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下宿人5

2011/11/15 Tue 13:59

    下宿人5


 そんな事があってから、例の東田という男は閉店間近になると喫茶店にやって来ては、遅くまでグダグダと酒を要求するようになった。
 最近、頻繁に店にやって来ては遅くまで酒を飲んでいる東田に不審を抱いていた裕介だったが、しかし、そんな東田に平然としている明子の様子からすると、どうやらこの東田という男は、裕介がこの家に下宿する前からもこうして閉店後に酒を飲みに来ていたのではないだろうかと裕介はふと勘ぐった。
 その証拠に、東田がいつも飲んでいるウィスキーのボトルだけは、まるで隠すかのように別の棚に保管されており、又、竜雄が家にいる夜は東田は絶対に現れないのだ。

(もしかしたら、竜雄さんには内緒なのかも知れない・・・)

 そう思った裕介は、まさか明子はあの東田という嫌な男と浮気しているのではないかとまで想像し、今まで感じた事のない激しい恐怖を感じた。
 あの、竜雄が帰って来た晩にいつも階下から聞こえて来るいやらしい声を、明子は東田にも同じように発しているのかと思うと、裕介は東田の酔った顔を見る度に恐怖と嫉妬で気が狂いそうになっていたのだった。
 しかし、そんなある日の夕食時、明子と裕介が二人でカレーを食べていると、不意にその問題について明子のほうから話しを切り出して来た。
「いつも東田さんがお店でお酒飲んでる事さぁ、竜っちゃんには内緒にしておいてくれるかなぁ・・・」
 明子は、カレーのスプーンを止めたままいきなりそう呟くと、体裁悪そうに裕介の目を覗き込みながら、戯けるように「ねっ」と念を押した。
「どうしてですか?・・・」
 裕介は、憮然とした態度でカレーをかっ込みながらボソリと聞いた。
「だってさぁ、竜っちゃんってとってもヤキモチ妬きでしょ、店を閉めてから客にこっそりお酒出してるなんてのが竜っちゃんにバレたらさ、大変な事になっちゃうもんね・・・」
 明子は、まるで悪戯好きな女子高生のような口調でペロッと舌を出しながらそう言った。
「じゃあ、ヤメたほうがいいと思いますけど・・・・」
 裕介はそう呟くと、冷たいミネラルウォーターで喉のカレーをゴクリと押し流した。
「うん・・・アタシもそれはわかってるんだけどさぁ・・・」
 明子はそう言いながら、手持ち無沙汰に皿に広がるカレーのルーをスプーンでカサカサと集め始めた。そしてカレーのルーを1カ所に集めると、それを食べる事なく静かにスプーンを起き、ティッシュで唇の端に衝いているカレーを拭き取りながら、静かに裕介の顔を見た。
「でもね、実際、コーヒーだけじゃ苦しいのよね・・・コーヒーの売上げだけじゃ借金は返していけないのよ・・・それを竜っちゃんがわかってくれればいいんだけど・・・あの人、バカみたいにヤキモチ妬きだから・・・」
 明子は唇を尖らせながら、うっすらとカレーが付いたティッシュをポイッと屑篭の中に投げ捨てた。
 確かに、東田一人が払って行くお勘定がコーヒー30杯分に匹敵する事を、いつもレジを見ている裕介は知っていた。週に3、4回、東田が酒を飲んでくれるだけで、その月の売上げが何十倍にも膨れ上がっているのだ。
 だから明子が東田を特別扱いするのはわかるが、しかし明子は本当にそれだけの理由で東田を特別扱いしているのだろうかと、裕介は必要以上に勘ぐってしまう。
「だから、ね、お願い、この事、竜っちゃんには内緒にしてて・・・」
 明子はソッと裕介に両手を合わせると、片目を瞑ったまま「お願い」っともう一度言った。
 その仕草は40才のおばさんではなく、裕介のクラスにいる女子高生達と同じだ。
 そんな明子が妙に可愛く思えてしまった裕介は、そのままボソリと「わかりました・・・」っと返事するしかなかったのだった。

 そんなある晩、またしてもホロ酔い気分の東田が閉店間近に店にフラッとやって来た。
 明子は、洗い場で後片付けをしていた裕介に「ユウ君、後はアタシがやっとくから、もう休みなさい」と、耳打ちしながらニヤッと微笑むと、そのままカウンターから身を乗り出しては「いらっしゃーい」と戯けながら東田を出迎えた。
 東田は「いらっしゃいました!」と戯けながら叫ぶと、そのままフラ付く足でいきなりカウンターの中へと乱入して来た。
 そして突然明子の体に背後から抱きつくと、「アッコちゃん、今夜はちょっと飲み過ぎちゃったよ・・・」と甘えた声で、後から明子の胸を鷲掴みにしたのだ。

