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堕落のアッコちゃん(12)

2013/05/30 Thu 17:30

●12アッコちゃんタイトル



 夕日に染まる鳥居を目指して、舗装されていない坂道を駆け上った。鳥居を潜ると、待ち受けていた一対の狛犬が、牙を剥き出しながら明子を迎え入れてくれた。
 玉砂利をザクザクと踏みしめながら境内の裏に回った。薄暗くなりかけた公衆便所は薄気味悪い。しかもその公衆便所は、今や使用禁止となった廃墟であり、過去に児童が殺害されたという場所でもあった。正常な者なら近寄る事すらしない場所だろうが、しかし、ペニス型のオモチャを膣に挿入したままの異常な明子は、まるで街灯の明かりに吸い寄せられる夜蟲の如く、ふわふわとそこに向かったのだった。

 雑草を掻き分け薄暗い便所の中に入ると、無数のカマドウマが一斉に飛び跳ねた。夜行性なのか、日が照りつけていた時よりも元気が良く、その数もさっきとは比べ物にならないくらい増えていた。
 明子は個室の中をひとつひとつ見て回った。裏の階段や、掃除道具が入れてあった倉庫も探した。しかし、加藤の姿は見当たらなかった。取りあえず、さっきと同じ個室に身を潜めた。ここで加藤が来るのを待つことにした。

 遠くからお寺の鐘の音が「ゴーン」と聞こえてきた。それは、部活帰りによく聞いた鐘の音で、コンビニ横の善照寺が六時を知らせるものだった。

 その鐘の音を聞いた瞬間から、辺りは一気に暗くなってきた。

 暫くの間、薄暗い個室の隅にしゃがみながら、床にポッカリと開いた穴の中をジッと見つめていた。穴の底はひたすら深く、底に水溜りがあるのが微かに見えた。
 真っ暗な穴の底からは、地上の空気とは明らかに違う冷気が漂っていた。その冷気に包まれた明子は、おもわずその穴に吸い込まれそうになり、背筋をゾッとさせた。

(いったい私は……何をやってるんだろう……)

 ふとそう我に返った瞬間、さっきネットで読んだ『田添神社女児殺人事件』の判決文が頭を過った。こんなに狭くて臭くて汚い汲取式便器の穴に押し込められた上原静香は、どれだけ怖く、そしてどんなに淋しかっただろうかと思うと、暗い穴の中を見つめている目が涙でジワッと滲んだ。

 この時、大きな目に涙を溜める明子は、正常に戻ろうとしていた。この静けさと、地下から這い上がって来る冷気が乱れていた精神を落ち着かせたのか、明子は今の自分を客観的に見る事ができた。

 しゃがんだノーパンの股間を覗くと、陰毛の中にペニス型のオモチャの吸盤の裏が丸く顔を出しているのが見えた。こんな事をしていると本当にダメになってしまうと思った。ポロポロと涙を流しながら吸盤の端を摘み、それをゆっくりと引っ張った。
 硬いゴムの感触が膣道をヌルっと滑った。ツルンっと飛び出したオモチャにはドロドロとした白濁の汁が絡み付き、まるで親馬の膣から引きずり出されたばかりの子馬のように醜かった。
 オモチャを抜いたばかりの膣は、ポッカリと口を開けたままだった。その穴が、ふと上原静香が押し込まれていた汲取便所の穴に見え、恐ろしくなった明子は、慌ててそのオモチャを汲取便所の穴の中に捨てた。
 すると、すぐにドサッという音が聞こえた。その音はすぐ近くで聞こえた。確か、さっき見た時はこの穴の底には水溜りがあったはずなのにと、不思議に思いながら穴の中を覗くと、いきなり女の子と目が合った。

 小さな女の子が、すっぽりと穴に挟まっていた。顔を上に向け、今にも泣き出しそうな表情で明子を見つめていた。
 一瞬にして明子の体が硬直した。しかし、頭の隅では(怖い)と思いながらも、明子は少女の顔を見つめていた。(上原静香は、こんなに可愛い顔をしていたのか)と思いながら、冷静に少女を見ていた。

「オウチニ……カエリタイ……」

 少女は、小さな鼻をクスンクスンとさせながらそう呟いた。そして無言で顔をくしゃくしゃにさせると、そのままポロポロと泣き始めた。
 助けなければと思った。これが、脳に渦巻く魔物が作り上げた幻覚だと言う事は百も承知だったが、それでも今すぐここから少女を助けなければと焦った。
 明子は、便器の穴の中に手を伸ばそうとした。しかしその手は、白い便器からそれ以上動いてくれなかった。それは、この穴の中に手を入れれば、たちまち自分も穴の中に引きずり込まれてしまうと思ったからだ。

