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堕落のアッコちゃん(11)

2013/05/30 Thu 17:30

●11アッコちゃんタイトル



 その声は、松崎のようでもあり昌史伯父さんのようでもあった。
 しかし、きっとその声は加藤だろうと思った。どうせ加藤が、上原静香の死体を汲取式便所の穴の中に押し込む時の、あの狂気に満ちた目でニヤリと笑いながら私の尻を抱えているのだろうと思った。

 そう思いながら恐る恐る後ろに振り返ると、背後にいたのは真っ白な男だった。髪の毛から爪まで真っ白なキリストが、真っ赤な口を大きく開けながらニヤニヤと笑っていたのだ。

 ハッと息を飲みながらキリストの顔を見ていると、キリストは明子に「うんうん」と優しく頷きながら、もの静かに話し始めた。

『現在、これが悪でそれが善だという基準は現代が決めています。だから、ほんの数十年前は善だった事でも、現代の基準に合わなければそれは悪となる事もあります。人間はそれを時代と呼びます。人間は、時代というその都合の良い一言で、善を悪に、悪を善へと変えてしまうのです。そんな身勝手な事が果たして許されるのでしょうか? 人間如き虫けらが、時代が変わったなどとほざきながらこの世の生態系を変えてしまって良いのでしょうか? つい先日までは戦争で散々人を殺した者が英雄視されていたのに、現代では人を殺そうとしただけで投獄されてしまいます。これでは何が悪で何が善なのか迷ってしまうばかりです。もともと、私が作ったこの世には、集団的な善悪は存在しません。そんなマニュアルを作った覚えは全くございません。現代に蔓延る善悪の基準というのは、政治家や教師や判事といった愚かな人間共が、自分達の都合のいいように捏造しただけの事です。私が作った善悪というのは、個人一人一人の心の中にございます。個人個人がそれは悪だ、これは善だと判断して決めるのです。だから私は憲法も法律も校則も認めません。町内会の規約やゴミ出しのルールなどという小さなものまで断じて認めません。道徳、倫理、モラル、秩序。なんですかそれは。そんなものは、その時代のずる賢い人間共が、その時代の馬鹿な者共を支配するために作り上げたものでしょう。どうして人里に下りて来た熊は殺されるのですか。なぜ腹を空かせて泥棒すると罰せられるのですか。熊も泥棒も本能で動いているだけなのです。彼らの中ではそれが限りなく善であるのに、なのにどうしてそれを別の誰かが悪と決めつけてしまうのでしょうか。時代ですか? 法律ですか? それとも町内会の規約ですか? そんなの糞食らえです。人前で屁を放つのはマナー違反だと言われるくらい馬鹿げています。この世の善悪はあなた自身が決めるのです。他人に迷惑がかかるとか、それをすると恥ずかしいとか、そんな事をいちいち気にする必要はございません。あなたは、誰に善悪を決められる事なく自分の本能で生きていけばいいのです』

 キリストはそう言いながら、突き出した明子の尻を撫で、尻の谷間に指を滑らせた。キリストの手は氷りのように冷たく、膣を弄る指は石のように硬かった。

 その冷たい手や硬い指の感触は明子の幻覚だった。もちろんキリストの言葉も全て明子が作り上げた幻想だった。しかし、そのような言葉が次々に頭に湧いて来るのは、明子が常に心で思っている潜在意識に他ならず、又、「奥まで入れるぞ」と言われたり、陰部を乱暴に弄られたりする幻覚も、そうされたいと思う願望の現れだった。

 これは、幼い頃から徹底した英才教育を受け、善か悪かの二つに一つしかない選択権の中で育てられてきた反動だった。物事の善悪は全て大人が決める事であり、それが本当に正しいのか、それが本当に悪い事なのかを自分で確かめないまま大きくなってしまった子供にありがちな、世間に対する不信感だった。

 明子はそれを溜め込んでいた。幼い頃から東大を目指し、周囲から期待されていた明子は、今までそれを発散させる事ができなかった。スポーツで汗を流しても、友達とカラオケで馬鹿騒ぎしても、常に頭の中には東大合格という忌々しい文字が頭に浮かんでおり、一向にストレスを発散させてはくれなかった。

