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昭和少年破廉恥物語1

2011/10/09 Sun 23:38

    昭和少年破廉恥1





 あれは、今から三十年ほど前。
 ジュディ・オングが両手を広げ、円広志がくるくると回り、西部警察が親父を、機動戦士ガンダムが少年を、それぞれ魅了していた頃、毎朝、テレビでは徳光さんが『ズームイン!』と叫んでいた。

 これは、そんな私の陰茎がまだズルムケになる少し前の、小学五年生の時に体験した、実に卑猥で実に切ない出来事。

 当時、私の友達の一人に、上村晋作という何やら幕末の志士のような名前の少年がいた。
 その当時、駅の裏手に小さな青線地帯があり、そのまた裏手の、痩せた野良猫ばかりがウヨウヨといる細い路地の突き当たりにある小さなあばら家。
 そこに、上村晋作は太ったお母さんと妹二人の四人でひっそり暮らしていた。

 私はそんな上村の家によく遊びに行った。
 上村には父親はおらず、太った母親は朝から晩まで近所の工場で働いていた。
 だから彼の家には五才と八才の妹しかおらず、その為、彼の家ではテレビは見放題、冷蔵庫の中のジュースも飲み放題という、子供にとっては最高の解放地区だったのだ。
 又、丁度その頃の私と上村は、いよいよ性に目覚めた頃でもある。
 当時、駅裏には『有害図書ポスト』なるものが設置されており、それは、子供達にエロ本を見せないようにしようという運動から、教育委員会のおばさんたちが設置したものであり、良識あるサラリーマン達は、読み終えた成人向け週刊誌やエロ雑誌をそのポストにポイポイと捨てていた。
 それらのエロ本は、毎朝、教育委員会のおばさん達が回収して回るのだが、しかし私と上村は、おばさん達が回収する前を狙ってこっそりポストの中から二、三冊失敬していた(不思議な事に、ナゼかいつもそのポストの鍵は開いていたのだ)。
 そんなエロ本を大人達の目を盗んで読むにも、親のいない上村の家は絶好の隠れ家であり、だから私は、この頃、上村の家ばかりに入り浸っていたのだった。

 そんな私と上村の狙いは、当時大人気だった『漫画エロトピア』であるが、しかし、この駅の『有害図書ポスト』でエロトピアはなかなか手に入らず、あるのはいつも安っぽい官能小説雑誌か、グラビアがいまいちの週刊実話やアサヒ芸能ばかりだった。
 そんなある時、『有害図書ポスト』の中から大量に強奪したエロ本の中に、妙に薄気味悪いエロ本を発見した。
 それは『団鬼六』という、名前からして不気味な和服姿のおっさんが何やら貪よりとした小説を書いている雑誌で、その雑誌のグラビアには、縄でグルグル巻きに縛られた女の人や、おっぱいに真っ赤な蝋燭を垂らされながらタラタラと小便をチビっているといった、実に猟奇的な写真ばかりが載っていた。
 それらの写真は、まるで、毎週土曜の夜、親に隠れてこっそり見ていた、ウィークエンダーの『再現フィルム』のような破滅的な残酷感が漂い、そして『ウルトラQ』の白黒オープニングを見た時のような不気味な恐怖感を私達にひしひしと与えた。
 しかし、その恐怖と残酷さは、まだ子供だった私達に奇妙な性的興奮を起こさせ、オカルト好きだった私達二人は、たちまちこの気味の悪いグラビアに魅了されたのだった。



