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水のない噴水8

2012/11/17 Sat 04:26

水のない噴水5



 彼が七階のスタジオに連行されて来たのは、キッチンの棚の角で頭を打つけて気を失っていた武田が目を覚ましたのと同時だった。
 ぐったりと項垂れる彼の両手両脚には銀色に輝く手錠が嵌められていた。ガチャ、ガチャ,と重たい音を響かせながらやってきた彼は、まるでアメリカ連邦保安局に連行される重罪人のようだった。
 彼の右頬が赤く腫れていた。唇の端が切れ、うっすらと血が滲んでいた。
 バッグからハンカチを取り出し、急いで彼の元に走り寄ると、項垂れたままジロッと涼子を睨んだ彼は、「来るなメス豚」と吐き捨てた。
 彼を連行して来た男達は、ハーフの秘書の指示に従い、彼をベッドまで引きずった。
 ベッドの横には、アメリカのショーパブで使われるようなステンレス製のポールが一本突っ立っていた。
 彼は、そのステンレスのポールの前に立たされると、片方の手錠だけを外された。そして両腕を後手にされ、そのポールを両腕の間にくぐらせるようにして、再び手錠を掛けられたのだった。
「この野郎、いきなりこんなモノを振り回しやがりまして、中根さんが腕を斬られましたよ」
 サングラスを掛けた屈強な男は、そう言いながら出刃包丁を武田に見せた。ギラリと輝く出刃包丁の刃には、既にカリカリに乾いてしまった血が付着し、取っ手の木の部分は、染み込んだ血が黒ずんでいた。
「中根かぁ……」
 武田は出刃包丁をジッと見つめながら呟いた。
「一応、病院には連れて行きましたが、でも、カスリ傷でしたから心配ありません」
 そう男が言うと、武田はいきなり彼に振り返り言った。
「ダメだよキミ。斬ったらダメだよ、刺さなきゃ。ブスッと刺して、そのままグリリって抉るんだよ。そうしなきゃ内臓バァーにはならないぜ」
 そう武田がケラケラと笑い出すと、彼は勢いよく手錠をガシッガシッと鳴らしながら暴れ出した。まるで鎖に繋がれた犬が必死に襲い掛かろうとしているように牙を剥く彼は、「ならおまえの内臓を抉ってやるから手錠を取れ!」と武田に向かって吠えていた。
 そんな彼に、うひょひょひょひょ、と手を叩きながら喜び始めた武田は、ゆっくりと彼に近付くと、手錠がはめられた彼の足下にいきなり小便を掛けた。
 寒々としたスタジオに、ジョボジョボジョボっという武田の小便の音が響いた。
 彼は血走った目で武田を睨んでいた。そして「武田……絶対に殺してやるからな……」と歯軋りしながら唸っていた。

 彼を連行して来た屈強な男たちがスタジオを出て行った。
 武田はベッドにゴロリと横になり、秘書は煙草をスパスパと吹かしながら、怒り狂う彼を好奇の目で見ていた。
 午後の日差しが両サイドの窓から差し込み、スタジオはまた違う色の赤に変化した。
 涼子は居場所がなかった。凝視してくる彼から必死に目を反らし、突っ立ったままモジモジしていた。
 すると、不意に武田が涼子に言った。
「キミの撮影はエジプトを考えてるんだが……」
 項垂れていた涼子はソッと顔を上げた。
 すかさずハーフの秘書が、突っ立ったままの涼子の背中を静かに押し、ベッドの端まで行くとそこに座らせた。
 ハーフの秘書は、表紙にスフィンクスの写真が載っている雑誌をベッドの上にバサッと置いた。
 武田はその雑誌をパラパラと捲りながら「エジプトには行った事はあるかい?」と涼子に聞いた。
 涼子が「いえ……」と首を振ると、唇に滲む血を舌先でペロッと舐めた彼が「ふん」と鼻で笑った。
「西成の三角公園でなら行った事あるけどな」
 苦々しくそう吐き捨てる彼を武田は無視しながら、ギザのピラミッドや太陽の船の写真を次々と開き、そしてアブ・シンベル神殿のページで手を止めると、「ここだ」と目を輝かせた。

