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穴 PEEP HOLE1

2012/05/19 Sat 02:10

穴1




確かに今、「はん」という艶かしい声が聞こえたような気がした。
その声は妻の声に間違いなく、その声を聞いた瞬間、押入れの中に潜んでいた英樹の全身は一瞬にして石のように固まった。
いよいよ始まった。そう思った英樹は全神経を襖の向こう側に集中させたのだった。

「順次さん、だめ、やめて!」
途切れた妻の声と共に、肉の塊が畳に倒れ込むドスンっという鈍い振動が押入れの襖をゴトンと揺らした。
衣類が畳に擦れるような乾いた音がカサカサと響き、その中にハアハアと湿った息づかいも混じっていた。その息づかいは、明らかに妻のものだった。
英樹は、襖の中央にポツンと空いている針穴程の小さなノゾキ穴から、襖の向こう側の様子を覗き見しようかどうしようか悩んだ。
しかし、気の小さな英樹にはその針穴を覗く勇気はなかった。
実の弟と愛する妻が交わるシーンを見た瞬間、自分がスクラップ工場の廃車のように一瞬にして破壊されてしまうような気がして恐くて見られなかったのだ。
しばらくすると、二人は何やらボソボソと囁き始めた。
英樹はソッと襖に耳を当て、息を止めながら耳を澄ました。
「……そんな事ないよ、義姉さんのココとっても綺麗だよ……」
途切れ途切れに聞こえる弟の声は震えていた。
弟は声を震わせたまま「凄いね、凄く濡れてるよ」と感極まりながら何度も唸ると、その次の瞬間、なにやらブチュブチュと卑猥な音を立てた。それはまるで、マンナンライフのコンニャクゼリーを一気に吸い込む時のような、そんな下品な音だった。
ブチュ、ベプッ、という下品な音に混じりながら、「あぁぁ、順次さん、だめ、そんなとこ汚い! 舐めないで!」という、妻の悲痛な叫びが聞こえた。
妻のその声は、日頃大人しい妻からは想像できないような感情的な叫び声だった。

そんな妻の悲痛な叫び声を聞かされた英樹は、たちまち欲情を掻き立てられ、暗闇の中でクラクラと目眩を感じた。
もう我慢できなかった。弟が妻の汚れた部分をどのようにして舐めているのかが知りたくて堪らなくなった英樹は、乾いた喉にゴクリと唾を押し込みながらその針穴のような小さなノゾキ穴に右目を当てたのだった。

畳に敷かれた座布団の上では、無惨にも下着を脱がされた妻が仰向けに寝かされていた。それはまさに理科の実験に使われる直前のカエルのようだった。
ムチムチとした真っ白な太ももの谷間に黒々とした陰毛がトグロを巻き、その渦のような陰毛の真下を弟の真っ赤な舌がヌルヌルと這い回っていた。
弟のその舌の動きは、インドネシアに生息する巨大なトカゲが、太い舌をヌルヌルとピストンさせているのによく似ていた。あんな舐め方をされたらひと堪りもないだろうと思った英樹の背筋に、不意にゾクッと寒気が走ったのだった。

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英樹がその珍しい性癖に目覚めたのは、センバツ高校野球の決勝戦が押し迫った爽やかな四月の事だった。
兼ねてから、英樹は弟が妻の身体をいやらしい目つきで見ている事を知っていた。今年三十になる弟は未婚であり、特定の彼女もいない為、その性欲を駅裏のソープランドで解消している事も英樹は知っていた。
そんな弟が、三十路女特有の色香をムンムンと発している妻を見て視姦してしまうのも無理はないと思ってはいたが、間違いが起きてしまってからでは遅いと危惧した英樹は、できるだけ弟を家には呼ばないようにしていたのだった。

しかし、そんなある日、父の三回忌の打ち合わせで英樹の家に来ていた弟が、終電に間に合わなかった為に英樹の家に泊まっていく事となった。
相変わらず妻をイヤらしい目で見ている弟に、英樹は妙な胸騒ぎを覚えたが、しかし、まさか自分がいるこの家で妻に変な手出しをする事はないだろうと安心していた。
が、そんな胸騒ぎは的中した。

