌と乳だけ見ている分には、どこかのAV女優のようだったが、しかしその顔は絵に描いたようなブスであり、頭もおもいっきり悪かった。
 そんな女だったから、呼び出せばいつでも来た。夜中でも早朝でも文句一つ言わずにやって来た。「ヤるぞ」と言えばすぐにパンツを脱ぎ、「帰れ」と言えば一瞬にして消えてくれた。そんな都合の良いみゆきは、俺にとってオナホール以外の何物でもなかった。


 みゆきはなかなか電話に出なかった。異様な蒸し暑さが余計イライラさせた。イライラしながら何度も何度も電話をかけまくっていると、ようやく六回目で電話に出た。
「はい……」と小声で電話に出たみゆきの背後では『ピポピポ〜ン』という来客チャイムがひっきりなしに鳴り響いていた。俺は同じように声を潜めながら「店長いるのか?」と聞いた。するとみゆきは、さっきと全く同じ声で「はい……」と返事をした。

「今すぐ俺の部屋に来い」

「…………」

「聞いてんのかコラ」

「……はい」

「わかったな、十分以内に来るんだぞ」

「……はい」

「テメェは『はい』しか言えねぇのか低能」

 そう捨て台詞を残して俺は電話を切った。
 さっそく敷きっぱなしの万年床に寝転がりながらTシャツを脱いだ。バンザイした脇の下から『おでん』の煮汁のような匂いがモワッと漂い、かれこれ一週間近く銭湯に行っていない現実を思い知らされた。
 ズボンとトランクスを同時に脱いでも、そこもやっぱり悲惨な東京砂漠だった。バシバシに固まった陰毛は白い粉を噴いており、そのボンドでくっ付けたような陰毛を毟り取ろうとすると、その白い滓はフケのようにポロポロと零れ、万年布団の上に散らばった。それは、三日前のみゆきの汁が乾いた物だった。みゆきは、陰核を指で刺激されながら肉棒で膣壁を擦られると、すぐに潮を噴く癖があったのだ。

 暫くすると、アパートの鉄階段をカコンカコンと上って来るヒールの音が聞こえて来た。その足音はいかにもバカ女だった。損も得も、善も悪も、生と死すらも考えていないユルい女そのものの足音だった。
 電話を切ってから約六分でやって来た。店長に何と言って店を出て来たのかは敢えて聞かず、そのままいきなりペニスをしゃぶらせた。そのペニスは、当然の如く凄まじく汚れていた。そこに漂うニオイも半端ではなく、胡座をかいてしゃぶられている俺でさえ、そのプンプンと漂う生ゴミのようなニオイに吐き気がしていた。それでもみゆきはそれを一生懸命舐めていた。じゅぷじゅぷと卑猥な音を立てながらしゃぶり、口内に溜まるその臭汁さえも、何の躊躇いもなく飲み込んでいた。
 この女はそんな女だった。女と言うより、いや人間と言うより、みゆきは動物と呼ぶに相応しい生き物だった。だから、例えそれが一週間風呂に入っていないモノであろうとこの生き物には全く関係なかった。例えそれが見ず知らずの他人のモノであろうと、例えそれが実の父親のモノであろうと、それでもこいつは何の躊躇いもなく平気でしゃぶるであろう、そんなおぞましい生き物なのであった。


             ※


 みゆきとはコンビニで知り合った。二ヶ月前に俺が解雇された、あのコンビニだ。
 みゆきは、俺よりも一年ほど前からそこで働いていた。カタカナの『ツ』と『シ』が書き分けれないほどのバカのくせに、なぜか正社員だった。
 俺はバイト初日から、この女が馬鹿だと言う事に気付いていた。なぜなら、ラックに商品を並べている際、客に尻を撫でられてもジッと我慢していたからだった。
 その客は、スーツを着た普通のサラリーマンだった。いつも店長が休憩に入る時間を見計らって店にやって来ては、商品を物色するふりをしながら常にみゆきを監視していた。そしてみゆきがレジから一歩出ようものなら、まるで追尾型ミサイルのようにみゆきの後を追いかけ回しては、尻や胸を触っていた。

 ある時、俺とみゆきがレジにいると、トイレから出て来たその客がいきなり激怒し始めた。レジに向かって「トイレが汚いじゃないかぁ!」と叫び始めたのだ。
 他に客はいなかった。もちろん店長も休憩中で、店内には俺とみゆきとその客だけだった。
 その客は、「早く掃除しろよぉ!」と怒鳴りながら、俺たちを急かせるようにトイレのドアをバンバンと叩き始めた。明らかに不審だった。たかだかトイレが汚れていると言うだけなのに、まるで辺野古移設反対派のリーダーのように怒り狂っているのだ。
 本来ならバイトの俺がトイレ掃除に行かなくてはならなかったが、しかし、俺は敢えて知らん顔した。きっとあの客は、何か良からぬ事を企んでいるんだと思うと、ここはどうしてもこのバカ女に掃除に行かせたいと思ったのだ。
 みゆきは、横目で俺をチラチラ見ながら必死に何かを訴えていた。それでも俺は、それを無視してさっさと肉まんの補充を始めた。するとみゆきは小さな溜め息をつき、まるで『お姉ちゃんなんだからあなたがやりなさい!』と母親に叱られた姉のように唇を尖らせながら、しぶしぶレジを出て行ったのだった。

