いじめられっ娘7(最終話)
2012/11/17 Sat 04:25
(25)
嫉妬と興奮に顔を赤らめた真野は、足音を立てずにラックの裏へ回った。
座ったままのタンポポの背後にソッとしゃがんだ真野は、タンポポの耳元に静かに囁いた。
「気持ちいいか……」
するとタンポポは、イヤイヤと首を振りながら真野に振り向くと「もう帰ろ」と泣きそうな表情を見せた。
真野はそんなタンポポを無視しながら、股の下でもがいている青年の顔を覗き込んだ。
そして青年の舌が激しく蠢くワレメを見つめながら、タンポポに「凄いね」と笑って見せた。
「ヤダ……見ないで……」
タンポポは、股間を覗き込む真野の視線を遮るように真野の体に凭れ掛かった。
タンポポの小さな頭部が、まるで六本木の白人ポールダンサーのように真野の肩の上でゆるやかに踊る。
そんなタンポポの耳に唇をあてながら、再び真野は囁いた。
「見ず知らずの人にアソコを舐められるのはどんな気分だ……」
するとタンポポは「あぁぁん」と顔を左右に振りながら、「恥ずかしい……」と真野の目をソッと見上げた。
そんなタンポポの生温かい息が真野の頬を優しく撫でた。タンポポの生温かい息には、ハイチュウのイチゴの甘い香りが微かに漂っていた。
そんな女子高生の生息に刺激された真野は、素早くタンポポの両脇に腕を入れ、そのままタンポポの細い体を立ち上がらせた。
「えっ?」
床に寝転がる青年が、口の回りをギトギトに輝かせながら慌てて真野を見た。
「えっ、じゃねぇよアホ。なに勝手に舐めてんだコノ野郎。テメーのような変態豆モヤシはとっととセンズリグッズ買って帰りやがれ」
嫉妬に駆られた真野が青年を見下ろしながらそう毒づくと、青年は何が何だかわからない表情で目を白黒させながらその場に固まっていた。
床に脱ぎ捨てられていたトレンチコートを素早く拾い、それをタンポポの肩に掛けた。そしてタンポポをレジの方へと追いやると、真野はまだ寝転んだままの青年にソッと振り返った。
「おまえ、今すぐ病院行った方がいいぜ。あの女、びっくりするような性病を4つばかし持ってるからよ」
真野がそう笑うと、青年は一瞬悩んだ後、いきなりガバッと起き上がり、そのまま店の外へと飛び出して行ったのだった。
ケラケラと笑う真野は、レジで唖然としている店長に向かって「ちょっとトイレ借りるよ」と言うと、そのままタンポポをトイレに連れ込んだ。
「あの変態豆モヤシにどこ舐められたんだ……」
タンポポの耳にそう甘く囁きながら、タンポポの体をトイレの壁に押し付けた。
「……ここ……」
タンポポは興奮気味に目をギラギラと輝かせながら真野を見つめ、自分の股間を指差した。
「どれ……足を広げてみろ……俺が綺麗に舐めてやる……」
真野がそう囁きながらタンポポの足下にゆっくりとしゃがむと、タンポポは自らの意志で左足を便器の上に乗せると、しゃがんだ真野に開いた股間を向けたのだった。
タンポポの女陰には、青年の唾液臭と淫媚な肉汁の香りが熱を帯びてムンムンと漂っていた。
そんな股間にむしゃぶりついた真野は、大きく伸ばした舌をワレメの縦割れに沿ってダラダラと舐めまくると、そのまま舌先を上にあげ、プクリと膨れたクリトリスをコロコロと転がした。
「あぁぁん!」と背筋を伸ばして喘ぐタンポポは、便座の上のサンダルをガタガタと音立てながら「先生、もう入れて!」と切ない声を上げた。
真野はゆっくりと立ち上がると、ニヤリと微笑みながら口の回りの汁を袖で拭き取った。
そして左手でタンポポの幼気な乳首を弄りながら、スボンのベルとをカチカチと外し始めたのだった。
(26)
「タンポポのオマンコ、凄くヌルヌルに濡れてたよ……あの青年に舐められて感じちゃったのかい?」
