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毒林檎16

2013/05/30 Thu 17:59

毒林檎16



 弾力性のある尻肉がゆっさゆっさと動く度、そのグロテスクな結合部分からは、まるで納豆をこねるような、ねちゃねちゃ、という音が聞こえてきた。
 生肉の感触が脳を貫いた。そのヌルヌルした滑らかさとコリコリした肉感に目を細めた俺は、「おぉぉぉ……」と深い息を吐きながらも、妖艶に動くその丸い尻肉に手を伸ばさずにはいられなかった。
 怒鳴られるのを覚悟で触った尻だったが、しかし原田凉子は何も言わなかった。それどころか、俺の手の平が尻肉を包み込むなり、原田凉子は「うぅん……うぅん……」と切なく唸り始め、もっと触ってとばかりに尻を振り始めたのだ。

 そんな彼女の仕草によって、二人の立場は急展開した。
 今まで主導権を握っていた原田凉子が子猫のように鳴き始め、されるがままだった俺が、「ほら、ほら」と、威圧的に腰を振り始めたのだ。
 SがMへ、MがSへと変わった瞬間だった。
 所詮、原田凉子は女なのだ。弁護士だ東大卒だと威張っていても、一度チンポをぶち込まれてしまえば、ただの牝にすぎない。
 俺はそう微笑みながら、背後から原田凉子の乳を鷲掴みにした。
 最初は「んんんん……」と唸っているだけだったが、しかし、両乳を揉み解しながら、その先端でコリコリしている乳首を指で転がしてやると、そこで初めて「あぁん、あぁん」と女らしい鳴き声を喚き散らしたのだった。

「最初からこうして欲しかったんだろ……こうされる事を想像してオナニーしてたんだろ……」

 そう囁きながら、乳首を転がしていた右手を腹へと滑らせ、縦型のヘソを指腹でスリスリと優しく撫でた。そしてその指を陰毛の中へと滑らせながら、「ここを……弄って欲しいのか?」と囁き、肉棒がズボズボとピストンしている穴の縁に指をヌルヌルと滑らせた。
 そしてその指を、そのままクリトリスへと伸ばした。それに触れた瞬間、原田凉子はいきなり乱れた。まるで何かのスイッチのように、それを指で転がす度に、原田凉子は俺の膝の上で激しく乱れたのだった。

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 クリトリスを弄られながら肉棒をズボズボされている原田凉子からは、さっきの高慢な態度は消えていた。「もっと、もっと」と喘ぎながら俺の体に撓垂れ掛かり、執拗にキスを求めて来るその様には、もはや弁護士としてのプライドも、東大卒としての驕りもなく、性に飢えた一匹の牝猫と化していた。

 そんな堕落した原田凉子の姿に優越感を感じながらも、ふと、今の原田凉子なら真実を話すかも知れないと思った俺は、その細い体を背後から抱きしめ、その小さな顔を後ろに向かせてディープキスをしてやった。
 生温かい口内を舌で掻き回すと、原田凉子はすぐに、うぐっ、うぐっ、と唸りながら舌を絡め、コキコキと激しく腰を振ってきた。
 そんな濃厚なディープキスの末、彼女の口から舌を抜くと同時に、俺は耳元に低く囁いた。

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「どうして箕輪社長は……奥さんにこんな事をさせたんだ?……」

 原田凉子は答えなかった。「もっとして」とばかりに再び俺の唇に舌を伸ばし、質問する俺の口を封じようとした。
 そんな原田凉子から俺は顔を反らした。そしてガンガンと突いていた腰をいきなり止めると、ぐったりと椅子に凭れて深い溜め息をついた。

「やめないで!」

 原田凉子は声を震わせながら叫んだ。

「話してくれないのなら終わりだ……」

 そう言いながら腰を引くとペニスがヌポッと抜け、桃色の濡れた穴がぱっくりと口を開いた。
 どす黒い肉棒には白濁の汁がべっとりと付着していた。その汁は陰毛をも濡らし、まるでリンスを塗りたくったかのようにネトネトになっていた。
 ソッと後ろを振り向いた原田凉子は、恨めしそうに横目で俺を見ながら「わかったわ……」と呟いた。そして再び俺の股間に尻を向け、中腰のままドロドロに濡れ輝いたペニスを指で摘むと、「話せる事なら話してあげる……だから早く……」と、それを穴に入れようとした。
 瞬間、俺は腰を捻った。濡れたペニスが原田凉子の指からツルンっと滑り、俺の腹にピタンっと当たった。

「ダメだ。全て話してもらおう」

 そう言いながらも俺は、パンパンに腫れ上がった亀頭だけを穴の中にニュルっと挿入した。ここで彼女に機嫌を損なわれては元も子もなく、常にソノ気にさせておかなければと思ったため、かろじて亀頭だけ入れてやったのだ。
 案の定、原田凉子は、いきなり滑り込んで来た亀頭に「あんっ」と背骨を反らし、「わかったから、早く奥まで入れて」とねだった。