 おどおどしながらみゆきがトイレに入って行った。するとその客もみゆきのすぐ後についてトイレに入り、凄い勢いでドアをバタンッと閉めた。トイレはもちろん一人用であり、あの狭い空間では、きっと二人は密着しているに違いなかった。
 あの薄気味悪いサラリーマンの歓喜に満ちた欲情顔を想像すると、おもわず笑えて来た。しかしその反面、おどおどしながらあの薄気味悪いサラリーマンに好き放題されているみゆきを想像すると、不意に亀頭がズキンっと疼き、ゾクゾクしたものが太ももから涌き上がって来た。
 あんなブスに興奮している自分が情けなかった。確かに俺は、三十を過ぎても未だ素人童貞のキモ男だったが、それでもあんな馬鹿ブス女に欲情させられるほど落ちぶれてはいない。俺は風俗でも、ブスはきっぱりとチェンジするほどの面食いなのだ。
 しかし、その時の俺は妙にモヤモヤしていた。(もしかしてあのブス、あの薄気味悪い親父に本当にヤられちゃってるのか?)などと想像していると、おもわず勃起した肉棒をズボンの上から握りしめてしまっていた。
 但しそれは、ブスのみゆきに興奮していたのではなく、この非現実的なシチュエーションに興奮していたのだった。真っ昼間のコンビニのトイレで女店員が客に犯されているという、まるでAVのようなこの出来事が、今現実にすぐ目の前で行なわれているというこの状況に興奮していたのである。

 俺は胸に溢れて来る熱い息を吐きながら、閉ざされたトイレのドアをジッと見つめていた。便座に両手を付きながら、立ったまま背後から犯されているあのブス女のロケットおっぱいが、タプタプと激しく揺れているシーンを想像した。そして、あの薄気味悪いサラリーマンが、みゆきの制服の背中にハァハァと熱い息を吐きながらそのグロテスクな結合シーンを必死に覗き込んでいる姿を妄想しては、一人悶々としていたのだった。

 思ったよりも早くトイレのドアは開いた。みゆきがトイレに連れ込まれて、まだ五分しか経っていなかった。
 その客は、トイレから出て来るなり、異常に目をギラギラと輝かせながらレジに向かって来た。そして呆然としている俺に向かって、「トイレは常に綺麗にしとくように」と、まるで学校の先生のように言うと、そのまま店を出て行った。
 みゆきはトイレから出て来なかった。恐らく、尻から精液を垂らした状態で便器にしがみついているのだろうと思うと、今、そこで起きているその悲惨な状況に興味が沸いた俺は、慌ててレジから飛び出した。
 トイレに向かう途中、ふと雑誌コーナーのショーウィンドゥ越しに、駐車場をとぼとぼと歩いて行く薄気味悪いサラリーマンの姿が見えた。そいつは、歩きながら指を二本立て、その指のニオイを嗅いだりペロペロと舐めたりしていた。
 トイレのドアを開けると、みゆきは何もなかったかのようにトイレ掃除をしていた。特に衣類が乱れているわけでもなく、制服のズボンもきっちりと穿いていた。俺は一応、「大丈夫か?」と聞いてみた。みゆきは一瞬俺にチラッと振り返った。その表情には、犬がウ○コをしている最中のような、そんな後ろめたさのようなものが浮かんでいた。みゆきは俺からサッと目を反らした。そして何も返事をしないまま、再び便器にタワシをカコカコと鳴らし始めたのだった。