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「四年前さぁ、ここで『権威と畏怖心』というテーマで撮った事があんだよね。このラムセス2世の像を背景にさぁ、知的障害のおばさんと黒人が埃だらけになってセックスしてるっつー写真だったんだけど、あれ、日本では全く評価されなかったね。評価どころか、どっかの人権団体なんかがしゃしゃり出て来て抗議されちゃったよ。でもね、その写真、シャルネが買ってくれたんだよ。それも、目ん玉飛び出るくらいの金額でね」
 武田が目を丸めながらニヤリと笑うと、スタジオの隅で枝毛チェックをしていた秘書が、「二千万。今でもパリの本店に飾られてるのよ」と独り言のように呟いた。
「だから二匹目のドジョウを狙ってみようと思ってね、ここで撮影したいんだ……」
 武田はそう言いながらベッドから下りた。そしてポールにぶら下がる彼の腹を覗き込み、彼の白いシャツに赤く滲んだ切腹の跡を見つめながら、「テーマはズバリ、『畏怖心からの解放』だ」と呟いた。
「アブ・シンベル神殿を背景にさぁ、逆立ちとかヨガをやるんだよ。もちろん全裸だ。オマンコもケツの穴も遠慮なくパックリと開いて豪快にやってもらう。まぁ、俺自身、意味わかんねぇテーマなんだけどさ、でも、このテーマだったらシャルネが飛び付いて来るのは火を見るより明らかだろ」
 武田はケラケラと笑った。
 涼子はそんな武田をソッと見つめながら、だからさっき武田は、ベッドの上であんな事ばかりしていたのかとふと思った。あれは彼なりのイメージ作りだったんだと思うと、あの時に感じた不安はすっきりと消えた。
 しかし、新たな不安が涼子の心を締め付けていた。そんな武田の話を聞いている間にも、ポールに括りつけられた彼は、凄まじい形相で涼子を睨んでいるのだ。
「大丈夫かな? ラムセス2世の像の前で全裸でヨガできる?」
 武田が涼子の顔を覗き込みながら聞いた。
 涼子は戸惑いながらそっと彼の目を見た。
 すかさず彼が笑い出した。
「大丈夫だ。そのメス豚は、新橋の路地で酔っぱらいのおっさんに放尿見せた事だってあるんだ。地下道でホームレスと乱交した事だってあるし、新宿公園のベンチでバイブ突っ込んだアソコを通行人に見せた事だってあるんだ。全裸のヨガなんて屁のカッパさ」
 いきなり武田が彼のシャツを捲った。そして既に瘡蓋になっている五センチ程の傷を指で撫でながら「っんな事、全部知ってるよ」と呟いた。
「キミ、僕を舐めてないかい? 僕は世界の武田だよ? キミのようなチンピラカメラマンとは違うんだよ」
 そう言いながら武田はその瘡蓋をピリリッと捲った。
 彼が「うっ!」と歯を食いしばると、武田は彼の顔を覗き込みながら笑った。
「彼女の事は全て調査済みさ。ウチには腕利きの探偵がゴロゴロしてるからね。キミが彼女を廃墟だとか殺人現場なんかに連れ出して撮影してる事も知ってる。そして、そこで乞食のおっさんなんかに彼女をヤらせてる事も聞いた。キミ、なかなかセンスあるじゃない。もしかして本物のヘンシツシャかな?」
 武田は、瘡蓋の取れた彼の傷口に指を突っ込んだ。傷口からベロリと顔を出した真っ赤な生肉を、爪でガリガリと引っ掻きながらニヤニヤと笑っている。
「うぐっ!……」と彼が顔を顰めると、武田は指に付いた彼の血をペロリと舐めながら呟いた。
「キミも一緒にエジプトに行くか? アブ・シンベル神殿で切腹でもするか? テーマは、んん……そうだな……ズバリ『三島』ってのはどうだい? 海外には三島ファンが大勢いるから結構高く売れると思うぜ」
 そう笑いながら舐めていた指を更に傷口に押し込み、第一関節まで埋まった指をグリグリと掻き回した。
 彼は、これでもかというくらいに目をひん剥きながら「ギャャャャャャ!」と叫んだ。
 涼子が「やめて下さい!」と叫びながら武田の腕を掴むと、武田はそのまま涼子を払い除け、ベッドの上に突き飛ばした。
「と言う事だから、これから簡単なリハーサルをしてみようか。とりあえず服脱いで、オマンコをパックリと開いてみてよ」
 武田はベッドに崩れ落ちた涼子を見下ろしながら不敵に笑った。
「やめろ変態!」
 彼がそう叫ぶと、武田は素早くクルッと回転し、真正面でぐったりしている彼の顔面をおもいきり殴った。
 ガコッという鈍い音が響いた。彼の鼻は無惨に潰れ、歪に曲った鼻からドス黒い血がドロッと溢れた。
「僕はアーティストだ」
 武田はそう笑いながら彼の股間をムグッと鷲掴みにした。そしてその手をクルミを鳴らすようにしてグリグリと回しながら「変態はキミだろ。愛する女を薄汚いおっさんたちにヤらせて興奮してるんだろ……」と呟くと、とたんに彼は情けない声で叫びながら、顎をガクガクと痙攣させた。
「わかりました! 脱ぎます! だからもうやめて下さい!」
 涼子が叫ぶと、武田は不敵に微笑みながら涼子に振り返った。
 そして「オマンコパックリもお忘れなく」と呟くと、素早く彼の股間から手を離したのだった。

