猥褻電話
2013/04/19 Fri 22:54
《あらすじ》
寝取られ願望はあっても、実際に妻を他人に貸す勇気のない夫。
そんな夫は、ある時、妻にテレホンセックスをさせた。
他人の男に卑猥な言葉を浴びせられながら感じている妻に、夫は激しく燃えた。
しかし、いつしかそれがエスカレートし、結局は……
私の妻は垢抜けない女だった。
性格も内向的で服装も地味だった。
しかし私の命令には、文句ひとつ言わず素直に従った。
例えそれがどんなに過酷であっても、妻は必死に耐えながら服従した。
だから私は、そんな妻を愛していた。
愛するがゆえに妻に悲惨な事をさせたかった。
それが残酷であればあるほど、妻に対する私の愛は更に深まった。
この感覚はいったいなんだろう。
私自身、わからない。
初めのうちは、家の中で妻を加虐していた。
私達夫婦には子供はいなかったため、二人暮らしのマンションでは思う存分にSMプレイを楽しむ事ができた。
鞭、蝋燭、浣腸、と一通りのプレイは試した。
それに飽きると、今度は妻を犯しているシーンを撮影し、その写真をネットのマニアックな画像掲示板に晒した。
胸も陰部も、そして結合されている生々しい部分までも晒しながら、愛する妻が他人のオナニーのネタにされるという己の苦悩に身悶えていた。
しかし、しばらくするとそれにも飽きて来た。
やはり、妻のいやらしい画像を見られているというだけでは物足りなかった。
相手が興奮している姿が見えない分、つまらないのだ。
もっとストレートな興奮を得たいと思った。
素直に、妻を全くの他人に抱かせたいと思ったが、しかしスワッピングや乱交には抵抗があった。
っというか怖かった。
リアルなプレイは、そのまま妻がその男に寝取られてしまい、私の元から去って行ってしまうのではないかという恐怖が常に付きまとっていたからだ。
できれば、相手とは直接接触せずに妻を寝取って欲しかった。
そんな都合の良い寝取られはないものかと考えていると、ふと良い案を思い付いた。
それがテレホンセックスだった。
ネットでテレホンセックスを大量に調べた。
そして、その中でも特に変態男が蠢いていそうなSMチャンネルを選んだ。
番号を掛けると、素早く携帯の音量を最大にし、それをスピーカーに切り替えた。
しばらくの間、安っぽいニューミュージックが流れていた。
そんな音楽を聴きながら、私と妻は全裸でジッと待機していた。
すると、いきなりピンポーンっという音が鳴り、慌てて携帯を妻に持たせると、スピーカーから、『お待たせしました、貴女の番です』というメッセージが流れ、私達夫婦の緊張と欲情を一気に高めた。
今まで安っぽいニューミュージックがガンガンと流れていた部屋はとたんにシーンっと静まり返った。
暗い闇の底から、『もしもし……』と男の野太い声が聞こえて来た。
その声は、まるでボイスチェンジャーでも使っているような、不気味な低音だ。
電話の男は五十を過ぎたサディストだった。
二七才の妻には父親のような年齢だった。
『どうして欲しいんだ、奥さん……』
男は低い声でそう囁いた。
すかさず私は、「オマンコを舐めて下さいと言え」と妻の耳元に囁き、妻はそう答えた。
その言葉に男は素直に興奮した。
『舐められるのが好きなのか? おまえは変態なんだな……よしよし、ベロベロに舐めてやるから自分でオマンコを開いてみろ』
男は、まるで子犬に語りかけるようにそう言った。
妻が見ず知らずの男に犬扱いされているのは、嫌悪でもあり興奮でもあり、複雑な心境だった。
得体の知れない欲望に背中を押されながら、私は妻の股を大きく広げさせた。
蛍光灯の下に曝け出された妻の性器は、まだ未出産だというのにしっかりと使い込まれていた。
ドス黒い小陰唇を左右に押し開き、赤く爛れた内臓を剥き出しにすると、中から白い泡がプクプクと滲み出て来た。
『ほら、舐めるぞ……』
男は低い声でそう呟くと、いきなりスピーカーに、『ぶちゅぶちゅぶちゅ……べちょ、ぐちょ……』とグロテスクな舌音を響かせた。
私は妻の耳元に、「この変態男に舐められてるのを想像するんだ」とソッと囁くと、その音に合わせて妻の性器に舌を這わせた。
