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立ち小便(後編)

2012/11/17 Sat 04:25

立ち小便1






 そのラブホテルは、そこから歩いて十分の場所にひっそりと隠れていた。休憩三千円・お泊まり八千円・冷暖房・カラーテレビ完備。そんな時代錯誤な看板を横目に、益田と若妻は観葉植物に覆われた玄関を潜った。

 部屋に入るなり、益田は若妻の細い背中に抱きつき、嫌がる若妻のその真っ白なうなじに舌を這わせた。若妻の髪からは大衆的なシャンプーの匂いが漂い、ベロリと舐めたうなじは濃厚な汗の味がした。そんな現実的な感触に、今まで触れた事のない『ド素人の人妻』を感じた益田は、目眩を感じるほどに興奮を覚えていた。

 先にお風呂に入らせて下さいという若妻をベッドに押し倒し、風呂などいいから全裸になって股を開けと命令した。
 益田自身、風呂に入る気など毛頭なかった。この濃厚なホルモンの脂にまみれた獣臭の身体で、夕飯にコロッケを食おうなどと考えている貧乏臭い主婦を犯しまくってやるんだと鼻息を荒くしていた。

 風呂を諦めた若妻はベッドの横でそそくさと服を脱ぎ始めた。脱いだ服をソファーの上に一枚一枚畳みながら全裸になると、恥ずかしそうにしながらベッドへと上がり、そのまま静かに仰向けに寝転んだ。

「股開いてパイパンのおまんこを見せろ」

 薄ら笑いを浮かべながら益田は見下ろしていた。
 若妻は下唇を噛みながら股を弛めると、軽く両膝を立てた。

「アホ。もっとガバッと開け。両手で両脚を持ち上げておまんこをパックリと開いて見せるんだよ」

 益田はズボンを脱ぎながら、そうヘラヘラと笑った。益田が服を脱ぐ度に生ゴミのようなニオイがベッドの周辺に溢れた。
 若妻は益田にいわれるがまま両膝を曲げ、その膝を両手で支えた。そしてそのままゆっくりと股を開いて行くと、益田は「そうそう、そのままカエルみたいにパックリと開くんだ」と、目を異様にギラギラさせながらそこを覗き込み、ベッドがギシギシと軋むくらいにペニスを激しくシゴきまくった。

 そんな獣のような益田に見られながら、股をM字に開いた若妻は、唇をヒクヒクと痙攣させながらその羞恥に耐えていた。

「恥ずかしいのか?」

 そう聞いて来る益田に、若妻がコクリと小さく頷いた。すると突然益田が、ひひひひひひっと声を出して笑った。

「でもよ奥さん、あんたのおまんこ、ヌルヌルに濡れてるぜ。恥ずかしいくせに濡れてるぜ……あんた、本当は変態なんだろ……チンポを入れて欲しくて堪んねぇんだろ……違うか?」

 そんな下品な言葉で責めながら益田は若妻の顔の上でペニスをシゴいた。
 益田の言葉に更に激しい羞恥に襲われた若妻が「いや」と顔を背けると、その振動で、穴に溜っていたいやらしい汁がトロリと垂れ落ち、若妻の無毛の肛門を卑猥に輝かせた。

 ふと見ると、ベッドの枕元にアダルトグッズが無造作に置かれていた。

【※御自由にお使い下さい】
【※消毒済み】
【※持ち出し厳禁】
【※ポラロイドカメラは有料。フロントまで】

 ヘタクソな字で殴り書きされた張り紙が壁に貼ってあった。
 エイズ騒動が起きる前の古いラブホではよく見た光景だったが、現代ではほとんど見る事のないサービスだった。
 未だにこんなことしてるのかとそれを摘まみ上げた益田は、その誰が使ったかもわからない不衛生なバイブのスイッチを入れると、「やめて下さい」と焦る若妻の濡れたワレメに、コンドームも付けぬままヌルリと突き刺した。

「いやっ」と小さく叫びながら顔を顰める若妻は、足をヒクヒクと痙攣させた。
 益田は、そんな若妻を見下ろしながら、まるで黄金バットのような、わはははははははははっと狂ったように笑い声をあげながらバイブをズホズボと乱暴にピストンさせ、そして叫ぶ若妻の口の中にペニスを無理矢理捻り込んだ。

