たまねぎの皮2
2013/05/30 Thu 15:38
この状況は、俺と女の立場を見事に逆転させていた。
女は絶体絶命だった。荒縄でガチガチに縛られた体は身動きできず、まして下着を剥ぎ取られた尻は丸出しだった。
今のこの状態では、もはや女は俺に頼るしかない。
そんな悲惨な女オーナーの姿を見つめながら、俺は咄嗟に、どうしてこうなったのだろうと考えた。
そう考えた瞬間、さっきのスキンヘッドの男の顔が浮かび、俺は凄まじい恐怖に襲われた。
(強盗か!)
俺は慌てて辺りを見回した。今にも黒ずくめの中国人達が蜘蛛のように現れ、銀色に輝く青龍刀をギラリと突きつけながら、「マネー」と微笑むのではないかと背筋を凍らせた。
急いで裏口のドアを閉めた。震える指でドアノブを握りしめ鍵をかけると、すぐさま通路の突き当たりのサッシに手を伸ばし、一気に鍵を下ろした。
そんな俺のすぐ足下で、女が「早く縄を解きなさい」と言った。
見ると、女は大きな目玉でギロリと俺を睨んでいた。
その目は、さっき厨房で俺を睨んでいた時と同じであり、不意に俺は凄まじい怒りを感じた。
こいつは、今の自分の置かれた立場を理解していないんだ。
そう思いながら、俺は女の頭上にゆっくりとしゃがんだ。
どうせこの女の事だから、縄を解いてやったとたんに恩を忘れ、また俺をゴキブリのように扱うんだろうと思っていると、女は俺を睨んだまま「なによ」と言った。
女のその強気な態度に腹が立ったのと同時に、奇妙な性的興奮を覚えた。
こんな気位の高い女が、いったいどうやってあの薄汚い男に犯され、そしてどんな気持ちで中出しされていたのだろうかと想像すると、途端にしゃがんでいた股間がムズムズと反応し、硬くなったペニスがジーンズの中で歪に折れ曲がった。
女は、そんな俺に唯ならぬ危機感を覚えたのか、それまで早く縄を解けと急かしていたにもかかわらず、今度は「もう縄を解かなくていいから、優希ちゃんを呼びなさい」と言い出した。
優希ちゃんというのはこの店の店長で、女オーナーの右腕的存在だった。AKBにいてもおかしくないくらい可愛い女の子で、彼女を目当てに店にやって来る客も多かった。そんな彼女はまだ二十歳だというのに南青山の高級マンションで一人で暮らしていた。
「そこに私のバッグがあるでしょ。その中に携帯があるから、それで優希ちゃんに電話してすぐに店に来るように伝えなさい」
見ると、裏口のドアの横に黒いショルダーバッグが転がっていた。黒光りするバッグの真ん中には銀色に輝くシャネルのマークが付いていた。
女は「早く!」と俺を急かした。
俺はバッグに手を伸ばし、肩紐のチェーンをタイル床にジャラジャラと鳴らしながら引き寄せた。
中を見ると、バッグの一番上には、同じシャネルのマークが付いた財布がポツンと置いてあった。
ふと、あの強盗はどうして財布を盗まなかったんだろうと思った。強盗だったら、女を犯す前にまず財布を手に入れるはずであり、先に女を犯したというその順序に矛盾を感じた。
あのスキンヘッドは最初からこの女の身体が目当てだったのか? と、そう思いながら財布の中を覗いてみると、一万円札が百枚はあろうかと思われる束が、無造作にドサッと入れられていた。
「すげぇ……」
おもわずそう声を上げてしまうと、女は「どうして財布の中なんて見てるのよ! いいから早く優希ちゃんに電話しなさいよ!」と、堅く縛られている手首をモゾモゾと動かしながら叫んだ。
俺は小さな溜め息と共にバッグの奥で転がっていた携帯を引きずり出した。そして携帯をカパッと開きながら、「番号わかりませんけど」ともう一度溜息を漏らし、滅茶苦茶に携帯のプッシュを押しまくった。
「短縮3よ。3を押してから通話ボタンを押しなさい」