それは、十二時を少し回った頃だった。
最初は風呂に入らないと言っていた弟が、妻が風呂から上がった瞬間、突然、やっぱり風呂に入りたいと言い出したのだ。
そそくさと風呂場に消えて行く弟に、英樹は相変わらずおかしなヤツだなと思いながら深夜のお笑い番組をぼんやりと見ていると、しばらくして妻が新品のYGの下着を持ってやって来た。
「あなたのサイズだけど順次さんの体に合うかしら……」
そう呟きながらビニール袋の中から下着を取り出した妻は、『M』と書かれたシールをランニングシャツから毟り、そのまま弟が入っている浴室へとスリッパを鳴らしたのだった。

テレビでは、英樹の好きな若手お笑い芸人が自虐的なギャグを連発していた。そんなくだらないギャグをぼんやり眺めながら、一人「ふふふふっ」と鼻を鳴らしていると、ふと、浴室に行った妻がまだ戻って来ていない事にふと気付いた。
妻が浴室に向かってから、かれこれ二分は経過していた。まさか、と焦った英樹は素早くムクリと起き上がると、慌てて浴室へと続く廊下を覗き込んだ。

廊下の突き当たりに妻がポツンと立っていた。
何やってんだ、と声を掛けようとした瞬間、ふと妻が脱衣場の戸の隙間から中を覗いている事に気付いた。しかも、妻のその細い指は、なんとスカートの上から股間を弄っていたのだ。
そんな異様な光景に唖然とする英樹は言葉を失った。
明らかにオナニーだとわかるその行為に、嘘だろ……と絶句しながらも、しかし、おもわず妻に見られぬよう襖の陰に素早く身を隠した。それは、貞淑な妻のそんなシーンをもっと見てみたいという素直な気持ちからだった。

妻はそんな英樹に気付かないまま、股間に細い指を這わせ続けた。いったいあの脱衣場の中では何が起きているのだろうと、不安に胸を押し潰されながらも、英樹は初めて目にする妻のオナニーシーンを見続けた。
しばらくすると、スカートの上から股間を擦っていた指は、ゆっくりと降りて行き、遂にスカートの裾を指でたくし上げた。
黒いストッキングに包まれた脚と、その中で下腹部にピタリと張り付く白いパンティーが廊下の照明に照らされ、怪しい白黒のエロスがムンムンと浮かび上がっていた。

妻は脱衣場の隙間に顔を押し付けながらムチムチの股間に指を滑り込ませた。
指が陰核を捕らえたのか、妻の細い腰がカクンっと揺れた。
その瞬間、妻は捲り上げていたスカートを素早く下ろし、何事もなかったかのようにその奥にあるキッチンへとそそくさと消えて行ったのだった。

それはわずか三十秒足らずのシーンだった。その一部始終を襖の陰から覗いていた英樹は、たった三十秒しかなかったそのシーンが脳裏にくっきりと焼き付いた。
膝をガクガクと震わせながらゆっくりと立ち上がった英樹は、妻が覗いていた脱衣場の中を見ずにはいられないと、フローリングの廊下に足を忍ばせた。
脱衣場の戸がわずか一センチ程隙間を作っていた。息を殺しながら、先程の妻と同じようにその隙間を恐る恐る覗いた。

狭い脱衣場の中では弟が熱い息を吐いていた。
ついさっき脱いだばかりの妻のパンティーが全裸の弟の股間で上下に動いていた。妻の性器に密着していた部分が弟の性器に擦り付けられている。
そんな弟の変態的な自慰行為を目撃した英樹は、凄まじい怒りを覚えると同時に、妻が自分の下着が汚されているシーンを覗きながら欲情していたという事実に激しいショックを受けたのだった。