 東大なんか行きたく無かった。小中学生の無知な頃は、ひたすら東大をゴールと決めて頑張って来れたが、しかし高校生になってからというもの、ふとした時に(東大に入ったからといって私が幸せになれるとは限らない)という考えが生まれるようになった。それは、決まって友達と遊んでいる時だった。夏美たちとカラオケで騒いでいる時や、カフェでダラダラとお喋りしている時など、ふと、別に東大じゃなくても、二流大学でも、無名の三流大学でもいい。いや、大学なんか行かないで、コンビニで「いらっしゃいませぇぇぇ」とバイトしながら、こうやって楽しく暮らすのもいいんじゃないか、と思う事があった。
 しかし、そうは思っていても、それはあくまでも現実逃避に過ぎず、実際にはそれを現実として考えてはいなかった。周囲の期待を思うとそんな事が出来るわけがないのだ。

 そんな二つの気持ちが、いつしか明子の中に二面性を作り上げてしまっていた。蓄積されたストレスが澱となって脳に侵入し、ふとした事で、そのコンピューターのような頭脳をショートさせていたのだ。
 理性と本能。ショートして本能を剥き出しにした明子は堕落した。今までやって来た事が何もかも嫌になり、冬期の大型動物のように何も考えなくなってしまった。
 最初の頃は、寝てばかりいた。それがショートを繰り返す度に過食症や拒食症といった摂食障害を引き起こすようになり、そして、松崎に陰部を触られた時から、それは、『食』から『性』への障害へと変わった。
 まだ処女の明子に、変態性欲という厄介な欲望が芽生えてしまったのだ。

(善か悪かは自分自身が決める事……)

 明子は、自分の中のキリストの言葉を呟いた。ペニスのオモチャの先っぽを膣に挟んだまま、その言葉を何度も繰り返していた。
 背後のキリストが、そんな明子の尻をゆっくりと押しながら「腰を落としなさい」と囁いた。

 正常な明子が泣きながら言った。

「無理です……」

 キリストは笑いながら尋ねた。

「なぜ?」

 正常な明子は唇を震わせながら答えた。

「……戻れなくなるからです……」

「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」

 キリストの甲高い笑い声が響いた。キリストはその笑い声をBGMに「もう戻れないよ」とエコーの効いた声で言った。
 その声と同時に、明子の腰は自然に沈んだ。不浄な精液が塗り込まれたペニスのオモチャが、明子の中にヌルヌルと侵入して来た。明子は唇を丸く開けながら「あああああああああああああ」と声を上げると、これでもかというくらいに尻の谷間を両手で広げて、それを受け入れたのだった。

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 その力強さは、きゅうりや茹で蛸とは全く違っていた。硬くて逞しいゴム棒は膣の奥までグイグイと押し入り、今まで到達したことのない子宮の壁をコンコンとノックした。そして引き際には、その攻撃的に開いたカリ首で膣壁をガリガリと引っ掻き、たちまち明子はコンコンとガリガリのピストンに自分を失った。

 床に顔を押し付けながら、高く突き上げた尻だけをユッサユッサと揺らした。股間からは、ぴっちゃ、ぴっちゃ、ぴっちゃ、ぴっちゃ、とリズミカルな音が響き、そのリズムに合わせて、明子の口から「あん、あん、あん、あん」と声が漏れた。

 髪を振り乱しながら腰を振っていた明子は、ふと気が付くと加藤に汚されたショーツを握っていた。それを慌てて広げ、精液で滅茶苦茶に汚されたクロッチに顔を近づけた。強烈な臭いが明子の鼻を刺激した。しかし明子は、「あん、あん」と小さく喘ぎながら子猫のような舌を突き出すと、そのドロドロの精液をペロペロと舐め始めた。すると突然、明子の体の下でキリストが呟いた。

「そうです。それでいいのです。あなたはそれを舐めたいと思ったからそれを舐めた。それでいいのです。しかし世間はそれを舐める行為を認めません。例えあなたが『舐めたかったから舐めた』と言っても、他人が吐き出した精液をペロペロするような行為を世間は認めてはくれないのです。変ですね。おかしいですね。それを舐めてはいけないと、いったい誰が決めたんでしょうね……」

