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変態管理人7



「ヤダぁ、まことちゃん、そんな事したらおばちゃんがベタベタに濡れちゃうじゃない」

そんな声が、プールの水飛沫の音と共に駐車場の隅から聞こえて来た。その言葉を違う意味に受け取りながらニヤニヤと笑う天草は、聞こえて来る中年女の声に耳を傾けていた。

「ほらぁ、見てよ、おばちゃんこんなに濡れちゃったじゃない……」

中年女がゆっくりと股を開く姿が天草の脳裏にモヤモヤと浮かぶ。

「じゃあおばちゃんもプールに入る?」

まことちゃんの幼い声が聞こえた。

「おばちゃんは入らないけど、でも暑いから足だけ入れてもらおっかな」

そんな中年女の言葉に、いきなりまことちゃんが意地悪をした。

「ダメ。やっぱりおばちゃんは入れて上げない」
「えぇ。どうしてよ。おばちゃんも入れてよ」
「ダメダメ」
「あっ。どうしてそんな意地悪するの。入れてよ」
「ダメだもーん。僕だけだもーん」
「ねぇ入れてよ。ほら、まことちゃんのせいでこんなに濡れちゃったのよ。だから、ね、入れて」

そんな会話が延々と続いていた。聞き方によっては官能的な会話だった。今になってその会話を録音しておけば良かったと、天草は歯軋りして悔しがっていたのだった。

さっそく天草はパソコンのキーボードを叩き、一〇四号室の中年女のデーターを開いた。
彼女がこの女性専用マンションに入居したのは、まだ天草が管理人になる前の四年前だった。本籍は静岡県。離婚歴のある三十六才。現在、近所の建設会社の事務をしていた。
天草がこのマンションの管理人になってから既に三年が過ぎようとしていたが、その間、この中年女の部屋に男が尋ねて来た形跡は一度もなく、唯一あの部屋に出入りしている男といえば、新聞の集金屋と近所の酒屋の親父くらいのものだ。そして、この中年女は帰って来るのもいつも決まって夕方の六時だった。
会社の帰りに近くのスーパーに寄って来るらしく、買い物を済ませて帰って来るとそれっきり一度も部屋を出て行く事はなかった。

それらの状況から、この中年女には明らかに男はいないと断定した天草は、駐車場側の窓を少し開けると、そこで子供と遊ぶ中年女をソッと見た。

見事に熟れた体だった。その大きく膨らんだ胸とスカートから伸びる脚は、若い女のピチピチ感とは違い熟れた女のムチムチ感がいやらしく漂っていた。

(あんなにいやらしい体で、ここ数年間も男無しというのはさぞかし辛いだろうな……)

天草は、時折見せる中年女の怪しい目付きやその熟れた体から、メラメラと漂って来る淫媚なオーラを見逃してはいなかった。

(あの目付きは男を欲しがっている目付きだ……。ヤリたいんだろう。太い肉棒でアソコをグチョグチョに掻き回されてヤリまくられたいのだろう。可哀想に……)

元警察官の天草は中年女を勝手に欲求不満と決めつけ、その脳内においてこの中年女を『欲求不満の変態熟女』と断定した。そして勝手に脳内に捜査本部を立ち上げると、秘密裏に彼女の部屋の家宅捜査を決行しようと決めたのだった。



翌日、朝の八時にマンションを出て行く中年女をこっそり見送る天草は、さっそくガサ入れの準備に取り掛かった。
基本的にロリコンな天草は、今までこの中年女にはほとんど興味を示していなかった。その為、彼女の一〇四号室にはまだ侵入したことがなかった。

管理人室の事務机の上に捜査道具を並べた。超小型カメラ三台と盗聴器二個とそれを取付ける為の工具一式。現場状況の保存用デジカメと、そして緊急事用に金属バットを一本用意した。この緊急時の金属バットというのは、もし何らかの理由で部屋に侵入している所を誰かに見られた場合、「この部屋に空き巣が入ったと管理人室に通報がありましたので」と誤魔化す為の金属バットだった。幸い、その部屋は一階であり、空き巣が侵入したとしても何ら不思議ではなかった。そんな状況から、今回の侵入のコンセプトは「空き巣退治」という事とし、あくまでも空き巣退治の為に一〇四号室に侵入するのだと自分に暗示をかけたのであった。

それらの道具を袋に詰め、それをTシャツの腹の中に隠した天草は、金属バットをぶら下げながら一〇四号室に向かった。他階と違い一〇四号室は管理人室のすぐ目の前だったため、侵入に対して然程神経質にならなくても良かった。一階のホールに誰もいない事を十分に確認すると、天草は素早く一〇四号室のドアに合鍵を差し込み、そのまま忍者のようにドアの隙間をすり抜けたのだった。