そう言いながらスボンから強烈に勃起したペニスをビヨヨン!っと跳ね上がらせた。
タンポポはその細い指で、ヒクヒクと痙攣する真っ赤な亀頭をギュッと握りながら「ごめんなさい……」と呟いた。
「今まで、イジメられっこ子達に色んなおじさん達を紹介されてただろ……その時も、本当は感じてたんじゃないのか?」
真野はそう笑いながらタンポポの顔を覗き込む。
タンポポは真野のペニスをゆっくりと上下させながら、無言でコクンと頷いた。
「おじさん達にホテルに連れて行かれて、そこで滅茶苦茶に犯されてる最中も、本当は感じてたんだよね?」
更に念を押すようにそう聞くと、タンポポは右手をシコシコと動かしながらコクンと頷き、そして瞳を恥ずかしそうに輝かせながら「ごめんなさい……」と呟いた。
そう「ごめんなさい」と呟くタンポポが、可愛くもありショックでもあった。
真野の頭の中で、薄汚れたおじさん達に好き放題に犯されまくるタンポポの姿がムラムラと沸き上がってきた。
強烈に切なさを感じた真野は、無性に射精したくて堪らなくなった。
タンポポのサラサラとした髪を鷲掴みにしながら、そのままトイレの床にベタリと腰を下ろした。
そして「しゃぶれ、ほら、おまえの大好きなチンポだ」と、その薄汚れたおやじをこっそりと演じながら、タンポポの顔を自分の股間に押しあてた。
「うぅぅん……」と子猫のような声で唸るタンポポは、迷う事無く真野のペニスにしゃぶりついた。
小さな口の中に真野のペニスをズッポリと押し込みながら、ブジュブジュといやらしい音を立てて顔を上下に動かし始めた。
覚醒剤により異常敏感になっていた真野の亀頭は、タンポポの生温かい口内で、まるで生き物のようにヒクヒクと動いた。
タンポポの窄めた唇がペニスの竿を上下し、絶妙な快感が真野の脳味噌を襲う。
タンポポの美乳が真野の太もものムニュっと押しあてられていた。
そんな美乳を右手で弄びながら(このオッパイも、この可愛い乳首も、そしてあの小さなワレメも、みんな変態親父達にベロベロに舐められてはドス黒いチンポをズボズボに入れられていたんだ……)と、その淫らな光景をリアルに想像し、トイレの冷たいタイル床に尻を押し付けながらムンムンと興奮する。
「ハァハァ……おじさんのチンポは好きか?……ハァハァ……ホームレスとかにレイプされてみたいか?……ハァハァ」
興奮しながらもそんな言葉をタンポポの耳元で囁いていると、ふいにペニスを銜えたままのタンポポがチラッと真野を見た。
タンポポのその大きな瞳は、明らかに欲情している変態牝豚の目の輝きをしていた。
そんな淫らな女子高生の瞳に見つめられながらペニスをしゃぶられていた真野は、突然、「うっ!」とスタッカートな唸りをあげると、尻をモゾモゾさせながらタンポポの口の中に大量の精液を発射したのだった。
そんな真野の精液をゴクリと飲み込んだタンポポは、恥ずかしそうに真野を見つめながら「苦っ」と笑った。
精液と唾液がネトネトに絡み付くペニスを未だピクピクと動かす真野は、微笑むタンポポの顔を覗き込みながらポツリと聞いた。
「池田先輩の事……好きだったの?」
池田先輩と言った瞬間、タンポポの顔からサッと笑顔が消えた。
タンポポは無言のままゆっくりと視線を落とし、トイレのタイル床の溝を細く長い爪先でカリカリと弄った。
「……変な事聞いちゃったね……ゴメン……」
真野が静かにそう詫びると、タンポポはゆっくりと視線をあげ、その大きな瞳で真野を見つめたまま「うぅぅぅん」と首を振った。
そんなタンポポの大きな目には、今にも零れ落ちそうな涙がウルウルと浮かんでいた。
そんなタンポポの不意な涙を見せられた真野は、再び強烈な嫉妬に駆られた。
