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裸のOL6



 棚崎部長は、ソファーに座る私の前に立ち上がると、まずは私の髪をクンクンと嗅ぎ始めました。そして猿が仲間のノミを取るかのように私の髪の毛の中を指で掻き分けると、そこに現れた頭皮に鼻を近づけました。
 座っている私の前に立ちながら、私の頭の中を覗き込んでいる棚崎部長のスーツからオヤジ独特の据えたニオイが漂って来ました。
 棚崎部長は私の頭皮を爪でカリカリっと擦りました。そしてその擦った爪先をジッと見つめています。
 棚崎部長は私のフケを採取しようとしているようですが、しかし私は毎朝髪を洗ってから出勤している為、私の頭皮からフケなど出るわけがありません。
 爪先をフッ!と吹きながらフケを諦めた棚崎部長は、今度は私のアゴを指で押え、私の顔をソッと天井に向けました。

「口を開きなさい……」

 私は天井の蛍光灯を見つめたまま、棚崎部長の言う通りに静かに唇を開きました。

「もっとアーンと大きく口を開きなさい」

 棚崎部長は少しだけ開いている私の口内を覗き込みながら、まるで歯医者のようにそう言いました。
 私は唇を唾液でクチャッと音立てながら、素直に大きく口を開きました。
 天井を見つめていた私はソッと視線を落としてみました。私の口の中を棚崎部長は真剣な眼差しで見つめています。この人はいったい何がしたいのだろう……と思いながら、そんな棚崎部長をソッと見ていると、いきなり棚崎部長は私の口に鼻を近づけ「ハァーとしてみなさい……」と低い声でそう言いました。
 棚崎部長のその言葉を聞いた瞬間、とたんに私の背筋にゾッと寒気が走りました。
 確かに、棚崎部長が私の体をチェックすると言い出した時、棚崎部長から多少のセクハラをされるだろうと覚悟していた私ですが、しかしまさかこのようなタイプの屈辱は予想もしておりませんでした。
 戸惑っている私に、棚崎部長は「早く……」っと催促します。
 ふと見ると、前屈みになりながら私の口に鼻を向けている棚崎部長のズボンの股間が歪な形をして膨らんでいるのが見えました。

(この人は変態だ……)

 そう思った私は急に怖くなり、おもわず口を閉じてしまいました。

「なにをやってるんだねキミ……キミの口臭をチェックしてるんじゃないか、ほら、もう一度口を開いて……」

 恐怖に包まれた私が、声を震わせながら「明日じゃダメですか・・・明日のお昼に皆がいる時ではいけませんか……」と言いますと、棚崎部長はそんな私の声には耳も貸さず、「ほら!早く口を開けて!」とヒステリックに怒鳴りました。
 変態も怖いですが、しかし棚崎部長のヒステリーのほうがもっと怖かった私は、恐る恐る口を開きました。そして棚崎部長の鼻に向けて「ハァ……」と息を吐いたのです。
 すると棚崎部長は私が吐いた息をスっと嗅いだ後、「もっと長く。もっとハァァァァァァァァァ……と長く息を吐かないとチェックできないだろ」と、更にそう言ったのです。
 棚崎部長がそう言った時、棚崎部長がソッと自分の股間の歪な膨らみをギュッと手で押したのを私は見逃しませんでした。

「ハァァァァァァァァァ……」

 私は何度もやり直しさせられるくらいならと、おもいきって棚崎部長の顔に長い息を吐きかけました。
 棚崎部長は私に息を吹き掛けられながら目を半開きにさせ、私の吐いた息を全て鼻の穴に吸い込んだのでした。
 私の息を吸い込んだ棚崎部長は、「うん……」っと静かに頷くと、今まで顔に浮かべていた恍惚とした表情を急に一転させ、再びカマキリのような目で私を睨むと、「次は万歳しなさい……」っとポツリと呟きました。
 言われるままに私はソファーに座ったまま両手を天井に向けて上げました。
 すぐに棚崎部長は私の白いブラウスの腋に顔を近づけました。そして鼻先をブラウスのたるみに軽く触れさせながらスースーと音を立てて嗅ぎ回ります。

「ちょっとわからないなぁ……」

 まるで診察している医師のように首を傾げながらそう呟いた棚崎部長は、ゆっくりと私の腋から顔を離すと、「ブラウスを脱ぎなさい……」っと、それがさも当然の事でもあるかのように平然とそう言ってのけました。