中年女の部屋は見事なまでに整理整頓されていた。玄関のスリッパは綺麗に並べられ、通路のフローリングもワックスを掛けたばかりのようにピカピカと輝いていた。
これほどまでに整理整頓し尽くされた部屋は非常に危険だった。このような神経質系整理整頓部屋の場合、棚の花瓶がズレていたり、グラスを置いた位置が違っていたというだけでも誰かが部屋に侵入したと気付かれる恐れがあるからだ。
だから天草はいつもは履く事のないスリッパを、その時はあえて履く事にした。それは、ピカピカにワックス掛けされた廊下に足跡を残さない為であった。

スリッパを滑らせながら奥のリビングへ行くと,案の定そこも大手ハウスメーカーのモデルルームのように綺麗に整頓されていた。細心の注意を払いながらダイニングテーブルへ上がった。まずは手始めに天井の火災報知器に盗撮用の小型カメラを仕掛けるのだ。

今回、盗撮カメラは三カ所設置する事にした。本来、他の居室には一居室に一個の割合でカメラを仕掛けているのだが、しかし今回は初侵入ということもあり、中年女性の生活行動を知る為にもここは各部屋に一台仕掛ける事にした。

リビング、寝室、洋室と、三台のカメラの設置を手早く終えると、続いて盗聴マイクを仕掛け始めた。今まで居室に盗聴器など仕掛けた事はなく、盗聴器を仕掛けるのはこの一〇四号室が初めてだった。というのは、このマンションは非常に電波の通りが悪く、酷い時には携帯電話さえも使えない事がある程で、その為、上階の部屋に盗聴器を仕掛けたとしても、一階の管理人室で受信するその声はまるでバルタン星人のビブラート声になってしまうくらい感度は最悪だった。しかし、一〇四号室と管理人室は目と鼻の先だ。だから電波の感度は良好で、その盗聴器は針の音が落ちる音さえも逃しはしなかった。

そんな盗聴器をリビングと寝室に設置し終えた天草は、テーブルの上に散らかる工具を素早く片付けると、警察時代に愛用していたガサ用の白手袋をスルスルッと装着し、いよいよ『欲求不満の変態熟女』の捜査に取り掛かる事にしたのだった。

まずはガサの基本となるべくゴミ箱から捜査する事にした。
リビング、キッチン、そして玄関前の洋室。これらのゴミ箱の中は人畜無害なゴミばかりが溢れ、捜査対象の押収物には全く当てはまらなかった。しかし、寝室のゴミ箱は違った。他のゴミ箱に比べ、寝室のゴミ箱の中だけ妙に丸めたティッシュが多いのだ。

(これはオナニーの形跡かも知れぬ……)

そう睨んだ天草は、白い手袋をしたまま丸めたティッシュをひとつひとつ取り出し、それをベッドの上に丁寧に広げていった。しかし、その中にオナニー処理らしき物は見当たらなかった。それはその広げたティッシュに怪しい匂いが付着しているかどうかで識別されていたのだが、そのほとんどは無臭で、恐らく鼻を噛んだと思われる物ばかりだった。

証拠を掴めなかった天草が、ベッドの上のティッシュに向かって「くそっ……」と吐き捨てると、広げられたティッシュは天草の荒い鼻息にふわっと舞い上がり、その一枚がヒラヒラと床へと落ちて行くとそのままベッドの下へと舞い込んで行った。
「ちっ」と舌打ちしながら天草はベッドの下に手を入れた。ベッドの下を手探りしてると、指先に雑誌のような物が触れた。どうしてベッドの下に雑誌なんか入れてんだよ……と思いながらもそのままティッシュを手探りしていると、ふと急に天草の手が止まった。

(ベッドの下……雑誌……エロ本……)

そんな定番な連想が天草の頭を駆け巡った。ニヤリと微笑んだ天草はもう一度その雑誌を手にすると、迷う事なくベッドの下からエロ本を引きずり出したのだった。

そのエロ本は、モロ親父趣味の御下劣なエロ漫画雑誌だった。主体はエロ漫画だったが、雑誌の最初と最後の数ページにカラーグラビアがあった。そんなグラビアには、どこか悲しげな三流モデルが、股をM字に開かされてはバイブを入れられているといった卑猥な写真が並んでいた。

(あのおばさんもこの写真を見たのだろうか……)

そう思った瞬間、天草の胸にムラムラとした感情が沸き上がって来た。
離婚後、あれだけのエッチなオーラを発しながらも、それでも男の影が一切無い中年女。そんな中年女が放つあのエッチなオーラはオナニーによって作り上げられていたのだと、このベッドの下に隠されたエロ本を見て、今ここに改めて確信した。

