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淫妄想2

2013/06/08 Sat 00:00

淫妄想2


 コタツの外では、ぴっちゃ、ぴっちゃ、とリズミカルな音が響き、コタツの中では、キュウリをしゃぶりながら悶える「うううん……ううううん……」という喘ぎ声が漏れていた。
 犬のように尻を振りながら、その卑猥に濡れ輝くキュウリをピストンしていると、四つん這いでプルンと垂れ下がっていたお椀型のおっぱいがタプンタプンと大きく波打った。
 その揺れ動く乳肉を目にした瞬間、不意に、「バスケ部の優子が見たんだってさ」と、あの時の麻美の声が蘇り、激しく胸が押しつぶされた。

 あの出来事さえなければ今頃は残り少ない学園生活をエンジョイしていたはずだった。そう思えば思うほど、今の自分のこの醜態が惨めに思えてならなかった。
 
 あの時。
 あのアパートの下の路地に自転車を止めたのがそもそもの失敗だった…… 

 その日発売されたダプレン・アイアンズの十周年記念特別DVDは、三枚組で一万七千円だった。
 ミカのポケットの中には八千円しかなかった。それでもミカはそこに出かけた。来月のお小遣いが入るまでは買えないとわかっていても、熱狂的なアイアンズのファンだったミカは、そのジャケットだけでも見たいという思いから、駅裏のオガワ楽器へと向かったのだった。

 発売時刻を間近にしたお店の前には、既にアイアンズファンが行列を作っていた。その行列が邪魔をして自転車が止められなかった。隣の肉屋さんの前に止めようとすると、『アサヒ商店街・見回り隊』という腕章をつけた厳つい親父が、「そこに自転車を止めるな!」と、もの凄い剣幕で怒鳴ってきた。
 お金がないのにミカは焦っていた。DVDを買えないのに、なぜか突然、早く自分もあの行列に並ばなければという衝動に駆られてしまった。
 自転車をどこかに止めようと周囲をぐるぐると回った。商店街は見回り隊の目が光っているため無理だった。だからそのまま商店街の横の細い路地に出た。
 アーケードを出たすぐに、まるで廃墟のような古びたアパートがポツンと建っていた。アパートの下の通路には何台かの自転車が放置されており、ここならに大丈夫だと咄嗟に思った。
 恐る恐るアパートの通路に自転車を入れた。数台並んだ放置自転車の前のブロック塀には、『住人以外はここに自転車を止めるな!』と、妙に怒った張り紙がでかでかと貼ってあった。
 それでもそこに自転車を止めた。そしてそのままその通路を出ようとすると、いきなりアパートの一室のドアがバタン!と開き、中から凄い形相をした中年男がズカズカと出てきたのだった。

「こら。お前はこの字が読めないのか」

 男はそう言いながらブロック塀の張り紙を指さした。

「ごめんなさい、すぐに移動します」

 慌てて自転車に戻り、何度も何度も男に頭を下げながらハンドルに手をやった。すると、いきなり男の手が、ハンドルを掴むミカの細い手首をガシッと握った。
「えっ!」と絶句しながら顔を上げた。男は濁った目を不気味にギラギラさせながら、ニヤニヤと笑っていた。

「な、なんですか……」

 声を震わせながらその手を引こうとすると、男は更にそこに力を込め、スーッと音を立てて長い鼻息を吐いた。

「スカートん中……見せてくれたら自転車止めてもいいよ……」

 そのユラユラとした口調は、明らかに酔っ払っていた。昼間から酒を飲み、見ず知らずの女性に、いきなりスカートの中を見せろなどと手首を掴むこの無法っぷりに、ミカは激しい恐怖を感じた。

(この男は狂ってる)

 そう思った瞬間、世の中の殺人事件はこうやって起きるんだと思った。みんなこうやって簡単に殺されてしまうんだと背筋がブルッと震えた。
 つい先日も、隣駅のガード下で、塾帰りの女生徒が労務者風の男に殴り殺された事件があった。新聞には、理由もなく突然襲われた『通り魔殺人事件』だと書かれていたが、しかし事実は、その生徒も、こうして男に何かを要求され、それを断ったために殴り殺されたのではないかと、今になってミカは咄嗟にそう思った。

(逆らったら殺される……)