「正直に話すんだな?」

 そう念を押しながらカリ首だけヌポヌポしてやると、原田凉子はもう我慢できないといった口調で「約束するから」と、飢えた牝豚のように尻をモジモジさせた。

 俺は丸い尻を両手で鷲掴みにすると、尻肉をこれでもかというくらいに広げた。そして一気にペニスの根元まで突き刺してやると、原田凉子は更に背骨を反らし、天井を大きく仰ぎながら「あぁぁ!」と大きく喘いだ。
 そんな彼女の背中を強く抱きしめた。尻を椅子から突き上げ、ドン、ドン、力強くピストンすると、その豊満な尻肉を淫らに跳ね上げてやったのだった。

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 そうしながらも俺は、甘い香りが漂う白いうなじにむしゃぶりつき、その耳元に「箕輪社長はいったい何を考えているんだ」と聞いた。

「……奥さんが病気なのよ」

 ハァハァと荒い息を吐きながら、原田凉子は短く答えた。

「病気?……何の?」

「ネクロフィリアよ……」

「ネクロ?……なんだそれ……」

「死体愛好の事よ……つまり、死体とセックスしたがる変態よ」

 原田凉子はキスをねだりながらそう言った。

 俺は、思わず椅子から立ち上がりそうになった。

「し、死体って、奥さんは眠った男に興奮する変態だって言ってたじゃねぇか!」

 そう叫びながら、迫る原田凉子の唇から顔を背けた。

「って事は、本当は俺を殺そうとしてたのか?」

 そう改めて彼女の顔を覗き込みながら聞くと、原田凉子は「ふっ」と笑いながら俺から顔を反らした。そしてゆっくりと前を向くと、また背面騎乗で腰をコキコキと振りながら、「最初はそうだったわ……」と小さく呟いたのだった。

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 白いレースの向こうを救急車が通り過ぎていった。そのすぐ後をパトカーのサイレンが続き、更にその後から消防車のサイレンが響いていた。
 最近の新宿の事件事故は一筋縄ではいかない。携帯の普及により、事件事故現場での一般人の撮影が当たり前となった昨今、各署はネットに動画を投稿される事を恐れ、過剰反応しているのだ。だから新宿では、どんな些細な事故であっても、もれなく救急車とパトカーと消防車が三台セットでついて来るのだった。

 そんな慌ただしい窓の外とは裏腹に、この部屋は不気味に冷えきっていた。
 尻がユッサユッサと動き、木製の椅子がギシギシと軋み、そして原田凉子の残酷な言葉が、まるで客の少ない演芸場で怪談小話をしているかのようにボソボソと流れていた。

「この計画で、私が最初に箕輪社長から依頼されたのは、『社員の中から殺してもいい奴を探せ』だったわ……」

「…………」

「社長は知ってたのよ……奥さんが浮気している事も、そしてセックスの最中に浮気相手を殺害している事も……」

 俺はカラカラに乾いた喉に唾を飲み込む事も忘れ、「そ、そんなに殺しているのか?……」と聞いた。

「私が知っているだけでも三人いるわ。全員、セックスの前にベラコラボ・アテンサトミン入りの睡眠薬を大量に飲まされ、殺害されているわ……」

 俺はその聞き覚えのある、ベラコラボ・アテンサトミンという薬品名を復唱しながらソッと天井を見上げた。
 そして、何かを思い出したように「って事は……」とゆっくり視線を落すと、原田凉子はコクリと頷きながら、「そうよ。あなたが知っている加藤常務も奥さんが殺したのよ」と呟いたのだった。

 原田凉子のその言葉を、頭の中で二度繰り返した。しかし、既に真っ白になっている俺の頭の中では、何度言葉を繰り返しても理解する事が出来なかった。

「加藤常務の死後、二ヶ月も経たないうちに、社長の運転手をしていた三浦さんが環八沿いのラブホテルで変死体で発見されたわ。やっぱり死体からは大量のベラコラボ・アテンサトミンが検出され、一時は連続殺人だと大騒ぎされたんだけど、社長が巨額の賄賂を使って揉み消したわ……加藤常務の時のようにね……」

