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限りなく公序良俗に2






 静まり返った脱衣場には、臑毛が渦巻く痩せた足から湯が滴る、ぽた、ぽた、という音だけが断続的に続いていた。
 床に寝転がりながらオナニーをしていた私を見下ろしていたのは、肋骨が浮き出た痩せた男だった。
 しばらく私とその男は、微動だもせぬまま見つめ合っていた。
 そんな男の視線がゆっくりと私の下半身へと移動した瞬間、私はペニスに被せていたパンティーを慌てて隠した。
 が、しかし、それは間違いなく男に見られていた。それが自分の連れ合いの下着である事は、この状況からして一目瞭然であり、それに気付いた男は一瞬ギョッっと目を見開いた。

「あ、あのぅ、これはその……」

 私はそう焦りながらゆっくりと起き上がった。いざとなったらこの男を殴って逃げようと思いながら拳の中に隠したパンティーを強く握り締めた。
 がしかし、今なら、例え通報されたとしても大した犯罪ではない。ここは露天風呂であるから陰部を出していたとしても公然わいせつ罪にとわれる事も無く、あくまでもパンティーに触れていただけで盗んだわけでもないから窃盗罪にも該当しないはずだ。
 もし仮に罪を問われるとすれば、迷惑防止条例といった類いの公序良俗違反だろうが、しかし、ここでこの男を殴ってしまえば明らかに傷害罪に問われてしまうのだ。
 焦るな,焦るな、と自分に言い聞かせた。ここは潔く土下座して謝り、変態男と罵られた方が得だと思った。
 私は男を刺激しないよう、ゆっくりと正座をした。そしてガクンっと項垂れたままの頭を床に付けようとすると、いきなり男が口を開いた。

「取りあえず……風呂に入りませんか……」

 男の意外な言葉に私が不思議そうに顔を上げると、男はなぜかニヤニヤと笑っていた。

「……一緒に入っても……いいんですか?……」

 私は入口の向こうで湯に浸かっている女をチラッと見ながら恐る恐る聞いた。

「当然じゃないですか。ここは混浴なんですから」

 男は笑顔でそう頷くと、湯気が立ち込める露天風呂へとヒタヒタ足音を鳴らしたのだった。

 鬱蒼とした森に包まれた深夜の露天風呂は、一種独特な雰囲気を漂わせていた。
 いや、普通にここに来たのであればこんな独特な違和感は感じなかったのだろうが、しかし、あんな事があった後のここは、隠していたエロ本をお袋に発見された時のような、そんな気まずさが貪よりと漂っていた。
 タオルを持って来ていなかった私は両手で股間を押さえるしかなく、私は濡れた石タイルを小走りしながら、そそくさと露天風呂の隅にソッと身を沈めた。
 斜め前の石の上に男と女が座っていた。
 女は、露天風呂に入って来た私を見るなり慌てて湯に沈もうとしたが、しかし男がそれを止めた。
 女は「やだ」と眉を顰めながら男に振り向いていたが、しかし、男が女の耳元に何かを囁くと、女は観念したようにそのままジッと項垂れていた。

 遠くの方からキツツキのドラミングが断続的に聞こえていた。
 周囲はひたすら、森、闇、森、闇、であり、生温い露天風呂に浸かりながら深い闇の中をじっと見つめていると、まるで霊界に迷い込んだような気がした。
 人里離れたこの温泉町には二つの小さな宿と大きな旅館がひとつあるだけだった。
 コンビニも無ければ、携帯が繋がらない場所も多々あったが、しかし、近くに有名なゴルフ場がある事から、この温泉町を訪れる人は少なくなかった。
 私は今、そんな辺鄙な見知らぬ土地で、見知らぬ男女と裸で向き合っていた。
 なぜ男が私を露天風呂に誘ったのか、そして裸を隠そうとする女に男が何を囁きそれを止めさせたのか、私は生温い湯に浸かりながら考えていた。
 もしかしたらこの男女は、露出癖のある変態カップルなのかも知れないと思った。
 そんな変態カップルが各地の混浴露天風呂に出没していると、以前、ソレ系のサイトで見た事があったからだ。
 だとすれば今のこの状況は理解できた。連れ合いの女の下着でオナニーをしていた男に、一緒に露天風呂に入りませんか? などと誘う男など、変態以外には考えられないからだ。