それならば他にも証拠物はあるかも知れない。そう思った天草は、クローゼットの中やタンスの引き出し、そしてベッドマットの下まで剥ぐって捜索したが、しかしそれ以上の証拠物は発見されず、仕方なくその日はそのエロ漫画をデジカメに収めただけで、管理人室に戻ったのであった。



管理人室に戻ってからも天草の気分は悶々としていた。
あの、一見どこにでもいそうな普通のおばさんが、夜な夜な下品なエロ漫画を見ながらオナニーに耽っているのは事実であり、そう思うと、昨日親戚の子供と楽しそうにプールで遊んでいた時の中年女のあの愛くるしい笑顔が、なにか異様に恐ろしく思えて堪らなかった。
その夜、深夜まで盗聴受信機に耳を傾けていた天草だったが、それらしき声や音は何も聞こえて来ず、時折聞こえる中年女の咳払いだけを聞かされていた。

翌朝、中年女がマンションを出て行くのを確認した天草は、さっそく一〇四号室に忍び込んだ。しかし、その状況は昨日と何も変わっていなかった。ベッドの下のエロ漫画も昨日と同じ状態で置かれたまま読まれた形跡はなく、当然、盗撮カメラにもそれらしき画像は写されてはいなかった。

そんな悶々とした日々が数日続いた。毎日のように一〇四号室に忍び込んでは盗撮カメラをチェックするが、しかしそこには中年女のオナニーどころかセクシーなシーンすら写っていなかったのだった。

そんなある日、管理人室に『美容健康友の会』がやって来た。
この美容健康友の会というのは、いわゆる、訪問販売によって主婦やOLにインチキ臭い健康食品等を売り付けるという悪質なマルチ野郎共であり、そんな美容健康友の会にとってこの女性専用マンションというのは格好の餌場だった。
だから天草は、そんな美容健康友の会がやって来る度に問答無用で追い返し、ちらしのポスティングすらも厳しく取り締まっていたのだった。

そんな美容健康友の会のセールスマンが、なにやら大量の紙袋を抱えながら管理人室にやって来た。強面の天草を見るなり、セールスマンの青年は、いきなり「違うんです、今日はセールスじゃないんです」と震えながら叫んだ。

「何が違うんだ……」

眉間にシワを寄せながらそう見下ろす天草に、セールスマンは「今日はセールスに伺ったのではなく、プレゼントを持って来たんです」と顔を引き攣らせながら答え、『粗品』と書かれた大量の紙袋を管理人室の床にドサッと置いたのだった。

それはいわゆる『サンプル』という物だった。どう頑張ってもこの女性専用マンションという格好の餌場に入れて貰えないセールスマンは、それなら管理人の手から住人達に大量のサンプルを渡させようと企んだらしく、この大量のサンプルを持ち込んだのだった。
セールスマンは今にも泣きそうな顔で「どうかこれを住人の皆さんにお配りして頂けないでしょうか……」と言いながら、天草の手にこっそり封筒を握らせた。おもむろに封筒を覗き込むと、中にはピン札の二万円が入っていた。

天草は警察官時代から賄賂が三度のメシよりも好きだった。そんな天草は素早く封筒をポケットに押し込むと、「わかったよ。住人が帰って来る度に渡しといてやるよ」と言いながら、紙袋のひとつをバリバリっと開けて中を覗いた。そこにはサプリメントや化粧水のサンプルがゴロゴロと詰め込まれていた。

「しかし、こんな物、みんな本当に使うのか?」

首を傾げながらセールスマンを見ると、すかさずセールスマンは目を爛々と輝かせながら「当社のサンプルは、100%の確立で試供して下さっているとデーターが出ております」と自信満々に答えた。
「100%ってのも胡散臭せぇなぁ」と笑う天草の脳裏に、あるひとつの閃きがピカッと光った。「これだ!」と確信した天草は、その胡散臭いセールスマンをとっとと追い出すと、そのまま管理人室の奥にある自室へ向かったのだった。

自室の押入れの中をゴソゴソと漁り、中から小さな袋を引っ張り出した。それは、数年前、出会い系で知り合った援交女子高生とラブホに行った際、そこで購入したアダルトグッズの数々で、その袋の中にはピンクローターやバイブなどが乱雑に転がっていたのだった。
そんなピンクローターは裸のまま放置されていたが、しかしバイブは透明のプラスチックの箱に入れられたまま保管されていた。それは一度しか使用しておらず、見た目は新品同様だ。
箱に入ったバイブを手にした天草は再び管理人室へ戻った。そして『美容健康友の会』のサンプルが入った紙袋を一つ取ると、その新品同様のバイブをそっと中に入れた。

