2ntブログ

疑念(後編)

2013/05/30 Thu 15:38

疑念2



 気が付くと二人は三十を越えていた。ようやく露出の快楽というものがわかり始めて来た和馬だったが、しかし、三十を過ぎた辺りから、何か無性に物足りなさを感じ初めていた。
 その原因は、やはり子供だった。毎晩のように恭子の中で射精しているというのに、それでも二人は子宝には恵まれなかったのだ。
 和馬は恭子に婦人科の検査を勧めた。そして自らも病院に出向き、それなりの検査をした。
 しかし二人に異常はなかった。婦人科の医師からは「年齢的にもまだまだチャンスはありますから」と励まされ、そして、『不妊治療のための正しいセックス』を医師から指導される事になったのだった。
 そんなカウンセリングは週に二回のペースで行われていた。最初のうちは二人でカウンセリングを受けていたのだが、しかし途中から恭子は面倒くさがり、今では和馬一人で受けていた。
 西洋、東洋の治療方法を教わり、どんな食品が妊娠しやすいかとか、何時頃の射精が効果があるなど、事細かく教えてもらった。しかし先生は、そうやってあらゆる治療方法を教えながらも、必ず最後は「神様にお願いするのが一番ですけどね」と笑った。
 そんなある日、カウンセリングの帰り道に、偶然にも『子授け』と書かれた神社を発見した。日頃、神様など信じていない和馬だったが、しかし、あれだけ医師に神社に子宝祈願に行きなさいと勧められていると、それを見た以上そこに行かないわけにはいかなかった。
 玉砂利をシャリシャリと踏みながら、一対の狛犬に向かって進んだ。赤い鳥居を潜った瞬間、背筋にひやっと冷気が走り、妙に厳粛な気分にさせられた。
 賽銭箱に十円玉を投げ、見よう見まねでパンパンと柏手を打って目を閉じた。シーンと静まり返った境内には樹木の緑の匂いがムンムンと溢れていた。取りあえず「子供が出来ますように……」とだけ心の中で呟き、再び柏手を二回打ってソッと振り向くと、ふと境内から見下ろすこの光景に見覚えがあると思った。
 そう思った瞬間、背筋がゾッとした。なんと、和馬と恭子はこの神社で野外セックスをした事があったのだ。しかもあの時は、この神社の横にある児童公園に住み着いているホームレスに性交シーンを見せつけ、挙げ句の果てには、そのホームレスに千円やるからオナニーしろと強要し、この神聖なる玉砂利の上にホームレスの不浄な精液を噴射させた事があったのだ。
(あんな罰当たりな事をしてたから子宝に恵まれなかったんだ!)
 和馬はそう確信した。慌ててポケットの中から財布を取り出し、賽銭箱の中に一万円札を入れた。そして改めてパンパンっと柏手を打つと、必死に両手を擦り合わせながら「ごめんなさい、お許し下さい」と五十回唱えた。
 その日から、和馬の中で、『露出』という行為が酷く不浄なものに変わった。神聖なる子作りの儀式を他人に見せ、それで性的快楽を得るなど、これはまさに神を冒涜する行為であり、こんな事を続けていてはいつまで経っても神は我々に子供授けてはくれないと本気でそう思い始めたのだ。
 それからというもの和馬は野外プレイを封印した。そして、快楽を求める為のセックスを一切断絶し、子供を求める為のセックスに励む事にしたのだった。
 しかし、当然恭子は納得しなかった。今までその変態行為がさも当たり前に繰り返されていたのに、いきなり「野外プレイは当分の間、自粛する」などと言われて素直に従えるわけがなかった。恭子はセックスの度に「お願い、お願い」と半泣きになりながら外に出ようとせがんだ。和馬は、そんな恭子を豚のようだと思った。キミは病気だ、と、出そうになる言葉を飲み込みながら、嫌がる恭子を布団の上に押さえつけ、子作りの為のセックスに没頭していたのだった。
 最初のうちは半泣きになりながら野外セックスを懇願していた恭子だったが、しかし、断固として布団の上でのセックスを続けているうちに、もはや何も言わなくなって来た。
 しかし、そんな正しいセックスは実に味気のないものだった。ただただ穴に入れてペニスを摩擦し、注射のように精液を注入するだけの正しいセックスは、まるで宗教の儀式のようにつまらなかった。布団の上でだらりと寝転がっているだけの恭子も、それ専用の人形のように無表情で天井の一点をジッと見つめているだけで、今まで露出する度に絶頂に達していたのが、今では全くイカなくなってしまっていた。
 このままではセックスレスになってしまうと一時は悩んだ和馬だったが、しかし、今は子作りが先決であり、子供さえ出来たらまた元のように野外セックスを解放し、お互いに燃え上がればいいのだと安易な考えでいたのだった。

