毒林檎7
2013/05/30 Thu 17:59
ぷちゅ、ぷちゅ、ぷちゅ……
静まり返った部屋に、そんな湿っぽい音がリズミカルに響いていた。俺は、そんな女の口元を薄目でソッと見ながら、その音が、目玉焼きの黄身を吸い取る瞬間の音によく似ているとふと思った。
それにしても女は、何故か亀頭しかしゃぶっていなかった。パクリと咥えた唇は、カリ首を過ぎた辺りですぐに引き返し、肉棒までは滑り降りる事はなかった。
どうして全部飲み込まないんだ……と、おもいきり根元まで飲み込んで欲しいイライラ感に苛まれながらも、それでも俺は、その生温かい女の舌の感触に脳を溶かされていた。
そのうち女は、亀頭を咥える唇に力を込めると、まるで俺の精魂を吸い取るかのように激しく吸い、頬を凹ませながら顔を動かし始めた。
唇から亀頭が抜ける度に、ぺぷっ、ぽぱっ、という音が漏れた。
その音は、『目玉焼きの黄身を吸い取る音』よりも更に吸引力の強い、『蒟蒻ゼリーを吸い込む瞬間の音』に変わっていたのだった。
そんな不自然なフェラは、快感よりも焦燥感ばかりを与えた。
確かに、「ぱぽっ」と吸われて「ぺぽっ!」と抜ける瞬間は亀頭を締め付けられるような刺激が走り、それなりの快感を得る事ができたが、しかし、そればかりを繰り返し、それ以上に唇が下りて行かないこの状況はイライラ感を募らすばかりだった。
いわゆるこれは、「焦らし」という高度な性的テクニックのひとつなのであろうが、しかし、身動きひとつできない今の俺には、このテクニックは非常に残酷な仕打ちであり、まさに拷問といっても過言ではなかった。
しかし俺は、幸いにもそのイライラのおかげで一触即発の危機から脱出する事ができた。その変なフェラにより暴発が防げたのだ。
そう考えると、この女はそれを見越した上で、敢えてこのような不自然なフェラをしているのではないだろうかと、ふと思った。
そう言えばさっき、原田凉子が女にこんな事を言っていた。
『相手は眠っていますから射精の前兆はわかりません。いつ射精するか予測不能なのです』
その言葉から、やはりこの女は、俺が射精しない為にこんなおかしなフェラをしているのではないだろうかと思った。
そう思うと逆に興奮してしてきた。無性にこの女を犯したくて堪らなくなった。
こんなに綺麗な奥さんが、昏睡する男を射精させないように慎重にフェラをしているなんて、それを想像するだけでイキそうになってしまったのだ。
しかし、それさえもこの女は察知したのか、いきなり咥えていた唇をパッと離した。
女の唾液でテラテラと輝く俺のペニスは、まさに餌を途中で取られたスピッツの尻尾のようにピクピクと痙攣していたのだった。
女は、そんな俺の一触即発なペニスをジッと見下ろしながら、唇の唾液を手の甲でソッと拭き取った。
そしてその手を自分の腰に回すと、尻に食い込むシャンパンゴールドのパンティーをスルスルと下ろし始めた。
俺の視線が自然に女の尻を捕らえた。
正座したまま前屈みになっている女の尻は、白い谷間がクワっと開き、卑猥な陰部が剥き出しになっていた。
女は俺に背中を向けているため、俺はそこをじっくりと観察する事ができた。
チョコレート色の肛門が剥き出され、まるで子犬の鼻のようなヒクヒクと動いていた。その奥には、焦げ茶色した二枚の小陰唇がダラリと垂れ下がり、その間には赤く爛れた粘膜がギラギラと濡れ輝いていた。
それをマツゲの隙間から凝視していた俺は、その淫らな裂け目をびちょびちょと下品な音を立てながら舐め回してやりたい衝動に駆られた。
上品なセレブ妻の陰部に漂う恥ずかしい体臭を嗅ぎ、裂け目から滲み出る汁や、そこに付着する恥ずかしい垢をベロベロと舐め回しながら、「汚い」や「臭い」と責め、この変態女に辱めを与えてやりたいと思った。