その夜、寝室に入るなり英樹は妻のベッドに潜り込んだ。薄い壁を一枚隔てたすぐ隣の部屋では弟が寝息を立てている。
妻が弟の自慰を覗いていた事には触れないまま、ベッドに横たわる妻の身体を背後から貪った。
「隣りの順次さんに聞こえちゃうから……」と、慌てて振り返った妻の唇の中に強引に舌を押し込んだ。
妻の口内で乱暴に舌を動かすと、妻は「うぐぐっ」と呻きながらそれを拒否し、慌てて顔を背けた妻の頬には英樹の唾液がテラリと輝いていた。

横向きのまま体を踞らせた妻を背後から抱きしめ、その耳元にハァハァと荒い息を吐きかけながらパジャマのズボンを素早く下ろした。左手で豊満な胸を鷲掴みし、右手でムチムチの太ももをいやらしく擦った。
「今夜はダメよ……」と、英樹の腕から逃れようとする妻の身体を更に強く押さえつけ、太ももを這い回っていた指をそのまま股間に滑らせた。
そんな妻の身体は既に熱く火照っていた。妻の陰部は、下着の上からでも液がネトネトと糸を引くくらいに濡れていたのだった。

それは明らかに、弟の自慰を覗いていた時の形跡だった。
強烈な嫉妬が英樹を熱くさせた。たとえ相手が実の弟と言えど、妻が自分以外の男で欲情したというこの事実は英樹に激しいショックを与えた。
「なにコレ……どうしてこんなに濡れてるの……」
英樹は妻の耳元にそう囁きながら素早くパンティーを太ももまで下ろした。
「多分、排卵日だからよ」
妻はそう呟きながら、陰毛を掻き分ける英樹の指を払い除けた。
「なら丁度いいじゃないか……」
「ダメよ、隣りに聞こえちゃう」と、妻の手が英樹の手首をギュッと握った瞬間、陰毛の谷間に滑り込んだ英樹の指は、まるでうどんが口内に啜られるかのように、いとも簡単にツルンと膣の中に飲み込まれた。慌てて「あっ」と枕に顔を伏せた妻の膣は、びっくりするくらいにヌルヌルだった。

元々妻は濡れにくい体質だった。
結婚当初は、セックスが下手だから妻は濡れないのだと酷く思い悩んでいた英樹だったが、しかし結婚して十年も経ち、互いに三十を過ぎた頃になると、そんな事どうでも良くなっていた。だから最近では、『ペペ・ローション』という性行為用潤滑オイルをネットで取り寄せては、恥ずかしげもなくそれを互いの陰部に塗り込んでいた。
にも関わらず、その時の妻の陰部には、潰れたチューブの口から接着剤が押し出されたかのように、いやらしい汁がネトネトに溢れていた。

妻のこんなにいやらしい陰部に触れるのは初めてだった。
妻をここまで濡らせたのは夫の自分ではなく弟だ。そう思うとたちまち激しい嫉妬と怒りが英樹に襲い掛かり、英樹はいじめっ子の中学生のような幼稚な口調で「なんだよコレ」を連発しながら、濡れた膣を指で乱暴に掻き回した。
クタクタクタクタ、っと卑猥な音が妻の股間で鳴り出した。
その音に合わせて恥知らずな声を上げる妻は、必死に顔を枕に押し付けながらその恥ずかしい声を消していた。

そんな妻を見下ろしていた英樹に、今までに感じた事のない不思議な感情が芽生えてきた。
この音を、そして妻のこの声を弟に聞かせたい……。
その感情は、決して弟に対するサービス的な感情ではなかった。恥ずかしい声を弟に聞かれる事により、更に激しく乱れて行く妻の姿を見てみたいという変態的な感情だった。
ムラムラと不気味な感情を胸に抱きながら、英樹は妻が顔を押し付けていた枕を乱暴に剥ぎ取った。そして、更にその指を乱暴に掻き回すと、枕を失った妻は「ダメぇ!」と情けない声を張り上げながら、慌ててベッドのクッションに顔を押し付けた。そんな妻はいつしか四つん這いとなり、卑猥に濡れた陰部を剥き出していたのだった。

(つづく)

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