池田先輩に対するメラメラとした嫉妬心が、次第に異様な性的興奮と変わり、そして残酷性な欲望がムラムラと漲って来た。
覚醒剤が効いている真野のペニスは、まるで疲れを知らない野生の生き物だった。
真野は肉体も精神もそう残酷的に燃え上がらせながら、再びタンポポの柔らかい髪を鷲掴みにした。
そしてタンポポの小さな顔を覗き込みながら呟いた。
「池田先輩の頭、電車に轢かれてグチャグチャになってたぜ……」
タンポポの表情がキッと引き攣った。
そんなタンポポの顔をジッと睨みながら、髪を掴んだままゆっくりと立ち上がった。
そしてタンポポの身体を壁に押し付けると、その引き締まった尻をおもいきり叩きながら、「先輩の脳味噌、ぶどうみたいな紫色してたよ……」と囁き、そのコケティッシュな尻のワレメに勃起したペニスを突き刺した。
獰猛なペニスが、立ったままのタンポポの中にニュルっと挿入された瞬間、壁に顔を押し付けるタンポポが「わあっ!」と声を出して泣き出した。
しかし真野は容赦する事無く、まるでサンドバッグを殴るボクサーのように、黙々と腰を動かし始めた。
ガンガンと揺れるタンポポの小さな体を両手で支える真野は、号泣するタンポポを背後から抱きしめながら、再びその耳元に囁いた。
「先輩はボロ雑巾みたいに電車に引きずられてたよ……線路の周りに先輩の手首とか内臓とかがゴロゴロと転がっててさぁ、小さな目玉なんかが線路の脇の溝の中にポトンって落ちてて、それが恨めしそうにジッとこっちを見ていたよ……」
真野がそう囁きながら腰を振ると、タンポポは「やめてぇ!」と絶叫しながらトイレのタイル壁に爪を立てた。
「やめてじゃねぇよ! てめぇが俺にそうしてくれと頼んだんじゃねぇか!」
真野はそう叫びながらタンポポの小さな顔をタイル壁にゴン! と叩き付けた。
「てめぇが殺したんだよ……てめぇが大好きな池田先輩をポロ雑巾のように殺しちまったんだよ!」
そう叫びながらタンポポの細い左足を高く抱えた真野は、その歪に開かれた股間の中にペニスをズボズボとピストンさせ、「てめぇが先輩を殺したんだ!」と何度も何度も叫んだ。
タンポポは感じてるのか泣いてるのかわからないような声を張り上げ、小さな体を上下に揺らしていた。
そんなタンポポをもっと残酷に虐めてやろうと、次の言葉を考えていた真野だったが、しかし、ペニスが激しくピストンされる度に、タンポポの性器から「ピシャ! ピシャ!」と、まるで水鉄砲のように吹き出している汁を発見した瞬間、真野は何とも言えない恐怖に襲われた。
(好きな男が殺された話しを聞きながら潮を噴くなんて……こいつは……本物のマゾだ……)
そう思った瞬間、真野の尿道からも水鉄砲のように精液が発射された。
女子高生の窮屈な性器の中でドクドクと射精する真野は、そんなタンポポのマゾヒズムな表情を必死に見つめながら、この女だけは絶対に誰にも渡さねぇからな……と、静かにサディズムな笑いを浮かべたのであった。
(27)
「……だからね教頭先生、何度も言いますけど、私は別にそう言う意味で言ってるんじゃありませんよ。こんな悪質な生徒をね、天下の帝王高校のエースとして甲子園のマウンドに立たせてもいいのかっと、私は先生方に聞いてるんですよ」
真野が溜め息混じりにそう言うと、禿げ上がった大きな額の汗をハンカチでズリズリと拭きまくる教頭は「御尤もでございます……」と深々と頭を下げた。
するとその瞬間、またしてもその隣りに座っているユニホーム姿の監督が「しかしですねぇ」と真野をジロリと見つめた。
「こんな淫らな事をした野球部員は天野だけなんです。他の生徒達はですね、甲子園だけを目指し、毎日毎日死ぬような練習を積み重ね、それこそ血反吐を吐いて頑張っているんです」
