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青春の罰ゲーム2

2012/11/23 Fri 13:03




 銭湯の二階は、いつしか凄まじい事になっていた。
 ギシギシとベッドが軋む音と彩乃の喘ぎ声、そして美咲が激しくペニスをしゃぶる音と男達が吐き散らすハァハァという荒い呼吸。そんな獣じみた音が小さな部屋に響き渡り、唯ならぬ空気を漂わせていた。

 そんな中、何もしないままジッとしていた雄太も気が狂いそうになるほどに欲情していたが、しかし、隣りで震えている千夏を見ると、たちまちそんな欲情は、沸騰した鍋に水を入れたように消えた。
 千夏はウブだった。セックスの時、雄太が千夏の股間に舌を這わせようとしただけで泣いてしまうくらい、千夏はウブな女の子だった。
 だから雄太は、このゲームが過激になっていく事を最も怖れていた。もし千夏が罰ゲームとなり、それが下着を脱げなどという命令だったりすれば、たちまち千夏は動揺し、その場から逃げ出してしまうだろう。そうなれば、みんなとの関係がおかしくなるだけでなく、結果的には、自分と千夏の関係もおかしくなってしまうのだ。

 それが雄太は怖かった。千夏とせっかく付き合う事ができたというのに、こんな馬鹿げたゲームで千夏を失ってしまうのが雄太は堪らなく怖かったのだ。

 雄太は千夏の手をもう一度強く握り締めると、千夏の手を引き上げながら「帰ろう」と立ち上がった。
 項垂れる千夏の手を引いてドアに進むと、すかさずアキラが「おい」と呼び止めた。
 振り向くとアキラがニヤリと笑っていた。

「隣の部屋、使ってもいいけど、外出し禁止だからな。婆ちゃんがセーシの匂いを嗅ぎつけるからよ、ちゃんと中出しするかコンドーム使ってくれよ。」

 四つん這いで尻を突き出していた彩乃が「犬みたいな婆ちゃんだね」とケラケラ笑った。美咲にペニスをしゃぶらせていた海斗が「ゴムある?」と雄太の顔を見た。そして、彩乃の尻に腰をコキコキと振っていたアキラが「ないなら売ってやるよ。一個300円な」と押入れを指差した。
 雄太は、そんな言葉を全て無視して千夏の手を強く引っ張ると、振り返りもせず部屋を飛び出していったのだった。

 ギシギシと階段を鳴らしながら一階に下りると、お婆ちゃんが銀色に輝く斧を杖代わりにして立っていた。釜戸の前には不細工に割られた薪が乱雑に転がり、強烈な木の香りがツーンっと漂っていた。

 雄太が「おじゃましました」、とお婆ちゃんに小さく頭を下げながら釜戸の前を通り抜けると、お婆ちゃんは無言のまま斧を担ぎ、再び薪割りを始めたのだった。

 銭湯を出ると、そのまま二人は無言で歩いた。潰れた文房具店の角を曲がり、大きな街宣車が止まっている右翼の事務所を横切り、一昨日OLがストーカーに刺殺されたコンビニの前までやって来ても二人は黙ったままだった。
 彩乃の悶える声と、ペニスをしゃぶる美咲の舌音が、雄太の頭からいつまでも離れなかった。あんな声を千夏に出させてみたい、あんなふうに千夏にペニスを舐めさせてみたい、そんな欲望が雄太の胸をギシギシと締め付けていた。

 気が付くと、小学校の近くの児童公園の前に来ていた。夕暮れ時の児童公園は閑散としており、青い作業服を着た一人のホームレスが、ベンチでブツブツと独り言を呟いているだけだった。

 雄太は千夏の手を握ったまま児童公園に入った。そしてそのまま無言で奥の公衆便所に向かうと、千夏は何かを察したのか、いきなり足を止めた。
 雄太は無言で千夏の手を引っ張った。千夏は、まるで散歩を嫌がる小型犬が飼い主に鎖で引っ張られるかのように、イヤイヤをしながら腰を引いた。
 千夏が嫌がれば嫌がるほど、雄太は千夏を公衆便所に連れ込みたくなった。千夏が泣きそうな表情を見せる度に、雄太は千夏に酷い事をしてやりたい衝動に駆られた。
 雄太は今までにない力で千夏の手を引っ張った。千夏の体がよろけた隙に、一気に公衆便所へと飛び込んだのだった。

