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愛と青春のポルノ映画館6

2012/04/01 Sun 01:01

   愛と青春の6

《解説》
ポルノ映画館の帰りにふと立ち寄ったラブホ。
援交で疲れて眠るミカの寝顔。
そんな寝顔にケンジはムラムラと欲情する。



《本編》
 ミカとケンジの初バイトは、想像していた以上に成果を上げた。
 果たして映画館と言う箱の中で、いったい何人の客をゲットできるだろうかと当初心配していたケンジだったが、しかし実際は、声を掛ける客その全てが見事に引っ掛かり、まさに入れ食い状態と言ってもいいくらいに客は次々にゲットする事ができた。
 そうやって次々に客を連れて来るケンジに、遂にミカが悲鳴をあげた。

「もう無理……壊れちゃう……」

 5人目の客だったニート風の大学生を送り終えたミカは、次なる客を捕まえに行こうとするケンジを慌てて止めてそう言った。
「でも、まだまだ客は沢山いるぜ」
 そう言いながら劇場の後の立ち見場で蠢いている男達をケンジはソッと見た。
「もうダメ。腰もアゴも動かないの。だから帰ろ」
 ミカが苦しそうな笑顔でそう微笑んだ。
 ケンジはあれだけの客を目の前にしてちょっと勿体無い気もしたが、しかし、商品であるミカが限界に来ている以上、それを素直に諦めるしか方法はなかった。

 映画館をそそくさと抜け出した二人は、警察が後を付けて来るかも知れないという恐怖に駆られながら、無言で深夜の商店街を小走りに抜けた。
 商店街のアーケードを抜けると、そのままシーンと寝静まった住宅街の路地に潜り込み、そこらじゅうに潜んでいる野良猫にひやっ!とさせられながらも映画館から遠離って行ったのだった。

 時刻は既に深夜二時を回っていた。
 オールナイトの映画館では次々に客が出入りしていた為、まだ時間は早いんだと錯覚していたケンジは、歩道を歩きながら何気に開いた携帯で時刻を知るなり、おもわず「うそっ!」と驚いてしまった。
「ごめんね、遅くまで付き合わせちゃって」
 歩道の水溜まりをヒョイっと飛び越えながら、ミカが申し訳なさそうにケンジの顔を見た。
「俺はいいけど、でも、吉岡は家のほうは大丈夫の?」
 ケンジは携帯をパタンっと閉じながらボソっと聞いた。
「うん。今夜は先輩の家に泊まって来るって言ってあるから」
 そう呟くミカを横目で見つめながら、ふいにケンジはさっきミカにセンズリを見られた事を思い出した。

(やっぱアレ、見つかってるよな……)

 ケンジがそう思えば思うほど歩道を歩く二人の空気が重くなり、そしてみるみる気まずくなった。
 ケンジは一刻も早くミカと離れたかった。さすがにセンズリを見つかった女と一緒にいるのは息苦しい。
「先輩の家ってどこなの?」
 ケンジはミカから目を反らしたままバス停の看板を見つめながらそう聞いた。そして「送るよ」とケンジが言おうとした瞬間、ミカが口を開いた。
「二丁目なんだけど、でも、もうこの時間だと無理かな……」
「じゃあどうすんの?」
 ケンジはチラッとミカを横目で見た。つい先程、見知らぬ男の膝の上でユッサユッサと揺らしていたミカの大きな胸がケンジの目に飛び込んで来る。

「今夜は、四丁目のラブホに泊まろうと思ってるの……」

 ミカがそう呟くなり、ケンジは驚いたように「リーベ?」と聞いてしまった。
 というのは、四丁目にあるその『リーベ』というラブホテルは、この町では知らない者はいない有名な幽霊ホテルだったからだ……。

 噂では、今から20年前、そのホテルで連続して6人の女が次々に自殺したらしく、その女達の霊がホテルを彷徨っているらしい。
 勿論そんな事実は無く、それはただの都市伝説に過ぎないのだが、しかし、そのラブホはかなりの年代物で外観も酷く老朽化している事などから、とかくこの町では幽霊ホテルとして有名なラブホだったのだ。

