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妻の昼寝・前編

2012/11/17 Sat 04:25

妻の昼寝1




 秋晴れの午後だった。稲村ケ崎駅のホームに出るなり爽やかな潮風に吹かれ、ホームに立つ私は思わず深呼吸した。サザンの桑田の映画の舞台ともなったこの町は、明るい日差しと穏やかな空気に優しく包まれていた。

 踏切を渡り、セブンイレブンの角を曲がり、ペンションのような駐在所を横目に通り過ぎた。狭い路地をひたすら歩いた。右手には江の電の線路が走り、左手にはキラキラと輝く海があった。静まり返った午後の閑静な住宅街には、私の靴底だけがコツコツと鳴り響いていた。
 こんな時間に帰って来たのは初めてだった。
 いつもこの道は真っ暗だった。常に遠くの方から暴走族の爆音が響き、夜の海岸で騒いでいるサファー達のカーステレオの音がシャカシャカと響いていた。自販機の明かりだけが異常に輝いている夜のこの道は、不快な騒音と台風のように吹き荒む潮風で、いつも殺伐とした雰囲気を醸し出していた。
 しかし、昼間のこの道は穏やかだった。歩く度に海の光が乱反射し、まるで海外のリゾート地にいるような気持ち良さだった。

 穏やかな潮風に包まれながら自宅の門扉を開けた。目の前に広がる青い海を眺めながら狭い石階段を下りていると、ふと、瑞穂は毎日こんな景色を眺めながら生活しているんだなと思い、おもわず笑みが溢れた。
 石階段を下りると、爽やかな柑橘系の香りが私を出迎えてくれた。
 初めてこの家に来た時、玄関前に漂っているこの香りに、おもわず私と瑞穂は顔を見合わせて微笑んだ。ここに案内してくれた不動産屋の青年に「これはゆずの木ですか」と聞くと、青年は「これは『ポメロ』の木ですね」と教えてくれた。



 私達夫婦が稲村ケ崎のこの古い平屋を購入したのは一年前だった。
 一年前までは、横浜の高層マンションの七階でコンクリートのビルに囲まれながら暮らしていた。
 生活は、断然横浜の方が便利だった。会社にも近く、何を買うにしても徒歩五分以内だった。
 そんな便利なマンションを売って、海の見える静かな町に引っ越しましょうよと言い出したのは瑞穂だった。瑞穂は、結婚する前から、海の見える古い小さな屋敷に住みたいといつも言っていたのだ。
 私は、そんな瑞穂の提案に優しい笑顔で頷いた。
 瑞穂がそう言い出したのは産婦人科の白いベッドの上だった。それは、瑞穂が子供を流産したその日の午後だった。