女がそう言うと、滅茶苦茶にプッシュしていた画面には、いつの間にかメールの受信BOXが開かれていた。
俺は何気にそこにズラリと並んでいるメールを眺めた。しかし、いくらスクロールしても優希ちゃんからのメールしか出て来なかった。
なんだこれ、と思いなが取りあえず一つだけメールを開いてみた。
『今夜、マンション来る?』
その短いメールを読んだ俺は、一瞬、「ん?」と首を傾げた。なぜなら、二十歳の雇われ店長が、この店では神のような女オーナーに対してタメ口だからだ。
なんか変だぞ、と思いながら次のメールも開いてみた。
『昨日のアレ、凄かったぁ♡ 優希のアソコ、まだジンジンしてるよ。今夜も待ってます♡』
不意に、二人が裸で抱き合い、女オーナーが突き出している舌を、優希ちゃんがチューチューと吸っているシーンが、俺の頭に浮かんだ。
俺はクラクラとした目眩を感じながら、そのメールと女の顔を交互に見つめた。
女はジロっと俺を見上げながら「なによ」と言った。
「オーナーと店長はレズだったんですか?」
単刀直入にそう聞くと女の目は一瞬泳いだが、しかしすぐに気を取り直して、「あんたには関係ないでしょ」と再び俺を睨んだ。
女オーナーは、それを俺に指摘された事が気に入らなかったのか、「黙って優希に電話すればいいのよ! あなたはそんな事もできないの! クズみたいな人間ね!」と、ヒステリックに叫び散らした。
ゴミ、クズ、ニート、中卒、低能。
そんな言葉を散々浴びせられた。
しかし俺は全然腹が立たなかった。
確かに俺は、社会のゴミで、クズ人間で、中学を卒業してからというもの家の中にずっと閉じ篭っていた低能な中年ニートなのだ。
女の言ってる事は全て本当の事だったから、今更それを指摘されても全然腹など立たなかった。腹が立つというよりも、むしろ俺は女のその罵声に感謝しているくらいだった。
女の罵声は、改めて俺はゴミでクズで低能な中年ニートだと言う事に気づかせてくれたのだ。そしてそれによって、今まで必死に堪えていた理性をぷっつりと断ち切る事ができ、たった今、糞人間としての本能を目覚めさせてくれたのだ。
もう迷う事はなかった。
俺は、パタンっと携帯を閉じると、それをシャネルのバッグの中に投げ捨て、中から分厚い財布を取り出した。
女をジッと睨みながら一万円札の束を抜き取り、それをジーンズの後ろポケットに差し込んだ。
女は、俺の目を睨み返しながら、「警察に言うからね」と静かに言った。
俺は、さっき女にそうされたように、「ふん」と鼻で笑ってやった。
そして床に落ちていたピンクの下着をソッと指で摘むと、股間がくっついていた部分を女に見せつけながら、「濡れてるね。あんた、縛られながら感じてたのか?」と、大きく鼻で笑ってやったのだった。
しかし女は、さすが超人気店のオーナーだけあり腹が据わっていた。
「そんなのおしっこに決まってるでしょ。いきなり襲われたから失禁してしまったのよ。ふん。そんなの濡れてる場所を見ればわかるじゃない。もしかしてあんた、女知らないんじゃないの? その歳で童貞って気持ち悪いわよ」
女は、例の調子で「ふん」と鼻で笑いながらそう俺を挑発して来たが、しかしすぐに、その鋭い眼光を穏やかな目に変え、「そのお金あげるから早く縄を解きなさい。今なら警察には黙っててあげるから」と、優しく畳み掛けて来た。
一瞬俺は「えっ?」と聞き直した。
すると女は、優しく俺を見つめながら「うん」と頷いた。
「あんた、溜まってるんでしょ。今ならまだデリヘルとか間に合うわよ。それだけあれば豪遊できるでしょ。ほら、そのお金持って遊んでらっしゃい。縄さえ解いてくれたら警察には絶対に言わないから、安心して遊んで来るといいわ」
さすがにこの女は、この手の駆け引きが上手だった。