 私は、目の前のこの男女が本当に変態露出カップルなのだろうかと模索しながら、闇を見つめていた視線をそっと男女に向けた。
 いきなり女と目が合った。女はギョッと驚き、慌てて視線を反らした。
 その脅えた彼女の目は、決して今のこの状況を楽しんでいるようには見えなかった。
 露出に興奮しているというよりも、どちらかといえば、一刻も早くこの場を立ち去りたいと思っているようなそんな羞恥心が感じられた。

(あれはどう見ても普通の人じゃないか……)

 私はそう思いながら女の大きな胸をよそよそと見ていると、今度は男と目が合った。
 男は私と目が合うなり、さっきと同じ目の輝きでニヤリと微笑んだ。
 私はそんな男の笑顔に背筋をゾクッとさせながらも、何か会話をしなければならないと焦り、「お二人は御夫婦ですか?」などと、どうでもいい質問をしていた。
 すると男は、一瞬間を置いた後、その気味の悪い笑顔のままコクンっと頷いた。

「東京から河口湖へ行く途中なんですよ。妻がどうしても河口湖からの富士山が見たいなんていうものですからね……」

 男はそう言いながら女の太ももをスリスリと擦り始めた。太ももを意味ありげに擦られる女は、項垂れたまま下唇の端をギュッと噛み締め、何かに必死に耐えているようだった。

「お宅は、やっぱりゴルフですか?」

 男は太ももを擦っていた手を女の腹に移動させながら聞いた。

「ええ。まぁ、私がゴルフをしに来たわけではないんですが、ちょっとした接待でして……」

 男の手の行方をソッと目で追いながら答えると、男は「接待ゴルフですかぁ、大変ですねぇ……」と呟きながら、いきなり女の大きな乳を鷲掴みにした。
 金槌で殴られたような衝撃が私の後頭部に走った。いきなり乳を鷲掴みにされた女は、小さな声で「いや」っと呟きながら、体を捻って男の手を振り解こうとしている。
 それでも男は執拗に女の乳を弄っていた。それを呆然と見ている私に男はニヤニヤと笑いながら、「そこの旅館に泊まってるんですか?」と聞いてきた。
 私が慌ててコクンっと頷くと、「そうですかぁ、いいですねぇ、私達は、今夜はこのままそこの駐車場で車中泊ですよ。夜が明ける前に河口湖へ行って富士山の朝日を見なければなりませんからねぇ……なんてったって富士は世界遺産ですから」と笑った。
 そして男は、微笑むその目をギラギラと輝かせながら、今度は女の閉じていた股をこじ開けようとした。
 女は貝のように体を閉じながら必死に抵抗した。それでも男は左手で女の肩を押え、右手で強引に股を開こうとしていた。
 二人は無言で争っていた。股を強引に開こうとする男と、必死に開かされまいと抵抗する女。それまで静まり返っていた露天風呂にバシャバシャと弾ける湯の音が響き渡っていた。