 私が瑞穂と出会ったのは、今から二年前、私が勤める横浜の会社だった。
 瑞穂は、派遣会社から来ていたテレフォンアポインターだった。
 スレンダーなくせに胸が大きく、切れ長の目は妖艶で、時折ゾクッとする色っぽさを放っていた。しかし、それでいて妙に愛らしく、その笑顔は無知な美少女のようだった。
 そんな瑞穂が男性社員達から噂されるようになるのは時間の問題だった。特に私たち営業部は、テレアポの派遣社員と接触する機会が多い事から、営業部の男達はこぞって瑞穂を狙っていた。
 私もそのうちの一人だった。
 しかし、私は引っ込み思案な性格だったため、松尾や金原や東条のように気軽に声を掛けたり、飲みに誘ったりという事ができなかった。唯一、瑞穂と会話できたのは業務的な事ばかりで、いつも淡々と新商品の説明をするだけだった。
 そのうち、松尾と瑞穂の関係が怪しいと社内で噂されるようになった。松尾は古い日活映画に出て来るような二枚目で、女子社員達からはダントツの人気だったため、その噂は瞬く間に社内を駆け巡った。
 しかし、営業部の私達は知っていた。松尾はたった一度だけしか瑞穂を飲みに連れて行った事がないという事を。
 私たち営業部の中では、松尾ではなく東条が怪しいと見ていた。
 東条は、一見爽やかなスポーマンタイプの男に見えるが、しかし、なかなかの遊び人だった。誠実そうな男に見せかけ、実はとんでもない毒牙を持っているという危険な男なのだ。
 その毒牙というのは、その特異性な性癖の事だった。彼は、いわゆるサディストと呼ばれるタイプの男で、ベッドの上ではあらゆる器具を使いながら女を責め、泣き叫ぶ女の肛門にペニスを挿入しては感じるという変態なのであった。
 そんな東条の毒牙を知っていた私たち営業部の男達は、東条と瑞穂が怪しいという第一報を聞いた瞬間、酷く落胆した。
 それは、一度でも東条に弄られた女というのは、もはや普通の女ではなくなってしまうからだ。
 その証拠が、以前受付にいた吉野佳織という女の子だった。彼女も東条の毒牙によって普通の女ではなくなってしまった一人だった。
 吉野佳織は、有名女子大上がりの、とっても明るくて可愛い娘さんだった。が、しかし東条と付き合うようになってから、どこか荒んで見えた。
 東条とはわずか二ヶ月しか付き合っていなかった。そして、東条と別れた直後に会社を辞めてしまった。
 会社を辞めた原因は、東条の子供を孕み、中絶したためだと噂されていたが、東条はそれを全面否定していた。
 あるとき、そんな吉野佳織を、別の部の者が偶然サイトで発見した。それは、卑猥な写真が投稿されている画像掲示板サイトというやつで、素顔を晒した全裸の吉野佳織が荒縄で縛られている写真が掲載されていたのだった。
 それを見た私たち営業部の者は、誰もが、やっぱりな、と嫌悪を感じた。しかし、当の本人の東条は、その画像を涼しい顔で眺めながら、「いよいよこいつもド壷にハマったな」と笑っていた。
 そんな東条と瑞穂が付き合っているという疑念を抱いた私たち営業部は、その後、瑞穂とは一線を置いていた。松尾も金原も、以前のように瑞穂を飲みに誘わなくなった。
 しかしある時、東条が私たちに変な事を聞いて来た。

「テレアポの瑞穂ちゃんが専務の女だって噂があるけど本当か?」

 私たちはそれを機に、東条と瑞穂との関係を問い詰めた。
 東条は寝耳に水といった表情で、「まだヤってねぇよ」と言い切った。東条は変態だが嘘つきではない。
 私たちは、瑞穂が東条とは何も関係ない事を知ると、今まで溜っていたモヤモヤが一気に消えた。が、しかし、今度は専務の女という新たなモヤモヤが生まれ、私たちは更にモヤモヤするようになっていた。
 そんなある日、私は新商品の説明をする為に、テレアポのみんなを商品開発部の会議室に呼び出した。その説明会終了後、会議室を出た直後に、私は瑞穂に呼び止められた。

「お話ししたい事があるんですけど」

 廊下に立つ瑞穂は、丸い尻をモゾモゾさせながら、大きな目で私を見つめていた。

「なに?」

 私がそう聞くと、瑞穂は「ここではちょっと……」と言いにくそうに口ごもった。
 その夜、私と瑞穂は横浜マリンタワーの一階にあるトラディショナル・バーで会う事にした。当然、この事は営業部の面々には内緒だった。
 まさか瑞穂の方から誘って来るとは思ってもいなかった。バーのカウンターに瑞穂と並んで腰掛ける私はかなり動揺しており、奥歯に詰まったピスタチオのカスを、いつまでも取れないままモジモジしていた。
 瑞穂の相談と言うのは専務の事だった。
 私は、ほら来た、と思いながらも、不倫の相談など何と受け答えすればいいのかと更に動揺していた。
 しかし、それは不倫の相談ではなかった。なんと専務からセクハラされて困っているという相談だったのだ。
 これには更に更に動揺した。てっきり専務と付き合っていたものと思っていたため、まさかそんな変化球が来るとは夢にも思わなかったのだ。動揺しながら、飲み慣れないドライ・マティーニをチビチビと飲んでいた。瑞穂は目に涙を浮かべながら、専務のセクハラを必死に訴えていた。
 しかし、瑞穂のいうセクハラは、それが果たしてセクハラに値するものなのかどうかというくらいに稚拙なものだった。
 例えば、専務と廊下で擦れ違う度に、専務の視線が瑞穂の胸にずっと注がれているとか、満員のエレベーターでたまたま二人が隣同士になった時、専務の手が瑞穂の太ももに触れていたとか、まぁ、そんなレベルの話しばかりだった。
 それでも瑞穂は真剣だった。目に涙を浮かべるくらい真剣に私に訴えていた。
 だから私も、彼女のその稚拙な相談を真剣に聞いてやった。
 それからというもの、いつも会社が終わるとこのバーにやって来て、まるでカウンセラーのように彼女の訴えを聞いてやった。
 そんな交流が一ヶ月ほど続いていた。
 気が付くと私と瑞穂は付き合っていた。毎晩のようにこのバーで顔を合わせているうちに、いつしか二人は同じ朝を迎えるようになっていたのだった。