 そう思ったミカは、唇を震わせながら、「どうすれば……いいんですか……」と男に聞いた。
 その言葉に男の目がギラリと輝いた。男はポケットの中からしわくちゃの千円札を二枚取り出した。そしてそれをミカの手に無理やり握らせながら、「取りあえず、その座布団の上に座れや」と、放置自転車のサドルの上に干してあった座布団を指差した。
 ミカは、言われるがままにそれに従い、その座布団の上に腰掛けた。すかさず男はその場にしゃがみ、ミニスカートの中を覗いた。
 男が吐き出す酒臭い息が、風に乗って上昇してきた。そして男は「おおお」や「スゲェなぁ」となどと呟きながら、震える指をそこに伸ばしてきたのだった。

「み、見るだけじゃないんですか……」

 そう声を震わせると、男は太ももに指を滑らせながら、「ああ、見るだけだよ……パンツの中をな……」と笑った。
 素早く男の指が、クロッチの端に引っかかった。心の中で(やだ……)と呟き、両目をギュッと閉じた。
 クロッチは、いとも簡単にペロリと捲られた。蒸れていた陰部を生温かい風が撫でた。その瞬間、あの時の土手の淫らな光景が頭に浮かび、恐怖とは別の感情がムラッと湧き上がったのだった。

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「パンツに付いてるこの濡れたものは愛液か? それとも小便ちびったか?」

 男はケラケラと笑った。
 ミカが黙っていると、男は更にポケットの中から二千円を取り出し、「おっぱいも見せてくれ」とそれをミカの手の中に押し込んだ。
 ミカは、迷うことなくその金をギュッと握りしめた。
 アソコを見られてしまった以上、もはやオッパイなんてどうでもよかった。どうせ見せるのなら金を貰ったほうがいいのだ。
 
(これで四千円。あと五千円あれば……DVDが買える……)

 そう思いながらその場に立ち上がった。それと同時に男はミカの上着の裾を掴んだ。そしてそのままスルッと上着を捲り上げると、「ブラジャー取れ」とギロリと睨んだのだった。

 日曜日の午後の日差しに、お椀型のおっぱいが照らされた。息をするたびに、その真っ白な柔肉はフルフルと震えた。
 男は、ニヤニヤと笑いながらそれを眺め、そして「ついでにこっちも見せろ」と言いながらパンツを膝まで下ろすと、スカートを自分で捲れとミカに命令した。
 ミカは恐る恐るスカートをたくし上げた。黒々とした陰毛が、直射日光に痛々しく照らされた。

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 男は、まるで芸術家のようにそこを眺めながら、じわりじわりとそこに顔を近づけてきた。そして、ふさふさの陰毛に鼻先をくすぐられながら、そこの匂いをスースーと嗅いだ。

「おめぇ、年はいくつだ……」

 男は、半開きになった股間に顔を埋めながら聞いた。

「十八です……」

「まだ若けぇなぁ……どうりで小便臭せぇわけだ」

「…………」

「ところでおめぇ、さっきと比べるとここが濡れきてんだけどよ……もしかして興奮してんのか?」

 ミカは無言でブルブルと顔を横に振った。
 が、しかし、確かにミカのそこは濡れていた。あの土手の淫らな光景とリンクするこの状況は、ヌルヌルした液体を太ももに垂らすほどにミカを欲情させていた。
 男は、首を横に振るミカを「ふん」と鼻で笑いながら立ち上がった。そして「嘘つくな。おめぇのここは、いやらしいオマンコ汁でヌルヌルだべよ」と笑いながら、再びポケットの中から二千円を取り出した。
 その二千円を、ミカは思わずジロッと見てしまった。
 そんなミカの視線に気づいた男は、「欲しいか?」とそれをミカの顔の前でヒラヒラと振った。
 ミカは、黙ったまま俯いた。すると男はニヤニヤと笑いながら、突然ジーンズのボタンを外し始めた。そして、その場でそれをずるずると下げながら、「しゃぶってくれよ」と呟き、白豚のような醜い下半身をそこに曝け出したのだった。