そう熱く語る監督に、真野は冷ややかな目をソッと向けながら、「だからこの事件を揉み消せという事ですか?」と尋ねた。
すると監督は「いや、揉み消せという意味では……」とシドロモドロになりながら口ごもり、イソイソとその視線をテーブルへと落とした。
真野は、そんな監督の視線の先にある『卑猥な写真』を指差しながら、「あなたは人間として、教育者として、この残酷なレイプ事件を揉み消せとおっしゃるのですか!」と、ここぞとばかりに声を張り上げた。
するとたちまち慌てた教頭が「まぁまぁまぁ」と両手で真野を制止しながら、「で、口止め料はいかほどに……」と、その濁った目で真野の顔をソッと覗き込むのだった。
こんな茶番劇を、この暑苦しい帝王高校の校長室でかれこれ4回も繰り返していた真野は、そろそろ潮時だなと、その教頭のハゲ頭をジロッと睨んだ。
「まぁ、私としましても、これまで一生懸命頑張って来た生徒さん達が甲子園を出場停止されるというのは可哀想だと思いますし、又、それを望んでいるわけではないんですよ……」
真野はそう言いながら、冷たくなったお茶を一口ガブリと飲んだ。
そしてゆっくりと顔をあげると、教頭先生の濁った目をジッと見つめながら、
「ただね、だからと言ってこのままこの事件を有耶無耶にされてしまっては、あまりにもレイプされたこの少女が可哀想過ぎるという事を、私は言いたいんですよ」
と、テーブルの上にズラリと並べられた、天神様とタンポポの乱交写真をトントンと指差しながら、力強く唸った。
「それは御尤もでございます!」
すかさず教頭がそのハゲ頭を深々と下げた。
こいつはこの言葉をかれこれ20回以上は繰り返しているな、と教頭のそのハゲ頭を見ながらふと思うと、不意に真野は可笑しくてたまらなくなってきたのだった。
『幸せの家』に戻ると、居間ではタンポポと東田君がケラケラとはしゃぎながら『人生ゲーム』をしていた。
帰って来た真野を見るなり「先生、僕、なぜか子供ばかり生まれるんです」と、それが無性に可笑しくて堪らないといった感じで東田君がそう言うと、真野は「だからなんだ」と冷ややかに答えながら、その人生ゲームの上をバリリリリっと踏んだ。
「あっ!」と絶句する東田君をカチ無視しながら、真野はタンポポに「ちょっと来なさい」と言い、そのまま居間を出ると奥の和室に向かった。
「ねぇ、どうしてあんな事するの、可哀想じゃない東田君……」
タンポポがそう言いながら廊下を走って来た。
そんなタンポポにクルッと振り向いた真野は、走って来たタンポポの顔先に人差し指を突き付けながら言った。
「あいつは重度のキチガイだ。あんなキチガイと仲良くするんじゃない!」
そう指を差しながら叫ぶ真野を、キョトンっと立ち止まって見つめていたタンポポが、いきなり「ぷっ」と吹き出した。
「……な、なにが可笑しい!」
慌てて叫ぶ真野に、タンポポは「だって先生、エガちゃんみたいなんだもん」と、更に声を上げながら笑ったのだった。
奥の和室に入ると、興奮気味の真野は「早くその襖を閉めろ!」と叫びながらタンポポを焦らせた。
「……どうしたの先生、そんなに真っ赤な顔して……」
襖を閉めたタンポポが、そう言いながら真野の前にペタンっと座ると、真野はいきなり「ぎひひひひひひひひ」と奇妙な笑いを浮かべながらバッグの中から何かを取り出した。
「見ろ! よーく見ろ!」
そう笑いながら真野が畳の上にドサッ!と置いたのは、一万円札がギッシリと詰まった札束の塊だった。
「わっ!」
大きな目を更に大きくさせたタンポポはしばらく停止していた。
そして、そのままゆっくりとその大きな目玉で真野を見上げ、「全部でいくらあるの……」と恐る恐る聞いた。