 その一年後、私たちは結婚した。
 私が二十八才、瑞穂が二十四才。
 結婚式では、東条を始め、瑞穂を狙っていた営業部の面々が、長渕剛の『乾杯』を歌ってくれた。その歌声は、まるで軍歌のように勇ましく、もはや怒鳴り声に近い怒声のようだった。
 結婚後、瑞穂は派遣会社を辞め、専業主婦となった。
 私は、八年間住み続けた日吉の賃貸マンションを引き払い、関内にある3LDKの高層マンションを買った。
 資金は銀行から三千五百万借りた。昆虫のような顔をした銀行員に、今後、四十年間払い続けて行かなければならないと告げられると、睾丸にゾッと寒気が走った。
 結婚してすぐに子供ができた。思っていたよりも早くできた。
 親父やお袋は初めての孫に狂喜乱舞した。もちろん、私にとっても瑞穂にとっても初めての子供であるため、狂喜乱舞したのは言うまでもない。
 しかし、その四ヶ月後、子供は呆気なく流れた。
 その幸せは一瞬にして消えた。親父はウツ病となり、お袋は、何やら怪しい新興宗教にハマった。
 私もショックだった。まさか流産などという酷い仕打ちを受けるとは思ってもおらず、人知れず涙を噛み締めながら本気で神を恨んだものだった。
 しかし、一番ショックだったのは瑞穂だったろう。
 流産後、精神的ダメージが大きかったためか、医師に入院を勧められ、その日から一週間、瑞穂は病室で貝のように閉じこもった。
 瑞穂は、大好きなロンドンハーツがテレビでやっていても、布団の中に潜り込んだまま死んだように黙りこくっていた。誰が見舞いに来ても口を開こうとせず、ぼんやりと天井ばかり見つめていた。
 しかし、そんな瑞穂が突然ポツリと呟いた。春の爽やかな風が注ぎ込む窓の外をぼんやりと見つめながら、「海の見える静かな町に引っ越しましょうよ」と呟いた。それは入院して三日後の事だった。
 私は頷いた。「鎌倉がいい」と目に涙を浮かべながら笑う瑞穂に、私はうんうんと何度も頷いた。
 四十年間払い続けなければならないローンが頭を過った。鎌倉からだと会社までどれだけかかるんだよと背筋がゾッとした。しかし、私はひたすら笑顔を浮かべながら頷いていたのだった。

 それがきっかけで、その年の秋、稲村ケ崎の高台にポツンと建つ築八十年の平屋を購入した。
 三千五百万円で購入した関内の高層マンションは、わずか一年しか住んでいないというのに、たったの一千万円しか値がつかなかった。その年に東北大地震が発生していたため、その影響からか高層マンションの価格は暴落していたのだ。
 しかし、この稲村ケ崎の平屋は八百万円だった。だから、実際には大損をしているのに、二百万円得した気分になっていたのだった。