 薄暗い男子便所の床には、開けっ放しの窓から入って来た枯れ葉がびっしりと敷き詰められていた。そんな枯れ葉をガシガシと踏みしめながら奥の個室へと進むと、半ベソをかいた千夏が「こんな所じゃヤダ」と声を震わせた。

 何度も書くが、千夏はウブだった。見た目は今どきの女子高生だが、根はとても真面目で、そのぽっちゃりとした体はまだ充分に幼く、男性経験は雄太一人だけだった。

 そんな千夏とのセックスは実に味気のないものだった。
 ベッドに入る前には必ずシャワーを浴びさせられ、ベッドに入ると直ぐさま電気を消された。何も見えない真っ暗な部屋では、ひたすら抱き合うしかなく、フェラやクンニは悉く拒否された。
 体位は正常位のみと決められていた。中出し腹出しは厳禁され、最初からコンドームの着用を厳しく命じられていた。
 そんなセックスは、まるで皇室マニュアルに書かれているような素っ気ないセックスだった。そんなセックスしかさせてもらえなかったため、常に雄太の中では、千夏に対する卑猥妄想が膨らんでいた。千夏をAVのように滅茶苦茶に犯したい。狂ったように悶える千夏が見てみたい。そんな妄想を常日頃から描いてはいたが、しかし、雄太にそんな度胸は無く、結局、それはいつもセンズリのネタに使われてしまうのだった。

 しかし、この日の雄太はいつもと違った。アキラや海斗に刺激を受けた雄太の頭の中では、卑猥な光景がグルグルと渦を巻いていた。
 目を閉じたままペニスをしゃぶっていた美咲と、自ら腰を振りながら喘いでいた彩乃。気持ち良さそうにハァハァと息を吐いていた海斗と、彩乃の尻を鷲掴みにしながら腰を振っていたアキラ。
 そんなシーンのひとつひとつが雄太の脳を刺激し、日頃は至ってノーマルだった雄太の性欲をアブノーマルに変えてしまっていたのだった。

 落書きだらけの個室の中に、千夏を強引に引きずり込んだ。
 実にリアルなペニスが描かれた壁に千夏の背中を押し付けキスをした。水膨れのように柔らかい唇を舌でこじ開け、前歯をガチガチと当てながら舌で口内を掻き回すと、さっき千夏がアキラの家で飲んでいたリンゴジュースの味がした。
 ウグ、ウグ,と口内で唸りながら抵抗する千夏のスカートを乱暴に捲り上げた。ツルツルの太ももを撫で回しながら指先をパンティーの中に忍ばせ、陰毛をジョリジョリと鳴らした。
 雄太の肩を鷲掴みしながら抵抗する千夏を無視して、太ももの隙間に二本の指を潜り込ませた。そして太ももの中で指を『く』の字に曲げた瞬間、いきなり指先がヌルッとした生温かい感触に包まれた。

(濡れている!)

 雄太は激しい衝撃を受けた。あれほどセックスに対してクールな千夏が、今こうして熱く濡れているのだ。
 雄太は乱暴に千夏のパンティーを太ももまで下げた。クロッチに張り付いていたオリモノシートが便所の蛍光灯に照らされ、大量の蜜をテラテラと輝かせていた。
 目眩を感じるほどの興奮を覚えた雄太は、無我夢中で千夏の熱い穴の中を弄った。グジョ、グショ、と、卑猥な音が響くくらい激しく掻き回した。
 そうしながらも雄太は、複雑な気分に包まれていた。千夏のここがこんなに濡れているのは感動を覚えるほどに嬉しかったが、しかし、なぜここがこれほどまでに濡れているのかを考えると、針金で胸をギリギリと締め付けられるような嫉妬に襲われた。
 アキラのペニスが行ったり来たりする結合部分を見せられて興奮したのだろうか。それとも、美咲にしゃぶられる海斗のペニスを見て欲情したのだろうか。
 千夏が濡れた原因は、きっとそのいずれかだろうと思うと、千夏が自分以外の男を見て興奮したという事実に、激しい怒りと嫉妬を覚えた。