妻の性器は既に汁が溢れており、そこにむしゃぶりついた私の口内は、たちまちねちょねちょに粘ついた。
妻が携帯に向かって「はぁぁぁ……」と深い息を吐くと、男も一緒になってハァハァと荒い息を吐きかけて来た。
『はぁはぁ、奥さん、気持ちいいか……ほら、大きなクリトリスも唇でちゅるちゅるしてやるよ……』
受話器の向こうから、ぴちょ、ぴちょ、ぴちょ、という、妙にリアルな音が聞こえて来た。
恐らく男は、自分の小指かなにかを妻のクリトリスに見立ててしゃぶっているのであろう、そのいやらしい音に感じている妻を見ていると、こいつはかなりテレホンセックスに馴れている男だと思った。
男は、ぴちゃ、ぴちゃ、と舌音を鳴らしながらも、妻のオマンコがイカ臭いだとか、ティッシュのカスが付いている等と、必要以上にリアルでマニアックな表現を繰り返した。
実に気味の悪い変態だった。
しかし、自分の妻に、そんな男とテレホンセックスさせてはそれを見ながら興奮している私はもっと変態だろう。気味の悪い変態男に下品な言葉で辱められる妻の姿を見ていると、私は、一刻も早く射精したくて堪らなくなるのだ。
だが、そんな変態男と変態夫にも勝る変態が妻だった。妻は高く持ち上げた太ももをピクピクと痙攣させながら、このエキセントリックなシチュエーションに感じているのだ。
見ず知らずの変態男に電話で感じさせられ、その姿を旦那に見られながら更に感じている変態妻。
私はそんな妻を素直に愛おしく感じた。
そう思った瞬間、私はドロドロに濡れた妻の穴の中にペニスを入れられずにはいられなかった。
『ほら、穴の中まで舐めてやる、どうだ、感じるか』と囁く男の声を背景に、私はゆっくりと妻の身体の上を這って行くと、悶える妻の耳元にそっと唇を寄せた。
「入れて下さいと言うんだ……」
そう囁きながらドロドロに濡れる性器の表面にペニスを擦り付けた。
パンパンに腫れ上がった私の亀頭は、小陰唇もクリトリスも全てをぐちゃぐちゃと掻き回していた。
妻は腰をコキコキと上下に振りながら、受話器に向かって「入れて!」と叫んだ。
他人の男に「入れて!」と叫ぶ妻に嫉妬心を覚えた。
しかも男は、『俺のペニスは大きいぞ、おまえの旦那のペニスなんて比べ物にならないから覚悟しろよ……』などと囁く為、私の嫉妬心は更に熱く燃え滾る。
『もっと足を開け……カエルみたいに大きく股を開くんだ……』
激しい嫉妬に目眩を感じながらも、私は男の命令に合わせ、仰向けになる妻の両脚をM字に曲げた。
『よし……おまえのこの淫乱なぐちゃぐちゃマンコにチンポをぶち込んでやる……』
そう呟く男が『うっ!』と唸ったと同時に、私は妻の穴の中にペニスをヌルリと滑り込ませたのだった。
「ひぃ!」と妻が叫び、妻の身体が喜びに震えた。
『感じるか? 感じるだろ』
と、男の声が携帯スピーカーから流れるのに合わせ、私はドロドロに濡れた穴に硬くなった肉棒を激しく出し入れした。
妻は、「もう無理! 凄い! もっと!」などと、支離滅裂な喘ぎ声を携帯に向かって叫びながら、自らもガンガンと腰を振り始めた。
『どうだ……ハァハァ……俺のペニスは凄いだろ……ハァハァ……』
そんな男の声を聞きながら腰を振る私は、今の妻はこの変態男に犯されているんだと自分に言い聞かせた。
(妻が寝取られている……私の目の前で妻が変態男に犯されている……)
そう思いながら激しく乱れる妻の姿を見下ろす私は、強烈な嫉妬に駆られ、そして今までにない興奮に包まれていた。
『ああ、イキそうだ……中で出すぞ……奥さんのオマンコの中にたっぷりと精液をぶちまけてやる……』
受話器の向こうでカサカサと音を立てながら男が唸った。
すかさず私は妻の耳元に顔を寄せた。
「断るんだ。絶対に中出しさせるな。もしさせたら離婚だぞ」
妻の乳肉を乱暴に鷲掴みしながらそう囁くと、妻は気が狂ったように乱れながら、「中で出さないで下さい! お願いします!」と泣き叫んだ。
『どうして泣いてるんだ……気持ちいいから泣いてるんだろ?……だったら俺にも気持ち良くさせろよ……ほら、中で出すぞ……』