 緑の葉が鬱蒼と生え茂るポメロの奥に、かなり年期の入った玄関戸の真っ黒な木目が見えた。
 こんな時間に帰って来たら瑞穂はどんな顔をするだろうと一瞬足を止めた。
 会社をクビになったのかと心配するだろうか。それとも、早く帰って来た事に喜び、せっかくだから海岸を散歩しましょう、などと笑ってくれるだろうか。いや、もしかしたら、面倒臭い奴が帰って来たよと顔を顰めるかも知れない。
 私はそんな事をあれこれと思いながらクスッと微笑んだ。そして、ここは、敢えて玄関から入らず、中庭からソッと居間に忍び込んで瑞穂を驚かせてやろうなどと、実に幼稚な作戦を企んだ。
 ポメロの葉を静かに掻き分けながら便所の横の通路に入った。
 この家の便所は未だ汲み取り式便所のため、日陰の薄暗い通路には何ともいえない糞尿の香りがツーンっと漂っていた。
 そんな狭い通路には、深緑の苔がびっしりと生えていた。おかげで足音を消す事ができたが、しかし、歩く度に足下ではカマドウマがピョンピョンと飛び跳ね、昆虫が大の苦手な私は、悲鳴を堪えるのに必死だった。
 中庭に出ると、日差しも空気も実に清々しかった。中庭を埋め尽くす様々な樹木は、二十年前にここに住んでいた人が育てたものだった。
 瑞穂はこの荒れ果てた中庭がお気に入りだった。小綺麗なガーデニングはこの家には似合わないと、せっかく不動産屋が手配してくれた庭師を断ってしまうほどだった。
 確かにこの荒れ果てた中庭とこのボロ屋はマッチしているが、しかし昆虫嫌いな私には堪ったものではなかった。蚊、蛾、てんとう虫を始め、やたらと機嫌の悪いカマキリに、いきなり顔に向かって飛んで来るカマドウマとバッタとコオロギ。それらが狭い中庭を縦横無尽に暴れ回り、常に私の精神を乱していた。
 そんな中庭をソッと覗くと、大きな楓の木の向こうに白い肌が見えた。窓を開け放った客間の畳で、瑞穂がスヤスヤと昼寝をしていたのだ。
 一瞬ドキッとした。だらしなく開けたワンピースから見え隠れする人妻の白い太ももと、築八十年の古民家が作り出す独特な光と陰が濃厚な昭和のエロスを醸し出し、私は思わず息を飲んだ。
 しばらくの間そこに立ち止まり、楓の葉の隙間から眠る瑞穂を見つめていた。己の妻ながら、なんと美しい光景だと見とれてしまっていた。
 海からの強風で斜めになったクロマツの枝で、二匹のスズメが小首を傾げながらそんな私を見ていた。
 私は、乾いた喉にゴクリと唾を飲み込みながら中庭を進んだ。足音を忍ばせながら楓の木から顔を出すと、微かに瑞穂の寝息が聞こえた気がした。
 瑞穂が寝転がる足下にソッと腰を下ろした。余程気持ちが良いのか、瑞穂は私の存在に全く気付かないまま寝息を立てていた。
 私は、背筋をゾクゾクさせながら、眠る妻を眺めていた。
 真っ白な太ももには傷ひとつなく、中庭の木立ちから漏れる太陽の日差しにテラテラと輝いていた。
 太ももの曲線の上には丸い尻がポコッと突き出していた。それはまるで、限界まで膨らませた風船のようにパンパンに張りつめ、素直に、そこに顔を押し付けたいと思わせた。
 胸に溜った欲望をふーっと吐き出した。息を吐くと同時にズボンの中で固くなっていた亀頭にズキンっと衝撃が走った。
 唯ならぬ興奮に包まれた私は、息を殺したまま前屈みとなり、乱れたワンピースの胸元を覗き込んだ。
 横向きに寝ている為、大きな乳肉は床に向かってダランっと垂れていた。ブラジャーの隙間から小豆色をした突起物がポツンっと見える。
 そんな瑞穂の柔らかそうな乳肉を見つめていると、ふと、一昨日の深夜に見せつけられた悩殺的なシーンを思い出した。
 瑞穂と言う女は、日頃、セックスに対しては冷淡なほどに淡白な女だったが、しかし、生理が近付くと、そんな性格は別人のように豹変した。
 一昨日もそうだった。風呂から上がった瑞穂は、寝室に入って来るなり私の布団に潜り込んできた。
 無言で私の腰に跨がり、上半身だけムクリと起き上がると、小悪魔的な笑顔を浮かべながら私をジッと見下ろした。

「どうしたの?……」

 私は文庫本を枕元にソッと置きながら聞いた。瑞穂の生理が近付いている事は知っていた。そろそろ来る頃だろうと予感していたのだ。
 瑞穂はその肉厚的な唇からハァハァと小さく息を吐きながらTシャツを脱ぎ捨て、細い腰をクネクネと動かしながら自分の股間を私の股間に擦り付けた。
 ホルスタインのような乳を私の顔の真上でタプタプと揺らしながら私の顔を覗き込み、「いじわる」と小さく微笑むと、片方のブラジャーを指で半分ずらした。そして、溢れ出そうな乳肉を限界に保ちながら、「触って……」と、小さく囁いたのだった。