そんな事を思いながらムラムラしていると、女はその体勢のままペニスに舌を伸ばし、竿に滴る我慢汁をベロリと舐めた。そしてそのまま根元から尿道まで行ったり来たりと舐め回し、それを薄目で見ていた俺は、そのヌルヌルとした感触におもわず奥歯を噛んだのだった。
女は肉棒の表面を何度も何度も丁寧に舐めながら、自分の股間にソッと手を伸ばした。
栗毛色の陰毛の中を女の白い指が這うのが見えた。指はそのまま二枚の小陰唇の隙間に滑り込み、赤く輝く粘膜に「ぴちゃ」といやらしい音を立てた。
「はぁん」と艶かしい声を漏らしながら、女は細い指で裂け目を擦り始めた。人差し指はクリトリスを転がし、ぴちゃぴちゃと裂け目を擦る中指と薬指には透明の汁が糸を引いていた。
女は、あたかも俺に見せつけるかのように、四つん這いの尻を高く突き上げた。そして裂け目を指で大きく広げながら、内部に息衝く小さな穴を、まるで餌を欲しがる鯉の口のようにヒクヒクと動かした。
他人女の生オナニーを見るのは初めてだった。
妻とのセックスでは毎回ローターでオナニーをさせていたし、以前付き合っていた小笠原由貴にもセックス時には必ずオナニーをさせていた。
しかし彼女達は赤の他人ではない。しかもそれは、俺に強制的にやらされていたに過ぎず、自らの意思で行っていた行為ではなかった。
俺は、初めて目にする他人女の自発的なオナニーに、(入れたい、でも入れられない)というやり場のない興奮を覚えた。
クパッと開かれた桃色の内部に女の中指がツルンっと滑り込み、そのままヌプヌプと糸を引きながらピストンしているのを見ていると、頭がクラクラした。その中にペニスを入れたくて入れたくて堪らなくなり、激しい焦燥感と苛立ちに襲われた。
(これじゃ蛇の生殺しじゃないか……)
そう思いながら奥歯を強く噛み締めた。もう訴えられても構わないから、このまま女の中に肉棒をぶち込み、滅茶苦茶に腰を振って盛大に中出ししてやろうと思った。
すると、そう思った瞬間、不意にヌルっとした生温かい感触が下半身全体に広がった。
そのあまりの感触の良さに、おもわず頭の中で(あぁぁぁ……)と唸りながら視線を下半身に向けると、女が黒い肉棒を根元まで咥えているのが見えた。
ソッと目を閉じ、頭部を上下に揺らし、そして咥える唇にペプペプと湿った音を立てながらペニスをしゃぶっていたのだった。
生温かい女の口内でヌルヌルとした舌が亀頭に絡み付いていた。そうされながらもキュッと締った唇で竿全体をピストンされ、更にその根元をシコシコとシゴかれていた。
俺の股間では、ぷちょ、ぷちょ、という湿った音が一定のリズムで響いていた。女はその音に合わせながら膣に指をピストンさせ、ペニスを咥えた口内で「んぐっ、んぐっ」と唸っていた。
(昏睡する他人男の汚れたペニスをしゃぶりながらオナニーする人妻……)
そんな言葉が浮かんで来ると、たちまちゾクゾクする快感が脊髄を走り抜け、それが脳を刺激しては大量のドーパミンを放出させた。
もはや我慢の限界だった。ここまで焦らされた挙げ句にいきなりしゃぶられ、おまけにオナニーまで見せつけられて我慢できるわけがなかった。
女の顔の動きが早くなると、俺の両脚は、眠っているにもかかわらずピーンッと伸びた。そして女がいきなり俺の亀頭を喉の奥まで飲み込み、激しいディープ・スロートした瞬間、遂に俺は「あぁぁ……」と声を漏らしてしまった。
女の動きがピタリと止まった。女は口一杯にペニスを含んだまま身動きせず、まるで危機を察したコモドオオトカゲのようにその大きな目だけをギロッと俺に向けた。
いきなり女と目が合った。半開きになっている俺の黒目を、女の黒目は確実に捕らえていた。
(どうする……)
俺は女の黒目を見つめたまま自分に問いかけた。
すると女は、ペニスを咥えたままゆっくりと手を伸ばし、ベッドの端にポツンと置いてあった例のチャイムをソッと掴んだ。
そして白いボタンの上にソッと親指を乗せながら、いつでもチャイムを押せる体勢で、再び俺の目をジッと覗き込んだのだった。
(つづく)
《←目次》《8話へ→》