「だめ! いや! やめて下さい!」
『どうしてだ?……中出しさせないならペニスを抜くぞ……それでもいいのか?』
「やだぁ! 抜いちゃダメぇ!」
『じゃあ中出しさせろ……中出しさせないならこのまま抜く……どっちだ、早く決めろ!』
バンバンと激しく腰を振りながら二人の会話に耳を傾けていた私は、妻の次の言葉に息を飲んでいた。
その言葉を言って欲しくはなかった。
が、しかし、私は密かに妻がその言葉を叫ぶのを待ちわびていた。
『どっちなんだ!』と怒鳴る男の声に、遂に妻が口を開いた。
「あぁぁぁ、もう無理! ごめんなさいあなた! あぁぁ、中で出して! オマンコの中にいっぱい出して!」
ごめんなさいあなた、のその一言で、私の意識は飛んだ。
「おおおおおおっ!」と唸りながら滅茶苦茶に腰を振り、妻が変態男に中出しされる姿を想像しながら、妻の中に大量の精液を放出した。
妻も狂っていた。私の激しい腰の動きに、小さな体をガクガクと震わせながら小便を洩らし、そして喉をヒクヒクさせながら泣き叫んだ。
最高に気持ち良かった。
今までにない、凄まじい快感だった。
私の唸り声に気付いていない男は、未だ、『おら、おら、奥さん、あんたのオマンコの中が精液でじゅぶじゅぶだぞ』と唸っていた。
恐らく、たった今射精したのだろう、男はそう唸りながらも背後では猛烈なスピードのカサカサ音を鳴らしていた。
私はすかさず妻の手から携帯を奪い取った。
そして、男が最も気持ちいいその瞬間を狙って言い放ってやった。
「マスオだけど、あんたは誰だ。ノリ助君かい? それともアナゴ君かい? ウチのサザエに何の用だい」
一瞬にしてスピーカーは静まり返った。
一呼吸置いて、男が、ひどく落ち着いた声で『もしもし?』と言った。
そのまぬけな声に、おもわず私がブッと噴き出すと、同時に妻がプッと噴き出し、その勢いで、妻の穴から精液がぶちゅっと溢れ出したのだった。
※
台風の気配を思わせる生温かい夜風が、公園全体に吹き荒んでいた。
どこかの子供が忘れていったアンパンマンのスコップが、夜風に煽られながら砂場の隅でカサカサと揺れていた。
ベンチに座っていた私は、ソッとマンションを見上げた。
六〇五号室の私の部屋には煌々と明かりが灯り、バルコニーに置いてあった観葉植物が怪しく夜風に揺れていた。
※
その後、しばらくはテレホンセックスで満足していた私だったが、しかし、回数を重ねるにつれマンネリ化して来たその遊びは、もはや私の興奮剤にはならなかった。
テレホンセックスに飽きた私は、新たな興奮剤を求めて色々と試してみた。
ある時は、ノーパンの妻を満員電車に一人で乗せた。
ある時は、リモバイを挿入させたまま深夜のコンビニに行かせ、駐車場から見ている私にリモバイを操作されながらエロ本の立ち読みをさせた。
ある時は、親戚の家から大型犬を預かり、犬にアソコを舐めさせたり、犬のペニスをしゃぶらせたりした。
そしてある時は、車の中でバイブオナニーをさせ、それを学校帰りの男子中学生に見せたりした。
そのような変態行為を色々と試してみたが、しかし、どれもこれも二、三回で飽きてしまった。
こうなれば、いよいよ本当に妻を寝取らせるしかなかった。
それ系のネットを見れば、『単独さん』と呼ばれる相手はいくらでも見つかった。
が、しかし、やはりリアルで妻が他人にヤられるというのは、なかなか勇気が出てこなかった。
そんなある日、ひょんな事から私は新たな興奮剤を見つけた。
それは今から一週間前、妻が風呂に入っている時だった。
何気なく妻の携帯を覗いた私は、その発信履歴の中に名前が登録されていない番号を発見した。
その番号を素直に怪しいと思った私は、全ての履歴を調べてみた。
妻がその番号に電話を掛けている時間帯はいつも夜の八時だった。
しかも、電話を掛けている日は、私が残業していた日ばかりで、まるで、私がマンションにいない時を見計らって掛けているような感じなのだ。
(あいつ、浮気してるのか?……)
そう思った瞬間、絶望と共に、奇妙な快感が下半身を走った。
私はその番号を自分の携帯に登録し、『184』設定で電話をかけてみた。