(コレをあの欲求不満の中年女に渡せば……)

天草は、紙袋にプリントされている『美容健康友の会』という社名を見ながら、全部こいつらのせいにしちゃえばいいんだと笑った。そして中年女が袋の中のこのバイブを発見した時の事を悶々と想像しては、背筋をゾクゾクさせたのだった。
しかし、しばらく経つと、そんなに事がウマく進むだろうかと少し心配になってきた。こんな手が何度も使えるわけもなく、この一回でバシっと決めてしまわなければいけないのだ。

(このバイブによってなんとか彼女をオナニーに誘導しなければ……)

警察官時代から誘導尋問を得意としていた天草は、いかにしてバイブを手にした彼女をオナニーへ誘導させるかを考えた。その結果、彼女をソノ気にさせる為にはエロ写真が一番効果的だと、ベッドの下にエロ本を隠す程のエロ本好きな彼女の性格からそう分析した。
しかもその写真は普通のエロ写真ではなく、バイブを使いたくなるような写真でなければ効果はなく、天草は急いでパソコンを立ち上げると、バイブに関する画像を検索しまくったのであった。

そんな中、強烈な一枚を発見した。ヌルヌルに濡れたオマンコの中に太くて長いバイブが深々と挿入されており、まさにその画像は、見た者に唯ならぬ感情を抱かせてはソレをしたくさせるような威力を発していた。

しかしながら、いくら悪質なマルチ会社であろうと、こんな卑猥な写真をサンプルに入れるわけがない。美容健康食品のサンプルの中にバイブとエロ写真が入っているなどあまりにも不自然すぎるのだ。
そう思った天草は、その画像があたかも宣伝チラシであるかのように、その画像にイラストレーターで文字を加える事にしたのだった。

出来上がったチラシを見て「完璧だ」と天草は自己満足した。
これで彼女がオナニーをしなければ素直に諦めよう。そう思いながらそのチラシをバイブと一緒に紙袋の中に押し込み、その口をホッチキスでガチン!と閉じると、そこに五〇一号室の専門学校生が帰って来た。
この専門学生は、いつでもどこでもボンヤリしている、まるで風船のような女の子だった。天草はそんな彼女を見る度、もしかしたら少しオツムが足りないのではないかといつも思っていた。
そんな専門学生がいつものようにフワフワしながら管理人室の前を通り過ぎようとしていた。天草は彼女を呼び止めた。そして、紙袋をひとつ手渡しながら「これは『美容健康友の会』がくれたサンプルだよ」と言うと、専門学生はポカーンっとした表情で天草と紙袋を交互に見つめ、一言「いらない……」と呟くと、そのままエレベーターに向かってフワフワと飛んで行ったのだった。

(なんだあの野郎、風船馬鹿のくせしやがって! 今度テメーの部屋のベッドの中で大量のウンコしてやるから覚悟してろよバカ!)と、天草がプンプンしながら管理人室に戻ろうとフッと振り向くと、天草の真後ろに一〇四号室の中年女がポツンと立っていた。
(しまった!)と、慌てた瞬間、中年女は天草が持つ紙袋を見つめながら「なぁにそれ?」と首を傾げた。きっと中年女は天草が専門学生に話していたのを聞いていたのだろう、中年女のその表情はいかにも物欲しげな表情だった。

「あぁ、丁度良かった、これは『美容健康友の会』がくれたサンプルでして……」と言いながらも、天草はその紙袋をソッと隠した。中年女に渡すのはこの紙袋ではいけないのだ。
そんな天草を見て中年女は首を傾げながら「あら?私にはくれないの?」と不思議そうな顔をした。
天草は焦りながらも、「いえ、『美容健康友の会』から、三十才以上の方にはこっちのサンプルを渡すように言われてますので……」と咄嗟に誤魔化しながら、バイブが入った紙袋を慌てて引き寄せた。
そんな天草を見つながら、中年女は「だよね、私はもうおばさんだもんね」と照れくさそうに笑い、その紙袋を受け取ったのだった。

そんな中年女が部屋に入るのを見計らい、天草は急いで机の引き出しから盗聴受信器を取り出すと、黒いイヤホーンを耳の穴に差し込みながら周波をあわせた。
さっそくイヤホーンからスーパーの袋をテーブルの上に置く、ガサガサという乾いた音が響いてきた。早く紙袋を開けろ、と興奮する天草だったが、しかし待てど暮らせどその紙袋が開けられる物音は聞こえて来ず、残念ながらその晩は何事もなく過ぎて行ったのであった。

(つづく)

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