 男のペニスは、ビクッ、ビクッ、と脈打ちながら勃起していた。
 その前にソッとしゃがむと、男は辺りをキョロキョロしながらも、ミカの後頭部に手を回してきた。
 それが顔面に突きつけられると、ほんわかと生温かいイカの臭いが漂ってきた。その真っ赤な亀頭のカリ首には、消しゴムのカスのような恥垢が溜まっており、亀頭の裏には、パリパリに乾いたティッシュの切れ端がピタリと張り付いていた。
 そんな汚れた肉棒に、恐る恐る指を伸ばした。その硬さも大きさも、今までの彼氏たちとは比べ物にならないくらい立派だった。(凄い……)と心の中で呟きながらそれを上下にシコシコすると、尿道に溜まっていた我慢汁がくちゃくちゃといやらしい音を立て、しゃがんでいるミカの股間をじんじんと疼かせた。

「人が来るといけねぇから……早くしゃぶってくれよ……」

 男はそう言いながら、ミカの後頭部をぐっと押した。
 唇に押し付けられた亀頭をミカは躱した。そして上目遣いでソッと男の目を見ると、「飲んであげます……だから……もう三千円ください……」と小さく囁いた。
 男は、一瞬嬉しそうにニヤっと笑いながらも、すぐに顰めっ面をして「チッ」と舌打ちした。そして、尻の下までずり下がっているジーンズのポケットを弄り、そこからくしゃくしゃの千円札を三枚抜き取ると、「今日はパチンコに行けねぇじゃねぇか」と愚痴りつつ、それをしゃがんだミカの膝の上にポイッと投げたのだった。

 ミカはゆっくりと唇を開き、生温かい息を吐きながらその汚れた肉棒を口内に包み込んだ。
 口の中に強烈なイカ臭が溢れた。舌先を亀頭に滑らすと、そこに付着していた恥垢やティッシュのカスがザラザラと捲れた。
「ハァハァ」という男の息が、頭上から聞こえてきた。根元まで咥え込み、コリコリとした亀頭をヌルヌルと舐めながら顔を前後に動かしてやると、そのハァハァという荒い息は、「あっ、あっ」という情けない声に変わった。
 ものの3分も経たないうちに、男は、「イクぞ……出すぞ……」と唸りながら、その醜く太った腰をコキコキと動かし始めた。

「金払ってんだからよ……ちゃんと全部飲み干すんだぞ……」

 そう唸りながら男はミカの後頭部を手で押さえ、さらに激しく腰を振ってきた。
 丸く開いた口の中を、硬い肉棒が出たり入ったりと激しく繰り返していた。そうされながらもミカは、しゃがんだ股間の中を弄りたくてウズウズしていたが、しかし、そこまでする勇気はさすがになかった。

「あっ、あっ、イクっ!」

 頭上で男が小さく叫んだ。
 それと同時に、肉棒はドクンっと跳ね上がり、生ぬるい液体が口内で弾けた。
 ピストンする唇に、ぶちょ、ぶちょ、といやらしい音が鳴った。ドピュ、ドピュ、と痙攣しながら飛び出していた精液は、次第に、ニュルッ、ニュルッ、と弱々しくなってきた。
 それを見計らい、口内に溜まった精液を一気にゴクリと飲み干した。
 男はそんなミカを、潤んだ目で見下ろしていた。咥えたペニスにチューチューと吸い付きながら、尿道に溜まった精液を絞り出している十八歳をジっと見つめていた。

「また来いよ……今度はチンポを入れてやっからよ、変態女……」

 男はそう呟きながらミカの後頭部を優しく撫でた。ミカは未だそれを根元まで咥え込んだまま、コクンっと小さく頷いたのだった。

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 そんなあの日の出来事を鮮明に思い出していた。コタツの中に潜りながら、咥えていたキュウリをガリッと噛み千切った。
 激しい後悔の念に駆られていた。そんな後悔は、引き籠りになってから幾度も幾度も繰り返してきた。その度にミカは、あの男を恨み、それを見ていた優子を恨み、そしてその噂を広めた麻美を激しく恨んだ。
 だけどミカは、それが見当違いである事はわかっていた。そもそも、あの時、あんな所に自転車を止めた自分が間違っていたのだ。そして、お金と性欲に目がくらみ、あんな薄汚い親父にあんなことをしてしまった自分が全て悪いのだ。
 それをまんまと優子に見られたのも自分の運のなさからだった。そしてそれをクラス中のみんなに暴露され、こうして引き籠りへと追いやられてしまったのも、自分の人望のなさから生まれた結果だった。
 それをわかっていたミカは、あの男や優子や麻美を恨むよりも、百倍自分を恨んでいた。コタツの中に潜りながら、自分自身に「死ね! 死ね! 死ね!」と叫びまくるミカは、口内でボロボロに砕けたキュウリをコタツの中に撒き散らした。
 そのまま一気に泣いた。ミッフィーのクッションをコタツの中に引きずり込み、そこに顔を押し付けながら思い切り泣きまくった。
 コタツの赤い灯にぼんやり照らされている尻が哀れだった。陰部に突き刺さったままだったキュウリが、細い糸を引きながらヌルっと抜け落ちるのが悲しくも惨めだった。