 そんな恐怖のラブホにこれから1人で泊まると言うミカに、ケンジは驚きを隠せなかった。
「怖くないの?」
 ケンジは恐る恐るミカの顔を覗き込む。
 するとミカは唇を尖らせたまま「怖いけど……」と俯いた。
 そして無言で数歩歩いた後、いきなり歩く速度を落としたミカがソッとケンジの顔を見た。
 ミカのその目にケンジは一瞬嫌な予感を感じた。

「一緒に泊まってくれる?」

 ミカが首を傾げた。そんなミカの目は捨てられた子犬のような目だった。
「絶対無理!」
 と、口に出かかっていた無類の幽霊嫌いなケンジだったが、しかしここでそうキッパリと断る勇気などケンジにあるわけがなかったのだった。


               ※


 四丁目の国道沿いに聳えるラブホテルは、まるでホラー映画のセットの為に作られたのではないかと思うくらい不気味に佇んでいた。
 蜘蛛の巣だらけの『空室有り』と輝く看板を恐る恐る横切り、ドラキュラ伯爵の館のような朽ちた洋風の塀をソッと覗いた。
 塀の奥には貪よりとした駐車場が並んでいた。しかし、この業界では書き入れ時のサタデーナイトというのに、車はポツリポツリとしかなく、ほとんどの部屋が『空室』の看板を灯らせていた。
「ガラガラだけど、どうする?」
 ケンジは後で肩を窄めているミカに振り返った。
「お風呂に入りたいの……だから早く行こっ」
 ミカはそう呟くと、そのままビビりまくっているケンジの背中をソッと押したのだった。

『206』と書かれたドアをソッと開けると、中から溢れるモワッとしたカビ臭が二人を包み込んだ。
「この部屋、相当使ってねぇよな……」
 独り言のようにそう呟きながら、ケンジはまるでお化け屋敷に入って行くかのように、ビクビクと腰を引きながら部屋の中へと進んだ。

 外観とは違い、中はそれほど古くはなかった。
 モアッとカビ臭いのを覗けば、そこは普通のラブホテルだ。
 しかし、今までにラブホなどという大人の場所に入った事のない童貞のケンジにしてみたら、そのやたらとヨーロピアンなインテリアの室内はまったくの異空間で、まるで中国の偽物ディズニーランドに来ているような、そんな錯覚に陥っていた。
「なんかスゲェなこれ」
 そう言いながら部屋中をウロウロと歩き回るケンジに、妙に場慣れしたミカがベッドに腰を下ろしながら「ねぇ」と声を掛けた。
「ん?」
 テレビの横のスロットマシーンを興味深げに覗き込んでいたケンジが振り返る。
「売上げなんだけど……」
 ミカは人差し指の爪をカツカツと噛みながらそう笑った。

 ポケットの中に押し込んでいた札を全てベッドの上に取り出した。
 金は全部で7万円あった。
 最初の3人の客は1万円だったが、しかしその後の2人の客からは2万円貰っていたからだ。
「凄い……」
 ミカはしわくちゃの7万円を握りしめながら嬉しそうに微笑んだ。
「やっぱり先輩の言ってた事は本当だったんだね。この調子で行けば百万円も夢じゃないわ!」
 ミカは「うふふふっ」と笑うと、その7万円をギュッと抱きしめた。
「ねぇ……その先輩って誰なの?そろそろ教えてよ……」
 ケンジは、なぜか「くまのプーさん」のカバーが掛けてあるソファーにゆっくりと腰を下ろしながら聞いた。
「ダメ。それは絶対に言えないの……」
 ミカは唇を尖らしながらそう言うと、ケンジの目から視線を反らしながら「それに……」と言葉を続けた。
「このまま知らないほうがいいと思う」
 ミカは、胸に溜っていた物を静かに吐き出すようにそう言うと、すぐさまサッと空気を切り替え、しわくちゃの7万円の中から2万円を抜き取った。
 そしてそれをケンジに向けながら「はい!バイト代!」と戯けるように叫ぶと、嬉しそうにクスッと笑ったのだった。