 そんなSM雑誌で、私達はマスターベーションというものを覚えた。
 それは、今思い出しても顔から火が出るほどに恥ずかしい事実なのだが、なんと私と上村は、SM雑誌のグラビアにある女性のオナニー写真を見て、それがオナニーのヤリ方なんだと思ってしまったのだ。
 つまり、男と女のオナニー方法は同じだと思ってしまったのである。
 さっそく私は、グラビアの女性の真似をして、柱に股間を擦り付けた。上村も緊縛されている女性のグラビアをお手本に、股間にロープを挟んではチンコにロープをスリスリと擦り付けていた。
「どうだ、気持ちいいか?」
 私は、発情した犬がマウンティングするかのように、柱にコキコキと股間を擦り付けながら上村に聞いた。
「……気持ちいいというより、金玉が痛い……」
 ロープを股間に擦り付ける上村は、涙目でそう言った。
「痛いのは最初だけだと思うよ。これを毎日続けてれば、今に気持ち良くなるさ、きっと……」
 そう言う私に、上村は涙目で「頑張るってみるよ」と答え、再び股間にロープをスリスリと擦り付けていたのだった。

 そんな間違った方法で、恥ずかしいマスターベーションを覚えてしまった私達だったが、しかしそんな時でもちゃっかりとチンコは立っていた。
 ある時、そんな恥ずかしいマスターベーションにせっせと耽っている最中、突然、上村がポツリと呟いた。
「リョウちゃん……俺のチンコって何か変だよね?」
 そう言いながら上村は、私の向かって勃起したチンコを剥き出しにした。
「変って……何が?」
 私は柱にマウンティングするのをやめ、ソッと上村を見た。
「うん……なんかさぁ、先っぽがミミズみたいになってるんだよ……ほら……」
 今ならソレが真正包茎だとわかるが、しかし当時の私達は、真性も仮性も、いや包茎という存在すら知らなかった。
「本当だ……」と、私がその真正包茎を物珍しそうに覗き込むと、上村は今にも泣き出しそうな表情で「リョウちゃんは?」と聞いて来た。
 私は黙って上村の前にチンコを剥き出した。
 私のチンコの先には、そのミミズのような皮はなく、まるでプチトマトのような真っ赤な亀頭が少しだけ顔を出していた。
「ヤベェよ……やっぱり変だよ俺のチンコ……」
 上村は私のチンコを見て、更に恐怖心を募らせた。
 そしてそれ以降、上村は、その恥ずかしいマスターベーションを一切しなくなったのだった。


 そんなある日、いつものように上村の家に行くと、見知らぬ女の人が居間にポツンと座っていた。
「キミがリョウちゃんね」
 そう言って笑うその女の人は、私達があの『有害図書ポスト』から盗んで来るエロ本で見るような綺麗な人で、そのぷっくりと膨らんだ大きなオッパイも、エロ本に負けないくらいのボリュームだった。
「シンちゃんなら二階にいるわよ」
 見知らぬ女の人は、妹達と戯れながら私にそう笑った。
 そんなオッパイに見とれてしまっていた私は、不意に自分の顔が真っ赤になっている事に気付き、挨拶もしないまま、そのまま我が家のようにドタドタと乱暴に階段を駆け上った。
 そして、押入れの前で寝っ転がりながら少年サンデーを読んでいた上村に、「ヤベェよ!」と叫ぶと、そのまま上村の少年サンデーを奪い取った。

「なんだよいきなり。今から元気が関拳児と戦う所なんだよ、返せよ」
 上村はそう言いながら、私の手から少年サンデーを奪い返そうとした。ちなみにその少年サンデーの裏には『ミナミ理髪店』と太いマジックで書かれており、それは上村が近所の床屋からかっぱらってきた物だ。
「バカ、そんなの読んでる場合じゃねぇよ、見たかよ下のアレ」
 私が興奮気味に言うと、上村は「ああ、オッパイだろ」と気怠そうに笑い、そのまま私の手から『ミナミ理髪店』の少年サンデーを踏んだくった。
「誰だよあのオッパイの人」
「……知らねぇ人」
「知らねぇわけねぇだろ、誰なんだよ教えろよ」
「本当に知らねぇんだって。母ちゃんの友達らしいんだけど、昨日からウチに泊まってんだよ……」
 上村はそう答えるなり、再びゴロリと寝っ転がっては少年サンデーを開いた。
 あのミミズチンコ事件があって以来、上村は妙にエロを裂けるようになっていた。最近では『有害図書ポスト』の盗みもやらなくなった事から、心配した私が「どうして?」と聞くと、上村は気怠く笑いながら「興味ない」と答えるのだった。