真野はニヤニヤと笑いながら札束の1つを摘まみ上げ、「これひとつで100万だ」と、その束をタンポポの足下にポンッと投げた。
「って事は……」と、床の札束をひとつひとつ指を差して数え始めたタンポポは、いきなり素っ頓狂な声で「800万円!」と叫んだ。
「そうだ。800万だ。帝王高校が300万出して、天神様のお母さんが500万出してくれた」
真野はそう言うと、顔をクシャクシャにさせてクックックックッと笑いながら、「さすが天神様だ」と呟いた。
恐る恐る札束を手にしたタンポポが、それをパラパラパラっと捲ると、「でも……こんな事して捕まらないの?……」と不安そうな目で真野を見た。
すかさず「大丈夫」と真野は自信ありげに頷いた。
「この金は、あくまでも『幸せの家』への寄付金って事になってる。だから恐喝で逮捕される事もなければ、税金でふんだくられる事もないってわけだ」
真野はそう言うなり「ギャハハハハハ!」と笑い出し、そしていきなりタンポポの細い体をギュッと抱きしめると、「ハワイか? それともサイパンか? どこでも好きなとこ連れてってやるぞ!」と、まるで子供のようにはしゃぎまくったのだった。
(28)
その2日後、さっそく真野は近所の不動産屋へ行き、「東京タワーが見えるマンションを探してるんだが……」と、まるで子供のように目をキラキラと輝かせながら聞いた。
すると不動産屋のオヤジは、「東京タワー?」と訝しげに首を傾げ、それならもっといい物件があるよ、と、スカイツリーが真正面に見える高級マンションを出して来た。
そんなオヤジに、真野はまるで仕返しするかのように「スカイツリー?」と訝しげに首を傾げた。そして、そんなモンで喜んでるのは田舎者だけだよ、と吐き捨てると、逆にその書類を突き返してやったのだった。
三軒目の不動産屋で、六本木の飯倉片町にあるマンションを見つけた真野は、早くタンポポにそれを知らせてやりたいとウキウキ気分で幸せの家へと向かった。
そのマンションは家賃こそ目玉が飛び出るくらいに高かったが、しかし、そこはタンポポの子供の頃からの夢である『東京タワーの見える部屋』という立地条件にピッタリであり、真野は多少家賃が高くても、どうしてもタンポポの夢を叶えてやりたいと、強引にそこを選んだのだった。
そんな東京タワーの見えるマンションへは、敷金の全額を納め次第、入居できる事になっていた。
礼金敷金合わせて320万。明日にでも速攻で振り込むからと不動産屋のオヤジに啖呵を切った真野は、薄汚い長屋が並ぶ路地を歩きながら、この庶民の据えたニオイとももうお別れだな、と、嬉しそうに笑った。
しかし、そんな真野は、長屋の路地の真ん中でふと立ち止まった。
タンポポと2人で東京タワーの見えるマンションで住むとなると、幸せの家にいる東田や春日はどうしたものか……と。
しかし真野はすぐに歩き出した。
あんなキチガイの面倒を見るのはもう懲り懲りだ。東田も春日ももう自由にしてやろう。
そう思いながら歩く真野の足は、更に軽やかになり、いつしか真野は長屋の路地をスキップしていたのだった。
幸せの家に着くと、真野はその物件の書類を一刻も早くタンポポに見せてやろうと、「タンポポ! おいタンポポ! 」と叫びながら玄関に飛び込んだ。
が、しかし家の中はシーンと静まり返り、玄関の柱時計だけが、カッチ、カッチ、カッチ、とリズミカルな音を立てていた。
「あれ?」と思いながら居間の襖を開けると、いつもは点きっぱなしのテレビが消え、いつも散らかしっぱなしのチャブ台の上も妙に綺麗に片付いていた。
一瞬、真野の胸を嫌な予感がスーッと通り過ぎた。