 そんなミカの言う「知らないほうがいいと思う」という言葉が妙に重たく胸に引っ掛かりながらも、しかし2万円という思いもよらぬ大金を手にしたケンジは、そのあまりの嬉しさに2万円をニヤニヤと笑いながら眺めては、そんなミカの言葉をスカしっ屁の如く忘れてしまった。
 ケンジは、もしこんな収入が続いてくれたなら1週間で14万円、1ヶ月で60万円、1年で720万円になるんだと、びっくりするくらいの単純計算の末に嬉しさのあまり悶え苦しんだ。

 と、そんなケンジがふと気付くと、「ふふん♪ふん♪」などと御機嫌に鼻歌を歌うミカが、開けっ放しの脱衣場で服を脱ぎ始めるのが見えた。
「お、おい、ちょっと待て!ドア閉めろよ!」
 とたんに顔をタコのように真っ赤にさせたケンジが両手で顔を塞ぐ。
 すると不思議そうにしながら「えっ?」とミカが振り返る。
「いや、だからさ、風呂入るんなら、そのドア閉めろよな……」
 手の平で顔を塞いだケンジが慌ててそう言うと、ミカは「だって1人になると怖いんだもん♪」と、鼻歌のメロディーに合わせながらサッサと服を脱ぐ。
「いや、しかしですね……これはちょっとアレですよ……」
 ケンジは恥ずかしさのあまりに自分でも何が何だかわからないことをブツブツと呟き始めると、脱衣カゴの中に脱いだ服をバサと脱ぎ捨てたミカが、吐き捨てるかのようにポツリと呟いた。

「もう、どこもかしこもぐっちゃぐちゃ……」

 そのミカの言葉に、ふいにケンジの脳裏に映画館の暗闇でコキコキと腰を振っていたミカの姿が甦った。
 そして、そのミカの言う「ぐっちゃぐちゃ」の部分がいったいどこなのかをリアルに想像してしまう。
 急激にムラムラとした興奮がケンジの胸の奥から沸き上がって来た。

(今、俺は2万円持っている。この金でミカを……)

 そう考えると、この悪名高き幽霊ホテルが童貞喪失の場所になるというのは少々気に入らなかったが、しかし、あの映画館の座席で、男達がミカの巨乳に顔を埋めながら「うっ!」と射精していたシーンを思い出せば、すぐにでもこの2万円をミカに支払い、自分もそのように「うっ!」と天国へ行きたいと激しくそう思った。
 そんなケンジは、恐る恐る顔に押し当てていた手の平の指をソッと広げた。指と指の隙間からミカの真っ白な肌が光って見えた。

「へぇ……このホテル、こんなに古いのにアメニティーグッズだけはいっぱいあるんだね……」

 そう呟きながら洗面所の隅の篭の中をミカは覗いていた。そんな前屈みになるミカの丸い尻と、太ももまで下ろした黒いパンティーがケンジの目に飛び込んで来た。
 ケンジは、もしかしたらミカのその真っ白な尻の谷間の奥が、ミカの言う「ぐっちゃぐちゃ」した部分なのではないだろうかと想像し、ふいに胸に込み上げて来た熱い息をハァァァと吐き出す。
「ねぇ、ねぇ、ほら、泡風呂だって。ケンジ君も一緒に入る?」
 そう言いながら、泡風呂の粉が入った小袋を摘んだミカがいきなり振り向いた。
 広げた指の隙間から覗いていたケンジは、そんなミカの大きな瞳と目が合い、一瞬フリーズした。
「嘘よ。うふふふ。エッチぃ」
 ミカは悪戯っぽくそう笑うと、右足から素早く抜き取った黒いパンティーをカゴの中にポイッと投げ入れ、そのまま子鹿のように飛び跳ねながらバスルームに消えて行ったのだった。