 そうやって二分ほど一気に泣いた後、まるで冬眠から覚めた熊のように気怠くコタツから抜け出した。
 窓際のデスクに座り、テラテラに濡れたキュウリをコンビニの袋の中に捨てると、ため息と共にデスクの引き出しを開けた。そしてその奥からタバコと百円ライターを取り出すと、いきなり窓を全開にした。
 冷たい夜風にさらされながら、全裸のままタバコを吹かした。白い煙を吐き出しながら窓の外を覗くと、寝静まった住宅街はジオラマのように安っぽく、なぜか無性にそれらを破壊してやりたい衝動に駆られた。

 冷たいトタン屋根が、ギシッ、ギシッ、と軋んだ。その音にいちいち肝を冷やしながら屋根の端まで行くと、そこに腹ばいになり、雨樋にしがみつきながら屋根の下に足をブラブラさせた。爪先で門塀を探り、その四角い門柱の上に降り立った。そこから玄関脇の芝生の上に飛び降りた。息を殺しながら門扉を開け、忍者のようにそこをすり抜けると、素早く静まり返った住宅街の闇に紛れ込んだ。

 暗い路地を突き進んでいくと、郵便局の三叉路に出た。右に行くと例の土手で、左に行くとアサヒ商店街だった。ミカは迷うことなく左に向かった。
 シャッターが閉まったアーケードを走った。まるで何かに追われているかのように必死にそこを走り抜けた。
『横川のしゅうまい』と書かれた看板の角を曲がり、生活臭の漂う路地をしばらく行くと、廃墟のようなおんぼろアパートが月夜に照らされていた。
 そこの一階の通路に入ると、ずらりと並んだ放置自転車の中から、いきなり二匹の猫が飛び出し、一番端に止めてあった自転車がガシャンっと音を立てて倒れた。

「誰だ」という野太い男の声が響いた。その声と共に、一階の角部屋のドアが開き、薄汚い男がヌッと顔を出した。
 例の男だった。
 男は、それがミカと確認するなり不敵な笑みを浮かべ、「入れよ」と言った。
 部屋に入るなり、ベッドに突き飛ばされた。男はアダルトDVDを観ていた最中らしく、イヤホンが刺さったままの小さなテレビ画面には、獣のような男と女が汗だくになって乱れているシーンが映し出されていた。

 ミカは、無言で服を脱ぎ始めた。
 男も、黙ったままパジャマのズボンを脱ぎ、既に熱り立っている肉棒を突き出した。
 ミカは黒いストッキング一枚の姿となった。もちろんパンティーは履いておらず、ストッキングに押し潰された陰部は既にヌルヌルに濡れていた。
 そんなミカを男はニヤニヤと見下ろしながら、ベッドの上にドスンッと座った。それと入れ替わるようにベッドを下りたミカは、そのまま床にソッと腰を下ろし、目の前に突き出された肉棒をシコシコとシゴき始めた。

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「オマンコ、したくなったのか?」

 男はそう声を潤ませながら、タプタプと揺れるお椀型のおっぱいを指で弄んだ。ミカはコクンっと小さく頷きながら、そのままそれを口に含んだ。
 貪り食うかのようにそれを激しくしゃぶりまくった。そうしながら、そのまま後ろ手でストッキングをスルスルと下ろすと、男は全裸になったミカをベッドに引きずり上げた。
 ベッドにうつ伏せに押さえつけられた。男はミカの背中の上に乗ると、ハァハァと荒い息を吐きながらムチムチの尻肉を押し開いた。

「ヌルヌルに濡れとるわ……」

 男はそう嬉しそうに呟くと、そこに硬い肉棒を挟んだ。
 そして何の前戯もなく、いきなり入れてきたのだった。

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 男は、そこにガンガンと腰を打ち付けてきた。ベッドがギシギシと軋み、結合部分が、ビチャ、ビチャ、とだらしない音を立てた。
 男は、うつ伏せになるミカの胸を乱暴に揉みながら、「中で出してもええんか?」と聞いた。うなじからすり抜けてくる男のその息は、まるで工場裏のドブ川のようなヘドロの匂いがした。