 そんなセックスが半年も過ぎたある日、たまたま仕事が早く終わった和馬は、いつもより二時間ほど早く家に帰る事が出来た。
 まだ明るいうちに家に帰るのは久しぶりだった。自然に気分は浮かれ立ち、たまには気分転換に恭子を駅裏のラブホテルにでも連れて行って思い切りイカせてやろうか、などとニヤニヤしながら社宅の細い路地を進んだ。
 すると、隣りの小田の家の前を通り過ぎた辺りから、和馬は自分の家の異変に気付いた。狭い路地にはボイラーの音がゴォォォォォと響き、玄関の横にある風呂場の小窓にはぼんやりと明かりが灯っているのだ。
(こんな時間に風呂掃除をしてるのか?)
 そう不審に思いながら猫の額ほどの玄関に入ると、いきなりモワッとした湿気とシャボンの香りが和馬を迎えた。
 それは明らかに入浴している状況だった。
(どうしてこんな時間に風呂に入ってるんだ?)
 浴室から聞こえて来るシャワーの音を聞きながら、モソモソと靴を脱ぐ和馬は、突然、もしかしたらどこかの男を連れ込み、そいつと一緒に風呂に入っているのではないかという恐怖に駆られた。
(今の恭子ならあり得る)
 そう思うなり、居ても立ってもいられなくなった和馬は、慌てて脱衣場のドアを開けた。
「恭子!」
 そう叫びながら浴室のドアを開けると、前屈みで顔を洗っていた恭子の肩がピクンっと跳ね上がった。そして泡だらけの顔のまま慌てて和馬を見上げると「こんな時間にどうしたの?」と素っ頓狂な声で驚いたのだった。
 風呂に男がいなかった事に安心した和馬は、そのまま浴室の入口にしゃがみ込み、顔の石鹸を洗い流している恭子の大きな胸を眺めながら、飯塚さんが立川支店に移動し、箱根支店から新しい運転手が来たためたまたま仕事が早く終わったという事情を説明した。
 恭子は、大きな乳をタプタプと揺らしながら顔を洗い終えると、「そうだったんだ」と言いながらシャワーの湯を止め、そのままシャンプーのポンプをスコスコと押しては手の平に白い液体を溜めた。
「で、どうしてキミはこんな時間に風呂に入ってるんだい?」
 髪にシャンプーを馴染ませる恭子にそう聞いた。恭子は「だって」と言いながら頭部にシャカシャカと泡を立て、「裏庭の草むしりをしてたらね、汗だくになっちゃったのよ」と、片目でソッと和馬を見ながらそう呟いた。
 シャワーで髪を流し始めると、前屈みになった恭子の背中を白い泡が滑り落ちた。泡は丸い尻の曲線を緩やかに滑り、尻の谷間へと吸い込まれていった。恭子に見つからぬようソッと椅子の裏を覗き込むと、座席にポッカリと空いた丸い穴から、白い泡にまみれた黒い陰部が見えた。
 黙って浴室のドアを閉めた和馬は、半畳ほどの脱衣場に立ち止まり、このまま一緒に風呂に入ろうかどうしようか考えた。
 昼間っから風呂場で快楽に溺れるという堕落は、真面目な勤め人にとって大きな欲望だった。特に、野外プレイを禁止してしまった今、封印された和馬の変態性欲は、密かにそんな退廃的な快楽を求めていた。
(浴槽の中で湯をタプタプと揺らしながら互いの性器を擦り合いたい)
 そんな欲望に胸をムラムラとさせた和馬は慌てて靴下を脱いだ。片足ずつヨロヨロしながら靴下を引き抜き洗濯機の蓋を開けた。粘つく湿気った靴下を銀色の洗濯槽の中に落とすと、ふと槽の奥で無造作に丸まっている桃色のパンティーが目に飛び込んで来た。
 おもわず深い息を「ハァァァ……」と腹の底から吐き出しながらゆっくりとそれを摘まみ上げた。草むしりで汗だくになった恭子の下着。それを思うと、汚れたその部分を舐めまくり、そしてそこにおもいきりペニスを擦り付けてやりたいという変態欲望が次から次へと涌き上がって来た。
「恭子……」と呟きながら、勃起したペニスをズボンの上から左手で握り、丸まっていた桃色のパンティーを右手で広げた。桃色の薄い生地がパラリと捲れた瞬間、和馬の心臓がドキン! と飛び跳ねた。
 なんと恭子の陰部に張り付いていたその部分には、鼻水のようにヌルヌルした液体がべっとりと付着し、明らかに尋常ではない様子を漂わせていたのだった。