スリーコールの後、いきなり安っぽいニューミュージックが流れた。
どこか聞き覚えのあるリズムだった。
『お電話ありがとうございます。こちらは淋しい貴女と淋しい貴男を繋ぐ、テレホンセックス変態チャンネルです……』
私はそのアナウンスを聞いて絶句した。
異様な息苦しさを覚え、携帯を持つ手首がブルブルと震え、そして気が付くと、ズボンの中のペニスははち切れんばかりに勃起していたのだった。
その二日後、夜勤を早退した私は、急いでマンションへと向かった。
音を立てないようにマンションの鍵を開け、息を殺しながらドアを開けた。
足音を忍ばせながらフローリングの廊下を進んで行くと、いつも妻がテレビを見ているリンビングに妻の姿はなく、ドアが半開きになった奥の寝室から電光色の灯りがぼんやりと溢れていた。
寝室に妻の気配が感じた。
薄暗い部屋の奥からは、妻の話し声と、何やら電気シェーバーのような音が聞こえて来た。
大きく深呼吸した私は息を止めた。
そして、複雑な心境のままソッとドアを覗いてみた。
薄暗い部屋の真ん中にぽっかりと浮かぶ尻は、まるでバレーボールのようだった。
ヨガの猫のポーズのような体勢で尻を突き出す妻は、右手に摘んだピンクローターで陰部を弄り、左手に掴んだ携帯を耳にあてていた。
「やめて……あぁぁ、そんなところ、舐めないで……」
受話器に囁く妻の陰部からは、大量の汁がとろとろと垂れていた。
その汁は太ももの裏側を伝い、膝を立てたシーツに丸いシミを作っていたのだった。
あの日以来、妻は例の変態チャンネルに頻繁に電話をかけているようだった。
しかし私は、妻がテレホンセックスをしている事は、知らないふりをしていた。
あの地味な妻が、私に隠れてこっそりテレホンセックスしているなんて、私にとっては最高の興奮材料だからだ。
妻の秘密を知ったその日から、私は残業を辞めた。
もちろん、妻はそれを知らない。
私は、残業のふりをして会社に出掛け、夜の八時にはいつもこの公園にいた。
妻のテレホンセックスが激しくなる八時半頃まで、ここで夜風に吹かれながら暇を潰し、そして、時間が来たらこっそりマンションに忍び込み、妻のテレホンオナニーを覗くのが日課になっていたからだ。
しかし、それさえも、数日続くと飽きて来た。
最初の二、三回は、目眩を感じるほどに興奮していた妻のテレホンオナニーだったが、しかし今ではすっかり冷めてしまっていた。
※
私は時計を見た。
時刻は八時半を少し過ぎた所だった。
台風接近を思わせる生温かい夜風が、夜の公園に、ヴゥゥゥゥ……と、不気味な唸りをあげた。
大きなブナの木が大量の葉っぱを飛び散らせ、それが渦を巻いて夜空に飛んで行くと、風に吹かれた無人のブランコが、座席を鉄のポールにぶつけてはカランカランとドラのような音を奏でた。
そんな公園に一台の車が横付けされた。
車から降りて来た男は慌ててコートの襟を立て、突風に吹かれながら公園に向かって走って来た。
「中田さんですか? 先程メールさせて頂きました、単独希望の池本です」
池本と名乗る中年男は、いかにも他人の妻を寝取りそうな泥棒顔をしていた。
私は簡単な挨拶をした後、男に部屋の鍵を渡した。
「三十分後に戻りますから、それまでお好きなようにお使い下さい」
そう簡単に告げると、私は駅に向かって歩き出した。
「あの、ちょっと……」
男が慌てて私を呼び止めた。
「奥さんは、この事を本当に知らないんですか?……」
男はかなり緊張しているようだった。七三に分けた髪がパンクロッカーのように逆立っている。
「何も知りません。だけど大丈夫です。この時間はオナニーしてますから、素直にあなたを受け入れるはずです……思う存分、妻を犯してやって下さい」
私はそう微笑むと、男の返答を聞かぬままさっさと歩き出した。
公園を出ると、いったいどこから飛んで来たのか、片目だけ塗り潰されたダルマが道路をゴロゴロと転がっていた。
私はソッと振り向いた。
突風にコートを靡かせながら、マンションへと走る男の後ろ姿が見えた。
そんな男の後ろ姿に、私は小さく呟いた。
「泥棒めが……」
(猥褻電話・完)