 確かに、社長の運転手をしていた三浦と言う男は、一年前に心筋梗塞で亡くなっていた。年はまだ三十半ばで、どことなく若い頃の柴田恭平に似た優男だった。
 随分と社長に可愛がられていた男だったから、きっと盛大な社葬になるだろうと社員の誰もがそう思っていたが、しかし、葬儀は密葬だった。家族と、ごく近しい親類と友人だけでひっそりと行われ、会社からは、社長と井上専務の二人が出席しただけだった。
 彼ほどの男の葬儀が密葬とはと、当時は違和感を感じたものだったが、しかし、今、事情を聞き納得した。
 あの『奇石の天皇』と異名を取る箕輪裕一郎とて、さすがに、妻を寝取られ、挙げ句の果てには妻に殺されてしまった男の葬儀を盛大に行えるわけがないのだ。

「もちろん社長は、三浦さんと奥さんが以前からそう言う関係にあった事を知っていたわ。だから巨額の賄賂を使ってまでそれを揉み消したの……社長は奥さんの事を異常なほどに愛しているから、奥さんを見放せなかったのね……」

 俺は上下に動く原田凉子の尻肉を鷲掴みにすると、おもわずそこに力を込めながら、「愛してるなら事件を揉み消す事よりも、事件を起こさせない事を防ぐ方が先だろ」とその矛盾点をついた。
 すると原田凉子は、鷲掴みにされた痛みに快楽を感じているかのように更に腰をくねらせながら、「防いだわ。だから社長は、奥さんを香港に行かせたんじゃない」と荒い息を吐いた。

「でもダメだったわ……奥さんは香港で再び犯行を繰り返したの……相手は香港の貿易会社の社長だったわ。その人と奥さんは香港の財界人が集まるパーティーで知り合い、そして奥さんはすぐに彼を箕輪社長に紹介したわ。それがきっかけで、その人の会社とミノワ・エージェンシーが大きな取引するようにまでなったんだけど……奥さんは、その取引が成立する前にその人を殺してしまったわ……いつもの睡眠薬で殺害し、その死体を犯したのよ……」

 そこで初めて、乾いた喉にゴクリと唾を飲み込みながら、俺は「アーノルド坊やも殺されていたのか……」と呟いた。

「そうよ……エルウェイ・ホールディングスのアーノルド氏よ……奥さんが彼を取引前に殺してしまったため、契約のダイヤモンドは手に入らなかったわ。そのせいでミノワ・エージェンシーは真鍋商事に契約不履行で訴えられ、多額の損害賠償を支払わされた……だけど社長はそれだけではすまされなかった。事件を揉み消すために、香港の警察に多額の賄賂も払わなければならなかった……社長は奥さんを再び東京に呼び戻したわ。香港警察が要求して来た賄賂額が、日本の警察に渡していた額の三倍だった事に驚き、慌てて奥さんを帰国させたの……」

 俺は腰を止めた。そして原田凉子の背中に向かって「そう言う問題じゃないだろ」と首を傾げた。

「賄賂の額が高いとかそういう事よりも、奥さんが殺人する事を防ぐ事の方が先決だろ」

 俺がそうツッコミを入れると、すぐさま原田凉子は「もちろんよ」と言葉を返した。

「だから私は社長に言ったわ。『社員の中から安全な生け贄を探して欲しい』と社長に相談された時、屍姦ではなく昏睡姦したらどうですか、ってね……」

「………………」

「社長は私のアドバイスを聞き入れてくれたわ。私はさっそく奥さんに計画を説明し、これなら絶対に安全ですからと口説いた……だけど奥さんは納得いかなかったみたいだったわ……例え意識がなくても、死体の興奮は生きている人では感じられないからって複雑な顔をしてたわ……でも結局は納得させてやった。捕まったら死刑ですよって言ってやったらすぐに言う事を聞いたわ」

 そう笑いながら再び腰を動かし始めた原田凉子の尻を、俺は愕然としながら見つめていた。快楽殺人を繰り返す危険な女を、こいつらはまるで万引き癖のある主婦に言い聞かせるかのように軽く考えているのだ。

(こいつらみんな……狂ってる……)

 そう背筋をゾッとさせる俺の膝の上で、原田凉子は激しく乱れていた。妖艶に動き回る真っ白な尻の真ん中では、グロテスクな穴が俺の肉棒をズブズブと飲み込んでいた。テラテラと輝き、ぴちゃぴちゃと音を立て、ヌルヌルとした感触がペニス全体を包み込んでいた。

 これほど卑猥なシーンをモロに見せつけられていても、一向に射精する気配はなかった。
 それは決して、さっき一発抜いたからではなかった。
 この上流階級たちの、あまりにも身勝手な傲慢さに畏怖していたため、そんな気分にはならなかったのだ。

(このままでは……いつか俺も……)

 そう震えながら卑猥な結合部分を見ていた。
 あの快楽殺人者の、「許して下さい加藤さん!」という懺悔の言葉と、「次回もあの人をお願いします」と呟いた言葉を思い出しながら、俺は、一刻も早くこいつらの渦の中から逃げ出さねばと激しい焦燥感に駆られていたのだった。

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(つづく)

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