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裸のOL8



 非常階段を示す緑色の照明がボンヤリと浮かび上がっているビルの廊下は、まるで深夜に救急で訪れた病院のような不気味な雰囲気が漂っていました。
 目の粗いカーペットを裸足でバタバタと駆け巡る私は、背後から聞こえて来る「待てぇ!」という叫び声に、いちいち「きやーっ!」と叫びながらも走り続けました。そんな私の叫び声が、わざわざ棚崎部長に自分の居場所を知らせているとも気付かず、恐怖に包まれた私は棚崎部長のその怒鳴り声を掻き消そうと絶叫しながら、広いビルの中を逃げ回っていたのでした。

 延々と続くグレーのカーペットの廊下を左に曲がると、そこはいきなり冷たいタイル床でした。その奥には給湯室とトイレがあり、それ以上は行き止まりです。一瞬、トイレの個室に逃げ込もうとしましたが、しかしそれでは完全に袋のネズミとなってしまいます。そう思った私は、とにかく今は、逃げ込むよりもどこかにひっそりと隠れ込む事だと咄嗟に思い、危険と知りながらも再び今来た通路を引き返しました。
 カーペットが敷かれた長い廊下に出ると、恐ろしい形相をした棚崎部長が走って来るのが見えました。棚崎部長は私に気付くと、人間業とは思えないような「キェェェェェェェェェェ!」という不気味な奇声を発し、物凄い勢いで突進して来ました。

(完全に狂ってる!)

 私はわんわんと泣きながら廊下を走り出し、そして次のドアでオフィスの中へ飛び込みました。
 100は優に越しているだろうと思われる大量のデスクがズラリと並んでいました。私は腰を屈めながら真ん中の列まで走ると、そのままひとつのデスクの下へ潜り込みました。
 私の膝が事務椅子に当たり、椅子の背もたれが揺れます。慌てた私はデスクの中から手を伸ばし、その背もたれを押さえ付けると、廊下を走る棚崎部長の足音がドアの前でバタン!と止まったのでした。

 どこからか棚崎部長のハァハァハァハァ……っという呼吸困難のような息づかいが聞こえて来ます。
 私は誰のデスクかもわからないデスクの下でジッと踞り、声が出ないように人差し指をおもいきり噛んでいました。
 ゼェゼェと息を吐きながら棚崎部長がオフィスを徘徊しております。オフィスの奥にある会議室のドアをバタン!と乱暴に開け、「どこだぁ!」と叫び、そしてコピー機が並んでいるコーナーのロッカーをひとつひとつ乱暴に開いては、時折、猛禽類のように「ビャャャャャャャャャャ!」と奇声をあげては、私を執拗に探しています。

「隠れてても無駄だ……お前の服は俺が持っている……このまま朝まで隠れていたら、明日の朝、全裸のオマエはみんなに発見され、会社の笑い者だろうな……いや、即刻クビだろうな……」

 そんな事をブツブツと呟きながらオフイスの中を徘徊している棚崎部長は、なんと、端から順番にデスクの下を覗き込んでいるようでした。
 このままではいつかは発見されます。しかし今のこの状態からこのデスクの下から逃げ出すような勇気は私にはございません。
 デスクの下で踞っている私の体がとたんにブルブルと震えて来ました。まるで痙攣しているかのように太ももが激しく震え、それが事務椅子に伝わり事務椅子がカタカタカタっと音を立てて揺れました。
 その瞬間、遠くの方で聞こえていた棚崎部長の足音がピタリと止まりました。
 すると私の震えは更に激しくなり、今までカタカタと揺れていた事務椅子が、まるで地震のようにガタガタと激しく揺れたのです。
 棚崎部長の足音は私が隠れているデスクに向かっています。
 私は恐怖のあまりに、人差し指を噛んでいた口から「うぅぅぅ……」っという声を洩らし、そして無意識のうちに踞っていた股間を弄っていました。
 そんな私の股間にはびっくりするような愛液が溢れていました。一瞬、生理が始まったのかと思いましたが、しかしそのヌルヌルとした滑りの良い液は、明らかに愛液です。

(どうして?……)

 そう思いながら私は確認するかのように性器に指をあてて見ました。すると私の性器は強烈に熱く火照り、そのヌルヌルとした液の根源はやはりそこからでした。
 棚崎部長の足音がすぐ近くまで来ています。逃げるなら今です。今ならまだ間に合います。
 そう焦れば焦るほど、私の性器はムラムラと疼き、この異常な興奮に耐え切れなくなった私は、デスクの下に踞りながらソッと指を膣の中に挿入しました。
 そうする事で瞬間に焦りは消え、とたんに落ち着きました。
 しかし、デスクの足の隙間から、こっちに向かって歩いて来る棚崎部長の足が見え始めると、再び私は恐怖に包まれました。
 私は、一本、また一本と膣に挿入する指を増やし、そして棚崎部長の健康サンダルが目の前でピタリと止まった時には、既に4本の指を膣の奥深くまで挿入し、そしていやらしい吐息を漏らしていたのでした。