 バスルームから聞こえて来るミカの鼻歌を聴きながら、このままスムーズに行けば、もしかしたらミカとセックスできるかもしれないという希望に胸と股間を膨らませていた。
「よし!よし!よし!」というアニマル浜口的な気合いを入れながら、趣味の悪い真っ赤なベッドにゴロンと横になった。

 ペラペラの羽毛布団がひんやりとして気持ちが良い。そんなひんやりした部分を足で探しながら、ゆっくりと仰向けになると、天井の鏡に映った自分と目が合った。
 そんな鏡の中の自分と見つめ合うケンジは、風呂から上がってきたミカにそっと2万円を差し出すシーンを思い浮かべてみた。

(きっとミカは、その2万円を見つめながら「なぁにこれ?」と首を傾げる事だろう。そこですかさず「キミを買いたい」と呟くのだ……)

 しかし、その「買いたい」という言い方が、なんだか東南アジア買春ツアーの親父達みたいで気に入らなかったケンジは、ならば「キミが欲しい」と呼んでみたらどうだろうかとふと思い、天井の鏡に映る自分に向かって「キミが欲しい」と声に出して呟いてみたが、しかし、それもなんだか昔のトレンディードラマのようでこっ恥ずかしく、ついついそれを声に出してしまった自分が嫌になって仕方なかった。
「キミを売って」もなんだか香港の人身売買みたいで気分が悪い。
「キミを頂戴」ってのはちょっとバカ過ぎるし、かといって「キミを下さい」ってのは、まるで「娘さんを僕に下さい!」みたいで重過ぎる。
「じゃあなんて言えばいいんだよ!」と、ケンジがガバッとベッドから身を起こした所で、突然バスルームのドアがガチャ!と音を立てて開いた。

「あースッキリしたぁ」

 水滴が滴る真っ白な裸体を洗面所の電球に照らしながらミカが出て来た。
 バスマットで足の裏をザラザラさせながら、洗面所の前の篭の中から薄ピンクのバスタオルを取り出す。
 すかさずバスタオルを頭からかぶり、その濡れた髪をゴシゴシと拭き始めたミカは、大きなオッパイと栗毛色の陰毛を曝け出したままだった。
 そんなミカのピチピチとした裸体に、ベッドの隅にいたケンジがボーっと見とれていると、不意に頭を拭いていたミカの手がピタッと止まった。
「はっ」と気づいたケンジがバスタオルに覆われたミカの顔を見ると、ミカは頭からかぶったバスタオルの隙間からジッとケンジを見ていた。

「エッチぃ……あっち向いててよ……」

 そう言いながらクスッと笑うミカに、ケンジは慌ててベッドに身を倒しては、再び天井に映る自分を見つめたが、しかし、その天井にはベッドで寝転がる自分の姿だけでなく、洗面所で体を拭いているミカまでばっちりと映っていた。

(丸見えだ)

 そう嬉しくなったケンジは、そのままベッドに仰向けになったまま、天井の鏡に映っている脱衣場のミカを見つめた。
 ミカは濡れた髪の毛をバスタオルでゴシゴシと拭くと、そのバスタオルでプルプルと揺れるオッパイを拭き、そしてそのままスラリと伸びる脚へとバスタオルを移動させては、陰毛が生え茂る股間にバスタオルをキュッと食い込ませた。
 体を拭き終えたミカはベッドのケンジにチラッと視線を向けた。
 そんな姿を天井の鏡から薄目を開けて見ているケンジはおもわず寝たフリを決め込む。
 まさか天井の鏡からケンジが覗いているとは思っていないミカは、そんなベッドのケンジをソッと覗き込みながら「寝たの?」などと聞いて来たりする。
 返事のないケンジに、ミカは「なぁんだ寝ちゃったのか……」と残念そうに呟くと、そのまま「ふんふん♪」と鼻歌を歌いながら洗面所に向かい、全裸のままドライヤーで髪を乾かし始めたのだった。