 縁側にぶら下げられたままの風鈴が、季節外れな音を鳴らしていた。その風鈴は、以前ここに住んでいた人の者らしく、ここに引っ越して来た時からずっとそこにぶら下がったままだった。
 瑞穂の胸の谷間を覗き込んでいた私が体をソッと起こすと、それまで止まっていた空気が動いた。一瞬、瑞穂の甘い体臭を嗅いだ気がした。
 瑞穂の足下で胡座をかき、改めて瑞穂の全身を眺めた。いつも生理前になると、瑞穂の全身からは何ともいえない妖艶な体臭が漂い、私を獣のように狂わせていた。それは、甘く切ない香りでもあり、饐えた卑猥な匂いでもあった。
 ふと見ると、瑞穂の左手には携帯電話が握られたままだった。
 恐らく誰かと電話したまま眠りに落ちたのだろう、携帯電話は開いたままだった。
 それは瑞穂の癖だった。瑞穂には、眠たくなると、いつでもどこでもいきなり寝てしまうという困った癖があり、尚かつそれは、一度寝てしまうとなかなか起きないという実に厄介なものだった。
 電車の中でもタクシーの中でも、例え騒がしいファミレスであってもそうだった。一番困ったのは歯医者の待合室で寝てしまった事だ。あの時は、近所の歯医者から「どれだけ起こしても起きませんので迎えに来て下さい」と電話を貰ったほどだった。

 瑞穂の足の裏はうっすらと汚れていた。
 築八十年の古い床板はどれだけ掃除してもすぐに汚れた。毎朝、畳や床板を綺麗に磨いていても、夕方ともなれば、もう足の裏は真っ黒に汚れてしまうのだ。

「きっとどこかに『まっくろくろすけ』が隠れているのよ」

 ジブリ好きの瑞穂はそう笑うが、しかし、常に靴下の裏が真っ黒な私にしたら堪ったものではなかった。
 私はそんな古畳に顔を押し付け、うっすらと汚れた瑞穂の足の裏に鼻を近づけた。犬のように鼻を鳴らしながら、指の隙間や固い踵を嗅ぎ回った。
 そのままツルツルの脛やムチムチの太ももに鼻を移動させ、脚全体を嗅ぎ回った。
 瑞穂の脚は誰もが認める美脚だった。街を歩けば、大概の男達が擦れ違い様に横目で瑞穂の脚を見た。会社にいた時も、瑞穂の脚を見るためだけに、わざわざテレアポ室へとやってくる男性社員達がいたほどだった。
 そんな瑞穂の美しい脚には、甘い香りがほんのりと漂っていた。それは、いつも風呂上がりに両脚に塗り込んでいる、フランス製の乳液の甘い香りだった。