 そんな男の獣のような口臭を思い浮かべながら、アルミ製の携帯灰皿にタバコを押し消した。そしてデスクの下に落ちていたコンビニの袋を慌てて拾い、中からトロトロに濡れたキュウリを摘み出した。

「ああああ、イクぞ、イクぞ、中で出しちゃうぞ」

 そう唸りながら腰を振る男の姿を思い浮かべ、キュウリの先で濡れたビラビラを掻き分けた。そして、ズボズボとピストンされる肉棒を鮮明に思い描きながら、再びそこにキュウリをぬぷぬぷと沈めたのだった。

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 そんなミカの妄想は限りなく続いた。妄想と共に異常な性欲が誘発されるため、その度にミカはオナニーを余儀なくされた。
 部屋に籠もりっぱなしだった。
 家族の誰一人とて近づけない部屋はいつしかゴミ屋敷と化し、常に生ぬるい淫臭がムンムンと漂っていた。
 そんな部屋の中で一日中妄想を繰り返し、果てしないオナニーに耽っていたミカは、既に性嗜好障害に陥っていた。性的行動コントロールが効かなくなってしまったミカの妄想は益々猟奇化し、それに合わせて陰部に挿入する異物も過激に変化していたのだった。




 その日もミカは、全裸でコタツに潜り込みながらオナニーに耽っていた。妄想の中、いつもの三叉路で足を止め、今日はどこに行こうかと悩んでいた。
 駅裏のポルノ映画館、場外馬券場の男子トイレ、麻薬中毒者たちが集まるコインランドリーなど、行く先は多かった。妄想のシチュエーションが日に日に増していくため、いつもその三叉路で迷ってしまうのだが、しかし、そうやって悩んでいても、結局はいつもの土手へと向かってしまうのだった。

 三叉路を左に曲がってしばらく行くと、頭上を走る環状線の巨大なコンクリート柱が見えてきた。その環状線の高架下には澱んだドブ川が流れており、雑草の生い茂る土手が遥か彼方へと続いていた。
 コンクリートブロックを積み重ねただけの粗悪な階段を上った。土手の上に上がると、すぐさま同じように粗悪な階段を下った。
 ひび割れだらけの擁壁に沿って雑草の中を進んでいくと、高架下に大量の粗大ゴミが山積みになっていた。
 あまりの異臭に一瞬足を止めた。すぐ目の前に転がっていた炊飯ジャーの中には、毒々しい色をしたムカデがカサカサと音を立てて蠢いていた。
 風が吹いた。箱型テレビと冷蔵庫の間で寝ていたホームレスがむくりと顔を上げ、そこに突っ立っているミカを睨んだ。
 男のボサボサの髪が風に靡いた。一瞬、あれ? と思った。いつもは漆黒の闇に包まれているのに、今日はそんな男の風に乱れる髪さえも鮮明に見えるのだ。

 昼だ、と思った。
 妄想はいつも夜なのに、今日は昼なのだ。

(もしかしてこれは……)

 そう思った瞬間、男が顔を顰めながら「なんだ?」と言った。
 炊飯ジャーの中から這い出てきたムカデがミカの足元を横切ろうとした。その背中を靴の先で押さえ、そのままコンクリートの床にズリッと擦り付けると、その毒々しい体は無数の糸を引きながら千切れた。

 終わりのない妄想は、妄想に妄想を重ねていた。いつしか現実と妄想の区別がつかなくなり、どれが妄想でどれが現実なのかわからなくなっていた。

 ミカは、そこに漂う濃厚な異臭をはっきりと感じながらスカートのフックはずした。スルスルっとスカートが足元に落ちると、真っ白な下腹部に張り付く薄ピンクのショーツが、色のない空間にくっきりと浮かび上がった。
 男はゆっくりと体を起こし愕然とした。カサカサの唇を震わせながら、「マジかよ……」と一言呟いた。
 マジかよ、マジかよ、マジかよ。
 その言葉を、頭の中で何度も何度も繰り返しながらショーツを下ろした。
 昼間なのにカラスが鳴いていた。

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(淫妄想・完)

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