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毒林檎9

2013/05/30 Thu 17:59

毒林檎9



 カチャッと浴室のドアが静かに開き、全裸の女が恐る恐る出て来た。
 スタスタと絨毯を鳴らす女の足音を聞きながら、ふと俺は、ここのトイレにはウォシュレットが付いていなかった事に気付き、きっとあの人妻の陰部には小便の香りがムンムンしているのだろうと興奮の目眩を感じた。

 女はベッドに腰掛けると、シーツをスルスルと鳴らしながら俺に迫って来た。そして俺の太ももにソッと手を置くと、「目を覚ましてる事はわかってるんですよ……」と、震える声で再びカマをかけて来た。
 こんな女の病的な言葉まで、隣の原田凉子はちゃっかり聞いているんだろうなと思うと、急にムズムズとした笑いが込み上げてきた。
 笑ってはいけないと焦った俺は、慌てて寝息のリズムを変え、グガッ! と親父的な鼾をかいて誤魔化した。
 すると女は、そんな鼾に一瞬「ひっ」と肩を竦め、慌てて例のチャイムを手にしてベッドに踞ったが、しかし、俺の寝息が安定して来ると再びムクリと顔を上げ、「嘘寝だって事はわかってるんですよ」と、またカマをかけてくるのだった。

 そんな事を繰り返していたせいで、すっかり俺のペニスは萎えてしまっていた。
 女は「知ってるんですよ?」などと馬鹿の一つ覚えのようなカマをかけながらも、そんな萎えたペニスに手を伸ばしてきた。
 ダラリと項垂れたナマコのようなペニスを、女は細い指でシコシコとシゴき始めた。そして俺の顔を覗き込みながら、恐る恐る「本当は起きてるんですよね?」などと語りかけて来る。
 俺はそんな女の病的な囁きに興奮した。正常な女よりもこんな異常な女の方が俺は燃えるのだ。
 そのうち俺のペニスはみるみると力を増し、まるで時計の針の秒針のようにビクンビクンとしながら天井に向かって反り立った。
 女は、硬くなったペニスをシコシコと上下に動かしながら「もし嘘寝だったら警察に訴えますからね……」などと、実にとんちんかんな事を囁いた。そして俺のペニスを軸にして、そのまま下半身を俺の顔へと移動させると、ムチムチの尻を俺に向けながら「舐めたいですか?」と囁いたのだった。

 この状態でのシックスナインを想像すると、一瞬背筋がゾッとした。というのは、以前俺は顔面騎乗で窒息しそうになった事があるからだ。
 それはやはり、昔付き合っていた小笠原由貴との変態セックスで起きた事故だった。小笠原由貴は俺の体中をロープで縛り、完全に身動きできない状態にした上で、俺の顔に跨がった。
 ヌルヌルのワレメが俺の顔面に擦り付けられた。俺は舌をピーンと突き出し、彼女の股間を迎い入れていた。
 しかし、途中から彼女は異常興奮し始めた。腰の動きが激しくなり、もっと密着させようと股間をグリグリと押し付けて来たのだ。
 たちまち俺は息ができなくなった。ちょっと待て! と思いきり叫ぶが、その声はドロドロのマンコの中でぶちょぶちょと鳴るだけだった。
 両手両脚を縛られた俺は打ち上げられた魚のように、全身をビクンビクンと跳ね上げた。しかし完全に陶酔してしまっている彼女はそれに全く気付かないまま腰を振り続け、遂に俺はそのまま気絶してしまったのだった。

 結局大事には至らなかったが、しかし、あの時、確かに俺は、子供の頃に実家の裏に住んでいた長野の爺さんの笑顔を見た。
 気絶する俺の頭の中に、三十年も前に死んだ長野の爺さんが現れ、俺に蛇の死骸を見せつけながら、「炭で焼くと美味いんだ」と笑ったのだ。
 因みに、長野の爺さんは、戦時中、ガダルカナル島にいた。そこで喰っていた蛇の味が忘れられないらしく、いつもどこからか生きた蛇を調達して来ては、それを七輪で焼いて喰っていた。
 俺は一度だけその蛇を喰った事がある。小学五年生の時、長野の爺さんに勧められて一口だけ喰ったのだ。
 長野の爺さんは俺の目を覗き込みながら「美味いだろ?」と聞いて来た。
 それは強烈に生臭く、俺は本気で吐きそうになっていた。が、しかし、長野の爺さんのその時の目が異様に恐ろしく思えた為、俺は「おいしい」と嘘をつくしかなかった。
 そんな俺を見て長野の爺さんは笑った。白内障の目玉を銀色に輝かせながら、実に嬉しそうに笑った。
 あの時の長野の爺さんの不気味な笑顔が、顔面騎乗で気絶していた俺の脳裏に鮮明に蘇ったのだ。