 デスクの下から引きずり出された私は既に激しい欲情に包まれていました。
「ふざけやがって……」っと拳を握りしめる棚崎部長の足にすがった私は、無言のまま棚崎部長のズボンのベルトを外し始めます。
 そしてそれを唖然と見つめる棚崎部長のペニスをズボンから捻り出すと、萎れたペニスをそのまま口の中に含み、それを口の中で激しく転がしながら再び自分の膣に指を押し込んだのでした。
 そのまま私は、オフィスのグレーのカーペットの上で激しく犯されました。何度も何度もペニスを出し入れされ、その快感に獣のように悶え狂っていた私は、そのまま肛門まで犯されてしまったのでした。


              ※


 私は信じていた婚約者に騙された女です。乱交パーティーに連れて行かれ、婚約者の前で多くの変態たち犯され、それが原因でウツ病と診断された惨めな女です。
 ウツ病となった私は暗く落ち込み、ただ会社とアパートを行ったり来たりする毎日が続きました。彼氏も出来ず友達もいないそんな私は、当然、会社でもいつも1人です。男性社員には悪質なセクハラを受け、上司からは激しいパワハラを受けるそんな地獄の毎日が続いていたある日、やっと私にもひとつの趣味が出来ました。

 自虐と加虐。
 そのふたつを兼ね備えたそんな私の趣味は、深夜の全裸徘徊でした。
 深夜、全裸で徘徊すると言うその異常行為は、深夜と全裸という2つの危険性をはらんでおり、それは異常者でなければとてもできない性的嗜好でございました。
 そう、私は異常者なのです。
 佐々木山という変態男に、見ず知らずの不特定多数の男達に輪姦される屈辱的な悦びを教えられ、会社のセクハラ男性社員達からは羞恥という快楽を芽生えさせられ、そして棚崎部長という1人のサディストからは全裸で追いかけられると言う被虐的な恐怖快楽を与えられました。
 そんな私は、いつしか、深夜の町を全裸で徘徊しながら、いつ誰にどんな残酷な仕打ちを受けるだろうかとそれをひたすら待ちわびながら欲情する完全なるマゾヒストとなりました。
 殺されてもいいと思っています。
 全裸で徘徊している所を偶然通りかかった異常者に捕まり、深夜の廃工場に連れ込まれて鋭利なナイフで全身を刺しまくられてもいいと思っています。又、秩序のない若者達に取り押さえられ、散々強姦された挙げ句にコンクリートブロックで頭を叩き割られても、薄汚いホームレス達に生け贄の如く縛り吊るされ、見るも無惨に辱められた後に焚き火で焼き殺されたっていいと、いつもいつもそんな妄想に耽りながら、アソコをヌルヌルに濡らしては深夜の街を全裸で徘徊しているのです。

 しかし、私がそんな被虐的な気分になる日はいつも決まっていました。
 それは私の心の中に根付いているウツのレベルが60に達した時です。
 通常時が40レベルのウツの私は、いつもはそれら被虐的な行為を妄想し異物をアソコに挿入するだけで治まるのですが、しかしこれが50レベルに上がりますと、ノーパンで深夜のコンビニに行ったり、駅裏で寝ているホームレスに放尿シーンを見せたりと過激になって行きます。そしてこれが60のレベルに達しますと、先に申しましたように「惨殺されたい」とまで思うようになってしまうのです。
 それ以上の70というレベルには私はまだ達した事はございませんが、しかしこれが70に達しますと、恐らく私は自殺していることでしょう。

 そんな私の生活は、ウツのレベルが60に達しない日以外は今までと何ら変わりません。
 会社へも今まで通りに通勤し、相変わらず下衆な男性社員達からセクハラを受け、棚崎部長からいわれのないパワハラを受ける毎日が続いています。しかし、そんな彼らの暴挙が日々増す度に私のウツのレベルがジワリジワリと上がって行く為、私にとって彼らの暴挙というのは、携帯を使用する為には携帯を充電しなければならないのと同じように、私という人間を人間として動かす為には彼らの暴挙は必要不可欠だったのです。
 そんな彼らの加虐行為は、私の自虐心を更に高いステージへと上げてくれます。そしてそんな自虐心は私を「深夜の全裸徘徊」という狂気的な行動へと導いてくれ、そのおかげで私のこの精神に貪よりと溜る魑魅魍魎としたストレスが発散されては、私はまた普通のOLへと戻る事ができたのでした。

(つづく)

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