和馬1

 和馬は強烈な興奮に包まれていた。野外プレイを封印された露出狂の妻が、塀の向こうの通行人の足音にヒヤヒヤしながら庭の草むらの中に身を隠している姿が頭に浮かんだ。そして、塀の向こうを歩く通行人の足音を聞きながら下着の中に指を入れ、ベロリと開いた穴の中をぐちゃぐちゃと掻き回している卑猥なシーンを想像した。
 たちまち射精しそうになった。あまりの興奮に脳がクラクラした。ハァ、ハァ、と短く息を吐きながら、その鼻水のような液体に指をヌルヌルと滑らせた。ズボンの上から股間を激しく擦りながら、これを舐めよう、と決心し、そこに顔を近づけた瞬間、そのヌルヌルの液体から何ともいえない嫌な匂いがモワっと漂って来た。
 それは、いつもの恭子の陰部の匂いとは違っていた。この消毒液のような匂いは、明らかに精液の匂いなのである。
 背筋がゾッとした。もしかしたら通行人を庭に連れ込み、そこでヤらせてしまったのではないかという恐怖が和馬の全身に走った。
 カッと頭に血が上った和馬は、桃色のパンティーを洗濯機の中に放り投げると、慌てて脱衣場を出た。居間の畳をドカドカと踏みしめながら奥に進み、縁側から庭を覗くと、そこにはいつもと変わらない風景が広がっていた。
 庭掃除などした形跡はどこにもなかった。雑草は伸び放題で、ステンレス製の物干しが雑草に埋まっていた。しかも、去年の夏休みに遊びに来た親戚の子供達の花火のカスまでもが、そのままの状態で放置されているではないか。
(これはいったいどういう事だ……)
 そう呆然としながら荒れ果てた庭を見つめていると、そこに恭子が、暑い暑いと言いながら風呂から出て来た。
「おまえ……」と震えながら振り返ると、大きなバスタオルを頭から被った全裸の恭子が、畳の上にペタンっと腰を下ろしながら濡れた髪をゴシゴシと拭いていた。
 乳がタプタプと揺れていた。体育座りする恭子の股間が庭から差し込む明かりに照らされ、濡れた陰毛が恥骨にべたりと張り付いているのが見えた。
 恭子は頭に被せたバスタオルを、歌舞伎の鏡獅子のようにバサバサさせながら一心不乱に髪を拭いていた。和馬はソッと腰を下ろすと、恭子に気付かれぬよう息を殺してそこを覗き込んだ。
 濡れた陰毛の中に、まさに『あわび』と瓜二つなワレメが息づいていた。ドス黒い小陰唇が左右にベロリと捲れ、その奥では真っ赤な粘膜がテラテラと輝いている。
 ふと、この裂け目の中を、見知らぬ男の肉棒がピストンしていたのだろうかと思うと、他人の肉棒に身を捩らせながら、「ひぃひぃ」と見苦しい声を張り上げている恭子の姿が浮かんだ。
 激しい怒りと嫉妬で目眩を感じた。しかし、その目眩は脳を刺激した後、素早く下半身へと転移し、和馬の亀頭をズキンっと疼かせた。
「どうしたの?」という恭子の声に慌てて顔を上げると、いつしか恭子は髪を拭くのをやめており、そのバスタオルをターバンのように頭に巻いていた。
「なんか変よ?」
 そう小さく顔を傾げながら和馬の顔を覗き込む恭子は、さりげなく股を閉じ、体育座りにさせていた膝をソッと横倒しにした。
(きっと中出しされた精液が垂れるの恐れたのだ……)
 和馬はそう思った。それが、あまりにも病的な解釈だと自分自身そう思いながらも、しかし、そう思わずにはいられなかった。
 奇妙な興奮に襲われた和馬は、無言で恭子の顔を睨みつけると、その細い肩を両手で掴んだ。「えっ?」と戸惑う恭子を畳の上に押し倒し、まだほんのりと湿った太ももに顔を埋めた。
「ちょ、ちょっと待ってよ、カーテンが開いてるわ」
 そう慌てる恭子に、(カーテンが開いてた方が興奮するんだろ?)と心の中で問いながら、ボディーソープの香りが漂う陰毛にジョリジョリと舌を這わせた。
 最初は嫌がっていたが、しかし、陰毛の中に隠れていた陰核を舌先が捕らえ、それをひたすらチロチロと転がしていると、次第に恭子の股の力は弱まり、いつしか恭子は自らの意思で股をM字に開いていた。
 濃厚な汁がネトネトと糸を引くワレメを、ピタピタと音を立てながら上下に舐めまくった。舌がクリトリスを捕らえる度に、恭子は無言で腰をピクンっと跳ね上げていた。
(見知らぬ男に、ここをこうして舐められたのか?……こんな所もこうしてレロレロと舐められたのか?……)
 和馬はそう心の中で恭子に問いながら、陰核、裂け目、肛門と、丁寧に嘗め続け、そのまま器用に服を脱いだ。
 全裸になった和馬は、陸に上がったクラゲのようにぐったりと横たわる恭子の体に抱きついた。風呂の湯でまだほんのりと火照っている肌は、雑煮の餅のように柔らかかった。抱きしめるとタプタプの乳が和馬の胸を包み込み、そのまま恭子の体の中に吸い込まれていくような気がした。
 一言も言葉を交わさないまま、和馬は熱り立つペニスを裂け目に押し付けた。既に恭子の裂け目は充分すぎるほどの汁を溢れさせており、石のように硬いペニスでも、何の障害もなくスルリと飲み込んだ。
 肉棒を突き刺された恭子は、「んん……」と溜め息のような声を唸らせ、畳の上で腰を反らせた。恍惚とする恭子の顔を覗き込みながら一定の速度で腰を動かしていると、穴の中からは次々に汁が溢れ、そのうちぺちゃぺちゃと下品な音を奏で始めた。
 果たしてこの汁は本当に恭子の体液なのだろうかと疑いながら、ペニスを根元まで押し込んだ。恭子の恥骨に自分の恥骨をグリグリと押し付けながらペニスで穴の中を掻き回すと、膣と同時に陰核を刺激された恭子が顔を真っ赤にしながら激しく乱れ始めた。
 聞くなら今だと思った。「浮気したんだろ」、と聞けば、今なら恭子は素直に「ごめんなさい」と答えるような気がした。
 しかし、和馬は聞けなかった。その答えを聞いた瞬間、この凄まじい興奮が、風船が萎むようにして消えてしまうような気がし、それはあまりにも勿体ない気がして聞けなかったのだ。
(このまま事実を確かめないでおこう)
 和馬はそう思った。現実を知らされて絶望に暮れるよりも、この疑念を抱いたまま更に更に妄想を膨らまし、どのようにして恭子が他人男のペニスに悶えていたのか、他人男は恭子の陰部を舐めながら何を考えていたのか、などと、密かに想像していた方がずっと楽しそうだと思った。
 そう思いながら徐々に腰の動きを速める和馬は、地獄の炎に包まれるように悶えている恭子を見下ろしながら、ふと、これが寝取られの興奮なのかと確信した。
 以前、客が座席に忘れていったフランス書院の寝取られ小説を、休憩中にバスの中でこっそり読んだ事があった。あの時は、どうしてこの主人公は妻が他人に寝取られて興奮しているのだろうとその気持ちが全くわからず、読むだけ時間の無駄だと思い途中で屑篭の中に捨ててしまった。
 しかし、今、こうして自分がその立場に置かれてみると、あの小説の主人公の異常な興奮が痛いほどわかった。和馬は、数年前に読んだあの寝取られ小説に、今更になって感情移入してしまっていたのだった。