 過去にそんな恐ろしい経験をしていた俺は、今、俺の顔に跨ごうとしている女に恐怖を感じていた。
 あの時のように縛られてはいないが、しかし、眠ったフリをしなければならないという状況は、縛られているのと何ら変わりはなかった。
 俺はひしひしと恐怖を感じながら、迫って来る女の尻を見ていた。
 女は右手でペニスを手こきしながら「起きてるなら起きてるって正直に言って下さい」などと呟き、俺の顔の横で尻を止めた。そして一瞬躊躇いを見せたものの、しかし女はゆっくりと俺の顔を跨いだのだった。

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 すぐ目の前で女のワレメが息衝いていた。ワレメからはいやらしい汁が滴り、まるで涎を垂らしているようだ。
 女はそんな卑猥な性器を俺に見せつけながら、脅えた目でジッと俺の顔を見下ろしていた。そして今にも泣き出しそうに眉を顰めながら、「見ないで下さい……」と、なんとも矛盾した言葉を囁いていた。

 俺は眠ったふりをしながらも、女の股間に漂う濃厚なメスの匂いを嗅いでいた。寝息は怪しまれないため、思う存分匂いを堪能する事ができたのだ。
 そんな女の股間には、例の高級なオイルの香りが充満していた。が、しかし、そんなエレガントな香りの中、時折、プンッと饐えた臭いが漂う時があった。
 それが陰部の匂いだった。そのジメッとした悲しい匂いは、まさしく欲情した中年女の性器の匂いに間違いなかった。
 そんな卑猥な匂いに興奮の目眩をクラクラと感じる俺は、そこにしゃぶりつきたい衝動に駆られていた。それを目にし、その匂いを嗅いだ瞬間から長野の爺さんの恐怖は消え失せ、このまま窒息してもいいとさえ思った。
 が、しかし女は慣れていた。あの小笠原由貴のように、勢いで顔面騎乗するような素人ではなかった。
 女は、俺の顔を跨いだまま股間に手を伸ばし、いきなり俺の口をこじ開けた。そして、されるがままにあんぐりと開いた俺の口内から慎重に舌を摘まみ出すと、下唇の上にベロリと舌を出させ、その状態で静かに顎を押しては、再び俺の口を閉じさせた。
 それは見事な手さばきだった。その手際の良さは、まるでドラマの『医龍』のようだった。

(この女……やっぱり初めてじゃねぇな……)
 俺はそう思いながらも、阿呆のようにベロリと舌を出したまま眠ったふりをしていた。
 女は、俺の顔面を跨いだ状態で俺の両腕を掴み、ゆっくりと手繰り寄せた。そして、俺の右手を自分の腰に持っていき、左手を自分の乳房に押し付けた。
 クラゲのように柔らかい乳肉が、俺の左の手の平の中でムニュッと潰れた。右の手の平の中では、パンっと張った尻肉がプルプルしている。
 女は「触らないで下さい……やめて……」と、矛盾した事を言いながら、まさに操り人形と化した俺の手を、自分の乳と尻にグイグイと押し付けた。
 そしてそのままゆっくりと腰を落とし、俺の顔を太ももで挟み込むと、ベロリと突き出した俺の舌にワレメを這わせ、微妙に腰を震わせ始めたのだった。