 しかし、一方の私はムンムンと性欲を漲らせていた。
 朝から晩まで女の裸の事ばかり考え、先生の尻や、女生徒のブルマの股間、挙げ句の果てには文房具屋の婆さんの胸元にまで視線が行ってしまうほどの重症なのだ。
 そんな私だからこそ、階下で妹達と戯れているオッパイの大きな女の人が気になって気になって仕方がないのだ。
 私はそんな上村をそのままに、まさに発情した猿の如く、顔を真っ赤にさせながら階段を覗き込み、階下から聞こえる声をジッと盗み聞きした。
 オッパイの大きな女の人の笑い声が聞こえる度に胸が締め付けられ、そして次第にチンコが固くなった。
 階段の踊り場に寝転びながら耳を澄ましている私は、そんなチンコを床にグイグイと押し付けた。それは、薮から棒に柱に股間を擦り付けていた時とは違い、妙な快感らしきものが床に押し付けられるチンコから背筋へとジワジワと走った。
 そんな私を見ていた上村が突然クスクスと笑い出した。
 そして読んでいた少年サンデーをポイッと投げ捨てると、「しょうがねぇなぁ……」と言いながらムクリと立ち上がり、そのまま私を階下へ連れて行ってくれたのであった。

 階段を降りると、居間から「やだぁ、また負けちゃったよ」という、おねぇちゃんの妙に甘ったるい舌っ足らずな声が聞こえて来た。
 居間に入ると、妹達とトランプをしていたおねぇちゃんは、私達の顔を見て「あっ、お兄ちゃん達が来たよ」と、妹達にニヤニヤと笑いかけた。
 上村はそんなおねぇちゃんを無視して、そのままドスンッと畳に寝っ転がると、またしても少年サンデーを開いた。
 私はどうしていいのかわからず、その場でモジモジしていると、ふいにおねぇちゃんが「リョウちゃんもトランプする?」と首を傾げて笑ったのだった。

 おねぇちゃんと妹二人と私の四人でババ抜きをした。
 ババ抜きは実につまらない遊びだったが、しかし、おねぇちゃんの隣りに座っていた私は、そこからおねぇちゃんの大きなオッパイやムチムチの太ももをばっちりと眺める事ができ、だから違う意味で楽しむ事が出来た。

 そんなおねぇちゃんは、いわゆる、バカっぽかった。
 黄色いショートパンツからは破裂寸前の水風船のような太ももをムチムチと曝け出し、ケラケラと笑う度に、ローリングストーンズのTシャツの胸はプヨプヨと大きく揺れた。
 当時流行していた『聖子ちゃんカット』を茶色く染め、大きな目と団子鼻とニョキッと突き出る石野真子のような八重歯。そして、すぐに「ペロッ」と舌を出す癖などは、そのバカっぽさをより濃厚に醸し出していた。
 しかし、おねぇちゃんのその顔は、まるでエロ本のグラビアに出てくる『エッチな女の人』みたいに可愛く、又、そのバカっぽい仕草も奇妙なエロシチズムを抱かせた。

  そんなおねぇちゃんは、突然意味不明な独り言を呟いた。
 トランプをしている最中にも、「もうすぐハタチなんだし、しっかりしなくちゃね……」とポツリと呟いたかと思えば、麦茶のグラスから垂れる水滴を指先で弄りながら「全部ケンジが悪いのよ……」などと突然呟き、私を不意に驚かせた。

 そうやってダラダラとババ抜きをしていた時、ある事件が起きた。
 それは忘れもしない、丁度、つけっぱなしのテレビに『3時のあなた』の森光子が映っていた時だった。
 突然、外が貪よりと曇って来たかと思うと、いきなり激しい雨が降り出した。まるで石ころが降って来たかのような激しい雨音が家中に響き渡り、私達は慌てて開けっ放しの窓を閉め始めた。