そう、この妙な静けさは、5年前、妻が子供を連れて逃げて行った時と同じだったからだ。
そんな静けさに背筋をゾゾっとさせた真野は、口の中で「タンポポ、タンポポ」と呟きながら、奥のタンポポの部屋へと走った。
そして、奥の部屋の襖をザザザッ!と開けた瞬間、その嫌な予感が現実として真野に襲い掛かって来た。
タンポポの部屋はスッキリと片付いていた。
いつもよりも布団が綺麗にたたまれ、散乱していた少女マンガが綺麗に積み重ねられていた。
そんなシーンッと静まり返った部屋を、心臓をドクドクと鳴らしながらゆっくりと見回す。
今まで部屋の片隅に置いてあったボストンバッグが消えていた。そして、押入れの襖の前にぶら下げてあったジャンパーやワンピースなども、全てスッキリと消えている。
心臓のドクドクが更に激しくなって来た。
(嘘だろ……)と呟いた時、ふと布団の上に、ポツンと紙切れが置いてあるのを発見した。
『先生へ
ごめんなさい。
でも、もうイジメられるのは嫌なの……。
だからごめんなさい。
さようなら』
真野の全身から急激に力が失せて行った。
心の中で(嘘だろ)を何度も何度も唱えながら、その走り書きを繰り返し読み返し、不意にタンポポのあの天使のような笑顔を思い出した。
(タンポポ……)
呟きながらメモをクシャッと握り潰すと、そのまま畳んである布団の上にバタリと倒れた。
そんな布団には、タンポポの甘い香りが残っていた。
タンポポの甘い匂いを嗅ぎながら、タンポポの「先生、ヤダぁ」という切ない声を思い出した。そして同時に、タンポポの丸い尻と小さなオッパイ、そしてベッドの上で怪しく乱れる小悪魔的なあの動きが、リアルに真野の脳裏に甦って来た。
突然、ガバッ! と起き上がった真野は、「もうイジメないから!」と大きな声で叫ぶと、慌ててポケットから携帯を取り出した。
「絶対にイジメません! 神様に誓います!」
そう叫びながらタンポポの携帯に電話を掛ける。
『おかけになった電話番号は、電波の届かない場所におられるか、電源が入っていないため掛かりません……おかけになった電話番号は、電波の届かない場所におられるか、電源が入っていないため掛かりません……』
無情なアナウンスが繰り返し繰り返し真野の胸を突き刺した。
真野は狂ったようにリダイヤルを押した。押しては切り、切っては押してを繰り返しながら「東田君!」と叫びながら2階へ走った。
もしかしたら東田がタンポポから何か聞いているかも知れない、という望みを抱きながら階段を駆け上がり、ノックもせずに襖をガラガラガラっと開けると、第二の衝撃が真野の脳味噌を直撃した。
その荒れ果てた部屋は、明らかに悪意が込められていた。
いつも敷きっぱなしだった布団は、シーツがビリビリに破かれ、おまけに布団には小便がぶっかけられ、その中央には半分に千切られた黄色いウンコが、中途半端に転がっていた。
ビリビリに破かれたカーテンや絨毯の所々には焦げ後があり、それは恐らくこの家を放火しようとしたに違いなかった。
そんな荒れ果てた部屋の真ん中に、例の如く1枚のメモ用紙がポツンと置いてあった。
『先生へ。
ざまあみろ。
死ね。
カリカリ目糞』
最後のカリカリ目糞の意味はわからなかったが、しかしその書き置きからは、今まで蓄積された恨みがムンムンと伝わって来た。
(あいつらは2人で駆け落ちしたというのか……)
強烈な絶望に打ちひしがれながら、真野は急いでタンポポの実家に電話を掛けた。
スリーコールでタンポポのお母さんが電話に出た。
「あのぅ、幸せの家の真野ですが……」
真野がそう言うと、タンポポのお母さんは何もなかったかのように「いつも娘がお世話になっております」と、いつもの口調でそう答えた。