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 熱い粘膜が俺の舌の上を行ったり来たりしていた。女の性器からはヌルヌルとした性的分泌物が大量に溢れ、それが俺の舌を伝っては口内へと流れ込んで来た。
 その汁は、汗のように塩っぱかった。汁に臭みはなかったが、しかし、目の前を行ったり来たりする陰部からは饐えた臭いが漂って来た。
 女は器用に腰を動かし、俺の顔に満遍なく性器を擦り付けた。そして「そんな汚い所、舐めないで下さい……」と声を震わせながら、俺の舌に肛門までも擦り付けて来たのだった。

 そうしながらも女は、指で性器をネチャと開いた。黒ずんだビラビラの中で真っ赤な粘膜がギラギラと輝いていた。開かれた裂け目の最先端には、小豆ほどのクリトリスがプクっと膨らんでいるのが見えた。
 女は慎重に微調整しながら、剥き出しにされたクリトリスを俺の舌に押し付けた。そして腰を微かに動かしながら、俺の舌にコリコリとした突起物を滑らせた。
 さすがにクリトリスは刺激が強いのか、突然女が激しく喘ぎ始めた。

「あぁぁぁぁん! やめて! 舐めないで! クリトリスはダメ!」

 そう大声で喘ぎながら腰をスリスリと振り、ムチムチの太ももで俺の顔をグイグイと締め付けて来た。
 俺は、そんな淫らな女の股間に挟まれながら密かに舌に力を入れていた。そして腰が激しく動き回ると、そのどさくさに紛れて舌を動かし、人妻の陰部を味わっていた。
 女はクリトリスの刺激で熱くなったのか、突然俺の鼻にドロドロの穴を擦り付けて来た。そしてそれを穴の中にヌポヌポとピストンさせながら自分の指でクリトリスを激しく擦り、まるでくしゃみを我慢しているような声で「イクっ!」と唸りながら腰を撓らせた。

 女がイッた瞬間、穴の中の鼻がジワッと熱くなった。それはまるで電気ヒーターの温度を上げた瞬間のような暖かみだった。
 顔を締め付ける太ももがヒクヒクと痙攣していた。女は「んんんんんん」と苦しそうに喘ぎながら後ろに仰け反った。
 締め付けていた太ももが弛み、鼻がヌポッと抜け、額に押し付けられていた尻がスルッと落ちた。
 俺の顔面は汁でダラダラになっていた。
 女はハァハァと荒い息を吐きながら、俺のすぐ横で大きく股を開いていた。

 絶頂後の女の体は、まるで軟体動物のようにクニャと力が抜け、垂れた乳や弛んだ股に異様な艶っぽさを漂わせていた。
 濡れ輝く俺の顔を覗き込んでいた女は、突然俺の右手をソッと掴むと、曲がっていた俺の指を一本一本伸ばし始めた。
 そして伸ばした俺の中指を摘み、その指先を裂け目にヌルヌルと滑らせると、「ごめんなさい……イッてしまいました……」と囁き、大きな目を潤ませながら、その中指を穴の中にツルンっと入れたのだった。

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 女は、俺の中指にユサユサと腰を振りながら、「もう許して下さい……」と眉間に皺を寄せた。
 自らの意思で俺の指をヌルヌルとピストンさせながらも、「もう無理です、指を抜いて下さい」などと、まるでうわ言のように矛盾な言葉を呟いていた。
 そうやっていちいち説明しながら喘ぐ女は、まるで隣で盗聴している原田凉子に実況中継しているようだった。
 最初は、そんな不自然な女の喘ぎ声に違和感を感じていたが、しかし、確かにあの小笠原由貴もオナニーしながら「ダメ、イヤ、イっちゃう」などと、独り言を交えて喘いでいた。
 そう考えると、今繰り広げられているこれは、ただのオナニーだった。
 それに改めて気付かされると、とたんに惨めな感情に苛まれ、不意に妻や子供に申し訳ないと思った。
 が、しかしその反面で、この変態人妻に『生きた自慰玩具』として弄ばれる事に異様な興奮を覚えているのも事実だった。

(やっぱり俺は……Mなのだろうか……)

 そう思いながら薄目で女を見ると、女は、しゃがんだ股に俺の中指を突き立て、そこにユッサユッサと腰を振りながら、「許して下さい」と声を震わせていた。
 この女も、紛れもなくMに違いなかった。

(つづく)

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