「洗ってねぇチンポだ、ほら、喉の奥まで銜え込め」

「うぐぐぐぐ」っと悶え苦しむ若妻を見下ろしながら、「ホルモン臭せぇチンポだろ、見知らぬ男にオマンコ見せながら感じてるような変態主婦にゃお似合いの腐れチンポだ、よーく味わえ」と、そう罵りながら、若妻の口の中でペニスをピストンさせ、そのまま若妻の身体をがっつりと押さえ込むと、オマンコの中のバイブを更に激しくピストンさせた。

「どうだ気持ちいいだろ変態女。今からもっともっと滅茶苦茶にしてやるからな」

 そう笑いながら若妻の口からペニスを抜いた益田は、その若妻の口の中に、今まで膣に押し込んでいたバイブを銜えさせた。
 そして、枕元の棚に手を伸ばすと、更にアダルトグッズの中からローターを取り出した。

 膣から溢れ出る汁を肛門に塗りたくり、強引に指を滑り込ませた。
 バイブを銜えさせられたまま悲鳴をあげて痙攣する若妻に、

「けっ。コロッケで我慢してれば良かったんだよ。てめぇら貧乏人はコロッケ齧ってりゃ良かったんだよ。欲をかくからこんな目に遭わされるんだぜ」

 と、低く囁きながら、弛んだ肛門の中にローターを挿入しスイッチを入れた。

 膣と肛門の両内部でローターがヴィィィィィィと暴れ回っていた。
 若妻は両目をひん剥きながら、イヤイヤと首を横に振って必死に益田に助けを求めるが、ニヤニヤと笑う益田はそんな若妻の顔を黙って見下ろしていた。

 もがき苦しむ若妻が益田の肩にしがみつき、益田の背中をガリガリと爪で引っ掻いた。
「あたたたたっ!」と慌ててその手を振り解いた益田は、迷う事無く若妻のその小さな顔に野球グローブのような大きな拳を打ち付けた。

「てめぇ、ぶっ殺すぞ!」

 そう叫びながら、バイブを銜えさせられたままの若妻の顔面を続けざまに四発殴った。
 ガツ,ガツ、ガツ、という鈍い音が響き、その度に若妻の細い体が上下に揺れた。
 ぐったりとした若妻の口からバイブを抜くと、綺麗な前歯が二本折れていた。
 若妻は鼻と口からダラダラと血を垂らしながら恐怖に脅えていた。そんな若妻の表情に更に欲情を覚えた益田は、若妻の両脚を両腕に抱えながら言った。

「おまえ、このまま五体満足で帰れると思うなよ……おまえの内臓をおまんこから引きずり出してやっからよ……へへへへ、俺の店で豚のホルモンと一緒に売り捌いてやっから覚悟してろよ……」

 そう笑いながら益田は、枕元の棚に置いてあった百円ライターを若妻の膣の中にヌルリと入れた。そして、素早くテレビのリモコンの蓋を開けると、そこから単三電池を二個取り出し、それまで膣の中に挿入した。
 百円ライターと単三電池が二個挿入された膣に、ゴリゴリに硬くなったペニスをズブッと捻り込ませた。
「ぎゃゃゃゃゃゃ!」と絶叫する若妻の首を右手で絞めながら、益田は右乳の乳首を噛み千切り、噛み千切ったそれを奥歯でガリガリと咀嚼した。
 噛み千切られた乳首の断面からジワーっと血が広がり、若妻の真っ白な肌を真っ赤に染めた。
 若妻は益田の肩にしがみつきながら泣き叫び、そして小便を洩らした。

「お金は返します! 何でも言う事を聞きます! だから殺さないで!」

 そう必死にもがき苦しむ若妻の上で、益田は獣のように腰を振った。若妻が叫べば叫ぶほど膣の締りは強くなり、それに快感を覚えた益田は、更に若妻を殴り続けた。

「コロッケにしろ、てめぇら貧乏人はよ、汚ねぇ商店街の肉屋で売ってる一個三十円のコロッケ食ってればいいんだ、わかったか、わかったら返事しろ豚野郎!」

 そう叫びながら若妻の顔に唾を吐きかけ、テレビのリモコンがバラバラに砕けるまでそれを若妻の顔面に叩き付けた。更に、ガラスの灰皿で若妻の顔面を殴ると、ベキッと鼻の骨が折れ、驚くほどに大量の血が若妻の鼻の穴から流れ出て来た。