 と、その時だった。
 いきなりパッ! と窓の外が光ったかと思うと、その数秒後、とんでもない轟音のカミナリがバリバリバリっと響き、ついでドドドッ! と家を揺らした。
 一瞬にして家中の電気が消えた。『3時のあなた』の森光子も、その不気味な残照を画面に残したままパッ! と消え、家の中は瞬く間にシーンと静まり返った。
 陽の当たらない上村の家は、晴天の日でも妙に薄暗く、電気が無くては過ごせない。
 そんな薄暗い居間の中で、妹二人が「キャーッ!」と叫び、ドタバタと走り出した。
「大丈夫よ、ただの停電だよぅ」
 舌っ足らずなおねぇちゃんがそう笑いながら、チルチルミチルの100円ライターをシュッ! と点けた。
 薄暗い居間を小さな炎の灯りがボンヤリと照らした。妹二人はおねえちゃんの大きな胸の中に踞っていた。

 カミナリと停電はその後も断続的に続いた。
 ゴロゴロゴロっと不気味な音が響く度、その後にドカーン! とやってくる恐怖に、妹達は「怖いよぅ」と言いながらおねえちゃんに必死に抱きついた。
 上村は相変わらず少年サンデーを捲っていた。この、時計すら見えない薄暗い部屋にもかかわらず、上村はカミナリなんて怖かねぇよとばかりに、パラパラと少年サンデーを捲っていた。

 しかし、私は違った。
 実際、正直言ってカミナリが怖かった。
 それは、以前、テレ朝でやっていた『衝撃の瞬間』というテレビで、カミナリに直撃された家が一瞬にして吹っ飛んだのを見てからであり、それからというもの私はカミナリが怖くて怖くて堪らなくなった。
 そんな私は、今にも発狂しそうな面持ちで、頼むからもうゴロゴロとかドカーンとか言わないでよ、と必死に雷神様に頼みながらジッと震えていると、ふいにそれを見たおねぇちゃんが「きゃはっ!」と、奇妙な声で笑い出した。

「リョウちゃん、もしかしてカミナリ怖いの?」

 おねぇちゃんがそう笑った瞬間にも、パッと窓の外が光り、すぐさまバカーン! っと強烈なカミナリが落ちた。
 私は、もうその恐怖に堪え切れず、ブルブルと身体を震わせながらコクンっと頷いた。
 するとおねぇちゃんはまたしても「プハっ!」と奇妙に吹き出すと、ふいに私に右手を伸ばし、「じゃあリョウちゃんもおいで」と言ったのである。

「えっ?」と一瞬、私の思考回路は停止した。
 おねぇちゃんのあの大きくて柔らかいオッパイの中にムニムニと顔を押し込んでも……いいのか?、と、静まり返った脳味噌の中でそう自分に問いかける。
 すると再びガシャーン! と強烈なカミナリが落ちた。
 停止していた私の脳はたちまち飛び上がり、「うわぁぁぁ!」と叫んだ私は、無意識のうちにおねぇちゃんの腕の中へと飛び込んでしまっていたのであった。

 おねぇちゃんは、正座したまま妹二人と私をがっしりと抱きしめていた。
 右のオッパイを妹二人が占領し、左のオッパイを私が独占し、そのオッパイの柔らかい肉が私の頬に押し付けられ、私の鼻は歪に曲っていた。
 そんなおねぇちゃんのTシャツからは、2丁目のサンリオショップに漂っているような女の子の甘い匂いが、ムンムンと感じられた。

 おねぇちゃんは私達を抱きしめたまま身体をゆっくりと左右に揺らし、そのリズムに合わせながら西城秀樹の『ヤングマン』を口ずさんでくれた。
 背中をポン、ポン、と優しく叩かれていた五才の夏美が、そんなおねぇちゃんと一緒になってヤングマンを口ずさむ。
 すると、やっと落ち着いて来た私の精神は、そんな彼女達の歌声に段々と理性を取り戻して来た。
 オッパイに顔を埋める私は、とたんにこの状況を「ヤベぇ!」と思った。
 なぜなら、おねぇちゃんの身体に抱きついている私の股の真下には、おねぇちゃんの左の太ももがあるからだ。
 カミナリの恐ろしさに我を忘れていた私は、無我夢中でおねぇちゃんに抱きつきながらも、知らぬ間にそのムチムチとしたおねぇちゃんの太ももを股の間に挟んでしまっていたのだ。