 それを見た裕介は、瞬間カッ!と頭に血が上り、水道の水を出しっぱなしにしたまま東田に飛び掛かりそうになったが、しかし東田に抱きつかれる明子がそんな裕介に振り返りながら、「大丈夫から、ね」と必死に笑っては何度もウィンクをし、暗に裕介に早くあっちに行けと促した。
「おお!息子!おまえもいたのかぁ!じゃあ今夜はオマエも一緒に飲も!な、な、」
 東田はそう言いながら今度は裕介に抱きつこうとして来た。
 それを明子が「もう、こんなに酔っぱらっちゃってぇ」と言いながら制止し、そのまま酔った東田を奥のボックスへと誘導する。
 そんな明子は再び裕介に振り返ると「もういいから、早く休みなさい」と再び笑顔で促した。
 裕介は明子の命令に素直に従うしかなかった。ここで明子の商売の邪魔をするわけにはいかないのだ。
 そんな裕介は、不満の表情を浮かべながら泡だらけの手を水道の水で素早く流すとキュッと水を止めた。
「今日はパチンコ儲かっちゃったから、新しいボトル入れちゃおっかなあぁぁぁ」
 そんな戯けた東田の声が裕介の背中に突き刺さる。
「わあっ、嬉しい」
 そんな喜ぶ明子の声が更に裕介の背中に突き刺さった。
 これ以上ここにいたら気が狂ってしまう、と、嫉妬に駆られた裕介は激しい怒りを感じ、そそくさと暖簾を掻き分けてはそのまま奥の居間へとズカズカと向かったのだった。

 それから、かれこれ2時間が過ぎようとしていた。
 明子の事が心配だった裕介は、風呂にも入らないまま居間でジッとテレビを見ていた。
 時折、店のほうから東田の野太い笑い声と明子の笑い声が聞こえ、その度に裕介はテレビの音量を消音にしては、2人が何を笑っているのかと耳を澄ました。
 しかし、そんな笑い声が響いて来ている間はまだ安心できた。今に、あの竜雄との時のような、明子のいやらしい声が聞こえて来るのではないかと、裕介は心配で心配で仕方なかったのだ。
 そうこうしていると、いつの間にかテレビの番組も深夜放送の枠に入って来たらしく、やたらと無名のお笑い芸人がくだらないゲームなどをしている番組ばかりになって来た。
 時計を見ると深夜1時を回っている。
 いつの間にか店から聞こえて来た笑い声も聞こえなくなり、店のほうは妙に不気味な静けさに包まれていた。
 裕介は心配になった。東田にボックスのソファーに体を押さえ付けられながら、必死で声を押し殺しては乱れる明子の姿が頭に浮かんで来た。
 裕介は足音を忍ばせながら店へと向かった。そしてシーンと静まり返った店内を、ソッと暖簾を掻き分けては覗いた。
 ピロポ、ポロッポ、と鳴っている麻雀ゲームの電子音だけが店内に谺していた。そのボックスに明子の姿も東田の姿もない。
 とたんに心配になった裕介は、思い切って暖簾からヌッと顔を突き出してみた。
 入口の前のカウンターでぐったりと酔いつぶれる明子の姿が見えた。きっと東田を送り出してから、そのままカウンターで寝てしまったのだ。
 草履を履いた裕介は「明子さん・・・・」と声を掛けながら明子に近付いた。
 カウンターにうつ伏せになっている明子は、そんな裕介の声に無反応だった。
 ペシャリペシャリと草履を鳴らしながらボックスの前を通り過ぎると、空のウィスキーのボトルが目に飛び込んで来た。
 かなり飲んでいるらしい。
 裕介は、カウンターにうつ伏せになっている明子の細い肩を静かに揺すりながら「明子さん・・・」ともう一度声を掛けてみた。
「うぅぅん・・・」
 明子はそう唸りながら、うつ伏せになったまま少しだけ目を開いた。
 そしてそこに裕介がいる事に気付いたのか、「ごめんねユウ君・・・酔っぱらっちゃったぁ」とうつ伏せになったままニヤッと笑った。
「とにかく、居間に行きましょ」
 そうやって裕介が明子の顔を覗き込むと、明子は酒臭い息を吐きながら「ごめんね・・・」とカウンターを立ち上がろうとした。
 しかし、まるで腰が抜けてしまったかのように、すぐに明子はガタンっと椅子に座り込んでしまう。
「行きましょ・・・」
 裕介は明子の腕を自分の首に回し、明子を抱えるようにして立ち上がろうとした。
「うぅぅん・・・今日は頑張り過ぎちゃった・・・ごめんねユウ君・・・」
 明子が裕介の体に凭れ掛かり、明子の甘い化粧品の匂いが裕介を包み込んだ。
「でもね、あいつ、3万円も置いててってくれたんだよ・・・ふふふふ、コーヒー百杯分・・・・」
 そう呟く明子を、よいしょっと持ち上げようとすると、ふいに椅子にだらしなく座る明子のミニスカートの中が裕介の目に飛び込んで来た。
 ほぼ泥酔状態といっていい、意識が朦朧としている明子を横目でチラチラと気にしながら、裕介はそんな明子のミニスカートの中の白いパンツをこっそりと見つめる。
「あいつ、スケベだから・・・そのくらいは払っても当然だよね・・・・」
 そう笑う明子のパンツは中心部分がぐっしょりと濡れ、椅子の座席にまでもジットリとシミを作っていた。
 そんなシミ付いた明子のパンツを見つめる裕介は、いったい明子は東田にどこを触られ何をされたのだろうかと、あらゆる妄想を頭に駆け巡らせ、そして自身の股間を強烈に固くさせて行ったのだった。


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