 ミカがドライヤーを頭に振る度に、ミカのプルルンとした尻が卑猥に揺れていた。
 そんな尻やオッパイを鏡から覗き見していたケンジは、亀頭の先から自分でもびっくりするくらいの我慢汁を溢れさせ、それがトランクスと太ももにベタベタと付着してはとっても気持ちが悪かった。
 髪を半乾きに乾かしたミカは、ドライヤーのスイッチをパチッと切ると、そのままカゴの中の衣類に手を伸ばした。
 ミカの真っ白な手に黒い下着がフワッと摘まれるのを鏡で見るケンジは、出来る事ならノーパンのままでいて欲しいと念力をかける。
 ミカはそんなパンティーを手の中でおもむろに広げた。
 自分の履いていた下着を見つめる十六才の少女はあまりにも可愛過ぎる、と天井の鏡でそれを見つめるケンジはそう思った。

「ヤダなぁ……」

 ミカは広げた自分の下着を見つめながらそう呟くと、それを再び脱衣カゴの中にポイッと投げ入れた。
 そして、カゴの奥にあった薄ピンクの浴衣を取り出したミカは、まるで凍っているかのように洗濯糊でガッチリと固まった浴衣をミシミシミシっと広げると、ノーパン、ノーブラのままで、それを羽織った。
 念力が通じたケンジは、心の中で『よし!よし!よし!』と、再びアニマル浜口的に叫んだのだった。

 ミカが、床の絨毯をスリスリいわせながらベッドに近付いて来た。
 ケンジはそれまで薄目を開けていた目をスッと完全に閉じた。
 ケンジが寝ているベッドの右端がグググっと軋んだ。ベッドに這い上がって来たミカは、そのまま狸寝入りしているケンジの顔を覗き込む。

「寝ちゃったの?」

 そう呟くミカの生温かい息がケンジの左頬に触れた。
 ケンジは目を開けられなかった。今、目を開けばすぐ目の前にミカの顔があるとわかっていながらも、しかしそこで目を開ける度胸はケンジにはなかった。

(どうする!どうする!どうする!どうする!どうする!)
 ケンジの中のアニマル浜口が急かせる。

(そのままパッと目を開けて、優しくミカの肩を抱きながら黙ってキスしちゃえばいいんだこのチンカス野郎!)
 アニマル浜口キレた。

 しかしケンジの体は動かない。
 ケンジはジッと目を瞑ったまま(もし、そんな事をしてミカに断られたらどうすればいいんだよ!)とアニマル浜口に泣きながらそう叫ぶ。
 なぜそこで泣いていのかわからないが、しかしなんだか泣いているようなそんな気がする。

(断られるわけねぇだろ!この女は誰にでもヤらせるヤリマンだぞ!おまえも見ただろ、あんな汚ねぇオッサンにまでヤらせるくらいなんだから、おまえにヤらせないわけがないだろ!だから早くガバッ!と抱きつけ!もし拒否られたらレイプしちゃえばいいんだよ!)

 アニマル浜口が必死になって叫んでいた。
 しかしそんなアニマル浜口の叫びも空しく、しばらくケンジの顔を覗き込んでいたミカは、なにやら小さな溜息をつくとそのままケンジの横でゴロリと仰向けになって寝転がってしまったのだった。
 完全に目を覚ますタイミングを逃してしまったケンジは、わざとらしい嘘寝息をたてながらソーッと瞼を弛めてみた。
 天井の鏡には、ケンジの隣りで仰向けに寝転んでいるミカの姿が映っていた。
 ミカの体はスー……スー……とリズム良く動いている。
(しまった、寝ちゃったよ……)
 そう思ったケンジは、ミカの目を覚まさせようと、わざとオーバーな寝返りなどを打ってはベッドを揺らした。しかしミカの寝息のリズムが変わる事はなく、ミカはそのまま深い眠りへと落ちて行ったのだった。

(続く)

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