 若妻は欠けた前歯を剥き出しにしながら「コロッケにします! これから毎日コロッケしか食べません! だから助けて!」と腹の底から叫んだ。
 益田は、そんな若妻の顔を見下ろしながら「ぎゃははははははは」と馬鹿笑いし、更に若妻の左乳の乳首を噛み千切っては若妻を絶叫させた。

 若妻が絶叫する度に膣がギュッと締った。
 その味をしめた益田は、もっともっと若妻を絶叫させようと、あらゆる暴行を加えた。

 そして挙げ句の果てに、若妻の首を両手で締めた。
 全身を痙攣させながら悶える若妻は、真っ赤な舌を突き出しながら、まるでガマガエルのように「ぐえぇぇぇぇ」っと唸った。
 若妻の唇の端から白い泡がブクブクと噴き出した。白目を剥きながら痙攣する若妻の肛門からピンクローターがヌポッと飛び出し、その後から黄色い下痢糞がグジュグジュと音を立てながら搾り出された。

 若妻の全身の筋肉は硬直し、縮まった膣は益田のペニスを激しく締め付けた。
 そんな感触に、益田は「おおおおおおおおおおおお」と唸り声をあげながら更に腰を振りまくり、そこに大量の精液を吐き出した。

 ベッドは血まみれだった。枕元には毟り取られた若妻の髪が散乱し、血塗られたシーツのシワには欠けた前歯が悲惨に転がっていた。

 ぐったりとしながら舌をダラリと垂らす若妻に、それでも益田はズボズボと腰を振りながら余韻を味わっていた。
 ピストンする結合部分からは中出しされた精液が溢れ出し、まるで泥沼の中を歩くような不気味な音が響いていた。

 益田は、そんな異様な快楽に包まれながらも、やっぱり今夜はどうしてもトンカツが食いたい、と、ふと、そう思ったのだった。


               

 油臭い洗面所で手を洗った。白い陶器の洗面台はかなり使いこなしているらしく、その四隅はしっかりと黄ばんでいた。
 拳に飛び散った血は既にカピカピに乾いており、簡単に洗い落とす事が出来た。しかし、爪の隙間に入り込んだ血は、どれだけ石鹸で擦っても落ちず、これは爪楊枝でほじったほうが早そうだと思った益田は、そこにペッと唾を吐きながらチロチロと水が滴る水道の蛇口を閉めたのだった。

 トイレから出ると、益田の席のテーブルの上には既にトンカツ定食が湯気を上げていた。
 トイレの真横の壁に薄型のテレビがくっ付いていた。異様なほどに音量の大きなテレビの前では、日雇い労働者風の親父が爪楊枝を銜えたまま「ピッチャーを交代させろよ馬鹿監督」と愚痴っていた。

 そんな親父を横目に席に座ろうとすると、カウンターの奥からひょいと顔を出したおばさんが、「もう、みそ汁持ってってもいいかい」と面倒臭そうに聞いてきた。
「おう」と返事をしながら割り箸をペキッと割り、ほかほかと湯気のたつ黄色い衣を見つめて、おもわずニンマリと笑った。

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 箸の先で真ん中の肉を摘んだ。衣がサクっと音を立て、真っ白な身からギトギトの肉汁が滲み出た。
 それを口の中に入れようとした瞬間、おばさんがみそ汁を持ってやって来た。益田は開いていた口をソッと閉じ、一切れ摘んだままおばさんが立ち去るのを待った。この瞬間を邪魔されたくなかったのだ。

「そこにカラシがあるから」

 おばさんはテーブルの隅に置いてあった小さな瓶をアゴで示しながら、白いご飯の横にじゃがいもとワカメのみそ汁を置いた。
 わかったから早くあっち行けよ糞ババァ、と思いながらも、そのカラシの瓶の蓋をカチンっと開け、小さなスプーンで掬い取ったカラシを山盛りのキャベツの横にベチャっと擦り付けた。

 と、その時だった。
 玄関の扉がガラガラガラっと開いた。『味自慢とんかつ』と書かれた暖簾が夜風でふわっと踊り、その奥から目つきの鋭い男が二人ヌッと顔を出した。

 益田は、その見覚えのある顔に、おもわずチッと舌打ちをした。
 カウンターに戻ろうとしていたおばさんが足を止め、二人の男に向かって「いらっしゃい」と気怠そうに言った。
 二人の男はそんなおばさんを無視したまま、ズカズカと益田のテーブルまでやってくると、薮から棒に「益田。おまえ、いつ出て来たんや」と、立ったままの体勢でそう言った。