 女の抵抗は思った以上に激しく、男の奇行を素直には受け入れなかった。
 股は頑に閉じられたままだった。
 諦めた男は、股をこじ開けようとしていた右手で、いきなり女の両頬を鷲掴みにした。
 歪んだ女の唇は、まるで釣り上げられた魚のようにパクパクと動き出した。
 女の後頭部を左腕に抱え込みながら、縦に開いた女の唇の中に男は真っ赤な舌を押し込んだ。
 女の口内に狂ったように舌を動かすと、女は、うぐ、うぐ、っと苦しそうに唸り声をあげ、それと同時に互いの舌が絡み合う、ぴちゃ、ぺちゃ、という粘着音が微かに聞こえてきた。
 他人のキスシーンを見るのが初めてだった私は、呆然としたまま黙ってそれを見つめていた。
 男の目はギラギラと輝き、それはまるで動物園の檻の中で暴れまくる南米の猿のように狂気に満ちていた。
 いきなり豹変した男のその目に恐怖を感じた私だったが、しかし心の奥底では卑猥な結末を密かに期待していた。
 男は女の口内に狂ったように舌を動かしながら、再び女の太ももの隙間に手を突っ込んだ。
 手首を乱暴にグイグイと動かすと、女の湿った陰毛がジョリジョリと卑猥な音を立てた。
 女はキスをされたままイヤイヤと首を振った。すると、いきなり舌を抜いた男は、引き攣る女の顔を真正面から見つめながら「あの人におまえのココを見せるんだ」と呟いた。
 この男は何をいきなり言い出すんだと私は焦った。
 無言で項垂れている女に申し訳なく思いながらも、しかし、私は心の奥底ではそれを望んでいた。

「ほら、おまえのいやらしい穴を指で開いて見せて上げなさい……おまえもココを見て欲しくてウズウズしてるんだろ?」

 男はそう言いながら女の陰毛をジョリジョリと擦った。
 すると女は、口の回りでネトネトと輝いている男の唾液を腕で拭いながら、首を小さく左右に振った。
 すかさず乾いた音が漆黒の森の中に響いた。
 それは、パシッ! パシッ! っと二度続けて響き、その度に頬を叩かれた女の髪が無惨に乱れた。
 ごめんなさい、っと下唇を噛んだまま項垂れている女を、男はいきなり抱きしめた。そして腕の中の女の髪を優しく撫でながら、その耳元に何やらボソボソと話し始めた。
 女は男の痩せた肩に顔を埋めながら、男の言葉に小さく頷いていた。
 男が女に何を話しているのか聞き取れなかったが、話している男のペニスが異様に勃起しているのを私は見逃さなかった。

 きっとこの夫婦は、夫婦で露出系の変態なのではなく、ただ単に旦那だけがソレ系の性癖のある変態なんだと私は思った。
 確かに、自分の妻の裸体や恥部を他人に見せたり、妻とセックスしているシーンを他人に見せては興奮するといった、そんな変態性癖を持つ旦那が世の中に多い事は、ソレ系のサイトで知っていた。
 彼らは、愛する妻のいやらしい部分を他人に見せる事により興奮を得る変態であり、妻が羞恥すればするほどに欲情し、そして、他人が妻を見て興奮すればするほどに優越感を感じるといった、実に性格の捻くれた変態なのだ。
 そんな変態男は、女の耳元に何かを囁きながら、再び女の太ももに手を置いた。
 怖くないから、大丈夫だから、っと、女にこんこんと言い聞かせながら、男は遂に、頑に閉じていた股をゆっくりと開かせた。
 力の抜けた真っ白な太ももが、ぎこちなく左右に開いた。
 湯に浸かったままの私の目線と、石の上に腰掛けている女の股間は平行しており、開かれた股は私の真正面にあった。
 私は、こんなチャンスは二度とないとばかりに、必死に白い太ももに挟まれた陰部に目を凝らした。
 黒々とした陰毛は湯で萎れ、ワカメのようになりながら下腹部に張り付いていた。
 その下には、まるで寿司屋のマナ板の上にピシャンっと投げつけられた赤貝のような小陰唇が、ビロビロと卑猥な姿を晒していた。
 女の指がそこに伸びると、歪んだワレメがねっちょりと口を開いた。
 その奥にある桃色の生肉は、鮮明な色を発しながらテラテラと濡れ輝いていたのだった。

(三話へ続く)

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