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さよなら地下鉄2

2012/05/19 Sat 02:10

さよなら地下鉄2



そのまま駅のトイレに駆け込みたかった。
ペニスは萎んだものの、しかしトランクスの中は我慢汁でネトネトになっていた。
とりあえずこのネトネトした我慢汁を拭き取りたかった。
そしてそのままシコシコして、ムンムンと溜っているものを豪快に放出したかった。

しかし、駅のトイレは満員だった。
四つしかない個室の前にはズラリと人が並び、まるで行列のできるラーメン店の入口のような有り様だった。
仕方なくそのまま駅を出た僕は、近くのコンビニを目指して足を速めた。
マックの角を曲がり、コインロッカーを通り抜けながら、コンビニのトイレだったら汚物入れもある、と細く微笑んだ。

そんな僕には、コンビニのトイレで誰の物かもわからない使用済みナプキンでオナニーするという異常な性癖があった。
女の陰部に張り付いていたナプキンに精液をぶっ掛けるその瞬間は、凄まじい快楽を僕に与えてくれるのだ。

僕はコンビニに向かいながら、痴漢されていた女の悲痛な表情を思い浮かべた。
あの官能的な女の表情を思い出しながら、誰の物かわからぬ使用済みナプキンに射精してやろうと想像すると、再び胸の奥がムラムラと騒ぎ始めた。

コンビニのドアを開けると、生温かいおでんの香りが僕を包み込んだ。
さすがにいきなりトイレに向かう勇気はなく、とりあえず雑誌コーナーへと向かった。

どうでもいい雑誌を手に取り、パラパラとページを捲りながら店内を伺った。
駅裏にローソンが進出してきたせいか、客はポツポツとしかいなかった。

おにぎりを手にした労務者風の男がレジに向かった。
ピッピッとレジの音を立てる店員を横目で見ながら、今がチャンスだと雑誌をラックに戻した。

と、その時、雑誌コーナーのガラス窓の向こうに、どこか見覚えのある女が歩いているのが見えた。
(あの女だ!)
そう気付いた瞬間、心臓の鼓動が高鳴った。
おもわずその場にしゃがみ込んでしまいそうになった。

女は、相変わらず『イイ女』のオーラを醸し出しながら店内にやって来た。
コンビニのドアを開けた瞬間、雑誌コーナーの僕と一瞬目が合ったが、しかし女は僕に気付いていないのか、特に驚く様子を見せなかった。

女はカツコツとヒールを鳴らしながら、そのまま真ん中のラックの通路に入って行った。
すかさず僕は、ジュースを買うフリをして奥の冷蔵庫へと移動した。
そして、真ん中の通路でラックの商品を見つめる女を背後からソッと見つめた。

オナニーをする直前に女に会えたのはラッキーだった。
ベージュのミニスカートには尻の形がくっきりと浮かび上がり、それは、ついさっきまで見ず知らずの他人男に散々弄ばれていた尻なんだと思うと、異様な興奮に包まれた。
痴漢男は、あのムチムチの尻肉を撫でたり揉んだりしていたのだ。
あれだけの美尻を、無料で好き放題にする事ができたあの男が素直に羨ましかった。

急速に勃起した僕は、素早くその場にしゃがんだ。
しゃがんだラックの下の段には安物のシャンプーが陳列されており、そのシャンプーを物色するフリをしながら息を殺す。

『さっぱりサラサラ&ヨーロピアンブレンド。植物物語』と、何が何だかわからないキャッチコピーが印刷されたPOP広告の隙間から、恐る恐る隣りの通路を覗いた。
ベージュのミニスカートから、ピンっと張りのあるアキレス腱、コリコリとした脹ら脛、そして男のペニスがグイグイと押し付けられていた太ももが伸びていた。

残念ながら下着までは見えなかったが、しかし、あのベージュのミニスカートの中には、ついさきほどまで痴漢男に弄られていた陰部が潜んでいるのかと思うと、もはやこの場でペニスをしごきたくなるほどに興奮してしまった。

そんな彼女の後ろ姿をしっかりと目に焼き付けた。
この後、コンビニのトイレで、誰の物かわからない使用済みナプキンをクンクンと嗅ぎながらオナニーする為にも、今ここで彼女の姿をしっかりと目に焼き付けておきたかった。
その使用済みナプキンを彼女のモノだと妄想設定すれば、より激しい興奮を得られるに違いなかった。

女は商品を手にすると、その商品の裏書きをジッと読み始めた。
女が何を手にしたのか興味が湧いてきた僕は、ゆっくりと立ち上がると、ラック越しに女が手にする商品を覗き込んだ。

女が手にしていたのはパステルピンクの箱だった。
その大きさやデザインからして、『お部屋の芳香剤』か何かに見えたが、しかし、そのラックにストッキングや生理用品が並んでいる事から見て、恐らくそれは十中八九パンティーであろうと思った。

女はその箱を手にしたままレジへ向かった。
僕は女のか細い後ろ姿を横目で見ながら、その箱が置いてあったラックへ向かった。
案の定、その箱は下着だった。
パステルピンクの箱には、『コンビニ限定・柔らかショーツ』と書かれていた。