(友達のエッチなシーンを覗き見してこんなにマンコを濡らしてたなんて……おまえは本当はドスケベな牝豚女なんだろ……本当はおまえもみんなが見ている前でこうして欲しかったんだろ、そうだ、絶対にそうだ、そうに決まっている)

 そう心を揺るがされながら、狂ったように指をピストンさせていると、不意にポケットの中で携帯電話が鳴り出した。
 雄太は携帯を無視して、千夏の左足を右腕に持ち抱えた。このままここでチンポを入れてやるんだと自分を奮い立たせながら、ズボンのチャックをギギギッと下げると、今まで蠢いていた千夏の体が突然ピタリと止まった。

 諦めたのか?……と、そう思いながらゆっくりと唇を離すと、いきなり千夏が雄太の頭を両手で抱きかかえ、雄太の耳に唇を押し付けながら「見てる……」と囁いた。
「えっ?」と驚きながら、雄太は慌てて後に振り返った。
 個室のドアの上から、モサモサの髪をした中年男の顔が半分だけ出ていた。死んだ魚のように赤く濁った目が、まるでマネキン人形のようにジッと止まったまま雄太達を見つめていた。
 それは、さっき公園の入口のベンチでブツブツと独り言を呟いていたホームレスだった。その男は精神に異常をきたしているのか、雄太をジッと見つめたまま何やらブツブツと呟いている。
 雄太は、連続して背筋をゾッとさせながら呆然としていた。男の、その延々と続く独り言の中に、殺す、死ね、豚、北朝鮮、という言葉が交じっている事が更に気味悪く、雄太の体は恐怖で凍りついてしまっていた。

(早くここから逃げ出さないと大変な事になる……)

 そう思うと同時に、この男に腹を刺されてもがき苦しむ自分の姿と、血まみれの個室で猟奇的に犯されまくる千夏の姿が鮮明に浮かび上がり、雄太を酷く焦らせた。
 すると、ふと、ポケットの中で携帯電話が鳴りっぱなしだった事に気が付いた。雄太は男をジッと見返したままソッとポケットに手を入れ、鳴り響く携帯電話を取り出した。
 震える手で男に携帯を突き付けた。水戸黄門の印籠のように鳴り響く携帯を見せつけると、わざと大きな声で「もしもーし!」と電話に出たのだった。

 電話の相手はアキラだった。アキラは、大きな声で電話に出た雄太に驚きながらも、「今、どこにいるんだよ」と、呆れた声で聞いてきた。
 雄太は、これ見よがしに「今、児童公園の公衆便所の一番奥の個室にいるぞ」と叫ぶと、その勢いのままドアをおもいきり蹴飛ばした。
 ドガン! っという凄まじい音が響くと同時に、ドアにぶら下がっていた男の体がストンっと落ちた。それはまるで、命尽きた蝉が木からポトリと落ちるようにあっけなかった。

 静まり返った個室に、「どうして途中で帰っちゃったんだよ」というアキラの声が携帯から響いて来た。ハァハァと肩で息をしながらドアを睨んでいる雄太の後では、千夏がズリ下げられていたパンティーを、恥ずかしそうに元に戻していた。

「ああ……それは……急にウンコがしたくなっちゃってさ……」

 咄嗟にそう答えると、アキラはケラケラと笑いながら、「そんな所までウンコしに行かなくてもウチですればいいじゃん」と言った。

 ドアの向こうで、枯れ葉がガサガサっと蠢く音が聞こえた。恐らく、ひっくり返っていた男がゆっくりと起き上がっているのだろうと思うと、反撃される前に一刻も早く逃げ出さなくてはと焦った。

「戻って来るんだろ?」

 アキラが言った。
 雄太は千夏の手をギュッと握り締めながら、「ああ」とアキラに答えた。

「了解。まだ最終ラウンドが残ってんだからさ、すぐに戻って来いよな」

 アキラがそう電話を切るなり、雄太は千夏に「行くぞ」と呟いた。
 千夏が顔を強張らせながらコクンっと頷くと同時に、雄太はドアの鍵を開け、おもいきりドアを蹴飛ばした。