 そんな明子の手に、便器の底から飛んできた一匹のカマドウマがパチン! と当たった。驚いて手を引くと、穴の表面には数えきれないほどのカマドウマがびっしりと張り付いている事に気付いた。
 暗い穴底に向かって、無数の触覚がウヨウヨと蠢いていた。エイリアンのような顔が一斉に明子を見上げ、鋭い牙をギリギリと鳴らし始めた。その音が正常な明子の頭の中に谺すと、その音に合わせて少女の顔が突然歪み始めた。

 少女の顔はゆっくりと歪みながら渦を巻いていった。明子をジッと見つめながら渦状に溶けて行く少女は、まるで、『ウルトラQ』のオープニングのように気味が悪かった。



 正常な明子は、穴の底から響いて来るカマドウマの鳴き声と、みるみる歪んでいく少女の顔に、全身が痺れるほどの恐怖を感じた。
 恐怖を感じたその瞬間、正常な明子は、一瞬にして黒い渦の中に巻き込まれた。それまで脳の片隅にほんの少しだけあった正常な思考が、穢れた黒い渦に掻き回されてはコールタールのようにドロドロになってしまったのだった。

 再び黒い渦に巻き込まれてしまった明子は、異常な表情のままムクリと起き上がった。そしてそのまま便器を跨ぐと、穴の中の渦に向かって小便を噴き出した。
 シャーッと噴き出す小便が黒い渦に飲み込まれていった。明子は小便を噴射させながら中腰で立ち上がった。壁やドアに噴き出す小便が飛び散り、便器の隅に捨てられていた『実話ナックルズ』という雑誌が、小便に打たれてバタバタと音を立てた。その開かれていたページに載っていたタトゥーだらけの少年が、小便を浴びせられてみるみると萎れて行った。

 太ももに小便をダラダラと垂らしながら個室を出ると、闇の中でカマドウマが狂喜乱舞した。足に体当たりして来るカマドウマを無視したまま出口に向かった。呆然としながら歩く明子は、加藤がいないのなら、もう誰でもいいから犯してもらおうと思っていたのだった。

 便所を出ると、辺りはすっかり闇に包まれ、夜空には黒々とした木々がゴワゴワと広がっていた。その背後で、高層マンションの部屋の明かりがキラキラと輝き、まるでどこかのテーマパークに迷い込んだような気がした。
 そのままフラフラと歩き、いつものベンチに腰掛けた。ぐったりと項垂れながら、小便に濡れた脹ら脛を見つめていた。今頃母は心配しているだろうなと思いながらも、その小便を拭き取る気にはなれなかった。

 ふと、闇の中から声が聞こえた気がした。そっと顔を上げると、本殿の賽銭箱の前の階段に、男の人が座っているのが見えた。
 男は、スーツを着たサラリーマン風の中年だった。携帯電話を握りしめながら何やら必死に話していた。

「いや、ちょっと待って下さいよ、だから来月の十日には間違いなく払えるって言ってるじゃないですか、今度は嘘じゃないですよ、十日の朝には二ヶ月分の利息も含めて必ず振り込みますって、だから生命保険とかそーいう事言うのやめましょうよ吉崎さん」

 どうやら男は、借金の取り立てをされているようだった。内容はわからないが、しかし、男が話している内容からして、相手の吉崎と言うのはかなり悪質な業者のようだった。

「だからあと三日待って下さいよ。いえいえ、これは嘘じゃないんですって、今度こそ本当ですって、十日になれば長野の叔父の退職金が入るんですよ、そしたらその金、貸してくれるって叔父は言ってるんですから、信じて下さいよ吉崎さん」

 男はヘコヘコと頭を下げながらも必死に説得していたが、しかし、いきなりガバっと立ち上がると、「会社は関係ないでしょ吉崎さん!」と語気を荒くした。

「そんな事されたら私はクビじゃないですか! 会社を首にされたら私はどうやって返済すればいいんですか! そうでしょ! よく考えてみて下さいよ吉崎さん、私が会社を首にされたら、私は利息も払えなくなるんですよ! 違いますか! そうなったら困るのは吉崎さん、あなたでしょ!」

 男は、まるで演説するヒトラーのように、夜空に人差し指を立てて堂々とそう叫んだ。しかしすぐに反撃されたのか「ちょ、ちょっと待ってよ吉崎さん、だから、生命保険だけは勘弁して下さいって言ってるじゃないですか」と泣き顔になり、更にそこで相手に電話を切られてしまったのか、男は携帯を愕然と見つめながらガクンっと項垂れてしまったのだった。

 そんな男を、明子はいつものベンチに座りながら見ていた。男は明子の存在に気付いていなかった。
 男は突然「俺はどーすりゃいいんだよ!」と叫ぶと、本殿の上から玉砂利に向かって携帯を投げつけた。そして「吉崎死ねよ! 吉崎死ねよ!」と本殿に向かいながら何度も叫び、狂ったように柏手をパンパンと鳴らしては祈り始めたのだった。