「無理です……」

「なぜ?」

「なぜって……恥ずかしいです……」

「誰も見てないし恥ずかしくなんかないだろ……さ、早く脱いで……」

 棚崎部長は有無を言わせぬ口調でそう言うと、私がブラウスを脱ぐのを待ちわびるかのように黙ったままジッと私の目を見つめていました。
 その沈黙は耐えられぬ程の苦痛でした。今にも棚崎部長がヒステリーを起こし、私に乱暴するのではないかという恐怖に駆られた私は、一刻も早くこの恐ろしい沈黙から逃げ出すには、言われるままにブラウスを脱ぐしかないと咄嗟にそう思いました。
 私は棚崎部長と目を合わさないように俯いたまま、素早くブラウスのボタンを外し始めました。そんな私の手元を見つめながら、「ブラウスの一番上のボタンが千切れてるじゃないか・・・だらしのない女だ」と棚崎部長が独り言のように呟きます。しかし、そのブラウスの第一ボタンは、非常階段で鳩のフンを掃除している時に田野倉達のグループからセクハラされて千切れてしまったのです。そんな事実を言えない私の目からは再びポロポロと涙が溢れ出し、私はグスングスンと鼻を啜りながらも最後のボタンを外したのでした。
 そんな私を見ながら棚崎部長が「どうして泣くんだ?」と聞いて来ました。私が黙っていると、棚崎部長は「恥ずかしいのか?」と私の顔を覗き込みます。
 私は無言でコクンと頷きました。
 すると棚崎部長は「疑われるような事をしているからだよ・・・」と言いながら、私の肩をギュッと掴み、強引に私の右腕を引っ張りながらブラウスの袖から右腕を抜き取ったのでした。

 通販で買ったばかりのお気に入りの水色のブラジャーが、オフィスの蛍光灯に爛々と照らされていました。
 棚崎部長は私の右腕を天井に向けて伸ばさせると、ジンワリと汗が滲んだ私の腋の下に顔を近づけ、大きな眼鏡をキュッと指先で上げながらジロジロと観察しました。

「脇毛がポツポツと生えかかってるなぁ……」

 棚崎部長はそう言いながら私の腋の一部分にある、ほんの少しだけ顔を出した脇毛を指先でザラザラと擦りました。そして触った指をジッと見つめながら「汗もかいてるな……」と、まるでそれをあざけ笑うかのように「ふん」っと鼻を鳴らしました。
 そんな棚崎部長の鼻先がいよいよ私の腋の下に近付いて来ました……

 過去に私は、ある男から同じように腋の下を嗅がれた経験があります。その男は大学時代に付き合っていた同級生で、セックスの前には必ず私の腋の下や足の裏の匂いを嗅ぎそして舐めるのです。そんな異常だった男の話しを、その後に付き合った佐々木山に話した所、佐々木山は「その男の気持ちがわかるよ……」っと、佐々木山も同じように私の腋の下や足の匂いを嗅いでは、恍惚とした表情を浮かべてたのです。
 そんな佐々木山に、私が「どうして?」とその理由を尋ねると、佐々木山はこう言いました。

「キミの体からはいつもエッチな匂いがムンムンと溢れているんだよ……その、脹ら脛がプリプリとした細くて長い足と、細く締まったウェストのくびれからいきなりプリンと盛上がった大きな尻……フェチには堪らないだろうね……それと、そのプリプリとした唇や、少し垂れ目な大きな目からもいつもいやらしいオーラが漂っているよ……キミのようなエッチで綺麗な女の腋の下なら、男だったら誰でも嗅いでみたくなるだろう……」

 当時はそんな佐々木山の言葉に喜んでいいのかどうなのか戸惑ったものですが、しかし、棚崎部長も佐々木山と同じ気持ちを私に抱いているのなら、今ははっきりと言えます。とっても迷惑です。
 しかし、既に棚崎部長は私の腋の下に鼻先をヒクヒクとさせております。今さら迷惑だと言った所でもうどうにもなりません。

「少し……汗臭いなぁ……」

 腋の下から棚崎部長の潤んだ声が聞こえて来ました。鳩のフン掃除という重労働を一日中やらされていた私は、きっと知らないうちに大量の汗をかいていたのかも知れません。
 そんな恥ずかしい部分の匂いを嗅がれながら、私はまだかまだかとそれが終わるのを必死に耐えていました。
 すると、ふと、私の腋の下になんともいえない気色の悪い感触が走りました。
「はっ」と私が自分の腋の下を見ると、なんと棚崎部長が舌を蛇のように突き出しながら私の汗ばむ腋の下をペロッと舐めていました。

「いやっ!」

 私が慌てて腋を締めると、私の肘が棚崎部長の顔に触れ、棚崎部長の大きな眼鏡が斜めにずれました。
 棚崎部長は一瞬大きく息を吸うとピタリと息を止め、冷静を装いながらも斜めになった眼鏡を元に戻しては、私の目をキッ!と睨みました。
 棚崎部長のその目は今までとは違っていました。今までは少なからずも会社の上司という立場的な目をしていましたが、しかし今のその私を睨んでいる棚崎部長の目にはそんな社会的な光は消えていました。
 その目の輝きを一言で表現するなら「残酷的」です。今までに、人を殺す瞬間の人間の目というものを見た事はございませんが、しかしきっとそんな殺人者は人を殺す前にこんな目をするのだろうと思えるような、棚崎部長はそんな冷血な目をしておりました。

「逆らうな……」

 棚崎部長はそんな狂気的な目で私を見つめながら、まるで携帯のアナウンスのような口調でポツリとそう呟きました。
 そんな棚崎部長の目と声を聞きながら、私は(この人は壊れている……)っと、今までにない恐怖に襲われたのでした。

(つづく)

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