 そんな出来事があってから、俺はこのブスのバカ女に奇妙な感情を抱くようになった。もちろんそれは愛情ではなく欲情だった。中学のとき、ミポリンっというあだ名の特殊学級の女生徒がいたが、みゆきに対する欲情はそのミポリンに対する欲情と同じだった。
 そのミポリンという生徒は、いつもポケーっとしている知能遅れの娘だった。身体の発達は異様に早く、ノーブラの体操着にはいつもタプタプの乳とピンクの乳首が透けていた。一時期俺は、そんなミポリンばかりをネタにして自瀆していた。ミポリンの事など全然好きではなく、むしろ気色悪いとさえ思っていたのに、なぜか彼女をネタにオナニーすると、想像を絶するほどの快楽を得る事が出来たのだった。
 このミポリン同様、みゆきの事など薄汚い牝豚のようにしか思っていないのに、それでも何故かみゆきの事を考えると異様な興奮に襲われ、オナニーせずにはいられなくなってしまうのだった。
 当時の俺は、いつも深夜勤務中にオナニーしていた。客足がピタリと止まる深夜三時を見計らっては防犯カメラの映らない裏のロッカー室に籠り、商品のエロ本を見ながらシコシコしていた。ある時、何気にみゆきのロッカーを開けてみると、スギ薬局の袋がポツンと置いてあった。袋の中には、鼻に塗るだけで花粉をブロックする『鼻スースー・スティック』と、すきまピッタリ超朝までガードの『ウィスパー』が入っており、いずれもパッケージの封は切られていた。そんな商品の下に、いかにも使用済みといった黒いストッキングが丸められて押し込まれているのを発見した瞬間、突然心が躍った。それは、高校生の頃、洗濯機の中に放り込まれていた姉の使用済み下着を見つけた時と同じ、燃えるような昂揚感だった。
 さっそくそのストッキングを取り出し、股間部分を嗅いでみた。そこに陰部のニオイは感じられなかったが、どこか饐えた生活臭は感じられた。その匂いとこの変態的な状況に目眩を感じるほどの興奮を覚えた俺は、急いでズボンとトランクスを脱ぐと、ロッカーに手を付きながら尻を突き出し、その剥き出た肛門に『鼻スースー・スティック』をヌルヌルと塗り込んだ。強烈なミントが前立腺を刺激した。奇妙な快感に身震いした俺は、ビンビンに勃起したペニスにウィスパーを添え当て、その上にストッキングを直履きした。そこにズボンを履いてホールに出た。股間をムズムズさせながらラックの商品を点検するふりをし、店内に流れていたAKBまがいの新人アイドルグループの曲を出鱈目に口ずさみながら、俺は悶々とトイレに向かうのだった。
 黄色い汁で汚れた便器からは、キツいアンモニア臭がモワモワと漂っていた。その頃、近くにある家電量販店に中国人観光客が押し寄せては炊飯ジャーばかりを爆買いしていたため、その客がコンビニにまで流れて来てはトイレを滅茶苦茶に汚していた。そんな便器は、次から次へとやって来る中国人達に輪姦されながら、無惨に汚れた穴をぽっかりと空けていた。その穴を見ながら俺は、この薄汚いトイレで変態親父に犯されているみゆきの姿を妄想した。あの牝豚女の穴もこの便器の穴と同じだと思いながら、その荒んだ妄想と共にストッキングの上から股間のウィスパーを激しく上下させ、大量に放出した精液を高分子吸収ポリマーに全て吸い取られたのだった。

 深夜勤務だった頃の俺は、毎晩そんな変態オナニーを繰り返していた。ネタには困らなかった。商品のエロ本は見放題だし、みゆきの妄想もあった。
 誰もいない深夜のコンビニにはネタが溢れていた。毎晩同じ時間にやって来る二十代のキャバ嬢がいたのだが、彼女はいつも『六甲のおいしい水』を一本購入する代わりにトイレを使用していた。ある時俺は、彼女が来る前にトイレの汚物入れを空にしておいた。すると案の定、彼女が帰った後の汚物入れには、酷く黄ばんだオリモノシートがポツンと捨ててあった。もちろん舐めた。亀頭にも擦り付けた。その薄いシートにどんな危険が潜んでいるかも考えず、興奮の渦に巻かれた俺は、その新鮮な味と匂いを存分に堪能させてもらった。
 その女とは別で、もう一人いつも同じ時間にやって来ては雑誌の立ち読みばかりしているキャバ嬢がいた。その女は少々年配だったが、しかし、その熟れた肉体と露出の多い派手な服装は、若いキャバ嬢とはまた違った異様なエロスを漂わせていた。
 ある時俺は、その女以外に客がいない事をいい事に、雑誌コーナーの裏にあるラックに身を潜めた。もちろんその際、店内の防犯カメラは停止させた。理由もなくカメラを一時停止させると本部から大目玉を喰らったが、しかし興奮した俺にはそんな事関係なかった。
 俺はその通路の床に素早く伏せると、勃起したペニスをズボンから引きずり出し、ラックの隙間から女のミニスカートの中を覗いた。今にもボテンっと溢れ出しそうな大きな尻肉を、いかにも安っぽいゼブラ柄の小さなパンティが必死に支えていた。パンパンに伸びたパンティの下からは肉がはみ出し、そこに痛々しい肉割れ線が何十本も走っていた。
 そんな尻を覗きながらシコシコした。自然に両脚がスリスリと擦り合い、スニーカーのゴムの踵がピカピカに磨かれた塩ビシートの床にキュッキュッと鳴った。
 暫くすると、女はいきなりその場にしゃがみ込んだ。ラックの下で平積みになっている雑誌を手に取りパラパラとページを捲り始めた。尻が突き出され、更にパンティーがパンパンに広がっていた。
 床に頬を押し付けながらしゃがんだ股の裏を覗いた。太ももの隙間からクロッチがモッコリと盛り上がり、その中心に一円玉ほどの丸いシミが薄らと浮かんでいた。そのシミの色や匂いを妄想しながら亀頭から根元まで激しくシコシコしてやった。すると心地良い痺れが爪先から太ももへとジンジン走り、日本脳炎のように悶えた俺は、ラックに並んだ『じゃがりこ』の箱に大量の精液をぶっかけたのだった。

 そうやって深夜勤務の暇な時間をケチな自瀆ばかりで過ごしていた俺だったが、しかし、やはり生身の肉体が無性に欲しくなる事があった。

 そんなある日の深夜勤務中、悶々としている俺の前にあの生き物が現れたのだった。

(つづく)

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