 いきなり、ゴン! っという鈍い音が公衆便所に響いた。開いたドアの前の床には、両手に頭を抱えた男が海老のように丸まっていた。どうやら男は、蹴破られたドアに頭を直撃されたらしい。

 うぅぅぅぅぅ………と唸っている男の体を雄太が飛び越えた。千夏も学校のグラウンドの水溜まりを飛ぶようにしてピョンっと飛び超えた。
 ひっくり返る男の股間には、真っ黒なペニスがダラリと顔を出していた。紫色の亀頭は、いやらしい汁でテラテラと輝いていた。
 雄太は千夏の手を引いて公衆便所を飛び出した。
 雨に湿った砂場を駆け抜け、児童公園の前の路地を突き進むと、『赤色日教組打倒』と書かれた巨大な右翼の街宣車が見えて来た。

(最終ラウンド………)

 不意にアキラの言葉が甦ってきた。同時に、ヌルヌルに濡れた千夏の陰部の感触が指に甦って来た。
 潰れた文具店の角を曲ると、『松の湯』と書かれた青い暖簾が電信柱の裸電球に照らされているのが見えた。

 銭湯横の倉庫から中に入ると、強烈な薪の匂いが鼻を突き刺した。焚き場の釜はゴォォォォォォっと轟音を上げ、薄暗い倉庫のコンクリート壁には、釜戸から洩れる炎の光がメラメラと反射していた。

 ふと、そんな釜の前で誰かがしゃがんでいるのが見えた。男は何か思い詰めたような表情で炎をジッと見つめながら、燃え滾る釜の中に何かをひとつひとつ投げ捨てていた。
 その男が誰なのかがわかったのは、雄太達がその男の背後を横切ろうとした時だった。メラメラと揺れる炎が反射していたその横顔は、まさしくアキラのお父さんだった。

 アキラのお父さんは雄太達の気配にまったく気付いていなかった。その足下には、大量の衣類のような物がギッシリと詰め込まれた袋がポツンと置いてあり、アキラのお父さんは、その中からそれを一枚ずつ取り出してはジッと眺め、そして名残惜しそうにしながら釜の中に投げ入れていた。
 雄太が声を掛けようとした瞬間、突然激しくなった釜の炎がその袋を照らした。雄太の目に、袋の中身が飛び込んで来た。その中身は、明らかに女物のパンツだった。

 気配に気付いたアキラのお父さんが、「あっ」と驚きながら慌てて振り返った。雄太が戸惑いながら「おじゃまします」と挨拶をすると、アキラのお父さんは「ああ、いらっしゃい」と酷く慌てながら、その女物のパンツが詰まった袋をしゃがんだ股の間に隠した。
 しかし袋は隠せても、今、釜の中に入れたばかりのパンツは、ブスブスと燻りながらも、まだその原型を留めていた。炎に包まれたパンツは激しい炎の光によって更に鮮明に浮かび上がり、誰が見てもそれが女物の下着だという事がわかった。

 アキラのお父さんは、慌てて釜の中を鉄の棒で掻き回し、それを轟く炎の中に葬った。釜の中から無数の火の粉を舞い上がり、アキラのお父さんはそれを慣れた手つきで払いながら、「女房に燃やしてくれって頼まれちゃってね……」と笑った。

「本当は、ここでこんな物を燃やしたらダメなんだけどね、ほら、最近、この辺で下着泥棒が多発してるでしょ。この間も、ウチのゴミ袋が漁られて、その中から女房の下着だけがちゃっかり盗まれてたんだよ……まったく、困った世の中になったもんですよね……」

 アキラのお父さんは支離滅裂にそう言いながら、更に釜の中を掻き回しては、意味もなく「はははは」と笑った。

 確かに、ここ最近、この町内では下着泥棒の被害が相次いでいた。その被害者のほとんどが女子高生という事から、警察では、町内の家族構成をよく知る者の犯行だと断定し、捜査範囲を町内の住人に絞っていると、今朝の朝礼で教頭がそう言っていた。