 凄まじい形相で彼に睨まれながら涼子は服を脱ぎ始めた。
 ベッドで胡座をかく武田はブツブツと鼻毛を抜き、その抜いた鼻毛を白いシーツの上に綺麗に並べている。
 壁に凭れながらストッキングに手を掛けると彼が呟いた。
「……俺の言った通りだっただろ……欲を出してこんな変態野郎に魂を売るから、こんな目に遭わされるんだよ……」
 涼子は、まるで念仏のようにブツブツと聞こえて来る彼の言葉を必死に頭の中から取り除きながら、右足のストッキングを一気に下ろした。

 いきなり武田の手が伸びて来た。
 乱暴に右足を引っ張られ、M字に股を開かされた。
 青いTバックが、かろうじて涼子の秘部を隠していた。
 武田は、まるで古畑任三郎のように「う〜ん……」と唸りながらそこを覗き込み、「エロエロがムンムンとはっちゃけてます」と意味不明な言葉を囁いた。
 涼子はそんな武田を無視して、脱ぎかけていた左足のストッキングを一気に下ろしたのだった。

 ストッキングを脱ぎ、黒いセーターを脱いだ。ブラジャーを外そうとすると、「もうやめてくれ……」と唸りながら彼が啜り泣きを始めた。
「あんた、変な人だね……いつもはホームレスとかに彼女を抱かせてるんだろ? 今更、俺に見られた所でどーって事ないでしょ?」
 武田がそう首を傾げながら彼を見ると、彼は血の滲んだ前歯を剥き出しながら「お前だけには見られたくなかったんだ! だからあんな事をしてたんだ!」と叫んだ。
 武田は目を丸めながら更に首を傾げた。そして青いティーバック一枚になった涼子をジッと見つめながら、推理するようにして呟いた。
「キミは俺に撮影をさせない為にあんな事をしていた……つまりこーいう事かい、彼女に野外で淫らな事をさせて、彼女が公然ワイセツかなんかでパクられちまえば、彼女はもう俺のプロジェクトに参加できなくなる……それを狙って彼女にあんな事をさせてたって事か?」
 武田は首を傾げたままクルッと振り向き彼を見た。
 彼は慌てて武田から目を反らし、口を噤んだ。否定はしなかった。
「バカだね〜」
 武田が笑い出すと、それまでヴェルサーチのソファーで黙って煙草を吸っていたハーフの秘書が「ふん」と鼻で笑った。
「公然ワイセツなんかで逮捕されてたらボスは逆に大喜びよ。そこまでしてボスに撮らせたくなかったのなら、彼女に大震災のボランティアでもさせるべきだったわね」
 ギャハハハハハっという武田の馬鹿笑いがスタジオに谺した。
 武田は大袈裟に笑いながら涼子の肩を掴むと、「愛だね。これはまさに愛だ」と、涼子の体をベッドに倒した。
 武田は涼子の体を見下ろしながら言った。
「但し、彼の愛は、歪んだ愛だ。その愛は間違っている。あれじゃあ、ただのバカだ」
 武田の太い指が涼子の細い手首に絡み付いた。
 涼子の手首を優しく掴み、開いた股にそっと乗せると、「その綺麗な指で、可愛いプッシーをクリクリっと弄ってみようか……」と優しく囁いた。
 再び彼が叫んだ。涼子は困惑していた。青いTバックの上に置かれた手は氷のように固まってしまっている。
 武田はそんな涼子の顔を優しく覗き込みながら言った。
「女の身体ってのはね、性的興奮が高まっている時が一番美しいんだよね。だからキミの一番美しいシーンを見せて欲しいんだ……こんなに固くなってちゃ、リハーサルにならないよ……」
 武田がそう優しく微笑むと、彼が叫んだ。
「それがいつものテメェの手口なんだよ! そうやって下戸彩も吉永百合も食っちゃったんだろ! 芦田愛菜美みたいなガキや、泉ピン香みたいなババアや、IKKONみたいなオカマまでヤッちゃったって言うじゃねぇか、このド変態野郎!」
 彼の叫び声に武田が顔を顰めた。
「あぁー、こいつマジうるせぇ」と言いながらハーフの秘書に振り向いた。そして「どうする? うるさいから、もう殺しちゃう?」と首を傾げた。
 ハーフの秘書は、冷たい表情をしながら、ゆっくりと瞬きをした。黙ってスクッと立ち上がると、カツコツとヒールを鳴らしながら彼の前に立った。
「私が黙らせます……」
 そう言いながら彼の足下にゆっくりとしゃがんだ彼女は、呆然としている彼のズボンのボタンを素早く外し始めたのだった。