俺は後ろポケットに押し込んだ札の膨らみを感じながら、確かにこれだけあれば二ヶ月間連続でデリヘル嬢を呼ぶ事が出来ると思った。吉原の高級店も六本木の高級ホテトル嬢も、そしてあれだけ熱望していたFC2動画の有料会員だって思いのままなのだ。
しかも女は警察に言わないという。
これだけの金を、正々堂々と自由にできるのだ。
夢のような話だ、と、一瞬はそんなおいしい条件に心が揺らいだ。
しかし、この女は、今までこうやって民衆の心理を読み取り、ここまで店を繁盛させて来たんだろうなと思うと、何やら騙されているような気がしてならず、途端に、こんな端金で懐柔されてなるものかというケチな反骨精神が俺の中で芽生えた。
俺は、余裕を噛ましている女を見下ろしながら、なんでも自分の思い通りになると思うなよ、と呟き、いきなりパンティーの濡れた部分をクンクンと嗅いでやった。
それを見た女の目は、一瞬にして恐怖の色に変わったのだった。
それはまさに立場が逆転した瞬間だった。
嬉しくなった俺は、脅える女を見つめながら、ほんのりとチーズ臭が漂うパンティーのシミを舌先でチロチロと舐めてやった。
「やめて!」
女は眉を顰めながらヒステリックに叫んだ。
俺は女の顔の上で摘んだパンティーをヒラヒラさせながら言ってやった。
「ひとつだけ覚えておいて下さい。あなたを生かすも殺すも俺次第だという事をね」
女の目がキッと吊り上がった。俺はそんな女にヘラヘラと笑いながら、パンティーの股間部分を女の鼻に近づけた。
女は露骨に嫌な顔を示すと、サッと顔を背けた。
俺は女の顔にパンティーをパサッと落とした。そしてしゃがんだまま女の足下へと移動すると、おもいきり突き出された尻を覗き込んだのだった。
初めて女の性器を見た。
体を『く』の字に縛られている女の尻は、陰部と肛門が剥き出しにされ、ピタリと閉じた真っ白な尻の谷間からは、まるで黒人の唇のような分厚い小陰唇がベロリとはみ出していた。
そんな卑猥なワレメからは、無惨にも精液がダラダラと垂れていた。
複数の男に中出しされたのか、それともあのスキンヘッドの男が相当溜まっていたのか、その精液の量は尋常ではなく、女の穴の中にはかなりの大量の精液が注入されているようだった。
実に無惨な光景だった。
今までコレ系の陵辱動画は散々見て来た俺だったが、やはりPCに映し出されるあの小さな画面で見るのと、実際にこうして生で見るのとでは全然違っていた。
生で見るそれは、まな板の上で捌かれる魚の腸を見ているような残酷性と、無為に吐き出された排泄物的な卑猥なニオイがひしひしと伝わってきた。
そこに顔をギリギリまで近づけながら覗いていると、女は黙ったまま尻をモソモソと動かした。
自力でその無惨な部分を隠す事が出来ないこの体勢は、きっとこの気位の高い女に凄まじい羞恥心を与えている事だろう。
そう思っていると、ふと、子供の頃に感じた性的欲情がムラッと蘇った。
あれは小学五年生の頃だった。眼鏡を掛けた若い担任教師の白いスカートの尻に、赤く丸い『日の丸』のようなシミが付いていた事があった。
男子の俺達にはその血の意味が分からなかったが、数人の女子はその血の意味を知っていた。
先生はそれに気づかず黒板に何かを書いていた。一番前の席に座っていた女子が「先生、血が出てるよ」と小声で教えた。
それを指摘された時の担任教師の表情を、俺は今でも忘れていない。その後、あの血の意味を知った俺は、あの時の羞恥に満ちた若い担任教師の八の字眉を思い出す度に欲情し、自瀆に耽った。二十年経った今でもセンズリのネタとして俺の中で鮮明に生きている。
あの時の担任教師と、この糞生意気な女が不意に重なった。
二人には共通点があった。担任の教師は、貧乏で乱暴で勉強のできない俺をいつも見下し、そしてこの女も、俺の事を、ゴミ、クズ、ニート、中卒、低能、と罵った。