「だからね、こうして妻の下着だけはここで燃やす事にしてるんだ。でも、これは誰にも内緒にしておいて下さいよ、銭湯の釜戸で家庭廃棄物を燃やしてたなんて噂になっちゃうと、また保健所から叱られちゃうからね」

 アキラのお父さんは、またしても「はははは」とわざとらしく笑いながらそう言ってはいたが、しかし、釜の中に投げ捨てられた下着にはキティーちゃんのプリントが施されており、どう見てもアキラのお母さんが履くわけがないと思われるパンツだった。

 倉庫を抜けて中庭に出ると、夕日に染まった真っ赤な空に、錆だらけの煙突が聳え立っているのが見えた。そこからモクモクと昇る白い煙が、まさか盗んだ下着を焼いた煙だとは誰も知らないだろうと思うと、雄太は何やらとてつもなく空しさを感じた。

 中庭から裏口に入り、時代劇に出てきそうな細く急な階段を上がった。
 二階へ行くと、みんながコンビニ弁当を食べていた。あれだけ破廉恥な行為を繰り広げていた彼らからは、既に淫らな性欲は消え去り、今はただひたすらに弁当を黙々と頬張る食欲だけが漲っていた。
 アキラが、「おまえらのもあるよ」、と、口をモグモグさせながら唐揚げ弁当とオムライスを雄太達の前に投げた。それは、いつもこの時間になるとお婆ちゃんが裏のコンビニから貰って来る賞味期限切れの廃棄物だった。

 この銭湯では、つい先日までこの弁当が番台で売られていた。もちろん賞味期限は改ざんされ、値段は3割引だった。
 いつもの常連客にはなかなか好評だった。そのうち缶ビールまで売られるようになり、風呂上がりのおっさん達が、脱衣場で弁当を食べたり缶ビールを飲んでいるその光景は、まるで下町の大衆居酒屋のようだった。
 少ない常連客以外、誰もやって来ない銭湯では、こうして少しでも売上げを上げなければやっていけなかったのだが、しかし、そんなお婆ちゃんのサイドビジネスも、たったの数ヶ月で保健所に見つかり、「今度やったら営業許可を剥奪するぞ!」と大目玉を喰らってしまったのだった。

 この弁当は、そんなお婆ちゃんのサイドビジネスの名残りだった。
 雄太達が弁当を食べ終わると、さっそくアキラがテレビ台の下からWiiを取り出し、マリオカートを立ち上げた。

「最終ラウンドの命令を書くのは、トータル一位の者だから俺だな」

 アキラは独り言のようにそう呟くと、唇の端に銜えた煙草をスパスパさせながら、小さなメモ用紙に罰ゲームを書き始めた。

 雄太は千夏の顔をソッと見た。陰部が濡れているのを雄太にバレた事が気まずいのか、千夏は雄太からサッと目を反らした。
 彩乃は部屋の隅で乱れた化粧を直していた。そしてファンデーションを頬にパタパタさせながら、「この間のコンビニみたいなのはやめてよ。私、あの時、マジに警察に捕まりそうになったんだからね」と、鏡越しにアキラを見つめながら訴えていた。

 因みに、彩乃の言う、その「この間のコンビニみたいなの」というのは、コンビニの駐車場で小便をしてくるという罰ゲームだった。
 ゲームに負けた彩乃は、アキラが書いたその命令に従い、隣町のコンビニの駐車場で小便をした。
 コンビニの店内では、ショーウィンドゥ越しに大勢の客達がそれを見ていた。いきなりチョロチョロと小便を始めた彩乃の異常行為を、客の誰かが通報し、危うく彩乃は逮捕される所だった。

 その時の事を思い出した海斗は、ニヤニヤと笑いながら「ありゃ、凄かったよな」と呟いた。そして、隣りに座っていた美咲を見つめながら「こいつ、今度もきっと、とんでもねぇ罰ゲームを書いてんだぜ」と笑った。

 罰ゲームを書き終えたアキラが、そのメモをサッと二つ折りにした。そして、みんなをぐるりと見回しながら、「あったりめぇよ。なんてったって地獄のファイナルだからな」と、不敵にニヤリと笑った。

 地獄のマリオカートの最終ラウンドが、今、始まろうとしていた。

(つづく)

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