僕はレジの前に立つ彼女の背中に語りかけた。
(朝っぱらからパンティーを買うなんて変だろ……もしかして痴漢の指に感じてパンティーを濡らしてしまったのか?……)
そう呟く自分のその言葉に、改めてムラッと興奮した。

女は、店員が商品を袋に入れようとするのを断った。
その箱をバッグの中に押し込むなり、女はヒールの音をカツコツと響かせながら奥のトイレへと向かった。

トイレの中に消えて行くヒールの音。
その音を聞きながら、胸底からムラムラと沸き上がる熱い息をハァハァと吐き出した。
痴漢されて汚れてしまった下着を、いそいそとコンビニのトイレで履き替える美人OL。
そのシーンを想像するだけで、激しい目眩をクラクラと感じてしまったのだった。


女がトイレから出てきたのは五分後だった。
女はトイレから出てくると、そのまま何事もなかったかのようにヒールをカツコツと鳴らしながら出口へ向かった。

僕は悩んだ。
今、トイレには彼女の香りがムンムンと溢れているはずだ。
今すぐトイレに駆け込めば、彼女の甘い香りに包まれながらオナニーする事ができるのだ。
しかし、今朝の痴漢に懲りた彼女は、明日から女性専用車両に乗込む可能性がある。
又、もしかしたら電車時間を変えてしまう恐れもある。
そうなれば、もう二度と彼女とは会えないかもしれないのだ。
彼女の香りに包まれながらのオナニーを取るか、それともこのまま彼女を尾行して、彼女の職場を調べるべきか、僕は激しく悩んだ。

しかし、そう悩んでいるうちに、弁当コーナーをあれこれと物色していた若いサラリーマンが、不意にトイレに向かって歩き出した。
無情にもトイレのドアを開けるサラリーマン。
それを見た瞬間、僕はコンビニの出口に向かって走り出していたのだった。

彼女の後を少し離れて歩いた。
駅前の歩道は出勤途中のサラリーマンと通学途中の学生で溢れ返っていた。
目的に向かってただひたすらに無言で進む彼らは、まるで蟻のようだった。

そんな人混みの中を、僕は彼女のスラリと伸びる背中を見つめながら歩いた。
歩道に溢れるこの大勢の人々は、あの綺麗なOLが、ついさっきまで痴漢に陰部を弄られていた事など夢にも思っていないだろう。
その挙げ句に下着を汚してしまい、すぐそこのコンビニで新しい下着に履き替えた事など、ここにいる誰一人として知るはずがなかった。
その秘密を知っているのは、世界中で唯一僕だけだった。
そう思うと異様な嬉しさが込み上げてきた。
その秘密を共有する事によって、彼女とは他人ではない気がしてならなかった。

駅前の大通りから一本抜けると、急激に人の数が減った。
古い飲食街の路地を通り抜け、駅裏方面へと進んで行く。
僕はそんな彼女を尾行しながらも、彼女が左手にぶら下げるバッグをジッと見つめていた。
あのバッグの中には、痴漢に汚されたパンティーが無造作に押し込められているのだろうかと思うと、居ても立ってもいられない焦燥感に襲われた。

(なんとしてもあのバッグが欲しい……)

乾いた喉にゴクリと唾を押し込みながら、握り拳に溜る汗を指先に感じた。

駅裏の六車線道路に出た彼女は、石畳の歩道を南に向かって歩き出した。
人通りの少ない歩道には砂埃と排気ガスが溢れ、百メートル間隔で植えられている樹木にはサラ金の看板がブラブラと風に靡いていた。
車の交通量は激しかったが、しかし歩道は閑散としていた。
今ならあのバッグを引ったくるのは簡単だ、と思うと、僕の額にジワリと汗が滲んだ。

興奮した僕の足は自然に早くなっていた。
彼女との距離がみるみる縮まって行く。

どうやって奪い取ればいいんだ……
バッグを奪い取った後、どこにどうやって逃げればいいんだ……
大声で叫ばれたらどうすればいいんだ……

彼女との距離が近付くにつれ、そんな不安に包まれた。

バカ!
制服のまま引ったくりなんかしたら、すぐにバレてしまうじゃないか!

ふと、冷静になった僕は、そう思いながら渋滞する六車線道路を横目で見た。
そこには、ハンドルを握る大勢の人の目が、防犯カメラの如くギラギラと輝いていた。

危うく人生を台無しにする所だった。
美人OLの濡れた下着一枚と人生とを引き換えにする所だった。
危ない危ない、と思いながら再び彼女との距離を保った矢先、突然彼女の姿が歩道から消えた。

えっ?
と慌てて目を凝らした。
前方に六車線道路の交差点の手前に地下道の入口が見えた。
そして、その地下道の階段にズンズンと沈んで行く彼女の栗毛色の髪が見えた。

そこは、何度か通った事のある地下道だった。
やたらと長い、薄ら淋しい地下道だ。

僕はドキドキしながら足を速めた。
この交通量の激しい歩道では無理だが、しかしあの人気のない地下道なら……
そう思いながら地下道の階段を駆け降りる僕の頭からは、既に冷静な判断は消え失せていたのであった。

(3へ続く)

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