 果たして、この時、本当に恭子が浮気していたのかどうかは定かではなかった。
 物的証拠は精子臭いヌルヌルのパンティーだけであり、状況証拠も、変な時間に風呂に入っていたという事実と、庭掃除をしていたというわりには庭が全く掃除されていないという事実だけだった。
 たったこれだけの乏しい証拠で、恭子が浮気をしていたとは断定出来なかった。
 が、しかし、和馬は浮気と断定した。無理矢理にでも恭子が寝取られていたと決めつけ、あらゆる卑猥な妄想を捏造しては、一人密かに興奮していた。
 その結果、それが起爆剤となり、再び二人の野外プレイが再開される事となった。しかも今回からは、ギャラリーを集めての公開セックスという極めて過激なプレイに変化していた。
 公園や公衆便所で犬猫のようにヤリまくり、ホームレスや泥酔者など様々な人達にその痴態を見せつけ、二人は互いに燃え上がっていた。
 和馬は、恭子との結合部分を他人に見せつける事で、恭子が他人に寝取られている姿を生々しく妄想する事が出来た。他人にそのネトネトと糸を引く結合部分を真剣に覗き込まれていると、おもわず「入れてみますか?」と言ってしまいそうになり、その度に激しい興奮に襲われ、早々と射精してしまうのであった。
 
 そんなプレイを続けている最中、遂に恭子が懐妊した。
 過激な変態プレイが和馬の精子を活発にさせたのだと、恭子は嬉しそうに笑っていた。

 しかし和馬は笑わなかった。あれだけ念願だった妊娠なのに、和馬は素直に喜んではいなかった。

(この子供は……本当に俺の子供なのだろうか……)

 そんな新たな疑念に取り憑かれた和馬は、恭子のお腹が大きくなるにつれ、不安と不審と、そして異様な性的興奮に襲われた。

 そんな和馬は今、究極なる寝取られの興奮を楽しんでいるのであった。

(疑念・完)

《←目次》

66センチ白枠愛欲小説66センチ白枠FC2バナー166センチ白枠

変態

FX
ブログパーツ アクセスランキング