 その時のおねぇちゃんは黄色いショーパンツであり、そこから伸びるその太ももは、いわゆる生肌だった。
 私はそんな厄介なものを股間にガッシリと挟みながら、大きなオッパイに顔を埋めている。
 必然的に、私のチンコはジワリジワリと固くなって来た。

『ヤベっ! ヤベっ! ヤベっ!』と心の中で叫べば叫ぶほど、無情にもその勢いはグングンと増して来た。
 一刻も早くこの状況から脱出しなければと焦るのだが、しかし、私の身体は金縛りに遭ったかのように動こうとはしなかった。
 そう。既に私は、このオッパイの柔らかさと、股間に感じるムチムチとした肉の感触、そしてTシャツから漂うそのサンリオチックな甘い香りから、もはや逃れる事が出来なくなってしまっていたのである。

 私は蕩けていた。
 この強烈な刺激に脳も精神もトロトロに蕩け、チンコばかりをカチカチにさせては、スライムのようにぐったりとなりながらおねぇちゃんの腕の中で蕩けていた。
 すると再び空がゴロゴロと不穏な音を鳴らし始めた。
 私と妹二人は、来るぞ来るぞ、と脅えながら、必死になっておねぇちゃんの細い身体にしがみつく。
 バリバリバリ!……ドカーン!
 今までにない強烈なカミナリが落ちた。家中のガラスがガタガタと揺れ、タンスの上から不気味な顔をした『キャベツ畑人形』がボテッと落ちた。
 カミナリの轟音と、不意に天から落ちて来た不気味なキャベツ畑人形に驚いた私が「うわっ!」と叫びながら、更におねぇさんの身体にしがみつくと、目玉だけを下に向けながら私をジッと見ているおねぇちゃんと目が合った。
 おねぇちゃんのその目は妙に冷たかった。
 私はカミナリの恐怖に脅えながらも、一方で(もしかしておねぇちゃんは怒ってるのか?)と、おねぇちゃんのその冷たい目に脅えた。

 心当たりはあった。
 確かに私の固くなったチンコは、先程からおねぇちゃんの太ももの上でコリコリと動いていた。
 おねぇちゃんがヤングマンの唄を口ずさみながら身体を左右に揺らす度に、私の固くなったチンコはそのムチムチの太ももに擦りつけられ、今まで固い柱に股間を擦り付けてばかりいた私は、太もものその心地良い柔らかさに何とも言えない快感に酔いしれていたのだ。
 だからきっと、おねぇちゃんは私のチンコが立っている事に気付き、そんなスケベな私の行為に怒りを露にしていたのではないだろうか。
 そう思いながら、私は気まずい雰囲気の中、顔を埋めていたオッパイからソッと顔を離した。
 それでもおねぇちゃんは、ヤングマンを口ずさみながらジッと私を睨んでいた。
 そんなおねぇちゃんの冷たい視線に、おもわず私は、あの『団鬼六』の雑誌に載っていた猟奇的なSM写真を初めて見た時のような、そんな一種独特な性的快感を感じてしまっていたのだった。


 そんな出来事があってから二日後。
 学校帰りの私は、いつものように駅裏の湿った路地をトボトボと進み、上村の家へと向かっていた。
 上村の家へと続く路地の途中に、通称『ゲンゲ坂』と呼ばれる青線地区があった。
 ゲンゲ坂と呼ばれるその一角には、廃墟のような小さなスナックが7、8軒、ひしめきながら並んでおり、その廃墟のような二階では薄汚れた女達が夜な夜な酔客に股を開いていた。
 そんなバラックが並ぶゲンゲ坂は、昼になると終戦直後の闇市を思わせるような荒んだ不気味さを醸し出していた。
 私はそんなゲンゲ坂に漂っている下水道のドブ臭さが苦手で、いつもそこは駆け足で通り過ぎていた。