 武田の笑い声が響く中、彼の萎れたペニスがダラリと顔を出した。切腹した時の血が陰毛に溜り、乾いた血は、まるで唐辛子のパウダーのようにパラパラと床に散った。
「やめろ……」と睨む彼を無視して、ドクロのシルバーリングが光る彼女の指が上下に動いた。
 一瞬、涼子と彼の目が合った。しばらく見つめ合っていたが、突然彼は「ちっ」と舌打ちをすると、素早く涼子から目を反らした。
 見ると、彼のペニスは恐ろしいほどに勃起していたのだった。
 ハーフの秘書は、勃起したペニスからゆっくりと手を離すと、プルルンっとグロスの輝く唇を大きく開いた。
「しゃぶるのか?」
 武田が心配そうに聞いた。
 再び唇を閉じた彼女は、パンパンに腫れ上がった亀頭をジッと見つめながら「たまには、固いモノも食べたいわ」と呟いた。
 武田がプッと噴き出すと同時に、彼女は小さな口にペロッとペニスを呑み込んだのだった。

 プチャプチャ……カポカポ……
 粘着力のある音が響いていた。
 彼は眉間に皺を寄せたまま項垂れ、「やめろ……やめてくれ……」とブツブツ呟いていた。
 武田はニヤニヤと笑いながら涼子を見つめると、「っという事だから、さ、続けて」と涼子の手首をポンッと叩いた。
 涼子の頭の中には複雑な渦がグルグルと撒いていた。この状態でオナニーなどできるわけがないと思いながらも、しかし、彼が少女にしゃぶられているシーンを間近に見ていると、次第に膣の奥がウズウズと疼いて来た。
 涼子は、次第にそんな疼きに堪えきれなくなって来た。苦悩する彼の眉間には太い縦皺が浮かんでいた。ふと、正常位で激しく腰を振っている時の彼を顔を思い出し、膣奥の疼きに耐えられなくなって来た。
 涼子の指が恐る恐る動いた。青いTバックの上を滑った指は、コリッと固くなった敏感な部分を指先が捕らえた。
 細い腰が、まるで電気をあてられたようにピクンっと浮き、スッと鼻息が洩れた。
 武田と目が合った。武田は固くなっている涼子に柔らかく微笑むと、「キミの彼、イキそうなんじゃないの?」と意地悪そうに囁いた。
 涼子は横目で彼を見た。彼は項垂れていた。根本までペニスを銜え込み、ぶじゅぶじゅと卑猥な音を立てながらしゃぶる少女を、ギラギラした目で見つめていた。
「おい」と武田は彼に言った。
「ウチの秘書、まだ十四才だからお手柔らかに頼むぜ」
 武田がニヤリと笑うと同時に、しゃがんだ少女が尻を突き出した。丸く白い尻に食い込む黒いTバックの中では、シルバーリングが輝く少女の指がモゾモゾと動いていた。
 それを見た涼子はクラクラとした目眩を感じた。そして、今、彼が十四歳の少女にペニスを舐められていると思うと、指が自然に青いTバックの中に滑り込んでいった。
 武田がその指をジッと見ていた。武田のその視線は、膣奥でジクジクとしている疼きを更に強くさせたのだった。

 武田はスースーと荒い鼻息を涼子の太ももに吹き掛けながら、浮いたTバックの隙間から中を覗き込んでいた。
「指で開いて奥まで見せてよ……」
 武田が涼子の顔と股間を交互に覗き込みながら言った。首筋を武田のコーヒー臭い息でいやらしく撫でられた涼子は、ジリジリと陰毛を鳴らしながら指を下ろした。
 裂け目の表面はカラカラに乾いていた。しかし、そこを指で開くとハチミツのようなヌルヌルとした汁がトロリと指に絡み付いた。
「濡れてるね」
 武田は、あたかもそれを彼に聞かせるように大きな声で呟いた。
「パンツも脱いじゃえば」
 武田はTバックの腰の紐を指に引っ掛けながら笑った。
 涼子はソッと彼を見た。彼は苦しそうな表情をしながらも、憎しみの籠った目で涼子を睨んでいた。
(もう……終わりよ……)
 涼子は彼のその凶暴な目を見つめながら自分に呟いた。
(愛してる……でも、このまま行けばお互いが不幸になるだけ……)
 涼子はゆっくりと上半身を起き上がらせると、そのまま壁に凭れた。そしてTバックに手を掛けると、彼との決別の意味を込めてTバックを下ろしたのだった。

(つづく)

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