恐らくタンポポは、逃亡した事をまだ母親には伝えていないのだろう。
真野は、今ここでタンポポが逃亡した事を母親に知られてはマズいと思い、「あれ? 東田君の家と間違えました、すみません」と、とぼけて言うと、そのままプッと電話を切った。
真野はもう一度タンポポの部屋を詳しく捜索してみようと、階段を駆け下りた。
よりにもよってどーしてタンポポはあんなキチガイを選んだんだよ! と、叫びながら、玄関の柱をおもいきり蹴飛ばし、あまりの痛さに「うぎゃ!」と叫びながら廊下をのたうち回ると、それで頭が冷やされたのか、ふと真野の頭に(どうせすぐに帰って来るだろう)という、冷静な考えが浮かんだ。
真野はジンジンと痛む爪先を押えながら、廊下に寝転んだままジッと静かに考えた。
方や女子高生と、方や精神異常者だ。
一文無しのこの2人がいったいどこまで逃げられると言うのだ……
どうせそのうち、腹が減ったら「先生、ごめんなさい……」と泣きながら帰って来るに決まってる。
あの2人に野宿をしたりゴミ箱を漁るような、そんなホームレスの真似事が出来るはずがないじゃないか……
真野はゆっくりと起き上がりながら、フーッと大きな溜息を付いた。
そして、もし2人が帰って来ても、東田だけは絶対に家に入れてやるもんかと、子供のように意地悪く笑った。
しかし……タンポポが帰って来るまでの間、セックスの処理はどうしたものか……と、そんなバカな事を考えながらドカドカと台所へと行き、冷蔵庫からキンキンに冷えたビールを取り出した。
そしてペキン! っとビルーの栓を抜くと、それをそのままゴクゴクとラッパ飲みしながら(まぁ、取りあえずは、タンポポが帰って来るまでの間は風俗でもハシゴしながら性欲を発散しておきますか……俺様はこー見えても金持ちなんだしねぇ……)と、天神様からふんだくった800万が隠してある引き出しを開けた瞬間、真野はおもいきりビールを「ブッ!」と吹き出した。
棚の奥に隠しておいた800万は見事に消えていた。
引き出しの中には、半分に千切られた黄色いウンコの片割れがポトンと置いてあるだけだった。
(嘘だろ?……)
その東田君のモノと思われるウンコの片割れを指先でツンツンと突きながら、真野は呆然とした。
金を盗られたというショックと、その金がある以上、タンポポはここには帰って来ないというショックが入り乱れ、真野の脳味噌は途方もない絶望感に包まれた。
真野はそのウンコの片割れを強く摘んだ。ウンコはいとも簡単にクニュッと潰れ、その潰れた部分から強烈な臭気を発した。
(全てが終わった……)
真野は指に付いたウンコの破片を壁に擦り付けると、その指をソッと嗅ぎながら、一言「臭いな……」と呟き、そして微笑んだ。
指のウンコを嗅いでいると、次々に可笑しさが込み上げて来た。
なにがそんなに可笑しいのか自分でもわからないままゲラゲラと笑いまくり、笑ったまま裏口へ行くと、そこにポツンと置いてある灯油のポリタンクを手にした。
(できれば盛大にガソリンといきたい所だが、ガソリンを買う金も残ってねぇし……これで諦めるしかねぇよな……)
まずはタンポポの部屋だった奥の和室に向かった。
ポリタンクをタンポポの布団に傾けると、タポタポという音を立てながら灯油が溢れ出した。
タンポポの匂いが残る、布団とカーテンとクッションにたっぷりと灯油を染み込ませると、今度は東田の部屋へ行こうと廊下に出た。
灯油がダラダラに垂れたポリタンクを抱えながら廊下に出ると、玄関に女が立っていた。
「あっ」と真野が足を止めた瞬間、真野の手からポリタンクがドタン! と床に落ち、ひっくり返ったポリタンクの口から、タポタポタポと音を立てながら灯油が廊下に広がった。