 明子の下には真っ白なキリストが寝そべっていた。いつしかオモチャはキリストのペニスと変身し、明子は白いキリストの上で激しく尻を振りまくっていたのだった。

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 すごい、すごい、と思いながら更に腰のスピードを上げた。床に両手を付きながら、まるで陸上競技のクラウチングスタートのような体勢で尻を上下に振りまくった。そうしながらソッと股間に指を伸ばし、皮から飛び出したクリトリスをクリクリと転がすと、すぐにあのジワジワとした快感が脳を溶かし、尿道からオシッコがシュッと噴き出した。
 下唇を噛みながら「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ」と全身を引き攣らせた。腰が勝手に、ビクン、ビクン、と飛び跳ね、まるでグラスに注いだコーラの泡が溶けて行くように落ちて行くと、不意にキリストが「イっちゃったの?」と聞いて来た。
 返事をしないまま乱れた髪をかき上げ、天井に顔を向けながら再び腰を降り始めると、キリストが笑いながら言った。

「あの人、まだあそこにいますよ……」

 明子は黙って腰を止め、しゃがんでいる股の間から下を覗いた。いつの間にかキリストは消え、フローリングの床には、垂れたオシッコが丸く広がっていた。
 強烈な焦燥感に心を煽られた。(あの人、まだあそこにいますよ)というキリストの言葉に、居ても立ってもいられなくなった。
 明子はガバっと立ち上がった。オモチャの吸盤がペチッと剥がれ、オモチャは膣に刺さったままだった。
 クローゼットの奥から黒いワンピースを引きずり出した。ハァハァと荒い息を吐きながらそれを頭から被ると、ペニスのオモチャを挿入したままの下半身に、汚されたショーツを履いた。

 乱れた髪を整えないまま部屋を飛び出した。母はまだ帰ってきていないらしく、家の中はシーンっと静まり返っていた。
 恐る恐る階段を下りると、膣の中でオモチャが蠢いた。砕けそうな腰を必死に堪えながら階段を下り、玄関の下駄箱にしがみつきながらサンダルを履くと、太ももに生温かい汁が垂れて来るのがわかった。

 家の前の道路には西日が射していた。振り向くと、まるでトマトを煮込んだような真っ赤な夕焼けが、道路の奥の空に広がっていた。
 夕焼けに背中を押されるようにしてゆっくりと歩き出すと、隣の三塚さんの家の塀の中から、「ありがとうございやしたぁぁぁぁぁ」という聞き慣れた声が響いてきた。
 白い塀の隅にある勝手口からシゲちゃんが出てきた。勝手口のドアを閉めながら、ドアに向かって深々と頭を下げ、あたかも町内の人々に聞かせるかのように、「またヨロシクお願いしやぁぁぁぁぁぁす!」と大声で叫んだ。
 そんなシゲちゃんと目が合った。シゲちゃんは明子を見るなり「おっ! アッコちゃん!」と驚き、「東大やめて吉本興業に行くってホント?」と聞いてきた。
 一瞬、忌々しい昌史伯父さんの顔が浮かんだが、しかしそれはすぐに三塚さんにペニスを舐められながら恍惚としていたシゲちゃんの顔に変わった。

「東大諦めてお笑い芸人目指すなんてスゲェよなぁ……俺みたいな凡人にゃ考えられないスゴ技だよなぁ……」

 シゲちゃんはそう感心しながら首を傾げ、「応援してるからね」と真っ白な歯をキラリと輝かすと、そのまま夕日に向かって歩き出した。
 そんなシゲちゃんの夕日に染まる背中に振り返りながら、明子は、明日の三塚さんのゴミ袋を盗もうと思った。そしてそこに捨てられているコンドームの中から精液を絞り出し、それを膣に塗り込みながらオナニーしようと考えていると、そのままシゲちゃんを家の横の通路に連れ込み、今まで三塚さんのアソコを掻き回していたペニスにしゃぶりつきたい衝動に駆られた。

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 オモチャを咥えたままの膣が疼いた。ワンピースの中にソッと手を入れ、シゲちゃんの後ろ姿を見ながらオモチャをピストンさせたくなった。
 しかし、そんなことをしている暇はなかった。早くあそこに行かなければ、あいつがどこかに行ってしまうかも知れないのだ。

 明子は小走りに走り出した。夕日に照らされた町並みは、今までの世界とは全く違って見えた。
 それはまさに京都の西福寺で見た地獄絵だった。走っている今の自分は、牛の顔をした巨大な鬼から、必死に逃げようとしている死者のようだと思った。

「堕ちろ……堕ちろ……地獄へ堕ちて楽になれ……」

 真っ赤に染まった空に白いキリストの顔が浮かんだ。明子はそんなキリストをジッと見上げながら、(どうせ大人になればみんな地獄に堕ちるんだ)と自分に呟き、殺人犯加藤が潜む神社へと走ったのだった。

(つづく)

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