 その日もそこを駆け足で通り過ぎようとすると、ふと、歩道に並ぶ柳の木の隙間から、その裏にある小さな喫茶店のショーウィンドウに映るおねぇちゃんの姿を発見した。
 興味に引かれた私は、柳の木に身を隠しながら喫茶店の中をソッと覗いた。
 インベーダーゲームの前に座るおねぇちゃんは真っ赤な目をして泣いていた。その向かい側には煙草を銜えた男が座っており、男は泣きじゃくるおねぇちゃんを無視したままインベーダーゲームに熱中していた。
 その男はチリチリのパンチパーマをあて、黒い革ジャンと真っ白なダブダブズボンを履いており、明らかにツッパリ風な男だった。

 私は慌てて上村の家に駆け上がると、寝っ転がって『マカロニほうれん荘』を読み耽る上村を叩き起こした。
「大変だ、おねぇちゃん、ツッパリに泣かされてるぞ」
 私がそう言うと、上村は「あぁ。チリチリの銀蝿野郎だろ」と薄ら笑いを浮かべ、「さっきここにも来たよ」と言いながら、読みかけの漫画をバサッと閉じた。
「なんか、別れるとか別れないとかでケンカ始めてさぁ、おねぇちゃん、あいつに叩かれてたよ」
 上村はあたかもそのシーンを目撃した事を自慢げにそう言った。

 私は複雑な気分だった。
 あのカミナリのあった日以来、私はおねぇちゃんの事ばかりを考え、恐らく、多分、私はおねぇちゃんに恋をしていたのだ。
 そんなおねぇちゃんがツッパリに叩かれたり泣かされたりしている事を思うと無性に切なく、しかし一方では妙な性的興奮を覚えていた。

 そんな私の心を察したのか、ふいに上村が私をジッと見つめながら意味ありげにニヤリと笑った。
「な、なんだよ……」
 その心を知られたくない私が焦ってそう言うと、上村は急に声を潜めながら「いいもの見せてあげよっか」と怪しく笑った。
「……なんだよ、いいものって……」
「いいから付いて来いよ」
 上村は怪しくそう笑うと、裸足の足の裏をバタバタと音立てながら猛スピードで階段を降りて行ったのだった。

 上村が私に見せてくれたのは、洗濯機の中に押し込められていたおねぇちゃんのパンツだった。
 それは妙に小ちゃな赤いパンツで、横側にはリボンのような細いヒモしかなく、前側はスケスケに透けていた。
「すげぇだろ」と、上村はソレを摘まみ上げて笑った。
 しかし私は素直に「すげぇ」と言えなかった。
 確かに「すげぇ」とは思ったが、しかし、おねぇちゃんに何かとっても悪い気がして素直になれなかったのだ。
「こんなの履いてるなんて変態だよな……」
 そう言いながら上村は、小ちゃな赤いパンツを大きく広げた。
「ほら、見てみ、ここに黄色いカスが付いてるよ」
 上村は、おねぇちゃんのその秘密の汚れを指差しながら再びニヤリと笑い、そして「欲しい?」と怪しく囁いた。
 私はその汚れたパンツに強烈な興味を抱いていたが、しかし照れ隠しの為か、なぜか慌てて「汚いからいらないよ……」と答えてしまった。
「どうして? このパンツのカスをチンコに擦り付けると、オメコしてるみたいに気持ち良くなるって鶴光が言ってたじゃん……」
 上村は、まるでゲンゲ坂のヤリ手婆さんのような怪しい笑みを浮かべてそう言った。
 ちなみに、上村の言う鶴光とは笑福亭鶴光の事だ。当時の私達は、土曜の深夜になると、必ず『笑福亭鶴光のオールナイトニッポン』を朝方まで聞いており、そのラジオ番組からアブノーマルな知識を得ていた。
 確かに、鶴光はそのラジオ番組の中でこう言っていた。
『女の使用済みパンチィのシミを亀に擦り付けると、まるでオメコしてるみたいに気持ちいいねん』
 私はそんな鶴光の下品な言葉を思い出しながら、おねぇちゃんの黄色いカスを見つめた。
「リョウちゃん、おねぇちゃんの事好きなんだろ?」
 上村は勝ち誇ったような目で私を見つめながらそう笑った。
「そんなんじゃないけど……」
 私は図星をつかれてドギマギしてしまう。
「いいよ。嘘なんか付かなくっても。それ、貸したげるからチンコにスリスリしてきなよ」
 そう笑う上村に、私はおもわず「じゃあ一緒にやろうよ」と詰め寄った。
「俺はダメだよ、これから妹達連れて父ちゃんちに行かなきゃなんないから」
 上村はそう言いながらおもむろに天井を指差し、「二階、使っていいよ。誰もいないから……」と怪しく笑い、私の手におねぇちゃんの赤いパンツを握らせたのだった。