「先生……ごめんなさい……」
玄関の女はそう呟きながらスルスルと服を脱ぎ始めた。
「ど、どうして東田なんかと!……」
真野の声は、強烈な嬉しさと猛烈な怒りで震えていた。
「あ、あいつは人生ゲームしかできないキチガイじゃないか! ゲームはできても、本当の人生はあいつには無理だ!」
真野がそう叫ぶと、女は再び「ごめんなさい……」と言いながら、その場にゆっくりとしゃがみ、そして静かに股を開いた。
ジメッと湿っぽい股間に、ゴワッとした剛毛がアグレッシブに天を向き、その奥にはメラメラとした淫媚なワレメが貪よりと口を開いていた。
「タンポポ……」
真野はそう呟きながら、滝のような涙を一気に頬に流した。
そしてそのままフラフラと玄関に歩み寄ると、しゃがんでいる女の前にソッと腰を下ろした。
「先生……会いたかった……」
春日さんが貪よりと笑った。
春日さんは、真野に叩き割られたボロボロの前歯を剥き出しながら、秋田のナマハゲそのものの顔で嬉しそうに笑っていた。
「先生、好き!」
春日さんが放心状態の真野にガバッ! と抱きついた。
春日さんの頭からカツラがズルリと滑り落ち、真野に灰皿で叩き割られた痛々しい傷が真野の目に飛び込んで来た。
「先生、私、ピンサロでもソープでも何でもします! 先生の為なら何でもしますから、だから許して下さい!」
春日さんはそう叫びながら、まるで飼い主にじゃれる大型犬のように真野の頬に伝う涙をベロベロと舐めた。
そんな春日さんの身体をソッと引き離した真野は、春日さんの目を真正面からジッと見つめた。
そしてそんな春日さんの鼻に、ソッと人差し指を近づけた。
春日さんは、そんな真野の指先を、何の疑いも無くクンクンっと嗅いだ。
「く、臭い!」
おもわずそう叫んだ春日さんは、そのまま後ろに仰け反り、ドスンっと尻餅を付いた。
「臭いか?」
「……は、はい……」
「何のニオイだ」
「……ウンコ……」
「そうだウンコだ。これは東田のガキが俺に送りつけて来た挑戦状だ」
「……挑戦……状?」
真野はゆっくりと立ち上がると、尻餅を付いたままの春日さんにコクンと頷き、「そうだ。糞喰らえって事だよ」と、鼻で笑った。
「だから、今から東田を探す。そして、あいつが俺から奪ったモノを全て取り返す」
春日さんは無言でゴクリと唾を飲んだ。
「おまえ、俺の為に何でもすると言ったが……東田を殺す事が出来るか?」
春日さんは一瞬戸惑いながらも、しかしすぐに目をギラリと輝かせて「ぶち殺してやります」と力強く立ち上がった。
そんな春日さんを見て、真野は再び不敵に微笑んだ。
タンポポを探し出し、そしてこいつが東田を殺せば、その時やっと俺とタンポポは2人きりで東京タワーの見えるマンションで暮らせるんだ。
真野はそんな春日さんのブヨブヨに太った肩をそっと抱きながら、「いいシャブあるぞ。今夜はおまえの退院祝いだ」と豪快に笑った。
坊主頭にムカデのような傷跡を残酷にギラリと輝かせる春日さんは、なぜか「ギャオウ!」と、まるでベトナム戦争が終結した直後のアメリカ兵のように、拳を掲げて雄叫びをあげた。
その直後、それまでイジメられっ子だった春日さんは、イジメられっ子からイジメっ子へと見事に転身を次げた。
そんな春日さんという頼もしい相棒を手に入れた真野は、指のウンコ臭をクンクンと嗅ぎながら東田君に復讐を誓った。
そして、いつの日か必ずタンポポを見つけ出し、今度こそタンポポを最高級のいじめられっ娘に調教してやるんだと、いじめっ子の目をギラリと光らせながら不気味に微笑んだのだった。
(いじめられっ娘・完)
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