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 ムチムチの太ももに鼻頭をグイグイと押し付けながら、柔らかい太ももの裏へと移動した。
 押し付けた鼻頭は太ももの肉に食い込んでいた。しかしこの程度で目を覚ますような瑞穂ではなかった。彼女のレベルは、震度五でモゾモゾと目を覚まし、震度七でムクリと起き上がっては「なにこれ?」と辺りを見回す、そのくらいのレベルなのだ。
 私は、そんな瑞穂の太ももの裏に顔を押し付けながらワンピースの中を覗き込んだ。
 履き古したクリーム色のショーツが見えた。彼女はそのショーツが随分と気に入っているらしく、結婚前から履き続けていた。
 そんなクリーム色のショーツは、丸い大きな尻をぴっちりと包み込んでいた。
 ワンピースの中にソッと人差し指を入れ、その丸くて大きな尻肉をツンツンっと押してみると、想像以上の弾力性が指に伝わって来た。
 しかし私は、この尻肉が生クリームのように柔らかい事を知っていた。今は小さいショーツに押し込まれてムチムチしているが、そのショーツから解放されたとたん、まさに蒟蒻ゼリーの如くプルプルと震え、マシュマロのように柔らかい尻だという事実を、夫の私は十分に知り尽くしていた。
 瑞穂の尻は最高だった。いや、乳も脚も申し分ないほどに良かったが、しかし、この尻の魅力には敵わなかった。
 色、形、肌触り、そして肉感。そのどれをとっても最高だと断言できた。
 そう断言できる私は、時々この尻肉に包まれてイク事があった。
 それは、俗にいう『尻コキ』というもので、瑞穂がセックスをしたがらない時など、その尻肉だけを貸して貰うのだ。
 私が仰向けに寝転がり、その上に下着を脱いだ瑞穂が跨がる。いわゆるシックスナインの体勢となり、私の脛に両手を付いた瑞穂が、尻の谷間にペニスを挟みながら腰をコキコキと振ってくれるのだ。
 これは素晴らしかった。もしかしたらセックスよりも気持ち良いかも知れない。
 柔らかい尻肉は固いペニスをしっかりと包み込み、尻肉がゆっさゆっさと揺れる度に、瑞穂の性器がパクパクと口を開いているのが見え隠れした。それは、ペニスだけでなく脳までも刺激してくれるのだ。
 一番感じる亀頭の裏に、瑞穂のチョコレート色した肛門が擦り付けられると、いつも私は、その禁断の穴の中にペニスを滑り込ませたい衝動に駆られていた。
 ぷるぷると震える尻肉を両手で優しく擦りながら、「あぁぁぁ、イキそうだよ……出ちゃうよ……」と唸ると、瑞穂の腰の動きが早くなった。瑞穂は商売女のように腰を激しく振りながら、それまで前屈みになっていた上半身を起き上がらせると、その体重をペニスに伸しかけて来た。尻とペニスの密着度は更に増し、私のペニスは締め付けられた。
 私の腹の上に、大量の精液が「しゅぷっ!」と弾けると、それまで高速で動いていた瑞穂の腰がゆっくりになった。ドクドクと溢れる精液が尻の谷間に塗り込まれ、それまでのカサカサとしたピストンがヌルヌルとしたピストンに変わった。
 私のペニスは、柔らかい尻肉とヌルヌルの液体に摩擦されながらヒクヒクと痙攣した。射精の快楽に身悶えていると、いつもここで瑞樹が大サービスしてくれた。
 それは、射精している最中に、たった一度だけペニスを穴の中にヌポッと入れてくれるという粋な計らいだった。
 それが堪らなかった。まだ精液がぴゅっぴゅっと出ている最中に、いきなり熱い穴の中にヌルッと飲み込まれるその感触は、もはやこのまま死んでもいいとさえ思うほどの快楽を与えてくれるのだった。

 そんな尻コキの快楽を思い出しながら、眠る瑞穂の太ももの裏に舌を這わせていた。
 大きく舌を動かすと、乾いた肌がザラッと鳴った。それを小刻みに繰り返しながら、白いショーツに包まれた尻肉を優しく撫で回した。
 瑞穂の太ももの裏は、ほんのりと塩っぱい汗の味がした。尻の付け根に行けば行くほどその塩っぱさは強くなり、同時に、陰部から漂う卑猥な香りが強くなってきた。
 尻を撫でていた手を骨盤へと移動させた。骨盤をゆっくりと押しながら、横向きに寝ていた瑞穂の体をごろりと仰向けにさせた。
 天井を向いた瑞穂の顔は安らかに眠っていた。額にほんのりと汗が浮かび、数本の髪の毛がそこに張り付いていた。まるで激しいセックスをした後のような卑猥さが、瑞穂の全身から滲み出ていた。
 そんな瑞穂を見下ろしながらズボンを脱いだ。ブリーフをずり下ろすと、勃起したペニスがピンッと飛び出した。仮性包茎の皮がベロリと捲れた真っ赤な亀頭に、秋のさわやかな潮風が心地良く通り過ぎて行った。
 瑞穂の両足首を掴むと、瑞穂の踵を畳にザラザラと鳴らしながら足首を押した。みるみると両膝が曲がり、足はそのままぺたっと倒れた。
 瑞穂の股は、まるでひっくり返ったカエルのように開いていた。
 捲れたワンピースの裾から白いショーツが顔を出し、私は、その股間を見下ろしながらペニスをシゴいた。しかし、ものの三こすりでイキそうになり、私は慌てて手を止めた。
 と、そのとき、私はペニスをヒクヒクと痙攣させながら、ある事に気付いた。
 嘘だろ? と思いながら、そこに顔を近づけ、まじまじとそこを見つめた。
 なんと、その白いショーツの股間部分には丸いシミが滲んでいたのだ。
 寝ているのに、どうしてアソコが濡れているんだ……。
 私はそう不審に思いながらも、ゾクゾクとした興奮に包まれていたのだった。

(つづく)

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