 玉砂利に叩き付けられた男の携帯が、ベンチに座る明子の足下に転がっていた。携帯の裏には、家族で撮ったものらしいプリクラが一枚張ってあった。
 それは随分と古臭いデザインで、既に写真は赤茶けてしまっていた。高校の制服を着た娘と中学生の娘を挟んで、両サイドにスーツを着た男と妻らしき痩せた女が写っていた。男の顔は満面の笑顔だった。しかし、やや出っ歯気味の妻の笑顔は引き攣っていた。そして二人の娘は寝起きのような仏頂面をしていた。

(この男は家族に愛されていない……)

 そう思いながら本殿を見上げると、いつの間にか男は本殿を下りていた。携帯を探しているのか、中腰で地面に顔を近づけ、そこら中をウロウロしていた。

 突然明子の背筋がゾクッとした。
(いずれあの男は、今、私の足下に転がっているこの携帯を探り当てるだろう……)
 そう思った瞬間、ベンチに座っていた明子の股がジワジワと弛み、背筋にゾクゾクと冷たいものが走ったのだ。

 ベンチは薄暗い闇に包まれていた。本殿の外灯の明かりが微かに照らしているだけで、ベンチの周辺はモノクロームの世界だった。
 しかし、それでもこの至近距離ならノーパンだという事に気付くはずだった。いや、地面に転がる携帯を取ろうとして顔を上げれば、ワレメから溢れる汁まではっきりと見えるに違いなかった。

 男は、まるで餌を探す野良犬のようにウロウロしていた。明子は男の影を目で追いながら、(おいで、こっちよ)と呟き、肩幅ほどに開いた股間の中に指をソッと忍ばせた。

 じゃりじゃりする陰毛を指で掻き分けると、膣はヌルヌルに濡れていた。ベロリと捲れたワレメを人差し指で上下に撫でると、生温い汁がネトネトと糸を引き、指に絡み付いた。
 男の丸まった背中を見ながら、ワレメの頂上でプクっと膨らんでいる陰核にその汁を塗り込んだ。小豆大の陰核はおもしろいようにヌルヌルと滑った。
 何ともいえない快感が脹ら脛からジワジワと上ってきた。太ももがジーンっと痺れ、自然に尻がモゾモゾと蠢いた。このままここで、黒くて太い肉棒をズボズボと入れられてしまうかも知れないと思うと、その痺れは太ももから全身へと走り、おもわず「んん……」と喉が鳴った。

 すると突然「あっ」と言う声が、薄暗い闇の中から聞こえた。
 ソッと顔を上げると、赤く輝く本殿を背後に、スーツを着た太った男が呆然と立ち尽くしていた。
 今までの明子だったら慌てて股を閉じ、そのまま貝のように塞ぎ込んでしまった事だろう。しかし、今の明子は違った。もはや明子は東大を目指す優等生ではなく、完全に堕ちてしまった変態女なのである。

 明子は、男の目をジッと見つめながらオナニーを続けた。更に股を開き、淫らな陰毛を外灯に晒しながら、そこに、ぺちゃ、ぺちゃ、といやらしい音を立てた。
 それを見ながら呆然と立ち尽くしていた男は、慌てて辺りをキョロキョロと伺い始めた。闇に誰かが潜んでいるのではないか、これは何かの撮影なのではないかと疑うような仕草で、ベンチの裏の藪の中にまで目を凝らしていた。

 暫くすると男は、明子を見つめたまま携帯をソッと拾い、「あんた……一人か?」と聞いてきた。
 明子はコクンっと小さく頷くと、男に向けて下腹部を突き出した。
 男はブルっと一度身震いすると、生唾をゴクリと飲み込みながら「見て……欲しいのか?……」と聞いた。
 その卑猥な言葉が明子の心臓を抉った。おもわず明子が「あぁぁ」と声を漏らすと、男は携帯を両手で握りしめながら、その場にしゃがんだ。

 男の目線と明子の陰部がほぼ垂直になった。明子はヌルヌルと指を這わせながらワレメを開き、濡れた粘膜を男に晒した。

 男は無言でそこをジッと見つめていた。男の剝げた額には濃厚な脂がテラテラと輝き、黒いスーツの肩には粉雪のようなフケが大量に散らばっていた。

 借金が払えないこの男は、生命保険で返済金にするために、もうすぐ吉崎という闇金業者に殺されるんだ。そう思いながら明子は、男にオナニーを見せつけ、この豚のように醜い中年男に、無惨に処女を奪われたいと心からそう思ったのだった。

(つづく)

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