俺は興奮した。俺をゴキブリのように扱った女に、今、強烈な羞恥を与えているのだと実感すると、アルコール度の強い酒を一気に飲み干した時のように耳がドクドクと脈打った。
「滅茶苦茶に中出しされてますね……オマンコの中から精子が溢れてますよ……」
そう笑うと、いきなり女は「あっちに行って!」と金切り声で叫んだ。
「あの男、知らない人なんでしょ? 知らない人にここまで中出しされるなんて肉便器みたいですね」
そう呟きながら、俺は精液が溢れるワレメに指を伸ばした。
どす黒い肉の膨らみに指先が触れるなり、女は激しく尻を振りながら「警察に言うわよ!」と叫んだ。
俺は暴れる尻肉を左手で押さえ込むと、ヌルヌルの裂け目に指を上下させた。
「どうせ俺はクビでしょ? クビにされたら、俺、家を追い出されるんですよね。俺みたいな根性無しにホームレスなんてできませんから、刑務所で養ってもらうってのもアリだと思います。だから警察に訴えてもらっても全然構いませんよ……」
そう言いながら、『く』の字に曲がっていた女の体を仰向けにした。
いきなり正面を向かされた女は、大きな目をカッと開いて俺を見た。
脹ら脛を頑丈に縛られた白い足を天井に向けて高く掲げた俺は、その足首を掴んだまま女を見下ろし怒鳴ってやった。
「っつーか、警察に訴えてくれよ。俺の方からそうお願いするよ。乞食になって公園のベンチで餓死するよりは刑務所でのんびり暮らした方がマシだからな!」
俺は、わざと残酷的に「ひひひひひひっ」と笑うと、そのまま女のワレメに指を突き刺してやった。溜まっていた精液が、ボンドのチューブを搾るようにしてニュッと溢れた。初めて触れる女の穴の中は、肉まんの中にブスッと指を突っ込んだように熱かった。
俺はニヤニヤと笑いながら、いつも動画で見ていた指マンというヤツをやってみた。しかし、動画の女達はあの高速な指の動きに悶えまくっていたが、この女はズボズボと出し入れされる度に「痛い! 痛い!」と顔を顰めていた。
確かに俺の指の動きは、動画の男優のようにスムーズではなかった。指を突き刺す度にワレメの両サイドにある肉が突っ張り、動画のような、じゅぶ、じゅぶ、じゅぶ、といった軽快な音が出てくれなかった。
ワレメはスキンヘッドの精液で充分すぎるほどに濡れているはずなのに変だなと思っていると、ふと、両足が縄でキツく縛られ、股が開いていないからだという事に気づいた。
俺は少しだけ縄を緩めようと、脹ら脛に巻き付いている縄に目を凝らした。
実に見事な縛り方だった。きっとあのスキンヘッドの男は、さぞかしその世界では名の売れた緊縛師なんだろうなと思いながら縄を弛め始めた瞬間、突然、女は何を勘違いしたのか、ジッと俺を見つめながら呟いた。
「わかればいいのよ。警察には黙っててあげる。そのお金も退職金代わりにあげるわ。その代わりこの事は誰にも言わないと約束しなさい」
どうやら女は、この期に及んで俺が恐れをなしたと勘違いしているようだった。
女は、白い股間に醜い陰毛をわさわささせながら、「ウチのバックには関東連合が付いてるのよ。もし約束を破ったらあなたをこの世から消すからね」と、漫画のような事まで言っている。
俺は、おもわず「アホか」と言いそうになったが、しかし、ふと、このまま女がどこまで調子に乗るか見てみたい気がした。
助かると思っていた所を、いきなり奈落の底に突き落とされる女。
これはなかなか面白そうだぞ、と思った俺は、わざとがっくりと項垂れながら、「すみませんでした……」と呟いたのだった。
(つづく)
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