「ああ……三ヶ月前や……」

 益田はキツネ色に輝くサクサクの衣を見つめながら呟いた。

「出所したら連絡せぇって言っただろ……みんなでおまえの出所祝いをしてやったのによ……」

 男はニヤニヤと笑いながら益田の肩をポンポンと叩いた。

 そんな男の手を振り払いながら、「で、おまえら何の用だよ、俺ぁ今からメシなんだよ」と益田が顔を上げると、もう一人の男がジッと益田を睨んだまま低い声で呟いた。

「あの奥さん、死んじゃったぞ……」

 テレビの前で爪楊枝を銜えていたおっさんが「ほら打たれた! だからピッチャーを交代しろって言っただろ! 馬鹿監督!」と叫びながら立ち上がった。
 おっさんが悔しそうにテーブルを叩くと、テーブルの上に置いてあったトンカツの皿がカチャンっと音を立てた。

 益田が鋭い視線を二人の男に向けた。
 二人の男には全く隙がなく、いつでも飛び掛かって来れるような殺気が漲っていた。店の前にも何人かの刑事が身を潜めているような気配がし、益田はゆっくりと息を吐きながら抵抗するのを諦めた。

 そんな一触即発の空気の中、益田はそっと刑事を見上げながら言った。

「取りあえず……コレ、食ってからでもいいかなぁ……」

 益田がもう一度トンカツの一切れを箸で摘もうとした瞬間、二人の男が一斉に益田の身体を取り押さえた。
 それを合図に、暖簾の向こうから数人の刑事が飛び込んで来た。
 猪のように獰猛な刑事達は、意味不明な怒声をそれぞれ口にしながら雪崩れ込み、床で羽交い締めにされている益田を素早く取り囲むと、まるでサッカーボールを取り合うかのように益田を蹴り始めた。

「とにかくトンカツ食わせろよこの野郎!」

 もみくちゃにされながら、必死にそう叫んだ瞬間、益田の脳裏に「これからは、もう毎日コロッケしか食べません!」と叫んだ若妻の声が不気味に甦ったのだった。


               


 「被告人を懲役二十年に処す」
 静まり返った法廷に、判事の眠たそうな声が響いた。
 チラッと弁護士を見ると、弁護士は勝ち誇った表情を浮かべながら益田に向かってコクンっと頷いたのだった。

 求刑は無期懲役だった。
 てっきり死刑だと思っていた益田は、その寛大な求刑だけでも驚いたのに、判決を聞いて更に驚いた。

 (二十年って事は、真面目に務めりゃ十四、五年で出てこれらぁ。
 例え満期で二十年喰らったとしても、俺ぁまだ六十才だ。
 ふふふふ、六十ならまだまだチンポは立つだろう。)

 法廷の片隅で手錠を嵌められながらニヤニヤと笑う益田の目に、傍聴席で被害者の遺影を抱きながら、凄まじい目で益田を睨んでいる男が飛び込んで来た。

 拘置所の職員に青い腰縄を巻かれながら、益田は傍聴席に向かって言った。

「あんた、あいつの旦那か?」

 拘置所の職員が「こら、喋るな」と益田を睨んだ。
 しかし益田はそれでも言葉を続けた。

「あんたの奥さん、最後は気持ち良さそうに死んでったぜ。だからきっと今頃天国に逝ってるよ」

 傍聴席がどよめき、遺影を持った男が「うおおおおおおおお」っと唸りながら床に崩れ落ちた。

 拘置所の職員達が一斉に益田を取り囲み、益田はもみくちゃにされながら法廷の出口へと引きずられた。

「コロッケだ! 奥さんの仏壇にゃコロッケをお供えしてやってくれ!」

 そんな益田の叫び声が法廷にわんわんと響いた。

 益田が引きずり出された後も、法廷はしばらく騒然としていた。
 益田を無期懲役から救った弁護士も、苦虫を噛み潰したような顔をしながらそそくさと法廷を後にした。

 十八年後、十九年後、いや、少なくとも二十年後、益田は再び戻って来る。

 獄死しない限り、益田は確実にこの町に戻って来る。

 そして益田は、再びこの町で、悲惨な犠牲者を作り出す事だろう。

 益田大介にとって、強姦や殺人など、道端で立ち小便をするようなものなのだ。

(立ち小便・完)
 


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