 路地の突き当りにある上村の家は、昼間でも貪よりと薄暗く、どこかひっそりとカビ臭かった。
 それでも、いつもは妹達の声が元気よく響いている明るい家だったが、その日は、離婚した父親との月に一度の面会日であり、いつもの妹達の元気な声は見事に消え失せていた。
 そんなカビ臭い静けさの中、私はひとり、二階の座敷の隅でハァハァと荒い息を吐いていた。
「おねぇちゃん……」と囁きながら、パンツに付着した黄色い染みに鼻を近付ける。
 強烈な小便臭さと、魚介類のような独特な異臭がツーンと鼻孔を刺激する。
 その神秘的な異臭に堪らなく欲情した私は、さっそくズボンからチンコを引きずり出した。そして赤いパンツを畳の上に広げると、丁度その中心にある黄色いシミに小さな亀頭をグニュッと押し付けた。
 腰をゆっくりと振りながら、ピーンッと勃起したチンコをパンツに擦り付ける。パンツのサラリとした生地が硬くなった亀頭をジワジワと刺激し、おもわず、コレを履いていたおねぇちゃんのアソコもこんな感じだったんだろなぁ、と感情移入した。
 しかし、精神的に快感を得てても、肉体的な快感は生まれて来なかった。
 鶴光の言う『オメコの感覚』というものがどんなモノなのかはわからなかったが、しかしその黄色いシミをどれだけチンコに擦り付けようとも、その快感はいつも柱にチンコを擦り付けている快感と然程変わりなかった。
(おかしいなぁ……ヤリ方を間違えてるのかな……)
 畳に広げたパンツに、ただひたすら黙々とチンコを擦り付ける私は、全く快感を得ないその方法に疑問を抱き始めた。
 と、その時だった。
 いきなり階段からミシッミシッミシッという足音が聞こえて来た。
 その階段を上がって来る足音は明らかに大人の足音であり、上村や妹達のソレとは全く違う。
(ヤベぇ!)
 私は慌ててチンコをズボンの中に押し込んだ。そしてギギギッとズボンのチャックを上げた瞬間、階段の引き戸がガラガラっと開いた。

「あっ」と私はおもわず小さく叫んだ。
 すると引き戸からチョコンっと顔を出したおねぇちゃんは「あれ?」と目を丸くした。
 おねぇちゃんはそのまま漫画が散乱する部屋の中を大きな目で見回し、「みんなどこ行ったの?」と、不思議そうに私に聞いた。
「あ、みんなはお父さんの家に……」
 と、私が必死に説明を始めると、おねえさんはそれを「ふぅ~ん……」と聞きながらも、その大きな目を私の足下で不意にピタリと止めた。
 おねぇさんが見つめる先には、まるで車のタイヤに踏み潰されたかのような赤いパンツが、ペシャンコになって広げられていたのだった。

(2話へ続く)

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